18.日本が終戦に至るまでの24時間を描いた、異色の戦争映画。昭和のスターたちを総動員して、当時の政治家や軍人たちの狂奔を淡々と描き切った傑作。喜劇を得意とする岡本監督がこの異様なテンションの作品を作っているのだから恐れ入る。 終戦の舞台裏では、少なくない数の軍人たちが自ら命を絶ち、往生際の悪い過激主義者は、この期に及んでもなお徹底抗戦、さらには抗戦のためのクーデターまで実行に移していた。当の軍人たちは至極真面目なつもりでいたのだろうが、戦争が遠い昔となった現在からすれば、彼らの行動と態度はまさに狂気の沙汰だ。黒澤年雄演ずる畑中には、当時の軍人たちの狂気が仮託されていて、そのあまりの熱量に圧倒されると同時に、その狂乱ぶりには苦笑いさえも込み上げてくる。森師団長の殺害、二重橋前での自決、どれも真面目と狂気が一周回ってギャグのように見えてきてしまって、大いに戸惑った。 全編通じて、8月15日の強烈な熱量と狂気が、淡々とした描写の中に宿っているのが、奇妙であり見事だ。映画を観終わったあと、なぜこの国は無謀な戦争に突っ込んでいったのか、どうして高等教育を受けたはずのエリート軍人が、ああも狂ってしまったのか。徹底抗戦を叫んだ人間たちはいったい何にしがみつこうとしていたのかを考えてしまった。このような時代の惨めさ、愚かさ、狂気を二度と起こさないために、なにが必要だったのか、どうあるべきだったのかを考えさせてくれる貴重な映画だ。 【nakashi】さん [ブルーレイ(邦画)] 9点(2020-03-29 15:50:46) |
17.重厚な「TWENTY FOUR」という感じ。やっぱり気になるのは、黒沢年男一派の行動原理でしょう。眼前に焼け野原にされた東京の光景が広がっていたはずなのに、また全国各地がボコボコにされていたことも知っていたはずなのに、なお戦争を継続すべきとはどういう了見か、とは現代から見れば誰もが感じることと思います。「全国の男子の半分を特攻作戦に動員すれば…」みたいなセリフもあって、さすがにゾッとしました。 しかし、被占領後の日本がどうなるのか皆目見当もついていなかったとすれば、徹底抗戦を主張したくなる気持ちもわかります。「悔しさ」という私心もあったと思いますが、それよりも「この国を滅びさせてはいけない」という軍人としての責任感・使命感が、ああいう〝狂気〟な行動の原動力になったのでしょう。身もフタもない言い方をすれば、情報と大局観が不足していたということで。その点において、当時は政治リーダーのほうが若干優れていたおかげで、大事に至らずに済んだと。どんな組織でも、方針の転換、とりわけ撤退戦となると大事業ですね。 【眉山】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2015-12-31 03:41:37) |
16.ただただ圧倒され迫力がある。コントロールの利かなくなった軍はこわい。 【ホットチョコレート】さん [CS・衛星(邦画)] 9点(2015-08-18 06:27:51) |
15.日本人として観ておくべき云々とか初めて知った事実云々とか以前に映画として面白い。今観ても十分通用するレベル。 【ケ66軍曹】さん [DVD(字幕)] 9点(2015-08-09 16:53:46) |
14.理性無き愛国心の恐ろしさを黒沢年男と天本英世の鬼気迫る言動から痛感させられます。戦争を終結させた天皇陛下のお姿に、開戦阻止が叶わなかった残念さをあらためて感じました。陛下は民を思って涙なされた。すすり泣く幹部達は何を思って涙したのか。綺羅星の如き俳優陣。一人一人が歴史の証人として後世に伝えたいという気迫でもって見せた史実に2時間半もあっという間でした。 |
13.これは昔々ある国に起こったおとぎ話ではない(丸山眞男) 【Balrog】さん [DVD(邦画)] 9点(2013-06-29 00:24:00) |
12.岡八の傑作のひとつだと思います。玉音放送の直前直後の混乱を非常にクールな視点で描きながらも、登場人物全員の思惑や信条といったものが伝わってきます。だから嫌でも観ている側が冷静で居られなくなり、物語に注視してしまいます。 【奥州亭三景】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-11-22 12:36:28) |
