21. 花様年華
《ネタバレ》 トニー・レオンとマギー・チャン。見るからに狭く暑苦しいアパートに似つかわしくない2人。互いの妻と夫の顔を徹底的に見せない。それぞれの住む部屋の間取りも見せない。 しかし狭い廊下で何度となくすれ違う2人が印象的です。「最近ご主人を見かけないね」「海外に出張よ」「最近奥さんを見かけないわね」「親の看病で実家にいる」互いの結婚相手の不倫、孤独ということ以外私生活が見えない。赤みがかったクリストファー・ドイルの映像の中の2人は熱っぽくもありますが、一線を踏み越えない2人の関係にはリアリティも感じられます。 暗がりで一人ふかす煙草、一人の夕食、人気の無い夜のオフィスの残業、雨の夜。描かれる孤独な人間模様に、平凡な生活の中にある幸せについて考えてしまった。ただ、まったりとした展開から急激に時の流れが加速する終盤からラストは色んな事を簡略化しすぎている気がします。 [DVD(字幕)] 7点(2011-09-15 21:04:07) |
22. ウィンター・ソング
《ネタバレ》 ピーター・チャン監督でジョウ・シュンがヒロインのロマンスか・・・。面白そうだなと見始めたのですが、まずは冒頭でビックリ。まさかミュージカルだとは思わなかった。 冒頭、閉じた傘を持って雪が降り積もる夜の街を男一人で踊る様子は「雨に唄えば」ならぬ「雪に唄えば」といったところでしょうか。続いて色とりどりの傘を持って踊る一団を上から捉えるのですが、こちらは「シェルブールの雨傘」の冒頭をちょっとだけ思い出します。その後も東南アジアかインドの民族舞踊風になったりサーカス風になったり、ミュージカルシーンの多くは映画の撮影現場という設定になっているのですが、どういう世界観の映画を撮っているんだ?と別のことが気になったりもしますが、これはこれでなかなか楽しいです。 肝心のロマンスの方は、ピーター・チャンの十八番のはずなのですが、本作は上手くいっていない。度々挿入される淋しげな町の風景やプールのシーンなど、抽象的なシーンが作品のテンポを悪くしていたように思います。また、終盤は思いのたけを歌で表現することが多くなるのですが、同じようなテンポの曲調が続くので最後の方はちょっとくどく感じてしまいました。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2011-01-24 00:05:56) |
23. ハッピー・フューネラル
《ネタバレ》 ベルトルッチの「ラストエンペラー」のリメイク?を中国で撮影中だったアメリカの大物監督タイラー。しかし撮影に行き詰まり心労から倒れてしまう。中国の死生観に感銘を受けたタイラーは意気投合した中国人カメラマンに自分の葬儀を依頼する。という事情に端を発し、大掛かりな葬儀の成功のために奔走し資金繰りに苦労するカメラマンを演じるのは僕のお気に入りの俳優グォ・ヨウ。この人の演技には独特の可笑しさがあるのですが、本作も彼の演技を見ているだけでも楽しめました。その葬儀のカネになりそうな匂いを嗅ぎ付け集まってくる、金儲けにしか興味が無いような輩の皮肉たっぷりな描き方も面白かった。しかし、この一大イベントが企画倒れに終わることは途中で分かる構成になっており、その顛末がどうなるのかと思っていたら、いきなりその数ヶ月後に話が飛んでしまう終盤の展開とラストが淡白すぎて最後のまとめ方に物足りなさを感じる作品でした。 [DVD(字幕)] 4点(2010-12-22 09:42:19) |
24. 言えない秘密
《ネタバレ》 前半は良かった。演出も台詞もかなりベタだがピュアな青春ラブストーリーでした。ヒロインのグイ・ルンメイは期待通りの素晴らしい演技と存在感を見せてくれます。 少し前に見た「遠い道のり」でも感じたことですが、台詞が無い、表情で演じるシーンの彼女は本作でも素晴らしかったです。 突如ファンタジーに突入する後半はかなり違和感を覚えます。前後半のまとまりが無く、前半と比べるとジェイ・チョウの意気込みが空回りしている感じです。 前半が良かっただけに後半が惜しい映画ですが、音楽や映像は綺麗な映画です。そしてグイ・ルンメイの魅力がよく出ているので、グイ・ルンメイが好きな方は見て損は無いと思います。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2010-11-06 14:08:30)(良:1票) |
25. 花の生涯 梅蘭芳
