Menu
 > レビュワー
 > R&A さんの口コミ一覧
R&Aさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2162
性別 男性
年齢 57歳
自己紹介 実は自分のPC無いので仕事先でこっそりレビューしてます

評価:8点以上は特別な映画で
全て10点付けてもいいくらい
映画を観て損をしたと思ったことはないので
酷評しているものもそれなりに楽しんで観たものです


  *****

●今週のレビュー
   「」

   
     










    


  










  


 












表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
【製作国 : スペイン 抽出】 >> 製作国別レビュー統計
評価順123
投稿日付順123
変更日付順123
>> カレンダー表示
>> 通常表示
1.  ロスト・チルドレン 《ネタバレ》 
美しいだけではなく独自性のある映像に惹かれる。では、映像だけの作品か?そんなことはない。喜怒哀楽がぎっしり詰め込まれたファンタジーで、しかもその喜怒哀楽を終始クールな少女ミエットのかすかに変わる表情で表す。窃盗団のリーダー的存在のミエットがワンの純真さに触れたときのとまどいの表情、ワンがミエットの靴を脱がし足をもむ時のやさしさに触れた時の表情、鏡に写るワンと自分を見る表情、窃盗団の少年達とわかれるときの、ノミに洗脳されたワンを見るときの、命がけでワンの弟を助けるときの表情、、、なんでこんな小さな女の子が大人顔負けの演技ができるんだろう。すっかり虜になってしまった。そしてアイディアもいっぱい。中でも印象的なのは双子のおばさん。料理を作ってるときのシーンは感心してしまう。最後、ゲップで爽快に終わるってのも良い。CGは使いようによっては映画をダメにもするし良くもする。この作品は、リアルに見せるためのCGではなく幻想的な非リアルな世界を作り上げるためのCG。なくてはならないものです。
10点(2004-08-17 15:59:45)(良:1票)
2.  我が至上の愛 ~アストレとセラドン~ 《ネタバレ》 
我が至上の愛。なんとも大層なタイトルがついているが、男女の恋愛を描くときのロメールのいつもの軽やかさは時代を5世紀にしたって変わらない。軽やかさはそのままに、時代を遡ることでより原初的な恋愛劇となっている。人を好きになることの至福と人に好かれることの至福がある、ただそれだけ。呆気にとられるほどのシンプル且つストレートさ。終盤、なぜ男は女装するのか。ロメールの真骨頂ともいえる女同士の会話をさせるためだ。そしてここで無防備に見せる乳房のなんて美しいこと。今までもロメールは若い女の体をとくに部位を強調して見せてきたがここまでモロに見せたことはなかった。愛の原初的な形を見せるにあたってこのストレートな見せ方になったのだろう。またそのストレートさに負けないほどの美がそこにある。若い男女の恋愛を、そしてそれに伴う「若さ」ゆえの肉体的反応を、美しく且つ健全に描ききった傑作である。軽いタッチでありながら、なるほどこれは至上の愛であった。ロメールの遺作にして最高傑作。  
[映画館(字幕)] 9点(2010-05-14 15:16:17)(良:1票)
3.  リミッツ・オブ・コントロール 《ネタバレ》 
久々の極楽。何もかもがいい。まず印象的なのが主人公の背景を彩るロケーションのセンスの良さ。どこからこんなかっこいいロケーションを探してくるのか。主人公が一たび外を出歩けば、どのシーンもかっこいいのだ。かっこいいと言えば音楽。日本のバンド「Boris」が奏でるノイズにならないノイズミュージックにイチコロ。ヘリの音やエスプレッソといった「繰り返し」の心地よさと暗号を渡しに来る男女のキャスティングの絶妙さ。「ヌード」のそのヌードの美しさにもイチコロ。かっこいい映像に挟まれる列車の映像はさすがの一言。厳重な警備に囲まれたターゲットのアジトが映されいよいよ佳境に入る。と思ったらどうやって入るのかを大胆に省略。ターゲットの男がたずねる。どうやって入ったのかを。その答えにニヤリ。想像力。ちきしょー。いちいちツボだ。ビシッとスーツできめてた主人公がラフな格好に着替えて終わる。もしかしてトイレで瞑想にふけっているオープニングと着替え終わったラストシーン以外は妄想の世界だったのか?ちきしょー。それもありじゃないか。で、最後にカメラがガクンて。ちきしょー。
