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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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21.  オープン・ウォーター2 《ネタバレ》 
 しっかりと作られた娯楽映画ですね。   前作に比べると、死の恐怖や絶望感などは薄れているかも知れませんが、その代わり展開に起伏があるし、無事に船に上がる事が出来たシーンではカタルシスを味わえるしで、自分としては、本作の方が好み。  最後ちょっとボカす感じになっているのが気になりますが、一応ヒロインも元彼氏のダンも生還し、ハッピーエンドに近い形なのも良かったと思います。   難点を挙げるとすれば、登場人物の言動にツッコミ所が多く(おいおい、何でそんな事を……)と戸惑う場面が存在する事ですね。  特に、携帯電話を投げ捨てる件なんかは衝撃的で(いやいや、流石に無理あるだろ)と思っちゃいました。  極限状況で頭が回らなかったんでしょうけど、あそこは、もう少し何とかして欲しかったかも。   逆に、良い意味で印象深いのは、梯子を下ろさぬまま海に飛び込む場面。  思わせぶりにスローモーションになっていて「あぁ、やっちゃった……」感が、ひしひしと伝わって来るんです。  あそこで飛び込みさえしなければ、何事も無く楽しい船旅で終わっていたはずだし、何ともやり切れない。   イルカの浮袋や、風に靡く旗、水着を結んで作ったロープなど、様々なアイテムを駆使して、色んな脱出法を次から次に試してくれるのも面白かったですね。  中には(おぉ、その手があったか……)と驚くものもあり、そのアイディアの豊富さには、素直に感心。  自分としては(船体に隙間があるんだから、そこにナイフを突き刺し、誰かが支えて足場にすれば良いのでは?)と思っていたもので、解決策がそれに近い形だったのも嬉しかったです。   もう一つ、本作の巧い点は「赤ん坊が船内に取り残されている」という状況設定にしている事。  「馬鹿な事をしてしまった若者達が、何とか助かろうと足掻く話」で終わらせず「我が子を救おうとする母親の話」という側面も備えている為、自然とヒロインを応援出来るんですよね。  過去の水難事故や、トラウマの克服などもドラマ性を高める効果があるし、何よりもそれによって「ヒロインだけが救命胴衣を装備している」という状況を作り出し、グループの中でもヒロインの判別を容易にして、感情移入させやすくしている辺りも、お見事でした。   仲間割れにより死傷者も出してしまったけど、最終的には、やはり「大切な友達同士」であったと感じさせる終盤の展開も、良かったですね。  「このまま死ぬのを待つなんて嫌。岸を目指して泳いでみる」と言い出し、ヒロインとハグをして別れたローレンの件なんかは、中々感動的。  欲を言えば、ラストで現れた漁船の中に、彼女の姿もあって欲しかったものです。
[DVD(吹替)] 6点(2017-08-16 07:08:46)(良:1票)
22.  ブルークラッシュ 《ネタバレ》 
 この監督さんは、海を美しく撮るのが上手いなぁ……と、改めて実感。   海と、水着美女、爽快感のあるサーフィンの映像。  それらが画面に映っているだけでも満足しそうになるのですが、内容については、正直疑問符が付く代物でしたね。  同監督作の「イントゥ ザ ブルー」は結構楽しめたのに、本作を微妙に感じたのは何故だろうと、自分でも不思議。   理由を分析してみるに、主人公が女性である事が大きかったように思えますね。  ある日突然、理想の王子様が現れてくれる。  でも、それに溺れる事は無く、スポーツの分野でも成功してみせて、仲の良い女友達が沢山いて、陰口を叩くセレブ女には強気に対応してみせてと、如何にも女性が憧れそうな人物像。  それだけに、ちょっと距離を感じてしまったというか(あぁ、女性が観たらこのシーンは痛快かも知れないな)なんて思いながら、他人事気分で観賞する形になった気がします。   主人公がNFLの選手達にサーフィン指導を行うという形で「初めてサーフィンに挑戦した時の喜び」を劇中で描いている辺りは、凄く良かったのですけどね。  こういう初心者に配慮した作りって、とてもありがたい。  ……ただ、それなら劇中の大会ルールについても「彼氏に質問させて、主人公に簡潔に答えさせる」という形で、観客に教えてくれても良かったんじゃないかと思えるのですが、これは我儘というものでしょうか。   後は、主人公が大して努力しているようには見えなかった辺りも難点。  冒頭にてトレーニングしているし「これまでアンタがどれほど努力してきたか」という台詞もあるんだけど、映画を観る限りでは「男とイチャついてばかりで、殆ど練習していなかった」としか思えないし、あんまり彼女を応援する気になれなかったです。  「優勝を逃す」というオチについても、普通なら(あれだけ頑張ったのに……)と涙腺を刺激されそうなものなのに、本作に限っては(まぁ、練習してなかったんだから当たり前か)と納得してしまい、感情を揺さ振られず仕舞い。   一応、優勝したのと変わらないくらい皆に祝福されて「雑誌の表紙を飾る」という夢も叶えて終わる形の為、ハッピーエンドではあるんですが(それなら、もうちょっと贅沢に、あれもこれも手に入れる終わり方でも良かったんじゃない?)なんて、つい思っちゃいましたね。  「王子様のマットは一時の休暇で訪れただけなので、その内に別れる時が来る」「妹のペニーがマリファナをやっているので、止めさせなければいけない」「家出したママも帰って来ていない」と、まだまだ問題が山積みなので、今一つスッキリしないんです。  「何もかも上手くいく訳ではない」「それでも、サーフィンの楽しさを思い出した主人公なら、きっと大丈夫」という、ほろ苦さの中に希望を見出すような終わり方なら、それでも納得なんですが、本作の終わり方は、そうじゃない。  底抜けに明るくて、何もかも上手くいったと言わんばかりの空気の為(えっ、今までに描かれていたマイナス要素の数々は何だったの? 無かった事になったの?)と、戸惑っちゃうんですよね。  ここの部分を、もうちょっと上手く着地させてくれていたら、好きな映画になっていた気がします。   音楽や演出は決して嫌いじゃないし、大人も子供もサーフィンに興じるエンドロールの映像は素晴らしいと思うだけに、何だか勿体無いですね。  自分としては、好きになれそうというか……好きになりたかったタイプの作風なだけに、ノリ切れなかった事が残念な映画でありました。
