21. 地獄に堕ちた勇者ども
《ネタバレ》 一度観ればおなかいっぱいという満腹感を感じるとともに、強烈な印象を残す映画。ヘルムート・バーガー演じるマルチンの異様な存在感が出色。登場からして女装である。幼児偏愛はたまた近親相姦。母の愛に恵まれなかったマルチンがどんどんと悪魔的なオーラを増していく様が恐ろしくもあり美しくもある。国の崩壊、社会の崩壊、家族の崩壊、そして人間の崩壊。「滅びの美学」の真骨頂。容赦なし!そこに「救い」は無い。このドラマでは善き人は死んでいく。突撃隊の男爵の息子も善のままとは言いがたい。父親を殺された怒りにナチスが手招きしている。こんなおぞましい時代があったという事実を描きながら、(母が息子の人格形成をする、アッシェンバッハが人々をナチスの色に変えていく)ように人間が「悪」をつくるという事実、そして「悪」に簡単にとりこまれる人間の弱さを壮大に描いている。こわい映画です。 8点(2004-05-21 15:38:49) |
22. シェルブールの雨傘
戦争がもたらした悲劇というより、若い遠距離恋愛カップルにありがちな話って感じで、そんな悲しい音楽で盛り上げなくても~!と思ってしまった。セリフが全部「歌」ってのは良いんだけど、明るく楽しい歌をもっと聴きたかった。あと、私がミュージカルを苦手とする原因のひとつに”セットです~!!”って感じのセットでニコニコ踊り歌うというのがあるんですが、この作品は全然それが無くて、情景だけはすごくリアルなんです。ミュージカルという非現実の世界がリアルな情景に見事にマッチしてます。ですが、個人的にはこの両者の見事なミスマッチを観たかった。こういうふうに思うのって、ひねくれてるんでしょうね。解かってます。でも、こんなひねくれた自分が好きなんです。フォローじゃないですけど、オープニングの傘が一列に並ぶシーンは大好きです。このシーンが私の言うところの見事なミスマッチなんです。 6点(2004-04-13 12:11:16)(良:1票) |
23. アメリカの友人
たしかに同じトム・リプリーでもアラン・ドロンとデニス・ホッパーじゃ全然別人ですね。でも「太陽がいっぱい」のリプリーも原作とはかなり違うようです。ニコラス・レイ、サミュエル・フラー、ダニエル・シュミットという巨匠と呼ばれる監督達を出演させたり、回転させると中の絵が動くおもちゃで子供が遊ぶという描写を入れたりと映画そのものへのオマージュを感じます。一応サスペンスになるのだろうか。どちらかというと男の友情物語っぽい感じがします。いや、友情でもないな。よくわからんけどなんかお互い惹かれ合う関係なんです。この”よくわからん”ところがなんとも消化不良感を持ってしまう。淡々と進むヴェンダース節は好きな人にはたまらないのかもしれないが、個人的には今作に関してはサスペンス度を上げて欲しい。移動する列車や自動車を追いかける映像、そしてなにげに映える空と雲がヴェンダースの映画を感じさせる。 6点(2004-02-20 12:44:46)(良:1票) |
24. まわり道
普通、ロードムービーというのはその道すがらに起こる事件や同行者との葛藤等を通して、そこに主人公の成長が見られたり感動があったりするものだが、この作品にはそういったものが何も無い。実際にはいろいろなことが起こっているのに主人公が起こっていないと思っているから、何かが変わるなんてことがあるわけがない。旅をすれば何かを得れるだろうと思うのはとんだ間違いで、本人が何かを得ようとしなければ何も得ることは無い。最初から最後まで”まわり道”ですべて無駄に終わる。ロードムービーを否定したようなロードムービーである。私にはちょっと難しいのか、良さがあまり解からない。でも嫌いではない。印象に残るのは散歩道での延々と無駄に続く会話と景色。そして終始何も語らないナスターシャ・キンスキーの瞳。 6点(2004-02-19 13:56:28) |
25. 都会のアリス
都会に毒された男が少女と旅をするうちに癒されていく、という感じだろうか。ヴェンダースのロードムービー三部作の一作目。ヴェンダース映画の子供達は皆純粋で愛らしいが今作のアリスは格別である。おとなぶってもやっぱり子供でそこがなんとも可愛らしいのだが、時々ドキッとするような表情をする。ひたすらに移動していく景色とアリスの表情でこの映画の大半を語っている。ヴェンダースにとって子供というのは天使のような存在なのだろう。大人が子供に触れることで大人も浄化されるのである。つまりこれも人間肯定映画なのだと思う。 8点(2004-02-19 13:08:17) |
