201. ヒューゴの不思議な発明
《ネタバレ》 私の中に、ほんのちょっとだけ残っていた11才の少女の感性がこの映画にすっかり魅せられた。眼が嬉しい嬉しいと言っている。秘密の隠れ家を求める心が、駅の裏側という歯車と仕掛けで織り成された狭い空間に喜んでいる。時計盤の裏から見下ろすパリの夜景!素敵な外国の絵本を観ているよう。からくりを修理するというのはそのプロセスすら楽しい。部品をひとつひとつ探して、直ったら何が出てくるのか、わくわくする気持ち。そのわくわく感が、映画創世記のメリエス氏のわくわくとリンクする。大人が夢を取り戻した、その一助を担った子供心の誇らしさ。11才からだいぶ遠くへ来てしまったけれど、私はヒューゴとイザベルのすぐ隣にいられた。三人組の気分で。コメディパート担当の鉄道公安官と相棒マキシミリアン、彼らも良かった。なんだかキレイなんですよね。立ち姿も濃紺の制服も。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-08-19 00:03:20)(良:1票) |
202. カンパニー・メン
《ネタバレ》 世界で一人勝ちしているように見えるアメリカも、いや市井のサラリーマンはこれけっこう大変なのよ、と居酒屋でしみじみおでんをつまみたくなるようなお話。どこの国でも“他人に評価される仕事”というのは自らのプライドと折り合いのつかないものだなあ。失職したばかりの頃は“この俺様が”気分でまだ元気があったのだけれど、ひとつひとつ“俺様気分”を打ち砕いてゆく現実のエピソードがリアルで切ない。何度も空振る面接、売らざるを得ない自宅に車、滞納発覚のゴルフ会員権。ついに我が子が自らゲーム機を手放すに至って、お父さんは俺様プライドを叩き割り、親戚に頭を下げてブルーカラーの仕事に就くのだった。うう(泣)。闘うお父さんを支えるのはやはり家族、B・アフレック家はよく頑張りました。対照的に悲劇を生んだ元管理職の彼の家庭、寒々しさが画面からも漂ってきそうだった。きついなあ。勤め人ならば誰でも可能性のある厳しい現実を、アメリカの実情も上手に紹介しながら心に響くドラマに仕立ててあります。日本の地方都市に住む身としては、あんな豪邸が一サラリーマンの分相応なのかと、そこはちょっと驚いてしまった。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-08-15 00:25:40) |
203. トイ・ストーリー2
《ネタバレ》 前作のキャラクターたちが再登場、ペットのわんことも仲良くなってるオモチャたちの冒険譚第二弾。いつお払い箱になるかと常々キンチョーをはらんで彼らの日常はあるのですが、今回はウッディの腕が壊れてしまうわママさんがヤード・セールを行って彼らの恐怖心を煽るわで、相変わらずオモチャの世界も大変だ。今回はウッディに“オモチャ以外としての価値”が提示されます。まさに人生の一大事。予想もしない展開に、「え、それで?」と大人でも魅了されます。いやあ、それにしてもスタッフ、STAR WARS好きねえ。全世界の三十代以上がこの遊び心に胸くすぐられたことでしょう。NGシーンにもたまげました。作り手の、キャラクター達に対する愛情がみなぎっていて、とても良いと思う。 [DVD(吹替)] 8点(2013-08-04 00:21:59) |
204. グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち
《ネタバレ》 うん 良いお話でした。普通に感動しました。いつもはウルサく感じるR・ウィリアムスも、これだけ抑えてもらえれば。B・アフレックが見事な演技してますよね。天才友人の背中を押す彼の台詞がこの映画のハート部分。そしてデイモンが旅立った事を知った時の喜びと寂しさ、すべて受け入れたような表情。実に繊細でぐっときました。助演男優賞も納得だ。←違う違う受賞はR・ウィリアムスだった。えっなんでだよー。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-06-10 23:50:37) |
205. フラッシュダンス