[映画館(字幕)] 8点(2009-10-05 16:15:42)(良:3票)
4.  麦の穂をゆらす風
カンヌ・パルムドール獲得の際のインタビューでケン・ローチは「英国が帝国主義的な過去から歩みだす小さな一歩になれば、、」と言っている。あきらかに現英国のイラク派兵に対し、いまだ同じ過ちを繰り返す母国への批判を含んでいると思われる。作品自体も英国に対する擁護など一切無い。今尚続く北アイルランド問題という英国にとって最も重い題材を実に辛辣に描き出す。しかしこの作品の凄さは、ケン・ローチの作品がいつもそうであるように、重々しい題材が描かれる、その背景の美しさにこそある。けして戦争を、また戦闘を美化しているのではなく、『シン・レッド・ライン』のように対比の対象としての美でもなく、ただただそこに美しさがある。もう一つ、複雑な問題をすべて見せようとはせずにピンポイントで描いているので、劇中混乱することもなく鑑賞できるのも好印象。映画で語られる物語は全くといって救いがありません。あるとすればこの映画で語られない部分を想像するしかない。そしてその想像の余地だけを残している。
[映画館(字幕)] 8点(2006-11-29 11:53:51)(良:1票)
5.  エル・スール
『ミツバチのささやき』同様にスペイン内戦の傷跡を背景とし、少女の成長を描く。窓から差し込む光が、庭のブランコが、道が、木が、家が時間の経過を、そして父と娘の関係の微妙な変化を語ってくれる。それは雄弁であっても常に慎ましく静かに語りかけてくる。情景は前作以上に美しく、そのうえで画面に映るすべてのものがさりげなく何かを語っている。映像で語るとはこういうことなのか!とあらためて驚かされる。さらに画面には映らないもの、「南」の情景までもが頭に浮かぶ。その情景はこの映画を観ている間に変貌してゆき、最後には郷愁すら感じさせてしまう。おとなしいくせしてすごいやつ(映画)なのだ。
[DVD(字幕)] 8点(2006-05-02 13:19:59)
6.  ミツバチのささやき
スペイン内戦の傷跡は直接的には脱走兵のエピソードとして登場するが、画面は常にその傷跡を映し続けているかのようにどこか寂しげだ。しかし政治的な思想が画面を覆っているかといえばそんなことは全く無く、ただその時代を象徴する風景が映されているだけ。フランケンシュタインの怪物と脱走兵はあきらかに社会に受け入れられずに排除されるべき対象として比喩的な関係で描かれるが、ここでも政治的な思想よりもただただ現実の悲劇性を背景の中に溶け込ませているだけ。その一つ一つの情景にはいろいろな意味があるのかもしれない。でもこんなにも詩的な美しさを見せられたらそんなことはどうでもいいやとさえ思わせる画の数々にうっとりする、そんな見方も許される映画。いや、その見方こそが正しいのかもしれないし、いろいろな意味を感覚的に刺激するパワーをこれらの画が持っているのかもしれない。純真無垢な少女が自らの虚構の世界に怪物を出現させ、自らを傷つける。子供から大人への成長を表現しているのだろうが、そのことがどちらかというと不幸のようにも映る。しかし映画は現実の悲劇性を見せても、けして現実が不幸なものとはとらえていないとも思う。だから深いんだ、この映画は。
[DVD(字幕)] 8点(2006-05-01 17:12:34)(良:2票)
7.  ブルジョワジーの秘かな愉しみ
食欲、性欲、睡眠欲が人間の三大欲と言われます。登場人物を全てに満たされた上流階級の人間とすることでより明瞭に人間の欲深さが描かれる。同時に睡眠中の夢を通して人間誰しもが持つ無(死)への不安を描く。この作品もまたどこからが夢なのか、はたまた全てが夢なのか、、。贅沢な文句を言いながらいつまでたっても食にありつけない様で、一度手に入れたものは離したくないという人間の欲深さをあざ笑う。地位欲とでも言おうか、それこそ上流階級の人間らしいと言える欲も描きながら、人間を面白可笑しく描いてゆく。果てしない欲に向かって真直ぐに歩いてゆく人間たち。まるで人間ではない人が人間を観察して作ったような作品。我々もここに描かれる人々を高見の見物的に見ると、人間って愚かで滑稽だなぁと思うと同時になんとも可愛らしい生き物だなぁと思ってしまう。流麗なカメラワークと極端なアップからのズームアウト、この小ばかにしたようなギャップも面白い。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2005-04-28 15:00:14)
8.  哀しみのトリスターナ
清純を絵に描いたような可憐な少女トリスターナと冷酷な悪女と化したトリスターナ。ふたつの顔を見事に画面に残したブニュエル+ドヌ-ブが素晴らしい。ひとつひとつの画にいろいろなことを暗示させるブニュエルの傑作。二つに分かれた道でどちらに進むかをトリスターナが自信たっぷりに選ぶシーンは、道の先での狂犬病の犬騒動でその後の彼女の悲しい運命を予感させるとともに、後半、個人主義を貫くドン・ロぺを夫としては認めなくても父としては認めるというセリフに繋がり、養父ドン・ロぺの思想を受け継いでいることを象徴している。だから結婚制度を嫌い教会を下げずんでいたロぺの、結婚を望み教会へ足を運ぶという行為はロぺ自信が自己を否定するにとどまらずトリスターナをも否定する行為となってしまう。後戻りのできないトリスターナにとっては許されない行動となる。後半の赤子を見るシーンは前半の赤子を見るシーン(家族を否定するロぺに口答えする)に観客の頭の中でフラッシュバックさせ、「こんなはずではなかった」と哀しみに暮れるとも開き直りともとれるトリスターナを映し出す。しかし自分で決めて自分で行動する個人主義に生きながら、不幸の責任は自分には無く諸悪の根源をドン・ロぺと考えるトリスターナの存在そのものがこの作品の中で一番哀しいものとして描かれている。 自分に都合の良い信仰心、自分に都合の良い無神論、自分に都合の良い家族主義、自分に都合の良い個人主義、、、人間の哀しい性で溢れている。
[ビデオ(字幕)] 8点(2005-04-27 17:39:23)
9.  10ミニッツ・オールダー イデアの森
「人生のメビウス」よりも“時間”をより深く突き詰めたような作品群。観る前に一番興味をひいたのがベルトルッチ。壮大で長尺というイメージを持っているのでどんな短編になるかワクワク。  ■「水の寓話」一番解かりやすく“時の流れ”を魅せてくれます。作品は10分ですが撮影時間は長かったろうなぁと思いました。時の流れを現す細かな描写に手抜きがありません。 ■「時代×4」それぞれをワンカットで撮った4分割の映像は正直見ていて疲れました。一人の男が少年期、青年期、中年(?)期の自分とともに同じ家の中を移動していくのを4つのカメラが追います。面白い試みだとは思うんだけど一度に4つの画面は見れません。 ■「老優の一瞬」一人の老優のアルバムを見て時を長く刻むことの意味深さを感じました。 ■「10分後」これもほとんどワンカット。“ほとんど”というのは最後ちょこっと編集されてるから。10秒くらいオーバーしたんだろうか?おしい!でも見応えのある長回しです。 ■「ジャン=リュック・ナンシーとの会話」列車の中での時間の過ごし方。会話が無くても快適な時をすごすこともある。 ■「啓示されし者」なんで蚊なの?(笑) ■「星に魅せられて」時間の残酷な一面を見せる。 ■「時間の闇の中で」・・・凄い!!10分の中に「○○の最後の瞬間」と題した10の超短編。自分の作品も含めた様々な映像を引用しながら美しいピアノの音色にのせてそれぞれの“時間の終わり”を見せる。10コ目の“最後”は当然「映画」。スクリーンが映像を拒んでいる。  総評、平均点では付けません。最後にアレを見せられたんじゃね。
8点(2005-03-09 13:33:21)
10.  オール・アバウト・マイ・マザー 《ネタバレ》 
息子の事故のシーンはまるまま、カサヴェテスの『オープニング・ナイト』。テレビに映し出されるのは『イヴの総て』。どちらも女優を演じた女の話。そして今作品の主人公も冒頭では臓器移植コーディネーターとして息子を亡くした母の役を演じ、中盤では代役として舞台に上がり、最後には託された赤子の母親役として生きてゆく。テーマは女=女優。上記の二つの作品の女優の名前がラストに流れる。ジーナ・ローランズとベティ・デイビス。そしてもうひとり、息子を事故で亡くしたロミー・シュナイダー。もうひとつのテーマは女=母。 この作品は、息子の死、女になった元夫、エイズ、ドラッグ、痴呆症、妊娠出産というおよそあり得ないほどのドラマをしょい込ませ、それでも強く生きてゆく女を「女優」と「母」に関連づけて描いていきます。女がなぜ強いのか、それは女優であり母であるから。男は女になっても子供を産めないのである。すべての女性は女優であり母であると謳いあげている。 同じく女優と母を描いた『ハイヒール』、他人がどこかで繋がって自分の人生の中に入ってゆく『ライブ・フレッシュ』。アルモドバルがこれまでに描いてきたものの集大成として『オール・アバウト・マイ・マザー』がある。と思う。
8点(2005-03-03 18:07:39)(良:2票)
11.  ライブ・フレッシュ
私は後年の『オール・アバウト・マイ・マザー』に匹敵する傑作の臭いを感じました。登場人物たちの人生がドラマチックに絡み合っていく展開の妙!フランコ政権下のクリスマスの夜に始まり、さまざまな偶然が必然へと変わるニ十数年後のクリスマスの夜で幕を閉じるまで、たっぷりと人生模様を堪能しました。これまでのアルモドバル作品ではサスペンスの部分が浮いていたように感じましたが、今作品は人生劇にサスペンスが見事に融合しています。登場人物それぞれの人生の曲がり角に、ある事件が微妙に絡まる。冒頭の出産シーンにリンクさせたエンディングも偶然が必然へと変わる人生劇を象徴していて面白い。
8点(2005-03-02 12:21:25)
12.  ボルベール/帰郷 《ネタバレ》 
死んだはずの母親が帰ってくる。このあたり、従来のアルモドバル映画にはない軽やかなコメディ演出を堪能させてくれる。初期作品にはコメディも多くあるのだが、どれもこれも毒が盛られている。対して今回は直球のコメディ(序盤だけだけど)。その背景にレイプと殺人があるってところが考えてみれば凄いんだけど、そんな負の背景はどっかに置いといてって感じでずんずん進んでゆく。終わってみれば『ハイヒール』同様に母と娘の物語で、『オール・アバウト・マイ・マザー』同様にたくましく生きる母がいて、『バッド・エデュケーション』同様に過去が今を作るという構図があり、というあいかわらずのアルモドバル映画であった。過去が今を作るということは今をどう生きるかが未来を作ってゆくということでもある。難局を感じさせない肝っ玉母ちゃんのように生きるペネロペ・クルスを見れば、悲惨な背景とは裏腹に爽やかな感動を覚えるのも当たり前ということだ。それにしても、やっぱアルモドバル映画のペネロペ・クルスはいいねえ。
[DVD(字幕)] 7点(2011-05-12 15:10:52)
13.  ブンミおじさんの森 《ネタバレ》 
なんの変哲もない森が夜になると全く違う森になる。ブンミおじさんはその「夜の森」を知っているから何が出てこようと驚かない。猿の精霊だろうが幽霊だろうが。その驚かないリアクションが妙に可笑しい。行方不明の息子が猿になってるんですぜ。まるでコントだ。見てるこっちはその着ぐるみ猿にどう対処すればいいのか。『トロピカル・マラディ』の夜の森に浮かび上がる虎とは大違いのほのぼのとした異世界の人たちが描き出される。我々ですら戸惑うこの世界、輪廻転生の考え方がないキリスト教圏での驚きはもっと凄いのかもしれない。驚きといえば最後の展開。日常という退屈な時間が映され続けたかと思ったら、いきなり非日常の出現。そのまま非日常は現代のタイの日常の中に溶け込んでゆく。異世界が世界の中にあるように、日常の中に神秘がある。感慨深く心地良く、それでいて驚きに満ちた映画であった。
