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あにやん‍🌈さんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

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コメント数 2517
性別
ホームページ http://coco.to/author/aniyan_otakoji
自己紹介 レビューを相当サボってしまってるの、単に面倒になっちゃってるからなんですよね。トシのせいか、色々とメンド臭くなっちゃって。
映画自体、コロナ禍以降そんなに見に行かなくなったのだけど、それでも年に70~80本は見てるワケで(でも今年は50本行かないかな?)、レビュー書けよ自分、って思ってる、でもなんか書かない、みたいな。
これからは今までよりも短文でレビューを上げてゆきたいな、と思う次第であります・・・微妙だけど。.

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1.  バイオレンスアクション 《ネタバレ》 
 ハシカンがバンバンとアクションキメる映画なんてそれだけで最高!...って期待してたのだけど、酷くポンコツな映画でシオシオのパーよ。最初からバカくさいカット割、編集で台無し。   そもそもハシカンがなんで殺し屋なのか判んないのよね。どういう過去、経緯、経験、意志、思い、キモチから人を殺してるのか最後まで不明。人殺しよりも簿記の勉強の方が大事らしいっていうのは判るのだけど。  それに毎度お馴染みなヤクザの内部抗争話なんて面白くもなんともない上、親分がねちっこいクドい演技(つーか芸風)でゲンナリな佐藤二朗さんでしょ? 更に岡村隆史さんもテレビで見るいつものバラエティノリだし、アイツただの不死身だし、あんな店構えじゃ普通にお客さん入ってきちゃうの当たり前だし、警察存在してないし、あの状況から彼が生き延びる方法を論理的に説明して頂きたいところだし、もうマジメに映画作ろうって気はないです、みたいな。  唯一良かったのは太田夢莉さん演じるスナイパーだりあくらいね。彼女にはドラマがあったし血が通ってたわ。それでももっと掘り下げて、いや、せめてもうちょっと長くスクリーンに映しておいて欲しかったけれど。   これマンガ原作なので多分マンガの感覚を映画で表現してみようとしてるのよね? でもコマ割みたいな繋がってないカットは本当にちゃんと繋がってなくて破綻しちゃってるわ。そのアクションと次のアクションは矛盾してるので成立しません、みたいな箇所がたっぷり。ハシカン本人が動いてるところはモッサリしてるし、かと思うとフラッシュかソニックかみたいな動きしちゃったりするし(あれだけ動けるのならば中盤以降苦戦なんかしないハズでしょ?)。   もっと圧倒的に激強で可愛くてカッコいいだけで良かったのに、そしてもっと上映時間ずっと短ければ良かったのにね。途中でもう見るのやめて帰ろっかな・・・とか思っちゃったわ。そうは言っても貧乏性だから見ちゃうんだけど。
[映画館(邦画)] 3点(2022-09-08 21:30:26)(良:1票)
2.  ハケンアニメ! 《ネタバレ》 
 2つのアニメ番組の制作に携わる人々の姿を通じて、作品を創造してゆく動機、意志、苦悩、スタッフ間の摩擦、調和、制作にまつわる現実的な障害、問題、組織のあり様を面白く、そして感動的に描いているわ。  創作意欲に突き動かされればそれで作品が成立するワケじゃなくて、1つの作品が世に送り出されるまでにとても多くの人手と手順を踏む事になる、それが生々しい混乱劇となって興味深く見られるの。   個性的な登場人物に揉まれながら成長してゆく新人監督を吉岡里帆さんが好演。最初から最後まで飾り気のない地味なキャラなのだけれど、だからこその存在感があって。  そして彼女が(一方的に?)反目する事になるプロデューサーの柄本佑さんは淡々としながら要所要所でインパクトを与えるおいしい役どころ。個人的にはこちらの『サウンドバック』組を中心に見てたカンジで中村倫也さん&尾野真千子さんの『運命戦線リデルライト』組にはそんなには気持ちが動かなかったかも。   映画は2つのアニメが競いあって放送開始から最終話まで駆け抜ける様を描いているのだけど、その期間の設定ゆえ、ちょっとエピソードが足らない感もありつつ長さを感じさせもして。いきなり全てが進行中な状態から始まって大勢の人達、多くの舞台、多くのセリフが駆け抜けて、それでも監督の自宅やお風呂屋さんのシーンで緩急付けてるつもり、なのでしょうけれどゴチャゴチャした印象とテンポ悪くなってる印象とが混在しちゃってるカンジね。  