11.昭和20年8月15日。日本が忘れてはならない一番長い日にして大日本帝国最後の日。ポツダム宣言を受諾し天皇陛下の玉音放送があり、戦争が終わった日として日本史の授業で習った。しかしその前日から一刻を争うこんなドラマがあったとは。内閣、陸軍省、近衛師団、東部軍、宮内庁、NHK、児玉基地、厚木基地、横浜警備隊、前日からのこれだけの人間の数々のドラマを全く中だるみの無い緊迫感を持ってよくぞ熱く描き切られたことと感服します。立場や考え方、この一日に取った行動はそれぞれですが、その是非は別にしてそれぞれの根底にあった日本を思う熱き思いを演じた本作の全ての男達の熱き名演技に感動しました。これを機にぜひとも原作も読んでみたいと思います。 【とらや】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-11-20 17:37:43) |
10.もっと堅苦しい作品かと思ってたら、意外にもエンターテインメント作品になっていて、興味を惹かれました。 悲惨な戦争の事実を描いてるわけで、面白いなんて言ったら不謹慎なのかも知れないけど、当時の将校たちの心意気が感じられて、ワクワクさせられます。 もしフィクションだったとしたら、最後の一兵卒まで玉砕覚悟で戦い抜くというプライドに一票を投じたい。 もちろん戦争はよくないと思うけど、今の政治家にもこれくらいの心意気が欲しいですね。 少なくとも、現代の日本を取り巻く状況もこの頃と大差ないように感じます。 このまま無条件降伏してしまうのが本当に正しいのか、ひとりひとりの国民が冷静になって考えてみるべきなのかも知れません。 作風としては反戦ではなく、淡々と事実を描くドキュメンタリータッチで、どこまで真実に近いのかということは抜きにしても、太平洋戦争の1つの側面として、日本人なら知っておいて然るべきことなのかも知れません。 そして、やっぱりラストの玉音放送は昭和生まれの日本人としては、心を揺さ振られるものがありました。 この作品に出会うまでの僕にとって、玉音放送というのは戦争の終結を意味する平和の象徴だったんですけど、今では少し複雑な心境で受け止めるように変化したように感じられます。 【もとや】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-10-27 06:10:51) |
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9.何について触れるべきか。正直、難しいとこですね。さしあたって、陸軍大臣を演ずる三船敏郎、鈴木内閣総理大臣を演じる 笠智衆さん この御二方の貫禄、演技魂によって 内容に値する重みが ずんと増してる事は間違いありませんね。その他、横浜警備隊長の天本英世さん、記憶に残る演技です。 あと、どうでもいい事ではありましょうが、外来語をあまり取り入れていない時代にあって、 マイクはマイクなん だ・・ と思ってしまった。あとラジオもラジオ。気になった ^^; 記憶の上でカタカナ発言及びカタカナ混じりの台詞は、ポツダム宣言、ミッドウェー海戦敗北、その他、国名にてイギリス、アメリカ、ソ連、と数えるほどしかなかったのですが。 しかしながらというか、なんちゅうか、意外なところで出てきたんが、その・・、マイクなのでした だからナニって言われてしまえばそれまでなんですが。 とにかく気になってしまったんです マイクという単語。 【3737】さん [DVD(邦画)] 9点(2010-02-02 23:58:20) |
8.豪快かつスピーディーな展開。濃密なストーリー。画面越しに伝わる緊張感。戦争の狂気。血しぶき。流れる汗。大日本帝国としての誇り。傑作です。 【eureka】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-06-14 13:22:39) |
7.傑作。宮城事件を中心に玉音放送がラジオ放送されるまでの様々なドラマが見事に描かれている。この日があって、若いてはこの戦争における多くの犠牲があって今の日本の繁栄があるのだと改めて身に沁みました。汗の描写がこの映画の熱気をまさに物語ってたなー。 【すたーちゃいるど】さん [DVD(邦画)] 9点(2009-01-02 17:28:22) |
