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プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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221.  嵐ケ丘(1939)
ワイラーの作品では「黒蘭の女」「孔雀夫人」に次いで好きな作品です。  この映画の何が凄いかと言いますと、原作の復讐劇を完全な恋愛映画にしてしまったベン・ヘクトの恐ろしさです。  原作好きには物足りなく感じる人もいるかと思いますが、私はこういう「嵐が丘」も有りだと思っています。 ローレンス・オリヴィエとマール・オベロンのピリピリした空気、一瞬ながら異常な躍動感に溢れた乗馬シーン(ワイラーは馬で本気出す人)と細かい演出も見所です。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-10 19:41:48)(良:1票)
222.  椿三十郎(2007) 《ネタバレ》 
どうして現場に血が流れるんだぁー!ねえ室戸さん?室戸さーん!! 前作を忠実に再現したコミカルかつテンポの良い活劇。 若侍たちの金魚のフン振り(加山雄三と田中邦衛と土屋嘉男以外マジで見分けが付かない)も見事に再現。 ただ、さとう珠緒は軽すぎた。 アレじゃあ、今作三十郎の優男の側面が強調されてしまう。 かといって鈴木あんが乗っても微妙であろう。 「早く行けデブ」と言うようなもんだ。 それじゃあ品が無い。 入江たか子さんには悪いが、やっぱり三十郎に「うっ」と言わせられるのは、あの人くらいのウエイトと年季が無いと。 「お歳をめした貴婦人なら仕方無いね」感が。 あと最後の決闘。 スローモーションにする意味は無かったな。 一瞬の「バッー!」って出来事だからこそ、あの場面は映えるしカッコイイ。 脚本が忠実なだけに、無駄なアップと同様にマイナス演出になってしまった。 実に惜しい。 そして特筆すべきは織田裕二。 その邪魔な前髪をむしれ(憤慨)  原作では凄まじい実力と凶悪な人相に対して、義侠心に厚く知能派浪人というギャップが魅力であったが、今作では織田裕二特有のコミカルで爽やか、心優しきチンピラ風味な三十郎像を楽しめる。 どうせならその個性をもっと押し出すべきだった。 せっかく脚本に忠実なんだから、その上で新たな三十郎像を見出すのがリメイクの目的のはず。
[DVD(邦画)] 8点(2014-12-13 19:14:03)(笑:1票)
223.  ウォレスとグルミット/ペンギンに気をつけろ! 《ネタバレ》 
ウォレスとグルミットの最高傑作はコレだと思う。30分弱にこの詰め込みよう、超高密度の傑作だ。 ヒッチコックタッチのサスペンスが展開される面白さ。 朝の朝食、家中に巡らされた線路、「キートンのかかし」を思い出すようなギミックにあふれた家。レバーひとつでなんでもできちゃう。 ベッドは跳ね上がり、穴に主人を落とし、ジャムは朝食となるパンに命中する。 自らおでましする“プレゼント”の恐怖演出。無表情の奥に隠された見えない恐怖が徐々に迫ってくる。グルミットはぞんざいな扱いに苛立ちを募らせ、嫉妬し、潔く諦め、反撃を開始する。 グルミットたちの耳は髪のようになびく。 良いも悪いもリモコン次第、散歩・掃除用ロボットに“追い出され”、他者によって犯罪に使われてしまう恐怖。ウォレスがグルミットにした仕打ちがそのまま返ってくる滑稽さ。 ロボットの上からズボンを履くなwww  “プレゼント”の行動はどんどんエスカレートしていく。 二人を翻弄し弄び、下調べをし、手を摺合せ、拳銃を備え、手袋を頭から被り鶏の様なトサカで“変装”する。  グルミットの追跡シーンのスリル。カフェにコインを投げ置く仕草とかにこだわりを感じられる。路地裏、ナイフは覗き穴を作るため、巻尺は上に上るロープ変わり、一瞬眼が合ってしまう瞬間の戦慄、“PUSH”の文字。 “プレゼント”も他者を利用するとはいえ命懸けだ。 侵入シーンは緊張の連続だ。展示される同胞、四次元ヘルメットから飛び出す“手”、汗を拭きだして操作を行う焦り、剥がれそうな天井、寝ているウォレスがいつ起きるか分からない恐怖。起きたらいきなりビルの断崖とか怖すぎる。  クライマックスを飾る幽閉からの脱出と反撃が凄い! 階段のスロープから猛スピードで走る列車上でのチェイス!室内&列車上という二重の密室、西部劇さながらのアクション、電燈は防弾ヘルメットに、道は自分で作る!  動物園の檻は監獄のように不気味だ。“脚”も用済みとなれば、夕陽を背に自分の“脚”で立ち去っていく。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-04 20:55:44)(良:1票)
224.  ローマの休日 《ネタバレ》 