《ネタバレ》 お話は・・、そうねそんなには面白くないかも。ベタですし。封切当時はまさに青春まっさかりで、若さのさなかにいた時は他人のサクセスストーリーにそれほど感じ入らなくて「ふーん」程度の感想だった。それから数十年、ああ青春の輝きは遠い所から見るほどに気付くもの。J・ビールスの若々しさ、初々しさ。夢を追う友人たちの健気さと挫折、後押ししてくれる叔母、恋人だけど上司といった周りの人達のドラマもバランス良く織り込まれて正統派なドラマの作り。演出になかなかセンスを感じるのですよ。路上でのパントマイマー達や、交通整理のお巡りさんのアクションをもコミカルに描写しちゃう場面。事務のおばさんの食事中の悲劇。ブサイク犬グラント君も重要な脇役、ラストのおめかし姿は必見。なにしろオープニングの音楽からどーっと当時の感覚を呼び覚まされてしまうので、なつかし補正も手伝ってちょっと大甘の点数ではありますが。 [映画館(字幕)] 8点(2013-06-07 00:40:07) |
206. カリートの道
カリート・ブリガンテ、アル・パチーノの色気が最高潮に炸裂している男。女が待っている列車に間に合ったその時の、銃撃戦をくぐり抜けてきた直後の笑み。一発でオチるなこれは。意外と言ってはナンですが縦横無尽のデ・パルマカメラに合わせるパチーノの身体のキレも相当なもの。身のこなしがゼロコンマ速い。す、素敵だ~。パチーノも上手いけど、S・ペンも忘れてはいけないんだった。ぱっと見ペンとは分からなかったけど、器の小さい成り上がり弁護士を見事な卑怯っぷりで熱演。この上手さにたじろがず、一歩も引かないパチーノもやはりえらい。(←贔屓) [DVD(字幕)] 8点(2013-05-29 00:34:29) |
207. マイケル・ジャクソン/THIS IS IT
マイケル・ジャクソン最後の姿、最後のダンスシーン。バック・ダンサー達が筋肉隆々なのに比べて、彼はなんて華奢なのか。あの細い線の身体。だからこそマイケルの動きは他のダンサー達より優雅さもオーラもある。もの凄い才能を目にしている、という恍惚感をもたらしてくれる。巨大な才能を同時代に目にすることができて幸せだったなあ、とも思う。自らの芸術に埋没してゆくかのような後半生の彼に、傷ついた小さな男の子が見えて仕方なかったものだった。米国のマスコミが「マイケルは緩やかに自殺した」と表現したのが妙に心に残る。ご冥福を祈ります。きっと夜空に輝く巨大な一等星であってくれるでしょう。 [映画館(字幕)] 8点(2013-05-08 23:56:56)(良:1票) |
208. レスラー
拝啓 ミッキー・ローク様。80年代の、最高に美しかった貴方の一ファンにとって90年代はなかなかに辛い10年でありました。聞こえてくるのは整形失敗だのボクサー転向(それも失敗)だの詐欺被害だの、ゴシップ絡みの話題ばかり。堕ちるとこまで堕ちたとの悪意コメントに心はきりきり痛んだものでした。それが、“奇跡”とまで呼ばれる復活を遂げられるとは。ハリウッドで、底の底を見てきた貴方と二重写しになったかのような老レスラー、その哀感。まことに見事な生き様を体現して見せてくれました。かつての美貌は確かに失われてしまったけれど、ああもうこれで俳優としてのキャリアを正当に評価されるのですね。M・ロークは女子供にしか人気が無いだの猫パンチがどうだの、悪口を一蹴することができて、私は胸が一杯です。G・グローブ授賞式の録画を観て、また泣こう。 [DVD(字幕)] 8点(2013-02-28 01:12:15) |
209. ミシシッピー・バーニング
FBIの描き方が史実と違う、という指摘がたくさんあってちょっとしゅん、となってしまったけれど、それでもなおこの映画の訴える問題とか憤りはストレートに伝わるし、遠い島国でのほほんと暮らす私の脳髄に一撃を喰らわした勢いを減殺するものではないと思う。差別意識に染まった人間の底知れない業の深さが恐ろしいし、一方でG・ハックマンの憤怒の形相には甚だしく説得力があり、「暴力は良くない」というスタンスだったW・デフォーも後半は止めはしない。1964年に何があったのか、この映画によって私の記憶に刻まれた。本当に恐ろしい思いをした映画だった。 [ビデオ(字幕)] 8点(2013-02-21 00:40:25) |
