21. 死への逃避行
めずらしく(?)狂乱しない美しきイザベル・アジャーニがただ息をするかのように人を殺してゆく。そこに狂気は見えない。狂気を見せるのはむしろアジャーニを追う探偵。ところどころちぐはぐとした物語はもしかしたら探偵の妄想・・。そうであるかのようにどこか悪夢めいている。その悪夢の住人としてあまりにはまるアジャーニ。あまりにきまるコスプレ。美しさがはかなさを助長する。切なさを増幅させる。ああ、再見したいがどこにも置いてない(涙)。ちなみに盲目の建築家だったか、彼に話した女の過去に登場する父親はムルナウ『最後の人』そのまんまだ。(『最後の人』のハッピーエンドは後から付け足されたもの) [ビデオ(字幕)] 7点(2010-12-24 16:09:05) |
22. パリ、18区、夜。
《ネタバレ》 フランスが移民国家であることは、サッカー・フランス代表の顔ぶれを見れば一目瞭然なのだが、映画はそこから派生する諸問題を浮かび上がらせることができる。それを提示する意志のあるなしにかかわらず。レオス・カラックス『ポーラX』然り、ミッシェル・オスロ『アズールとアスマール』然り。そしてこの『パリ、18区、夜。』然り。こういった外国の社会問題を映画ファンは新聞から得れる情報以上のものを得ているんだから映画は侮れないのだ。といった話は置いといて、クレール・ドゥニ、彼女の映画はコレ以外だと『ネネットとボニ』『ガーゴイル』しか見ていないのだが、共通するものといえば「孤独」だろうか。主人公の女性はパリに着いたばかりでフランス語すら話せない。しかし何か問題を抱えているようには見えない。映画は連続殺人事件の犯人がアフリカ系移民であり、それゆえに問題を抱えていることを犯人の兄夫婦の諍いによって伝えている。しかし同じく移民である主人公は淡々とそのドラマにつかずはなれずにいるだけ。でもラストシーンで彼女はある行動を起こす。新たなる犯罪者誕生の瞬間である。そこに移民問題があるとは言ってない。しかし彼女が「孤独」だったのだと思い当たるのだった。この瞬間に立ち会うまでちょいと退屈かもしれんが。 [ビデオ(字幕)] 6点(2010-12-16 15:49:55) |
23. ウイークエンド(1967)
ジャック・タチのような風刺映画にちょっぴりの毒を入れようとしたら中蓋が開いててどっさり入っちゃったみたいな。しかも中蓋開いてたの、わざと、みたいな。文明=車社会=事故=死、この飛躍が笑える。まるでゾンビ映画のようにあらゆる場所に死体が転がってる。ゴダールの映画っていつも何かに怒ってるというか反論してるというか、そういうところがあるんだけど、こういうの見ちゃうとホントに怒ってるの?怒ってるフリして楽しんでない?って思っちゃう。で、結局面白いんだか面白くないんだかよくわからんままに進み、正直退屈感を覚えてきたところでとんでもないシーンが出てくる。実に退屈な農村での日常風景が延々と映されているだけなんだけど、カメラが360度回ってそれらを何度も映し出すことでえらくドラマチックに見えてくるというシーン。ジャック・リヴェット『北の橋』でバイクが同じところを延々と走ってる退屈な画が音楽ひとつで壮大な画になっちゃうってのがあったけどそれと同じ効果をカメラ一つでやっちゃうのだ。エロ会話とか政治的な風刺を装ったセリフとかいまひとつノレなかったんだけど、このワンシーンだけですっかりやられた。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-12-09 17:12:53) |
24. 賭博師ボブ
原作があった『海の沈黙』『恐るべき子供たち』とは違いメルヴィルのオリジナル脚本ということもあって、後のフィルムノワール群を彷彿させるものになってます。『海の沈黙』では屋内の灯りに照らされる「顔」を美しく撮っていたアンリ・ドカエが今作では夜明け前の薄暗いモンマルトルの街並みを美しく撮りあげる。主役はこの街だ。街の顔役としてのボブのジャン・ギャバン的落ち着いた振る舞いがなかなかに様になっててかっこいいのだが、その貫禄はボブが発しているのではなく彼に対応する街の住人たちと、酒と女とギャンブルがどこか質素に、でも当たり前に存在するモンマルトルそのものがそう見せているだけのようでもある。だからちょっと微笑ましいラストの展開もすんなりと受け入れられる。まさに「賭博師ボブ」であった。この「ゆるさ」こそが古き良き時代のモンマルトルってことなのだろう。 [DVD(字幕)] 7点(2010-11-26 12:17:45)(良:1票) |
25. アワーミュージック
まず「地獄篇」で戦争の記録映像と様々な戦争映画の断片がコラージュされる。ゴダールの『映画史』から戦争の部分だけを紡ぎなおしたような映像の波はその映像の一つ一つの惨さとは裏腹に美しい。ピアノの旋律は恐ろしく響いているのにやはりこれは美しい。どんなに惨い映像が映し出されてももうそこに映し出されたはずの戦争は戦争でなくなっている。戦争を映画にするということはこういうことなのだ。ということだろうか。そこをふまえて本編となる「煉獄篇」へ。戦争の映像ではなく目の前にある戦争の傷跡に涙する女。戦争が残したもの、テロについて言及される。もちろん「映画」を絡めてくる。ゴダール本人が発した言動に何かを決意する学生。そのことにゴダールは気付かない。これもやはり映画の宿命。観客は勝手にメッセージを受け取るが発信者はそこにいない。「天国篇」はよくわからないけど興味深い。天国に兵士がいる。平和そうなんだけど、それは兵士が兵士じゃないから平和なのか兵士が天国を守っているから平和なのか。とりあえず映画館で鑑賞できなかったことが悔やまれる1本。 [DVD(字幕)] 8点(2010-11-11 15:38:48) |
26. ファザー、サン
『マザー、サン』と同じ監督が作ったものとは思えない。父と息子のドラマ。しっかりとした物語映画。だけど見終えてみると本当に物語があったのかどうか疑わしく思えたり。けっきょく全体の流れより場面場面が印象に残るというところでは『マザー、サン』と同じなんだ。息子の元カノが綺麗で、ソクーロフは女優も綺麗に撮れる人なんだと確信する。ガラスを隔てることで世界が歪む。そのソクーロフ的な世界からなんとか逃れようとするかのように窓の隙間に顔を寄せる女と男がこれまたソクーロフらしからぬ短いカットで映し出される。舞台はいったいいつのどこなのか。こんなにも映画らしい街並みがあるなんて。屋根からの景色は延々と海。路面電車が走る風景の美しさはムルナウの『サンライズ』をも超えている。もうそれだけでじゅうぶんだ。 [映画館(字幕)] 8点(2010-11-10 13:39:30) |
27. シルビアのいる街で
カフェの一見リアルな喧騒は、でもしかし主人公の視点と思われるカメラ、つまり我々の側をじっと見つめる女といういくつかのカットによってどこか虚構じみたものに変貌してゆく。音が格別に印象付けられた中で迷路のような街をさまよい歩くシーンもまた然り。カフェの女たちが街にもいることで決定的となる夢の世界。電車の窓がスクリーンと化すのはここが虚構の世界であることを強調しているのだろうか。ユーカラさんが書いておられるように演出が見えすぎているところが確かにあるんだけど、これもまた作られた世界、虚構性を明確にするためではなかろうか。なにせここに映っている風は大袈裟に自己主張していて、こんな風、現実の世界には絶対にないのだから。『シルビアのいる街で』は物語を膨らませなくとも演出でいくらでも映画が豊かになることを証明している。 [映画館(字幕)] 7点(2010-11-09 11:26:21) |
28. バーダー・マインホフ 理想の果てに
後にドイツ赤軍と呼ばれる組織の成り立ちと行く末が丁寧に描かれてゆく。さすがに全てを描ききるなんてことができるわけないので、初期主要メンバー3人の動向がメイン。テロは犯罪だから許してはいけない、と今なら言えるが、当時の社会を省みた場合、テロ行為は国家の作った法によって守られた合法的犯罪に抵抗する唯一の手段だったことがよくわかる。破壊行為は革命行為であり、そもそも体制批判なのだから体制の作り上げた法を遵守する必要がない。ベトナム戦争を発端とする反米デモと、暴力でそのデモを一掃した国家。この事件をきっかけとし、反ナチズムが反体制へと受け継がれる時代背景とリンクし極左組織が生まれてゆく必然が描かれる。そして体制をつぶすための破壊行為が、反体制であるがために抑止力を持ちえず、次第に犯罪行為そのものが目的となってゆく必然。ここまでの全体の流れが実にわかりやすく、面白い。ただ、肝心のメンバー逮捕に至るまでの体制側の描き方がブルーノ・ガンツの独り舞台であまりに短絡的に過ぎる。また逮捕後の展開が駆け足に描かれるのはしょうがないにしても組織の塀の中と外、どっちつかずの描き方も面白さを半減させているように思う。 [DVD(字幕)] 6点(2010-10-19 14:42:39) |