フランク・キャプラの「或る夜の出来事」を思わせるラブ・ロマンス。 キャプラ自身も監督する予定だったが断念・その無念をウィリアム・ワイラーとダルトン・トランボが果たしてくれたと思うだけでも胸圧。 ワイラー初期の作品に比べると密度はそれほど無いが、それでも最後まで飽きさせてくれない。 ローマ市内の名所を映していくオープニング、ニュース映像の中・パーティー会場の凛々しい“王女”、本当は遊びたい年頃のお転婆な“アン”。スカートの中は退屈そうに脚がウズウズ。窮屈な靴を早く脱ぎたくてしょうがない、街の音楽を聞きに今すぐにでも走りだしたい。 爺さんのナイスエスコート、脱走するための仮病・・・いや病というなら恋の病にかかるというべきか。 服を着替えて脱走経路の確認、階段を一気に走り去り、車の荷台に飛び込む。手袋をまだはめているのが王女らしくて可愛い。そのアンに子供を寝かすように対応するペックが面白い。 博打に負けた帰りにとっておきの“特ダネ”との出会い。夢の中でも王女の仕事。起こすためにデカい音を立てても、枕や布団を引き抜いても起きない。  事情を知って野望に燃えるペックとアーヴィング。そんな二人が彼女と過ごす内に心境に変化が生じていく面白さ。 やっぱペックはちょっと悪党を気取っているというか、何だかんだ言って本当は優しい人間て感じのキャラが好きだ。  ローマ市内の観光。髪を切ったり、アイスを食べたり、煙草を吸ってみたり、ベスパで二人乗りしたりと今まで出来なかった事を存分に満喫する。ローマ市民に迷惑をかけながら。 王女を連れ戻すべくやってきた黒服の男たちも、まるでカラスの行列のように散々な目に遭う(演出のせいで暗黒街出身の殺し屋にしか見えません。本当にありがとうございます)。  身分という壁の大きさ、やがて訪れる別れ・・・。 記者会見、視線で交える挨拶、観光記念に素敵な贈物、別れの笑み。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-04 22:13:33)(良:1票)
225.  アウトロー(1976) 《ネタバレ》 
アメリカ建国200年記念の名にふさわしい堂々とした西部劇。  フォレスト・カーターの原作に、イーストウッドの西部劇に対する愛情と野心を詰め込んだ傑作。  「許されざる者」や「ペイルライダー」も良いが、やはり俺は二挺拳銃の唸りが熱い本作を推す。  強烈なファーストシーン、カスタマイズ銃やガトリングの唸りなどガンファイトに富んだ血のたぎる作り込み。  時代のうねりによって復讐者と化す「ジョージー・ウェールズ」の波乱の旅を描く。  アメリカの豊かな自然、  西部の厳しき大地、  大地に生きる人間の生活感溢れる力強さ、  染み渡る日本的情緒、  カッコいいオッサン・・・! 主人公は最初普通の開拓民で、家族を殺された事で復讐の旅を続ける無敵の唾吐きガンマンになっていく過程が面白い。おまえは何回ツバを吐くんだ(笑)また主人公も仲間に助けられながら窮地を脱する場面もかなりあった。仲間あって無敵が本作の魅力でしょう。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-30 10:38:26)(良:1票)
226.  生きるべきか死ぬべきか 《ネタバレ》 
エルンスト・ルビッチの最高傑作にして、「我輩はカモである」や「独裁者」に並ぶ反ナチス・スクリュー・ボール・コメディの大傑作。 とにかく展開が速いし、キャロル・ロンバートが最高にハジケていて楽しい。 物語は街中においていきなりヒトラーが現れるシーンから始まる。果たしてこのヒトラーは何者なのか。 第二次大戦真っ只中、ナチスの脅威が迫るポーランドの首都ワルシャワの劇場では偽のヒトラーをたてるべく“アジ”の研究やら日夜厳しくも馬鹿馬鹿しい調子で稽古を積んでいた。欠伸をしながら「はいるひとりゃ~」と言った後にキリッと言い直すシーンからまず笑わせてくれる。  そんな彼らの努力を尻目に、女優アンナはソビンスキー中尉とイチャイチャ。 「ハムレット」のセリフをイチイチ邪魔される劇団員はブチギレまくり。ちょっとはタイミングを考えろww そんなアンナたちも、ポーランドに宣戦布告してきたナチスに劇場を木っ端微塵に吹き飛ばされてしまう。様々な怒りが彼らをレジスタンスとして立ち上がらせる。彼らがところ構わず爆弾で吹き飛ばしていくのは、ナチスだけでなく我々の腹筋も破壊していく。 セリフによる笑いと緊張感みなぎる場面の数々、ベッドでのやり取りやヒゲ、名前、手紙と次から次へと笑いの連鎖が重ねられる。階段のシーンはドキドキした。 キャロル・ロンバートが眠る筈のベッドでゴツいオッサンが寝ててワロタ。 劇場における“幕引き”場面も凄い。薄暗い中をサーチライトで照らされ、垂れ幕の向こうで見事に“退場”していくシーン。笑いを通り越して一瞬ゾッとさせる。 ルビッチはポーランドのユダヤ人たちの悲劇を下にこの映画を撮ったという。その憎悪がこの映画の「爆発」へと繋がったのだろう。 ヒゲで正体がバレるシーン、欲情する兵士、劇場が吹っ飛んで隣の男に抱きつくヒトラー、最後の最後までハムレットを邪魔されるなど笑いっぱなしでとにかく楽しい映画だった。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-14 16:58:43)(良:1票)