2つのアニメの映像がかなり挿入される事で更にゴチャついた感が無きにしもあらずなのだけど、でもその2つのアニメはしっかりと設定、デザインされて、よく動いてちゃんと世界が確立している状態は見事だわ。   あと、大事なところがパロディなのはむしろ残念。『ライトスタッフ』や『アルマゲドン』や『モンスターズ・インク』やアレやコレやでお馴染みの横並びスローモーとか、エンドロール後のラストカットとか、この映画オリジナルな映像ではないって印象になっちゃって。   そしてどうしても気になってしまうやりがい搾取感。この映画はアニメ業界の実態を色々と描きつつも現場の闇からは目を逸らしている感じね。熱意にほだされて動く下請のアニメーターたち、だけど下請スタジオの多くのアニメーターがいくら働いても残業手当も受け取れず10万円未満の固定給で生きている現実があって、でもこの映画は現場の上の人達の熱意は描いても、それを支える下の方の人達の問題は語らない、そこが「あくまで娯楽映画として見てください」っていう、本編で描かれていたしがらみを突破してゆく意志に反してるこの映画の皮肉な限界。  今、映画の製作現場でのセクハラやパワハラ、違法な労働体制が白日の下に晒されている中、この映画はひと昔前の作品って感じがしないでもないわ。
[映画館(邦画)] 6点(2022-05-26 15:53:05)(良:1票)
3.  バースデー・ワンダーランド 《ネタバレ》 
 原恵一監督作品ということで期待しちゃったけれど、フツーのよくあるファンタジーね。『ホッタラケの島~遥と魔法の鏡~』や『ポッピンQ』『ひるね姫~知らないワタシの物語~』なんかと明らかに違った突き抜けた個性みたいなのは無かったかな、って。   こんな世界なんですよ、ってばーって見せるような圧倒感とか高揚感とかって無くて、たとえばハエになっちゃったヒポクラテスが城に向かうシーンなんかはCGで1カットで飛び回って世界を見せてくれたりするといいんだけどって思ったけど、数カットの背景のみ、ってジミさ加減で。でもあくまでCG使わない、ってワケでもないしねぇ。美術設定はちゃんとしてても、それをこれ見よがしに披露する気はないみたい。でも、ファンタジーってそこで魅せてこそ、って気もするのだけどねぇ。   あと、ベテランで実写映画までこなしている原監督なワリにカットの繋がりがおかしかったりぎこちなかったりする箇所があったりして。崖の道で石が落ちてくるカット、クルマはそのカットでは停止する表現がないけれど、次のカットでは既に停止してるわよね? アタシの見間違え?   それでもキャラは魅力的だったわ。主人公のアカネが小学生には見えなくて、冒頭すぐのランドセル背負ってるシーンはかなり前の回想?とか思っちゃったけど、でも、全く性格の異なる叔母のチィとのコンビ、そのかけあいが楽しくて(既に声優として数こなしてきてる安定の松岡茉優と、チィの雑な性格に合ってる杏と)、そこだけで最後まで見られるモノになってたカンジ。逆に言うとソコがダメだとシンドくて仕方なかったでしょうね、って状態ではあるのだけど。   世界の危機と言いながら、実は極端にスケールが小さいというか、ごくごくパーソナルな理由で危機が起きてる、悪の組織かなんかが存在してるのかと思ったら、それだけかい、っていうのは肩透かし感ハンパないのだけど、コレって『不思議な国のアリス』から綿々と継がれた系譜、少女の通過儀礼なオハナシ、アカネの辿る成長の道はあったか~く見ていられたわ。ちょっと能動的に動き出すのが遅すぎな気はしたけど。城に着くまではチィの方が主役っぽかったものねぇ。   色々と惜しいカンジの映画、ラストなんかも読めまくっちゃうのだけど、でも、そこをクドクドと説明しない、コッテリと押しつけない美徳、それが原恵一監督なのかもしれないわねぇ。
[映画館(邦画)] 6点(2019-04-28 20:21:03)
4.  春待つ僕ら 《ネタバレ》 
 冒頭から数分のうちにこのテの映画のお約束が大量に登場して(明朝体縦書きのタイトル、地域関係なく新学期に絶対桜咲いてる、登場人物の名前をバーンと文字で説明、ヘンな色とデザインの制服・・・)、ああ、コレはまたまた定型フォーマット映画が誕生しました、ってヤツね、って苦笑。   引っ込み思案なヒロインと、明るい男子たち。幾度となく見てきたパターンね。ヒロインが様々な経験をして一歩を踏み出して成長します、ってアレ。それも要は見せ方なのでしょうけど、この映画は独自の個性を見せようという気概はあまり見られないわね。あくまでフツーでいようとしてる感じ。   バスケが主題になっているのだけれど、その肝心のバスケをちゃんと描くような事はないのね。あくまで雰囲気だけ。試合シーンでいちいち試合経過の字幕入れるのだけれど、アレを入れなければならないほどにはバスケが重要な映画ではないわ。  