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エスねこさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 644
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ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23593/
ホームページ http://kine.matrix.jp/
自己紹介 [2010年8月23日]
か…かわも…

(゚Д゚;)ノ

…映画界は今日終わった…。


[2017年7月16日]
猛暑の夜、amazonで映画ではなく『幼女戦記』を寝ないで通し鑑賞。
大局的な戦略から入って行くという、かつてない架空戦記アニメでありながら、その悪夢性を出し切った感がすごかった。
最終話はテーマ的にポエニ戦争から対テロ戦争まで、膨大な戦争のイメージを深く広く全面爆撃して吹っ切れる展開に。
スピルバーグの『宇宙戦争』はバクテリアに仮託してその地獄自体を救いと説いたわけだけど、このアニメはそんな所まで引いて俯瞰する気がサラサラないってのがスゴイです。

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41.  うつせみ
面白い映画でしたが、困った。 最初から最後までオイラ、ほとんど人間を見てませんでした。ミヒャエル・ハネケの『セブンス コンチネント』と、そしてヤン・シュワンクマイエルの『ワイズマンとの休暇』と同系にある、家具と日用品の群像劇でした。オイラがタイトルつけるとすると『第七大陸から来た男』ですな(笑)。 …という風に解釈しながら観ていたので、後半から結末にかけては「前半でオイラの脳が観ていた絵」をご丁寧に繰り返してくれてるだけで、すっかり飽きてしまったという…嬉しいようで全然嬉しくない体験でした。しっかりした土台を作って、その上にまた丁寧な土台を築いたような感じ。入居しようと思ってたビルがない。 キム・ギドク監督、この程度で観客を煙に巻いたと思ったんなら甘い甘い。その先をお願いします。
[映画館(字幕)] 5点(2007-04-04 12:56:16)
42.  かもめ食堂
鮭の切り身に塩をふって、焼き網の上に乗せる。熱源はガスのようだ。当然、油がポタポタ落ちてキッチンはベトベト、換気扇のないらしいキッチンは食堂内と仕切られてないので、店内は場末のホルモン屋のように煤と油が染みついて、そこにはマジックで書かれた「ホッピー」という張り紙が黄ばんで…ないんだな、コレが。 映画のマジックなワケだけど、何となくそこんとこのリアリティのなさだけが気になり、そして悲しかった。言ってみればこの店内、サチエの内面みたいなもんだ。スッキリと美しく、塵ひとつない空間。そこで魚を焼く事は、絶対できない場所。 じゃあキッチンは別の部屋になってた方がよかったのか…? もちろん画面的にはそんな事はないワケで、キッチン・食堂・表通りが素通しで見渡せる店の構造は、(ガラスへの映り込みも含めて)映画中でいろいろな画面の遊びに使用されていて、観飽きる事がない。オイラ的な結論としては、この店はコーヒーとオニギリ以外は出しちゃいけないんじゃないかって気がした。 あと、だれ一人困らずにワリバシを使いこなしてるフィンランド人たちってどうよ。  ま、ゴチャゴチャ突っ込む割に、きっとまた観に行くだろうけど…。
[映画館(邦画)] 6点(2007-03-21 19:07:37)(良:1票)
43.  バブルへGO!! タイムマシンはドラム式 《ネタバレ》 