227.  ダイヤルMを廻せ! 《ネタバレ》 
今作のグレース・ケリーは「裏窓」の彼女とは正反対と言っていい。 奔放そうで脚をバキバキに折った男の面倒をみたり、愛が故に独りで乗り込むなんて事もやっちゃう「裏窓」。  対して「ダイヤルMを廻せ!」は清純そうで夫が嫉妬に狂う“原因”を作ってしまう女性を演じている。 赤いドレスで接吻なんてシーンだけでも官能的なのに、薄いナイトウェアで良いケツした若妻にうろつかれた日にゃあ襲いたくもなるわ(おいコラ)。  そりゃあ何度もキスして「愛しているわ」とやっている嫁が本当は・・・なんて事されてたら誰だって怒る。それが嫉妬によって憎悪に変わる恐ろしさ。 かつてユダがキリストを裏切る際に“接吻”をしたように、この男も女に対してその接吻で応えるのである。  女が去った後、“依頼人”は“殺し屋”に異常な依頼をする。最初数分の退屈な会話が、その異常さが露呈した瞬間に張り詰める空気。  カメラが上から部屋の様子を映し、殺し屋が徐々に依頼人の計画にのっていく様子を強める。  劇中で幾度も閉じられては開けられる扉、手袋や同窓会の写真、そして鍵。鍵への執着振りは「汚名」を思い出す。  依頼人が指紋を気にする様子に殺し屋は次第に応じるようになり、椅子に投げ込まれた“前払い”を無言で受け取り依頼は成立する。  依頼人も殺し屋のために準備を整える。 鍵を確認し、カーテンを閉め、手袋、バッグから鍵を奪う、階段にかけられる手・・・。  殺し屋も依頼人を信じて闇夜に姿を現す。 もしもグレース・ケリーが不倫だけでなくあんな事やこんな事までヤッちゃった文句なしのビッチだったならば、俺はこの二人の男たちを応援していただろう。 とにかく浮気なんて許さねえという人は問答無用で応援していた人もいただろうね。  時計が緊張を高める演出。「真昼の決闘」は戦闘まで、この映画では一瞬の決着のために!  練られた計画によって繋がる二人の男。それを“切り裂く”思わぬ得物が標的をトドメる。殺っちまった瞬間の嫌悪感・それを人の前でどうにか耐えようとする気丈さ。あるいわ図太さか。  完璧な筈の計画が音を立てて崩れていく後半の二段構え。旦那も説明できない表情になっていきます。  それでも殺し屋に手紙を“渡して”まで、法によって殺害しようとする諦めの悪さ。妻への目配せも複雑、グレース・ケリーの背景も真っ赤な血のように染まる。  「君がいなければこんな事にはならなかった」 じゃあその男を殺れやっ!ホモかテメエは。どっちにしろ嘘の上塗りも限界。一枚上手の警部にもはめられて自宅で袋小路。  警部の部下「こんにちわ」  これには依頼人も苦笑いするしかなかった。
[DVD(字幕)] 9点(2015-05-09 02:34:21)(良:1票)
228.  HANA-BI 《ネタバレ》 
北野武の映画は、北野が出ない「キッズ・リターン」とか「あの夏、一番静かな海」みたいな映画の方が好きなんだけど、北野が監督・主演で唯一好きなのがこの「HANA-BI」だ。  北野のファンの中には「“ソナチネ”のような鋭利なものが無くなり、優しさばかり溢れている」という人もいる事だろう。  だが、俺は優しさと冷たい暴力が共存するようなこの映画が好きだ。  「ソナチネ」や「あの夏、一番静かな海」の蒼き海の美しさ、「その男、凶暴につき」の孤独な警官の物語。  まず、武が多くを語らないのが良い。  劇中で咲き乱れる花、花、花。 火花のように散る血、血、血。 少しかすめただけでも噴出すような真っ赤な血液。 特に劇中の北野が演じる警官は、すぐに爆発して散ってしまいそうな存在だ。 夜空に打ち上げられ、一瞬美しく咲き乱れ、消えていく花火のように。  子も失い病の妻を気遣う警官。 妻が死んだら自分はどうするか。生き続けるか、それとも・・・。 そんな時に、同僚が撃たれ彼は部下と共に犯人を追う。  駅の売店で犯人を見つけ、捕まえようとする北野。 揉み合いになり、犯人が放つ拳は爆弾の起爆剤を押すように口から血を噴出させる。  たけしだったら自分の足ごと犯人を撃ち抜いていただろう。静かな怒りが主人公を動かす。  警官をやめ、ヤクザのような黒装束とサングラスで身を包む北野。 「銀行強盗やろうと思ってよ」なんて嘘か本当か解らないジョークを飛ばす。これが有言実行なんだから恐ろしい。 “ナイフ”の場面でアクションを影だけで演出するのが面白い。 そのナイフを相手がパッと両手で受け取るのなんか思わず笑ってしまった。  妻の治療費のため、そして残された部下のためにヤクザ相手に独りで立ち回るのだ。  終盤の怒涛の如き流れも、静かな空気が肌を刺す。  偶然出会った少女に、主人公は亡き子供の面影を見たのだろうか。 胴体だけ先に行き、残った両手もまた後を追う・・・。  ラストの海を見ながら「ごめんね」と呟く妻と静かに過ごすシーンが印象的だ。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-20 20:14:27)(良:1票)