ヒロインの作文が辛うじてアクセントになってるかなぁ?  このテの映画のポイントなロケーションの魅力が殆ど無いのは大きなマイナス。   で、キャストがみ~んな高校生に見えないの。さすがに無理があるの。高校一年とか、もうさすがにないわ~、って。もうひと世代下のコ達に演じさせるべきだと思うのだけれども、そもそもが始めに俳優ありきで企画が立ち上がってるんでしょうから、最初から無理を承知って状態なのよね。   映像とか音楽とか主題歌とか演技とか、何かがハミ出してゆくことは決してない、お約束で組み立てられた映画。安定路線なのでしょうけど、そうしてるうちに、邦画のこのジャンル全体が徐々にチカラを失ってゆく気がしないでもなく。いえ、実際に魅力的にも興行的にも今や以前のようなチカラは無いわ。  このジャンルが好きなので、もうちょっと冒険して欲しいなぁ。
[映画館(邦画)] 5点(2018-12-20 19:47:11)
5.  鋼の錬金術師 《ネタバレ》 
 公開前からかなりの悪評が渦巻いていて、なんかデビルパワーを発揮している映画?ってヘンな期待をしちゃいましたが、言われてるほど酷くもなく、さりとて良くもなく、ごくフツーな印象でした。日本人が洋モノ演じる状態はヅカで慣れてますしねぇ。もっとも、ヅカみを感じたのは辛うじて蓮佛さんだけでしたが。   この映画最大の問題は、娯楽映画のクセして見せ場が極端に少ない、ってところでしょうか。冒頭にCGを駆使したアクションシーンがあって、そのノリがずっと続くのかと思ったら、あとはクライマックスまで大々的なアクションは登場しません。その間はひたすら対話シーンとミステリー展開と。その流れがちっとも面白くないのでダレるダレる。1時間40分で語れる程度の中味を2時間13分に水増ししてるような状態で。  それから、エドとアルがメインなハズなのですが、これがちっとも活躍しなくて。画面に出ている時間が長いだけで、実質的にはディーン・フジオカの映画じゃね?って感じ。まあ、監督が「綾瀬はるかが主人公だと思ってたら大沢たかおの映画でした」な『ICHI』の人ですしね・・・  マンガゆえのぶっ飛んだ設定を受容するのも大変ですし、不可解な行動する人達もなかなか理解し難いですし(小日向さんは、何を根拠にあの一つ目を自分の支配下に置けると思い込んだのでしょう?)。   それでも、そんなマンガな話でも、エドとアルの関係性というか、背負った悲劇な部分は楽しめましたし(山田涼介の演技は喜怒哀楽の単純な使い分けしかできてないように思いましたが)、それから松雪泰子姐さんは最高でしたし。『クボ 二本の弦の秘密』の闇の姉妹の実写版みたいな存在で、仮面無しであの仮面顔は恐ろしくも美しくて、ゾクゾクしましたわ。  大泉洋とか本田翼とかの、いつものまんまのイメージの人とかはツッコミどころなんでしょうけれど。   もう少し「小さい子も見にくる娯楽映画」って視点で作って欲しかったかも。そういう縛りがあるところから生まれる娯楽性っていうの、実は今の邦画に必要なものだと思うので。
[映画館(邦画)] 5点(2017-12-04 22:02:57)(良:1票)
6.  PARKS パークス 《ネタバレ》 
 判りやすさとかカタルシスとか、そういうの捨てて到達した歌が結局アレで良かったんでしょうかねぇ? 私には、アレは期待したモノとは全く違ったモノにしか聴こえませんでした。っていうか、彼女が違和感を抱いたソレと変わらなかったように思えますし。   映画は冒頭から学生映画ノリで大変シンドいです。短すぎるカットと、ぎこちない長回しとの組み合わせで、そんなモンで一体何を伝えたいんだ?っていう。  それでも、真っ当な青春映画としての色を見せ始める中盤は楽しめるのですが、後半になるとセオリーを放棄して観念的世界に突入して、ああ、それは送り手側の自己完結パターンだわなぁ、と。作品世界を小説の中に閉じ込めるじゃないですか。その時点でこの映画は我々に開かれたモノではなくて、あくまで送り手の中で閉じてゆく作品なんだと。映画の舞台が井の頭公園と吉祥寺周辺だけで閉じていて外界との繋がりが見えないように。そういうのにお金払って付き合わなきゃならない身にもなってよ、と。   それでもきらきらした表情を見せる永野芽郁はとても良いですし、橋本愛も染谷将太も良いです、歌わなきゃ。   しっかと歌を聴かせてはくれない映画、でも、それでもいい、カタチを変えてでも、遠い昔の記憶が今の人達に受け継がれてゆけば、ってそこが納得できるモノになってないんですってばさ。別に卒論はどうなった?とか、彼女は何者だったの?とか、そういうのはどうでも良くて、ただちゃんと音楽映画として成立していて欲しかったなぁ、と。基本の部分で違ったモノを期待しちゃってたのかなぁ?
