Menu
 > レビュワー
 > なんのかんの さんの口コミ一覧
なんのかんのさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2336
性別

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作国 : 韓国 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順12
投稿日付順12
変更日付順12
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  子猫をお願い
インチョンが舞台。海があり、カキ採りがあり、外国の船員がいて、ソウルに近い微妙な距離。その地方都市の雰囲気が良く生かされている。いいとこに勤めてるけど高卒のつらさを味わってるの。ぼーっとタバコを吸ってるの(ペ・ドゥナ)。いかにもいそうな固い子、などなど。次第に下がって膨らんでいる天井の下で暮らしている圧迫感。迷路のような道の果てにある。青春の終わりを描いていて秀逸。はしゃいでもすきま風が吹き抜けていく感じ。携帯でも「あんたの知らない友だちといるの」とか。親が離婚するとこもあれば、家族で食事に行ってうんざりするとこもある。はしゃぐ親父、けちな親父。なんら目新しいことは描かれていないが、土地の雰囲気がきれいに包み込んで統一感を出している。メールの文字がバスの窓に現われたり、ビルの壁面に電光文字で現われたり。
[DVD(字幕)] 6点(2014-03-03 09:56:08)
2.  箪笥
ゆったりとしたペースが心地よい。おどかしに新手はないが、やってることは正しい。姉妹は髪の毛の長さでのみ見分けていたので、暗がりになると判断不能になった。だからドラマとして理解してはいない。再見すれば発見することもあっただろが、ホラーだと「一つ一つの怖がらせ」を味わえればそれでいいと思ってしまう口なので。だから継母と妹(?)が重なるようなイメージが、よく分からなかった。妹の死に対する責任感の妄想? 洋風の家であった。韓国風の家じゃだめなのか。東洋的な味わいのほうが合う世界の気がしたが。お父さんはほとんど大杉漣だった。
[DVD(字幕)] 6点(2014-02-27 09:37:10)
3.  春夏秋冬そして春
西洋のイメージした東洋を見ている気がずっとした。老師の感じなんかスターウォーズみたいだし、池の中の浮き堂も美しいんだけど、西洋の視線を経由してるように感じちゃう。季節ごとに若者の設定が替わるの。罪を越えて次の世代の老師になる。それらを仏が高みから見てござる、って感じ。猫の尻尾で般若心経を書いたり、どうも禅的なハッタリにすべて感じられ、まあ禅と言うものが、大部分そういうハッタリの世界なのかもしれないが、他者の思惑を意識しすぎた精神性って、やでしょ。こちらが必要以上に拒否反応起こしてる気もするけど、せっかく画は美しいんだから、それを素直に愛で られるストーリーだったら良かったのに。むかし韓国で作られた『達磨はなぜ東へ行ったのか』なんてのは、素直だったよ。
[DVD(字幕)] 6点(2014-02-22 09:48:46)
4.  大統領の理髪師
これ昔の邦画だったらフランキー堺の役だなあ、と思い、今だったら、とあれこれ考えたが出て来なかった。こういうタイプの役者がいなくなったというより、そういう役柄がなくなっていたのか。善良だがしたたかな「庶民」。今の邦画には「庶民一般」が登場しなくなったのかもしれない。花札をやってる場があり、悪しき日帝時代の記憶、というふうに受け取る場面なのかも。責任がかかってくるのが恐ろしく、子どもですら拷問に掛けていく体制。飲み込んだカプセルを排泄するのと、エンコした大統領葬儀車が重なる。次の大統領全斗カンの禿頭が最後のギャグになる。全体に黄色味がかったトーン。
[DVD(字幕)] 6点(2014-02-14 09:55:27)
5.  オールド・ボーイ(2003) 《ネタバレ》 
