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R&Aさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2162
性別 男性
年齢 57歳
自己紹介 実は自分のPC無いので仕事先でこっそりレビューしてます

評価:8点以上は特別な映画で
全て10点付けてもいいくらい
映画を観て損をしたと思ったことはないので
酷評しているものもそれなりに楽しんで観たものです


  *****

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161.  トレーニング デイ 《ネタバレ》 
汚職に塗れた警官を描いた映画はゴマンとあるが、その多くの汚職警官映画の中でこの作品がオリジナルな魅力を発散させているのは「社会派」の色合いを全く持っていないところだろうか。見終えてみると(ネタバレ)、悪徳刑事が自分のしでかしたミス(ロシアンマフィアがらみで金が必要)を帳消しにするためのアレコレがこの作品の大筋なのだから。要するに、訓練日を描いているように見せながら、訓練日にかこつけたある計画だったというミステリーでしかない。汚職に抵抗する若い警官の葛藤ったって、なにせ訓練日一日の出来事なので『セルピコ』のパチーノのように孤独に苛まれたり『コップランド』のスタローンのように現状維持の平安との選択に悩んだりするたびに顔を出す「社会派」たるものは出てくる暇もないのだ。ある意味、深みがない。にも関わらず面白いのは悪徳刑事の悪徳ぶりの凄まじさとその怖さがリアルに且つハイテンポで襲ってくるから。そしてデンゼル・ワシントンがめちゃくちゃにその悪党ぶり、非情ぶりが様になってるから。
[DVD(字幕)] 7点(2009-09-17 15:42:41)
162.  デュプリシティ ~スパイは、スパイに嘘をつく~ 《ネタバレ》 
スローモーションでしっかり見せるむさいおっさん2人の取っ組み合いで掴みはOK。おっさんの一方はジアマッティというキャスティングが実はネタバレぎりぎり。それでも騙された。久しぶりに清清しく騙された。途中、時系列の移動と繰り返される同じ台詞に頭が混乱しかけたがクライマックスのドキドキとオーラスのどんでん返しが素晴らしいのでまあいいかと。恋愛というのは得てして相手を疑い、一方で信用し、それでもどこか心配で、でもやっぱり信頼し、という葛藤と駆け引きがぐるんぐるんと回っているもの。主人公二人が騙しのプロってところでこの恋愛につきものの葛藤と駆け引きを人一倍大きく見せてゆく。ここを面白おかしく描きながらも手を抜かずに見せているのが最後に効いてくる。(超ネタバレ→)主人公たちがしてやったりというエンディングではなく、してやられるエンディングなのにどこか清清しいのは、そのせいでもあろう。もちろんそのトリックの、騙した相手を賞賛したいほどの完璧さがあってこその清清しさでもあるが。あと、主演二人が常にクローズアップされた作品の中で、けして目立たない脇役陣が実に良かったってことに最後のネタバレシーンで気付かされる。ここは脚本の妙。
[映画館(字幕)] 7点(2009-08-18 16:16:59)
163.  スラムドッグ$ミリオネア
ダニー・ボイルはデビュー作『シャロウ・グレイブ』から一貫してスタイリッシュな映像の中に風刺を色濃く潜ませてきた。その風刺の矛先はいつも人間のエゴである。娯楽と割り切ったような『28日後...』ですらそこは変わらない。エゴへの風刺がそのまま娯楽へと転化されるストーリーだといいのだが、むりやりにエゴへの風刺を入れた『28日後...』には不満が残る。もっと単純に行こうよと。小難しい風刺劇なんていらんよと。そしてこの作品だが、見るまでもなく物語の背景には「貧困」があり、当然そこには人間のエゴが浮き彫りにされているはずである。そう。ムリヤリ入れる必要がないのだ。そのことで実に活き活きとした作品に仕上がった。ダニー・ボイルのスタイリッシュな映像が少年時代の波乱に富んだ人生をリズミカルに見せてゆくことに貢献する。重くなりそうなシーンの連続もスリリングな逃亡と同化することで重さを軽減する。疾走する列車の屋根に立つ少年をとらえた画がそのバックに映される広大な空とともにものすごく印象に残っている。現代のシーンだけで構成される後半からクライマックスにかけてがやや停滞ぎみだが、最後のダンスで盛り返す。インド映画に欠かせないダンスで締めるのは、世界一映画が多く作られ世界一映画が多く楽しまれるインド映画界に対する敬意の印なんだと思う。