[映画館(邦画)] 5点(2017-05-08 19:59:20)
7.  ハルチカ 《ネタバレ》 
 原作はミステリーなようですが、映画にはミステリー要素はほぼ無く「廃部寸前の吹奏楽部をメンバー集めて立て直し、コンクール出場を目指す物語」って事で、まーよくあるタイプのモノになってます。吹奏楽を題材にした邦画だけでも『スウィングガールズ』『ブラブラバンバン』『青空エール』『響け!ユーフォニアム』とある訳ですしねぇ(オーケストラまで幅を広げると更にいっぱい)。   でも、そんなよくある物語も面白い演出で楽しめるものになっています。「期日までに部員9人集めないと廃部」という時間制限モノな前半、人数のカウントを字幕で示して、9人目の達成と共にそのカウントの意外な展開で盛り上げたり、静寂を語るシーンでは実際に無音にして観客にも静寂を求めたり(渋谷のシネコンは客席の半分ほどの入りで、ほぼ若いお嬢様で占められていましたが、場内に響くのは空調の音だけで)。  後半のヒロインが抜けてから19人で演じられる長回しのヒリヒリした感じも、ラストのファンタジーも見応えがあって。  群像劇になると共に、ヒロインの苦悩がよくあり過ぎる以上にヒロインの生気をも奪ってしまうのが残念でしたが。引きの画が多くなって情感に訴えかけますよ、って状態になるのですが、いや、もっとヒロインの顔を見せてよ、っていう。   でもまあ、何より橋本環奈なんですよね。橋本環奈って個性?逸材?を採用した時点で約束された世界があったような、この映画の世界は彼女という唯一の真理によって成立しているようなモンで。いや、他の生徒達も良かったんですけどさ、なんていうか、一人だけ違うステージに存在していて。素早い鉄拳とキックを繰り出す(本来はそういう映画じゃないのですが)彼女の姿に、何かが降臨した瞬間を見たのでした。
[映画館(邦画)] 8点(2017-03-08 20:57:36)
8.  バケモノの子 《ネタバレ》 
 つまんなかったです。   何が問題かって、全部セリフで説明しちゃうの。キャラの状況や背景はおろか、その時の心情や象徴される事柄やメッセージ、テーマまでも。物語まるごとセリフで構成されている状態で、そこに描かれたものが世界の全て、だから当然ながらそこからは情感、情緒が抜け落ち、こちらは頭や心を全く刺激されないんですよね。  一から十までこと細かに説明しなくちゃならないと思ってる、作る側が観客を一切信用してないの。   一方で構成は明らかに不自然で、九太が大きくなってからの取って付けたような唐突な展開は何か途中で色々面倒臭くなったんか?みたいに思えるような雑さ加減。楓との出会いから人間としての意識を広げてゆく部分でのやっつけ仕事っぷりは、急速に映画の温度を低下させてゆくような印象。そこで慌てて色々な伏線を登場させたようにも思えて、その前との繋がりが希薄になっています。   で、せめてじゃあビジュアルで面白がらせて欲しい、刺激して欲しいところなのですが、大して動くわけでもなく(モブはCGでゆーらゆーら動かしてる状態ですし)、目を見張るような斬新な、或いは奇想天外な世界が広がっているわけでもなく。  この監督の作品に共通している、影を付けずにその分動かすっていうの、元々『未来少年コナン』の昔に宮崎駿監督が言ってた事なわけで、時代も違うし、テレビと劇場用映画っていうフォーマットも違うし、杉野昭夫作品のように3段影付で華麗にアニメートさせてみせる世界だってあるわけだし、っていうかならばもっと動かしてみせてよ、っていう。   『サマーウォーズ』以降、アニメーション表現が定型フォーマット化してきていて、その傾向は改善されるどころか、どんどん強まっている気がします。形骸化した国産アニメの姿を見せられているようで見ていてつらいんですよね。宮崎駿監督はどんなに作品重ねたって、作品的な出来不出来は別としても刺激的な絵を作り出してきた、それに比べるとなんか小さいところでまとめちゃってるよなぁ、と。   今、日本の観客に求められているものはこのくらいの塩梅のもの、という作られ方をしているような気がして、ちょっといたたまれない気持ちになってしまうのでした。
[映画館(邦画)] 3点(2015-07-24 21:27:17)(良:2票)
9.  花とアリス殺人事件 《ネタバレ》 
 アリスと花がそこにいる、そこに生きてます。  走って、笑って、踊って、泣いて。   彼女達の時間は無駄だらけ。目的はあっても遠回り、脇道に逸れて、後戻りして、結局は自分達の力でなんとかなった訳でもなくて。それでも、大切でかけがえのないその時間。  その「無駄」を拾ってゆくのがロトスコープによるアニメーション。仕草、動作に生まれる「無駄な動き」は記号化、様式化を拒絶してキャラクターに命を与えます。  もちろん、蒼井優、鈴木杏の「声の存在感」も重要で。これもまたアニメ的記号化、様式化された声優的表現とは全く別の在り方。   アニメーションになる事で『花とアリス』のガチャガチャした印象に比べるとかなりすっきり純化されています。大勢のカメオ出演によってお祭り映画と化していた前作の賑やかさは消え、花とアリスの物語としての純度がぐっと向上して。そして岩井俊二的味わいも幾分スポイルされている気もしますが、私としてはそれは肯定的に捉えてます。  一方で人や場所、エピソードなど『花とアリス』と繋がっている部分はちゃんと存在していて楽しめます。ちょっとアリスも花もキャラが違う感じもしますけど。   真っ白な無から全ての世界を創造してゆくアニメーションは本来、自由なものです。こういう自由なアニメ映画がもっともっと作られていいと思うんです。そして海外の色々なアニメ作品ももっともっと公開されていいと。今の日本のアニメ事情はどうも狭苦しく息苦しくて。