壮大な復讐。オ・デスは口数が多すぎるんです、という罪か。15年の監禁が復讐だったのではなく、解放の後に復讐が仕組まれてるの。アルバムをめくっていくときのサスペンス。口数が多すぎた罪の罰として、己れの舌を切り取る。復讐者のユ・ジテののっぺり顔が怖い。復讐の正体が映画のキモのすべてで、このねちっこさをすごいと褒め称えるか、きもちわる~いと顔をそらすか、微妙なところだが、こういう遠大な計画そのものの迫力ってのはあるわな。それが善きことであれ悪しきことであれ、真剣なことであれつまらないことであれ、途中で挫けずにやり通していたってことの凄味。けっきょくそこがこの映画の・この犯罪のキモ。
[DVD(字幕)] 6点(2014-02-12 10:14:25)
6.  親切なクムジャさん
個人による復讐劇は美しいのに、集団による復讐劇はなぜ気色悪いのか。なにやら儀式性が出てくるからか。なぜ儀式は気色悪いのか、ってな脇の問題に途中で頭が行ってしまった。仁侠映画の美しさはある程度儀式性から来てはいなかったか、とか、集団復讐劇の元締めである忠臣蔵の事件そのものはただただおぞましいと思うのに、そこから派生した芝居や映画はそうでもないのは何で? とさらに脇道にとめどなく進んでしまい、そのことを脳内にメモして気を取り直したが、気分は戻りきらなかったかもしれない。申し訳ない。この監督横移動で捉えるシーンが好きなよう。なにやら遠大な計画が進行している気配が漂っている前半がいい。ラストのほうはよく分からなかったけど、青年見ると死んだ犠牲者思い出してしまい恋になれないってことなのか? 音楽はバロック調。
[DVD(字幕)] 6点(2013-09-25 10:11:21)
7.  春が来れば
日本で公開される韓国映画は都市部のが多く(単に私がそういうのしか見てなかったのかもしれないが)、これは炭坑の町、韓国の田舎の空気を味わえたのが一番の味。眼病が流行ってるの。あれは炭坑ゆえの地域病なのか。といって公害告発には進まない。最後に主人公の音楽講師も眼帯をして、町に溶け込んだことを示す。世話焼きの母親もいい。あくまで比重は主人公の大人であり、生徒は脇。親の理解を取り付けるときにふさわしいのは「威風堂々」。あの曲のように至って正攻法のドラマで、その正攻法ぶりが心地よかった。(今思い出したが最近の『昼間から呑む』ってのも地方色を味わえる韓国映画だった)
[DVD(字幕)] 6点(2013-09-20 10:20:53)
8.  達磨はなぜ東へ行ったのか
渋い題材を、渋い顔した人たちで、渋く描いている。深く深く沈んでいこうという意志。タルコフスキー的なものを予想してたんだけど、違った。タルコはかなり自分の世界を作っていく方なのに対して、こちらは自然をそのまま切り取ることことをルールとしてるみたい。タルコだと、水の中に壊れた自転車を置いといたりするけど、この人はしない。老師の灰を撒く水面は、枯葉が彩りを添えるだけ。自然物だけの、手を加えない美しさ。与えられただけの美しさ。西洋と東洋の感性の違いでしょうか。鳥は「畏れ」、牛は「平穏」の象徴か、なんて考えちゃうのも西洋的かなあ。老師を荼毘に付すときの鳥の鳴き声の効果が素晴らしい。そして牛に引かれてもとの寺に戻っていく。別に「禅とは何ぞや」という映画ではなく、「禅のある風景」と思えばいいんでしょ。夏から冬への森のたたずまい。夏の夜の虫の声、秋の枯れ枝のシルエット、といった味わい。少年が漂いだす瞬間は息を呑みます。無責任な西洋観光客の気分で、「う~んZENだ」などと禅を齧った気分になるのが一番いい鑑賞法かも。
[映画館(字幕)] 8点(2013-07-24 09:54:11)
9.  昼間から呑む 《ネタバレ》 