[映画館(字幕)] 7点(2009-07-14 11:28:37)
164.  アメリカン・ビューティー 《ネタバレ》 
始まってしばらくして不穏な空気を感じた。不穏な空気の原因が最初はわからなかったのだが、両端に夫婦、真ん中に娘が座るダイニングテーブルのシンメトリーな構図を見て確信した。異様なほどの画面の美しさとあまりに完璧すぎてかえって不自然な構図こそが私が感じた不穏な空気の正体であった。これはドライヤーの『ガートルード(ゲアトルーズ)』で感じたものと同種のものだ。ただこの作品はその部分をコメディで濁している。なぜ濁すのか。そこが重要だからだろう。物質主義に彩られカタチだけは立派な家庭の内情はドラッグ、ゲイ、DV、リストラ、不倫等々の諸問題を抱えていた。アメリカンビューティという名のバラの美しい花弁がトゲを覆い隠しているように。人にどう思われるかが重要である登場人物たちは肉体改造に勤しみ、新しいマイホームだけに注力し、整形手術を夢見る。隣人はゲイであることを隠し、娘の友人は遊び人を装う。娘はありのままを盗み見られることで本当の自分を見出してゆく。ラストにはそれぞれの皮が剥ぎ取られてゆき、同時にその副作用が容赦なく飛び込んでくる。そこには大団円的心地よさと何かが終わりを告げたときの寂しさが同居する。つまり素晴らしい終焉があった。   
[DVD(字幕)] 7点(2009-07-13 14:34:01)(良:2票)
165.  ハプニング 《ネタバレ》 
ヒッチコックの『鳥』を念頭に置いているとかいないとか。たしかに原因不明のままに人が攻撃されてゆく展開は『鳥』そのものだ(いや、敵の姿を全く見せずにここまで引きつける力は『鳥』をも凌駕している)。そして何よりも初めて画面に登場するズーイー・デシャネルのどこかいってる目はまぎれもなくヒッチコック映画、とくに『鳥』の女だ。ご親切にも「あの顔は妻になれる顔じゃない」とジョン・レグイザモに言われたあとにこのいっちゃってる目をしたズーイーが映される。しかも彼女はどうやら後ろめたい何かを隠している。そんな女は『サイコ』よろしく殺される運命にある。しかしである。どうも浮気だと思ったらティラミス(だったっけ?)を食べただけらしい。そうなると話は変わってくる。レグイザモに「守り抜けないなら触るな」と言い放たれた後に少女の小さな手をしっかりと握るその姿に少なくとも少女は死なないことを確信させる。そしてズーイーもまた少女に向ける優しい目を画面にさらけだすことで彼女の死もないことを確信させる。もともとシャマランがそんなことするはずもないのだがこの確信させてくれるシーンをちゃんと見せてくれるのが嬉しい。何故毒素が発生したのか?何故主人公たちは助かるのか?そんな野暮なことを聞いちゃいけない。それでも聞かれればこう答えるしかない。それが「ハプニング」であり「奇跡」であると。シャマランはこれまでも「奇跡」を描いてきた。奇跡に何故?はない。そして奇跡はハプニングなのだ。もしかしたら「奇跡」「ハプニング」は神の啓示かもしれないと他の作品では示唆していた。毒素発生も救済も、そして夫婦の危機も円満もまた「奇跡」であり「ハプニング」なのだ。シャマランにとってのみならず映画はこの「奇跡」と「ハプニング」で成り立つ。映画は何が起こっているかを描くものであってその意味を描くものではない。昨今、こんなにも映画に素直に向き合った作品もそうはない。この作品が酷評されることのほうが私には「何故?」である。
[映画館(字幕)] 7点(2009-05-01 14:13:23)(良:3票)
166.  ゾディアック(2007)
未解決の連続殺人事件を描いた韓国映画『殺人の追憶』が時代の闇を描いていたように『ゾディアック』もまた60年代後半から始まる(ベトナム戦争真っ只中からキング牧師とJFK暗殺から始まる)アメリカ史の闇が描かれていたのかもしれない。フィンチャーが『ベンジャミン・バトン』を撮ったことでそれは確信めいたものに変わる。物語のメインはゾディアック事件に翻弄される男たち。彼らは犯人というより「暗号」に翻弄されていたのかもしれない。そして皆が皆、人生を狂わせてゆく。法と規則から離れた存在の挿絵漫画家が最後まで異常な執着をみせてゆく。「暗号」の謎に。誰かが解かなきゃいけない。そう思い込む心理は、真実が露見しない社会の中で生きる人たちの心理なのかもしれない。しかししかし、フィンチャーは社会派ではなかった。殺しのシーンの怖さは尋常じゃない。ものすごく怖い。これがあるから長尺に耐えれた。これがあるから重さを感じた。フィンチャーがどう考えているのか知らないけれど、これがあるからアメリカの闇という壮大さは消し飛んで小さな犯罪に収束する。つまりフィルム・ノワールなのだ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-04-21 15:04:58)(良:1票)
