1. オン・ザ・ミルキー・ロード
《ネタバレ》 何年ぶりになるだろう?クストリッツァの実に久しぶりの新作。 作品からほとばしる、この人の映画特有の力強さに全く衰え無し、本作も素晴らしい作品でした。 いつものクストリッツァと同じく、愛すべき動物たちと牧歌的な農村の風景から作品はスタートする。 しかし間もなくこの村は戦場であることをすぐに思い知らされますが、 そんな中に生きる人々の人間描写もまた、彼らしい独特の明るさと力強さがあります。 〝イタリアの宝石″モニカ・ベルッチの変わることの無い美しさと共に、 ミレナを演じた女優さんの、モニカに全くひけを取らない存在感もまた印象的でした。 モニカ演じる〝花嫁″と愛し合うことになる、クストリッツァ自らが演じる主人公の男ら主要登場人物と 動物たちの楽しい絡みや、もう1つのクストリッツァの映画に欠かせない要素、登場人物が楽器を奏で歌い踊る音楽もまた素晴らしい。 休戦を祝い、村人が歌い踊る宴。しかしモニカを追ってやってきた黒ずくめの特殊部隊が、その平和なひと時を粉々にしてしまう。 その特殊部隊が多国籍軍であるというところに何とも言えない皮肉を感じます。 以降は愛し合う2人の特殊部隊からの逃避行が描かれますが、水辺から川の中、そして荒涼とした羊の放牧地での追手との攻防は圧巻の一言。 祖国の内戦を背景にしたものが多いクストリッツァ映画ですが、平和の象徴のようなクストリッツァ映画に出てくる動物たち。 本作で最も印象的なのはハヤブサですが、戦争の悲惨さを寓話的要素に包み込み、いつにも増して彼らの強い意志を感じさせます。 [DVD(字幕)] 8点(2018-08-05 16:23:25) |
2. 女ガンマン・皆殺しのメロディ
この時代のハリウッドのセックスシンボル、ラクエル・ウェルチが主演のイギリス製西部劇という一風変わった作品。 序盤、裸にポンチョ1枚まとうだけのラクエルの姿がお美しいですがその後、服を手に入れて以降の露出はほぼ無しです。 でも、ジーンズを縮ませるためにジーンズ着用のままバスに浸かるくだりはお気に入りシーンの1つです。 登場人物の過去やそれぞれが抱える事情といったドラマの要素は潔くカットして ストーリーの方は実にわかりやすい、典型的復讐ものの西部劇となっています。 紅一点の主演ラクエル・ウェルチ以外に曲者が脇を固めたキャストがいい。 「刑事コロンボ」の名犯人役の1人であるロバート・カルプがなかなかのカッコよさです。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-07-28 17:08:28) |
3. オン・ザ・ハイウェイ その夜、86分
《ネタバレ》 上映時間は86分、主人公の男がハイウェイをドライブする86分をひたすらとらえ続ける。 上映時間=作中の時間、この設定は今となってはさほど目新しさはないのですが、 彼は全く動かない。作品の全ての時間は、様々な相手と電話で話しながらハンドルを握りハイウェイを運転する彼の姿をとらえ続けるのみ。 彼が電話で絡む様々な声の主以外、キャストはハイウェイをドライブする男を演じるトム・ハーディ1人のみ。 運転席に座ったままのトム・ハーディの1人芝居を86分間ひたすら見続けることになるワン・シチュエーション映画。 彼の奥さん、息子、出産を間近に控えたある女性、仕事仲間、仕事で緊急に連絡を取らなければならない警察や役所の人間たち。 彼らとの間に現在進行形で起こっている問題に対し次々に電話で対応しなければならない。電話の向こうの声の主の事情や対応も様々でよく練られている。 この夜に起こった問題の全ては彼の自業自得ですが、それら全てを投げ出さずに向きあおうとする。 今夜の彼の行動のことの発端から適当に逃げていれば、今夜も何事もなく家に帰り夕食をとりながら家族とサッカーを観戦し朝になれば仕事現場に向かい、 何も失わずに済んだのかもしれないが、彼はそうはしなかった。そのために彼は仕事も家庭も失うことになるのだろう。 この夜の様々な問題に対し、たった1人の運転席に座ったままの登場人物と電話、これだけで見事に最後まで緊張感を持続し続けた。 極端に動きが制約された中でのトム・ハーディの1人芝居もまた素晴らしかった。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2017-06-12 21:56:44)(良:1票) |
4. 王子と踊子
チャーミングなアメリカン・コメディエンヌ、マリリンとシェイクスピア俳優の英国紳士、オリヴィエ。 本作で2人が演じる役は自由奔放な踊り子と欧州某国の大公殿下。 この2人のスターの持ち味や醸し出す空気も、演じる役の2人が住む世界もあまりにも違うのですが、だからこそのコメディとなっています。 基本的にはドタバタ劇なので監督も兼任したオリヴィエには分が悪くなってしまった感じがしますが、 衣装も素敵だし歌も歌ってくれるし、マリリンのチャーミングな魅力は全開。 ただ、本作の舞台裏を描いた「マリリン 7日間の恋」を見た後に本作を見ると何とも言えない気分になる作品でもあります。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-01-11 21:39:42) |
5. オンリー・ラヴァーズ・レフト・アライヴ
アダムとイヴの一風変わったラブストーリー。2人は人間ではなく吸血鬼。 ジャームッシュ流、新感覚のヴァンパイア映画。 現代のヴァンパイアにもスマホはもはや欠かせない日常生活のアイテムの1つであり、 you tubeも欠かせない娯楽の1つか。しかし彼らにとっても現代社会は決して過ごしやすくはないようです。 生きにくい現代社会への皮肉に、ジャームッシュ独特の音楽のセンスに心地よいオフビート感とユーモアは本作でも健在。 ある意味だらだらと綴られていく、彼らの夜の闇に包まれた日常。 そんな彼らの日常に途中から投入されるお茶目でおてんばの妹、ミア・ワシコウスカの存在も効いています。 全く異なった趣を見せるデトロイト、タンジールの人気の無い深夜の街の風景。 それは美しくも、彼らの孤独感を表しているようでもあります。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2016-10-19 16:16:50)(良:1票) |
6. オズ
ジュディ・ガーランドがドロシーを演じた、あの「オズの魔法使」の続編的作品です。 「オズの魔法使」のかかし、臆病ライオンやブリキ男と同様に、 本作でもドロシーの仲間たちのキャラクターは愛らしくて良かったと思います。 しかし、小さな子どもも一緒に家族で楽しめる作品であることが前提であるべきと思うのですが、 必要以上にダークファンタジーになってしまった世界観はどうたったのでしょうか。 かと言って大人のファンタジーという訳でもなく。 ドロシーと仲間たちがガンプに乗って空を飛ぶシーンなど、好きな部分もあるんですけどね。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2016-09-25 12:15:25) |
7. オリエント急行殺人事件(1974)
《ネタバレ》 上品な香り漂う超豪華キャストだけでもお腹一杯です。これだけの容疑者のいる謎解きミステリーでは誰が誰か区別が付かなくなると映画として収拾が付かなくなるのですが、これだけの顔ぶれが集まればその心配は無用ですね。アガサ・クリスティの原作は未読なので確かな事は分かりませんが、小説の映画化ではよくあることではありますがポワロの謎解きの部分はかなり省略されている部分が多いように感じられました。一方で乗客一人一人の人物描写の方はかなり分かりやすく丁寧に作られていたので、一つの映画でこれだけの顔ぶれが揃ったそのキャストとともに十分楽しませてもらいました。それにしても原作を知らない観る者にとっては誰が犯人なんだろうか・・・?と推理しながらの鑑賞になる訳ですが、確かに乗客の中に犯人はいたものの、あの真相はちょっと予想が付かなかったです。この最後に明らかになる予想がつかない事件の真相、これこそ謎解きミステリーの醍醐味ですね。 [DVD(吹替)] 7点(2009-10-16 21:41:48) |