6.毎年八月が来るたびに見よう見ようと思っていましたが今年ようやく視聴しました。まずいちばん最初に感じたのが、八月のあの局面になっても政府、軍の上層部がうだうだ小田原評定を続けていたことへの怒りです。そうこうしているうちに原爆を落とされ、それでもまだうだうだ閣議を続けて・・ようやくポツダム宣言受け入れが決まったと思ったら玉音放送の文章でまたうだうだと・・。その狭間の映像でうまそうに最後のぼた餅を食べて、なにか吹っ切れたような特攻隊員たちの顔とそれを無念の顔で見送る伊藤雄之助の顔。もっと迅速な決断あれば多くの人間が助かったのに。まったくやりきれない。さらに、この期に及んでクーデターを仕掛ける青年将校たちにいたってはなんともはや・・国民を大量死させてまで守りたい国体とは何なのか?戦争の狂気をとことん教えられたという点で一生忘れることのない映画でしょうね。それにしてもでてる役者さんはみんな迫真の演技。死神博士が怖すぎる・・。 【陽炎】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-09-02 21:11:24) (良:2票) |
5.昔一度観て面白かった記憶がある。最近原作が大宅壮一編から半藤一利著に変更されたらしいが、そのおかげで偶然読む機会を得た。あまりの面白さに、さて映画ではどうなっていたのだろうと確認したく大急ぎでレンタル屋に走った。良い。これだけの大作、最良の時期であろう岡本喜八が丹念に映像化しており、この劇的な史実に余分な脚色を加えていないことが逆にとても好感。それにしても東宝35周年記念作ということで、豪華出演陣に舌を巻く。中でも阿南大将が乗り移ったかのような三船敏郎の圧倒的存在感に絶句。ついでながら、その時代まで邦画を支えてきた黒澤組の三船と小津組の笠が対峙する場面は妙に感慨深い。展開としては日本版元祖「24」。深遠な史実の内容にはここでは触れないが、もしこの映画を観る方は新たに判明した事実を加えた本を読んでからが絶対にお薦め。 【monteprince】さん [DVD(邦画)] 9点(2007-03-13 22:23:22) (良:1票) |
4.この手の映画は点数をつけにくいんですが、是非多くの人に見て欲しいという願いを込めて9点です。こんな映画、いろいろな意味で現在では作れないでしょう。娯楽性はほとんど無いですが、ある意味、現在の日本の第一歩となった1945年8月14~15日玉音放送の録音版を巡る陸軍を中心としたさまざまな人々の動きがドキュメンタリー調に画かれているので、是非、すべての日本人が一度は見て欲しい作品です。 【はやぶさ】さん [映画館(字幕)] 9点(2005-11-27 23:01:35) (良:1票) |
3.終戦の日を遂げようとする政府は、この一日の終わりを待ち焦がれ、それを阻止しようとする兵士たちは、刻一刻と迫る終戦に焦り狂う。二つの相対する“焦がれ”が上手く重なり合い、複雑で良い緊張感が感じられた。 【デコバン】さん [DVD(字幕)] 9点(2005-10-29 18:00:35) |
2.俳優達の演技力の裏づけは、やはり彼らの戦争体験が大きいと思います。この頃の俳優達は、語るべき実体験を持っています。南方ニューギニアで飢餓地獄にあった俳優。陸軍士官学校に在籍していた俳優。この映画の阿南陸相を演じた三船は当時陸軍航空隊に属し、熊本の飛行場で25歳の終戦を迎え、毛布2枚の支給だけで娑婆に放り出される経験をしています。三船は映画中に出てきた特攻隊の飛行兵達とほぼ同年代です。くらべて最近の中堅俳優達(多感な青春期はバブルと重なっているでしょう)が物資乏しい大戦期を”また聞き”をもとに演じては土台無理ですね。私が特に印象に残っているのは、高橋悦史演じる井田中佐の近衛師団長への訴え、「中途半端に戦争止めるくらいなら、これは玉砕、殉国した前線の兵士・一般人に対し、ぬくぬくと内地にいた連中の裏切り行為ではないのか?重臣達は天皇に責任を押し付けて逃げ口上を正当化していないのか?」です。”武士に二言は無い”ということから言えば、優柔不断な上級司令官を斬り、徹底抗戦しようとした、その望みがかなわぬ時には潔く自決した畑中少佐ら青年将校達は、恥を知る真の武士です。陸相とかれら(その他にも自決者はいる)一握りの武士の存在によって大勢の”生き長らえた”皇軍将兵に”栄光ある敗北”が与えられたのだと思います。 【Waffe】さん [ビデオ(吹替)] 9点(2005-08-05 23:07:31) (良:1票) |
1.歴史ドキュメンタリーをドラマ化したもので、主要登場人物は 実在の要人で、ストーリーもほぼ史実に準じている。こういう場合、おおまかな史実や人物像が見えているゆえに、映画として魅力あるものにするためには、高度な脚本や俳優そのものの存在感がないといくら監督ががんばっても無理がある。そういう意味で、 当時の日本映画界全体の奥行きの深さを彷彿させる傑作。 【サラウンダー】さん 9点(2004-01-15 23:22:53) |