167.  チャイナタウン 《ネタバレ》 
依頼されたのは浮気調査に過ぎない。だからその奥に大事件が潜んでいようがこの男には興味が無い。ところが浮気調査自体が計画の一片で、自分がある陰謀のコマに使われたに過ぎないことに対する憤慨と元警官ゆえの臭覚と好奇心が男を駆り立てる。話はどんどん大きくなってゆくが映画は社会派へも告発モノへも、あるいは大河ドラマへも行かず上質のノワールに留まり続ける。男は巨額をむさぼる悪を追及する気はない。一人の女を助けたい。その小さな世界でしか思考しない。だから面白い。だから切ない。人間の中にある「悪」とその「悪」がのうのうと存在し続ける理不尽をまざまざと見てきたポランスキーらしい苦い味わいのエンディング。その「悪」(社会悪でありながら人道悪という最悪な悪者)を演じたジョン・ヒューストンが前に出すぎずに憎いまでの存在感を出している。大きな絆創膏で顔の真ん中を隠したニコルソンが滅法カッコイイ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-04-16 16:57:06)
168.  ロング・グッドバイ
舞台は70年代のLA。50年代の原作の世界から20年後のマリファナにまみれたハリウッドがある街に、時代にそぐわないうらぶれたヒーローを放り込む。原作のマーロウからは想像できなかったグールド=マーロウがはまるはまる。そして原作には無い冒頭の猫との掛け合いが素晴らしいのだが、猫がマーロウの飼っている猫としての自然な振る舞いを見せてくれるのも素晴らしいがそれ以上にキャットフードを買いに出る冒頭シーンでグールド=マーロウのうらぶれた感満載の魅力とその後ドラマのつなぎを見事に果たすマーロウの棲家の一風変わった造りと変わった隣人をさりげなく完璧に見せてしまうのがもう上手すぎ。結末の改変はいかにもというか、どこかで見たことあるようなありふれたものでガッカリなんだけど、全体的には複雑なカラクリをよくここまでわかりやすくできたもんだと感心もする。それはさておき、やはりフィリップ・マーロウを(製作当時の)今の時代に蘇らせてしまうアルトマンは並みの監督じゃない。単に今の時代を背景にするだけじゃなく、ちゃんと今の時代を描いている。傑作。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2009-04-14 14:15:17)
169.  サブウェイ・パニック
列車と管制室を切り返しながら見せてゆくシンプルな構成。犯人のバックボーンや地下鉄幹部と警察のエゴをくどくどと語らないシンプルなシナリオ。シンプル・イズ・ベスト。(今年公開予定のリメイク作も楽しみだ。)緊張感が足りない!というのはたしかにそうで、リアルさを求めるときついかもしれない。しかし例えばコロンボや古畑の現実味の無いキャラを楽しめるならこれだって楽しめるはず。最後のマッソーの表情はまさにこの世界観を象徴しています。下手(シタテ)に出ながら堂々と去って行った国鉄職員たちはこの翌年に新幹線ひかり109号に爆弾を仕掛けられることをまだ知らない(『新幹線大爆破』は1975年公開)。
[DVD(字幕)] 7点(2009-04-02 14:32:34)(良:2票)
170.  ダージリン急行 《ネタバレ》 