[DVD(吹替)] 4点(2017-07-20 16:02:36)(良:1票)
23.  ブルーサヴェージ<TVM> 《ネタバレ》 
 如何にも低予算といった感じで、サメの出番自体は少ない本作品。   でも、最初と最後とに見せ場を用意している為、枠組みはキッチリしているように感じましたね。  カーチェイスにも力が入っていて、もしや監督さんはそちらをメインに撮りたかったのでは? と思えたくらい。   「ジョーズ」や「ターミネーター」などのパロディ演出が盛り込まれているのも、見所の一つ。  バレないように剽窃している感じではなく、ちゃんと分かり易く「皆も元ネタ分かるよね?」と訴えるような形に仕上げているから、何だか憎めないんですよね。  車で刑務所に突っ込む前に、わざわざサングラスを掛けてくれる辺りなんて「そこまでやるか!」とツッコみつつも、面白かったです。   難点としては、映画の大部分を占める人間ドラマのパートが少々テンプレ過ぎて、退屈に感じる事が挙げられるでしょうか。  「私はもう、子供じゃないわ」という台詞が象徴するような、お約束の父娘の対立。  亡き妻の事を忘れられない主人公と、そんな彼を癒してあげるヒロイン。  裏切って敵方に付いたかと思われたが、最後の最後で改心して味方になってくれる親友。  どれも王道の魅力を備えてはいるのですが、ちょっと既視感が強くて、ノリ切れなかった気がします。   巨大なサメの歯を拾い、そこから体長を推測して戦慄する描写など「サメ映画のお約束」が盛り込まれている分には、気にならないんですけどね。  その他の部分まで「サメ映画以外のジャンル作品でのお約束」で一杯だったりすると(こういうのが観たかった訳じゃないんだよなぁ……)と思ってしまうみたい。  サメ関連の部分は王道に仕上げ、その他の部分は独自色を出す、くらいのバランスが、自分は好みなのかも知れません。   肝心のサメが登場するシーンに関しては、中々迫力があり、良かったと思います。  もう本当に笑っちゃうくらいに巨大で、人間なんて簡単に丸呑み出来ちゃうサイズであるという設定を、きちっと活かした演出にしていましたね。  ヘリに食いつこうとしたサメを、空中で爆殺する終わり方も痛快でした。   全体を通して考えると微妙な部分も多いのですが、終盤に盛り上げてくれた為、観賞後の印象は悪くない、という感じですね。  こういうサメ映画は、夏になると無性に観たくなりますし、そんな期待に、しっかり応えてくれた一本だと思います。
[DVD(吹替)] 5点(2017-07-16 21:48:37)
24.  ディアボロス/悪魔の扉 《ネタバレ》 
 「都会に引っ越すと、周りの人が悪魔のように見える」という寓意的な御話なのかと思いきや、さにあらず。  本当に悪魔が出てきて、しかもそれが主人公の父親だったというオチには驚きました。   「何時かは負ける日が来る。人間ならね」「父の事は知りません」などの台詞によって、序盤から伏線が張られていたとはいえ、非現実的過ぎる展開なのですが、それでもさほど戸惑わず観賞出来たのは、やはりアル・パチーノの存在感ゆえなのでしょうね。  ジョン・ミルトンという名前、天国で仕えるより地獄を制した方がマシという行動理念からするに、その正体は恐らくルシフェルなのだと思われますが、それだけの大物を演じていても、まるで違和感が無いのだから凄い。  息子相手に熱弁を振るうシーンなんて、凄く楽しそうに演じているのが伝わってきました。   「彼女を看病してやれって言っただろう?」などの台詞により、あくまでも選択したのは自分、悪いのは自分と相手に思い込ませるやり口なんかは、正に悪魔的。  近親相姦で子を作るようにと薦める辺りも「悪魔とは、人を堕落させる存在である」と実感させられるものがあり、印象深かったです。  それでいて、息子の事は彼なりに愛しているのではと思わされる一面もあり、そんな人間的(?)な部分も含めて、魅力あるキャラクターに仕上がっていたと思います。   冒頭で無罪を勝ち取ってみせた数学教師が、殺人犯として逮捕されたと知らされる件。  そして妻が実の父親にレイプされた後、自殺する展開など、主人公にとっては悲惨な展開が続く訳ですが、最終的には「夢オチ」「もう一度最初の場面からやり直し」という着地をする為か、後味も悪くなかったですね。   夢オチっていうと、何だかそれだけで拍子抜けというか、評価が下がりそうになってしまうものですが、本作は最後にもう一捻り加える事で、夢オチならぬ現実オチとして成立させている。  「悪魔が存在するのも、そいつが父親であった事も、全て事実だった」という形で終わらせているのですよね。  今度こそ善良な道を選び、上手くやってみせるという主人公の決意を嘲笑うような悪魔の笑みが、非常に印象的でした。   もしかしたら、本作で描かれたのは「初めての父子の出会い」ではなく、こんな風に何度か出会いと別れを繰り返しているのかも知れないな……と思わされる辺りも、面白かったですね。   父と子、どちらかが完全な勝利を収めるまで、無限に続く輪となっているのかも知れません。
[DVD(吹替)] 6点(2017-06-16 11:05:56)(良:1票)
25.  地獄の変異 《ネタバレ》 