思いのほか、というか相当に考えさせられる映画だった。 なんで世間一般的に『バック・トゥ・ザ・フューチャー』が度外れに評価高いのか? オイラは「半ば神格化された《アメリカ黄金期の50年代》という古き良き時代を、無条件にバカにできるから」だという考えでいるんだけど、当のアメリカ人にしてみればアレは相当に苦い映画だった…という当然のコトに、『バブルへGO!!』を観ながらようやく気付く。BTTFは80年代、アメリカ第二の低迷期の作品だからね。あの映画を笑って観てる日本の観客は、ある意味で卑劣なのかも知れない。そこに気付かされたのは大きい。 舞台挨拶のニュースで阿部寛が「中身が何にもない映画ですから」と言っていた。役者としては確かにつまらないだろう。深みを一切要求されない人物像だから。これは役者の映画じゃなく、モノの映画だ。繁華街にある森永LOVE、ディスコで踊る女性の太い眉、壁面がガラス張りのマンション…とにかくモノ。過剰な小道具たちが、さして変わらない17年前を意識させ、異空間にしてしまう(特に広末の髪の染め具合は本当に絶妙!)。他方、財務省=大蔵省の中は変わってないが、それも意図的なものだろう。人間はどうあれ、役所は17年ごときでは変わらない。この、モノが語り綴っていくモノガタリは、薄味になったヤン・シュワンクマイエルのソレに通じている。 エンディングのバカらしさも一考に価する。ほとんど埋め立てられた東京湾はバブル期のアホな未来像そのままだし、誰かさんにとっては「あるべき現在」だ。ここで、主演が広末涼子ではなく阿部寛になっているのに改めて気付く。これは「官の映画」だったワケだ。製作がフジテレビと電通であるコトにも気付く。政府の太鼓持ちたちじゃねーか。案外、いやかなり、あのラストはマジだぞ。やりすぎて嫌味とかそういうんじゃなくて、大マジで大団円のつもりで作ってるぞ。「映画の観客はバカだからさー」という、救いようのない慢心があの絵に見えて来るような気がした(あ、でもマシン発明したのは三菱じゃなくて日立だぞ…考えすぎかもしれないネ~)。 そういう意味では、本作は映画の本質に極めて肉薄している。「みんなが観たい夢を観せる」という意味での「すっげー映画らしい映画」だ。でもいろいろ考える所があったのは事実なので、この点数で。もう一度劇場に足を運んで考えてみる価値はあるなあ。
[映画館(邦画)] 8点(2007-03-12 16:56:58)(良:2票)
44.  東京ゾンビ
素晴らしい…! パーフェクト…! ゾンビ映画の一番星だ…! 「…」の余韻に、いろいろな含みがある事をご理解頂きたい(笑)。 最初から最後まで、けっこうマジメに観ちゃいました。
[インターネット(字幕)] 9点(2007-03-09 04:58:04)
45.  エクステ
まるで栗山千明と大地康雄のために作られたような映画。でもそこを栗山千明&大杉漣で撮っちゃうあたりの微妙な意外性というか、なんというか…まあいいや(笑)。とにかく去年予告を観て、あの信じられない光景に目を疑い、呆然としてしまったインパクト故にわざわざ公開初日、初回上映に行ってきました。DVDもらったっす。  なんかねー、スプラッタって以外は話もキャラクターも全然違うんですが『死霊のしたたり』を思い浮かべちゃうんですよ。なぜか。映像が、完全にイッちゃってるからでしょうね。予想外に濃くて重い「社会派でっせ~っ!」ってな感じの内容でしたが、そういうマンガ的な画造りなので、露悪趣味とは方向性がちょっと違う。悪くはありません。 ただ、あれだけの事件に発展しながら、エンディングでパトカーの影すら見せないのはどうかと思います。ちょっと現実感を喪失してるんですよね。あの終わり方は明示的に自分の内面へ逃げたんじゃないかと思います。「ここまで楽しませたんだから、オレの好きなように終わりを締めさせてよ」みたいな声が画面から聞こえて来る。悪いとは言わないけど、どうせやるなら『ポゼッション』のラストくらいまでやっとけよ監督。あまりに逃げすぎで被写体が何なのかよくわからんぜよ(…は言い過ぎ)。  あと、卑怯なまでに子役を巧く使いやがったな(笑)。エクステ襲撃場面での佐藤未来の演技は、完全に栗山千明を食ってます。他にも優子が夢中で語る《美容師になろうと思ったきっかけ》を聞きながら「あー語りスイッチ入れちゃったよ、いつまで話してんだこの姉ちゃん」っていう表情は、「子役」から「女優」になりかけてる感じ。非常に硬質な感じで役が創り上げられてました。 オイラが期待してスクリーンへ足を運び、ここのレビュアーの過半も期待しているであろう大杉漣については、この後のレビューで数多く語られると思うので特にはいいかな。ホント凄いっすよ、演技バカというかバカ演技というか…いろんな意味でえらい人です。  ●追記:ケ6さん援護 thx!(^^; ネットでの評を見てると、美容室で飼ってる猫の描写への言及が多いですね。 「人間は毛をなくした動物である」の原則、つまり山崎=回帰願望という線もアリかな。