豪放磊落なヒゲ面の漁師がこの世を謳歌するような題で、「なんか文句あるかっ」と凄んでるみたいな迫力があるが、そういう人生を励ましてくれる映画ではなく、「NOと言えない若者」のトホホコメディだった。それも人生、これも人生。呑んだ勢いでの友だち間の約束を、彼だけ守ってひなびた・寒い・虎が出る地方のペンションを訪れた主人公の苦難の旅路。市が立つ、と言っていたのは昨日のことだった。出会う人々につつがなく対応しようとして、窮地におちいり続ける。自分が年上だったらおだてられ、自分が年下だったら焼酎を呑まされ、儒教の国もつらい。韓国の地方の風物、小さな「なんでも屋」のおばさんなぞ実感ある。すけべ心というか、恋愛願望だけは挫けないのが若者の特権、いう話。ラストが秀逸。後半ちょっと分からなかったところがあり(公衆電話の外での財布回収?)、物語として何か理解し損なってるんだが、コメディとしてのノリは掴めたつもり。悪くない。
[DVD(字幕)] 6点(2013-02-14 09:47:32)
10.  冬の小鳥 《ネタバレ》 
息苦しくなる映画で、この作品のトーンからすると「最後は幸せになりました」じゃなく、最後はきっと「それでも挫けずに頑張ると決意に燃えた目をするぞ」と思っていたら、ラストまで必死に状況に耐えているだけで精一杯で、そんな決意に燃えている余裕すらない。周囲に気を配り、警戒し、次に自分を待っているものの気配を感知しようとそれだけで必死。生きていくって濃縮するとこれなんだ。たしかに人生の真実が描かれてはいるが、ちょっと私には息苦しすぎた。スマイルスマイルって言われても強ばるばかり。変に印象に残っているシーンが、自殺未遂した脚の悪いお姉さんの退院後の挨拶の場。あらたまって、教会にふさわしい悔悟の言葉を連ねていると、幼い子たちからクスクス笑いが起こり、やがて照れていた本人も笑い出す。このシーンがよかった。息苦しさがフッと抜け、この施設の空気が全体として感じ取れた気になった。こういうシーンをもっと欲しかったな。一番親しかったスッキがアメリカに養子にもらわれていって本当に独りになり、スッキと一緒に弔った小鳥のように自分を埋葬してみたり、プレゼントの人形を壊したり、もう最高潮に息苦しい場が、ああいう息を抜くとこがもっとあったら、息苦しさを越えた正体を伴って立ち現われたのではないか(あのスッキっていうのがよく描けていて、主人公にとっては唯一の友だちなんだけど、ちょっと鬱陶しい感じもちゃんと表現されていた)。こぶとりじいさんの話は韓国にもあるんだな。それとも植民地時代にこっちから伝わった可能性もあるか。自分の置かれた運命の重さを次第に理解し、ただただ呆然としている主人公の雰囲気が誰かを連想させるんだが、とずっと気になってて思い出せず、床に入ってから唐突に思い当たった。皇太子さんちの愛子さんだ!
[DVD(字幕)] 6点(2012-05-22 10:04:22)
11.  息もできない 《ネタバレ》 
てっきり娘の復讐が話の本筋になるのかと思ってた。母の仇。ヤクザモンに突っかかっていった態度は、その復讐心を秘めているからだと思ってたら、憎しみの感情は曖昧なまま、彼女は男に「癒しの膝」を提供してたりする。男は、娘の母と自分との関係を知らないまま最期を迎える。その最期を導く男と娘の関係さえ知らない。もちろん現実世界ではこういう知られない偶然は多々あるだろうし、作者は物語の綾を最後にはほぐさなければならない、という義務があるわけでもない。現実社会は物語ではない。でもそれなら甥を絡めるのは物語の定番過ぎないか。遊び相手になってやり、時にはマスクまで付けてジャレあってる。最後は幼稚園の学芸会だ。主人公の柔らかい内面への示唆だとしたら安易過ぎないか。そこらへんの作者の態度が不確かなので、観てて主人公やヒロインを「すっきり掴んだ」って気になれなかった。一番気に入った人物は、下につくチンピラ。お笑い芸人にでも似合いそうなヒョロッとした顔してて、主人公にはビクビクしてて、でも荒れると本気で、なんか一番現実にこういう環境にいそうな若者の空虚をリアルに感じた。
[DVD(字幕)] 6点(2011-06-12 10:44:27)
12.  牛の鈴音