229.  デス・プルーフ in グラインドハウス 《ネタバレ》 
この映画はマジで映画館で見ないと楽しめない。 最初の1時間はうっかり寝てしまっても、ラスト30分の射精しそうなぐらいの盛り上がりで他の観客に叩き起こされる! それで「盛り上がるまでを見たいな」とレンタル店に行ったりネットで注文したりして楽しむワケよ。 あのクライマックスのカーチェイスはタランティーノの映画を含めても最高すぎる。 髪おろしたゾーイの姉貴に惚れねえ男はホモ野郎だぜ。 何ぃ?女なんて怖くて嫌い?るせえっ!ホモはホモ同士でファ●クしてオナッてやがれ!  だが、上記で述べたように前半30分に及ぶダベりからタランティーノに殺意を抱いた人間は“まとも”です。 同時上映だったロバート・ロドリゲス兄貴の「プラネット・テラー」の方が総合的には面白いよ。あれこそ真のB級的感覚で撮られた超A級の映画です。  でも、俺にとってはところどころに危ない匂いが潜む楽しい楽しいガールズトークですよ。 黒髪の姉ちゃんのセクシーダンスにもドキッとする。やっぱタラちゃんはダベるよりもダンスとかアクションやっている時が一番面白い。 70年代のB級的感覚を“装った”この映画。 フィルムのザラ付きやカットが飛んでいる感じ、上映時間も確かにB級的感覚ではあるよ。 だが、何故中盤の“虐殺”シーンをあれだけ待たせるのか。 確かに流れがガラッと変わり「そういう事か」と思わずニヤリ。 でもそれまでが長ーんだよこの野郎! あんなもんせいぜい開始5分で「ハイドカーンッ!実は俺様殺人鬼でしたっーダハハッ」とか殺れんだろーがっ! ヒッチコックの「サイコ」気取りか?あ?オイ?テメエぶち殺されてえのかタランティーノゴラアアアッッ!!!!!・・・・・・・・・と思っていたら後半の盛り上がりで今まで起きたすべてを水に流せるほどの神展開が待ち構えているんですよ。 白黒になったりカラーになったり、 物騒なガールズトークで“詰む”殺人鬼、 白昼堂々写真を撮る変態振り、 アンジェリーナ「表に出ろブス共」、 田舎者=「怒りの葡萄」⇒ジョン・フォード「訴訟も辞さない」、 人身御供にされるチアガールはジョン・マクレーンの娘(「ダイハード4.0」でブルース・ウィリスと共演)、 スタントやるアホウに絡むアホウ、 ダッチVSダッチ、 フルボッコで涙目で最高にスカッとしたぜえっー!!! ・・・という映画です。スタントはスタントにしか倒せない。
[DVD(字幕)] 8点(2014-10-23 19:06:00)(良:1票)
230.  ダウン・バイ・ロー 《ネタバレ》 
ジム・ジャームッシュによる愉快な刑務所&ロードムービー。 ジャームッシュの最高傑作はコレだろうねえ。 歌を歌うように淀みのない会話で人と人とが繋がっていく楽しさ。 デコボコだった3人の男たちが、会話や音楽によって「親しい兄弟のような間柄」になっていく映画だ。 こういうセリフが多い映画は、速さが足りない字幕なんぞで愉しみきれない。 戸田奈津子のカスみたいな字幕で楽しめるワケねえだろうがあっ!! 原語だけで愉しむのが一番だ。 まあ、そんな事はどうだっていいんだ。 この映画は、軽快な音楽と共に郊外の自然や市街地を移動撮影で映していく場面から始まる。 男と女が熱く愛を語っていた筈のベッドは冷たくなり、女に愛想を尽かされた男達は家を出て行く。 「あんたの音は聞き飽きたの」とばかりに散乱するレコードの破片、破片、破片。 外の町だってゴミだらけ。 銃を背中に向け「撃つわよ」と弾を込める音をわざわざ聞かせる女、それを「君になら撃たれても良い」とばかりに黙って立ち尽くす男。 男は背中で語る。こういうシーンが大好きです。 白いベッドに横たわる黒い女の裸体がエロい。布団を優しくかける紳士すら捨てられていく。 ジャックとザックは女に捨てられるわ罠に嵌められるわ仕舞いにゃブタ箱。 独房の壁のザラザラした音が耳障り。あの感触を想像するだけで胸が痛くなる。 だが、そのブタ箱で思わぬ出会いをする3人目の男ロベルト。 この男が衝突する2人の間を取り持ち、潤滑油のように友情を深めてしまう。 喧嘩するほど仲が良い。 ジャックとザックの殴り合うような掛け合いだけでも面白いが、そこにロベルトが加わる事でアンサンブルはより楽しくなる。 3人の合唱は独房全体に響き渡り、警官の警棒がフィナーレを締めくくる。最高に楽しい場面だった。 独房の中心でアイ(スクリーム)を叫ぶ(スクリーム)。 ロベルトは壁に“窓”を書いて「ここから出ちまおうぜ」と言ってのける。 本当に出ちまうんだから面白い。 逃亡という名の森林散策。 船で沼地を進む3人ををロングショットで捉えたシーンの幻想的なこと。 ウサギの丸焼きは美味そうだ。 飯喰って仲直り。 道の一軒屋で3人を持て成してくれた奥さんがキレイな人でねえ。 ロベルトもまた恋に出会う。 やがて別れていく3人だが、分かれ道でのやり取りの何と粋な事。 「おまえが左なら俺は右よお」