《ネタバレ》 前後半(梅蘭芳を演じる俳優が変わる)でガラリと作風が変わります。まずは前半に描かれた京劇の世界の華やかさと厳しさは非常に見応えがありました。梅蘭芳の青年時代を演じる俳優の京劇の舞台での美しさ、普段の姿のはかなげな姿、この俳優の美しさ、存在感が印象に残ります。 前半のクライマックスである師弟対決では敗れ去ることになる師の描写が見事。客に物を投げつけられ罵声を浴びせられ、誰もいなくなった客席に向かって渾身の演技を披露する師の姿、弟子に対し最後の教えを説く師の姿に京劇役者の誇りが見事に描かれていました。 そして後半。前半はたっぷりと美しい京劇の舞台を見せてくれたのと比較すると後半は京劇の描写がほとんど無く、京劇の魅力自体はほとんど描かれていない。ドラマチックな展開も無く淡々と大人になってからの実在した京劇スターの知られざる苦悩を描いた伝記となっていますが、描かれる様々な出来事それぞれが薄味で淡白になってしまっている感があります。 後半に梅蘭芳を演じるのはレオン・ライ。前半の青年時代の俳優と比較すると華は無いですが、これは実在した京劇のスターの伝記であり梅蘭芳という成功と名声を手にした京劇スターの知られざる苦悩や孤独感を演じたその姿からはレオン・ライの持ち味が十分に発揮されています。 本作は梅蘭芳の伝記であると共に彼に魅せられた男の物語でもあるのですが、その男を演じたスン・ホンレイの存在感と好演も見逃せません。特に後半は“覇王別姫再び!”と思って見る映画ではなく、チェン・カイコー監督が「覇王別姫」とは全く別の視点で実在した京劇スター、梅蘭芳という一人の人間を見つめた映画となっています。 [DVD(字幕)] 7点(2010-07-04 19:44:00) |
26. ひとめ惚れ
マギー・チャンとレオン・ライ。傑作「ラヴソング」の二人の主演によるラブストーリーです。別に比較する意味は無いのですが、やっぱり観ていると比べてしまう。「ラヴソング」を見ていなければそれ程落胆することなく観る事が出来たかもしれませんが、比べてしまうとどうしても全体的に薄さを感じてしまう。本作のマギーは一人息子がいるシングルマザーという役ですが、子供がいるという設定があまり生きていなかったように思います。レオンはITの仕事で大成功を収めた大企業の社長という役ですがどうも魅力を感じない。本作で一番気になったのは音楽。全編通して耳障りに感じてしまう個所があったり、場面と合っていなかったりと音楽の使い方が上手くいっていない映画でした。しかし本作でもマギー・チャンは素敵でした。そんなマギーを見る事が出来たという事で良しとしておこうと思います。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2010-03-04 22:50:25) |
27. 太陽の少年
《ネタバレ》 大人になった主人公の回想という形で描かれる思春期という人生における貴重な一時期の青春群像と、どこか懐かしさや温かみを感じさせる独特の奇麗な色調がとても良く合っていましたね。女の子を後ろに乗せて果てしなく続く長い一本道を自転車で走るシーンが印象に残りました。彼らにとって人生はまだまだ先が長く、これからどんな可能性だってあるという希望がとても美しく表現されているように感じられました。観ているうちに彼らと同じ年の頃の自分の楽しかった出来事や今振り返るとちょっと恥ずかしくなるような出来事なんかが思い出され、彼らの心のときめきや痛みがその奇麗な映像から生き生きと伝わってくる青春映画でした。 [DVD(字幕)] 7点(2009-09-19 21:15:38) |
28. ラヴソング
《ネタバレ》 先日、近所のレンタル店に置いてないある映画のDVDを探しにDVDの量販店に脚を運んだ。「やった!見つけた!」ふと、その隣に置かれていたDVDに目が行った。普通なら素通りする。でも、「ラヴソング」・・・。思い出した。そういえば、タイトルしか覚えてないけどみんなのシネマレビューで凄い高得点の映画だったなあ。しかもプライスダウンコーナーに無造作に並んでいる。2枚買っても2600円か。これも一緒に買うか・・・。という全くの偶然が重なり手にした本作。感動しました。本当に優しくて素晴らしい映画でした。マギー・チャンがその表情で魅せる表現力豊かな素晴らしい演技と不器用で素朴な男を演じたレオン・ライ。2人の魅力が見事なまでに融合した。そんな2人の挙げればキリが無いほど素敵で素晴らしいシーンが随所にちりばめられています。そして、そんな印象に残るシーンの多くでこの2人に必要以上に語らせすぎないところがいい。その表情で見せる確かな演技力で2人の気持ちが痛いほど伝わってきます。特にラストシーンは「同志」であり、「親友」である2人に言葉は要らない。あの澄みきったマギーの笑顔が全てを物語っているし、マギーのその笑顔に心が洗われるような気がした。そのラストに続く、冒頭では分からなかった香港に着いた列車の車中で疲れて眠っているレオンの後の座席。そこに実に効果的にテレサ・テンの歌が重なる。みんなのシネマレビューのお世話になっていなかったら、出会うことなく素通りしていたであろうこの映画。みんなのシネマレビューと、レビュワーの皆さんに心から感謝いたします。 [DVD(字幕)] 10点(2009-07-30 10:04:53)(良:2票) |