[映画館(邦画)] 10点(2015-03-15 23:39:25)
10.  バンクーバーの朝日 《ネタバレ》 
 なんだかボンヤリした印象の映画。何が問題かって、明るい画でアップの多い高畑充希の表情は印象に残るけれど、肝心の主人公を始めとしてチームメンバーの表情がちっとも印象に残らないという。見終わってみて多くがカオナシ状態なんですよ。   引きの画が大半を占めていて(カフェの中で高畑がみんなに語るシーンでチームメンバー全員をシネスコフレームいっぱいに収めているショットなんか、よく撮れてるというよりは作為に過ぎる感じ)、その上暗い画面が多く、ここ一番の表情が存在していない状態。妻夫木聡はリアクションの薄いキャラとして描かれていますから、更に存在が薄く感じられます。   自分を殺して一歩退いたところで生きる事こそが日本人の美徳である、とばかりに受け身な人々の生を一歩退いた視点で描いているような感覚を受けて、あーコレもまた被害者意識の強い過去の日本人映画なんだねぇ、と。それ、昔からなんか少しでも進歩してる?   この監督、『舟を編む』以降、随分とつまんない監督になっちゃった感じがして仕方ないんですけど。優等生的な映画を撮っていたいのかな?  対象から腰が引け過ぎてるんじゃないかなぁ。
[映画館(邦画)] 5点(2015-01-04 00:26:07)(良:2票)
11.  薔薇色のブー子 《ネタバレ》 
 ただのネタ集映画なので、もう少しちゃんとまとめて欲しいなぁ、と。   一応、物語的なものはありますが、発展的なものというわけではなくて、動機と結論だけがあるのみ、みたいな。もちろん、その間に挟まっているのはただのネタ。   さっしーのキャラが統一されてません。どういうコなのかが見えてこないの。天然系なのか、受動的なのか、巻き込まれやすいタイプなのか、行動力あるのかないのか、とにかくネタの内容によって性格が変わります。最終的にどことなく魅力的に見えてくる、とかいう事がなくて、結局さっしーの演じたネタキャラです、で終わってます。なのでスタイル的には一応成長物語のように見えなくもないのですが、一人の人間としての個性が存在していないために成長もへったくれもなく、ただの動機と結論でしかないのです。   ネタもデパートの来店記念ネタの繰り返しなどはクドいばかり。繰り返しならば最終的なオチがあって然るべきだと思うのですが、ちゃんとオチてました? ただただネタをタレ流せばそれで成立する、って程度の考え方なんですよねぇ。  その上、ネタとしてすら成立してない、そこはキチンとしておこうよ、ってものもあったり。さっしーが無理心中に巻き込まれてボートから池に転落するエピソード、先に金づちだと言わせておきながら普通に自力で池から上がってます。金づちである設定の意味は一切ありませんし無理心中のオチも存在していません。  投げっぱなし、散らかしっぱなしでちゃんとオチ、サゲを付けないのは福田監督作品の悪いクセ。   物語的に父ユースケの存在がアレなので、ごくごく狭いところで閉じてしまうわけですが、それもなんか浅い映画という感じです。そんな取って付けたようなメッセージが必要なんでしょうかねぇ?   ネタをいかに笑えるか、というのがポイントの映画で、でも笑えないネタが多数を占める状態ではさっしーファン以外にはちょっとキツいなぁ、って感じ。いや、さっしーファンもこんなんで楽しめるのでしょうかねぇ? もう少しさっしーの魅力を引き出してあげた方が良かったんじゃない?とも思うのですが、元々コレこそがさっしーの魅力なんだ!って事だったら、すいません。
[映画館(邦画)] 4点(2014-12-16 23:24:56)
12.  春を背負って 《ネタバレ》 
 居心地の悪い映画。大自然がモチーフになっているのに中身は不自然のオンパレードっていう。その不自然な「感動作ですよ」って作りに、なんかいたたまれなくなってしまう感じ。   全編に漂う古臭いセンスは、それはそれでいいというか、この作品のあり方なのでしょう。問題は風景以外の何もかもが作り物めいていてどうにも冷めてしまう点。  映像とセリフと音楽とでこれでもかと説明しまくってきます。登場人物全員が説明のためのセリフと演技を繰り出してくる状態で、特に本来セリフにすべきでない、それこそ映像で語るべき心情、心象がクサいセリフとなってどんどんこぼれ出してくるのが本当にいたたまれないです。   更に、映像に明らかに不要なものと足りていないものがあって、それがおかしな印象を与えています。  安藤サクラが意味ありげに旦那の仕事姿を見つめるシーンは必要ありませんし(旦那が真剣に仕事に打ち込んでいます、という表現であるならば、彼女の曖昧な表情は物語に不要な不安を与えてしまいます)、逆に蒼井優の作る「おいしいご飯」や「母が大事にしていた写真」、更に「小屋の近くで見つけた絶景」はその画が必要なんじゃないかと思います。