[映画館(邦画)] 8点(2007-02-19 10:33:34)(良:1票)
46.  長い散歩
全編曇り空の傑作。これは凄い。 工場から際限なく吐き出される煙、曇り空、位牌と墓、壊れた人々、黒頭巾、たわけた精神論を語る官僚、エイズと貧困の終末論、そして天使とパンツと鳥…。 その、それぞれの記号が意味するモノは観客にとってかなりわかり易い。読み解いて行くと、世界全部を覆ってしまう想定外の巨大なパズルが現れる。 そのパズルはどう完成されるのか? そこにはどんな画が描かれているのか? …いや、そもそも完成されるのか? いやはやまったく、本当に「人生は長い散歩」だよ。
[映画館(邦画)] 8点(2007-02-12 01:31:04)
47.  トゥモロー・ワールド
映像は凄い。凄い映像にちゃんと意味を持たせてるのも凄い。だが、鼻息で飛んでしまうほどに世界が薄い。オイラは映画の観客である以前にSF者なんであって、そこから評価しなければ自分というモノが崩れてしまうのだ。 残念ながらP.D.ジェイムズはミステリ畑の作家なので原作はノーチェック。とはいえ、翻訳が出た時は意図的にスルーしているので、今回観た時も「しまった」という気はしなかった。この話なら『タイムスケープ』を原作にしたって似たような作品を作れるだろう。いやそもそも『緑色遺伝子』や『子供の消えた惑星』という、そのものズバリのブリティッシュSFがあるじゃんかよ…。 結局、現在の世界を舞台にするとヤバ過ぎるのでSFという枠組みを使ったんだろうけど、設定の割には思いのほか世界観が狭い。英国SFの味といえば確かにそうだが、設定から醸し出されなければならない、この世界ならではの「絶望」がどこにもないのだ…スタッフが頭の中で常に「現代世界」を意識していたための、悪く言えば「二枚舌」「手抜き」という事なんだと思う。他のSFのように曖昧に逃げを打てばいい部分でも、堂々と思索不足をぶちまけてくる。まあ仕方ない、これが映画業界の驕りという奴だろう。彼らは大資本を動かす勝ち組みだ。 この(未来への希望がない)世界で、どうして大量の労働者が必要な鉄鋼・銃器・弾薬・ガソリンが豊富に供給される? 科学と人道と民主主義は見直しを食らってないか? もっと大っぴらに植民地制度が復活してないか? …要するに、社会がこれまでやってきた事の、全体的な見直しがかかっているはずなのだ(『緑色遺伝子』を映画化していたら、もっとこういうポリティカルな面も入った複眼的な視野になったと思うんだけどネ)。 「子供を産むのは大変かもしれないが、世界を産むのは簡単だ」とか思ってたんじゃないかね、このスタッフたちは。『ブレードランナー』と同様に、この作品は認めません。  ●追記: 半日かけて頭の中で整理した。今は本作の評価を、もっと短く言える。 オイラが推すSFは、たとえ平和主義の強い理想に裏打ちされたモノであっても、優れた表現を駆使していても、間違いなく、こんな「画面がただひとつの思想に覆い尽くされたプロパガンダ作品」じゃない。 スタート地点が同じ『CODE 46』の方が、47倍くらい素晴らしい。
[映画館(字幕)] 0点(2007-02-04 12:49:51)(良:1票)
48.  はなれ瞽女おりん
ハレとケの混交するカオス。 そんな階級が存在するとは思いもしなかった社会の最下層以下の人間でありながら、同時に人のしがらみを突き抜けた仏。芸能人であり売女。あらゆる両側面を備えて、それがさらに「盲者が主人公の映像作品」という大きな矛盾に包まれている。だが観れば納得、その心は明快だ。 製作時期からして、おそらく名作『砂の器』路線を狙った映画なんだと思う。でも自分的にはアレを遥かに超えている。扱っているイメージが広すぎるのだ。おりんの姿には小野小町の末路まで重なってしまうし、門前で三味線を弾く瞽女姿はロックスターまで(というか「ロックンロール」という言葉そのもの)が重なる。そして折々に挿入される、一見「あれ? 何でここで?」的な北陸の風景。ゼンマイ、蓮の花、木々…彼女にはそう見えているのだ。なので、線香くさくない、地に足のついた土俗的仏教ワールドも広がっていると言える。  重層的な世界観を、ただ一人の主人公を描く事で束ねてしまった、とてつもない傑作。オイラの生涯を縛る作品にまたひとつ出会えたのが嬉しい。