26. バグダッド・カフェ
《ネタバレ》 結婚して毎日の家事に追われ、気づけば「女」から「主婦」になってる人っていっぱいいると思う。主人公の女性もきっと故郷のドイツでは退屈な日々を当たり前のように送ってきた主婦なんだろう。それが旅行先の見知らぬ土地で独りになったことで本来の自分を取り戻していく。そのとき男は完全に蚊帳の外。それでも女性が笑顔を見せ「女」を取り戻していく様子は男の私が見ていても気持ちいいものである。変わる「女」のたくましさと変わらぬ「男」の情けなさを淡々と描くも随所にコミカルなシーンを交えつつ全編に漂う異空間を思わせる綺麗な映像により決して飽きさせない。女性にお薦めしたい作品という印象を持ちました。 7点(2004-01-29 10:51:05) |
27. ダウン・バイ・ロー
《ネタバレ》 前半のザックとジャック、それぞれのエピソードは序章としては上出来で後半2人が刑務所で出会ってから盛り上がりがあるのかと思ったんですが..無い。脱走してから盛り上がるのかと思ったら..それも無い。ジャームッシュらしい映像と音楽の使われ方はカッコイイけど、それも一番カッコイイのはオープニングだし..。皆さん、評価高いですよねー。もう一回観るべきか? 6点(2004-01-26 11:49:14) |
28. 1900年
かっこ良くないデ・ニーロをおそらく初めて見た映画。ちゃんとおぼっちゃんの顔になってるのが凄い。だって「タクシードライバー」と同じ年の作品ですよ。この映画、学生の時に見といて良かった。ただでさえ最近映画を見れる環境に無いのにこの長さはかなりきつい。私の場合、長さを感じずに見れたと記憶していますが、時間に余裕のある方はぜひ一度ご覧あれ。このスケール、いかにもベルトルッチ。 7点(2003-12-15 18:20:54) |
29. 薔薇の名前
中世ヨーロッパの宗教感を題材とし、それらをリアルに描写したものは大抵恐ろしく、悲しく、そして不条理なものが多い。でも今作品はそういったものがベースにあるものの終始推理もので、せっかくの素晴らしい世界観がちょっともったいないような気がする。推理ものの場合、推理そのものはもちろんだが、推理する人の人間性がうまく描かれてこそ好印象を得れるものと思う。その点では満足できる出来だと思います。 7点(2003-11-21 17:10:04) |
30. ベルリン・天使の詩
《ネタバレ》 確かに中盤あたりは退屈だったかも。モノクロの必然性も最初はわからなかったが、ヴェンダースの映画なのでこのままで終わるはずはないと思い見ました。最後まで見て納得の作品。元天使のピーター・フォークの「人間」を満喫している姿がすごくいい。戦争の世紀を象徴するベルリンを背景に、それでも人間って悪くないよ、というメッセージがじんわりと伝わる。 8点(2003-09-19 11:02:10) |
31. カサンドラ・クロス
「タワーリング」「ポセイドン」と比較されてますが、三者三様に面白い。迫力では2作品に劣るものの、ストーリーはこの作品が一番好きです。パニックものでもあり陰謀ものでもあり。パニックのジャンルだと損をしてるかも。 7点(2003-09-03 12:44:16) |
32. パリ、テキサス
《ネタバレ》 映画で泣くなんて事、そうは無いんだけど、泣けました。冒頭のしゃべらない主人公のなんとも言えない表情と行動で「北の国から」の五郎さんを思い出してしまった。その後、親子のふれあいのシーンでもバックに流れるギターの音色にまたまた「北の国から」を思い出してしまった。はっきり言って想像していたストーリーとは全然違った。いい意味で裏切られました。盛り上げる場面がまったく無くてもここまで見せてくれる映画ってあるんですね。ハンター君でしたっけ。この子がホンマいい子。記憶にほとんど無い父との再会に最初は戸惑いはあるものの、結局この子がリードして絆を取り戻すし、ラストの母との再会もやっぱりこの子からゆっくりとそばに行き抱きしめてもらいにそっと手を母の腰にまわしていく。こんなものわかりのいい子、おらんよ! 8mmビデオのなかで、ハンター君の3歳の映像、本人ですよね?良く似た子? うちにも子供がいるが、ビデオいっぱい撮っておこうと思った。 9点(2003-07-04 13:02:37) |