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-07 16:47:30)(良:1票)
231.  オーソン・ウェルズのオセロ 《ネタバレ》 
「マクベス」「黒い罠」「審判」に並ぶウェルズの傑作。  「オセロ」はオーソン・ウェルズのシェイクスピアに対する尊敬と愛情を感じられる無骨な造り込み。   1952年に造られカンヌ・グランプリを飾った作品であったが、不幸が重なりフィルムは消息を断つ。  1993年に眠っていたフィルムが見つかるまで、数十年もその存在と価値が知られなかった。  「市民ケーン」以上の不幸、それを乗り越えて現在に復活した本作。   アメリカを追われたウェルズが、モロッコで4年かけて造った魂の結晶であり、ウェルズの「エンターテイナー」としてではなく、元来の「舞台俳優」としての自身と誇りを堪能できる。   ファーストシーンに満ちた「死」の空気。  イングマール・ベルイマンの死の雰囲気にも似ているが、細部へのこだわりの違い。  シェイクスピアの、ウェルズの重厚な「死」の空気が漂う印象的な幕開けである。   そしてその「死」は如何にして訪れたか。  それを90分間まざまざと魅せ、語っていく。   主人公オセロの「黒」、  妻デズデモーナの「白」、この対比の鮮烈さはモノクロだからこそより印象強い。   イアーゴ演じるマイケル・マクラマーも素晴らしい。  イアーゴの言葉で疑心暗鬼になっていくオセロ。  コンプレックスに悩んできたオセロの心の脆さ。  オセロにかかる黒き影は、オセロ自身の疑念に満ちた心を表現している。  自分の心の黒き闇に喰われていくオセロの哀しみ、デズデモーナの哀しみ。   ウェルズはシェイクスピアになりたかった。  誰からも愛され、誰からも妬まれ、誰からも意識される・・・そんな偉大な作家になりたかった。  「嘘」を「本物」にする男になりたかったのだ。  野心と情熱をたぎらせながら。  「市民ケーン」はそういう男の野心と破滅を描いた。  実在の人物を笑いものにする喜劇性、  そんな男が辿る末路を予想した悲劇性、  正にシェイクスピアの喜びと悲しみを帯びた物語だった。   今回のオセロはもっと凄みがあって面白い。  この作品は「よくあるシェイクスピアものの映画」などという一言で片付けてはならない。  ウェルズがいかに役者として演技に魂を賭けているか、こだわっているか。それをひたすら感じてもらいたい。  人種差別にも踏み込んだ骨太の作品。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 11:12:22)(良:1票)
232.  ファウスト(1926)
ゲーテの戯曲を元にしたムルナウの傑作。 ムルナウの幻想的な演出はモチロン、冷徹なまでに重厚な空気で包まれる。  天上の天使と悪魔に運命を翻弄される人間たち。 疫病の苦しみから逃れるため、悪魔を召喚してしまうゲーテ。 メフィストフェレスはどんな願いも叶えてしまう。制約をしいて。 疫病と救世主、年老いたゲーテは己の無力さに絶望する。 若返り漲るような力を得ようと、結局は悪魔の力によって再び絶望に暮れてしまう。 余りに救いようが無い。  一時の幸せも、瞬く間に惨たらしく散っていく。  恐ろしいまでに冷徹な描写。  だが、ラストのあの美しさは何なのだろうか。あんな終わり方をされたら、黙って泣くしかないじゃないか。 何て最高に卑怯で泣ける泣けるクライマックスなんだ・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-20 01:08:16)(良:1票)
233.  赤い風船 《ネタバレ》 
アルベール・ラモリスによる最高に可愛らしいファンタジー映画。 セリフがほとんどないのにこんなに面白い映画を撮れる。無粋なセリフはいらないのだ。冒頭に出て来た犬のように、少年の目の前に現れる風船はペットのように、人間のように感情豊かな姿を見せる。 ガス灯から風船を“救い出す”シークエンスから始まり、風船は意思があるように自ら浮いたり降りたりする。 乗船拒否されれば、勝手に少年を追うだけだ。 濡れたレンガの路地の上を飛んでいく風船、 尻尾のようになびく紐、 白と赤のコントラスト、 傘から傘へ移って行く少年。 赤い風船は青い風船に惚れ、青い風船も赤い風船に反応する。これが伏線になろうとは・・・。  他の子供達は、赤い風船と少年に“嫉妬”して彼らを追い回す。 階段や路地における追走劇のスリル! 通りすがりの婆さんのオフェンス。 ちょっとしたファンタジーとか短編とか子供向けの映画とナメてかかっていたらコレだ! まさかここまで面白いとは思わなんだ。  子供達は赤い風船を“さらう”。男の子たちに混じって女の子がいない事も不思議だった。まるで一人の女を取り合うように。 綱引きや柵のやり取り、訪れる“死”。 少年の悲しみが起こす風船、風船、風船の奇跡。 空の向こうに消えていく美しいシーンだが、本当に死んだのは果たして・・・。 この映画の後に「白い馬」を見るのが最高なんです。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 01:08:50)(良:1票)
