301. A.I.
《ネタバレ》 onomichiさんのレビューに刺激されてちょっと投稿。オイラが思い浮かべたのは「デヴィッド=アトム」ではなく「ナレーション=私は真悟」でした。字幕は(DVDの吹き替えもそうだけど)だ・である調になってますが、これをですます調に変えると、モロに真悟の世界になります。オープニングは、未来の人類を遥か過去の歴史のように語ってるんだけど、いったいこれは誰がナレーションしてるのか? 冒頭からいきなりその疑問に捕らえられてしまって、なかなか物語りに集中できない。やがてジョーが「世界はいずれメカのものになる」と語るくだりで、もしやという予感が生まれ、やがて2000年の月日をすっ飛ばして物語はナレーターのいるリアルタイムな世界へ…。ナレから言えば、ラストまでのあの展開は必須です。遥か未来のナレーターが語り継げるような、デヴィッドが世界に記憶されるほどの神話になるためには、あの展開しかない。そうとも、わかっていたはずじゃないか? 冒頭のナレーションの時点から…語りの異様なスタンスと遊離しがちなストーリーで『私は真悟』と共に記憶されていい映画でした。奇怪な物語展開をトリッキーに包み込んだ怪作SF。 7点(2004-05-03 15:07:02)(良:1票) |
302. 悪魔のいけにえ
子供時代のトラウマ映画ナンバー1だなあ。この映画が他のホラーと決定的に違う点は、フィルムから無駄に溢れてくるパワー。オールロケのホラーで、やたら昼間のシーンも多いくせに、アメリカの田舎の埃っぽい空気に息が詰まりそうだ。あの空気の中にいるだけで怖い。カメラもあんまり動かず、レザーフェイスがいけにえを「処理」して行くのを淡々と映していたりして、恐怖の質が楳図かずお的なんだよね。画は明るいし乾いてるけど。トビー・フーパーは、多分《空気》を描く才能のある監督なんだろう。それも、エネルギーに満ち満ちた無駄に凶悪な空気を…案外、劇映画やらないで戦争ドキュメンタリーとか撮ってればピューリッツァー賞とかイケたかもしれないよなあ。以後の作品を見てると、才能の浪費かもしれないと思っちゃうですはい。 7点(2004-05-02 16:19:38) |
303. マイク・ザ・ウィザード
昔『鉄男』が世に出た頃、友人が内容を説明するのに「凄いんだって! コマ撮りが『マイク・ザ・ウィザード』の比じゃないんだよ!」って力説してた(今は「技術だけ比べてどうする」って思うけど)。要はマニアックな人々の間では一種の規範だった、って事です。一種のマニアの教養として観ておくべし。得はしないけど損もしないよ。そしてそれから、インディペンデントな特撮映画を見るたびに「マイク・ザ・ウィザー度75%」とか呟いている事でしょう。無益なようで実は有用な映画だったりします(苦笑)。 5点(2004-04-28 03:42:24) |
304. ディスクロージャー
《ネタバレ》 大好きなレビンソン+クライトンだからオマケしておくか。でも原作で観たかったシーンをバサバサ切ってったのはちとイタイ(コリドーで出てくるノイズの川とかね)。マックス爺さんも出てこないし、マイクロソフトの社員から陰湿に野次られるシーンもない(ってコレは無理か)。携帯電話と留守録のくだりや、社内イントラを特権レベルで歩き回れるコリドーの凄さも、あのシナリオじゃ原作知らない人は理解できないよきっと(汗)。逆に映像化されてる部分は完璧。あの女弁護士の顔立ちなんか原作そのままでした。一番言って欲しかった科白:「製造とは訓練なのです」。これを口にできる現場たたき上げオヤジだったからクアラルンプール工場の製造仕様変更を暴けたんだけど、M・ダグラスだとその辺の感じがチョイ出てないなあ。たたき上げ感が乏しくて、漢のビジネスドラマにちょっと届かない。残念。 8点(2004-04-27 02:01:27)(良:1票) |
305. エド・ウッド
