141. 暴走特急 シベリアン・エクスプレス
《ネタバレ》 邦題に偽りありというか、どこかで見たような感じのB級臭漂うタイトルが付けられていますが、なかなか迫力があり、見応えのあるサスペンスでした。 シベリア特急に乗りこんだ善良なアメリカ人夫婦。楽しい旅行になるはずが…。乗りこんでいきなり車掌にロシア語でキレまくられるところから、異国にポツンと紛れ込んでしまったようなアウェー感があり、どこまでも続く雪景色と少し暗めで寒々しさを感じる映像も得体の知れない不安感を掻き立てます。 このような夫婦が旅先で事件や陰謀に巻き込まれるというサスペンスの場合、夫婦が善良であるほどいいと思う。本作のご主人の全く危機感の無い能天気なキャラはそういう面では良かったと思います。残念だったのは、奥さんに大きな罪を犯させてしまったこと。その為に、最後は一応丸く納まっても釈然としないものが残ってしまいました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2014-02-01 00:57:04) |
142. ハイ・フィデリティ
ジョン・キューザック、ジャック・ブラックの持ち味がとてもうまく引き出された音楽愛にあふれるラブコメ。 見る者に語りかけるようにカメラに向かって少々理屈っぽく恋愛を語るキューザック。終始結構あつく語り続けるのでちょっとくどくも感じますが、その様は若くて勢いのあるウディ・アレンといったところです。ジャック・ブラックも濃いキャラクター全開で笑わせてくれます。(で、最後は見事に聴かせてくれますよ!) あの中古レコード屋の雰囲気がたまらなくいい。僕の場合レコードはせいぜい高校の頃まででしたが、自分の世代(今の40代)がまだCDではなく、レコードを聞いていた最後の世代だと思う。特に中古レコード屋はお宝の山みたいな感覚でしたね。次は何が出てくるか、1枚1枚棚に収められたレコードを指でめくっていく作業が妙にワクワクして楽しかった。そんな懐かしい感覚も思い出させてくれる作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2014-01-10 21:20:55) |
143. スライディング・ドア
《ネタバレ》 地下鉄にぎりぎり間に合って乗れた場合と乗れなかった場合。この2つのその後のストーリーを同時進行で見せる。それぞれの話自体にはそんなに特筆すべきことは無いものの、その見せ方が巧みな作品です。 乗れた場合に出会う男。乗れていなかったら、その男とバーで隣り合わせても、どこかですれ違っても赤の他人。2つのストーリーを微妙にシンクロさせる見せ方も面白かった。 こうした構成の作品は鑑賞に集中力が必要なケースも多いですが、本作はとても分かりやすく見せています。その1つはグウィネスの衣装や髪形などの変化。1つの作品で様々なグウィネスを見ることが出来るというお楽しみにもなっています。本作のグウィネスは今まで見た彼女の映画の中で一番魅力的に映りました。 また、ラストシーンが良かった。人生、うまくいかない一時期って必ずあるものですが、彼女の人生の好転を予感させてくれるラストシーンでした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-12-25 16:48:46)(良:1票) |
144. アバウト・ア・ボーイ
《ネタバレ》 ヒューが演じる男は相変わらずダメなんだけど、憎めないんだよなあ・・・。見る者にそう思わせる、これぞ彼の持ち味なんでしょうね。本作はちょっとシリアスな内容も含んでいますが、そんな中にクスッと笑わせてくれる彼の存在が活きています。彼が演じるウィルとマーカス少年の関係が微妙なんだけど、それが絶妙にいい。終盤のコンサート。ウィルがギターを弾きながらマーカスを助けにステージへ出てくる。普通ならそこで拍手喝采、大団円となるところですが、そうならないところがまたヒューらしくていい。最後はちょっぴり暴走してブーイングを浴びてしまう始末。やっぱダメだなあ・・・。と思いつつもこのシーンに感動してしまいました。一緒にステージに立ってくれたその気持ちはしっかりマーカスに伝わっていたんだから。 [DVD(字幕)] 7点(2013-12-03 20:59:44)(良:2票) |