冒頭のカーアクションがかっこいい!その車から降りたビル・マーレーが走る列車に飛び乗ろうとする。スローモーションになる。誰かがビル・マーレーを追い越す。・・・あれ?なんとビル・マーレーの出番終了!!(最後にちょこっと出てくるけど)オイオイ(笑)!!でもこのオープニングはサイコー。そしてこの走りゆく列車に乗り込むスローモーションがラストにまた登場するのだが、いやあ、いいなあ、スローモーション。その間はたしかにグダグダしてる。間ってのは最初のスローモーションと最後のスローモーションの間だから、まあ映画のほとんどだ。三兄弟がグダグダしてるだけでなく列車もグダグダだから笑っちゃう。決まったレールを行くはずの列車が迷子になっちゃうという素晴らしいグダグダ。母に会ってどうとか、父の葬儀の回想とか正直どうでもいいというか、もうグダグダしすぎとか思ってたりもするんだけど、むちゃくちゃな展開に行きそうで行かないという不満はあるんだけど、笑かしてくれそうで笑えない消化不良感もあるんだけど、終わってみればロードムービーってやっぱりいいねってなる。
[DVD(字幕)] 7点(2009-03-30 16:05:30)(良:1票)
171.  パンズ・ラビリンス 《ネタバレ》 
スペインが生んだ大傑作『ミツバチのささやき』をロールプレイングゲームにしてみましたって感じの映画。スペイン内戦の傷ではなく、わかりやすく戦争真っ只中を舞台とすることで純粋無垢な少女を現実ではない世界へ導きやすくしている。悪者の継父はこれ以上ないくらいに悪者。まるで悪魔。フランケンシュタインの怪物どころではない。しかしかの大傑作におけるフランケン同様に悪魔のような継父は現実世界の象徴であり、少女が成長するうえで避けられぬ通過儀礼であり、さらにこの作品ではゲームをクリアするためのボスキャラでもあるのだ。ゲームだゲームだと思ってたらゲームクリアがこんなにも悲しくていいのか。クリアしたのだからハッピーエンドのはずなのに。夢の世界へ逃避することをこんなにも残酷に描いた作品はない。この特異な後味を評価したい。どこかで見たことのある幻想の世界(かえるの話はそのまま絵本で見たことある)をダークな味付けで独創的にしてみせたセンスを評価したい。そしてなによりもイバナ・バケロという美しい少女を絶賛したい。
[映画館(字幕)] 7点(2009-02-26 15:48:01)
172.  その土曜日、7時58分
シドニー・ルメットの最高傑作と言ってしまおう。時間を遡ってある時点から別の視点でリスタートする。別の視点で見せることで謎めいた物語を徐々に露にしてゆくというのはよくあるが、これはこれからの展開以上にそれぞれの過去までも露にしてしまう。何故そんなことになってしまうのかだけじゃなく、何故そんなことをするのかが解かってくる。しかも説明なしに。最後には全ての人物の行動や成り行きを何もかも納得させてしまう。完璧なシナリオにまず脱帽。イーサン・ホークのダメ弟が少しイライラさせてくれるのだがこのイライラが頂点に達するまえに時間が逆回転するもんだから、あまり不快感を覚えることもない。むしろこのダメ弟のダメ弟ぶりが、また顔だけが男前ぶりまでもがこの坂道を転がるように落ちてゆく物語に説得力を与えていることが判明したときは脱帽したうえに頭を深々と下げざるを得ない状態となること必至。全くもって天晴れ。そしてこの洗練された語り口。老人の作る映画じゃない。
[映画館(字幕)] 7点(2009-02-03 14:47:32)
173.  アンダーカヴァー(2007) 《ネタバレ》 
ジェームズ・グレイの7年前の前作『裏切り者』(これまた傑作!)と同じ主演コンビをそのまま迎え、ソニー・コルレオーネことジェームズ・カーンをトム・ヘイゲンことロバート・デュバルに『ゴッドファーザー』リレーをしてみせたキャスティングからもうサイコーである。前作よりもずっとずっと怖い世界を舞台としているが、哀愁の赴きや作品全体の重厚感は前作の方がある。今回はむしろドラマをテンポよく見せてゆく軽快さがいい。少々強引であろうが早急であろうが関係なく進めてゆく。描かれるのは『リトル・オデッサ』を含めてグレイの全作品に共通する「家族」の絆。ここはしっかり描く。グレイじゃなかったらエヴァ・メンデスという美女を危険にさらしてドラマを盛り上げただろう。あるいは冷酷無比を見せただろう。しかしそれをしちゃうと軽快感が損なわれ、家族のような仲間よりも家族を選んだ主人公のドラマの濃さが損なわれてしまう。ロシアン・マフィアの冷酷さもクラブのオーナー家族との和気あいあいも全て「家族」の絆を描く道具立てにすぎないのだ。それでいて全てのシーンがかっこよくて怖い。とりわけ雨のカーチェイスシーン。というより雨に光る銃身。いやはや、この監督、もうちょっと映画を作る間隔を狭めてもらえないだろうか。
[映画館(字幕)] 7点(2009-02-02 14:21:18)(良:2票)
174.  或る夜の出来事