[映画館(邦画)] 10点(2007-02-04 01:14:42)(良:1票)
49.  緋牡丹博徒 花札勝負 《ネタバレ》 
人が死ぬ時、寒そうに白い息を吐く。血糊から湯気が立つ。その寒気は凄かった。 それ以外はですね、ダメなんですよ。仮面ライダー世代だから。こういう作品で映像の文法が確立された後、どんどん省略&ウケ狙いに走っていった東映の映像にドップリ浸かってしまった世代だから。半面メイクのバケ安が出てきた時も、「あー怪傑ズバットでこんな親分もいたよなあ」とか想像しちゃって、完全に事象の因果関係が倒立していました。 もちろん藤純子の義侠心も、健さんの忍耐も、嵐寛寿郎の貫禄も、若山富三郎の覇気も、みんな素晴らしい。でも頭の中では各キャラをいちいち「レッド」「ブラック」「ブルー」「イエロー」…と色付けで呼びたくなるくらいの東映特撮キャラ大集合…いや違うこれはプロトタイプなんだプロトタイプ…。 あと、映像まわりも確かに名作の誉れを感じさせる場面は多いけど、冒頭の列車アクションの場面はどうか。あまりに典型的な「仮面ライダー」過ぎないか。オイラがこの場面を誉められるかというと…まず無理だな。 本作のように後年ステレオタイプになってしまう作品の場合、若輩者が真の評価を下すのは難しいというのを学習した。子供時代の刷り込みだろうが、NHKの少年ドラマシリーズには美学を感じても、東映特撮には感じねえんだオイラは。いやホント申し訳ない。
[映画館(邦画)] 4点(2007-01-15 01:27:29)(良:1票)
50.  デッドマン(1995) 《ネタバレ》 
1月5日。 深夜の札幌で部屋の窓を開け放ち、酷寒の中を震えながら観た。 「そうやって観るのが正しい」と自分の映画アンテナが教えてくれたからだ。  …。 なんつー過激さ。《詩》で殺す男、ウィリアム・ブレイク。 「『草の葉』(米国文学の象徴)を持ってねーか」 「うるせーオレはホイットマンじゃねえ! オレの詩はッ!」ダキューン。 「サインを頂けませんか」 「コレが俺のサインだッ!」グサッ。 etc、etc…。 そもそも序盤のあたりで、やたら目立つボストン・バッグを抱えてる姿が既にカフカの『アメリカ』の第一章を意識させる絵だし(なので「いつカバンを盗られるんじゃあ!」と焦れまくってた)、たどり着いた《機械》町ではいきなり(エミリー・?)ディキンソンから「この西部にゃあ神秘主義者の仕事なんてねーよ! 俺たちゃゲンブツ扱ってんのよ」とお払い箱(だが意外にブレイクの似顔絵は巧く書く)。いろいろあった挙句に《誰でもない古代詩人》ヴェルギリウスに救われて、異界へ、地獄へ、天界へと『神曲』マニアックな放浪を開始。 こりゃ西部劇版の『薔薇の名前』ですな。多分ジャームッシュの脳内では、各キャラにそれぞれ対応する芸術家が割り当たっているんじゃないかな。 …するとね、気になってくるんですよ。途中で出会う、死んだ子鹿。『バンビ』(=ディズニー)なのかねーやっぱり…そこんとこ読み解いてみたいような、読み解いても所詮はしゃーないような…。  自分的にはやっぱり、ジャームッシュは面白いけどそれ以上のモノじゃないなあ。イメージが広がらなさすぎで。ヤン・シュワンクマイエル作品みたいに、無辺の記号空間に放り込まれるような、脳がマッシロにリセットされる感覚がなく、常に何かの記号がついて回る。それは別に悪い事じゃないけど、オイラが求めているモノでもないのれす。 これは映画そのものの問題じゃなくて、やっぱ相性ってコトなんでしょうね。
[DVD(字幕)] 6点(2007-01-05 11:18:04)
51.  鉄コン筋クリート