《ネタバレ》 エド・ウッド漬けの1週間の締めは、もちろんこの映画で。いやあ「エド・ウッド・コレクションBOX」買って間もないから、まるでオリジナルの最編集版のように楽しめました。意外だったのが映画への愛というより、ベラ・ルゴシとウッドの泣かせる友情に軸足が置かれて、「老人映画」になっていた点かな。このあたりはホロリと来ました(お気楽版『ゴールデン・ボーイ』か?)。そして「ルゴシってやっぱり偉大だなあ」と見直した次第。大ダコと格闘するシーンなんか、そのプロ魂に泣けてくるよ。ウッド作品の看板たち、トーもヴァンパイラもクリズウェルもオリジナル通りでビックリ(つうかこの辺は、バートンの愛を感じますな)。もっと凄いのは『プラン9』のルゴシの代役までソックリだった事か。ウッド映画は各シーンとも忠実に再現されていて、オリジナル(「エド・ウッド・コレクションBOX」&『死霊の盆踊り』)を見てから本作を観れば楽しさ5倍っすね。丁度いま、シリーズ物の映画をまとめて観終わったような気分でハッピーです。 ●追記:物語のテーマだろうと思われる『怪物の花嫁』でのルゴシの「故郷? 国を追われてからはジャングル住まいよ…(中略)…やがて世界は我が子・原子超人たちが支配するのじゃあ!」ってセリフについて。要するにこの映画って「80年代のウッド再評価が始まった頃からハリウッドが低予算B級ホラーに席捲されて、ボク(バートンら原子超人)みたいな監督が大作映画を取れる時代になったのも、ウッドさんルゴシさんあなたたちの無節操な頑張りのおかげですありがとう。あれ、しかもちゃんと作中で予言してますねえ」ってコトを言いたいワケね。『花嫁』の撮影で、実際にあのセリフを自分にダブらせて語ったと思われるルゴシの心境を鑑みると、熱い涙で画面が曇るっすよ。 ●追記2:クライマックスのオーソン・ウェルズとの対話シーン、何度見ても両人の苦悩の次元の違いに笑ってしまう。苦悩の質は同じなんだけどね。ウェルズ、あんたいい奴だ(笑)。 8点(2004-04-25 21:16:27)(良:2票) |
306. スペースインベーダー
《ネタバレ》 わりかし好きな作品なんだよなあ。SFになる前、前半の恐怖映画パートの「間」は往時の『悪魔のいけにえ』的なセンスが宿ってて怖いですね。で、侵略者の正体が割れた後の後半はガラッと変わってスカッとした活劇に。この切り替わりの豪快さには笑ってしまいます。オリジナル旧作の方は観てないんだけど、軍隊が出動したり夢オチってとこも同じみたいだから、この異様な展開は50年代SF映画の持つアバウトさに由来してるのかもね。 6点(2004-04-25 09:55:35) |
307. 怪物の花嫁
《ネタバレ》 まさかエド・ウッド作品に9点つけるハメになるたぁ、お釈迦様でもご存知あるめェ。だが言わせて頂く。演出が最低なのは認める。ルゴシ以外のキャストの演技がテキトーなのも皆々様の仰る通り。特撮も冗談抜きでヘボい。セットも使い回しばかり。お約束のように昼のシーンを「夜」と言って強引に観客を納得させやがる(って書いてると本当に最低映画だよな…)。でも、それを押しのけるように溢れ出る物語のテーマ性、これへの感動はオイラには如何ともし難いのだ。「モンスターがフランケンシュタイン博士を改造してしまう」! こんな恐怖映画がかつてあっただろうか。これはホエール版『フランケンシュタイン』『フランケンシュタインの花嫁』へのひとつの回答であり、挑戦状でもあるだろう。この、博士改造シーンには本気で背筋が凍った。モノクロ時代のホラーはそれなりに見てきたけど、インパクトに関しては群を抜いていた。ダメダメな部分を考慮してもなお、ハマープロの凡作なんかよりよほど歴史的な価値を持っているホラーだと思う。多分、これから何回も観る作品になるだろう。 9点(2004-04-23 04:27:23)(良:2票) |
308. プラン9・フロム・アウター・スペース
《ネタバレ》 今見終わった。まいったぜ。ショボいショボいと聞いてたからどんだけショボいのかと思ったら立派な映画じゃないかーっ! これは冤罪だッ(笑)! いま逆の意味で非常に腹を立てているぞっ! 少なくともオイラの愛してやまない『スーパージャイアンツ』と同格(つーかスーパージャイアンツでは円盤の操縦席なんて学習机どころか思いっきり影絵なんですけど)。そしてプラン9は1956年作品、スーパージャイアンツは1957年作品。もしかして宮川一郎と石井輝男、この作品をリアルタイムで見てたの? …と勘ぐりたくなるぐらい各シーンが似てます(第3~4部のカピア人編、第5~6部の黒い衛星編)。いや、彼らは見てたんだ。そうに違いない。石井輝男はその輝かしい経歴の初めに、エド・ウッドの映画魂とパワーを受け継いだんだー! などとバカな事まで考えてしまいました(おい石投げるな)。あと、頻繁に昼夜の入替わる墓地シーンですが、この場面を全て昼に統一したらモロ『ナイト・オブ・ザ・リビング・デッド』になりますね。「宇宙からの怪光線で死体がゾンビ化」…ってプロットも一緒だったりして。意外とこの映画、ロメロへの影響がデカいのかも。石井輝男、そしてロメロ。「いかに低予算で撮るか」に心を砕いていた彼ら職人監督にとっては得るものがイッパイあったって事なんすかね。繰り返しますがオイラは本作の史上最低評価は冤罪だと思っとります。映画の奈落はまだまだ深いんだぜ。フッ。 (追記:今ページの上の方見たら1959年作品となってるんだけど…DVDの表記と違うぞ…) 7点(2004-04-19 02:17:34)(良:3票) |
309. グレンとグレンダ
4週間、ビデオショップをひたすら回って、とうとうエド・ウッド・コレクションBOX買ってきましたよっ(←バカ)。しかしまいったなこりゃ…メチャメチャ面白いやんこれ。金がない上にテクニックもない上に内容もないんだけど、巷で「唐突なトンデモ映像」と言われてるシーンは演劇的にはアリですよ。ベラ・ルゴシなんかちゃんと異化効果の役割果たしてるし(あちこちで神様だの精霊だの言われてるけど、彼の役どころは科学と科学者の象徴・抽象表現ですね)。映画じゃなく舞台の骨法で組み立てられてますね。この時期のエド・ウッドは、映画人である前に演劇青年だったんだろうな。本作の後、彼がどうして盆踊りするまで落ちぶれてしまうのかは、『怪物の花嫁』を観てから考えてみようっと。とりあえずこの映画については「凡作」を満喫できたので、この点数で。 (追記:モノローグの多さや唐突さ・安っぽさはキューブリックの処女作を思わせました。格は全然違うけどね…間違った方向じゃないと思うなあ) 6点(2004-04-18 23:46:45)(良:3票) |
310. フレディVSジェイソン
去年、世間がマトリックス完結編に大騒ぎだった頃、一人で「この秋の最大の話題作はコレだね!」と本作に多大な期待を寄せていたバカでございます。結局どっちも観れずに秋は過ぎて行きましたが…。で、DVDが出たので早速購入。噂通りのバカっぷりにニヤニヤしながら観終わりました。オイラは基本的にフレディ派なんで、エルム街っぽさが基本になった展開は嬉しい限りっす。『リアル・ナイトメア』で映画の製作スタッフや役者までも襲いまくる、メタフィクションの方向に足を踏み出したフレディすから、ジェイソンと戦う展開はもう『エルム街の悪夢』の正当な後継と言っていいね。次作へのハードルはメチャクチャ高くなったと思うけど…まあ出ても10年後だろうから、期待せずに待ってますわい。 6点(2004-04-03 21:44:36)(笑:1票) |
311. フォーリング・ダウン
まるで民話のようなシンプルな筋立てに乗せた、上質なブラックコメディですよね。他の国では絶対成立しない、バイオレンス大国アメリカならではの黒く爛れたジョーク映画。何度見ても面白いです。展開のバカさ加減と、わらしべ長者風に膨れ上がっていく主人公の武装がおかしさを醸し出してます。ゴルフ場での発作シーンは何度見ても笑えてきます。 8点(2004-03-20 22:30:35) |
312. ウエストワールド
セットがチープなのに、かえってテーマパークらしいリアルさが沸いて不思議。下手な解釈を持ち込まず、観客に判断を丸投げしてるようなエンディングがカッコいい。皆さん仰る通り、ユル・ブリンナーは少年時代のトラウマになりました。『ターミネーター』は公開時、その視覚表現と執拗さであからさまに「パクリ」と呼ばれてました。それ以外にも、クライマックスを山ひとつで終わらせないストーリー構成(再びキャメロンが『エイリアン2』でやってる (^^;)とか、ハイテクを駆使しておいて気付かせないさり気なさとか、けっこう後世に与えた影響は大きいですね。ただ、それだけ持ち上げておいても、でもやっぱりクライトンは監督の才能ないと思うなあ(苦笑)。 8点(2004-03-15 14:18:04)(良:1票) |
313. ザ・ファーム/法律事務所