 某探検隊風の予告編とは異なり、コメディ要素は皆無で、至って真面目に作られた一品ですね。   洞窟内の映像も美しく、しっかり作り込まれているのが伝わってきます。  ……ただ、どうも真面目過ぎるというか、強くダメ出しする部分も無いけど、大きく褒める部分も見つからない。  退屈はしなかったけれど、面白いとも感じなかったという、何とも微妙な印象を受けてしまいました。   楽しめなかった理由を分析してみるに、まず全編に亘って舞台が洞窟内に絞り込まれており、洞窟外のシーンが僅かしか存在しないので、息苦しい構成になっている事。  そして「主人公の兄が怪物に変異して敵対するのかと思いきや、最後まで味方のままで終わる」事が大きかったのではないでしょうか。  この辺りは「徹底して洞窟探検に拘った、潔い映画」「観客の予想を裏切る脚本」と褒める事も出来そうなんですけど、自分としてはマイナス点に感じられましたね。  前者に関しては、やはりずっと洞窟内のままだと画面が代わり映えしなくて単調になってしまうし、後者に関しては「頼れる兄との対比で情けない弟だった主人公が、最後まで情けないまま成長せずに終わる」という落胆に繋がってしまった気がします。   終盤の怪物達との戦闘、そして兄が完全に怪物になってしまう前に自己犠牲で相打ちとなる事を選ぶ展開などは良かったと思うのですが、実はヒロインも地底生物に寄生されており「怪物が地上に解き放たれてしまった」という後味の悪いオチが付く辺りも、ちょっと微妙。  ここの部分、ヒロインが寄生されていると分かった時の音楽や演出などが「えっ、何? まだ終わっていなくて続くの?」と思わせる感じだったもので、その後すぐ音楽が止んで完結を迎えるのが、何かチグハグだったのですよね。  それなら「実は彼女も寄生されていた」という衝撃と共に映画を終わらせる……具体的に言うと「ヒロインが立ち去る場面」で、そのまま終わらせて「主人公がヒロインを追いかけようとするけど見つからなくて途方にくれる場面」の数十秒はカットした方が、余韻が残って良かったんじゃないかな、と思えました。   それにしても「カタコンベ」といい「ディセント」といい、地下を舞台としたホラー映画って後味が悪いというか(うわぁ……)と感じさせる終わり方が多いですね。  これって偶々なのか、それとも「やっぱり地下系ホラーは、こういう終わり方じゃないとな!」という拘りのようなものが存在しているのか、気になるところです。
[DVD(吹替)] 5点(2017-03-08 11:15:26)(良:3票)
26.  サハラ 死の砂漠を脱出せよ 《ネタバレ》 
 観賞中  (何か、シリーズ物の中の一本って感じだなぁ……)  と感じていたのですが、原作小説は人気シリーズであり、これはその中の一作を映画化した代物だったのですね。大いに納得。   上記のように感じた理由としては「主人公と相棒のキャラクターが魅力的である」という良い点もあるのですが「観客が主人公達の事を知っているのは当然とばかりに説明が少なく、感情移入させる前に物語を進行している」という悪い点もあったりして、それが残念でしたね。  勿論、原作を読んでさえいれば解決する問題なのでしょうが、未読の身としてはキツかったです。   冒険映画として押さえるべき点は押さえてあり、夕暮れの砂漠をラクダで横断するシーンなんかは見惚れてしまう美しさがありましたし、ボートで河を移動するシーンなんかも楽し気で良かったのですが、どうも物足りない。  それは例えば「中盤の銃撃戦が妙にダレていて長い」とか「音楽の使い方もセンスは悪くないと思うんだけど、ちょっと派手過ぎる」とかいった、些細な違和感でしかないのですが、こういうタイプの映画って「観客に違和感を抱かせずに、気ままに楽しませてくれる」のが大事だと思うのですね。  その為、観ていて退屈したという訳では無いのですが「面白かった」とも言い難いのが、正直なところ。   もう一つ、大事な部分としては、砂漠を舞台にしているにも拘らず「主人公達が渇きに苦しみ、水を求めるような場面が存在しない」という点も気になります。  水質汚染というテーマを扱っている以上、手近な水をグビグビ飲んでいては不自然という配慮ゆえかも知れませんが、これは如何にも寂しい。   終盤にて遭難しかけた主人公達が、壊れた飛行機をヨットのように改造して移動手段とする場面などは痛快でしたし、良い所も色々と見つけられただけに、何だか勿体無いですね。  細かい部分を、もっと練り込んでくれたら傑作に化けたんじゃないかという、そんな可能性を感じさせる映画でありました。
[DVD(吹替)] 5点(2017-02-21 23:55:24)(良:2票)
27.  アローン・イン・ザ・ダーク 《ネタバレ》 
 この手の「モンスターと戦うアクション映画」って好きです。  そして主演がクリスチャン・スレーターとくれば、否応なくテンションは高まるのですが……  冒頭のナレーションで「長いよ!」とツッコみ、その後「モノローグで自己紹介やったのに、何で台詞でも自己紹介するの?」とツッコみ、以降はもう何かを諦めた境地で、ただただ画面を眺めるだけでしたね。   物凄く退屈だとか、観ていて不愉快になったとか、そういう訳じゃないんだけど……  とにかく盛り上がりに欠けており、気が付けばエンディングを迎えてしまったという形。  自分は主演の俳優さんが好きなので、彼が主人公というだけでもある程度は楽しめたんですが、もし魅力を感じない人が主演だったらと考えると、空恐ろしくなりますね。   一応(おっ)と思わされる場面もあって、拳銃から発射された弾丸を追いかけるスローモーション演出なんかは悪くないし、無人と化した都市の風景も「現実では中々体験出来ない、映画ならではの味わい」があって、良かったです。  ラストシーンに関しても「あぁ、サム・ライミの『死霊のはらわた』をオマージュしているんだなぁ……」と分かって、微笑ましい。   ウーヴェ・ボル監督の作品って、観賞済みの中では「ザ・テロリスト」(2009年)と「ウォールストリート・ダウン」( 2013年)が例外的に面白く、それ以外は全滅だったりするんですが……  それでも何か愛嬌があって、憎めないから不思議ですね。  聞くところによれば、映画を酷評した評論家と、ボル監督とがボクシングで戦うドキュメンタリーもあるそうなので、機会があれば観賞してみたいものです。
[DVD(吹替)] 4点(2017-01-29 11:39:02)
28.  ギャング・オブ・ニューヨーク 《ネタバレ》 