29. パリより愛をこめて
《ネタバレ》 前半は面白くない。トラボルタの目的を達成するための徹底的な傍若無人ぶりはそれなりに楽しいのだが、どこにでもあるその辺の映画からもう一歩抜け出せない。シンプルなのはいいけど、何もかもがベタすぎる(ベタは狙いでもあるんだろうけど)。ところが傍若無人でもふと心を乱したりするのがこの手の映画なのだが、主人公宅にて躊躇なく友人女性を撃ち殺すその徹底を上回る徹底振りに俄然面白くなってくる。主人公をも置いてゆく早い展開もいい。スピード感溢れる演出が最も光っていたのがカーチェイスがこれから始まろうとするシーン。サイドミラーに猛追する車がぐいんと映し出された瞬間、心が躍った。手垢のついたものを寄せ集めたに過ぎないのだが、そのことをあえて前面に出してウリにしちゃってるところがコズルイというかウマイというか・・。 [映画館(字幕)] 6点(2010-10-12 13:31:11) |
30. スパイ・バウンド
邦題とDVDパッケージの印象だとアクション映画にしか思えないんだけど、で、冒頭シーンなんかはアクションへと流れてゆくのかなと一瞬思わせてくれるのだが、結局アクション映画ではなかった。その思い込みによるダメージもなきにしもあらずだが、描かれているもののスキャンダラスさに比べて全然盛り上がらんなと。たしかにスパイってのは本来地味でなければならないわけだから地味なのはいいとして、地味なら地味なりの面白さがなけりゃならん。地味さを突き詰めていけば怖さも出るだろうけど、この地味さには怖さがない。単に語り方のせいで地味なだけ。非人間的なスパイをやめたいんだけどそう簡単にはやめさせてくれない。そこに葛藤のドラマがあって、陰謀劇が出てきて、それを知った同僚のドラマがある。どれか一つに絞ってくれるだけでもずっと面白くなったような気がしないでもない。 [DVD(字幕)] 3点(2010-10-06 16:04:34) |
31. ウェイクアップ!ネッド
《ネタバレ》 良さが分からなかった。評価高いなあ。のどかな田舎風景ののどかな時間に生きる老人が業突く張りだというギャップに可笑しさはあるものの、老人たちの爽やかな業突く張りぶりは人間臭さをこそ見せても嫌味はあまり感じられず、素っ裸でバイクに乗るじいさんという画に見合ったぶっ飛びを期待していた者としてはかなり期待はずれ。かといって村全体の一体感がヒューマンドラマとしての盛り上がりを見せつつある後半で、結束の唯一のハードルをあんなにも簡単に排除してしまうその極黒な顚末もどうかと。無いと思わせてあるからこそブラックさが際立つといったところなのかもしれないが、せめてあの異端者は異端者ではなく犯罪者ぐらいにしてほしいのだが、それだとブラックさが際立たないのか。 [DVD(字幕)] 3点(2010-08-31 15:22:19) |
32. 肉体の悪魔(1947)
《ネタバレ》 大きな物語は見たとおりなのだが、物語の核心部分、つまり二人の気持ちの移ろいといったものがほとんど描かれていない。スター俳優を使ったハリウッド映画のようにこの瞬間に惚れましたって顔のアップでその心理を表現するでもなく、かといって心の葛藤を背景や小物で暗喩的に表現するでもなく、ひたすら物語によって物語を充足する。それでも足りないもんだからところどころで唐突感を覚えたり置いていかれたりする。不評の主演二人は個人的にははまっていたように思う。病んでゆく女と二人、思い出の酒場にて心理的見せ場が盛り上がってゆくが、感傷的なそのシーンよりも、欲望のままに過ごした退廃的な二人の生活シーンにもっと凝ってほしかった。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2010-08-24 15:13:06) |
33. ああ結婚