《ネタバレ》 法律事務所が相談料取り過ぎてるだぁ? なんかセコくて…主人公のやりクチが。映画館で見て、途中までは良かったのにラストでいきなりガッカリした記憶が強いなあ。とりあえず「合法的・合理的に解決できればそれでいいんかい」って言っておくか。ドラマチックなモノ、なにもなし。観客は無理を承知で、その先にあるものを見ようとして映画館に足を運ぶんだと思うぞ。ジーン・ハックマンを配した時点で、敵が手ごわいのもわかっちゃいるけど。 2点(2004-03-15 04:54:26)(良:1票) |
314. レインマン
トム・クルーズに見切りをつける事になった作品。なんかダスティン・ホフマンの演技は既にトムを置いてきぼりにして見切りつけてるし。レビンソン流の淡々としたロードムービーも、ノンビリした音楽も良くなかった。障害者としての演技について言えば、確かに凄かったけどデ・ニーロの『レナードの朝』に軍配を上げる(まあアレも淡々とした作品だったが…)。しかし、いいとこの挙げづらい作品だなあ。 1点(2004-03-15 04:45:58)(良:1票) |
315. 花嫁はエイリアン
オープニングの歌はプリンスの曲をトム・ジョーンズがカバーしたんですかね。初めて見た時、あのパワーとグルーヴィーな声に圧倒された記憶があります。内容的にはベタベタな話でしたけど、それ言うのは野暮ってモンですよね。テンポのいい科白が気持ちよかった。こういうのは字幕もいいけど吹き替えでも見たかったなあ…。 6点(2004-03-15 03:50:45)(良:1票) |
316. ワイルドシングス
一度目のどんでん返しの後、「誰がワルか」ってよりも「何人生き残るか」に注目して見たので、ラストの加速の度合いには非常に満足でした。ベーコンは生き残ると思ってたんだけどなあ…。ただ、ヨットのシーンはもっとアングルを凝ってもよかったと思う。美しいばっかで海の怖さが出てませんね。あのシーンは怖さもあった方がいいよー。 6点(2004-03-15 03:49:48) |
317. キング・コング(1933)
手を抜かないでコングの表情をちゃんと作ってる所が、名画と言われるポイントなんでしょうね。これのせいで、怪獣の物語だけど、見てて恥ずかしいくらいに「アメリカ男性の競争社会」の話になった。中盤まではこの路線でひたすら突っ走り、太古の野蛮な実力主義への憧憬・崇拝を南島奇談の薄衣に隠して提供。そしてラストでそれを覆す科学万能主義に倒される…乱暴に言えば、米民話ランバージャックのスペクタクル版語り変えですね。この展開が、ラストシーンを「科学の勝利の物語」ではなく「野性の敗北の物語」という色づけをして、堕ちゆく獣への涙を誘うんでしょう。満点に届かないのは、その恥ずかしいほどのアメリカ的な甘さ故。 6点(2004-03-15 03:40:12) |
318. ラスト・アウトロー<TVM>
ミッキー・ローク、怪演を経由して名演の領域にまで到達してます。なんかもう『白鯨』のエイハブ並みの迫力です。毎度変わらぬエリック・レッドのシナリオもグー。当時乱発された異色西部劇としてはベスト3に入るかな。特にラストの対決は、正統派ウェスタンでは絶対やれないカッコ良さでしょう。 7点(2004-03-15 02:43:59) |
319. ジョニー・ハンサム
なんか『レッド・ドラゴン』の犯人の半生みたいな話で、けっこう泣けたのを思い出します。ウォルター・ヒル節はちょっと空回りしてたかなあ。当時だからミッキー・ロークという選択肢だったワケだけど、その時代その時代で主役はいろいろ考えられそうですねえ。今ならジョニー・デップあたり(冷酷な役もやれるし)かな。うーん、『ソラリス』みたいに妙なモンをリメイクするくらいなら、これをリメイクする企画を立てた方がいいかも。 4点(2004-03-15 02:13:18) |
320. ブルースチール(1990)
ロードムービーでないエリック・レッド脚本作品は大して面白くないな。彼のシナリオは、助けの来ない無人の荒野で戦うからいいのだ。とはいえ、夫キャメロンとの愛憎劇をバネにこの作品を監督したビグローの「執念」が、脚本の甘さを補っていると思える。でも、それ以上のモンではなかった。もしこれが「父を凶弾に奪われ、テネシーの田舎町で保安官助手になった女」の話だったら、どれほど震えた事か。製作・監督ともにエリック・レッドのシナリオの使い方がわかってなかったと見た。 5点(2004-03-15 01:54:18) |