210. イヴの総て
《ネタバレ》 タイトルからは想像もつかないえげつないお話でした。対人関係を苦手とする人が観たら一発で人間不信になりそうな。アン・バクスター健闘してますけど、やっぱりここはベティ・デイビスの老練(は言い過ぎか)な演技に見惚れましょう。“老い”に恐怖する大女優の哀しさ、ほぼ演技ではないのかもしれない。夜中にかかってきた恋人からの電話、段取りをイヴがしていたと知った、その時の微妙な表情。心がざわざわと波立っているのが手にとるようだった。イヴの性根への疑念と、若い子が恋人の前に現れる焦燥感と。みっともないほどに乱れる往年の大女優の様を堂々演じたB・デイビス、言葉もないほどにあっぱれ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-02-14 00:08:16) |
211. オーメン(1976)
《ネタバレ》 おお、今観てもやっぱり怖かった。シッターが首を飛び吊るシーンと、神父が絶命するまでの公園の不吉な描写、風がびょうびょうと吹きだして葉が舞い散り、黒い雲が迫る。ここはワタシにとっての二大最恐場面で、しっかりトラウマ化しました。加えて音楽、この不安をかきたてる陰鬱な合唱が雨あられのように頭から降りそそぎ、写真に写し出された凶兆には人智を超えた禍々しい力を感じ、よくわかんないけどキリスト教ってこわいよう~と子供心に刻んだものでした。 [地上波(字幕)] 8点(2013-01-26 16:20:49)(良:1票) |
212. アポロ13
《ネタバレ》 思いもかけないトラブル、絶望的な状況。突然そんな只中に放り出された人たち、飛行士にNASAスタッフ、それぞれの家族、どの視点からも気持ちが入り込める。観客をのせる技術がとても巧み。結果を知っていても、大気圏突入して火の玉になったカプセルのために思わず祈りましたもん。エド・ハリスが彼だけでも永久保存しておきたいほどのかっこよさ。渋いっす。 [DVD(字幕)] 8点(2012-12-10 00:40:17) |
213. イン・ハー・シューズ
《ネタバレ》 私は姉妹モノに弱いのかもしれない。これまたぐっときた良いお話でした。前半はあまりのキャメロンのダラシなさに辟易し、トニ・コレットの華の無さに胸が痛み、と乗れなかったのだけどS・マクレーンの祖母が登場するあたりから俄然引き込まれていきました。人生の先輩諸氏から薫陶(?)を受け、プライドを取り戻してみるみる生き生きしてくるキャメロンが素敵です。家族が抱えていた過去がじわじわと明るみになって、思い出を姉妹と祖母とで暖めなおして共有する、その過程でトニ・コレットの笑顔がN・Yでのこわばったものではなく、ほっこりとほぐれてゆく。じーん。家族というつながりの、確かな暖かさを女たちで確認することは、なんだかとても幸福なのです。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-11-15 01:09:20) |
214. 情婦
なんだ情婦て誰だ誰のこと?この邦題のせいで目にしてもスルーし続け、クリスティー原作ということも、B・ワイルダー監督ということも数年気付かなかった。どうしてくれる。ワイルダーらしいさくさくした展開と、洒脱な台詞が聞いてて楽しい。特にウィルフリッド卿と裁判官の言葉のセンスが大好き。トリックの、時代を感じさせる古さは置いておくとして、役者陣の魂こもった演技に惚れ惚れします。こそこそ策を弄して看護婦を出し抜こうとする卿と彼女の終わりなき攻防には笑ってしまうし、ディートリッヒの隙を見せない、見せなさすぎがかえって妖しい佇まいといい。ああ、ドイツでの出会いはなかなか素敵だったなあ。こ、こうなるのかあ・・。 [DVD(字幕)] 8点(2012-11-08 00:38:02) |
215. 恋愛小説家