●訂正:勝手に PG-12 だろうと思ってたんだけど、年齢制限ナシでした。個人的な感触では PG-12 指定(小学生が観てもいいかどうかは親に判断して頂きたい)な内容です。ただ、中学生ならいま絶対観ておくべき。  松本大洋の世界だから確かに日本のアニメなんだけど、後半の演出は日本のアニメーターの力のみで作れたモノなんだろうか? 観終った今、その疑問が頭に渦巻いている。 80年代の日本のような活気ある状態だったら、日本人だけでこれが作れたろうか? ほとんどすべてがアートアニメの技法に乗っ取られるクライマックスは、エヴァンゲリオンのアレ(最近判りましたがカナダのアニメーター、ノーマン・マクラーレンへのオマージュ)を思い起こさせながら決定的に何かが違う。画面の奥の方で、今までの日本アニメになかった《異種》の血が騒いでいる。松本大洋よりもずっとずっとノルシュテイン寄りで、抽象的なモノを表現するのに適した、何か。 描きたいテーマがあり、それに従って技法を選ぶ。芸術としては当たり前の事だけど、商業アニメの世界では無視されてきた常識でもある(ので、『パプリカ』は表現の幅がえらく狭くなった)。 日本のマンガも、アニメも、ついに世界のアーティストたち(人目を引くことばかり考えているハリウッド監督業な人種じゃなく、アートアニメや画家やイラストレーター、という意味で)の共有財産になったんじゃないんだろうか。狭義の意味で、アートになれたんじゃないだろうか。まだ本作はハリウッドの庭に囲われている存在だけど…。 ポジティブな意味で世界のこと、未来のことを色々と考えさせられたアニメだった。
[映画館(邦画)] 9点(2007-01-02 14:29:40)
52.  パプリカ(2006)
ま、典型的なマッドハウス・アニメです。「『スチームボーイ』はカッチンコッチンなアニメだったから、今度はグニョ〜〜ンなアニメ作ってみようか」っていうノリで原作セレクトした感じですね。なのでストーリー展開もスチボーの時の反省の色がなく、猛烈にステレオ。敵に精神をヤラレちゃったキャラたちの筒井節丸出しトークもあんまし壊れた迫力がなくて「前衛劇ならまあ普通かナ」って程度。この落ち着きの良さは何とかならんのか? ただ、演出は狂気としか思えないです。夢と現実が交錯する話なワケで、モーフィングやらホワイトアウトやら何やらかんやらとにかくもう3桁では足りない程の効果の嵐です。アニメーション視覚効果大全集みたいなマニアックな凄さはありますね。マッドハウスは今回でまた一皮剥けて、いろいろノウハウを手にしたんじゃないかな。次こそは、次の大作アニメこそは期待だ(笑)。  …でも正直に言うと、トルンカスタジオならもっと低予算で、もっと驚かされる効果を使って、徹底して抽象化した絵作りで『パプリカ』を製作できたと思う。この映画に足りないのは、まさにそういうスパイスだと思うんだな。 なのでオイラ的には、劇中のセリフの通り「パプリカの不足した」ぬるアニメでした。
[映画館(邦画)] 6点(2006-12-11 23:29:17)(良:1票)
53.  暗いところで待ち合わせ
苦悩しつつ、わが人生最大のオマケ点数をつけて6点か7点。同じ主演コンビの『幻遊伝』と対になった、「自分の居場所」というテーマの別の解答(でも結果は同じ!)である点は評価しますが、クライマックスが小粒に過ぎます。 詳しいところは後日追加…。
[映画館(邦画)] 6点(2006-12-10 20:34:59)
54.  こま撮りえいが こまねこ
罪多きアルバトロス配給作品にも、たまに本気の映画があったりするのは御承知の通り。『こまねこ』はそういう真顔モードのアルバトロス配給作品なのだが…何というかね、「これ、アホヲドリ配給だから」って脳裏に擦り込まれちゃって、必死にバカ映画なワライドコロを探す虚しい自分がおりました。  こまちゃんという子猫を主人公にした、全部で5話の短篇集です。が、全体的にノンビリ感が漂っていて短篇といえども詰め込んだような感じはありません。技術的にもチェコ水準。トルンカの霊が憑いてそうなくらい、人形が活きてます。まあライティングとかジオラマとかまでトータルに見ると、チト厳しいモノがありますけどね…。 でもね、子ども向け人形アニメに徹して、ここまで王道を進んでくれた作品は近年なかなか見ません。 映像作品の多くが技術の無駄使いに走る中、本作は「手作り」「アナログ」「愛情」という記号をふんだんに散りばめ、時代に流されずにふん張っている頑固な職人映画でもあるのですナ。CG&合成に頼っている部分ももちろんあるんですが、場面的には極小だし、非常に品のいい使われ方をしていました。 この年末年始に、ハリウッドで汚れちゃった自分の感性を洗濯するのにいい機会かもしれませんですよん。もちろん「アホヲドリ配給」というのは忘れた上でネ!
[映画館(邦画)] 7点(2006-11-29 00:00:56)(良:1票)
55.  ヅラ刑事
河崎実はバカ映画というジャンルすらも壊してしまったようだ。もはや『いかレスラー』の時の気負いすら捨てて、一切力むことのない自然体の最低映画(って何だソレ)を造ってしまった。 この映画を観ると確実に感性が死滅し、知能指数が下がる。ナチュラルに無設計の照明、巧いとか下手とかの次元とは違うヅラの操演、「脱構築」という言葉に疑念が生じるほどの義務感あふれるお約束コント、役者たちのまるで噛み合わない異次元間通信的演技、『太陽を盗んだ男』と『東京原発』の最大公約数以下まで省略されたシナリオ、とどめにブチ込まれる破壊的ムード演歌「悲しみはヅラで飛ばせ」の想定範囲外の挿入場所…エトセトラ、エトセトラ。 バカ映画の最底辺を掘り起こしたら何が現れるか、まだ世界の観客は誰も知らない。おそらく河崎実にだってわかってはいないだろう。その、開ける価値のないパンドラの箱を開けようとする「バカ以下」が、スコップの先に何かの感触を得た「カチン…」という瞬間、それがフィルムに焼き付けられていると思って相違あるまい。彼が掘り当てたモノの全貌は、まだどういうモノかはわからない。ここには、今までの脱力を超えた「何か」がある。今のところ、オイラにはそこまでしかわからない。  そんな映画の中で、一人だけ一所懸命演技している無名の俳優がいる。明らかにハリウッドのとあるバカ映画のとあるキャラクターを意識した演技で、その役には今までの河崎実ワールドにあり得ない、ベクトルの異なるバカ生命が吹き込まれている。 バカ以下の集団の中に、真摯な態度で一段高く浮くバカ。そんな『イシュタール』に通じるバカがオイラは大好きだ。そのキャラのために、9点を捧げようと思う。
[映画館(邦画)] 9点(2006-11-08 23:46:57)(良:1票)
56.  恋する日曜日 LOVE ON SUNDAY(2006)
強烈にオススメ。 でも登録待ちの間に、ブログ他4ヶ所ほどでレビューを書いてしまった…もう書くことないや…って『ナイトウォッチ』と同じ状況だがや!  主演の水橋貴己は堀北真希と同じプロダクションみたいで、(容姿もあるでしょうが)実力を認められての抜擢なんだと思います。「弓道部員」という一部にコアなファンを持つ強気っ子萌え路線なので、序盤のセーラー服はあり得ないほどのミニスカート。一応「そんな映画じゃねーだろ」って突っ込んでおきますが。中盤からはGパンになるので安心して見られます(笑)。あと、弓道やってるキャラなので、何をする時でも背筋がピンと張ってます。このあたりがツボに入るかどうかで、後半の展開に乗れるかどうかが決まるかな。  シナリオは舞台化もできるくらいに切り詰められたシンプルな内容で、演者の力の見せ所です。ひとつひとつの台詞に、迷いや憤りや憧れや蔑み…いろいろな感情を込められる。メインになる若手俳優4人の力はオーソドックスで危なげな部分がなく、ナカナカです。若さのエネルギーに頼るような話じゃないですから、この安定感は心地いい。  映像面では長回しを多用。昼のシーンは全部自然光ですが、飽きは来ないかな。中盤で、お寺の境内にいる4人の会話がもつれ始めると、背景の木々が風で不気味に揺れ始めるんですが…タイミング狙っては撮れないはずだよなあ…タルコフスキーの『鏡』で似たようなシーンがありますけど、アッチより驚きました。他にも手堅いカメラの動きが楽しめます。あと、キスシーンは何かもうタル・ベーラ監督の映像みたいです。凄いぞ。  編集。終わり方は、オイラなら別の刻み方をするなあ…何となく「エンドクレジットを流しながら見せる映像を想定してたのに、諸般の事情で別にしました~」みたいな、八方美人的な感じでした。あくまで編集の問題ですが。長回しを見せるための緩急のつけ方は、とても気持ちのいいリズムになってました。  音楽だけが悪かった。21世紀の新たなる異化効果かもしれない(笑)。製作キングレコードでしょ…NHKドラマのBGMみたいなのが流れるのはちょっとどうかと。何もかもが10点なのに、ここで致命的になってしまいました。泣けてきます。 あ、BS-iでやってたというオリジナルTVシリーズのBGMなんすかね? 元版を見てるヒトには懐かしいのかなあ。