234.  ボビーに首ったけ 《ネタバレ》 
実に興味深い映画だった。どうしてこれほどの作品がDVD化されないのだろう。誰か出してくんねえかな~。  霧の中で点滅する灯、それを頼りに疾走する車、轟音をあげるバイク。  ヘルメットをかぶり(それまでノーヘルだったのか…)、画面の奥から迫り来るように走り去っていく。そこからこの中編は始まる。  この作品は実験的趣向に溢れており、特に「光」やそれが強調する「黒い影」の動きが印象的だ。  女のモノローグ、机の上に置かれた「もの」によってそれが手紙の内容だということを観客はさとる。 シャッターを上げた先に拡がる空間に貼られたバイクの写真、ラジカセ、白い光の中から駆け寄る者。  黙々とバイクの整備を続ける黒いシルエット、その周りで舞い踊るように語り掛ける少女。男はそれに淡々とした喋りで応え続けるが、座席にベッタリ寝そべっても怒らないくらい親しい間柄なのだろう。  逆光、人形のようにギコチナイTVの中の人間たち、それを見つめる光の無い眼、視線も交えない冷えた親子の関係。  回想の中でページをめくる女の影、いくつもの写真が男の過去を語り、次の旅先を想い描く瞳。  どっかの漫画から切り抜いてきたかのような止め絵、止め絵、止め絵、行く先々で視線に飛び込む単車、単車、単車というロマンの塊。  雨にあたる銅像のように固まった肉体、干された片靴、TVを見続けるのは顔を背ける・向かい合えないからだろうか。それとも声だけが響き続ける手紙の差出人に夢中だから、それを見つけるため、現実から逃げるためにバイクに乗るのだろうか。「手紙」だけで繋がる、傘を楽しそうに回す「憧れ」を求めて…。  真後ろのナンバープレートから真上に移動して捉えられる疾走、振り払い詰め寄り平手打ちを浴びせるシルエット、その影から逃げ去るように旅立っていく。 闇の中を揺れ動く光、光、光、逃げ込む場所。その瞳は自由を得たように灯を帯びる。 バイト、労働、心地よい疲労、喜び。楽しそうに家族の近況と「あるもの」を届けに来てくれる妹。彼女がいるからこそ親を放って出ていけたのかも知れない。  友人が残した「家族」の世話をするためにも増々帰るに帰れない。 道の向こうから接近し、地面を削り取るように砂を撒き上げ見事なターンを決める黒いライダー。マスター渋すぎるぜ…。  その「誘い」に心を弾ませるようにバイクを飛ばして追いかける。照り付ける日差し、風に揺れる服と豊かな口髭、横切っていく影。  辿り着いた先で跳んで跳んで飛び交うバイクの群、土煙をあげ、土砂に身を投げ出しながら鎬を削り競い合うバイク乗りたちの集う場所。  声をかける店の常連・顔見知り。 瞳の輝きが増すのは「求めていた」ものの一つに巡り合えた嬉しさから。そして、交わし続けた「約束」を思い出したかのように瞳はさらに輝きながら眩い太陽を見つめる。  木漏れ日が差し込む木々、行く先を照らすように白く輝く道、流れ落ち降り注ぐ光の線、うねり、縫うように、抜け出すように、「色」が消え去り、風を切り、延々と走り続けた先…。  その後どうなってしまったのか、気になる終わり方だった。
[ビデオ(邦画)] 8点(2017-02-08 00:50:08)(良:1票)
235.  無法松の一生(1943) 《ネタバレ》 
岩下俊作の小説「富島松五郎伝」を原作とする本作。 福岡県小倉の暴れ者「富島松五郎」こと「無法松」の顛末を描く人情もの。 街で大暴れするエネルギッシュな松五郎の身分を超えた情念を絡めた人生。 稲垣浩が魂を込めたこの映画だが、度重なる検閲で泣く泣くカットしてしまった部分も多く、今となっては不本意な出来となってしまっている。 松五郎が賭博に興じるシーン、良子に思いを打ち明ける場面などなど、重要な場面の多くが失われてしまった。 宮川一夫が収めたこの数々のシーンの一部が2007年に発見され、角川から出されたDVDで要約補完された。 ストーリー自体は後にリメイクで本懐を遂げたといえるが、本作で主演を務めた阪東妻三郎の素晴らしい演技が一部カットされた点は残念極まりない。 「雄呂血」の勇ましい二枚目が、この映画で見事に三枚目だが心の厚い熱血漢を演じる! 久世竜が代役を務めた雪のシーンですら、最初は自分の体で挑んで中耳炎を起こしていた。 サイレントからトーキーとなり、声の高さに一度は挫折したバンツマ。 それを声を出しまくった喉を潰し、ドスの効いた声に作り替える!役者魂ここに尽きる。 そして本作の一番の見所といえば、そんなバンツマのダイナミックな祇園太鼓。 監督の依頼を受けた太鼓打ち「田中伝次」が創作したオリジナルのものだったが、この映画がヒットした事で、松五郎の人物像とともにこの映画の太鼓打ちも全国、世界中に広まったという。 上記の太鼓を含め、宮川一夫の素晴らしいショットなどなど、見所も多い。 良子夫人を演じる園井恵子、結城重蔵を演じる月形龍之介の演技も素晴らしい。 特に園井恵子はこの「無法松」以外に映画には出ていない。彼女の最期を考えると、誠に残念でならない。 本作を見た方は是非とも三船敏郎主演のリメイクも見て欲しい。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-18 18:57:31)(良:1票)
236.  Shall we ダンス?(1995) 《ネタバレ》 
この映画は、西洋化の文化が進んだ現代の日本だからこそ撮れる人間ドラマのハートフルコメディ。 基本的には面白おかしく主人公たちの日常を描くんだけど、登場人物一人一人の丁寧な掘り下げ、趣味のダンスが生きがいになってしまった人達の喜びや哀しさを噛み締める映画なんだよな。 ダンスの生徒と教師、家族持ちの男と独身女性の不思議な関係・・・一線を越えずとも、ダンスを通じて心と体で交流する様々な人間模様を見せてくれる。 「日本人が社交ダンスだなんて・・・」というセリフからも解る通り、日本人は昔から亭主関白的な文化で“女性と手をつなぐ”なんて習慣は馴染みが薄い。 まして一緒に床は過ごしても手を取り合って踊るなんて風習は皆無に近かった。 明治維新後も「鹿鳴館」で社交辞令として踊るくらい。 西洋を見習って服装は変わっても、古くからの中身はほとんど変わらない時代が続いた。 軍隊だって基本的には男が主軸。女武将や女城主、女スパイは歴史上数あれどほんのひと握り。女性の自由も戦後になって開放的になったワケよ。 本作は戦後から50年以上たった節目とも言える頃に作られた。 まだまだ職業差別とかはあったけど、それでも男と女が面と向かって腰を据える時代になっていた。 洋服を着たり和洋折衷が当たり前の世の中で、社交ダンスも小学生や文化祭の頃にやるのが普通という子供も多かっただろうね。 しかしこの頃の社会人にとっては「社交ダンスなんてお年寄りかもの好きしかやらない古臭い趣味」なんてレッテルがあっただろう。 西洋で社交ダンスなんて当たり前、日本は身なりは西洋化しても心は昔の名残が残る・・・そんな情景を感じられる。 これは日本人なりにそのレッテルを破り、一人の人間として一歩を踏み出そうって勇気なのよ。 登場人物たちの心の殻と、当時の日本の風潮を重ねた二重の人間ドラマなのさ。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-16 22:47:53)(良:1票)
237.  軍旗はためく下に 《ネタバレ》 
文句なしに深作欣二の最高傑作。 ギターの重低音、白黒とカラーが交差する映像。 軍旗の中に埋められた真実とは何か。 戦後数十年の時が流れ、未亡人となった妻は未だに夫が“殺された”本当の理由を知らない。夫の罪が誠だという証拠も何処にもない。 「無罪を立証する積極的証拠なし」として頑なに真相を隠そうとする国、だが妻は諦めず四人の“生き証人”たちに辿り着く。  戦闘ではなく骨太のドラマに主眼を置いた作りが良い。 新藤兼人はつくづく監督よりも脚本を書いている時の方が圧倒的に面白いという事を実感。  いくら指揮を下げないためとはいえ、まだ戦える兵士をブッた斬る狂い振り。どのみち、行き着く先は三途の川さ。 「死ぬ時は一緒だ!」の悲痛な叫び、彼らの血も訴えも海の藻屑と消されていく非情。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-21 14:24:43)(良:1票)
238.  ハドソン川の奇跡 《ネタバレ》 
空を飛ぶ…いや“降下”してくる旅客機。 機内で必死に機器を操作し、声を掛け合い、見つめ、コンクリートジャングルの中に飛び込み爆炎に包まれ、黒いシルエットが起き上がり、朝日が疲れ切った瞳を映し出す。 男は夢の中の「もしも」に苛まれていたが、これから現実の世界で「もしも」について悩み向き合っていくことになる。  こんな恐ろしい始まり方だ。さぞかし切なくなるような、やるせない気持ちになるような映画をまたイーストウッドが撮りやがった(褒め言葉)に違いないと思いながら見ていくと、それは俺の勘違いだったようだ。  何せ飛び交う万の言葉とともに“奇跡”を成し遂げたすべての人々の行動を映し、優しく讃えてくれるようなアクションの映画だったのだから。  短いカットを交互にバシバシ挿入し、“あの日”以前/以後の人々の動向、離陸までのシークエンスを積み重ね、突然現れつぶてのように飛来する鳥の群れ、決断を迫られるパイロットたち、指示を出す管制室、押し寄せる水流の中で血を流すような怪我を押してまで避難を促し続ける客室乗務員、パニックになり恐怖に震えながらも隣人への思いやりを忘れない搭乗客、冷たいハドソン川に駆けつけ救命胴衣を投げまくり川の中から抱きかかえ防寒着をグルグルかけ帽子までくれた救助隊や警官たち、帰りを待つ家族たち、事故直後から何回もシュミレーションを行ってくれた同業者たち…様々な視点から“あの日”の真相に迫っていく。  