 序盤の乱闘シーンにて、白い雪が赤い血で染まっていく凄惨な演出は、流石スコセッシといった感じ。  少年院を出所する際に渡された聖書を、主人公が川に投げ捨てる場面なんかも、鮮烈な印象を与えてくれましたね。  これは傑作ではないか……と大いに期待が高まったのですが、その後は何だか尻すぼみ。   思うに、この映画の主軸は「主人公アムステルダムとビルの疑似親子めいた関係」のはずなのですが、その描き方が少し単調というか、シンプル過ぎるのですよね。  例えば、映画の中盤にて、主人公の父親である神父を殺したビルが「アイツは凄い奴だった」という調子で、神父を褒め称えるシークエンスがあるのですが、正直言って観客は、そんな事とっくに分かっているんです。  それは主人公も同様で、この告白を聞いても決定的なショックを受けたりしていない。  序盤の殺害シーンの時点でビルは神父に敬意を表しているのが明らかになっている訳だから、全く意外性が感じられないのです。   ベタな考えかも知れませんが、こういう話の場合は「親の仇と思って心底から憎んでいた相手が、実は良い奴だったと分かり、苦悩する」「ビルが神父に敬意を払っていたのだと知って、衝撃を受ける」という展開にした方が良かったんじゃないかなぁ、と。  本作の場合は「ビルは悪党ではあるが、一貫して憎み切れない魅力的な人物として描かれている」「最初から最後まで神父に敬意を払っているので、ビルには親の仇としての存在感が弱い」という形になっているのですよね。  主人公が最も動揺するのは「好きになった女の子がビルのお手付きだった」と知った時な訳ですが、これすらも「ビルは、その女の子に強い執着を抱いていない」と直ぐに判明する為、三角関係にすらなっていない。  咄嗟にビルの命を救った後に「ちくしょう、何で俺はあんな奴を助けてしまったんだ……」って感じに主人公が苛立つシーンさえも、観ているこちらとしては(いや、この関係性なら助けても全然おかしくないじゃん)とツッコんでしまう。  「親子」「宗教対立」「古い都市と新しい都市の対比」などといった様々なイメージが両者に投影されている事は分かるのですが、そんな代物を取り払って考えてみるに、根本的に二人が戦う理由が弱過ぎたように思えます。   だからこそ、最後の決戦も互いの想いをぶつけ合うような直接対決には成り得ない訳で、史実であった暴動や軍隊による鎮圧を絡めて、有耶無耶にしてしまったのではないでしょうか。  大砲の着弾の後に二人が倒れている姿なんて、ギャグにしか見えなかったりしますし「盛り上げて、盛り上げて、最後に肩透かし」という、一種の笑いを狙った構成なのでは……とさえ思ってしまったくらいです。   そんな本作で光るのは、やはりビル役のダニエル・デイ=ルイスの熱演。  ナイフ投げのシーンでは、惚れ惚れするような恰好良さを見せてくれましたし、一つの街を牛耳るギャングの親玉として、充分な説得力を備えていましたね。  「ビルが魅力的過ぎて、良い奴過ぎて、敵役や悪役として成立していない」と自分が感じてしまったのも、ひとえに彼の存在が強過ぎたせいかと。  戦いが終わった後に、無数の死体を見下ろして政治家が吐く「たくさんの票を失った」という台詞も、彼らにとって人命は「数字」でしかないと思い知らせてくれる効果があり、印象深い。  最後には、何だかんだで愛する彼女と一緒になってハッピーエンドという着地点な辺りも、安心感があって良かったです。   作り手としては色々考えて、力も注いで完成させた品である事は分かりますし、画面作り等のクオリティは高いと思うのですが「面白かった」とは言い切れない……勿体無い映画でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2017-01-20 06:58:44)
29.  ライフ・オブ・デビッド・ゲイル 《ネタバレ》 
 クオリティの高さは分かるのだけど、どうにも作中の価値観やらメッセージやらが肌に合わなくて「面白い」と素直に言えないタイプの映画があります。  残念ながら本作もそんな一つとなってしまったみたいで、脚本の騙しのテクニックやら演出やらに感心させられつつも、観賞後は「うーむ」と腕を組んで考えさせられる破目になりました。   まず、この映画の最大のオチに関しては「無実の人が死刑された確かな証拠があれば、死刑停止に追い込める」という台詞をデビッド・ゲイルが耳にするシーンがある以上、多くの人が途中で気が付かれたのではないかな、と思います。  自分も、この台詞が飛び出す時点(映画が始まってから三十分程)でオチは読めていたので、衝撃という意味では薄かったのですが、ラストに長々と説明せず「デビッド・ゲイルも彼女が自殺であると承知の上であり、一連の計画の協力者であった」と映像で示すだけで、スパッと終わらせる演出は見事でしたね。  こういうパターンの場合、つい「こんな分かり易い伏線があるんだから、気が付くに決まっている」と作品を見下してしまいそうにもなりますが、ラストの演出で説明を最低限に済ます以上、このくらいのバランスで丁度良かったのではないでしょうか。  観客に対して、きちんと「推理する材料」を提示するという意味でも、非常に誠実な作りであったと思います。   で、上述の「肌に合わない」部分に関してなのですが……これ、どう考えても「死刑制度の問題点」を指摘しているとは思えないのですよね。  自分で死刑になるように行動しておいて「実は冤罪なのに殺されちゃいました」って、自業自得としか思えないし、この場合に明らかになった問題点とは「自ら積極的に死刑になろうと色々と工作した人間を死刑にしてしまう可能性がある」という話でしかない訳だから、台詞の通りに「死刑停止に追い込める」とは考えられないのです。   デビッド・ゲイルの動機としては「取材を受ける報酬として手にした大金を、別居中の妻と息子に贈りたい」「もうじき病死してしまう恋人と心中したい」という想いの方が強かったのではないかな、とも思えますが、劇中ではそれらの感情的な動機よりも、あくまで「死刑制度の是非」という点に重きが置かれている為、やっぱり「そんなやり方で死刑制度を廃止出来る訳ないじゃん」という結論に至ってしまう訳で、何とも中途半端。  本当に死刑制度の問題点を指摘したいなら、倫理的に許されないのを承知の上で「無関係な第三者を犯人に仕立て上げ、彼が必死に無実を訴えても死刑が宣告されるのを見届けてから、執行の直前に全てを自白する」という作戦を取った方が、よっぽど効果的だったのではないかと。   そんな困った人物である彼を、過度に美化する事は無く「公開討論番組で、知事に言い負かされた仕返しをしたかっただけ」「権力者を馬鹿にして、自分の方が利口だって証明したかっただけ」と示す描写も挟むなど、作り手の器の大きさというか、公平な視野を感じさせる辺りは、好ましく思えます。  それだけに、話の核となる部分から説得力が伝わってこなかった事が、実に勿体無く思える一品でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2016-12-22 10:36:31)