《ネタバレ》 人生の苦汁が全部顔に出てますみたいなソフィア・ローレンが出てくる。なんだか重そうな雰囲気だ。時を遡り十代のうぶな彼女が出てくる。同じ人物とは思えない変化にびっくり。『昨日・今日・明日』の三変化も凄いけどこの年齢からくる変化に人生経験のあるなしを加味した変化がまじで凄い。男は女が好いていることをいいことに都合の良い女中のように扱い続ける。女は女で三人の子供のために男の金を当てにし続ける。どうしようもなくドロドロである。仮病を使って結婚とか、自分の子供はどの子か捜すところなんか、かなりコメディな様相を見せるんだけど、これとてドロドロの賜物なわけで。ところが突如ハッピーエンディングへ。なんだかんだいって心のずっと深いところで愛し合っていた、なんて、んなあほな、という納得しがたい展開なんだけど、マストロヤンニとソフィア・ローレンだもんでまあそれもありかと。いやほんと、この二人でないと無理でしょ、この展開。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-08-23 18:20:29)(良:1票) |
34. オルエットの方へ
木靴をみつけてゴトゴト鳴らしてゲラゲラ笑う。何が面白いのかわからんがこっちまで笑いそうになる。「おーるるるえっっっと」と言ってはゲラゲラ笑う。何が面白いのかわからんが笑いが伝染する。これは演技なのだろうか。脚本はどうなってるのだろう。とにかくそこに演出があることを感じさせない彼女たちの素の表情とカメラを意識しないあまりに無防備な彼女たちの身体が次から次へと映し出される。彼女たちは物語に準じた会話をするでもなく、決められたゴール地点へ向かって行動するでもない。彼女らに引きつけられるようにして登場する男たち同様、ただひたすら昨日と今日と明日の関係になんの脈略もない彼女たちのバカンスに付き合うのみ。それがそのまま極上の映画体験になっちゃうんだから素晴らしい。登場する男の一人がやたらとワインをがぶ飲みしてるんだけど、南仏の海岸と白ワインって合うなあと。凄く美味しそうだったもんで、この映画見たあとすぐに安物のワインをアホみたいに大人買いして毎日ガブガブ飲んでたんだけど、安物はいらんとヨメさん付き合ってくれず。一人でがぶ飲みワインってのは絵にならんのな。ま、夫婦でがぶ飲みだって絵にはならんか。 [映画館(字幕)] 8点(2010-08-06 14:32:27)(良:1票) |
35. なまいきシャルロット
子供なのに体が先に大人へと向かう年頃の女の子の話。もちろんその年頃の女の子に備わるエロチックさを狙っているはず。監督は『死への逃避行』でイザベル・アジャーニに妖艶なコスプレをさせたクロード・ミレールだ。案の定、べつになくてもいいスクール水着のシャルロットから映画は始まる。しかしシャルロット・ゲンズブール。お色気プンプンとは対極のどこか中性的な魅力を発散させていたジェーン・バーキンの娘だ。そのモデル体形と共に間違いなく引き継いだその中性的魅力は、大人と子供の、女と女の子の中間に在る特別な魅力となって我々を魅了する。無性に腹が立ったり過剰に怒ってみせたり自分本位が露骨になったり、こういった「若気の至り」ってやつには男女問わず郷愁を含んだ共感を得ることができるんじゃないだろうか。この映画のシャルロットは笑顔も泣き顔もとにかくキラッキラッしてる。13歳という設定が持つ色々が凝縮されている。その時のシャルロット・ゲンズブールというこれ以上ないタイミングと素材によってそれは成されたのだから奇跡という言葉を使ってもいいかもしれない。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-08-04 15:46:58)(良:1票) |
36. コレクションする女