29. 變臉~この櫂に手をそえて~
《ネタバレ》 変面王を演じた朱旭(チュウ・シュイ)の名演技が素晴らしかったです。それだけでも観てよかったと思える映画でした。そしてクーワーを演じた女の子には参りました・・・。まだまだ知らない名子役がいるものですね。人身売買や役人の不正、不正があると分かっていながら厄介事にはフタをして自分の利益になる事にしか興味が無いような特権階級の存在、そしてそれらとはあまりにも対照的な人観音と呼ばれるリャンさんの高潔な人柄、あまりにも健気なクーワーの変面王への無償の愛を通して人間にとって本当に大切なものは何なのかを訴えかけているように感じられました。 それにしても「山の郵便配達」の犬に本作の猿と中国映画の動物は本当にいい演技をしますね! [ビデオ(字幕)] 9点(2009-05-23 02:22:39) |
30. ラスト、コーション
《ネタバレ》 自分がその後どうなるかをかえりみず「逃げて…」と言ってしまった女と、そのお陰で命拾いをしたその女に対し処刑の命令を下さなければならない男。お互い本心をさらけ出せない男と女の心の葛藤が観ていて切なく、決して鑑賞後に残る余韻もいいものではない。自分の好みの映画ではないですが、アン・リー監督、主演の2人をはじめ作り手の作品への熱い思いが伝わってくる、見応えのある映画です。 [DVD(字幕)] 6点(2009-05-17 00:12:24) |
31. マーシャル・エンジェル
《ネタバレ》 久々につまらない映画を観てしまったなあ。感想としてはそんな感じですか。アクションもお色気も中途半端で地味。この手の映画はもっとド派手に弾けてくれたらそれなりに細かい事は気にせず楽しめる娯楽作になると思うのですが…。 [DVD(字幕)] 2点(2009-03-23 09:09:17) |
32. さらば、わが愛/覇王別姫
《ネタバレ》 京劇で女形を演じる為に生まれてきたかのような蝶衣、「さらばわが愛 覇王別姫」に主演する為に生まれてきたかのようなレスリー・チャンの妖艶さが凄かった。脇を固めるコン・リー、グォ・ヨウも印象に残る見事な演技を見せてくれました。(この2人、チャン・イーモウ監督作品「活きる」では庶民の夫婦役でしたが、この時の2人も素晴らしかったです)覇王別姫で人気を博した蝶衣のまるでそのストーリーを生きたかのような人生と中国の動乱の時代に翻弄された京劇と登場人物の波乱に満ちた人生を描いた圧倒的なスケールの叙事詩に釘付けで実に中身の詰まった3時間でした。ラストの壮絶な幕切れに鑑賞後はかなり長い時間余韻に浸ってしまいました。チェン・カイコー監督の、京劇の女形の壮絶な人生を描いたという、まさに本作と同じ世界に再び取り組んだ「花の生涯―梅蘭芳」がもうすぐ公開されますね。今度はどんな京劇の世界と人生を見せてくれるのか楽しみです。 [映画館(字幕)] 9点(2009-03-14 11:59:38) |
33. キープ・クール
監督はチャン・イーモウ、それに加えて本作は中国を代表する名優、姜文を迎えての作品。高い期待感の中での鑑賞だったのですが、今までに見たイーモウ監督作品の中で最もダメでした。今回はガラリと作風を変えて、従来のホームグラウンドを離れて現代の北京という大都会が舞台。とにかくよく動き回る独特のカメラワークとポップな音楽を用いてさらりと描かれたコメディなのですが、残念ながら如何せん内容が物足りなかったです。 [DVD(字幕)] 3点(2009-01-11 13:59:20) |
34. 単騎、千里を走る。
《ネタバレ》 チャン・イーモウの十八番、中国の田舎を舞台に健さんと現地の素朴な人々との心の触れ合いが感動的に描かれ・・・という大きな期待を抱いての鑑賞でしたが、色々違和感を感じる点が多く、申し訳ありませんがこの評価です。一番気になったのが、健さんが現地の中国人通訳や息子の嫁とケータイで会話をするシーンがやたらと多い事。その度に健さんが周りから浮いてしまっている感じがして、それがすごく気になってしまいました。 [DVD(字幕)] 5点(2008-12-25 01:14:46) |