Menu
 > レビュワー
 > R&A さんの口コミ一覧。2ページ目
R&Aさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2162
性別 男性
年齢 57歳
自己紹介 実は自分のPC無いので仕事先でこっそりレビューしてます

評価:8点以上は特別な映画で
全て10点付けてもいいくらい
映画を観て損をしたと思ったことはないので
酷評しているものもそれなりに楽しんで観たものです


  *****

●今週のレビュー
   「」

   
     










    


  










  


 












表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作国 : ドイツ 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順1234567
投稿日付順1234567
変更日付順1234567
>> カレンダー表示
>> 通常表示
21.  イングロリアス・バスターズ 《ネタバレ》 
相変わらずというか、なんという選曲のセンス!『アラモ』で始まるオープニングに早速高揚してしまう。続いて『復讐のガンマン』の「エリーゼのために」を用いたモリコーネの旋律が流れるシーンにいきなりノックアウト。なんて美しい三姉妹。この美しさでこの家の主の過酷な判断を観客は許容する。そしてこのナチスの大佐のいやらしさよ!「復讐劇」の幕開け。イングロリアス・バスターズがいよいよ登場だ。しかし「復讐劇」とバスターズの話は一向に交わらず、終焉間際でようやく二つのストーリーが結びつくようにみえて実は絶妙な距離を残しながら交錯するだけなのだ。『パルプ・フィクション』のように。しかも主ストーリーはバスターズではなかった。ああブラピよ。この扱い。まるで『ジャッキー・ブラウン』のデ・ニーロではないか。しかしなぜかはまる。ブラピもデ・ニーロも可笑しいほどにはまってる。地下酒場の「正体当てゲーム」。ここでこのゲームかよ!そしてダラダラと、そして緊張感漲る会話が続く。正体がこの会話からばれると思わせて・・・。面白いなあ。音楽でいうと忘れてはいけないのがデヴィッド・ボウイの「キャット・ピープル」。めちゃくちゃ素晴らしい。ゴダール『カルメンという名の女』でトム・ウェイツがかかった瞬間を思い出した。選曲に関しては同等のインパクトを持っているがタランティーノはさらにここに「色」と「印」を使ってより印象的なシーンにしている。今後、ボウイの「キャット・ピープル」は赤いマフラーを巻いたナスターシャ・キンスキーではなく赤いドレスを着たメラニー・ロランを思い出させるであろう。窓の外のハーケンクロイツと共に。頬に塗るファンデーションがまたあからさまにインディアンを彷彿させてるんだけど(バスターズの皮剥ぎと共に)、かっこいいんだ、これが。そして映画は世界が成し得なかった「大復讐」をやってみせる。さすがは映画だ。映画バンザイ。天晴れタランティーノ。
[映画館(字幕)] 8点(2009-12-18 16:48:34)(良:2票)
22.  ワルキューレ
これは暗殺計画というよりもクーデター計画であって、殺すことが目的ではなく殺した後に政府を掌握することが目的なのだ。つまり単純な「殺し」ではなく「殺し」も含めた複雑な「謀(はかりごと)」なのだ。映画は断然単純なものを描く方が面白い。それでもブライアン・シンガーはこの「謀」を面白く見せようと奮闘する。反ヒトラー派といってもその思想や思惑は人それぞれであって、当然そこには確執やら葛藤やらというドラマがあって、政治的なあれこれも絡んでくるはずなのだが、そこんところはあんまり描かない。極力、シンプルに。極力、事象だけを見せようとする。結果、面白かった。でも物足りなさもある。ドキドキはいっぱいあった。計画はうまくいくのだろうか。などと思ってドキドキするわけではない。計画がうまくいかなかったことで何が起こるのかでドキドキするのだ。じゃあ何が物足りないのか。おそらく「謀」を面白く見せることとドキドキさせることに関して完璧に過ぎるのだ。怒りとか恐怖とか執念とか、そういった人間的な感情が希薄、、いや違う、そんなもんいらんか、もっと、この映画に不似合いないかがわしいものでこの完璧さにひびを入れて欲しい。って思うのは変か?
[映画館(字幕)] 6点(2009-12-17 16:40:14)
23.  トロピック・サンダー/史上最低の作戦 《ネタバレ》 
人気ラッパーの名前がアルパ・チーノってのが元ネタの人の昨今の大袈裟な台詞回しを揶揄しているのかどうかは知らないが、きわどいなと。映画はまずこのラッパー出演の清涼飲料水のCM、そしてユニバーサル配給のいかにもハリウッドアクション大作のシリーズ新作のCM、それからこちらはニューラインシネマで、特殊メイクを駆使して一人で何役もこなすというどこかで見たことあるようなコメディ映画のこれもシリーズ新作のCM、最後はフォックスで問題作であることをウリにした真面目を装った映画のCMが流れる。要するにこの4本のCMに登場する個性豊かな4人が一つの作品を作り上げてゆくということになるのだが、この4人という数に問題がある。多すぎる。実際映画はほぼ2人に絞って見せてゆくのだが冒頭の対等さからすれば編集の段階で切られたんじゃなかろうか。ここまで切るんなら、あるいはそもそもそこまでの役ならば少なくともジャック・ブラックはいらんでしょ。一方ちょい役ながらトム・クルーズの存在感は際立っていた。むちゃくちゃ楽しそうに見えるし。エンディングなんて独壇場にしちゃってるし。てかエンディングを独壇場としてあけわたしたベン・スティラーもいいセンスしてる。
[DVD(字幕)] 6点(2009-12-11 15:30:14)
24.  コーチ・カーター 《ネタバレ》 
弱小不良チームが新コーチの鬼の特訓で強くなってゆく映画。ではなかった。バスケで勝ったからといってもそのときだけ。刑務所に行きたくなければ大学に行けるように勉強しろ。という映画だった。かいつまみすぎだけど。映画の中の学生の親や常勝ムードで盛り上がる地域住民がこの急転に意表をつかれたように、見ているこちらも突如現れる社会派色に意表をつかれる。しかしあまりに簡単に強くなってゆく展開の後だけに心地の良い急転として迎え入れることができる。一気に脇に追いやられるバスケではあるが、映画を盛り上げるうえでも重要な試合のシーンがそれなりの盛り上がりをちゃんと作ってはいる。ただ迫力だけを見せるのではなくゲームの流れを見せているこの試合シーンはなかなかの高評を得ているらしい。でも実は個人的に不満。バスケは点が始終入ってゆくので全体の流れももちろん映さなきゃならないけど、漠然とでもルールがわかりやすくもあるので全体の流れだけに拘る必要もなく、むしろバスケの醍醐味として体力の消耗してゆく様や息の合ったチームプレイや個人テクニックこそをアップやスローモーションを使いながら見せて欲しいとか思っちゃうのだが、そう思ってしまうのは私がバスケをしていたからというよりは漫画「SLAM DUNK 」の影響かもしれない。細かいカットの連続で迫力だけ出しましたみたいなのは論外だけど、ゲームの流れを見せているあいだずっとかかりっぱなしの音楽で高揚を得ているというのもどうかと。
[DVD(字幕)] 5点(2009-11-19 15:16:51)(良:1票)
25.  ザ・バンク -堕ちた巨像-
冒頭の雨のベルリンがいい。何かによって成された何がしかが実にシリアス且つ分りやすく描かれる。何かが巨悪であることもこの冒頭シーンだけでじゅうぶん伝わる。全てを監視していたはずの主人公には見えていなかったという所がスリリングでまたその後の展開に活きてくる。もうけして何も見落とさぬとでも言いたげなクライヴ・オーウェンのぎらついた瞳はターゲットをひたすら凝視する。ニューヨークでの尾行シーンに特に顕著なのだが最後のイスタンブールの尾行もまたいい。中身は大真面目に社会派なのだが映し出されるのはアクション。ここは好みの分かれるところだろうけど、個人的にはアクションの部分がきっちりと撮られていたことに大満足。美術館シーンはサービスアクションとでもいいましょうか。お祭りっす。でも単に派手なだけでなく、やっぱりきっちり撮っている。この銃撃戦の目玉である建物構造をきちんとおさえながらアップショットとの繋ぎをアクションを停滞させずに見せきっている。良かったです。面白かったです。
[映画館(字幕)] 7点(2009-11-10 16:10:58)
26.  ウォンテッド(2008)
劇場予告編のバカバカしいまでのかっこよさに絶対見に行こうと思ってたんだけど、結局都合がつかず見そびれてしまった。でDVD鑑賞となってしまったのだが、うむむむ。前半は期待通りのバカかっこいいシーンの連続にしびれたし、マンガチックなクールビューティが似合いすぎのアンジェリーナ・ジョリーもそのバカかっこいいシーンにはまりまくり。巻きこまれながら成長してゆく主人公という王道のパターンもいい。ところがお話は単純なままでは終わらない。けして複雑ではないがちょっとした捻りがあってストーリーとしても楽しめるようにしてくれてはいるんだけど、そこが余計なお世話。ストーリーは単純でいい。とは言ってもストーリーに一捻りがないと現代の観客は許してくれない。主人公が一人前になってバカかっこいい仕事人となって大活躍する、、、だけじゃダメなのだ。しかもどうやら結果としては捻りがまだまだ少ないということでの低評価っぽい。うむむむ。娯楽作ってのは難しい。
[DVD(字幕)] 5点(2009-10-07 14:04:12)(良:2票)
27.  エイリアンVSヴァネッサ・パラディ 《ネタバレ》 
楽しめてしまった。アメリカ南西部の片田舎っぽい場所にフランス語というギャップがまず興味をひく。主人公の男のいきなりの懲役133年というあり得ない刑罰も、コメディとして消化されない妙な信憑性を持っているから厄介だ。湖面に映る浮遊するエイリアンを一瞬だけ見せるというのがまたうまいから困っちゃう。けっこう丁寧なのだ。いや、かなり丁寧だ。なのになぜ犬はどこから見てもぬいぐるみなのだ。かと思うと田舎町のおじいちゃんがなんの脈絡もなくいきなりエイリアンがやって来るのをずっと待っていたのだと宇宙服を着込む。それでもエイリアンと共に飛んでる手裏剣みたいなのがスパンスパンと首チョンパしまくるパニックシーンは迫力ありスピード感ありと文句なし。プロデューサーがなんで真っ黒なケムール人みたいになっちゃうのかよくわからんがそろそろクライマックスだなと思ったらいきなりパラディ嬢がお空に吸い込まれちゃう。お!ここでスタントマンという設定が活きてくるのか!と主人公がバイクでジャンプ!で、その後・・・・なんですか?この妙に哲学的ともとれるわけわからん世界は。置いてきぼりのまま終わる。でもなぜか怒りはない。結局のところ、永遠のロリータ・ヴァネッサ・パラディのプロモーションだったのだろうか。たしかにジョニー・デップとの間に子供を二人もこしらえたとは思えない可愛らしい容姿にはプロモーションの価値はあるかもしれないが。
[DVD(字幕)] 5点(2009-08-26 13:49:42)
28.  エイリアンVS. プレデター
『エイリアン』『プレデター』という作品とは全く関係なくキャラクターだけを借りてきた、いかにもな「企画モノ」なのだが、ちゃんと「企画モノ」の責務は全うしている。エイリアンとプレデターを引っ張り出してきた時点で成功と言ってもいいくらいなのだが、その商品価値の優位に溺れずに、元来持っているキャラクターの魅力を損なわずにちゃんと見せている。プレデターにいたっては魅力を倍増させている感すらする。ポール・W・S・アンダーソンはきっと両キャラクターを好きなのだと思う。好きこそものの上手なれ。辻褄を合わせたエイリアンとプレデターの歴史背景もその説明にくどくど時間を費やさない。見所はアクションと心得ている。とは言うものの「企画モノ」につきものの安っぽさはどうしたって拭えない。それは最初から分かりきった事。サスペンスやホラーなんて期待しちゃいけない。そこを割り切って見ればそこそこ楽しめる。作り手も割り切っている。これは「企画モノ」なのだと。
[DVD(字幕)] 5点(2009-08-24 18:50:24)
29.  ウィッカーマン(2006) 《ネタバレ》 
謎が少しずつ解明されてゆくという面白さは無い。全く解明されずに最後まで進む。いらいらする。よほどの結末でなきゃ承知しないぞ。で、いよいよ最後。いったいどんな結末がドーンと来るのか。まさかそれはないよね。それだけはないよねっていう結末がドーンときた。んな無茶な。孤島のオカルトチックな儀式にその儀式のための計画の壮大且つ緻密さが全くそぐわないというのもあるが、結局この話は主人公のピンチも希望も横道にそれるのも伏線めいたものも全て計画どおりだったってところに面白みがないのだ。73年版がえらく評価高いのが気にかかる。見てみたい。
[DVD(字幕)] 3点(2009-08-10 18:21:19)
30.  クジラの島の少女 《ネタバレ》 
何人かの方が触れられていますが、私も『風の谷のナウシカ』を想起しました。伝説の再現という現象もさることながら画的にもそっくり。・・・伝統を守り続けるということは伝統を継承するということであり、伝統とは生活、習慣、行事、全てに伝統はあるわけで、族長は男でなければならないというのはその一部にすぎない。それでもそこに拘る族長はえらく保守的とも思えるが、必要以上に保守的にさせているのが欧米生活の急激な進出とその合理性が持つ力への警戒心なのだろう。男尊女卑的にも見える慣わしではあるが族長自身の孫にあたる主人公の少女に対する愛情の深さはそんじょそこらのおじいちゃんには負けない。この二人の関係が目立たず、しかししっかりと描かれているから少女がおじいちゃんの意思を継ぎたいと思い、無理を承知で懸命に族長を目指す展開に信憑性を持たせている。同時に作品の持つ小難しいメッセージ性よりも癒し系の色合いを濃くしていて好感が持てる。クライマックスのいわゆるナウシカなファンタジーは先進文明下では起こりえない現象としてアリだと思うし、美しい画づらともども感動的でもあったのだが、その後が駆け足にすぎる。ラストの画が映るまでに病院シーンのしんみりした余韻をもう少し味わいたかった。
[DVD(字幕)] 6点(2009-07-17 17:27:44)
31.  ボビーZ
主人公カーニーは極度の悪運のせいで塀の中の人なんだけど、優しくて頭も良くて男前、そのうえ度胸もあってすこぶる強い。んなやつおらんやろ~~。まあいいとしてとにかく強い。格闘のプロ。いつからやねん。フツウっぽいのがそこそこ頑張ってるならいいのだが、ここまでめちゃくちゃに強いならその強さの元を悪運の回想録の中に入れといてほしい。それぞれの思惑を持つ追う者たちの交錯がなかなかに面白いので、追われる者、つまり主人公と子供のコンビにもっと珍道中的なユーモアがあったらもっといいものになったかも。それはさておき、オープニングとエンディングのおっさん、誰やねん。いらんやろ。
[DVD(字幕)] 5点(2009-06-05 12:51:59)
32.  モンスター(2003)
彼女がなぜモンスターになったのか。その根源はあきらかに幼少期にあることを映画は説明する。たしかにモンスターになるざるを得ないような悲惨な過去が語られる。さらに他に道はなかったのだと言う様に彼女の心理を丁寧に映し出してゆく。しかし殺すことに慣れてしまった、つまりモンスターになってしまったこの女がしてきたことはけして許されないことなのだと、殺された男の善良性を物語る一枚の写真を映し出すことで告発する。わざとらしいくらいにバランスをとっている。バランスをとることで観る者に問題提示をしているようでもあるが、いきつく答えも限られるように誘導している。殺人鬼の狂気を描いたわけでなく、殺人鬼を生み出す世界の狂気を描いたわけでもなく、真面目に連続殺人を犯した女の心理を描いているだけの映画なので基本面白くない。しかもその「真面目」が真面目なフリをしているふうにしか伝わってこない。題材が題材なだけに期待が大きかったせいなのかもしれんが。その中で図らずもモンスター誕生の一因となる女を演じたクリスティーナ・リッチの母性をくすぐるルックスと同居するいかがわしさはこの映画の中でずば抜けて光っていた。
[DVD(字幕)] 4点(2009-04-23 14:28:35)
33.  レンブラントの夜警
富と名声を得た巨匠レンブラントが突然破産へと追いやられる。なぜ?その原因は世界三大名画の一つ「夜警」にある。というグリーナウェイの仮説。「最後の晩餐 」に秘められたダ・ヴィンチ・コードならぬ「夜警」に秘められたレンブラント・コード。こういうの好き。グリーナウェイの映画は苦手な人もけっこう多いと思うが私もその一人で、生と死を独特のエログロで表現したその見た目がどうも受け付けがたかったのだが、これは大丈夫。体が警戒態勢を布いていたってのもあるんだろうけど。あと、グリーナウェイの映画ってシンメトリーな構図も相まってどこか絵画的な印象を受けるが、本作は描かれるものがものだけにその絵画的なるものがことさらに印象深かった。レンブラントといえば映画の世界では「レンブラント照明」というのがあって、有名なところだと『ゴッドファーザー』のビトー(マーロン・ブランド)の真っ黒な背景に浮かぶ顔、そして目を影で隠してしまうあの照明。これがこの作品でもふんだんに使われていて単に舞台劇っぽいだけに終わらないレンブラントの絵画との融合的空間を作り出しているように感じた。ただの伝記でもなく創作されたミステリー伝記ってだけでもなく、ゴダールの『パッション』の作中の監督じゃないけど、映画と絵画の間にあると勝手に思い込んでるものを取っ払ってしまったようなものを目指してるんじゃないだろうか。
[映画館(字幕)] 7点(2009-04-08 15:27:03)(良:1票)
34.  善き人のためのソナタ 《ネタバレ》 
レーニンがベートーヴェンの「熱情ソナタ」に対し「これを聴くと革命が達成できない。この曲を本気で聴いた者は悪人になれない」と言ったというエピソードが紹介される。芸術家を監視する、国家に従属する男の心の変化の伏線となっている。冒頭の尋問シーンや講義シーンからもわかるように主人公はそんじょそこらのことで動揺するようなタイプではない。だから監視される男女の思いやりや苦悩を見たからといって国家に背くはずなどあり得ない。やっぱりそこには真の芸術家が奏でる「善き人のためのソナタ」を聴いてしまったがための変化ととらえていいのではないだろうか。本物の芸術に触れた者はその芸術を守ろうとする。あるいは本物の芸術に触れた者はその芸術を葬り去ろうとする者が許せない。芸術を理解する者としない者に線を引き理解する者の側に近寄ってゆく。しかしここで大きな不満がある。監視者は「善き人のためのソナタ」で涙を流すが監視者を監視する我々には響いてこない。ここはオリジナルもいいが既存のクラッシック曲でも良かったかもしれない。そして何よりも重要なのはその曲をまるごと聴かせることだ。『トウキョウソナタ』のように。『夜顔』のように。我々が本物の芸術を感じないことにはどうにもならないと思うのだが。
[DVD(字幕)] 6点(2009-03-25 13:34:19)(良:2票)
35.  ヒトラーの贋札
自分さえよければいい。そんな主人公が強制収容所内の工場でリーダーをまかされて以降、徐々に仲間をかばう態度を見せてゆく。そしてユダヤ人としての最大の敵であるナチスへの協力と抵抗のバランスをとってゆく役割を担い、またその狭間での葛藤を描いてゆく。原作者でもあるブルガーが断固「抵抗」を支持する役回りになっているのが原作どおりなのか、主人公を完全な協力者から目を覚まさせる役を担わすためなのか、はたまた「正義」と「命」を天秤にかけるというストーリーの「核」をはっきりさせるためなのかよくわからないが、この人ひとりだけがちょいと浮いた存在になってしまっているのがどうなんだろうと。そして全体にほどよい緊張があるのはいいが、ここぞという場面での緊張に乏しい。例えば仲間が銃殺されようかという場面や贋札が銀行でクリアされる場面ではもっとドキドキさせてくれないと。あえて淡々とした演出なのかもしれないが、ストーリー上でも盛り上がるべくものとしてそのシーンを挿入しているはずだ。結果、生真面目な告発的なものと娯楽としてのサスペンスが共に弱くなってしまってるように感じる。
[DVD(字幕)] 5点(2009-03-24 15:02:19)(良:1票)
36.  TOKYO!
■「インテリア・デザイン」 ものすごく長く感じた。いきなり飛び込んできた雨の東京はどこかウルトラQ的SF世界観をかもしていてよかったのだが、話がなかなか前に進まず、徐々にイライラしてきたのだが、唐突に穴が開き、足が棒になり、服がはがされていく展開に目が点になり、このいわゆるクライマックスのスピード感はそうとうに良かった。ただ、その後のエピローグ的なところもちょいと長ったらしい。 ■「メルド」 待ちに待ちに待ちに待ったカラックスが9年ぶりに帰ってきた。この9年間、どうやら地下にもぐっていたらしい。これまでのカラックス映画の登場人物の成れの果てのような片目をつぶした怪物となって東京に出現する。ゴジラっぽい音楽に乗って。疾走する姿を横から撮り続けたカラックスが今度は真正面から画面に向かって闊歩する姿をとらえ続ける。それだけで感動。手榴弾は紛れもない復活ののろしととっていいんじゃない?半ばギャグとして登場する通訳シーンもカラックスにやられると映画の吹き替えや字幕が真に正しいかどうかはわからないよと言われているみたいだ。 ■「シェイキング東京」 ストーリーもオチもテーマも無難。外国人監督が日本を描くうえでの魅力的なズレも無ければ、日本人キャストを使ううえでのミスキャストも無い。全てが無難。その中で人っ子一人いない東京の景観だけが今まで見たこともない景色として出色。あと、蒼井優のアップはつい見とれてしまった。 ◆<総評> はっきり言ってカラックスを見に行った。他はどうでもいいと思ってたのでかえって他の二作もわりと楽しめたかも。でもゴンドリーもジュノも「東京」を描くにあたって「孤独」「引きこもり」といった都会が抱える社会問題をテーマに持ってきているのに対して、そんなテーマ映画を笑い飛ばすかのような自由さでもって、それでいて映画と真剣に向き合ったカラックスの作品は他を圧倒している。点数は難しいけど3人の監督による3作品という濃厚なオムニバスという点がかなり好感が持てるってことで7点で。 
[映画館(字幕)] 7点(2009-01-26 14:47:20)
37.  Vフォー・ヴェンデッタ 《ネタバレ》 
ここの評価の高さに驚いている。というか戸惑っている。思ってたのと違ったってのも災いしてるかとも思うんだけど、何が良いのかさっぱり分からない。ナタリー・ポートマンのロリータファッション&パンチラだろうか。それとも中田英寿をモデルにしただろうセンスある仮面だろうか。他に思い当たらない。Vさんは一貫して自分を酷い目にあわせた人物を一人一人殺してゆくので本人も言ってる通り「復讐」をしているに過ぎないのにたまたまその復讐するべき相手の一人が国家のトップだからって「革命」になるのか?もちろんコヤツはとんでもない悪党なわけだが、このとんでもないことが映画内であきらかにされるから「革命」っぽく見えるだけに過ぎないのだ。個人的にはこういう小難しい「革命」でもって復讐とかテロを容認したり言い訳するんじゃなく、堂々と復讐を見せてくれたほうが断然いい。原作ありきで仕方ないのかもしれないけど。どのみち、この映画とは最初の取っ付きが悪かった。こういうのを不幸な出会いと言うのだろう。
[DVD(字幕)] 3点(2008-12-08 17:12:12)(良:1票)
38.  イーグル・アイ
シャイア・ラブーフは、いかにも厄介な事件に巻き込まれそうな顔をしている。同じ顔の兄がエリートだというのが想像しにくいくらいに。その困惑の表情が実に冴える。正体不明の何者かからの指示に従う男女の行動をその正体不明の何者かが援護してゆくという展開がまず繰り広げられる。D・J・カルーソー監督が以前に携わった『ニック・オブ・タイム』のようにタイムリミットを課しながら、同じくラブーフ主演、スピルバーグ製作総指揮の『トランスフォーマー』のように命を吹き込まれたかのような重機を使い、はたまた『ダイハード4.0』や『ミニミニ大作戦』(リメイク版)のように信号を自在に操りながら。スピード感はあるが反面、アクション(とくにカーアクション)はひどい。最近の流行らしい何かと何かがぶつかったり爆発したりするどアップの画面の短いカットの応酬の間に信号機やら重機が映し出されるのだが、その両者(何者かの操作とそのせいで起きる混乱)の因果関係を画面で見せずに想像で納得してもらうようなふざけたモンタージュに辟易。面白いのはどこにいようが監視されているという絶体絶命感。誰かの携帯電話、電光掲示板、カーナビを通して指示される展開にあり、そこに電車を止めたりドアにロックしたり、あらゆる機器を瞬時に使えるってのが面白さに拍車をかける。要するに面白いシチュエーションを見せてくれるが盛り上がるはずのアクションシーンで盛り上がれない作品。手垢のついた題材をもってアクションで盛り上がらなければキツイものがある。
[映画館(字幕)] 4点(2008-11-10 15:34:59)
39.  サラエボの花 《ネタバレ》 
父親がいない家庭を描くことで戦争の傷を描くのかと思って観ていると、父親が殉教者(戦死者)であれば証明書がもらえ、修学旅行の料金を一部免除されるという話になり、殉教者という響きに宗教が絡んだ根の深い戦争だったことを想像させ、その後のドラマもまた宗教がらみの複雑な困難が描かれるのかと勝手に想像していると、いやいやもっともっと悲惨な事実が待っていた。サラエボの女性監督の切実なる想いが映画にこめられ、その悲惨な事実が痛々しく現実味を帯びてゆく。女たちは戦闘には参加しなかったのかもしれないが、まちがいなく戦争を体験してきたのだ。爆撃も暴力も一切映されず、それでもしっかりと戦争の悲劇は描かれる。母親の心の機敏は男の胸毛に気分を悪くしたり、薬を常用していたりといったシーン、あるいは親切にしてくれる男に対しての恐れやときめきといった細やかな表情や態度の変化など、丁寧(すぎるぐらい)に描かれてゆく。その一方で娘のほうの心の機敏は母親のそれと比べると型どうりにしか描かれていない。娘の苦悩はどこの家庭にもある母親との意思疎通とか誤解とか年頃の女の子の反抗期のそれとなんら変わりなく、戦争の傷跡へと直結するのは最後の髪を刈り上げるところのみとなっている。少年との恋愛がなぜ描かれたのかわからん。拳銃がなぜ出てきたのかわからん。母が抱える傷が主題なのだろうが、この母よりも存在感の際立つ娘をこそ繊細に描いてほしかった。
[DVD(字幕)] 5点(2008-10-02 17:08:16)
40.  バイオハザードIII
お話自体はよく出来てると思うし面白いとも思うんだけど、もっとなんとかならんかったのか。まず主人公以外のキャラがけっこうおいしそうな役を持って登場するんだけど、全然薄い。薄いままに消えてゆく。アリス以外の名前なんて無いに等しい。前作で見せた「廃墟と化した街」ってのはすごく絵になるなあと思ってたんだけど、砂漠と化したラスベガスってのは確かにラスベガスは砂漠の上に造った街だったと再認識するだけで全然絵にならん。ルクソールのスフィンクスやパリスのエッフェル塔がポツンとあるだけでラスベガスってのもなんだかショボイ。お揃いの衣装を着た凶暴ゾンビ軍団(どうやって着せた?)は笑ったけど、そこで見せる怒涛のアクションが全然盛り上がらん。なんというか、、もっと弾けてほしい。
[DVD(字幕)] 3点(2008-09-03 12:13:34)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS