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コメント数 823
性別 男性

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221.  レイダース/失われたアーク《聖櫃》 《ネタバレ》 
製作から20年以上経っても、何度観ても、まったく色あせる事がない傑作アクション。 ただ、傑作ではあるものの、自分の判断基準では7~8点が妥当なところだ。 SFX技術のレベル云々ではなく、ストーリーや登場人物の内面を深く掘り下げていない点が減点材料だろう。 インディ・ジョーンズというキャラクターは魅力的に描けているが、もう少し内面に踏み込んでもよかった。 アークの爆破を躊躇ったような考古学者の内面をもっと描いて欲しかった。 ナチスよりも早くアークを見つけるという任務は遂行する必要があるが、考古学者として歴史の真実を知りたい葛藤にさいなまれてもよかった。 ジョーンズの怒り・悲しみ・嘆き・楽しみといった感情があまり膨らんでいないのが気になるところだ。 ただ、深い映画ではないが、万人が何も考えずに楽しめるという軽さこそ本作の長所だ。 今観ても何度観ても楽しめる理由の一つが、その点にある。 エンターテイメントアクションという製作趣旨やバランスを考えるとやむを得ない部分に落ち着いているのではないか。 アクション映画としては、素晴らしい作品に仕上がっている。 本作の素晴らしさは、なんといってもスピルバーグの確信犯的ともいえる演出だろう。 現実的な描き方ではないが、「もう絶対間に合わないぞ」という展開をあえて描き、それを何度も何度も繰り返すことで、ハラハラ感を最大限に増加させている。 常識的な描き方ではなく、リアルな描き方でもないのに“わざとらしさ”や“いやらしさ”を感じさせない演出的な上手さもある。 そのように感じさせない理由としては、特有の“ユーモア”が本作にあるのも要因ではないか。 「そんなことあるはずないじゃないか」という批判を上手くユーモアでかわしているような気がする。
[DVD(字幕)] 7点(2008-06-15 02:45:59)(良:1票)
222.  ブレイブ ワン 《ネタバレ》 
問題はやはりラストだろう。賛否両論というが、果たして「賛」という人はいるのだろうか。あまりのメチャクチャぶりに一気に熱が冷めるのを感じたほどだ。 しかし、「愛する者を殺されたから辛い」→「救いにはならないけど、悪い奴殺したり、復讐すればいい」というのが、脚本の趣旨ではまさかないだろう。 冷静に振り返ると、意図しているラストはまさにその逆ではないかとも思われた。 キレイ事を語り復讐を諦めさせるよりも、あえて復讐することを描くことにより、「復讐なんてしても、何もならない」と訴えているのではないか。あえて間違った行動を主人公に取らせて、反面教師としての役割を担わしているのではないかと思った。 しかし、タイトルを「ブレイブワン」と銘打っている。復讐することが「勇敢」だと言いたいのだろうか。本当の「勇敢な人」とは真逆のような気がするが…。 脚本の趣旨がどうであれ、演出上にも問題があると思われる。 「愛する者を殺された場合どうすればいいのか」「親しい者が犯罪を犯した場合どうすればいいのか」という問いかけのレベルにも達していない。 問いかけの前提として、フォスターとハワードが親密な関係にならなくてはいけないが、十分とは言いがたい。恋愛関係というわけではない人間同士の深い関係を描くのは難しいが、ジョーダン監督ならば可能ではないか。「法律を犯し、自分が傷ついてまで、相手を庇う」ほど強固な関係が築かれていない。さらに「動画という証拠」を持っているにもかかわらず、「法の裁き」を受けさせないことが理解できない。法の裁きを受けさせることができない冒頭の妻の自殺偽装事件とは意味が異なってくる。 また、ラストの余韻がまるでないのも問題だ。「復讐を終えたときに、いったい何が残るのか」を観客に何らかの方法で伝えないと、映画としての意味をなさない。本作は「昔の自分とは違う自分を生きなくてはならない」という締めくくりだったように思えるが、ナレーションで逃げるのはあまり好ましくない手法だ。言葉による説明も重要だが、それだけではなく表情や動作、雰囲気だけで伝えられなくては、映画の質が高いとはいえない。 「恋人を失ったことの心の空洞が、復讐を果たしたことにより、より大きく、より深くなった」ということをもっと伝えるべきではなかったか。
[映画館(字幕)] 4点(2008-01-09 22:10:51)(良:1票)
223.  JUNO/ジュノ 《ネタバレ》 
作り物のような別世界のストーリーではなく、ナチュラルで身近に感じられる点が本作の良さではないか。 賞を狙って背伸びしてカッコつけるのではなく、ジュノたちのようにありのままの姿を自然体で描こうとしている点に好感がもてる。 本作には、映画やドラマにありがちな劇的な事件や劇的な変化があるわけでもない。 ただただ、それぞれの登場人物がゆっくりと前に向かって歩んでいこうとしているだけだ。 したがって、感じ方はなかなか難しいものとなっている。 つまらないと感じさせる部分は皆無だったが、「メチャクチャ感動した」「メチャクチャ面白い」「非常に共感した」というようなことはなかったのが正直の感想。 アカデミー賞で評価されるほどの作品かどうかはやや疑問だ。 ただ、男性と女性、又は年代(特にティーンかどうか)によって感じ方が異なる作品かもしれない。 個人的に強く感じたことは、人生においては失敗するということは何度もあるけれども、深く悲観する必要はないということではないか。 人生が完璧ということやパーフェクトということはあり得ない。 あの夫婦や、ジュノの父親も一度は失敗している。 失敗や何かを恐れて行動しないよりも、自分を偽らずにありのままの姿を晒して、自分らしく生きろということだろう。 あの夫婦のうち、夫の方はあきらかに自分を偽っていた。 そして、妻は夫に偽りの姿を演じさせることを強要していた。 自分らしく生きることができないと夫婦関係や恋人関係には歪みは生じるということなのだろう。 そんな欠点のある妻に、ジュノは自分の息子を託したのは、子どもを持ちたい・子どもを愛したいという彼女の気持ちには偽りがないとジュノは感じたからではないか。 彼女は子どもが欲しいという気持ちをありのままさらけ出していた。 分かりやすいコメディタッチの女子高生妊娠モノ映画と思われがちだが、演技・演出・脚本など、細かい部分を繊細に描かれているような気もする。 一般向けというよりも、やや玄人向けの映画と思われるので、自分には少々向かないところもあった。
[映画館(字幕)] 7点(2008-07-02 23:39:33)(良:2票)
224.  オーシャンズ12 《ネタバレ》 
この映画を泥棒映画と思って観ない方が楽しめるような気がする。 主題は確かにオーシャンズ達とナイトフォックスの泥棒対決が根っことなっているが、はっきり言って、オチを見る限りこの映画の中ではそんなことはどうでも良くて、雰囲気やバカバカしさ、映画としては反則スレスレのネタを楽しむような創りを目指しているのではないかと思う。 そうは言っても、前半は確かにつまらないと感じた。 前作に引き続き、また駄作かなと思って観ていたが、後半に行くに従い面白いと感じるようになった。何と言っても全くストーリーに絡まなかったオーシャンズ軍団の存在が逆の意味で面白い。こんなに人を集めたのにここまで無視できるものかなと思う、逆の意味で本当に度胸のある脚本だろう。 オーシャンズ達を無視した分、後半のストーリーは読みづらくなり、かなり引き締まった感じを受けた。そしてラストに行くに従い、様々に散らばった点が徐々に一つの線になっていく様はかなり良いと思う。 それにしても、この映画における主役は果たして誰であったかを考えると、なかなか答えが出ない。 普通オーシャン、ラスティ、ライナスとも考えられるが、イザベル、テス、ナイトフォックスも実は主人公ではないかとも考えられる。主人公がはっきりと分からないほど、実はそれぞれ個別に光が当たっており、それぞれのキャラクターが活きていたのではなかっただろうか。やはり適当に人だけを集めたわけではなかった。 惜しむべくは、冒頭のガルシアとの絡みがもったいない。オーシャンズの仲間達には各人ほとんど出番がないのだから、この掴みの部分は前作のおさらいも兼ねる大切な部分なのでもっとそれぞれの特徴や性格が出るようにしっかりと描いて欲しかったと思う。
7点(2005-01-01 07:46:35)(笑:1票)
225.  ハーモニーベイの夜明け
見方によっては深いテーマを扱っていると思うが、はっきり言ってあまり面白くはない。 特に終盤は嫌が応にもショーシャンクの想像してしまうし、見終わった後、このタイトルを付けた理由もなんとなく分かります。 冒頭のグッディングjrの写真を使ったやり取りの分かりづらさから嫌な予感がしたのだが、この監督は演出が上手くないような気がする。 出世しか頭になかったテオ、父親への愛僧が込められた複雑な想いを抱えるリン。 そして安らぎと調和の取れた生活やゴリラの家族を奪われて、「奪う者」を導いた責任の重さから自分と人間(「奪う者」)に対する怒りを抱えるイーサン。 三人の心の動きや変化、そして出会いによってどのように変わったか等、いかようにも面白くかつ感動させることができる舞台が揃っているのにそれが上手く演出がされていないと感じる。 テオは確かにマジックミラーに余裕で合図したり、「(イーサンの)心を開かせてやる」と自身満々で語っていたりしたが、受刑者に平等を与える等、元々の根が最初から真面目過ぎていて、どうにも成長や変化が感じられない。 リンは「なぜ(私ではなく)あなただけに話すの?」とテオに最初の頃は語っていたが、もっと父親への憎しみや愛情を表に出すべきではなかったか。 イーサンが持ち続けた写真への繋がりからいって大事な部分だと思う。 イーサンを演じたホプキンスの演技は評価されても良い、かなり素晴らしい出来だったと思う。 しかし、テオは「イーサンによって人生や生き方を教えられた」と言っていたが、果たしてイーサンの生き方から、この文明社会を生きるために必要な何かを教えられたことはあっただろうか。 むしろ「自由は夢ではない」と教えてくれたテオの言葉の方がより重みはあった気がする。 本当に悪くないテーマだけに勿体無いという想いを感じさせる映画だ。
5点(2005-03-06 03:26:08)(良:1票)
226.  アニー・ホール