[映画館(邦画)] 9点(2006-10-17 23:26:44)
57.  死者の書 《ネタバレ》 
喜八郎に酷い点はつけたくないが、やはりここは…。 何しろやたらセルアニメやらブルーバックやらの技法が使われすぎで、「天下の喜八郎師匠がなんて事を~」と涙なしには観られない無統一な画面。音楽も安易に西洋楽器に頼りすぎ。旋法には風情があるけれど…。  問題の根は「作り込みすぎ」にあると思う。都の大路を行き交う群集、垣根を造る男たち、かしましい南家の女官たち…こんなモノをコマ撮りで全部アニメートしてたらどれだけ手があっても足りなくなる。そのしわ寄せが肝心の如来や大津皇子に集まってしまったんじゃないのか。最初に構想した画が壮大で、緻密すぎたんじゃないか…と思う。 その無残にもバラバラになった手法や、無駄に細部まで表現されたモブシーンは、それでもなお本作には必要な物だった。ラストカットでそれがわかる。この話はそもそも原作者・折口信夫が見た曼陀羅から着想され、最終的にいつらめの描いた曼陀羅を映して終わるからだ。喜八郎は映画全体も曼陀羅として、「奈良の都」という形で彼の宇宙像を完成させたかったのではないか。いや、そうする必要があったのだろう。  悲運の大津皇子が怨霊となって藤原南家のいつらめの前に現れる。学才ある彼女は経文を唱えてその邪心を押し留め、そして心に観えたものを具現化しようとして糸を紡ぎ機を織り、そこに成仏の姿を描く。即ちこれ曼陀羅…。 古代日本の土着信仰と仏教がせめぎ合う物語であり、同時に芸術の根源を描く物語。折口はどう意図したか知らんけど、川本喜八郎は万葉的で大らかな主人公に自分の創作姿勢を重ねたかったろう。 それが伝わる画面だったから、無茶を承知で作ったのがわかるから、点は低くなるがオイラはこの作品に愛情を注がざるを得なくなる。3点のマンダラだけど、10点の姿は何となく見える。その10点の画を愛するが故に、ここでは正直に、3点を献じたい。  余談だが、全体の語り口は遠い世界の物事を語るように引きに引いていて、これは上田秋成晩年の作『春雨物語』の世界に似ている。1~2話の「天津処女」「血かたびら」は薬子の乱の話で、時代も精神的な背景も本作に近い。喜八郎はきっと意識していると思うし、何より秋成と同じ場所に立って古代を眺めてこその光景じゃないのか。 できればもう一作、春雨の一編を映像化してもらえれば…と願ってしまう、我侭な自分がいた。
[映画館(邦画)] 3点(2006-10-15 21:14:35)
58.  ゆれる 《ネタバレ》 
眼力の映画と言っていいですね。 父・伊武雅刀。叔父・蟹江敬三。兄・香川照之。弟・オダギリジョー。もしこれに渡辺謙が加わったら日本最強の眼力一家だ。オイラなら、こんな一族が経営する店には絶対近づかないぜ(笑)。 とにかく目で語れる役者を集めたので、演技はほとんど目でやってる。例の「智恵ちゃんお酒飲むとしつこいでしょ」ってシーン、全然目が笑ってなかったので先読みし過ぎて「兄がカマかけたのを弟が気付いて動揺し…」と取ってしまいました。香川照之やりすぎです。 裁判所の最後のカットや、ラストシーンの一瞬の表情の変化なんかは、彼の眼力なしでは意味不明になってしまう…けど、やっぱり演技過剰だったかも(笑)。ロシア映画みたいに、もっと仏頂面で逃げても良かったような気もします。作中、最も鬼気迫る「てめェ殺すぞ!」っていう香川照之の表情が、留置所面会室のガラスに映り込んだ顔だったのも、彼の眼力をもってすればこその大胆な演出でした(DVDで映るかな、コレ…)。 オダギリジョーは主人公なんで、香川照之ほど思い切った演技はやれません。なんで観客と映画とを繋ぐために、ちょっとオーバーアクトになっている。