それは粗探しのためではなくサリーたちの努力を証明するために。酒場のマスターや飲み客たちも、タクシーの運転手も、疑問を投げかけるニュースキャスターたちも手のひら返しを喰らわせるどころかサリーに“ヒント”すら与えてくれる。  そして、サリーはそんな人々の行動に刺激を受け、一人の仕事人として、一人の人間として誇りをかけて“あの日”との決着を付けに行くのだ。 若い頃から師や仕事仲間といった“命”を乗せて様々な飛行機を操縦してきたサリー。1人だろうが155人だろうが変わらない“重さ”の命を。 機が着陸しても沈みそうなら沈む前に最後まで機内を見回り、降りてもしばらく観察を続け、仕事が終わっても制服を中々脱げないくらい打ち込み、何処かへ走り出さずにはいられない根っからの仕事人。いざ休もうとしてもマスコミが押しかけ取り囲まれ、TVを付ければどのチャンネルでも同じ話題で持ちきり、公聴会ですら録音を聞かされ“あの日”に引き戻される。そりゃあ何も聞こえない場所まで走りたくもなりますよ。 でも彼は走ることをやめニュースに耳を傾け、もう一度立ち向かうことを選ぶ。  そこには、計算に計算を重ねた機械以上に精密かつ力強く動き、限界に挑み超えていける人間の姿がある。 それは“あの日”に関わった人々へのエールだけでなく、イーストウッドが尊敬するハワード・ホークスやウィリアム・A・ウェルマンといった飛行機乗りだった映画監督たちへの思いも込められているのではないだろうか。人間の可能性を見つめ続けた先人たちへの。  エンドロールまで讃えに讃えまくって笑顔で締めくくるのだから、まったくまいっちまうよ。
[映画館(字幕)] 9点(2016-11-08 00:28:41)(良:1票)
239.  暗殺の森 《ネタバレ》 
ベルトルッチ初期の傑作。人によっては「ラスト・エンペラー」ではなくこの作品がベルトルッチの最高傑作だという人もいるそうだ。確かにそれほどの作品なのだろう。俺は最後まで余り好きになれなかったが。 第二次大戦前夜のイタリア。 主人公のマルチェロはファシスト組織の一員として暗殺の任務をこなす日々を送るが、幼き日のトラウマと優柔不断な性格で冷徹な殺し屋に成りきれずにいた。 まあ、殺しを部下に任せている事・銃もまともに撃てないなんて随分「中途半端」な殺し屋だ。 新妻となるアンナはマルチェロの裏仕事を知らない。 マルチェロも何処かファシストから足を洗いたさそうな表情を見せる。殺し屋一筋のマンガニエーロはそんなマルチェロをため息をもらしつつ護衛する。 マルチェロを励ます(?)マンガニエーロの姿はちょっと応援してしまう。 当の本人は殺しよりも魅力的な人妻にメロメロだ。いや夢中なフリと言うべきか。いや本当に惚れていたのかも。  母親の情夫、恩師の人妻・・・まったく嫌な事件だったぜ。やるせない。 車の中から“あの人”を見つめる姿なんてもう・・・ね・・・。  マルチェロが見た「アイツ」はソックリさんか本物か。それは解らない。  戦争によって狂い、戦争によって心を“抹殺”されていったマルチェロは今後どのような人生を歩むのか。そんな事を思うラストだった。
[DVD(字幕)] 9点(2014-05-20 23:12:24)(良:1票)
240.  穴(1960) 《ネタバレ》 
ジャック・ベッケルはフレンチ・ノワールで数々の傑作を手掛けた。 元々フィルム・ノワールはドイツのフリッツ・ラング「M」やジャン・ルノワールの「十字路の夜」が原型として広く知られているが(知らない?じゃあ今すぐググレ)、アメリカの「暗黒街の顔役」や「マルタの鷹」以来すっかりノワールのお株はアメリカに奪われてしまった。 そんなフィルム・ノワールをフレンンチ・ノワールとしてフランス・・・つまりヨーロッパに復活させた監督の一人がジャック・ベッケルだ。  宇宙刑事ジャン・ギャバンが売れたのもルノワールとベッケル様々です(ギャバンの本体はタバコ)。  そんなベッケルの傑作は「アラブの盗賊」「現金に手を出すな」「モンパルナスの灯」「幸福の設計」「肉体の冠」と豊富だが、最高傑作はやはり「穴」になるだろう。 戦後実際に起きた脱獄事件をモデルに、刑務所内における一大脱獄劇をスリル万点に描いていく。 見張りの目を盗んでのやり取りは終始ドキドキの連続で、何時警備員が飛び出して来るものかと緊張の糸が絶たれない。  土まみれになりながらも穴を掘り続ける男たちの力強さ、鉄格子よりも硬い囚人たちの絆。漢の映画だぜ。 女っ気の無い作品だが、“5人”に会いに来た「あの女」は囚人たちの絆にヒビを入れるファム・ファタールだったのかも。  ラストの壮絶な展開には唖然としてしまったが、最後まで見事な作品だった。もっとベッケルの作品が見たかった。惜しまれる。
[DVD(字幕)] 10点(2014-03-11 23:57:55)(良:1票)

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