観ている間中、ずっと笑いっぱなしだった。 笑うといってもバカらしい笑いというよりもセンスのあるレベルの高い笑いが含まれていると感じる。 そしてなによりもシニカルな笑いが良い。 笑いもさることながら、演出手法が凝っているのには驚かされる。 本当にルールのない不意打ち的な手法だ。 過去の自分の姿を見て、それについて二人または三人で語り合ったり、ベッドで二人でいるのに、それを冷静にまた面倒くさそうに見つめている心の内面を語るもう一人の魂のような自分がいたり、映画館で映画等に関して得意げに語る奴に対して本人をどこからか引っ張って来たり、 心の声をセリフとして語るだけでなく、それを字幕にするというアイディアは本当に凄すぎる。 アニメにしたり、二重分割した画面なども効果的な使い方だった。 この映画は本当に評価されるべき映画でしょう。 また、笑いや演出方法だけでなく内容も評価できる。 男と女が付き合う謎を、アルビーシンガーとアニーホールという全くタイプも性格も違う二人を見せることによって、明らかにしている気がした。 男も女も確かに「卵」を求めているんだろうな。 観ていて気付いたことがあったのだが、クモを殺して欲しいと頼まれた時の壁にアルビーがエビと格闘した時の写真が貼ってあるのでそれも見て欲しい。 そして「私を会員にするようなクラブには入りたくない」というのもなんとも面白いフレーズだった。
8点(2005-01-24 01:51:47)(良:1票)
227.  霧の旗(1965) 《ネタバレ》 
後味の悪さが後を引く作品。これは確信犯的なものだろう。人間の残酷さ、冷酷さ、恐ろしさ、理不尽さといったものを描き切っている。さすが松本清張・橋本忍・山田洋次という才能のある者が関わった作品だ。タイトルにあるように霧に包まれたようなボンヤリとした状態が続き、最後までその霧が晴れないという気持ち悪さを存分に味わえる。凡人ならば、大塚弁護士を悪徳弁護士の設定にして、もうちょっと彼に非があるようなものにしてしまうだろう。そのような設定にすると、印象もがらっと変わってしまう。「復讐が成功した」という晴れ晴れした気分となるが、単なる復讐劇でしかなくなり、すぐに忘れ去れてしまい、本作のような気持ち悪くなるインパクトが相当に薄れてしまうのである。 東京の高名で多忙な弁護士が九州の事件を断るというのは当然の流れである。弁護料と称して金だけぶんどって事件を解決しないという類ではない。事務員が断ってもいいものをあえて面談して比較的丁重な断りを入れている。その後も事件を独断で調査するというようなところをみせており、大塚弁護士自身は非常に仕事熱心であり、有能な人材ということがよく分かる。そのような彼が不当な扱いを受けなくてはいけないということが、人間や人生というものの奇妙さ・不可思議さ・理不尽さが垣間見られる作品へと昇華させる。 本作に描かれた2件の殺人事件は同じようなケースである。桐子の証言や物的証拠がなければ、有能な大塚弁護士でさえも無罪や釈放を勝ち取ることができないということは、裏を返せば九州の事件も大塚弁護士は解決できなかったといえるのかもしれない。 左利きの者が犯人ということが分かっても物的証拠がなければ、逆転無罪を勝ち取ることは困難だっただろう。桐子がいくら大塚弁護士に頼んでも、兄の事件の顛末は変わらなかったかもしれないということを桐子自身が分かっているということにもなる。 また、桐子の行動によって真犯人は野放しにされており、その真犯人はひょっとすると兄の事件の真犯人かもしれないということもいえる。桐子の行動は相当に自己矛盾をはらんでいる。人間の行き場を失った“恨み”というものはそういった矛盾や理性といったものすら凌駕するということを本作は伝えたいのかもしれない。 桐子の行動の不条理さが気持ち悪くて評価を低くしようとしたが、この映画はかなり深い(不快ではなくて)作品だ。
[DVD(邦画)] 7点(2009-11-28 10:36:52)(良:1票)
228.  ザ・ウォーカー 《ネタバレ》 
観る前は、文明が滅んだ後の世界で巻き起こるデンゼル・ワシントンによる激しいアクション作品、「北斗の拳」「マッドマックス」のような映画だと思っていたが、思ったよりも宗教色の高い作品に仕上がっている。 “一冊の本”という設定から鑑賞前からピンと来ないといけないのかもしれないが、オールドマンが“一冊の本”を求める理由を語るまで気付かなかった。 ストーリーを踏まえると、キリスト教を信仰している者には最適の作品ではないだろうか。 本作を観ることで、自己の宗教心を一層強めることができるとは思う。 自己の役割、自己の存在価値、自己の運命、神からの啓示を強く意識することができるだろう。 しかし、キリスト教信者ではない日本人が観ると、グッと来る度合いが異なることとなる。 世界観やストーリーや映像面など、よく出来た映画であり、評価はしたいところだが、さすがに受け止め方は難しい。 ワシントンとオールドマンの二人の存在感が際立っており、見事に対比されている点は面白い。 “一冊の本”を用いて、文明崩壊後の社会に“安定”を導こうとする気持ちは両者に相通じるところがあるが、一方は神になりたいと願い、他方は神のしもべ、聖地を目指す巡礼者のような存在になりたいと願っている点に根本的な違いがある。 その結果、一方は安定どころかより混沌とした世界を作り出し、他方は世界を再構築できるほどの影響力をもつことに寄与することができている。 