1. ブンミおじさんの森
《ネタバレ》 なんの変哲もない森が夜になると全く違う森になる。ブンミおじさんはその「夜の森」を知っているから何が出てこようと驚かない。猿の精霊だろうが幽霊だろうが。その驚かないリアクションが妙に可笑しい。行方不明の息子が猿になってるんですぜ。まるでコントだ。見てるこっちはその着ぐるみ猿にどう対処すればいいのか。『トロピカル・マラディ』の夜の森に浮かび上がる虎とは大違いのほのぼのとした異世界の人たちが描き出される。我々ですら戸惑うこの世界、輪廻転生の考え方がないキリスト教圏での驚きはもっと凄いのかもしれない。驚きといえば最後の展開。日常という退屈な時間が映され続けたかと思ったら、いきなり非日常の出現。そのまま非日常は現代のタイの日常の中に溶け込んでゆく。異世界が世界の中にあるように、日常の中に神秘がある。感慨深く心地良く、それでいて驚きに満ちた映画であった。 [映画館(字幕)] 7点(2011-04-26 14:47:00)(良:1票) |
2. ファザー、サン
『マザー、サン』と同じ監督が作ったものとは思えない。父と息子のドラマ。しっかりとした物語映画。だけど見終えてみると本当に物語があったのかどうか疑わしく思えたり。けっきょく全体の流れより場面場面が印象に残るというところでは『マザー、サン』と同じなんだ。息子の元カノが綺麗で、ソクーロフは女優も綺麗に撮れる人なんだと確信する。ガラスを隔てることで世界が歪む。そのソクーロフ的な世界からなんとか逃れようとするかのように窓の隙間に顔を寄せる女と男がこれまたソクーロフらしからぬ短いカットで映し出される。舞台はいったいいつのどこなのか。こんなにも映画らしい街並みがあるなんて。屋根からの景色は延々と海。路面電車が走る風景の美しさはムルナウの『サンライズ』をも超えている。もうそれだけでじゅうぶんだ。 [映画館(字幕)] 8点(2010-11-10 13:39:30) |
3. ブラック・ダリア
たしか『ブラック・ダリア』を観ているはずなのだが本当にそうなのだろうかとマジで疑い出したときに、死体発見前のビルをまたぐ長回し登場にデ・パルマの作品であることには間違いなさそうだと胸を撫で下ろす。とは言うものの、惨殺死体の謎は最後に解き明かされはするものの、その過程はほとんど描かれず、画面はひたすらボクサーあがりの二人の刑事の友情と確執を映し出す。そこになんとも謎めいたワケあり風な美しい女が割って入るのだが、この謎めき具合が事件に絡む女たちを差し置いてピカイチ(主人公が下着姿のその女を見てしまうシーンのなんともいえない謎めき具合!)なもんだから、事件の結末のほうに興味がいかないのだ。だいたい事件の真相にしたって相棒の真相にしたって全部手短な説明で済ませちゃうんだもんなあ。階段での影とか落下シーンとかはあきれるくらいに凡庸なのだが、ここはあいかわらずのヒッチマニアぶりに笑ってあげるところだろう。 [DVD(字幕)] 5点(2007-12-17 14:43:23)(良:1票) |
4. ブラックブック
娯楽映画にある軽薄さを隠すことなく、むしろその軽薄さこそが映画に必要なものとでも考えているかのようなヴァーホーヴェンの映画観が吉と出た。隠され装飾され歪められた史実から真実を暴くという大真面目な題材であるにもかかわらず、この手の題材に不可欠だと思っていた「深さ」が無い。隠れ家が爆撃された際の異常な早さの警察および消防車両の到着に代表される物語優先のご都合主義が全編で貫かれる。下手すりゃしらけてしまいかねない。それでもしらけないのはご都合主義の目的がはっきりしているから。重要なのは「戦争」ではなく戦争下で繰り広げられる恋愛サスペンスである。ナチスとレジスタンスの攻防ではなくその攻防に巻き込まれた女の性と情の攻防である。ハリウッド時代とさしてやってることは変わらない。ただ商業至上主義ゆえに見せてきた刺激物に対し、この作品はひたすら物語の面白さを見せようとする。この映画は単純である。6点くらいかなと思いつつ、その単純さの魅力に7点。 [映画館(字幕)] 7点(2007-07-27 13:46:23)(良:1票) |
5. ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月
《ネタバレ》 自らは成長せずにまんまと彼氏をゲットした前作の続編にして前作のパロディ。常に一作目の笑いにリンクした、主人公同様に成長の見られない構成は安易ではあるがわかりやすくて好感が持てた。今回は「ありのまま」を愛してくれる奇特な彼氏に対し、愛してくれるだけではなくそれを行動に示せという、女の子特有のわがままを成就させる。続編らしくちょっと度を越えた展開も見せながら都合の良い現代のシンデレラ・ストーリーをけして主人公の成長というありがちな展開に逃げずに見せきっている。レニーのおデブちゃんぶりも凄い!役のために太るといっても男と女じゃ覚悟が違う。1点上乗せするほどでもないけど前作よりも落ちるとも思わなかった。 [DVD(字幕)] 5点(2006-06-13 13:51:38)(良:1票) |
6. ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ
演奏の合間に挟まれるメンバーの素顔を映し出すカメラが動く動く。その動きは極めて滑らかなんだけど動きすぎ。でも、カメラがある建物の中に入って階段を上りピアノの位置まで寄っていくシーンの流麗な動きにはちょっと感動した。音楽ドキュメンタリーということで「ライブ映像とその舞台裏」が慌しく映し出されたものを想像していましたが、この作品は慌しいどころか非常にのどかな雰囲気で被われている。メンバーたちは皆楽しそう。過酷な時代を語る顔にも悲壮感は無い。どうやったらあんなにも心に響く音楽を奏でられるのだろう。どう生きればあんなにも元気な90歳になれるのだろう。あの年で「英語を勉強したい」には正直たまげた。私はあの老人たち以上に老人のような気がする。その元気の源がキューバにある、と映像が教えてくれる。私は音楽よりもキューバの風景に感動した。キューバに行きたい!! でもメンバーたちはニューヨークに感動してるんだな、これが。 [映画館(字幕)] 7点(2006-01-27 15:40:18) |
7. 豚が飛ぶとき
豚は出てきません。豚って主人公マーティのことなのでしょうか。マーティはセロニアス・モンクが好きなようです(私も好きだ)。モンクのように華麗にプレイする夢を見ながら、じゃあ何をするかといっても何もしない。夢を見るだけ。夢を見るために生きているかのよう。そこに二人の幽霊がひょんなことからマーティと行動を共にしていくのですが、幽霊は当然夢を見ません。マーティのように動けるのに動かないのではなく、動きたくても動くためには助けがいるわけです。そんな対照的な両者の交友がマーティに前を向くことを、つまり飛ぶことを決意させる。表面上の本筋は幽霊リリーの復讐コメディなんでしょうが、その中でマーティが変わってゆく姿が描かれることで、ほのぼのとした優しいファンタジーとなっています。思い返せば内容はベタなんですけどね。この心地よさは監督の手腕によるところなのでしょうか。 [ビデオ(字幕)] 6点(2005-04-06 12:32:04) |
8. 15ミニッツ
メッセージ色の濃い映画かと思ったら、単にマスメディアの悪しき現状をストーリーに盛り込ませただけの娯楽アクションだった。中身は薄いが普通に楽しめた。 5点(2003-08-27 17:48:37) |
9. ファイト・クラブ
自分にとっては久々のヒット!現代社会を痛烈に批判。社会に溶け込めないと安静を得れない現代社会、達成感を感じることの無い無気力な社会、モノでしか満足を得れない物欲社会、傷を舐め合うことでしか癒されない社会がタイラー・ダーデンという反社会的な存在を生み出す。というテーマもストーリーもさる事ながら、やっぱり映像がいい!そしてキャスティングも文句無し!多少の矛盾点も無いことは無いが、十二分に楽しめた。 10点(2003-04-25 16:15:15)(良:2票) |