ドキュメンタリー風ドラマ、もしくはドラマ風ドキュメンタリー。純粋なドラマだったら「ほのぼの老夫婦のスケッチ」で決まっちゃう。ばあさんはいつも愚痴を言ってるが、ムッツリじいさんとのコンビが夫婦漫才のようで、「いやあ、でも本当は仲がいいんだよ」って気分に落ち着いていくだろう。でもドキュメンタリーの血も混ざっているので、なにやらチクチクと残るものがあるんだ。そこを買う。このばあさんの愚痴、けっこう本気な不快が籠もっていて、これは東アジアの農家の嫁がずっと忍従してきた愚痴なのではないか。労働力としてまず第一に考えられてきて、牛にやる草をこの年になっても刈る仕事をさせられる。ばあさんの牛に対する不満は、同じ農耕労働力として扱われてきたもの同士の憤懣が籠もっているようでもあり、奇妙な三角関係すら時に感じられるのだ。この感情のほつれは、ずっと東アジアの農民の間にあり続けてきたんだろう、という長い歴史がほの見える時がしばしばあった。でも仔牛を売るときなんか、けっきょくばあさんの意見が通っているし、対外的な実権はばあさんのほうが握っているらしい。それなりに釣り合いは取れているのだろうか。消えゆく家畜農耕の、人と牛との交わりの記録だが、消えゆく一昔前の「農村夫婦」のあり方を記録してもいる。
[DVD(字幕)] 6点(2011-04-10 09:59:47)
13.  渇き(2009) 《ネタバレ》 
いくつかのモチーフが作者のなかで溶け切れないまま仕上がってしまったようなところがある。だからいろんな面から観られる。潜在的な自殺願望者であった神父が、吸血鬼になることによって成就する話。現代のシンデレラが神父によって救出されるが、変な方向に解放されていく話。不倫の男女が女の亭主を殺すことに成功したが、その亡霊に悩まされるという古典的な怪談話(個人的にはここらへんの線が好きです)。もっともソン・ガンホの神父顔やら吸血鬼顔やらは味わい深いユーモアをたたえていて、そこらへんに徹しはっきり喜劇の線にしてくれてもよかった。ラスト近くのマージャンの場から殺戮に至るあたりは、ホラーコメディとしていい線いってる。でも映画全体としてはなんかどれも中途半端で、その多面体ぶりを楽しむってとこまでは、こちらの心に余裕がなかった。人物ではヒロインの義母が存在感たっぷり。主人公たちはとうとう最後まで彼女は生かしておく(あんまり血がおいしそうではない)。血をすするカトリックも、孝を強いる儒教の伝統の根強さには負けるってことか。
[DVD(字幕)] 6点(2011-04-08 09:58:58)
14.  母なる証明 《ネタバレ》 
母の周囲は克明に描かれる、それ以外は曖昧渾沌。その曖昧渾沌に対して母は挑戦し、ある種の充実に包まれる。探偵の興奮、忍び込みの冒険、発見と推理、この充実の果てにたどり着いた野が映画の冒頭シーンだ。この映画驚かすところは多々あるが(被害者の奇妙な姿勢、不意の鼻血、話の思わぬ展開…)、この冒頭はかなりびっくりした。普通の実写シーンの背後に音楽が聞こえてきて、それに合わせて踊り出す、ってのは、ミュージカル映画でダンスに入る瞬間のスリルそのもので、日常から非日常へのジャンプするあの興奮がこう使われ得るとは思わなかった。ミュージカルでは平凡な日常から、たとえば恋を歌い上げる非日常へとジャンプするわけだが、ここでは探偵の充実した時間から、非日常へジャンプした空虚を描いていたと後で分かる。母と子と立場が逆転してしまい、あの充実が抜け落ちていく、「しっかりしなきゃ」という心構えが必要なくなってしまう。そして罪の重さだけがのしかかってくる。あのラスト(併走する車から撮影し続けたのか)、本当に達成できるのかどうか定かでない忘却へ向かって、非日常を疾走するダンスで締められると、なんか物語としてはスッキリできなくとも、映画としてはきれいに決まったな、と得心させられてしまった。被害者を街から丸見えの場所に置いたんだよ、と悪友が推理するあたり、そういう方向(社会の悪意)に話が収斂していくのかと思ったのだが、そうでもなかったみたい。あの夜景のカットはかなりゾクゾクしたんだけど。
[DVD(字幕)] 7点(2010-07-30 10:14:41)
15.  風の丘を越えて~西便制 《ネタバレ》 