たとえ殉死したとしても、自分の遺志を継いでくれるということも希望が持てる展開となっているようだ。 ワシントンに隠されたネタもかなり効いている。 神から自分に課せられたことには“意味”があるということだろうか。 歩いていて高速道路から落ちそうになったり、“音”が聞こえるかとしつこく言っているので、違和感はあったが、最後までさすがに気付かなかった。 ただ、オチが重要であり、このネタについてはあまり深く考えなくてもよいだろう。 どうやって銃撃に対応しているのかなどを考えても意味はない。 アクションにも多少見応えはあり、老夫婦の家を舞台とした銃撃戦はかなり見応えがある。 どうやって撮影しているのかと考えながら見ると、より面白みを感じるのではないか。 あのカメラワークを実行するにはかなり無理があると思うのだが、いったいどうなっているのだろうか。
[映画館(字幕)] 6点(2010-06-23 23:34:49)(良:1票)
229.  ナポレオン・ダイナマイト 《ネタバレ》 
観た後は誰でもハッピーになれる映画ではないだろうか。こういう映画はセンスが違うとまったく理解ができないからあまり期待はしなかったけど、見事にハマれて良かった。 低予算であっても、キャラクターやセリフ、構成、アイディアで勝負した、かなり切れ味がある新しいタイプの映画と感じた。序盤はエピソードのぶつ切りではっきりしたストーリーはないけど、各エピソードはそれなりに他のエピソードにも繋がるし、映画としても意外とちゃんとした構成となっている。 なんと言っても、ナポレオンとペドロの「友情」がよい味を醸し出しているのが本作の魅力のひとつだ。彼らの友情は普通の映画で描かれる「熱い」友情ではなく、表面的には「こいつら本当に友達か?」っていう感じの繋がりしか感じられないのが逆によい。しかし、二人は心の底から信頼しきっている感じが随所に現れている。ペドロが休んだときに電話を掛けるのもナポレオン流に心配している証であり、ナポレオンのダンスパートナーが消えたときにデビーと踊れと言ってくれるペドロはナポレオンを気遣っていることが窺われる(おそらくナポレオンが潜在的にデビーが好きだと気付いているのだろう)。 自分には取り柄がないと嘆くナポレオンに対して「画が上手い」と誉めるペドロの姿もさりげない会話だが彼らの関係をよく表している。 また、「最後は「夢は叶う」で締めろ」とナポレオンに言われればペドロはそのように従うし、ペドロのピンチの時には恥もかなぐり捨てて、捨て身のダンスを披露する。 逆に、デビーに嫌われたとペドロに相談したときには、「贈り物をしろ」という短いペドロのアドバイスに従い、デビーに唯一の所持品の魚をプレゼントする(DVDの未公開編に釣りのシーンがあったがその流れか)。おかげでナポレオンとデビーは再び仲直りできたようだ。このように、感情的ではないけれども、二人の友情は堅く結ばれているのが分かる仕組みとなっているのは面白い。 デビーとナポレオンの最後の遊戯シーンも素晴らしかった。もし、この二人のキスシーンで終わるとすればやや興ざめするだろう。ナポレオンの第一歩としては、二人だけで戯れるくらいがちょうどよい。最後には、ナポレオン一人でボールを叩き始めるのも、なんとなくナポレオンらしさや照れみたいなものも感じられる。 ところで、ナポレオンってオタクというより邪気眼系だよね。
[DVD(字幕)] 7点(2006-11-13 23:48:10)(良:2票)
230.  ミレニアム2 火と戯れる女 《ネタバレ》 
原作は当然未読。 ストーリーの進行を追っていけば、それほど飽きることはない。 しかし、前作での見所であったミカエルとリスベットの絡みがほとんどないので、前作に比べると何かが物足りなく感じられる。 また、事件の追及方法も極めてシンプルであり、天才ハッカーという設定の割には驚くべき手法が用いられるわけではなく、この点に関しては面白みには欠ける。 さらに、肝心のオチや黒幕ザラの正体にもビッグサプライズもなければ、派手な展開が待ち受けているわけではない(壮絶さはあるが)。 全体的に、たんたんとした展開は飽きるほどではないが、やや冗長にも感じられた。 2件の殺人事件や少女売春事件もなんとなく有耶無耶に置き去りとされてしまっており、“核”がボヤけている事件を注視するのはやや疲れてしまった。 ただ、複雑そうにみえるストーリーだが、非常にシンプルかつオーソドックスな作りの上に、字幕等でキャラクター説明をしているので、ストーリーを追うことに困ることもない初心者向けの作りとなっている。 第三章の法廷篇にどのように繋がっていくのか、ハリウッドでどのように味付けされるのかは楽しみだ。 ハリウッドでは本作と同じように製作されることはなく、もっと手の込んだものとなるだろう。 それにしても“火と戯れる女”とはどういう意味だろうか。 “銃弾を受けても死なない女”“バイクに乗る女”“土と戯れる女”の間違いではないか。
[映画館(字幕)] 5点(2011-04-16 12:45:22)(良:1票)
231.  ジュリー&ジュリア 《ネタバレ》 
ユニークな構成かつハートウォーミングなテイストに仕上がっており、思ったよりも楽しめる作品だ。劇的なストーリー展開や驚くような感動的なオチもなく、不満な部分も多々あるが、二つのストーリーを上手く編集し組み合わせることで、それほど飽きることなく鑑賞することができる。 女性が書いた原作作品を女性監督が監督したことで、女性が女性らしく描かれている。 単調な仕事の中で自分の人生に疑問を持ち、何かで埋めようと必死になる姿や、時にはポジティブに、時にはネガティブに振舞う姿や、わがままで自己中心的、負けず嫌いで自分勝手な姿など、作り物ではない等身大の女性の姿が描かれているように感じられた。女性の観客は彼女たちをより身近に感じられて、自分も頑張ろうという気持ちになれるのではないか。 そのような妻たちを支える夫たちにはそれほどスポットが当てられていないが、要所要所で彼らの優しさが垣間見られるように製作されている。料理に没頭する姿にそれほど文句も言わずに、ひたすら付き合い、甘いケーキにはつまみ食いをして無言の励ましや賞賛を与えつつ、時には適切なアドバイスを送るという夫の鑑のような存在だ。 逆に、落ち込む妻たちをなんとか励まそうと努力しても、夫たちの苦労も知らずに“ピザ屋の2階”“パリに戻りたい”というような無神経なわがままを言ったりもする。 しかし、この辺りが個人的には非常に上手いと感じられた。 現実の人間は“聖人”ではなくある意味では“自分勝手な存在”なので、よりリアリティ度が増すように計算されている。 ジュリーに対するジュリアの誤解の件がやや尻切れになっているが、完全に美談にしたくはないという想いもあったのだろう。途中で彼女をネタにするようなコメディアンのシーンを盛り込んでおり、このような類と彼女が誤解したのではないかという想像させるようになっている。コメディアンのシーンも計算して盛り込んだように思われる。 それにしても、ジュリアの書物がジュリーに影響を与えて、ジュリーのブログが読者に影響を与えて、読者となった新聞記者の記事が出版業界に影響を与えて、出版物が映画界に影響を与えて、そのようにして出来た映画を我々が鑑賞するという流れは非常に不思議な気持ちになる。時間や空間を超えて一つに繋がっているということを改めて認識させられる。
[映画館(字幕)] 7点(2010-03-11 22:47:02)(良:1票)
232.  決断の3時10分 《ネタバレ》 
撃つか、撃たれるかという緊張感ももちろんあるが、それだけではない独特の緊張感溢れる作品に仕上がっている。 強盗団のボスと、貧乏な牧場主という出会うはずのない二人の人生が交錯するという点が面白い。 出会うはずもない男の人生を知り、お互いがそれぞれの人生を振り返っているようにも感じられた。 強盗団のボスのベンは金だけは死ぬほど持っているだろう。 しかし、逃避行を繰り返しているので、もちろん妻や子ども達とともに幸せで安定した家庭などを築けるはずがない。 確かに女には不自由しなくても、それは一瞬一瞬の出会いでしかない。 自分を助けてくれる仲間もいるが、満たされないモノを抱えていたのではないか。 一方、牧場主のダンは妻や子ども達と幸せには暮らしているが、裕福な暮らしをさせることができず、苦労を強いている。 子ども達に父親らしいカッコいい姿を見せることはできず、いつ降るか分からない雨を待ち望むという不安定な生活を送っている。 ひもじく情けない人生に対して疑問を感じているはずだ。 お互いがお互いの人生を知り、自分の人生が果たしてこれで良かったのかと考えたのではないか。 牧場主のダンが諦めずに、あれほど移送にこだわったのは、この点にあったように感じられた。 もしボスを諦めて簡単に逃がしてしまえば、自分の人生を否定してしまうと思ったのではないか。 楽をして金を得ることもできるが、そういう人生を選択することなく、苦労しても貧乏をしても正直に生きるという人生が間違っていないことを証明したかったように思える。 自分の生き様を示すことによって、妻や子ども達にも「間違いではない」と伝えたかったのだろう。 強盗団のボスのベンは、自分の築けなかった家庭を壊すようなことをしたくなかったのではないか。 また、買収にも応じないダンのオトコの心意気にも感じ入ったことがラストの行動に繋がったように感じられる。 二人の苦悩、そして二人の生き様が見えたような思いがした点を評価したい。 計算し尽くされたムダのない脚本・演出も見事である。 意味のないように見えて、見終わってみると、何もかも全てが繋がっているように感じられるレベルの高い作品だ。
[DVD(字幕)] 8点(2009-08-16 01:49:25)(良:3票)
233.  クローバーフィールド/HAKAISHA 《ネタバレ》 
もはや映画鑑賞というよりも、疑似体験に近い作りとなっている。「これは凄い!」と唸らざるを得ないほどの驚異的な映像だ。恐怖を感じるとともに、よくぞここまでのものを作ったと呆れるほど感心した。 何も解決しておらず、すべては“謎”で終わっているのかもしれない。見る人によっては、ストーリーなど何もないと憤慨するかもしれない。 しかし、個人的には怪獣の出生や、怪獣が最後どうなったのかなど、まったく興味が沸かず、ただただ逃げ惑うしかない人たちと共に時間を共有できたことが非常に有意義だった。 脚本もそれほど悪くない。大怪獣あり、小怪獣あり、ウィルスあり、トンネルあり、乗り物ありとほとんどフルスペック仕様のパニック映画だ。ちょっと盛り込みすぎじゃないかと思うほど練られている。 人間関係もしっかりと描かれており、主人公と恋人との関係を軸に、兄弟、友人など上手く関係線を伸ばしている。パーティーに出席したメンバーというアイディアも分かりやすく、まったく無理がなく、ナチュラルすぎるほど練られている。 通常の“公式”に則らないのも目新しい手法だ。 主役級をあっさりと退場させる辺りはとても面白い。登場人物が銃をぶっ放して、小モンスターを殺すような展開にもならず、大モンスターを倒せる武器が見つかったり、弱点が発見されるようなことなども当然ない。 怪獣パニックモノにおいて、アンハッピーエンドというのもかなり珍しいのではないか。この“公式”の裏切りがとてもユニークだ。 未知なモノに対して、人々が逃げ惑い、アメリカの圧倒的な武力も役に立たないという展開は、深読みだが“テロリストへの脅威”を想起させられるものとなっている。 普通の怪獣パニック映画は巷に氾濫しており、普通に作りこめば「悪くない作品だね」で終わると思う。 しかし、「ブレアウィッチ」の手法を取ることにより、臨場感溢れる傑作が生まれた。 リアリティが追求され、通常の“公式”に則らなくても自然に受け入れることができたのは、この手法を取ったことによる恩恵だ。 「バンテージ・ポイント」など、最近のハリウッド映画は知恵を巡らして、工夫を施すようになっている。その手法に対しては、当然賛否があると思うが、賛否があることによってマンネリ化が打破され、活性化していくのではないか。 今後もこのような賛否あるアイディアが溢れた作品が登場することを期待したい。
[映画館(字幕)] 9点(2008-04-06 22:54:05)(良:3票)
234.  ウディ・アレンの夢と犯罪 《ネタバレ》 
「ウディ・アレンの重罪と軽罪」が好きなので、この手の作品は嫌いではない。 しかし、正面から“罪の意識”を捉え過ぎてしまった感が強く、ストレートに描き過ぎてしまったような気もする。 “悲劇”にも面白いものはあるが、遊びも捻りもなく、本作はあまりにも現実的に描き過ぎてしまったようであり、疲労感が残る映画ともいえる。 罪を犯す前から“罪の意識”に苦しむ弟が、犯罪後にも“罪の意識”に苦しむのは、かなり重過ぎる。 逆に、ラストはアレンらしいといえばアレンらしいが、あっさりとし過ぎている。 “兄弟”という設定が上手く噛み合っていかなかったようにも思える。 犯罪前には、一方は“罪の意識”に苦しみ、他方は“罪の意識”を感じないが、犯罪後には、それが逆転するような仕掛けもあってもよかったのではないか。 また、同じような道を歩いていた兄弟が一つの事件をきっかけに、光と影という全く異なる道を歩み始めるような展開や、光と影という全く異なる道を歩んでいた兄弟が一つの事件をきっかけに光と影が逆転するという展開の方が、映画らしい気がした。 しかし、本作は延々と弟が罪の意識にさいなまれて不眠症に陥り、兄がその弟に悩まされるだけだ。 ユニークさや不条理さもなく、現実的な苦悩を見せ付けられても、重々しさは堪能できるものの、面白みはさすがに感じにくい。 さらに、二人の“夢”であったような「カサンドラズ・ドリーム」号の取扱もやや微妙。 この小さな“夢”を得ようとした結果、どんどんと欲求がエスカレートしていくにしたがって、どんどんと落ちて破滅していく姿も見たかったところ。 小さな欲求によって小さな代償を払い、次第に戻ることの出来ない大きな代償へと上手く繋がっていくようなところはなかった。 また、調べてみるとカサンドラは、100%当たるのに誰も信じないという呪いが掛けられた予言者であるらしい。 トロイの木馬も予言したらしいが、誰も信じずにトロイの民は破滅したらしい。 そういう意味をタイトルに込めたのだから、兄の恋人の舞台の設定や彼らの父親にそういう予言者の役割を担わせるべきだろう。 父親は意味深なセリフを発していたが、あれでは弱いのではないか。
[映画館(字幕)] 6点(2010-05-09 12:37:42)(良:1票)
235.   《ネタバレ》 
鬼も逃げ出すという「羅生門」で“人間の愚かさ”を描いたように、本作もシェイクスピアの悲劇「リア王」をベースに神や仏も泣き出すという“人間の愚かさ”を描き切っている。 しかし、ここには「羅生門」のような“希望”はない。あるのは残酷なまでの“醜さ”だけだ。 舞台は架空の戦国時代であるが、現代にも通じる“乱”れた世界に対する“嘆き”が込められた作品であり、製作者の黒澤のメッセージや深い想いが感じられる作品だ。 また、「影武者」でも描かれていたが“破滅”に対する美意識も高い。 長く暗く陰惨な映画ゆえに一般的に好まれない映画ではあるが、個人的には、評価の高い「羅生門」よりも、評価がそれほど芳しくない本作の方を好む。 仏の絵が地面に置き去りにされて、悲しげにこちらを見つめており、盲目の青年が崖の上に取り残されているというラストのカットも秀逸だ。 ここで終われば完璧だと思った瞬間に、きちんと幕を閉じたのはさすがだ。 「果たして仏は我々を見守っているのだろうか」「この“乱”れた世で生きるということは、盲目状態で崖の上を歩くようなものなのではないか」と黒澤は言いたかったのかもしれない。  素晴らしい作品であると感じるが、何点かは不満な点もある。 ①「三の城襲撃について」 襲撃に至るまでの展開がやや早すぎるように思われる。 次郎が秀虎を体よく追い返すまでは理解できたが、肝心の襲撃に至るまでをもう少し分かりやすく構築した方がよかった気がする。 あれでは、単なる「謀反」のようにしか感じられなかった。 ただ、演出は素晴らしい。 呆然とする秀虎の背後をびゅんびゅんと火矢が飛び交うような現実離れしたリアリティのない演出ではあるが、あそこまで思い切った演出をするのは難しいものだ。  ②「ピーター演じる狂阿彌について」 彼なりに健闘していたように思えるが、本作の裏の主役でもある大切な存在こそが「狂阿彌」である。本作の成否が彼に掛かっているといっても過言ではない。 この世の“表裏”を見聞した彼の言動こそが、本作のキーとなるはずだ。 道化である彼が一見狂っているようにみえるが、“乱”れた世で一番まともだったのが、彼だったというオチに持っていきたかったところだ。 少々感情を表に出しすぎているところがある。ストレートではない悲哀を感じさせるキャラクターに仕上げることができれば、より傑作に近づいた気がする。
[DVD(字幕)] 7点(2008-01-05 17:15:21)(良:2票)
236.  人生万歳! 《ネタバレ》 
ウディ・アレン監督は既に70歳を超えている。最近の作品ではキレのなさを感じており、年齢による衰えのようなものを感じていた。 今回ももはや期待できないかと思っていたが、そのようなことを思っていた自分を嘲笑うかのような驚きを与えてくれる作品に仕上がっている。 確かに、過去の作品の焼き直しのような作品ではあるが、以前と比べて劣ることのないキレを見せている。 シニカルさ、アイロニカルさはまさに健在であり、自由自在、変幻自在にストーリーを展開させる妙は見事であり、「なんでもあり」というテーマを上手く表現している。 ボリスの元に転がり込んだメロディと同じように、ボリス(アレン)の毒にこちらも侵されてしまいそうだ。 あまりにもストーリーが自在すぎて、ボリスとメロディが結婚することなどが、普通に見えてしまう。 アレン自身が投影されており、アレンが主演しても良いような作品ではあるが、他の人が演じることで新味が出たような気もする。  過去の作品の焼き直しように思える作品ではあるが、ただの焼き直しとも思えない点はラストの展開だ。 『人間には二種類のタイプがある。孤独の奴とそうでない奴であり、孤独な奴は最後まで孤独である』というようなオチを思い描き、ラストは再び孤独になったボリスの自殺で悲劇的かつ現実的に締め括るのではないかと、鑑賞しながら勝手に考えていた。 しかしながら、アレン監督はさらにもう一転させて、夢のあるような展開にさせている。 ただの個人的な勘違いかもしれないが、アレン監督が老年に達したことからこそ、このような境地に到達したのではないかとも思われる。 『我々が生を受けたことですら奇跡的なことなのだから、何が起こっても変じゃない。何でもアリの人生、何が起きるか分からないから人生は面白い』ということをアレン監督からのメッセージとして受け取った。 監督40作目となる本作を見て、またこれからもアレン監督には監督を続けていってもらい、今後も作品を見続けていきたいと感じさせてくれた素晴らしい作品だ。
[映画館(字幕)] 8点(2011-01-04 22:57:31)(良:2票)
237.  たそがれ清兵衛
不器用な生き方だなあ。 貧乏で暮らしもままならず、最愛の女性の申し出も何かと理由を付けて断ってしまい、侍のくせに体裁のために刀を売って、刀もないのに藩命に背くこともできず剣豪に戦いに挑み、自分が死ぬかもしれないと感じた時にようやく自分の本心を打ち明ける。 そんな不器用な生き方でも、娘たちの成長を暖かく見守るのを楽しみに毎日の生活を送る。 時代を超えた日本人らしい良心を描いているから皆、共感できる傑作と言えるのではないでしょうか。 思えば朋江や善右衛門も不器用な生き方だった。 本心を打ち明けても時すでに遅く、それでもボロボロになりながらも自宅に戻ってきた時に朋江が待っていてくれたのは観ているこちら側としても何とも言えない嬉しい気持ちになれた。
9点(2004-03-03 23:53:09)(良:2票)
238.  ギター弾きの恋 《ネタバレ》 
ジャンゴと「愛」に対して病的にまで怯える男エメットをショーンペンが実に繊細な演技で演じている。 自分の気持ちをストレートに表現することができずに、ネズミの射撃行為や汽車を眺めることに逃げてしまうのも、彼の不器用さや孤独感を印象付けている。 感情を表に出すことを嫌がっているエメットだけれども、彼の奏でる音楽にはどことなく孤独感や寂しさが伝わってくる感じがした。 そして、彼の音楽を聞いているときのハッティの表情が素晴らしい。言葉を発することはできなくても、彼女の表情が様々なことを物語っている。彼の演奏に心酔していることが、サマンサモートンの表情によって見事に演じられていた。 また、アレンの演出も冴えていた。途中途中で入るアレン本人やジャズ関係者のセリフがいいアクセントになっている。 架空の人物であるエメットレイという人物をリアルに描けるという効果が生じるだけではなくて、こういうシーンを挿入せずに、もし、ただただエメットの人生だけを描いたのとするならば、話が散漫になり観客が飽きてしまうのではないか。 この手法は観客を飽きさせるのを防止するとともに、一本の映画としてストーリーを引き締める効果もあると思う。エメットの生涯を無理なく描こうとしようとすれば、エピソードが飛び飛びになってしまう。ハッティとの出会いやブランチとの結婚を無理なく一本のストーリーに収めるために、アレンや関係者に概要を語らせた後に、当該エピソードに繋げていっているのでとても分かりやすくなっており、映画がとてもスムーズになっている。 「このエピソードには諸説あって…」というような発展型にも応用されていて、アレンのユーモアも感じられる。 そして、なんといってもラストのエメットの「I mistake」が実に胸に突き刺さる。見栄っ張りで不器用な男が犯した間違い。後悔したとしてももう戻れない彼の過ちが重さが、自分の命であるギターの破壊に見事に投影されている。
[DVD(字幕)] 7点(2006-08-22 00:31:29)(良:1票)
239.  カンフー・パンダ 《ネタバレ》 
画像だけ眺めていれば、それなりに楽しむことはできる。ただ「CGスゲエな」「パンダ強いな」「○○カッコいいな」「○○カワイイ」程度の感想しか持ち得なかった。 子ども向け作品とはいえ、もうちょっと味付けが必要ではないか。 あまりにも薄味すぎて、物足りなさを覚えた。 シーフー老子とポーの関係と、シーフー老子とタイ・ランの関係をもうちょっと対比させてもよかったかもしれない。 自分の弟子でもあったタイ・ランを信じ切れなかったので彼を悪の道に走らせてしまったが、ポーを信じ抜くことができたので、ポーも変わることができ、自分も変われたという落としどころのようなものが必要だったかと思われる。 シーフー老子とタイ・ランの関係は、甘やかして育てる現在の家庭のようなものにも通じる。 甘やかすのが本当の愛情ではなくて、自分を信じてもらい、厳しくされることが本当の愛情のようなメッセージを込めると、本作を見た子どもと親にとって何か得られるものがあったのではないか。 子ども達の可能性のようなものを信じることができるというメッセージを込めれば、本作は傑作になりえたかもしれない。 シーフー老子は、弟子を信じるというよりも、自分の師匠であるウーグ・ウェイ導師のことしか信じていないような気がするのが引っかかった。 また、「特別なことは必要ない」というメッセージも上手くは落ちていないのではないか。 「強くなること」「おいしい料理をつくること」どちらにも早道や抜け道はない。 現在の子ども達に送るメッセージとしては、「スポーツが上手くなること」「アタマが良くなること」のようなものに通じるだろう。 何事にも特効薬や魔法の力のようなものはなく、地道な努力が必要ということになる。 そう考えると、ポーが「特別なことは必要ない」と気付くのはもうちょっと早い段階でもよかった気がする。 タイ・ランもマスターファイブももともと強かったわけではないのだから、現在は雲の上のような存在であっても、自分が努力すれば彼らに近づけるはずというメッセージに繋がるはずだ。 今がどんなにダメであっても、諦めなければ雲の上の存在にも一泡吹かせることができる。そのためには、血と汗が滲むような訓練が必要ということになり、訓練の意義が活きてくる。 強くなるための近道は訓練や努力以外ないのだから。
[映画館(字幕)] 4点(2008-08-02 14:34:42)(良:1票)
240.  セント・エルモス・ファイアー
青春時代の幻想が詰まった作品。 それが幻想だとしても、忘れ得ぬ魅力があり、人々を感動させるチカラもあることを思い出した。 映画自体は青春時代のもどかしいじれったさをまさに感じさせるじれったい映画になっているが、その点もなかなか良かったと感じられた。 青春時代には、苦悩もあり、喜びもあり、哀しみもあり、そして別れもある。 そして確かにこの映画のようにそういった様々な感情をともに分かち合える仲間がいたなとふと感じてしまった。 映画に登場する7人にはそれぞれ個性もしっかりと描かれており、そして個別に苦悩があり、最後には成長も感じられた。 特に女性陣はかなり成長しているような気がした。 ウェンディーは親が決めた恋人と別れ、家族と離れ独立したし、レズリーもうっとしいオトコ達と離れしばらく一人で生きることを決めたし、ジュールズは先が見えない人生に疲れを感じ、死を意識していたが、前向きに仕事を見つける決意を決めた。 一方、男性陣はビリーこそニューヨークに行き、サックスで勝負する決意を固め、行き場を失いつつあったどうしようもない人生から脱却しようとしているが、揃って女性に振られた残りの3人はイマイチだね。 確かに女性関係が多くて結婚を逃げ場と考えていたり、友人の彼女に一方的に幻想を抱き続け他の女性と付き合わなかったり、昔憧れていてただ一回デートをした相手(相手は映画のタイトルでさえ混同している)を忘れられず、枕の匂いをかいだり、ストーカーっぽいことをしていたり、とそろいも揃ったどうしようもないオトコ達だからしょうがないかな。 まあ、そういうオトコが抱く女性に対するどうしようもない情けない点も描いているのもなかなか面白いと思う。
7点(2005-01-08 23:16:49)(良:1票)

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