なんでも映画史上最初のスクリューボールコメディなのだそうだ。なんにしろ最初ってのは凄いことなのだが、それ以上に驚くのはトーキー映画が登場してまだ数年のこのときにこれほどまでにリズミカルな会話を映画の軸にして、尚且つ最大のウリになっているところ。話の筋は今でこそオーソドックスに感じはするが、若い男女のかわいい喧嘩のあとの恋の芽生えという大筋の普遍性もあいまって全く古さを感じさせない。古典というのは永遠に古びないものなのだ。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2008-12-19 14:41:49)
175.  ディア・ハンター
ロシアン・ルーレットはたしかに怖かったけど、鹿狩りシーンの雄大な画のほうがずっと印象に残っている。どれだけ時間とお金をこの芸術的な画のためだけに費やしたのだろう。鹿がヌッと現れるシーンなんて今だったら間違いなくCGなんだろうな。出兵前の鹿狩りの神々しい画から一転、突如現れるのが戦場シーン。動かないカメラが動き、静寂がヘリの爆音に変わる。長尺の作品の中で実に短い戦場シーンは死と隣り合わせのロシアン・ルーレットに凝縮される。帰還後には出兵前のようなバカやってる小さな幸せが無い。数十分前に映されていたはずの鹿狩り前のしつこすぎる置いてけぼりシーンが妙に懐かしく感じる。ボーリングのアホな出来事も懐かしい。長い長いダンスシーンも懐かしい。何かを奪い去り変貌させてしまう戦争の悲劇をビフォー・アフターで見せる。変わらない友情と移民同士の繋がりが取り返しのつかない「変貌」をより鮮明に浮き上がらせる。
[DVD(字幕)] 7点(2008-12-16 15:45:11)
176.  ノーカントリー
お話は実にコーエン兄弟らしいお話であり、実際『ノーカントリー』は『ファーゴ』のTEX-MEX版と言いきってもおかしくない。にもかかわらずコーエン兄弟らしからぬ空気が充満している。ハビエル・バルデム演じる殺し屋を同業のウッディ・ハレルソンが「ユーモアを持たない男」と評する(髪型はユーモアなのだが)が、もちろん『赤ちゃん泥棒』や『バートン・フィンク』に登場する殺人鬼のようなユーモアは皆無であり、それどころかこの作品自体にこれまでのコーエン兄弟の作品に見られたブラックユーモアが無いことに気付かされる。何かをすればするほどにドツボにはまる展開に、そしてごく普通の人が非日常の世界に足を踏み入れてしまう展開にユーモアを見出すことのできたコーエン流はそこにはなく、ジョシュ・ブローリンはひたすらそのドツボと、その非日常と正面から対峙する。追う者と追われる者のあいだにはユーモアの付け入る隙間はなく、真剣そのものの命の削り合いが展開される。ブローリンは野生の勘と軍隊経験を駆使し逃亡し応戦するうちに過去に経験した戦場という非日常を自らの日常へとシフトしてゆく。殺し屋は非日常という殺し屋にとっての日常を最後まで貫くしかなく、それは殺し屋にとっての非日常である交通事故にあっても変わらずに殺し屋にとっての日常を生きるのだ。そう、ここでは『ファーゴ』にあった非日常と日常の衝突は無い。日常で用いられる道徳やルールの効かない非日常が日常以上に日常面している怖い映画なのだ。コーエン兄弟の新たなる門出を支持する。
[映画館(字幕)] 7点(2008-12-15 15:48:27)
177.  キャット・ピープル(1942) 《ネタバレ》 
狼男の女版みたいなもんだが、ホラーというよりサイコサスペンス寄り。女が実は豹に変身するキャット・ピープルなのだということを取っ払っても、一人の女のトラウマを抱えた恋愛悲劇として成立するところに面白さがある。言い伝えられるモンスターというのは案外こういったトラウマや恐怖心から生み出されることが多く、この作品はそれを逆手に取ったようなカタチとなっている。直接的な恐怖シーンが一切無いのはこの時代なら当然の制限に従ったに過ぎないのだろうけど、だからこそ昔の映画の表現にはさまざまな試行錯誤と創意工夫がみてとれるのが面白い。(鑑賞環境は覚えてないけど、たぶんビデオかな)
[ビデオ(字幕)] 7点(2008-10-29 12:56:21)
178.  M★A★S★H/マッシュ 《ネタバレ》 