[映画館(字幕)] 7点(2011-04-26 14:47:00)(良:1票)
14.  続・夕陽のガンマン/地獄の決斗
唐突に映される小汚い顔のクローズアップと荒野という魅力的な背景を効果的に見せるロングショット。セルジオ・レオーネの映画だ。イーストウッド、あるいはリー・ヴァン・クリーフが画面に登場するときのかっこいい構図。中でもイーストウッドの右腕越しにイーストウッドと対峙する4人の男をとらえた構図にはしびれた。ドラマの長くかったるい紆余曲折があまり気にならないのは三人の男たちがその紆余曲折の中で徐々に徐々に絡まってゆく様に面白さがあるからだろう。まるでコンビのように連れ立っているイーストウッドとウォラックにしたってその関係性は微妙に揺れ動いてゆく。そしてクライマックスの三角形。あの墓場の配置も素晴らしいが三者が対峙する三角形が凄まじく素晴らしい。映画はなんだかんだ言ってかっこいいのがいい。かっこいいシーン一つで心躍るのよ、私って。
[DVD(字幕)] 7点(2011-01-28 14:51:12)(良:1票)
15.  シルビアのいる街で
カフェの一見リアルな喧騒は、でもしかし主人公の視点と思われるカメラ、つまり我々の側をじっと見つめる女といういくつかのカットによってどこか虚構じみたものに変貌してゆく。音が格別に印象付けられた中で迷路のような街をさまよい歩くシーンもまた然り。カフェの女たちが街にもいることで決定的となる夢の世界。電車の窓がスクリーンと化すのはここが虚構の世界であることを強調しているのだろうか。ユーカラさんが書いておられるように演出が見えすぎているところが確かにあるんだけど、これもまた作られた世界、虚構性を明確にするためではなかろうか。なにせここに映っている風は大袈裟に自己主張していて、こんな風、現実の世界には絶対にないのだから。『シルビアのいる街で』は物語を膨らませなくとも演出でいくらでも映画が豊かになることを証明している。
[映画館(字幕)] 7点(2010-11-09 11:26:21)
16.  それでも恋するバルセロナ
マンネリ気味のアレン節もスペインの陽気に当てられて実に意気揚々といった感じ。スペインの芸術家を演じたハビエル・バルデムがウディ・アレンの分身だという文章を多く目にするが、アレン映画の新たなミューズ、スカーレット・ヨハンソンこそがアレンの分身だと思う。短編映画の監督だったっけ。ちょっと芸術家かぶれのところがあって、芸術家ってのは破天荒であるべきなんてありがちな概念を持ってて、だもんで破天荒な行動をするんだけどいざってときに胃潰瘍になっちゃうというナイーブさが露見されちゃう。まじめさがとりえのはずの親友が後に女の本能のままに行動しちゃうのとは違い、自身の芸術家としての才能が開花されていきその喜びをも得ているにもかかわらず、論理的にいろんなことを考えちゃってけっきょく芸術家との別れという現実的な選択してしまうってところからも間違いなくアレンの分身は彼女。冒険して帰ってくる。この一連の行動をひと夏のバカンスにまとめてみたのがまたうまい。芸術家=破天荒という妄想を具現化したようなハビエルとペネロペのカップルがまた最高なんだけど二人ともがまたこの役にはまってるんだ。
[DVD(字幕)] 7点(2010-08-05 14:58:37)
17.  クレーヴの奥方(1999)
オリヴェイラの映画は自由だ。と、そんなことぐらいしか言えないんだな。そこが一番凄いところなんだけど。この人にとって映画のストーリーがリアルかどうかなんて関係ないってのは確か。それでもそのリアルじゃない世界で生きている登場人物たちがその世界でリアルな存在でいるから不思議だ。オリヴェイラの映画ってどれもリアルであろうなんてこれっぽっちも考えた形跡がないのにその世界の中の人たちはその世界限定でリアルなのだ。ポルトガルで高名なアーチストが本人役で登場してもそれは変わらない。いろんなことがドラマチックに起こっているのに何も起こっていないような錯覚に陥る映画でもある。そのドラマチックさまでも、この世界限定でリアルになってる。事象は激しくても事象に伴う行動が映されないからそう感じるのだろうか。行動が映されなくてもストーリーは間違いなく進行している。これって映画だから出来るんだろうな。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2010-03-31 15:23:12)