映画なのだからセリフだけでなく映像でおいしさを見せて欲しいですし、写真や絶景は流れからして当然見えるモノだと思っているとスカされちゃうんですよね。松ケンやトヨエツが眺めてる姿でなくて、カメラが更にその二人の前に出て実際に二人が見ている風景が欲しいんですけど。   映像には見るべきところもあります。雄大な景色はもちろん、通夜のシーンで部屋を埋め尽くしていた人々がさーっとはけて主要人物のみが残るカットなど、さっと静へ転じる巧さが際立ちます。  でも、表情を強調するための寄りや、アクセントとなるスローの多用はそれってどうなんだろう?果たして必要だろうか?って感じてしまって。   善き人々ばかりの物語ならば感動は容易に紡げるハズ、という感じで作られているように思えるのですが、なにか全てが現実からちょっと浮いているように見えて、印象としては「面映ゆい」とか「気恥ずかしい」とか「きまりの悪い」とかいう表現が浮かんできてしまうような映画なのでした。
[映画館(邦画)] 4点(2014-06-15 00:45:05)(良:1票)
13.  ハル(2013) 《ネタバレ》 
 キレイキレイな絵のアニメって地雷だったりする場合が多いので、これもちょっと怪しい感じがしたのですが、ワリとハマった感じで。   同じ年に公開された某邦画と物語の構造がモロにカブってたりしますが、その構造はこちらの方が内容を深いものにするために有用な効果を持っているように思います。   物語に隠された秘密が明らかになる事で、遺された者を見つめる視点が逆に見つめられる視点へと転じ、遡って逝った者の心に触れ、その関係性を多面的に見つめる事ができる、そんな風に思えます。   この奇妙な雰囲気の映画を象徴するかのような疑問点もキレイな世界の中のシミのように散りばめてあって(料理や片付けがやたらに下手なヘルパーロボットだったり、どう見ても空港で旅立つように思えるのはヒロイン側だったり)、切なく哀しい物語を織り成す要素になっています。   ロボットだと思い込むとはいえ、自分の中に生じているであろう数々の生理的反応を頭の中でどう理解、処理していたのだろう?という大きな疑問点はあるものの、近未来という設定でありつつ趣きのある和の雰囲気をそのまま残している京都を舞台に、美しくしっとりと描かれたアニメを堪能しました。
[映画館(邦画)] 7点(2014-02-27 22:19:59)
14.  爆心 長崎の空 《ネタバレ》 
 久しぶりにシュールにコワレてる映画を見たという感じで。   明らかに原爆の事と判るタイトルと、母を亡くした娘と娘を亡くした母の邂逅という設定から思い浮かぶ映画の姿、それを中途半端に(徹底的にではなく)破壊してみせるという。  過去の悲劇とそこからの再生、そして未来への生、そこら辺がキーワードになってゆくのだろうな、と思うとその通りではあるのですが、そこに至る道が尋常じゃありません。   宗教映画的に十字架やキリスト像、隠れキリシタンなどのキーワードを散りばめ、題材的には浮きまくってるとしか思えない唐突な濡れ場(とコトを連想させる描写)が配置され、更に電波を受信したかのようにノアの方舟を作り始める幼なじみ(いや、単に壁に釘打ってるだけですが)等々、じゃあこれは原罪についての映画なのか?って感じもしますが、あくまで半端です。   『夕凪の街 桜の国』(原作の方)と同様、原爆で死んでいった者に対する、生き残った者の心にいつまでも残る「自分は生きていて良かったのだろうか?」という自責の念が語られはしますが、それも機能不全を起こしているかのように映画の流れに有効に作用しておらず。   みんな過去を背負って色々精神的に病んだりもして大変だけどとりあえず命があるんだからなんとなく生きてりゃいいんじゃね?みたいな話を、なんか無理に長崎=隠れキリシタン=原爆って三題話みたいに結び付けて、しかもとっても凡庸な、つまんない演出っぷりで描くものだから、更なるカオスを呼んでいる状態で、ヘンなもの見たなぁ!って点では刺激的ではありました。   ラストなんて、火を点けて燃えちゃったコンテナハウスから生還してドリフのコントみたいに黒くなってる二人が目の前で「やっぱり産むわうふふあはは」ってハッピーエンド状態になってる家族を呆然と見守るという大変にシュールな世界で、これマジメにやってるとしたら相当ヤバくね?って感じがしないでもなく、しかも文化庁コレにお金出しちゃったんだ・・・みたいな。   原爆を題材にしたものが「ネタとしては楽しめる映画」状態っていうのはどうかと思うのですが。
[映画館(邦画)] 4点(2013-07-28 14:29:35)
15.  箱入り息子の恋 《ネタバレ》 