145. ミッドナイト・エクスプレス(1978)
《ネタバレ》 主人公の男は陰謀に巻き込まれた訳ではなく、自らの意思でいけないモノを隠し持ち、それを国外に持ち出そうとして逮捕され、懲役4年の判決を受ける。裁きを受け罪を償うのは当然であり、まあ、妥当な判決か。ここまでは割と冷ややかに主人公の男を見ていました。しかし、残りの刑期が2か月を切る頃になって突然、お国の事情により4年の刑期が何と、30年に延長されてしまったことでそういう状況は一変します。絶望感、閉塞感、不安感…以降の刑務所の描写は凄まじいの一言。ただしかなり脚色もあるようですが、ここは脚本家オリバー・ストーン、剛腕ぶりを遺憾なく発揮といったところでしょうか…。描き方は賛否分かれるところだとは思いますが、刑務所モノとしての完成度は高い作品だと思います。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-11-17 00:35:59) |
146. ターミネーター3
ジョン・コナーを追って送り込まれる最新型ターミネーターと、更にジョンを守るべく旧型のシュワちゃんが少し遅れてやって来る。この序盤は前作と同じなだけに新鮮味は無い。 変わったところはT2から時が経過しジョンが大人になっていたことと、女ターミネーターの登場。この女ターミネーターのシュワと負けず劣らずの無表情ぶりはなかなか。 さて、このT3でよく問題になるのがジョン・コナーのキャスティング。僕は悪くないと思いますよ。自分の置かれた状況を考えるほどに頭がおかしくなってしまいそうだ。相談したくたって誰が信じてくれる?誰でも逃げ出したくなるんじゃないか?彼の風貌からはそんな苦悩ぶりがよく表れている。 しかし守るべき、いや共に戦うべきパートナーを得て忘れかけていた、T2でコナー少年の心の中に芽生えた近未来の人類のリーダーになるという使命感を取り戻していく物語も良かったと思います。 [DVD(字幕)] 7点(2013-08-30 22:47:18) |
147. 砂漠でサーモン・フィッシング
原作未読なので何とも言えませんが、映画としては色んなことを詰め込みすぎている感はあります。「イエメンの砂漠の川に鮭を放流し、遡上させる」という壮大にして困難なプロジェクトに挑む人間ドラマとしては、かなりあっさりしている。 プロジェクト自体よりも、プロジェクトにかかわる2人のロマンスを中心にした登場人物の心の機微を描いた人間ドラマに軸足が置かれています。マクレガー演じる、善人だが人生のうまくいっていない一時期を生きる水産学者。彼はこういう役を演じると抜群にうまいし、お相手のエミリー・ブラントもやはり好演しています。心の機微を表現する2人の繊細な演技が素晴らしかったです。 後半は登場人物の様々な事情が交錯し少し重さもありますが、重さのあるドラマながらも作品はコメディタッチで、イエメンの大富豪の大らかさのある人物像がよく効いています。 最後はハルストレム監督独特の、重さの中にも爽やかさを感じさせてくれる佳作です。 [映画館(字幕)] 7点(2013-07-11 23:16:01)(良:1票) |
148. 天使の分け前
暴力に明け暮れ荒んだ毎日を生きていた主人公の青年ロビー。恋人と生まれくる子どものために、今度こそはと更生を決意する。 裁判で社会奉仕活動を言い渡されたちょっとトホホな仲間たちと、旨いスコッチウイスキーには目がない愛すべき社会奉仕活動の指導者の姿をコメディタッチで描きますが、そんな中にいかに更生を決意しようともそれが容易ではない社会や雇用の厳しい情勢を挿入する。コメディとは言え、このあたりはいかにもケン・ローチらしいところです。 主人公ロビーに関しては必ずしも共感出来ることばかりではありませんが、この愛すべき社会奉仕活動の指導者が彼らを見守る視線こそケン・ローチの視線であり、そんな人間を見つめるローチの視線は本作でもやはり優しい。 スコッチウイスキーの香り漂うスコットランドの美しい風景描写も見どころです。ウィスキーの製造過程で生じる「天使の分け前」の意味の説明は作中でなされますが、ラストに登場する、もう1つの「天使の分け前」が何とも素敵。これが鑑賞後にとてもいい余韻を与えてくれます。 [映画館(字幕)] 7点(2013-04-15 22:25:10)(良:2票) |
149. キラー・インサイド・ミー
本作のケイシー・アフレックは凄かった。彼が演じた男の行為の数々は勿論のこと、無表情、弱々しい声などの全てが見事なまでの抑揚のない演技で見る者に不快感や嫌悪感を与える。 周りはみんな自分のことを知っていて、(本作の場合表の顔と言うべきでしょうか)過去から今に至るまで誰かがどこかでつながっている。大都会の片隅で起こった事件ではなく、みんな顔馴染みという中西部の狭い田舎町という舞台設定も重要なポイントだったと思います。 序盤にケイシー自身が「この町には悪党なんていないんだよ」と語りますが、挿入されるカントリーミュージックに代表されるように、妙なのどかさの中にある陰惨さに非常な恐ろしさを感じます。 作品と全然関係ない話なんですけど僕はプロ野球は阪神ファンなのですが、ケイシーが演じた「ルー・フォード」と言う名前、何年か前に阪神にいたダメ外人と同姓同名。不快感だけでなくヘンなことまで思い出させていただきました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-02-02 16:04:55) |
150. 戦場のアリア
戦場の最前線で敵味方に分かれて戦う兵士達。彼ら兵士達に一体何の違いがあるというのか。故郷に家族が待つことも、死者を弔う気持ちも、信仰も同じ。 違いは彼らが別の国に生まれてきたこと。そして本作に登場するのはその国同士が戦争になったがためにそこに駆り出された普通の人々。そんな兵士達の一夜限りの休戦を通して、戦争の愚かさと平和の尊さを見事に描いた作品です。ほんの少しだけ挿入されるユーモアも良かったです。 微妙なのがダイアン・クルーガーの存在。本作は男だけの映画になっても良かったのではないか?という気がしました。しかし美しい歌声に癒される両軍の兵士達の表情を見た時には、このシーンのためだけでも良かったのかなと思うとともに、彼女の歌が吹き替えでもいいと思えました。 この休戦がクリスマスの一夜限りと考えると虚しさも感じますが、キリスト教を信仰する人々にとってのクリスマスが持つ意味の全ては僕には分からないのかなと、そんな気がしました。 その一方で終盤での戦場の神父さんと司教の会話と、その後の司教の説法からは宗教とは一体何なのかと考えさせられます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-01-22 21:12:15) |
151. 裏切りのサーカス
東西冷戦下のスパイの哀しき人間模様を描いた重厚感のあるドラマ。 どちらかというと謎解きに軸足が置かれており、サーカスの上層部に紛れ込んだ“モグラ”の正体を捜査していく老スパイ、スマイリーを演じたゲイリー・オールドマンの渋くも威圧感のある演技を堪能しました。更に登場しない重要登場人物である、謎のソ連の大物スパイであるカーラ。姿は見せずに見事にその意志や作品の中での存在感を出させていたと思います。 鑑賞に集中力を求められる作品ですが、考えてみればモグラの容疑者はかなり絞られています。最後にモグラの正体を明かしますが、モグラを含めた容疑者の人物描写が終盤まではかなり少なく、ちょっと時間が足らなかったかという気がします。 [DVD(字幕)] 7点(2012-11-07 23:57:08) |
152. ルート・アイリッシュ
ルート・アイリッシュ。それはバグダッドのグリーン・ゾーンとバグダッド空港を結ぶ世界一危険な道。 ここで起きた主人公の男の親友が殺された事件の解明を通して、イラク戦争の裏にある問題をミステリー・サスペンスタッチで社会派ケン・ローチが怒りを込めて告発する。 何の罪もない子ども達が戦争の犠牲になっていくのに対し、何度か登場する関係者の台詞。「そんなことはイラクじゃ日常茶飯事じゃないか」が腹立たしい。 イラク戦争の背景にある、戦争を民営化・派遣化してしまう派兵の民間企業への委託と、そんな企業に高額報酬で雇われていく民間兵の存在とそこにある問題を告発しながら、一番の犠牲者は戦争とは何の関係も無いイラクに暮らす普通の人々じゃないか。そんなケン・ローチの怒りの声が聞こえてくるかのようでした。 [DVD(字幕)] 7点(2012-10-14 13:50:57) |
153. プルートで朝食を
パトリックの不幸な生い立ちもそうだし、その後の展開もニール・ジョーダンの他の作品でも見られるアイルランドの現代史を絡めたりもしている。しかし本作は悲観的ではなく、重さも感じさせない。 パトリックの淡々とした前向きな生きざまと、彼が出会う人々とのコミカルな描写、小鳥たちの会話のファンタジー的要素が作品にいい明るさをもたらせています。オープニング、そしてラストにも使われる“シュガー・ベイビー・ラブ”の爽やかなメロディも実に効果的に作用しています。 「ティファニーで朝食を」を連想させるタイトルに、終盤のマジックミラー越しの会話はヴェンダースの「パリ、テキサス」を思わせる。他にも「南太平洋」とミッツィ・ゲイナーなど、ニール・ジョーダンの様々な映画へのオマージュも感じられる作品です。 [DVD(字幕)] 7点(2012-10-13 14:11:16) |
154. ミス・ポター
誰もが知っているピーターラビット。その誕生秘話と作者ベアトリクス・ポターの半生を描いた伝記モノです。 映画である本作も、絵本のようにストーリーは軽めに流しますが時折挿入される湖水地方の風景など画の美しさが印象に残る。ずっと休暇を過ごし親しんできた湖水地方の美しい自然と、彼女の絵本の主人公がいつも動物であること、農場を買い村の自然の保全に動いていくこととは無関係ではないのでしょう。そんなことをさりげなく伝えてくれる作品です。 僕はレネー・ゼルウィガーという人はずっと苦手だったのですが、本作の彼女は良かったなあ・・・。特に本の出版が決まる。ノーマンとの結婚を決意する。などなど、そんな時に幸せをかみ締めるような笑顔がとても良かったです。最後の台詞の代わりに彼女の笑顔を挿入する。そんな演出も良かったと思います。そして作品のかなりの時間に流れ続ける静かな音楽も作品の雰囲気にとてもよく馴染んでいました。 伝記モノとしてはもう少し尺が長くなってもよかったので、ノーマンとの別れの後のミス・ポターのストーリーをもう少し見たかったという思いも残ります。しかしノーマンとの愛やミリーとの友情を巧く絡めながら、音楽や時折挿入されるアニメーションの使い方も効果的な、とても静かな佳作でした。 [DVD(字幕)] 7点(2012-10-01 21:38:00) |
155. 夜空に星のあるように
イギリスの名匠ケン・ローチの長編デビュー作です。苦労を抱えながらも生きていくイギリスの庶民の数々のドラマを描いてきたケン・ローチ。デビュー作から彼が映画の中で描く対象にはブレがないですね。 本作は男運に見放されたような、幼い息子を抱えた若い女性の日々を綴った作品です。そんな主人公の弱さを見せる部分もありますが、それだけではなく目の前にある現状を受け入れていく強さを感じました。そしてラストで未来や理想の生活を語る彼女の姿からはささやかな希望を感じさせてくれるし、それはケン・ローチの人間賛歌であり庶民への賛歌のように思えました。 音楽を担当したドノヴァンのメロディと、登場人物の心を代弁するかのような歌の歌詞が素晴らしかったです。 [DVD(字幕)] 7点(2012-09-28 21:46:12) |
156. マリリンとアインシュタイン
冒頭、映画の撮影現場。通気口の上に立つ白いドレスのセクシー女優。通気口から風が吹く度にスカートが舞い上がる。その度に見物する男達から歓声が上がる。しかし、当時のその女優の夫である体格のいい男だけは不機嫌そうにそれを眺める。そしてホテルに滞在する原子爆弾に関係がある著名な物理学者。さらに1人の政治家。 この冒頭は紛れもなく「七年目の浮気」の例のシーンであり、この女優はマリリン・モンロー。夫は勿論ヤンキースのスーパースター、ジョー・ディマジオ。(実際にディマジオはこのシーンの撮影現場を訪れ、このマリリンの姿に激怒したそうですね。)物理学者とは勿論アインシュタイン。そしてもう一人、マッカーシー上院議員。 しかしこの映画、この人物達を指しているんですけど、あくまでも全員が“らしき人物”なんですね。人物の設定には現実感がありそれぞれの当時の苦悩が描かれますが、深夜にホテルの一室で彼らが集うという設定はあり得ないだけに、やはり“らしき”で良かったのでしょう。このシュールさの中にあるリアルさに不思議な面白さがある作品です。 他の映画にも見られるようにやはり本作でも女優として、一人の女性として苦悩を抱えるマリリンの姿が辛かった。それだけに、アインシュタインと相対性理論を楽しそうに語り合うチャーミングなマリリン。この姿が本作で一番印象に残る彼女の姿なのでした。 [DVD(字幕)] 7点(2012-08-18 23:15:41) |
157. ウディ・アレンの夢と犯罪
《ネタバレ》 まず、この作品は公開時劇場で鑑賞していまして、とっくにレビューしていたつもりでいました・・・。この度スカパーにてそれ以来の鑑賞となりました。 多作の人ウディ・アレンですが、数多くの自身の作品の中でも「重罪と軽罪」が余程お気に入りと思われる。同じくロンドンで撮った「マッチポイント」に続き、「重罪と軽罪」が思い出される作品です。 コメディが多かった近年のアレンの作品の中では、久々にコメディ色を排した”シリアスなアレンらしさ”が感じられる作品。 罪を犯す兄弟を演じる2人の実力派の演技も見応えがあるし、なかなか罪を実行させず、そこに至る2人の苦悩、自問自答ぶりがじっくり描かれ、次第に見る者に彼らが犯そうとしている罪の重さ感じさせていく。犯行自体はほんの一瞬で終わらせ、その後の兄弟の心理描写にもじっくりと時間を費やす。 時にはハートウォーミングに時にはファンタジックに楽しい映画を見せてくれるアレンと、笑いを排しシリアスな人間ドラマを見せてくれるアレン。久々に後者の顔を見せてくれたアレンの健在ぶりが嬉しい作品でした。 でも、シリアスな人間ドラマの中に俳優アレンがいい味を見せてくれる過去の作品比べると、アレン自身のご出演が無いのはやはり淋しさを感じますね。 [映画館(字幕)] 7点(2012-06-04 20:23:21) |
158. あるスキャンダルの覚え書き
もっと醜い愛憎劇になってもおかしくない話だし、サイコサスペンス的要素も含みますが、上品さのある作品にまとめあげた。 ジュディ・デンチの存在が本作を上品さの中に恐ろしさがある、見応えのあるサスペンスに作品を押し上げた。これは人間の表面と内面を見事に演じ分ける彼女の卓越した演技力があってこそ。 彼女の確かな演技力は、もう70代も後半になった今でも出演作が途切れず、彼女の演技力が常に頼りにされていることをみても明らかだと思うのです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-05-27 19:52:03) |
159. 素晴らしき戦争
《ネタバレ》 何とも豪華な顔触れが揃ったリチャード・アッテンボローの初監督作品。 この初監督作から、現在のところ最新作である「あの日の指輪を待つ君へ」に至るまで、アッテンボローの監督作は戦争をテーマにした作品が多いことに気付かされます。またアッテンボロー監督、本作に「コーラスライン」と、ミュージカルもお好きなのでしょう。 本作は大局的な戦争、戦場の個々の兵士たちにとっての戦争、戦時下を生きる市民にとっての戦争が、長く感じられる部分もありますが素晴らしきユーモアの精神で描かれています。 その一方で歌われる歌の歌詞、時折挿入される手紙の文面などからは時にやんわりと、時に辛辣に反戦のメッセージを投げかける。特に草原に無数に連なる十字架のラストシーンからは非常に重い無言のメッセージを感じずにいられませんでした。 [DVD(字幕)] 7点(2012-04-26 22:32:08) |
160. 寒い国から帰ったスパイ
スパイものとしては追いつ追われつの逃走劇もカーチェイスもアクションも無い、演出や音楽も地味な作品ですが、東西冷戦下の最前線の緊張感が伝わってくる作品です。市民が安全に暮らし国の平和を守るという非常に重い任務に就きながらもその存在、命は非常に軽い。現実の世界の彼らも頻繁にドンパチがあるわけではなく、水面下で息を潜めるかのように任務を遂行しているのだろう。そんなスパイを演じる主演リチャード・バートンの目。目で全てを語るかのような演技が印象に残るスパイの世界を描いた悲しき人間ドラマ。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2012-04-12 21:05:55) |