典型的な芸道ものなんだけど、新鮮に感じた。神話的な旅芸人を、素直に現実の中にはめ込んでいる。一族だけの至福感は、もう田舎道をやってくる長回しのシーンで満ちている。ここは本当に神話から抜け出してきたような雰囲気がある。一族の宴。けっきょくこれが彼らが一緒にいられた最後の時になるわけだけれども。このあとは、歌ってるとベサメムーチョの楽隊に音は消されていく。没落感覚。薬のPRしたり、お酌させられたり、兄弟弟子は麻薬に溺れていく。美しい文字絵も流行らなくなる。映画はただただ滅びる側に寄り添って、現実の中に埋没していく神話を記録していく。で失明。彼女が盲目になってからの風景描写は一段と凄味を増し、「蕭条」と言うんですか、芸の奥の世界へ分け入っていく感じ。現実の中から神話が蘇ってくる。そして更なる伝承を思わせる旅立ちのラスト。いつもは「湿っぽい」というのは、映画の感想としては否定的に使っていたものだが、これなんか実に「上品に湿っぽい」。どんな方向にも洗練されれば感動があるのだ。
[映画館(字幕)] 8点(2010-07-06 12:10:24)(良:1票)
16.  チェイサー (2008) 《ネタバレ》 
前半は夜のドラマ、夜の街よりも夜の住宅地のほうが怖いのだった。街はとりあえず公共の顔をして門を開いているが、住宅地にあるのは閉じたドアと壁、中には家族の笑顔もあるだろうが、おぞましい世界も潜んでいる。そのおぞましいものがときおり路地に抜け出し、追跡が始まる。閉じた家から開いた都市へつなげている路地が、迷路のように延びている。追うのが走るのに似合わない太り気味の中年男、ってところに迫力があり、それがこの映画のすべて。配下のちらし配り男(リアリティあり)も走る。主人公は女を危地に至らしめた贖罪で執念を燃やすのだが、さらに子どもに母親を取戻すという要件も加わる。それで説得力は膨らんだかも知れないが、ドラマの輪郭はやや緩くなってしまったような。この手の犯人の気味悪さもちょっと型が出来つつあって、新鮮味を出すのが難しくなってきている(という社会も困ったものですが)。警察の対応が無能すぎないか。
[DVD(字幕)] 6点(2010-02-06 12:01:45)(良:1票)
17.  レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦―
予想はしてたが、やはり船いくさは映画では弾まない。スピード感が出ないからか。しかも夜で広がりが出せないし。朝の低い光の中を騎馬軍団が駆け込んできて、やっと活劇映画らしくなった。第1部でもそうだったが、旗の横についているタコの足みたいの、あれなんて呼ぶのか知らないけど、あれがなびくとこがいい。あと楯で囲って火を防ぐのが、昭和の機動隊の火炎瓶対策を思い出して懐かしかった。ニュースの安田講堂なんかで見た気がする。でもこれぞという新味のアクションがなく、二酸化炭素を大量に排出してるなあ、といった感想が先に来てしまう。講談調が出たところは、孔明の矢の回収作戦と風の向きが変わるところあたりか。作戦を互いに類推して裏をかこうとする両者を、つなげて描くあたりもいい。敵方の蹴鞠兵との友情は、こっちが男のデブ助君に見えないので、ちょっとつらかった。トニー・レオンって、どうしていつもああ憂い顔なんだろう。
[DVD(字幕)] 6点(2009-11-27 12:12:19)
18.  レッドクリフ Part I
画で見る講談って感じ。英雄豪傑の活躍を張り扇でバンバン叩きながら語っていく。活躍するのは名のある者たち、つまり支配者のドラマなんで、名のない兵たちはただただ屠殺されるだけの存在となる。あんがいこのほうが、豪傑同士の一騎討ちなんかより戦争の実相を映してはいるのだろうけど、名のない兵たちによる戦場の悲惨の現状を近代戦で知ってしまった者にとっては、爽快感が来る前に陰惨さを感じてしまう。張飛など体育会系の影が薄く、諸葛孔明やシュウユといった軍師が主人公なので、戦場の情景がやや北朝鮮のマスゲームっぽくなってしまった(偉大な将軍さまのもとで一糸乱れず、ってのが東アジア文化圏の伝統なんだな)。戦場より、彼らがいかに人物の器が大きかったかを描くあたりの方にドラマがあり、そこで講談調が生きる。たとえば牛泥棒に関しての規律と温情の処理とか、文字通り「琴瑟相和して」二人が互いを認め合うあたり。そりゃクサいと言えばクサいが、古典のコスチュームを装うとそのクサみが講談っぽい味わいになるのだ。映像としての講談調は、ラスト、孔明が放した鳩が河を渡り船団を越え、駆け込んでいく騎馬軍団を追い越し、曹操軍が蹴鞠してるところにまで飛んでいくとこ、あそこなんかはまさに映像で張り扇をバンバン叩いている気分。