 家という名の檻。家族という名の鎖。そこら辺は判ります。  愛とはみっともなくたってカッコ悪くたって、自分の心に正直にあること。それも判ります。  どうにもこうにも判らないのは、でもこの映画は結果的に主役の二人を「映画」の枠の中に閉じ込めただけなのでは?という事。   前半は快調です。恋愛に至るまでの二人の描写はヘタなサスペンス映画よりもよっぽどハラハラドキドキを味わえます。  しかし、後半の交通事故から家族の強い反対への流れの明らかにワザとな凡庸っぷり、そしてそこから生まれると予測されるドラマをはぐらかしてゆく感じ、更にその凡庸~はぐらかしのパターンを繰り返す事でテーマを語ろうとするやり方、結局、彼ら自身の殻でも家族の鎖でもない、「映画」こそが最後まで二人を束縛していたのではないでしょうか。  主人公がフレームからいちいちワザと外れる事で「映画」に対する主人公の闘争が垣間見えたりもするのですが、そこまで判っているのならば、なぜそこまで意地悪なのかと。  象徴的に何度も登場するカエル、でも、この映画の目はカエルの目でなくカエルを観察する方の目に思えます。   二人の近付いてゆく、遠ざかってゆく、繋がってゆく感じは丁寧に描かれて面白かったけれど、映画をコントロールしようとする意思が表出する事によって最終的に妙に窮屈な映画に思えてしまいました。
[映画館(邦画)] 6点(2013-07-15 14:39:48)
16.  はじまりのみち 《ネタバレ》 
 雨が降ってリアカーの上の母の顔に泥がはねるのですが、あれがいつの間にか綺麗になっちゃってたりしたら嫌だなぁ、と思っていたら、そここそが重要なポイントで。木下恵介の、母に向けた愛がそのまま映画に向ける愛へと繋がる、とても大切なシーンとなって。病に伏し、泥で汚れた母の姿を丁寧に整え、母はそれに応えるように凛とした表情をする。それは映画監督としての姿にも繋がって。あのエピソードにはとても感心しました。   映画は奇を衒う事なく、真面目に映像を重ねています。それゆえ、もう少し冒険をしてもいいのでは?と思ったりもするのですが(わりと判りやすく単調な切り返しが頻出します)、客層や木下恵介生誕100年を記念しての松竹作品という事を考えればそれでいいのかもしれません。   ただ、問題は木下恵介作品の映像をあまりに多く、長く引用し過ぎている点。  たとえば便利屋が『陸軍』を見て感動した事を説明するシーン。せっかくその前に濱田岳がカレーライスやシラスのかきあげとビールであれだけの名演を見せているのですから、『陸軍』の感動も彼にきっちりと語らせるべきだったのではないでしょうか。  映像を切り替えて『陸軍』のラストシーンを延々と最後まで流して説明するという状態は、肝心なところで木下恵介の力を借り、この映画独自の力を放棄してしまっているようなもので。自分の演出力も役者の力も信じてないの?と。  濱田岳に語らせておいて、実際の映像はエンディングに流した方がよほど効果的だったんじゃないでしょうか。   最後の部分での木下作品の引用も長過ぎです。あれでは本編の空気を薄めるばかり。あそこまで長々と本編から離れてしまうと、その後、最後の最後が取って付けたようになってしまって。そこで『クレヨンしんちゃん アッパレ!戦国大合戦』での有名なセリフを言って欲しいの?くらいに浮いている感じがして。  厳選した数カットでバシッ!とキメるくらいにした方が良かったんじゃないかなぁ。   映画は原恵一監督の真面目さが出て魅せる作品だったのですが、木下恵介作品に対する深すぎる思い入れ、愛情が逆に映画そのものの味を損ねさせてしまった感があって、もう少し監督が前に出た方が良かったんじゃないかな、と思いました。
[映画館(邦画)] 7点(2013-06-12 15:38:42)
17.  ハラがコレなんで 《ネタバレ》 
光子が粋なのかどうかを客観的に判断しようとすれば、そりゃとてもじゃないけれど粋とは言い難い訳ですよ。単に無理してるばかりで。どちらかと言えばみっともない。アメリカから逃げ帰ったような状態で、だけど両親にはまだアメリカに居るように思わせてたり、臨月になっても何らかのヴィジョンがある訳でもなく貧乏長屋に逃げる事になったり、自分の生活もロクに確立できてない状態で何が粋か、っていう。んでも、それでいいんじゃない?って思うんですよね。ボロボロになって明日をも知れない状態になっても光子なりの粋を通そうとする姿勢、自分の事はさて置いてでも、他人の事を気遣ってみせようとする姿勢、そういう光子をただのウザいキャラで片付けてしまうようであるならば、それはそれでなんか悲しいじゃん。光子自身はちっとも粋でなくたって、光子が示し続けるベクトルってのは粋なんですよ。ただでさえ人と人との隔たりが大きくなって、だけど助け合いが必要になっているような世の中で、物事を傍観して批判したり冷笑したりしてるよりは、多少無理だったり、おせっかいだったりしても人と関わってた方がよっぽどマシなんじゃないかっていう。仲里依紗が色気を無視した演技で突っ走る光子のその揺るぎのない真っ直ぐっぷりは、いっそ清々しさすら感じるのでした。
[映画館(邦画)] 9点(2011-12-04 19:18:35)
18.  阪急電車 片道15分の奇跡 《ネタバレ》 