《ネタバレ》 鬼瓦みたいな顔のJ・ニコルソンが、神経症気味の毒舌オヤジ役でこんな奴が主人公だなんてこのあとどういう展開になるんだよう~と困惑したのもつかの間、不器用おやじの内弁慶な愛らしさに転換してみせたニコルソンの演技力に脱帽です。わんこも可愛いし。ニコルソンが出してきたヘンなピンク色の餌の前で逡巡してるシーンが大好き。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-09-29 18:17:17) |
216. JFK
『誰か』が疑問を呈さなければ、ケネディ暗殺は共産主義者オズワルドの単独犯行だと、歴史に迷い無く刻まれたのかと思うとなんか空恐ろしい。登場人物である地方検事長をはじめ、“真実”を追究するために声をあげ、巨大な権力相手にひるまず闘った人たちのその姿勢に敬意を表する。もちろん、O・ストーンにも。 [映画館(字幕)] 8点(2012-09-26 01:06:43) |
217. サボテンの花
《ネタバレ》 観ていてなんだかにやにや笑いがとまらない幸せ映画。演技達者なベテラン陣の余裕なコメディアンっぷりに混ざって、無邪気に場をかき回す新人G・ホーンのキラキラしてること!吸引力絶大の宇宙人顔に純情と正義を漲らせて大人どもを困惑の只中へ落っことします。カットが抜群に素敵なヘアスタイルに、ぴったりタートルと大ぶりのアクセサリー、ファッションも実に可愛い。見た目軽いけど、変なところで倫理観がきっちりしていて「ああレザーのスーツだったらなあ」と内心思いつつ、ミンクのショール(おじさんチョイスっぽい。うまい。)に喜んでみせる優しさにも溢れているのさ。そして、意外にもコメディエンヌもできますよ、のバーグマンにびっくり。職務熱心故にしぶしぶ偽妻を引き受けるとこ、良かったなあ。がくっ、とあごを落とすバーグマンを観るとは思わなんだ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-09-19 01:00:50) |
218. ライムライト
《ネタバレ》 胸に沁み入る珠玉の言葉の数々。名優チャップリンが人生をなぞったような、渾身の、でもふわりと柔らかい美しい映画です。女の子がどんどん輝きを増していって、ああこれは若いピアニストと一緒になるだろうな、鉄板だよなと思っていたらなんと彼女最期までチャップリンに寄り添うのだった。このへん、チャップリンたら自分の願望でしょそれ、とちょっと可笑しかったな。 [ビデオ(字幕)] 8点(2012-09-04 19:02:48) |
219. クラッシュ(2004)
《ネタバレ》 人の心の奥深さや矛盾をうまいこと突いてくるなあと思った。人の心は多面体、誰でも黒い面、白い面をちょっとずつ持っている。終わりのないスパイラルの様な差別や憎悪を前にして立ちすくみそうになるけど、その上で映画としての回答を控えめに出してみせている。人物みな存在感あるけれど、差別主義をおおっぴらにしていたM・ディロンと、彼に不快感を感じ袂を分かつ二人の警官のエピソードが強烈に皮肉が効いていた。ちょっと呆然とした。この映画が用意したのは空砲を選んだペルシャ人の娘。武器を最初から放棄した彼女の選択こそが女の子とその家族、自分の父親をも救うことになった。社会の片隅で、確実にほぐれた偏見の一端。見事なエンディングだったと思います。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-08-14 15:54:49) |
220. Bubble/バブル(2005)
74分のうち30分くらいまでは、あまりの陰気さ、楽しくなさに観る映画間違ったかなあと頭を抱えたくなった・・それが新入りの女の泥棒行為から話は一気にスピードアップ、ゆるゆる進んでたトロッコが突如猛スピードになって、ラストで急ブレーキ、乗ってたこちらはぽーんと放り出された感じ。垢抜けないもっさりした中年女のマーサのわびしさ、痛さ。大量生産される塩ビの子供人形の気色悪さ、耳にしつこいギターサウンド、すべてが脳の底にびっちりはりついてたちが悪い。最後に大写しになる金の腕時計、この小道具の使い方の巧みなこと、ソダーバーグ凄いなあ。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2012-07-26 00:55:40) |