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プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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241.  ゴッドファーザー PART Ⅱ 《ネタバレ》 
「ゴッドファーザー」は好きなシリーズだが、特に「PARTⅡ」はもう何度見たか解らない。 人によっては「PARTⅠ」こそ最高という人もいるだろう。 だが、俺は冒頭からヴィトの悲劇で始まり、ヴィトが栄光を掴んでいく“光”とマイケルが様々なものを失っていく“闇”が交錯する「PARTⅡ」が一番好きだ。ヴィトだけでなく、マイケルの過去も映されるんだ。ヴィトの思い出と混ざりながら。 初見の者にとって、ヴィトが今後どうなるかが気になって最後まで画面に釘付けにされたのだから。 シチリア島で葬儀が行われるシーンから物語は始まる。父、兄、母親まで地元のギャングに殴りこんで失ってしまうヴィトの悲劇。この瞬間からマイケルの復讐が始まり、同時に彼を救ってくれた島の人々の優しさがヴィトに生きる力と人を助ける愛情を育む。村の名前がヴィトを守る“偽名”となって。だから彼はシチリアに戻って来たのだと思う。困っている仲間や家族を守るために覚悟を決め、彼らの代わりに引き金を引いて。 彼らが奥さんの手作りパスタを美味そうに食べるシーンは和む。どうしてこの映画はあんなにも飯を美味そうに食うのだろうか。クレメンザとソニーは若い頃(物心つく前)からつるむ仲。 前半2時間のクライマックスを飾るのは、そんなヴィト自らが暗殺に向う場面だ。 ヴィトがどん底から這い上がり仲間や家族を得る一方、現代のマイケルは後半1時間30分をかけて最盛期からまた次々に最愛の仲間や家族を失っていく。フレドとコニーの何気ない会話が、別れの挨拶になるなんてさ。 華やかなパーティーですら暗い影が差し、寝室に銃弾の雨が振り込み安心して眠る事も出来ない。 議員も机の上の大砲をマフィアのボスに向けてケンカ腰。 痩せていたアル・ネリは亡きクレメンザの代わりを果たすかのように膨れ上がる。 数多の血みどろの殺し合いの後に、以前のマイケルたちが揃って食事をする場面なんかもう何回見ても泣きそうになっちゃうよ。ソニーは元気だし、コニーにブツブツ言ったりフレドとじゃれあう姿なんて・・・それが独りで煙草を吹かし、現在のマイケルの瞳に光が失われて幕を閉じる。
[DVD(字幕)] 10点(2014-06-26 19:38:01)(良:1票)
242.  X-MEN:ファースト・ジェネレーション 《ネタバレ》 
「キック・アス」を手掛けたマシュー・ヴォーンによる傑作。 「X-MEN」シリーズの前日譚にあたる作品だが、今までのシリーズよりも活き活きとしたエネルギーに満ちている。 続編となる「フューチャー&パスト」も中々面白かった。 マグニートってこんなにカッコ良かったかなあ・・・。 設定が矛盾しているとかいうけど、そこは「キック・アス」に通じる馬鹿馬鹿しさとシリアスのバランスが面白いという事で。  ユダヤ人として生まれた魂は、その怒りによって能力に目覚める。 やがて訪れる復讐者と仲間達の出会い。  テレパシーでどんな人間にもコンタクト、 全身真っ青で誰にでもなれる女性、 全身をダイヤモンドにしてキレイに円を描くパッキン女性、 あらゆるものを吸収してしまう不老の元ナチス、 見た目は野獣中身はイケメンな頭脳派、 呼んでますよアザゼルさんなどなど超人&変態の万国博覧会。 手から刃を出しまくるオッサンも一瞬登場。   人を信じて生きてきたプロフェッサーX(チャールズ)、人を信じないで生きてきたマグニート(エリック)の対比が痛々しい。  敵が“潜る”なら“引きずり”、叩きのめすのみ、 撃ってくるなら全部弾き返すだけよおっ! ブラックバードで飛来してくるシーンは超ワクワクしたぜ。   ローガン「おとといきやがれっ!」