阪急今津線、ウチの近所で言うところの東急多摩川線みたいなものですかね。こっちは7駅12分って事で、もう少し短いですが。微妙に鉄分を含む私、去年は関西に二度行って阪急の京都線や嵐山線の茶色い電車を堪能させて頂きました。それはともかく。映画はあちこちにジーンとする感動的な要素が散りばめてあって、ちょっとホンワカしたキモチになっちゃうようなカンジがあって、だけど映画としてはかなり音痴。まず最大の難点は、ドラマとしてみーんなハンパ。メインの登場人物だけで8人存在するのですが、みんなちゃんとドラマを成立させきってないんですよね。電車で他の人と触れ合う事によって、少しだけ状況が変化しました、って描かれるのはそれだけ。じゃあ、その変化によって具体的にどういう結果になりました?っていうこちらの関心事には触れてくれません。「袖触れ合うも他生の縁」を描いた映画としても、映画の視点そのものが袖触れ合う程度でツッコんで行ってくれないのがもどかしくて。そのクセ、リンク関係はゴチャついていて、ラストの二人なんか、きっちり絡んだシーンあったっけ???みたいに自分の記憶を疑うハメになったりもして。それから沢山の「嫌な人間」が登場するのはドラマを盛り上げるために不快感を煽る安いテでしかありませんし(関西のオバちゃん達は個人的にはそんなに不快ではなかったですしねぇ)、頻出するテロップを始めとして説明的な映像が多すぎるのもなんとも。なので、映画としての完成度はかなり低いカンジです。でも、役者がみーんな、いい演技を見せるのですよね。子役からベテランまで、揃いも揃って上手いの。そりゃ泣かされるわ、って状態で。だから映画の印象も良く感じられたりして。実のところ、芸達者に救われ続けな映画ではありました。
[映画館(邦画)] 6点(2011-05-01 17:06:46)(良:1票)
19.  パーマネント野ばら 《ネタバレ》 
おもろうてやがて悲しき映画なのですが、原作を読んで結末を知っているがゆえ、最初から切なく悲しいわぁ、と。ところが、実はシャマラン監督的な「ラストに秘密があります」って物語、原作は最後の最後にサラリとそれを描くがゆえに、なんとも言えない余韻を残すのですが、映画はその秘密について説明をしてしまい過ぎで、こちらが期待して待っていた切なさ、悲しさには到達せず。判りやすさというのを第一にしたのかもしれませんけれど、あそこまで理由を付けて説明してしまうと逆に底が浅い感じがしてしまいます。彼女がそこに至った理由を語らず、色々と考えさせる余地があるからこそ、とても悲しく切なく感じるのだと思うのですけれどもねぇ。さて、それでもサイバラものとしては最もマシな映像化をされたように思えるこの映画、やっとこさこれまでのビンボはつらく悲しい、ってところから脱却。悲惨さをも笑ってみせるサイバラらしさに溢れております。点描されるパーマ屋を中心とした人々の悲劇は傍から見れば滑稽で可笑しく、だからこそここに描かれた人々を愛おしく感じるワケで。中でもそう長く登場する訳でもない小池栄子の存在感は主役を食ってしまっております。この人、『模倣犯』『恋愛寫眞』『20世紀少年2、3』『わたし出すわ』とロクでもない映画(失礼)にばかり出ているがゆえに、これまでまるでいい印象がありませんでしたが、ここでは最近のクリスティーナ・リッチみたいな、一見お人形さん系なクセにちゃんと表情で見せる女優って感じで。病院のシーンでの翳り~大爆発へと変化してゆく表情なんか、今までの彼女のイメージではなくて、もっと存在感があって、なんかいいなぁ、って。一方、主役である菅野美穂は、本来、その設定ゆえに逆に病的なカンジを見せてはいけない役だと思うので、ちょっと演技の方向が違う気がしました。もっと大らかで明るい方が、ラストに効いてくるんじゃないかなぁ。彼女だといかにも過ぎてしまって、ラストで納得しちゃう。あと、サイバラ作品のキーとなる高知の、人の暮らしと自然とが共存している風景は深い味わいがあって沁みてきます。最近の邦画は今の日本のいい景色が捉えられているものがいっぱいあって、これもそんな中の一編。何はともあれ、サイバラの映画化作品で初めて途中でダレない映画でした。
[映画館(邦画)] 7点(2010-06-04 21:28:14)(良:1票)
20.  パレード 《ネタバレ》 
「誰が犯人か」みたいなのは、ワリと最初の方で判り易い伏線が出てくるので、謎解きが重要ではなくて、だけど、実はそんな事はみんな気付いてる、ってところがポイントで。この映画で描かれる1つのコミュニティは、各々が「自分にとって都合のいい存在」である事が大前提で結びついています。相手の見えない部分、闇の部分は、だけど自分に対して害を成さない限りは無関係、どうでもいいと。共生関係にある様に見えながら、絶望的な断絶状態にある、個人主義が行き着いた先は、閉ざされた個と、形はどうであれ「繋がっている」実感から生まれる安心感。その繋がりが、たとえ脆弱なものであっても、偽りや打算が編み出したものであっても、それを「絆」と信じて生きるしかない、そしてそこに自覚がありながら決して変化を望まないところに、この映画の深い深い闇があります。一人一人をケーキのように切り分ける構成には疑問が残りましたが(登場人物が相互作用でラストに向かってドラマの流れを作り出さず、映画すらもあくまでバラバラと切れている状態)、現代に生きる人の心の闇を上手く滲み出させた映画でした。
[映画館(邦画)] 7点(2010-03-09 16:55:50)(良:1票)
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