実はこれも残念でした。どうせ全部を明らかにしない映画なんだから、もっと無表情で演っちゃってよかったんじゃないかナ、と。 そういう中で、伊武雅刀が流石の貫禄というか極めて硬派。蟹江敬三の腹黒さと合わせ、この二人でハードボイルドの世界を構築してました。  あとロケーションなんですが、吊り橋の下の三人のバックが、それぞれ違う。このシーンの間ずっと同じモノの前に立ってます。智恵子の背後には巨大な岩が、弟の背後には木々の緑、そして川で遊ぶ兄の背後にはポッカリと開いた黒い洞窟…この絵が怖すぎでした。3人の心理がおっかないくらい出ています。  さてこの映画の最大の考えどころは「兄がラストでバスに乗るかどうか」なんですが、非常に微妙です。それまでの香川照之の目の演技から《兄・早川稔》という人物像を考える限り、オイラとしては「彼はバスに乗った」と思います。もちろん確信はありません。
[映画館(邦画)] 7点(2006-10-09 12:13:34)
59.  バックダンサーズ! 《ネタバレ》 
一日経って、全面書き直し。前のはブログに移しました。 もうテレビを持たない生活が10年になるんで気付かなかったけど、これテレビドラマ1シリーズの内容の2時間圧縮版だな。逆にそこが評価できる点か。  この話は、キャストが先にある。脚本はそれぞれのキャストを想定して書かれているし、ロケ地が限られてる事から言って、かなりの早撮りだと思う。監督・脚本はテレビドラマの出身(しかも本作が映画1作目)だし、身内を引き連れての企画だったのは想像に難くない。 だが、それだけの映画じゃない。最大の特徴は、それほど本格的には踊れない4人の女優をメインにしつつもラストまで引っ張るために、キャバクラステージみたいな舞台や、ドサ回りや、途中の解散などで「外し」のシチュエーションを延々連発する点。ダンスを見せる部分は確かにあるが、決して話の主軸にはならない。いきなり10年をすっ飛ばす全体構成も、客の期待を裏切るための仕掛けだと思う。「逆に見せない事が素晴らしい」と思えてくるようなシチュエーション作りに腐心しているせいで、とてつもなくアイロニカルな、別の言葉でいえば「バカな映画」になっている。 だからこそ快感が得られたんだと思うし、これはTV見ない歴十数年のオイラみたいなヒネクレ者でなきゃ面白いと思わないかもしれない。描かれるのはダンスそのものではなく、プロデュースやステージ設営からイベントまでの流れの「ステージの再生浄化」。ちょっとTV向きの企画ではないだろう。監督の、それなりのメッセージがそこにあるんだろうが…評価する人は限られるだろうなあ。  オイラ的結論。これは見応えのある「バカみたい映画」です。どこまでも観客を裏切り続けるという意味で。
[映画館(邦画)] 8点(2006-10-06 12:29:38)(良:1票)
60.  日本以外全部沈没
バカ映画を新たな高みに押し上げたその功績に、10点。 この映画の予告編を見た時には、歌唱力も演技力もないアイドルが「私、脱ぎます!」と言った瞬間を思い出しました。そして本編を実際に見終わった今では、スポーツ紙風の「巨乳解禁! いままで着ヤセだった? 衝撃のスーパーボディ」という見出しが脳内で踊っております。 断言しますが、昨日までは河崎実はオイラ的映画界で無価値だった。今日からは違います。 そのバカ度が、ハリウッド映画の歴史に刻まれる(か、完全黙殺される)ほどの凄い高みにまで達しているからです。  あまりに危険…いやバカすぎて、上映したのと同じ内容でDVD化される保障はありません。今のうち映画館で見ておく事をオススメします。  ●追記:この映画でこそルー大柴の濃い演技(主人公の職場の編集長希望)が光ったと思うんだけど…彼が出なかったのだけが残念だなあ。
[映画館(邦画)] 10点(2006-09-28 03:50:58)(良:1票)
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