18.  アザーズ
例の映画よりも『シャイニング』や『ポルターガイスト』を彷彿させる。私が最もイメージとして近いと思ったのはフィンチャーの『パニック・ルーム』。ほぼ舞台を家の中に限定し暗がりであることが重要で尚且つ「母の物語」であるという点で。生憎『パニック・ルーム』は『アザーズ』とほぼ同時期の公開なので、どちらの作品も互いに影響を受ける境遇にはないのだが、アメナーバルが好きな監督の一人にフィンチャーの名を上げているのは興味深い。『次に私が殺される』における「映画と現実」、『オープン・ユア・アイズ』の「夢と現実」、と二つの世界を同居させて見せ続けるというクローネンバーグ的モチーフがこの作品においても有効的に使われる。しかしクローネンバーグというよりはやはりフィンチャーか。主人公がもう一つの世界に視点を変える、そのショックと刹那は『ファイト・クラブ』のそれに近い。そして視点を変えさせる役目が「光」というのがメタ映画的などと思ってしまうのはもちろん言いすぎなのだが、子供を殺す恐怖の対象が真実を照らすものであったという重要なアイテムに「光」を持って来るというのが憎いくらいに巧い。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-22 14:49:29)
19.  パンズ・ラビリンス 《ネタバレ》 
スペインが生んだ大傑作『ミツバチのささやき』をロールプレイングゲームにしてみましたって感じの映画。スペイン内戦の傷ではなく、わかりやすく戦争真っ只中を舞台とすることで純粋無垢な少女を現実ではない世界へ導きやすくしている。悪者の継父はこれ以上ないくらいに悪者。まるで悪魔。フランケンシュタインの怪物どころではない。しかしかの大傑作におけるフランケン同様に悪魔のような継父は現実世界の象徴であり、少女が成長するうえで避けられぬ通過儀礼であり、さらにこの作品ではゲームをクリアするためのボスキャラでもあるのだ。ゲームだゲームだと思ってたらゲームクリアがこんなにも悲しくていいのか。クリアしたのだからハッピーエンドのはずなのに。夢の世界へ逃避することをこんなにも残酷に描いた作品はない。この特異な後味を評価したい。どこかで見たことのある幻想の世界(かえるの話はそのまま絵本で見たことある)をダークな味付けで独創的にしてみせたセンスを評価したい。そしてなによりもイバナ・バケロという美しい少女を絶賛したい。
[映画館(字幕)] 7点(2009-02-26 15:48:01)
20.  パリ空港の人々 《ネタバレ》 
『ターミナル』のレビューでも少し触れましたが、『ターミナル』も『パリ空港の人々』も元ネタは同じ実在の人物です。内容は全然違うのですが、大きく異なるのはこちらは「人々」とあるようにひとりぼっちじゃないということです。何年も空港に住んでいる(出られない)先人たちがいるというところ。その生活感溢れる特異な日常がなんともおかしく、そしてなんとも寂しく描かれてゆきます。マリサ・バレデス(主人公の奥さん)の空港外での奮闘と、意を決して片道キップで空港内に入って出られなくなるオチの面白さを見て、(反対に)スピルバーグのコメディ・センスの無さを痛感しました。パリを見たことがない少年のために皆で外に出るシーンの開放感。夜のパリの情景をバスの窓から映す、そして外を歩く人達に風が吹き付ける。たったそれだけで『ターミナル』ではけして感じることのできなかった開放感をこの作品は感じさせてくれます。
[ビデオ(字幕)] 7点(2005-08-24 15:42:50)
全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS