1. ゴッホ
伝記とはまたアルトマンらしからぬ。と思うも、『M★A★S★H/マッシュ 』がアメリカ軍というシステムを、『ザ・プレイヤー』がハリウッドのシステムを揶揄したように、芸術が商品として売買される絵画の世界のシステムを揶揄する構成はやっぱりアルトマン。生前一枚しか売れなかったというゴッホの絵がオークションでとてつもない金額にせりあがってゆく現代のシーンを冒頭に持ってくるあたりが心憎い。嫌いな絵ばかりが売れ、好きな絵は売れないと言う画商の弟テオ。彼は画商でありながら芸術を知っている。芸術を知っているからこそ苦悩する。芸術の価値とかけ離れた商品価値に苦悩し、それでも売らなければ生活できないことに苦悩する。本物の芸術家であると確信する兄を支えるために芸術に対する背信行為を続けることに苦悩する。その苦悩を見て苦悩する兄ヴィンセント。芸術を解からない大半の中で芸術を解かっってしまったがゆえの二人の孤独。単にゴッホの生前を語った物語なんかじゃない。芸術を正当に評価できない世の中に物申す。そんな映画だった。 [DVD(字幕)] 6点(2009-04-10 15:35:24)(良:1票) |
2. 氷の微笑2
前作の悪女なのかそれともそう思われてるだけの実はか弱い女なのかわからないという設定とは違い、あきらかな悪女として描かれる続編はそれだけで損をしてしまっている。そんな劣勢の中でシナリオはそこそこ頑張っている。シャロン・ストーンの容姿はギリギリセーフ、というか実年齢から考えればこれもよく頑張ってる。ただ、ここにきてまだシャロン・ストーンのお色気を画的に前面に押し出してくるのはちとキツイ。ネタばらしもちとくどいかな。 [DVD(字幕)] 4点(2008-08-05 12:16:17) |
3. ことの終わり
《ネタバレ》 小さい頃、我が家ではキリンレモンのビンをケースで注文していて、いつでも好きなときに好きなだけ飲めて、調子に乗って氷ガンガン入れて飲みまくった私はいつも腹を壊してはトイレの中でこう言うのだ。「神様、ごめんなさい、もう二度とキリンレモンは飲みません、ですからお腹の痛いのをなんとかしてください」と。翌日にはまた飲んじゃう私とは違ってジュリアン・ムーアはけして飲まない。そういう映画。違うか。違うね。謎解きの見せ方を、男の視点から描いていたものを女の視点に変えてなぞってゆくというのが分かりやすくてよかった。ただ、物語自体がついていけない。原作もこんななの?ジュリアン・ムーアの謎が解けて、あーそういうことかと承知したまではいいんだけど、死んだと思った男が実は生きていた、というのではなく、やっぱりあれは所謂「奇跡」ってやつなんだという結論がどうも納得がいかん。誓いを守っているときのキスがアザを消して、誓いを破った代償が死であるから、そう解釈していいと思うんだけど、だったら「奇跡」のシーンをもっと「奇跡」らしく神々しく見せてほしいな。わざわざミステリー仕立てにして客を喜ばすストーリー展開は娯楽としてけして悪い語り方ではないし、その「騙し」のためにひたすら不倫劇を過大に見せ付けるのもしょうがないかもしれないけど、やっぱりこの場合、「神の啓示」的なものは必要かと。多少、予想がついたっていいんじゃないかと。もしくは全く「神」は錯覚としてしまうか。 [DVD(字幕)] 5点(2008-04-14 15:47:05) |
4. 恋するシャンソン
いいねぇ、役者が歌うんじゃなくて既存のシャンソン、ポップソングを流して役者は口パクってのはミュージカル映画の吹き替えを逆手に取った、なかなかに面白いアイディア。男性の歌声を女性が口パクしてたり、おっさんが可愛らしい歌声の口パクしてたり、なんでもありなんですが、そのアンバランスさがおかしいし、またなぜだか妙に合ってる。30分もすればこのおかしさがやみつきになって「早く歌かかってくれ~!」と待ちわびてしまう。個人的にはストーリー自体も気に入ってます。これってストーリーにあわせて歌を探したんだろうか、それとも使いたい歌にあわせてストーリーを作ったんだろうか?ま、どっちにしてもこれはいいです。 [DVD(字幕)] 7点(2006-09-29 16:36:51)(良:1票) |
5. コックと泥棒、その妻と愛人
あのオッサン、このレストランのオーナーでしょ?なんであんなに下品な振る舞いを自分の店でするの?いやいや、これはストーリーを見てはいけない映画でした。ストーリーを追わなければ、人物を食材や調理器具を隔ててとらえる画といい、緑や赤の色使いといい、”美”を作れば同時に”汚”も生み出すという判っていても目をつぶってきたものを見せつけるこの作品の意図的な無神経さ(なんか日本語おかしいですね、、)といい惹かれるものはいたるところに散らばっている。でもいくらストーリーを追わないっていってもあのオチはどうかなぁ。コックが一度は断わっておきながら「それならば」と了承した、その「それならば」がよく解からん。てか、妻とコックの会話は無いほうが最期までストーリーを無視して鑑賞できたような気がする。 5点(2004-10-27 10:52:11) |