戦場や軍隊というものに関して戦争映画からの知識しかないが、アメリカ軍ってのは他の国(とくに日本)なんかと違って、わりとくだけたイメージがあって、だからこの作品でのハチャメチャ行為も突拍子も無い行為には見えず、つまりコメディとしてとらえられずに鑑賞していたんだけど、中盤あたりからそのハチャメチャさがどんどん加速していきコメディ色が強くなってくると段々と面白くなってきた。ハチャメチャさが増大するごとに彼らの本業である手術シーンの大真面目ぶりがより強調されてゆく。ここに命を奪い合う場所で命を懸命に救うという矛盾が浮かび上がってくる。この作品はたしかに反戦映画なのだろうが、他の反戦映画のようなストレートさはない。というか、戦争を批判せずに戦争の本質を批判するという高尚(?)な技を使う。ハチャメチャ主人公は最初から最後まで軍の規律を破り続ける。ここは徹底している。勝手に使用できないジープで転任するシーンから始まり、日本での軍の病院では許されない民間人の子供の手術まで。その一方で軍の規律に従順な者を貶めてゆく。軍規を守って戦争に従事することとどんな人間でも片っ端から助けてゆく行為のどちらが人間的か。また軍規を破るというのは軍隊というシステム、あるいはそのシステムを構築した上層に君臨する者を批判するということ。この上層に君臨する者たちが戦争を起こすのだ。まわりくどい反戦映画である。でも本質を突いている。 あと、アメフトの応援をするホットリップ看護婦長に大いに笑ったのだが、彼女は権威の象徴として登場したことで散々な目に遭ったあげくに権威がなんの役にも立たないことを自覚して権威という服を脱ぎ捨てるという、この作品の要とも言える役回りを任されている。
[DVD(字幕)] 7点(2008-10-08 16:06:06)
179.  プラネット・テラー in グラインドハウス
大袈裟に飛び散る血、意味無くセクシー、堂々としたパクリストーリー、低予算B級映画群・グラインドハウスを模した2本立ての1本。なんだけどロドリゲスの映画は元来このグラインドハウス系なのでタランティーノ版ほどのパロディじみた面白さを感じなかったんだけど(1巻紛失は絶妙のタイミング!)、それでもさすがは得意分野だけあってあいかわらずビッチ系キレイなお姉さんがすこぶるセクシー。ローズ・マッゴーワンはこの世界でこそ活きる女優なのだと妙に納得。赤のマッゴーワンに対し、青のマーリー・シェルトンというのは『バイオハザードII』の引用?違うか。とにかくこの二人がサイコー。マシンガンは言わずもがなで、その前の棒切れの足もかなりイケてる。生きてゆくうえで必要のない無駄な取り柄がこの二人によって生き抜くために最も必要な取り柄となってゆくのが爽快。映画が最後に必要とするものは教養や道徳なんかじゃなく、「見た目」なのだ。人生に無駄だと思われたブリッジが、注射器さばきがひたすら美しい。
[映画館(字幕)] 7点(2008-08-12 11:12:15)(良:2票)
180.  デス・プルーフ in グラインドハウス
公開直後からいろんなところで(ここでも)ダラダラと続く会話がうっとうしいみたいなこと言われてたんだけど、どの会話のことか全然分からず、でも言われてみるとたしかに前半のクライマックスまでは会話が多かったんだけど、たぶん私は会話をほとんど聞いていなかったので気にならなかったのだろうと思われる。それほどに60年代あたりの映画のクレジットの出し方や古びたフィルムの模写ぶりなんかをニコニコしながら堪能していたということなんだと思う。そしてグラインドハウスムービーの真骨頂としての無駄にセクシー、過剰にバイオレンスなシーンがわざとらしく配置されるが、そのわざとらしさが巧い。そして計画的に作られたとは到底思えないアホアホなエンディングに度肝を抜かれる。2本立て映画の片割れ『プラネット・テラー』との、というかロドリゲスとの差異を最もわかりやすく見せているのがカーアクションのシーン。元来からCGをうまく映画に取り入れ、デジタルの可能性を念頭に置くロドリゲスに対し、タランティーノは頑なにフィルムの可能性を信じている人。CGにはCGの良さがあるが、生には生の良さがある。「迫力」とかそんなことじゃなく。路面に反応する揺れ、ジャンプしたときのサスペンションの撓み、着地したときの砂埃。生には生の良さがある。本人たちはグラインドハウスムービーを模して遊んでいるだけなのかもしれないが、この映画には間違いなく映画の醍醐味というものがある。
[映画館(字幕)] 7点(2008-08-11 16:15:08)(良:2票)
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