[DVD(吹替)] 6点(2009-11-24 12:13:45)
19.  シークレット・サンシャイン 《ネタバレ》 
周囲に構えて生きているヒロイン、母一人子一人で頑張らなくちゃならない、といつも自分に言い聞かせているようなところがあり、変な人なのよ、という陰口も彼女をさらに固める。彼女を支えているのは、何かに“当てつける”情動。そもそも死んだ夫の田舎に越してきたのだって、自分の家族への当てつけのようでもあり、また浮気をしていた夫への当てつけもあるかも知れない。外部に対してそのようにピリピリに張りつめている彼女の息子がさらわれる。誘拐犯の電話の声を聞かせない演出が、かえって臨場感を高めた。これがドラマの芯かと思っていたら事件はあっさり閉じられ、そこから本当のドラマが始まった。彼女は葬儀でも泣かない、死亡届も出し、しかしそこで心が崩折れるように、教会を訪れ号泣する、彼女が初めて鎧を脱いだように。教会の仲間とのどことなく浮わついた陽気さの描写がうまい。おそらく多くの信者は、こういう会合での仲間意識のなかで安らぎを得ていくのだろうが、彼女は仲間とは偽の陽気さで交際するだけで、神と真面目に向かい合ってしまう。だから、自分より先に犯人を許していた神に、裏切られたというショックを受ける。神を信じなくなるのではなく、神に当てつけようとする。神への復讐が始まる。かつて号泣した教会で今度は机をバンバン叩く。嫌がらせの数々、そして天に当てつけるように、手首を切る。これは死ぬのが目的なのではなく、当てつけるのが目的だったので、「助けてください」と初めて外の人に援助を求めることになるわけだ。だからこのシーンは二重に痛々しい。神への憎しみという最後の突っかい棒も失ってしまうのだから。市井の一女性を追いながら、この映画は魂の広大なオデュッセイを描いた。周囲に警戒し過ぎる彼女はただの変わり者だろうか、何かに当てつけたいという情動は甘えだろうか。私はそうは思わなかった。現代に生きる者は、多かれ少なかれ彼女と無縁ではいられないように思った。すごく厳しい張りつめた映画で、唯一ソン・ガンホの出るシーンがホッとさせ、牢獄の誘拐犯の“聖なるものに囚われた悪”と対比された“俗なるものに馴染んだ善”の優位を感じさせた。
[DVD(字幕)] 8点(2009-03-10 12:17:42)(良:2票)
20.  八月のクリスマス(1998)
いわゆる難病ものではなく、病状でドラマを動かしてはいない。そもそも病名すら与えられてなく、特殊な悲しみにならなくしてある。焦点は死の準備のほうだ。主人公は去る者として社会を眺めてるんだけど、それが無責任になるわけでもなく、写真師として記憶の記録係を粛々とこなしながら、去った後の準備を進めている。その人生との距離感がいつも主人公をニコニコさせているのだろうか。老父にビデオの要領を教えるところが泣かせた(リメイクした日本版ではDVDになってた)。あとは野となれ山となれ、でなく、たつ鳥あとを濁さず、のほう。娘の、年上の“おじさん”に対する興味・からかいが恋に移ろっていく感じがなかなかよく、主人公も、禁じられた恋なんだ、と歯を食いしばるのではなく、人生への感謝になっていく。そう、これは人生への感謝を描いた映画。
[映画館(字幕)] 7点(2008-11-23 12:41:59)(良:1票)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS