1. 戦場カメラマン 真実の証明
見る前はこの邦題から、紛争地域で何が起こっているのか?その真実に迫る、例えば「サルバドル」のような作品をイメージしていました。 そのイメージとは異なりましたが、地味ながらも戦争と人間を描いた見応えのある作品でした。 戦場で一体何があったのか?なぜ親友のデヴィッドは帰って来ないのか? それは心に体に傷を負ったコリン・ファレルが演じる戦場カメラマンとクリストファー・リー演じる医師の対話を通して明らかになっていく。 その過程を描く後半は淡々とした中にもズシリと考えさせられる重みがありました。 そして戦場で何があったのか、果たしてデヴィッドはどうなったのか・・・?明らかにされる真実もまたあまりにも重い。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2015-04-20 20:50:20) |
2. 青春群像
「アマルコルド」と同じく、フェリーニの故郷の海辺の小さな町を舞台にした自伝的要素が強い作品です。 「アマルコルド」が少年時代の記憶をノスタルジックに幻想的に描いているのとは対照的に、本作では、そろそろ人生の方向性を見つけ出していかなければならないのらくら達が定職に就く訳でもなく、だらだらとつるんだりする姿や、家族や町の大人たちと彼らが関わる様が淡々と綴られていきます。 午前3時。ある者にとってはもう働きに出る朝。でも、のらくらは夜遅くまで遊び回り、まだ町をふらついている。時間を持て余し、人気も無く殺風景な海辺に彼らが佇む姿は人生に行き詰っているように見える。ネオリアリスモ的な空気感もありますが、その一方で彼らの姿が意外に陽気に描かれており、現実の厳しさもありますが、そんな中にもフェリーニの優しさが感じられます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-07-05 00:07:23) |
3. 戦場のアリア
戦場の最前線で敵味方に分かれて戦う兵士達。彼ら兵士達に一体何の違いがあるというのか。故郷に家族が待つことも、死者を弔う気持ちも、信仰も同じ。 違いは彼らが別の国に生まれてきたこと。そして本作に登場するのはその国同士が戦争になったがためにそこに駆り出された普通の人々。そんな兵士達の一夜限りの休戦を通して、戦争の愚かさと平和の尊さを見事に描いた作品です。ほんの少しだけ挿入されるユーモアも良かったです。 微妙なのがダイアン・クルーガーの存在。本作は男だけの映画になっても良かったのではないか?という気がしました。しかし美しい歌声に癒される両軍の兵士達の表情を見た時には、このシーンのためだけでも良かったのかなと思うとともに、彼女の歌が吹き替えでもいいと思えました。 この休戦がクリスマスの一夜限りと考えると虚しさも感じますが、キリスト教を信仰する人々にとってのクリスマスが持つ意味の全ては僕には分からないのかなと、そんな気がしました。 その一方で終盤での戦場の神父さんと司教の会話と、その後の司教の説法からは宗教とは一体何なのかと考えさせられます。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-01-22 21:12:15) |
4. 世界の始まりへの旅
《ネタバレ》 イタリアの名優マストロヤンニの遺作。演じる役はポルトガルの老いた映画監督、マノエル。これはマノエル・デ・オリヴェイラ監督の分身というべき役。マノエルは3人の男女と車に乗り込み、記憶を辿り人が自らのルーツを辿っていく旅に出る。旅の先々で幼少の頃、若い頃を振り返っていくマストロヤンニの非常に静かな演技が味わい深い。訪れる思い出の場所は今では朽ち果てた廃墟となり走る車の前に広がってくる景色が映し出される事は無く、カメラはリアウィンドウから後方に遠ざかっていく景色を捉え続ける。遠くに過ぎ去った過去を振り返る旅であるとともにこの旅の目的地はマノエルの同行者のフランスで暮らす男が初めて訪れる彼の父の故郷。今の自分が存在する始まりの地。これはまさに自らの世界の始まりの地への旅。そしてオリヴェイラ監督の平和への祈りや、老いや死を意識させる台詞が随所に登場する。オリヴェイラ監督、この時89歳。しかしオリヴェイラ監督は2009年にも映画を撮っているようですし100歳を超えた今なお現役。まだまだ現役で映画を撮り続けて欲しい。 [DVD(字幕)] 7点(2010-04-01 19:16:25) |
5. ぜんぶ、フィデルのせい
《ネタバレ》 裕福な家の娘アンナ。パパとママが共産主義活動にのめり込み、生活が一変。大きな家から狭いアパートに引っ越すことになる。しかもアパートには得体の知れないヒゲ面でタバコをプカプカふかす変なオジサンが大勢四六時中出入りしている。共産主義って?団結の精神って?核戦争って?パパもママもどうしちゃったの?という訳で世の中も自分の周りも分らないことだらけ、以前の生活に戻りたいアンナは不満だらけでいつもふくれっ面。でも時折パパから褒められたり、遊んでもらえた時に見せる子供らしい笑顔が印象に残る。周りの大人のやっていることが理解できない、でも、知りたくて仕方がない。子供の頃なら誰もが感じる事。そんな等身大の子供の気持ちを演じたアンナ役の少女の演技力に驚かされた。テーマは子供の成長なんですね。これもアンナには分らない、中絶って?子供はどうやって作るの?という性に初めて興味を示す女の子の素朴な気持ちや成長を70年代の時代背景や価値観、世相を絡めた盛りだくさんの内容ながらも全てがアンナの知りたい事であり、アンナの視線であるので散漫にならずに楽しめる作品に仕上がっています。時には程よくコメディタッチで描かれ、(特に分かったようでとんちんかんな事を言うアンナがかわいいです。)ちょうどいい尺によくまとめられた、可愛らしくていい映画です。ラストシーンは自分で転校を決断し、そのあまりにも環境の違う転校先でしっかりと自分の足で立ち、子供たちの輪に入っていくアンナの姿に感動しました。 [DVD(吹替)] 8点(2009-09-09 21:10:07) |
6. 戦場のピアニスト
《ネタバレ》 公開当時劇場で観ました。主人公のシュピルマンが逃げ回る様子も、目をそらしたくなるシーンの数々も実話だけに全てが重い。鑑賞後の余韻は感動というのとはちょっと違う。衝撃と怒りに身も心も震えるようだった。もう一度観たいとは思わない。でも、見てよかったと思う。廃墟の街に立ち尽くすシュピルマンの姿が忘れられない。 [映画館(字幕)] 7点(2008-12-20 17:11:50) |