30.  パラサイト・バイティング 食人草 《ネタバレ》 
 面白いんだけど、それ以上に「痛い」映画。   特殊な植物の蔦が体内に侵入し、それを取り出そうと自らの身体を切り刻む女性のシーンなんて、もう画面から目を背けたくなるし、仮に背けたとしても嫌ぁ~な声と音がして容赦なく「痛み」を連想させてくるしで「そんなに丁寧に描写しなくても良いよ! 観客に痛みを伝えたりしないでよ!」と訴えたくなります。  そんな具合に、ともすれば不快感だけを味わう事になりそうな内容なのですが……  これが案外、しっかり楽しむ事が出来たのですよね。   まず、冒頭「災難に見舞われる前の、楽しい旅行風景」がキチンと描かれているのが好印象。  そして舞台となる遺跡を訪ねる際に、現地人から「あそこだけは止めておけ」という類の、お約束の台詞が飛び出す辺りが、何だかニヤリとさせられるのです。  作り手に対し「おっ、分かってるね」と拍手を送りたくなるような演出。    麻酔無しで脚を切り、これで何とか助かったかと思われたのに、その後に口から蔦が入り込んだ時の絶望感なんかも良かったですね。  じわじわと追い詰められていく描写が丁寧なので(あっ、これハッピーエンドは無理だな……)と、観客にも自然と受け入れさせてくれます。   そうして全滅も覚悟したところで、ヒロインだけは何とか遺跡からの脱出に成功するという結末は意外性がありましたし、途中(プレッシャーに押し潰されて、嫌な奴と化してしまうのでは?)と不安になったりもした一同のリーダー格、医学生のジェフが最後まで良い奴のまま、自ら囮になってヒロインを逃がしてみせるという展開も好みでした。  とにかく観ていて「痛い」と感じる場面が強烈なので、再見したくなる映画とは言い難いのですが(観て良かったな……)と、素直に思えましたね。   なお、DVD収録の別エンドでは、ヒロインも結局は死んでしまうという救いの無い結末なのですが、自分としては「何とか一人だけは助かった」という、本編の終わり方を支持したいところです。
[DVD(吹替)] 6点(2016-12-22 06:52:49)(良:1票)
31.  ハウス・オブ・ザ・デッド 《ネタバレ》 
 同監督作の「ウォールストリート・ダウン」が、危険な内容ながらも中々面白かったので、期待を抱きつつ観賞。   ところが序盤、主人公が他の登場人物を紹介するパートにて(友達相手のはずなのに、悪口ばかり言っているなぁ……)と思ってしまった時点で感情移入が出来なくなり、以降も第一印象が覆る事はなく、残念でしたね。  「実は主人公こそが、後にゾンビを大量発生させる元凶である」という、2にも繋がる伏線である為、嫌な奴として描いておくのは仕方ない事なのかも知れませんが、それならそれで「最初は善人だった主人公が、事件を通して狂気に囚われてしまった」という形にしても良かったのではないでしょうか。  この手の映画の主人公は「駄目な奴」だったとしても「実は良い奴」だからこそ(生き残って欲しい)(頑張って欲しい)と思える訳なので、今作のように一貫して「嫌な奴」だったりすると、それだけで観るのがキツくなっちゃいますからね。  唯一、ヒロインへの愛情だけは本物だったのでしょうが、流石にそれだけでは肩入れ出来なかったです。   決定的に(これはダメだろう)と落胆してしまったのは、クライマックスの場面。  何故かラスボスが「主人公に首を斬り落とされるまで、剣を手にしたまま無防備に突っ立っている」という不自然な態度を取っていたりして、これはもう完全に興醒め。  背中を向けていた恰好なので、振り向き様に首を斬られるだけでも充分だったと思うのですが、何故ああも無抵抗だったのか、本当に謎です。  勢い良く突っ走るタイプの映画に、こんなツッコミをするのは野暮かも知れませんが(勢いを重視する作風だからこそ、こういう細かい部分で観客にブレーキを掛けさせるような真似はしないで欲しい)と、つい思ってしまいました。   とはいえ、ゲームの爽快感を再現した中盤の大袈裟なアクションシーンなんかは、結構好み。  作中で「ロメロゾンビ映画の四作目」が「多分やらないだろう」と言われているのも可笑しかったですね。  冒頭、ヒロインについて「フェンシングにのめり込んでいる」との情報があり(何その分かりやすい伏線)とツッコませておいて、終盤で本当にチャンバラをやらせてくれちゃうノリの良さも、嫌いじゃないです。   ゾンビ映画に必要なものが、面白さではなく愛嬌だとしたら、それは間違いなく備えている一品だと思います。
[DVD(吹替)] 4点(2016-11-21 09:33:06)
32.  2番目のキス 《ネタバレ》 
 これは久々に大当たりの一本。  明るく楽しいラブコメとして、観賞中は常に笑顔のまま、夢見るような時間を過ごせました。   冒頭、レッドソックスのファンを「神の作った、最も哀れな生き物」なんて評してしまう時点で、もう面白い。  チケットのドラフト会議にて、男友達連中がダンスを踊るシーンも、非常に馬鹿々々しくて良かったですし 「俺の女房とチケットを交換しない?」  と言われて、一度はジョークと思って笑ってみせるも、相手が本気と気付いて真顔になる主人公の反応なんかも絶妙な「間」で、センスの良さを感じますね。  少年野球チームの教え子に対し、恋人の愚痴を零していたら、幼い教え子から的確なアドバイスを貰ってしまうシーンも、凄く好み。   あえて気になった箇所を挙げるなら、女性陣が「どんなに好人物であっても、自分が切った爪や髪を捨てられず取っておくような男は、気持ち悪くて無理」という反応を示す場面。  そして「ヒロインにファールボールが命中して気絶しているのに、それに気付かず仲間と盛り上がってる主人公」という場面が該当しそうですが、明らかにギャグとして描かれているので、笑って受け流せる範疇でしたね。  