今まで見たロメールの映画で唯一面白くないと思った作品だったのだが、ロメールが亡くなった際、録画しておいたビデオテープを引っ張り出し勝手に追悼鑑賞をしたのだが、そのとき選んだのがこれ。面白くなかったのは作品のせいではなく私のせい、などと思いたくもないがこれ以外の作品はどれもこれもめちゃくちゃに面白いもんだからあえてこれに再チャレンジ。だったがやはり退屈。恐ろしく美しい空の色とか窓の光とか透き通る水とかが挟まれてもやはり退屈。しかしそれも当然。主人公は退屈な休日を送ろうとしているのだから。あと、終わり方が『クレールの膝』同様に楽しかったが『クレールの膝』同様に主人公がいけ好かない。ただ二度目の鑑賞ゆえにこのいかにもロメールな、いかにも教訓話的なエンディングを知っているわけで、そのおかげでこのいけ好かない男に対する嫌悪感はずいぶんと薄れていたように思う。女の子は映画が進むにつれてどんどん可愛くなってゆく。二度目の鑑賞で主人公が振り回されるのも納得の可愛い笑顔を見てしまった。たぶんまた見ると思う。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2010-08-03 17:06:21) |
37. アデュー・フィリピーヌ
《ネタバレ》 始まってしばらくは男がメインで映されている。時はアルジェリア戦争6年目。兵役につくまでの限られた時間といっても若者のすることはいつでもどこでもどこか無駄で怠惰に過ぎ去ってゆくものだ。共同購入した自動車を走らせ女の子を口説き。この口説かれた女の子二人組みが徐々に画面を支配してゆくと映画はどんどん面白くなってゆく。ベッドの上で戯れる二人の女の子はまるで『男の子の名前はみんなパトリックっていうの』(監督ゴダール、脚本ロメール)の女の子。一人の青年をめぐって何かを企み何かを企まれる。が、秘かであるはずの企みはあっけらかんと陽の下にさらけ出され、譲ったり譲られたりのロマンスという名のお遊びが展開する。男はたまったものじゃない。若いってことはもうそれだけで罪。映画はその罪の瞬間をしっかりと映しきる。やがて眩しい一瞬を切り取ったバカンスが終わる。成年が乗る船がゆく。ふたりが手を振り走り出す。その手の振り方が、走る速度が大きくなる。散々弄んでってこともないが、楽しんでおきながらなぜそこで必死ともいえる動きをするのか。唐突に思いだす。青年は兵役につくのだと。それとも単なる眩しい一瞬が過ぎ去ろうとすることへの購いなのだろうか。 [映画館(字幕)] 7点(2010-08-02 16:23:14) |
38. 仁義
夜明け前、このあたりの時間帯がやたらと多かったような印象がある。ゆえに薄暗いシーンが多いが独特の青みがかった、カラーとモノクロの中間のような映像が美しい。大スター共演とは思えない地味な内容も大スター共演だからこそのエンターテイメント性と生々しい緊張感を共存させる。「仁義」などという男の美学をくさくさせずにリアルに見せてしまうことの凄さよ。間違いなく沈黙の演出が効いている。男前はしゃべる必要がない。メルヴィルの映画にアラン・ドロンは最高に映える。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2010-07-13 14:27:42)(良:1票) |
39. 新学期 操行ゼロ
《ネタバレ》 絵が突如動き出すことの斬新さ、あるいはそのユニークさ、あるいはそれらを含めた驚き。ここしかないというところで使われる有効的且つ必殺のスローモーション。先生の後に続く子供たちの列のお見事な、そして笑うこと必至の自由奔放。前衛的でありながら瑞々しく活き活きとした描写の数々。子供たちが大人たちに仕掛ける本気のクーデター。最後はほとんど戦争映画だ。子供たちの堂々とした背中で終わらせるというとんでもないエンディングに度肝を抜かれた。 [映画館(字幕)] 8点(2010-06-18 15:11:41)(笑:1票) (良:1票) |
40. エコール
微妙だなあ。『ミミ』同様に独特のロリコンワールドなんだけど、ヤバイ世界を描いた『ミミ』とは違ってヤバイ世界へとあからさまにミスリードしてゆく展開にあざとさを感じる。少女の成長過程を描いているだけだよ、なに勘違いしちゃってるの、このロリコン野郎。そういう声が聞こえてきそうだ。それはそれで面白いとも思うんだけど、一方でそのミスリードのために少女の裸というあまりにも直接的な描写をもってきていることに嫌悪感を持っちゃいます。この直接的な描写が少女じゃなくて大人の女だったらぜひとも入れていただきたいサービスショットになるわけで、そう考えるとこの作品は小児性愛者にとってのサービスショット満載の映画ってことになる。なんだかなあ。でも最後の噴水のシーンは好きかな。 [DVD(字幕)] 5点(2010-06-15 16:29:00) |