作品全体に明るい愛嬌が漂っているので、よくよく考えるとブラックなネタなんかも、あまり気にならないというか、スムーズに受け入れられる感じです。   姉妹編である「ぼくのプレミアライフ」(1997年)に比べると、ヒロインが「相手の趣味を知らないままで好きになった」という違いがあり、これには「上手いバランスだな」と感心。  承知の上で付き合った訳ではなく、恋人同士になってから、後出しで本性を知らされた訳だから、ヒロインが彼に「野球観戦を止めて欲しい」と訴えるようになっても、身勝手な印象を受けず、自然と感情移入出来るのですよね。  また、仕事一筋なキャリアウーマンという設定でもある為「趣味に生きる男」「仕事に生きる女」という対照的なカップルになっている辺りも面白かったです。   映画の中盤「夫婦って、お互いに歩み寄るものじゃない?」と言っていたヒロインが、クライマックスにて 「私は彼の為に仕事を犠牲にしなかったのに、彼は私の為に大切なチケットを売ろうとしてる」  と気が付き、その愛の深さを知る流れなんかも、非常に丁寧で分かり易く、ありがたい。  こういった心理の流れを、あえてボカしてみせる演出も御洒落で良いとは思うのですが、やはり万人に伝わりやすい演出の方が、自分は好きみたいですね。   二人が球場でキスを交わした瞬間には、観客の皆が拍手喝采で祝福してくれたのと同じように、心から(あぁ、結ばれて良かったなぁ……)と思えました。   レッドソックス優勝の感動を、そのまま映画のクライマックスに据えて、フィクションよりも劇的な「シリングの血染めのソックス」を、さらっと紹介してみせる辺りも心憎い。  間違いなく球史に残るような大きな奇跡の中では、一組の男女が結ばれた事なんて、とてもちっぽけな事かも知れません。  けれど、主人公達にとっては「愛する人が傍にいてくれる事」が何よりも大切なのであり、優勝の喜びの方は「二番目に素敵な事」になったのだと、最後のキスから伝わってきました。    エンドロール後の、家族ぐるみでレッドソックスのファンになった姿なんかも、実に微笑ましくて良かったですね。  大きな感動と、小さな幸福を感じられる、素敵な映画でありました。
[DVD(吹替)] 9点(2016-09-05 12:33:31)(良:2票)
33.  未来は今 《ネタバレ》 
 例の「丸いアレ」に関しては、最後まで謎のままなのかなと予想していたのですが、中盤にてアッサリと正体が判明。  しかも名前も機能もそのまんま「フラフープ」とは、意表を突かれましたね。   (これって、もしかして実話物だったりするの?)と思っていた矢先に終盤は「突然の時間停止」→「天使との対話」なんてトンデモ展開が飛び出すものだから、もう吃驚。  呆れる気持ち半分、笑ってしまう気持ち半分、といったところですが、こういった悪ふざけ演出は、決して嫌いではないです。  ……でも、出来ればもう少し伏線を張っておいて欲しかったなぁ、と思わされたのも事実。  ここを、もう少し丁寧に描いてくれていたら、もっと楽しめたかも知れません。   コーエン兄弟の作品にしてはブラックユーモアが薄めで、とても観やすい作りとなっているのも特徴ですね。  自分としては嬉しかったのですが、それによって個性を感じられなくなったという、痛し痒しな面もありそう。   善良だった主人公が出世によって心を歪ませてしまい、そこから改心して元に戻った後にヒロインと結ばれるハッピーエンドに関しては、非常に道徳的な作りだったと思います。  上述の「悪ふざけ」な演出と、この「道徳的」なストーリーラインのチグハグな感じを受け入れられるかどうかで、評価が変わってきそうな一本です。   とはいえ、あんまり難しく考えないで、子供向けのファンタジー映画のような感覚で観賞するのが、一番楽しめる方法なのかも知れませんね。  勤続四十八年になる主人公の同僚や、エベレーターボーイなど、脇役達も個性的で、魅力的。  ティム・ロビンスとポール・ニューマンの共演という一点に限っても、観る価値はある一本だと思います
[DVD(吹替)] 5点(2016-06-07 06:02:24)(良:1票)
34.  プリティ・イン・ニューヨーク 《ネタバレ》 
 どう考えてもミラ・ジョヴォヴィッチ演じるナディーンの方が「いい女」じゃないか、と思えてしまうのが難点でしょうね。  作中で主人公が元カノに未練たっぷりで、長時間に亘って煮え切らない態度を取っている為、こちらとしては、どうしても感情移入が出来ない訳です。  勿論、最終的に彼はナディーンの方を選ぶ結末となる訳ですが、もっと序盤から彼女に対して真摯に向き合って欲しかったな、と思う次第。   性格面において、元カノさんが典型的な「嫌な女」として描かれているのも、少々可哀想。  でも、別れの場面にて彼女だけを一方的に悪役としない演出だった事は、良かったと思います。  やはり自分は、こういう形で「振られ役」を貶め過ぎないラブコメの方が好み。   話の筋としては、予想の範疇を逸脱する事無く、手堅く王道に則って纏められているという印象を受けました。  サプライズな面白さは欠けている代わりに、安心して楽しめるというタイプ。  そんな中で、主人公がナディーンに「鏡」をプレゼントした理由なんかは、ロマンティックで素敵でしたね。  ケチャップの瓶を用いた例え話や「一緒に映画観ない?」と誘い掛ける留守電の声なんかも印象的。  こういった小さな美点とも言うべき箇所が、作中のアチコチに散りばめられており、何だか憎めない映画でした。
[DVD(吹替)] 6点(2016-05-28 17:43:51)
35.  知らなすぎた男 《ネタバレ》 
 主人公が有能なヒーローであると勘違いされる映画、好きですね。  「サボテン・ブラザース」然り「ギャラクシー・クエスト」然り。   そういった訳で、上述の作品を愛する身としては 「何時、主人公が真実に気付いて、慌てふためく事になるのかな?」  なんて思いながら観賞していたのですが……   結局、最後まで周りを勘違いさせたままエンディングを迎えたんだから、もう吃驚です。  さながら「刑事コロンボ」で犯人が捕まらずに、そのまま逃げ切ってみせたかのような衝撃。   でも、決して「裏切られた」という印象は受けず、完走し切ってくれた事に、心地良い満足感を味わえましたね。  途中で主人公が真実に気付いた方が、そこから二転三転させてのストーリーを展開させ易いだろうに、あえて初志貫徹してみせたかのような作りは、本当に天晴だと思います。   ラストのキスシーンの背後で、悪役を乗せたヘリが爆発するんだけど、その事にも主人公は気が付かないまま。  何かが爆発したかと思うくらいに衝撃的なキスだった、と呑気にヒロインに話す辺りなんて、実に微笑ましい。   他にも、自白剤を飲まされた主人公が「今日は誕生日だ」という情報を口にした途端、悪役達が反射的に「ハッピーバースディ」と声を揃えて祝福してみせる場面なんかも、お気に入りですね。  この映画が備えている「愛嬌」を、如実に示したワンシーンだと思います。   そんな中で、あえて不満点を挙げるとしたら……  「最後は弟と一緒に葉巻を吸って欲しかった」と、それくらいになるでしょうか。  序盤にて、葉巻を吸う事が誕生日のゴールであるかのように描かれていたので、その予想が正解であって欲しかったんですよね。  あとは、主人公である兄に比べると、弟の扱いが不憫だったので、兄弟仲良くハッピーエンドを迎えて欲しかったなと、そう思えちゃいました。   映画が終わった後も、主人公は周りを勘違いさせたまま、敏腕エージェントとして活躍し続けるのか。  はたまた正体がバレてしまい、無事に結ばれたはずのヒロインとの仲も危うくなってしまうのか。  そんな後日談について考えるだけでも、楽しい気分にさせられる一品でした。
[DVD(吹替)] 7点(2016-05-21 05:38:57)(良:2票)
36.  THE WAVE ウェイヴ 《ネタバレ》 
 これは恐ろしい映画です。  何せ作中で行われている「独裁を疑似体験する為の授業内容」が、日本の義務教育に(それも多感な時期の子供が集まる中学校での風景に)瓜二つなんですからね。 ・全員が同じ制服を着る。 ・発言する時は手を上げて、起立してから話す。  他にも色々と当てはめる事は出来そうですが、この二つに関しては特に 「えっ? それって特別な事なの?」  と感じてしまう日本人が多いのではないでしょうか。  ナチスの記憶が残るドイツだけではなく、日本の教育を受けてきた者が観賞しても、色々と考えさせられるものがあると思います。   更に興味深いのは「独裁制度の利点」と呼べるような部分を、前半にてキチっと描いている事。  同じように「支配される」立場となった時、生徒達の間で連帯感が芽生え、差別意識も弱いものイジメも無くなっていく流れなどは、目を見張るものがありました。  また「スポーツ」「演劇」などの要素も取り入れられており、集団が一つの目的に向かって行動する際に、その意思を統一する事は決して悪い事ばかりではない、と教えてくれる事にも感心。   こういった内容の場合、どうしても堅苦しい作りになってしまいそうなのですが、全編に亘って爽快な曲調のロックが配されており、若き主人公達の青春群像劇としても観賞する事が出来るのだから、非常にバランスの優れた作品なのだと思います。  生徒達にリーダーとして崇められていく内に、自分を見失っていく体育教師が 「毎週月曜日には安定剤が必要だ。学校が怖いからな」  と心情を吐露する場面なども、胸に迫るものがありました。   一方で、その「青春」部分が劇的に作用し過ぎたかのような、終盤における生徒達の「死」に関しては、蛇足であるように感じてしまい、非常に残念。  自分としては教師が「これが独裁だ!」と宣告した場面で、スパッと終わってくれた方が好みでしたね。  その方が、歴史を学び過ちを繰り返したりはしない、人間の理性の勝利というハッピーエンドに感じられたと思います。   折角あれだけ丁寧に「独裁」の恐怖を描いてくれたのに、銃を持ち出されて殺人やら自殺やら行われてしまったのでは 「少年が簡単に銃を入手出来る、その事の方が独裁云々よりも重大な問題なのでは?」  と思えてしまい、どうも軸がブレているように感じてしまったのです。  それが作り手の狙いであったという可能性もあるかも知れませんが、自分の場合、純粋に思考実験を通して「独裁制度は間違っている」と証明してもらえただけで満足だったし、その後に「……何故なら、こうやって人が死んでしまうからだ」という説明を付け足すかのような行いは、無粋ではないかと思えてなりません。   ただ、そんな風に不満も覚える一方で、この展開ならではのラストシーンの良さも、確かに感じ取る事は出来たかと。  生徒を死に至らしめた「独裁者」として逮捕される教師の視点と、観客の視点とが重なり合う演出は、実にお見事。  「独裁制を支持してしまう恐怖」だけでなく「自らが独裁者となってしまう恐怖」さえをも、はっきりと追体験させてくれたところで、綺麗に映画が終わるという形なのですよね。   幽霊や殺人鬼が登場するホラー映画などよりも、こういった代物の方が「本当に怖い映画」と言えるのじゃないかな、と改めて実感させられました。
[DVD(吹替)] 7点(2016-05-19 07:54:30)
37.  スティック・イット! 《ネタバレ》 
 女子の体操競技には、あまり興味が無かったような自分にも分かりやすく、楽しめる内容となっていましたね。  編集のテンポが良く、音楽もノリノリで、観客を飽きさせません。   レオタードがズレるのを防ぐ為に、滑り止めのスプレーを吹きかける場面などの 「詳しい人なら知っているので、ついつい説明を省いてしまいそうな部分」  を、きちんと映像化して教えてくれた形なのも嬉しかったですね。  主人公ヘイリーの皮肉っぽいモノローグによる 「体操競技って、こんな感じ」  という解説も、初心者に親切な作りとなっていて、ありがたい。  一見すると優雅で美しい世界に思えるかも知れないけど、その実は血が滲む程に厳しいトレーニングを行っているんだぞ、と分からせてくれる辺りも好みでした。   ただ、終盤の展開には少し疑問というか、観ていて呆気に取られてしまい、最後まで一緒にノリ切れなかったのが残念。  そりゃあ主人公の主張が間違っているとは思いませんし、ブラが見えた程度で減点の対象になるのは納得いきませんが、だからって周りの選手達も揃ってサポタージュしてみせるだなんて、流石に無理があるように思えました。  最後の床運動に関しても、本来なら型破りで痛快なシークエンスなのでしょうが、上述の展開にて興醒めしたせいもあり、どこか距離を置いて眺めるような形になってしまった次第。   気持ち良くハッピーエンドで終わってくれた事も含めて、素直に「面白かった!」と言いたいところなのですが……  やっぱり、クライマックスで不満を感じた以上は、それをやると嘘になってしまいそうです。  何だか自分が劇中の意地悪な審査員になってしまったようにも思えて、心苦しい限り。   それでも、実際に観ている間は、心地良い気分に浸れる場面が幾つもあった映画でした。
[DVD(吹替)] 5点(2016-05-16 07:57:22)
38.  おとなのけんか 《ネタバレ》 
 色々とスキャンダラスな話題も多い監督さんですが、やはり才能のある人なんだなぁ、と実感させられましたね。  子供が原因で親達が喧嘩するという、それだけの内容で映画を一本撮ってしまうのは凄い事だと思います。   ただ、完成度の高さに唸らされる一方で、どうしても「面白い映画」とは思えず、残念でした。  何せ本当に延々と大人達が喧嘩しているだけですからね、この映画。  子供時代、夫婦喧嘩する両親を目にした時の居心地の悪さを思い出してしまいました。   ポイントとしては、やはり登場人物が男女四人だったのが大きいかなと。  この展開であれば、途中で絶対に夫婦同士の和解、仲直り、相互理解が訪れるはずだと予想していたのですが、それは微妙に外れ。  互いに理解し合うキッカケが掴めたかと思われた矢先に、結局はその二人で結託して、他の二人を攻撃するという、男二人VS女二人の構図となってしまう訳です。  その変化が面白いとか、国家間の争いにも通じる皮肉になっているとか、そういった解釈で楽しむ事も出来たのでしょうが、自分としては「まだやるのかよ!」と呆れてしまう気持ちが強かったですね。   そんな中で、子供達はとっくに仲直りしている事、安否が気遣われたハムスターも元気である事が分かるエンディングに着地する辺りは、お見事。  それでも、肝心の大人達は罵り合ったままで終わった以上、どうにもスッキリしない後味となってしまいました。  「戦争映画を愉快痛快な内容に仕上げるのは間違っている」という主張が存在しますが、この映画に関しても「戦争もとい喧嘩を描いた映画なのだから、観ていて不愉快なのは当たり前」という事なのかも知れませんね。  映画が終わった後の世界では、子供達と同様に親達も仲直り出来たと思いたいところです。
[DVD(字幕)] 4点(2016-05-16 05:26:41)(良:1票)
39.  プライド&グローリー 《ネタバレ》 
 実に豪華な出演陣。  そして監督さんは「ウォーリアー」を手掛けた人と知り、観るのを楽しみにしていた一本なのですが、少々ノリきれない内容でした。   期待値が高過ぎたのでしょうけれど、真面目で丁寧に作られた刑事ドラマだなと思う一方で「胸を打つ」「心に響く」といった感情を抱く事が出来ないままエンドロールを迎えてしまい、残念でしたね。  理由を分析してみるに、まず主人公であるエドワード・ノートン演じるレイと、コリン・ファレル演じるジミーの、どちらにも共感を抱けなかったのが大きかったかなと。  いくら家庭の事情があるとはいえ、完全なる悪徳警官なジミーの事を同情的に描いているような作りには違和感を覚えますし、レイに関しても、公的な意味での「正義」と「家族」どっちつかずな印象を受けてしまいました。  特にノートンは好きな俳優さんなので「もっと両者の板挟みになって苦悩する男を魅力的に演じられたのでは?」なんていう、身勝手な不満も抱いてしまいましたね。   終盤に銃を置いてから二人が殴り合う展開、ジミーがレイを庇うようにして犠牲になる展開なども、心の歯車が映画とカチっと合わさっていれば、きっと感動的な場面だったとは思うのですが、自分ときたら「えっ? 何でそうなるの?」とボケた反応をする始末で、恐らくは物凄く真面目に作ってくれたであろう監督さん達に対し、申し訳ない思いです。   導入部の、スタジアムから事件現場へと視点が切り替わる流れには、本当にワクワクさせられましたし、一見すると模範的な警察官一家が大きな歪みを抱えているというストーリーを丁寧に描いてくれた作品だとは思います。  あと何かもう一つでも取っ掛かりがあれば「好きな映画」と言えそうなものを感じさせてくれただけに、残念な映画でした。
[DVD(字幕)] 5点(2016-05-14 20:40:12)
40.  コンフェッション(2002)
 ジョージ・クルーニー初監督作品との事でしたが、その力量に驚かされた一方で、どうも既視感を覚えてしまう作風。  気になって調べてみたら、脚本がチャーリー・カウフマンだったのですね。  あぁ、何かに似ていると思ったら「アダプテーション」かと、大いに納得した次第。  悩めるクリエイターが体験した悪夢のような出来事、という点が共通しているように思えましたね。   とても実話とは思えない破天荒なストーリーだったのですが、それが作中で主人公の悩みにもなっており「こんな話、誰も信じてくれない」と嘆く形になっているのが面白かったです。  リアリティの無い展開になればなるほど、主人公の心境が理解しやすくなるという構造。   豪華な出演陣は画面に彩を添えてくれていますし、コーヒーカップの摩り替えなど、印象的な場面もありました。  ドリュー・バリモア演じるヒロインの、性に開放的な小悪魔のようでありながら、何処か母性を感じさせる女性像も好み。  観賞中は、上述の「既視感」が頭の中でチラついてしまい、あまり映画の世界に没頭する事は出来なかった状態にも拘らず、そういった長所をキチンと感じ取れたのだから、良い映画だったと思います。   一連のお話が真実が虚構かを考えるのは野暮な気もしますが、一つ気になったのは、主人公の妹の名前が「フィービー」である事。  これって、かの著名な小説「ライ麦畑でつかまえて」に登場する主人公の妹と同じ名前なんですよね。  つまり、このお話も創作ですよというメッセージにも思えたのですが、真相や如何に。
[DVD(吹替)] 6点(2016-05-13 12:21:34)
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