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 00:22:11)(良:1票)
243.  エル(1952) 《ネタバレ》 
最も狂っておらず、最も狂った作品。 同時にもっともエロくなく、もっとも官能的なブニュエル作品。  精神を病み、自分が正義だと信じ続け身を滅ぼしていく男の悲しきドラマ。「昇天峠」より強烈だ。 精神病の症例記録を映画化しようと思うのは、ブニュエルくらいか。それをスリリングなサスペンスのように魅せるブニュエル。  男は、礼拝堂で聖母のように美しい女性(脚)と出会ってしまった。歪んだ正義は独占欲となって彼女を束縛する。 他人への憎悪。嫉妬で荒れては、愛する女に許しを請う。教会の上から「俺がてっぺんで、下を歩く連中はクズだ!」と言わんばかりに軽蔑する。 遂には「俺の思い取りにならんなら、いっそ!」と愛する女にまで憎悪を向ける。階段の手すりをガンガンガンガンと叩き続けるシーンの狂気と怖さ。あらゆる事が思い通りにならない苛立ちと恐怖。 男の様子を見て怯える女よりも、男は何かに怯えているのだ。  女はそんな男から逃げる。こんなもん逃げたくもなるわ。 男は「俺のものにならんなら、ブチ殺してやる!」と街に飛び出す。礼拝堂で周りから嘲笑される幻覚に襲われる主人公。自分の何もかもが否定される絶望感、怒りは神父の首に向かう。 女が向かった新天地の不気味なくらいの平和が、後を引きずる。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-30 20:04:17)(良:1票)
244.  サリヴァンの旅 《ネタバレ》 
メチャクチャ面白かった。フランク・キャプラ「或る夜の出来事」にも通じるロードムービー、コメディ。  本をめくるように始まる物語、いきなり煙を吹き出しながら突っ走る列車と車上での格闘、連結部分で揉み合い、拳銃を撃ちまくり、口から溢れ出る血、締められる首、橋の上から投げだされる身体…を試写室で見て文句を言う映画監督の御登場。 そうやってこの映画は始まる。  けたたましくまくし立てる口論、ドアが開かれるのは試写の終わり、主人公が出かけるまで延々とくっちゃべり続ける。ズタボロ衣装とベッドの上で電話をかける女性の豪華な衣装の対比がウケる。  旅だってもでっかいキャンピングカー?に乗り込みカメラを抱えてゆっくりじっくり追いかける魂胆の映画人たち。コックまでいるんだからタチが悪い。  そしたら救いの手といわんばかりに車が通りかかり、猛烈なスピードでぶっ飛ばしてハイウェイを駆け抜ける!バスもフルスピードで追跡開始で中はグッチャグチャのしっちゃかめっちゃか、映画人は助手席で揉みくちゃになり、女性はスカートがめくれて下着も丸見え、黒人のコックは天井を突き破り、バイク乗りの警官も泥まみれの鬼の形相で追いかけるカオスなカーチェイス、主人公が乗った車も運転手は子供だわメーターも手描きだわ藁を山ほど積んだ馬車に突っ込んでと、ありとあらゆるものが暴走していく破天荒振り。  ここまでまだ15分である。ディズニーも赤塚不二夫も顔負けのハチャメチャ。こりゃあジョン・ラセターもイーストウッドも惚れ込むワケだ。  あれだけムチャクチャな目に遭ってもこりないんだからヤレヤレ。  虫に刺されながらの薪割り、映画館で黙って見れないガキども、食いもんむさぼるオッサン、反応を気にしながら映画を見続けなきゃならない作り手も大変だ。  変なおばさんにはドアの鍵を締められ閉じ込められ、ベッドで誘うように待つBBA、ふとんのシーツをロープがわりに脱出、釘が引き裂くもの、樽の中に落下してずぶ濡れとふんだり蹴ったり。 肖像画のとぼけた顔がまたムカツク。  ヒッチハイク、カフェでの出会い、煙草のやり取り。  出会ったばかりの女性とドライブ、バックミラーに映るもの、投獄され巻き込まれる。  車内電話、豪華な家でプールに突き落とされ、説教たれるやつは引きずり込んでしまえ! ローブ姿のセクシーなヴェロニカ・レイクもいいが、豊かなブロンドを帽子にしまいこみ男装する姿も可愛い。 ブラシで髪をとかし、せっかく着替えたのに今度は執事が…w  労働者たちに交じり一斉に列車に乗り込み、先にいたホーボーたちは気を利かせてか板を掴んで隣の車両に去っていってしまう。 寒い中で身を寄せ合い、敷き藁の匂いでくしゃみを連発、彼女を抱えて降りる。  喫茶店のオッチャンの気遣い、インタビューを中断するように口に体温計を突っ込む医者。 蒸気と透明なカーテンが隠すシャワー中の裸体のエロティックさ。  その後しばらくサイレント映画のように映像だけで語り続ける。この辺から物語はがらりとシリアスになっていくが、散々喋りまくりバカ騒ぎをしてきただけにこういう場面がグッと効いてくる。 貧しい生活の中で生き抜く人々との出会い、寝ようにもノミが体中にたかり、共同シャワー、講談、食事、足の踏み場もないくらい狭い場所で眠る人々。隣の人の手足がぶつかり、気づけば脱がされる襤褸靴。 職を求めて看板を体中に括りつけ、夜の湖畔を二人で歩くロマンチックな場面も。ゴミ箱をめぐる葛藤。  贈り物、下手な施しは災いを誘発し後に続く歩みを生み、待ち伏せ、一撃、奪われるもの、線路に散らばり接近する光とともに消えるもの、血に塗れた名刺。  目覚めた先で喰らう一撃、握りしめてしまう石、視線がおぼつかない裁判、ショットガンを抱え平手打ちを浴びせる保安官、鎖に繋がれた囚人たち。  川沿いで汗と泥にまみれる労働、ポケットに詰め込まれた新聞が知らせるもの、閉じ込められるもの。  教会での上映会、黒人たちの歌声。霧のかかる教会の前を通り過ぎ中に入っていく囚人の群れ、鎖。 消される灯、ミッキーマウスの映画!?一人だけ観客の反応にビックリしていた監督も思わず笑ってしまう。嫌なことは映画を見て忘れてしまおう…今まで抑圧されていた分狂ったように笑う囚人たち。  墓参り、映画に刺激を受け、決意を固め、駆け寄り、帰還を知らせるもの、それを見た瞬間に仕事も忘れて夢中で駆け出し人をぶっ飛ばしながら爆走し、みんな大騒ぎで迎え入れる光景が笑って泣ける。  クライマックスに押し寄せる笑顔、笑顔、笑顔。あまりにの畳みかけにちょっと怖かったが、なぜ映画監督を続けていくのかという理由がこの瞬間に詰め込まれる。
[DVD(字幕)] 9点(2016-11-03 21:39:16)(良:1票)
245.  ペーパー・ムーン 《ネタバレ》 
友人であったオーソン・ウェルズのアドバイスを受けた、ボグダノヴィッチの傑作。 「殺人者はライフルを持っている」や「ラスト・ショー」、後の「マイ・ファニー・レディ」でホークスやプレストン・スタージェスへのオマージュを捧げてきたボグダノヴィッチ。本作はあえて白黒で撮られ、舞台を中西部に変更したのもボグダノヴィッチの懐かしき時代へのリスペクトだろう。 同時期に「都会のアリス」を撮っていたヴィム・ヴェンダースもさぞかしたまげただろうねえ。どっちも素晴らしい映画だけに。  少女が見つめるもの、葬儀、道の向こうを奔る車、他人の墓から花束をぶん奪って参列する男、エイメン(AMEN)。 風が吹き荒ぶ原っぱ、ポンコツ車で少女を連れていく旅の始まり。  この娘が最初可愛くないんだか可愛いんだか仏頂面、おじさんもかっこ悪いんだか何だか。 そんなデコボコな二人が徐々に表情を和らげ、距離を詰めていく様子が面白い。遠くから徐々に近づくショットで話し合う人々の表情を繰り返し強調する。  ドアを閉めて子供を送り出したら詐欺師の仕事開始。慣れなれしくお尻を触って追い出すのも、まだ単なる子供扱いだから。 風を受けて回転するエンブレム、ポケットに託される資金、食事を通じて親子のような関係に近づいていく二人。少女の叫びを正面から受け止め、拳を机に叩き込む口喧嘩。  車で街をめぐる旅、「隠れろ」と言った理由、新聞に刻まれた印、後部座席に積まれていたもの、真実を知って苦い顔をせざる負えない。 帽子を脱がないのはまだ他人だから、預かった子にベッドをゆずり自分は雑魚寝、煙草を吸うのは「子供扱いしないで」というアピールと背伸び。  胸に輝く星に遭遇するピンチ、思わぬ「パパ」の声。  仏頂面にはリボンをプレゼント、帽子を脱ぐのは親しくなっていくから、子だくさんには無料サービス、訪問先に拡がる憧れ、運転中の喧嘩。  帽子を投げつけズボンだけ脱いで寝る男を他所に、箱の底から探し出すもの、鏡を見ながらアクセサリーや香水なんか付けたりしてにんまりするのが可愛い。 床屋、男の子じゃないもん(ドアを蹴り開ける)、札束とレジ打ち機の数字、必殺泣き脅し、書かれた文字、新しい“ドレス”。  遊園地、わたあめ、親子のように「パパ」にねだり、微笑む月は待ち続ける。  ハーレム、女と荷物を乗せて走る横移動、詐欺師しか注意しない喫煙(当たり前のように火を貰うなww)、席を取られ、付き合いの長い男を奪られ遠くで座り込む嫉妬、女どうしの説得。 揺れ動く腰を見つめる野郎どもに呆れ、独り寂しく煙草を吹かす。  ホテルでの一件はサスペンスフルな展開に。 暖房器具をよじ登り、窓の先から覗いたもの、朝食の間に行われる共謀、ホテルの受付から引き出す情報、原稿を作る練習、階段を登ったり降りたりを繰り返し、ドアの前に置かれる贈り物、交わされる視線、ドアの間から覗く視線、手を振り合う別れ。  煙草をやめるのは男を「パパ」のように慕い親子のような関係になっていったから。開かれたドアから出る者、窓から見つめるもの、追跡、茂みから覗くもの、開けられるもの、渡されるもの。  侵入、接近と交渉、運び出されるもの、近づくもの。闇夜で不気味に光る煙草の火。  保安官たちとの遭遇からホークス映画さながらのスリリングなアクションも展開される。 後ろからジリジリ近づく音、ライトが光り音が鳴り響くのは存在を知らせるため。箱、運ばれてくるもの、差し出す両手、弾を確認し構えられるショットガン。 帽子に隠される“顔”、容赦なくひっくり返され砕かれ放り投げられるもの、帽子が掴むもの。  廊下のコーナーで一瞬見せるジョン・フォード「駅馬車」のジョン・ウェインを思い出すようなショット、コーナーを曲がったら駆け出し階段から落とされるもの、車に乗り込んだら猛スピードでぶっ飛ばして走り出せ!河の前で急カーブ、警察とのカーチェイス、障害物がありゃ斜面を登り追い越す。  追手を撒くための車探し、挑発的な交渉と決闘、一撃。  受け継がれるエンブレム、ドアが外れるようなオンボロ、運転を任せ後押しするようになった信頼関係。  扉を開けた瞬間に待つもの、先回り、鬼ごっこ、路上から飛び降りる追跡の行方。  ボロボロになっても送り届けられるもの、座席に残された贈りもの。  サイドミラーに映るもの、投げ捨ててもまた拾い上げればいい、抱え込んで乗せてやればいい。車は旅人たちを誘うように坂を走り出し、道の彼方へと消えていく。
[DVD(字幕)] 9点(2016-09-28 16:15:12)(良:1票)
246.  ポセイドン・アドベンチャー(1972) 《ネタバレ》 
CGも発達していない時代にこんな凄い映画を造りやがった!!  ポール・ギャリコの原作をここまでリアリティのある大作に仕上げた超A級のパニック映画。  「あんな沖にいて巨大な津波に襲われるのか?」という疑問を破壊してくれる造り込み。  いや、あの時代だからこそやる意義があったし、あの時代のうねりがこの映画を産み出せた。  舞台は大洋にポツリと浮かぶ豪華客船。 逃げ場の無い海上、「方舟」は一瞬にして巨大な「棺桶」と化す。 甲板が地獄で船底が天国という皮肉。 船を大津波でひっくり返すって発想が面白い。 実際こんな目に遭ったら「悪夢」だけど、映画としてならやってみたい魅力的な「夢」だ。 天地逆転した船の中でパニックに陥る乗客、冷静な判断で生き残っていく人々。 押し寄せる海水、爆発で揺れる巨船、そして試される人間の尊厳。 極限状態で生き残ろうと必死に抗う人々の力強さ、死。 生き残るはずだった者、死ぬ運命にあった者、その容赦の無さ。  撮影も命懸け、俳優陣も持てるポテンシャル全快で命懸けの熱演を魅せてくれた。  今でもジーン・ハックマン演じる牧師の名ゼリフが聞こえてくる。 「主よ、助けてくれとは申しません。どうか邪魔はしないで下さい・・・!」
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-06 01:53:21)(良:1票)
247.  恐怖の報酬(1953) 《ネタバレ》 
クルーゾーは「悪魔のような女」の方が好きだが、この作品も傑作。ねっとりした恐怖を味わうアンリ=ジョルジュ・クルーゾーの問題作。 ストーリーは至極単純、職にあぶれた男たちが「金のためならなんだってやる」という映画。 金も無く餓死するくらいなら、死んでもいいから一時の金と食事にありつける仕事を引き受ける。それがこの街の男たちだ。 ファーストシーンから素晴らしく汚い(褒め言葉)出だし。虫の群れにそれで遊ぶチ●コ丸出しの子供。 一瞬「これ別の映画?」と戸惑ってしばらくすると、おっぱいの飛び出そうな女の子が酒場の床を拭いているではないか! よかった!フランス映画だった!!(安心するところがおかしい)  最初1時間はひたすら登場人物の掘り下げ。 この丁寧すぎる掘り下げが後の恐怖を盛り立て、尚且つ酒場での緊迫したやり取りや燃え盛る油田の描写など退屈させてくれない。 毒蜘蛛?そんなもん足で殺っちまいな!  そして残り1時間30分に渡る恐怖の大仕事。 油田の火災にはニトログリセリンの大爆破が一番(どういう事なの) わずかな振動でも全てを吹き飛ばす悪魔の液体ニトログリセリン。 時限爆弾はまだ猶予があるが、今度の爆弾は何時でも運び屋を皆殺しに出来る。常に体にまとわりつくような粘っこい戦慄。 “橋”のスリリングな出来事からマリオとジョーのコミカルなやり取りで癒された。 もう完全にヒロインですジョーのおっちゃん。 仕事を受けた運び屋は二組、ニトログリセリンという爆弾は人の心も破壊するのか? しかしニトログリセリンは岩も破壊すれば、人の心の壁も破壊し、一時の安息も破壊する・・・恐怖を味わう間も与えずに。 爆風で吹き飛ぶ巻煙草、焼け焦げた爆発の跡の生々しさ、屍人の骸が眠る黒い沼、ぶらんぶらんの足、そして踏ん張る杭。 それでも男たちは仕事をやり遂げる。たとえ最後の一人になろうとも。 ただ一つ言えるのは、爆弾が人を殺すのでも、車が人を殺すのでもない。 それを扱う人間が一番の殺人者なのだから。 ・・・でも正直言わせてくれ。あんな終わり方したら恐怖を通り越して笑っちまうよ。だからこれだけは言わせて欲しい「クソワロタ」と。 何だったんだよ今までのカッコイイ主人公は。俺も思わず卒倒したくなったわ。俺の涙を返してくれ。 そんなワケで、俺はウィリアム・フリードキンの「恐怖の報酬」の方が好きです。
[DVD(字幕)] 9点(2014-06-07 23:48:18)(良:1票)
248.  イングロリアス・バスターズ 《ネタバレ》 
タランティーノ流「地獄のバスターズ」×「特攻大作戦」 眼には眼を、歯には歯を、虐殺には虐殺を。 冒頭の床下への“死刑執行”、死刑執行人(ハングドマン)たちに復讐を誓う少女。 タランティーノの長回しは、眠ろうとする瞬間に叩き起こすような溜めに溜めて溜めた破壊力を味あわせてくれる。 マカロニウエスタンのような西部劇かと思えば、エルンスト・ルビッチのような洒落たコメディになったり、最後の最後でロバート・アルドリッチの最高にゲスい戦争映画になったりと。 とにかくブッ殺してブッ殺してブッ殺しまくる戦争復讐活劇「イングロリアス・バスターズ」。 戦いに卑怯もクソも無いぜヒャッハーってとこが好きです。 女性陣も最高にビッチで素敵ですね。 ナチスに虐殺された者達のために自らブッ殺し返すバスターズたち。 死を恐れない彼等はどんな死地にも飛び込む。 一方、復讐を誓う娘もまたその時を待って待ち続ける。 映画という大衆の心に火をつける火薬、復讐を望む2つの火薬、3つの火薬がクライマックスで木っ端微塵に炸裂する瞬間は凄まじい限りだ。 クリーム・ブリュレに煙草捨てるようなクソ野郎は死んで当然(意味不明)。 食い物の恨みが加算されました。 黒人の話は後の「ジャンゴ」に繋がる部分。 指やアクセントの違いで正体がバレてしまう瞬間の戦慄、一瞬で終わる銃撃戦の破壊力!! 皆さんもその国の習慣と発音だけは正しく覚えましょう。 G.W.パプストが出るならこの映画の元にもなったエルンスト・ルビッチやフリッツ・ラングの話題もして欲しかったというのは欲張りか。 「国家の誇り」撃ちすぎバロス。 まさかゲッペルスやヒトラーまであんな事やこんな事になっててクソワロタ。 歴史的に全滅だから結果オーライ!! 最初から最後まで退屈させてもらえなかったぜ。タランティーノ本人は長い間暖めた最高傑作といっている。俺もそれくらい好きな映画だ。 少なくとも「キッド」がチャールズ・チャップリンの最高傑作の一つである事は確かだぜ。 ・・・え? 何でチャップリンが出てくるんだって? それが知りたきゃ、映画館の前で女性をナンパするドイツ兵の声を聞きにこの映画を見やがれっ!
[DVD(字幕)] 9点(2014-10-05 17:42:22)(良:1票)
249.  誓いの休暇(1959) 《ネタバレ》 
延々と続く白い1本道、そこを一人歩く黒いスカーフの女性。ナレーションによって女性と、その女性が待ち続ける“男”の話が語られはじめる。 この映画、水がところどころで印象的に映される。 川の水際で進軍する兵士たち、旅人たちを癒す水道水、行き先を阻む水溜り、ぬかるんだ泥水、列車の蒸気、人の汗、そして流される涙、涙、涙・・・。 舞台はナチスとソ連軍が死闘を繰り広げる戦場へと映り、アリョーシャという名の一人の兵士が戦車に追われる場面となる。まるで怪物のようにアリョーシャを追いかける戦車。モチロン操縦者の顔は映されず、アリョーシャは偶然にも拾った武器によって“英雄”になってしまう。余りに出来すぎた戦果が、後の悲劇をより際立たせる。 思わぬ幸運がくれた休暇。だが、日数は少ない。アリョーシャは無事母の元に行けるのだろうか。タイムリミットが刻々と迫る。 この映画は、戦場の恐怖を描く映画からロードムービーに切り替わっていくが、それでも戦火はアリョーシャの故郷にまで拡がっていくのだ。 旅先での出会いと別れも印象的だ。 列車で交わされる談笑、片脚を失った夫を迎え入れる妻、貨物列車での出会い。 絶えず運動を続け行き先への距離を縮める列車は、男女の距離も縮めて行く。そんな二人も、別れを惜しんで旅を続ける。列車の看視兵との“取引”も面白い。 行き先々の街も空襲で廃墟と化し、列車を運ぶ橋すら人々から奪い取る。重傷を負っても生き延びる人もいるし、キレイな顔のまま死にゆく人々もいる。 アリョーシャの心に“折れる”名も無き車の姿、音楽の畳み掛けが卑怯すぎんだろチクショウ。 母親が駆け、それに気付いたアリョーシャも車から降りて駆けより、熱い抱擁を交わす・・・ああ、再会するという事がこんなにも嬉しい事だとは。 だが、戦争という見えない糸が、アリョーシャを再び戦場に連れて行ってしまう。それでも、アリョーシャは誓い、母は待ち続けるのだろう。たとえ二度と戻らないとしても・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-30 09:42:53)(良:1票)
250.  ピクニック(1936) 《ネタバレ》 
ジャン・ルノワールはこの「ピクニック」が初めてだった。これは俺が一番好きなルノワール作品。ルノワールは「ゲームの規則」や「大いなる幻影」よりもこういう小品の方がメチャクチャ面白い。 とても優しく切ない映画だが、ルノワール特有の水、水、水の描写が最も際立った映画だと思う。40分の短い時間にとても楽しく、とてつもなく悲しい恋の話が描かれていく。   短編映画の魅力が何なのかというと、時間に追われるスリル、時間と格闘するような緊張を味わえるところ。 それは中篇の犯罪映画「十字路の夜」における高密度のスリルにも言える。   この映画は川の流れの美しさで癒されるが、同時に許されぬ想いに身を焦がす男女の愛をサスペンスフルに描いている部分もある。「大いなる幻影」で銃に狙われる一瞬の緊張よりも、男女が一線を超えてしまう一瞬の方が緊張する。   緩やかな流れる川は、結ばれない男女を冷めた眼で見守る傍観者(監督のルノワール自身)でもあるようだ。 皆さんもポイ捨てだけは絶対しないように。物も女性も。   この映画では傍観者の川も、「南部の人」や「スワンプウォーター」では容赦なく人々に牙を向ける。  この作品の後に「ゲームの規則」とかを見るのがいつも楽しみです。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-27 00:47:24)(良:1票)
251.  ビッグ・パレード 《ネタバレ》 
反戦のメッセージを込めた戦争映画の傑作であり、前半1時間はヴィダーらしいメロドラマとして面白おかしく過ぎていく。後半1時間は戦場における殺し合いへ。 ラオール・ウォルシュの「栄光」も女を取り合う軽妙な光景から殺伐とした戦争の光景へと切り替わっていた。  町、工場、溶鉱炉、ビルの建設現場。この何気ない風景が後の「摩天楼」へ、髭を剃る黒人の姿が「ハレルヤ」へと繋がっていくのだろうか。    煙を噴き上げる音、煙、煙、煙の噴出と新聞が知らせる戦争の足音。玄関先での別れの挨拶、戦場に行く人々を見送るパレードはお祭り騒ぎ。  入隊したての行進が戦場への行進へ。行進を見送る群衆、油断すればすぐ泥の中、穴掘り、穴倉作り、婦人とのやり取り、女目当てでやる気UPは良いが上官に土をブチまける勢いはやりすぎw  送られてきた食い物、雑にちぎりながら仲良く食べ合う、川で洗濯子供たちと空の樽を追いかけて遊ぶ、樽をかぶっての運命の出会い。  穴から覗いて挨拶、ほどけたゲートルが語るもの、川から水を組んでシャワーにデート、次々とナンパしにくる仲間たちは食事のラッパの音で慌てて戻っていく。そりゃあんな魅力的な谷間の女性(ry   チューインガム、兵士たちの余興、酔っ払い、靴を磨いていたら藁が山のように落ちてくるシーンに爆笑、サーベルを振り回す元気な爺さん。  酒蔵に侵入して飲みまくる仲間、揉みくちゃ、犯人に間違えられ大慌て、酔いすぎて船で逃げるフリ。そこは土の上だぜ酔っ払いども、大騒動に乗じて逃げる若き恋人たち。   故郷からの手紙、写真、間違えて上官を蹴ってしまうやり取り、階級章、違う手紙、お礼言われちゃったよ・・・。    ジープが知らせる風雲急・蝋燭を消し町の人々との別れを惜しみながら去っていく、群衆が流れていく最後の口づけ。  「必ず生きて帰る!忘れないよ!」足にしがみついてまで惜しむ、鎖、靴や時計を投げ残す、ジープが延々と連なるスペクタクル!   いよいよ戦場だ。 前線へ!前線へ!軍用機たちが空を駆け抜ける!  行進中の兵士たちに襲い掛かる機銃掃射、地上からも応戦、負傷して脱落できた奴らはまだ幸せさ。   銃剣をつけて敵が待ち構えるであろう森を突き進む。道を駆け抜けるバイク、地面に転がる死体、後ろで静かに散っていく仲間たち、狙撃の恐怖。   機関銃が淡々と殺していく、手榴弾、砲弾が飛び交い森が消し飛んだ最前線、ガスの気配に気づいて急いでガスマスクをするスリル。  戦車、見えてきた塹壕、夜中に複葉機が飛ぶ恐怖、挑発、砲撃に怯えながら塹壕で食事をする最後の団欒、銃剣で的を作って的当て、“死番”。  照明弾が照らす黒い影、奇襲、仲間の死が恐怖を打ち消す、死への直行、絶叫、暗闇で表情を見て殺せなくなる、灯りが見えないように煙草の火をつける。   闇の中への突撃、砲弾の雨、激しい閃光・・・まるで悪夢から目が覚めるように目覚める。蠅が顔を覆い、隣には怪我に苦しむ戦友たち。   町を去っていく人々、廃墟になった市街地で叫んでも返ってこない愛する人の声、そこになだれ込む軍隊、砲撃、過去の思い出。  畑仕事、残していったチューインガム・・・残った思いでもやがて口の中に溶けて消えていく。山の上に現れた人影、胸のざわめきで思わず駆け出す姿・・・!
[DVD(字幕)] 9点(2015-07-14 13:26:53)(良:1票)
252.  遊星からの物体X 《ネタバレ》 
クリスチャン・ナイビー&ハワード・ホークスによる「遊星よりの物体x」の神リメイク。 ジョン・カーペンターはホークスの傑作「リオ・ブラボー」にオマージュを捧げた「要塞警察」という傑作を撮っているし、本作もホークスへの尊敬の念を強く感じられる見事な傑作である。 ファーストシーンの謎の円盤からはじまり、物語は南極という陸の密室で展開される。 VHSのデッキか・・・オレもガキの頃はギリギリビデオだったっけか。 謎のヘリ、それから逃げるように走る謎の犬。 「本物の犬では無い(セット的な意味で)」 それにしたってどんだけ射撃下手なんだよ・・・テメえらのせいでコッチの基地にも飛び火だぜ。 音信途絶、オマケに言葉が通じない事の不幸。不幸が重なり、またも悲劇は起きてしまう。 「ゴジラ」といい「キングコング」といい、好奇心は解るけど人が死んでいるという事をもう少し考慮して欲しいもんだ。 「エイリアン」と似たプロセスだが、リメイク元の方がずっとご先祖だし、本作と「エイリアン」は徹底的に違う。 「エイリアン」は他の惑星という、別の宇宙船が助けにくる望みが絶望的にない。 今作は地峡上なので助けがくる望みがある反面、感染が拡大してしまえば地球上にまで拡まってしまう。物体Xは人体に入り込んで“同化”するという。 「既に仲間の一人が同化しているのでは?」 クルー全員が疑心暗鬼だ。緊張感が尋常ではない。 嵐の前の静けさ・・・そして次々と巻き起こる物体Xの恐怖。 犬好きが見たら発狂しそうな場面、 ある者は本当に狂い、 1人、また1人散っていく仲間たち。 物体Xの造詣がスゲーリアルで吐きそう。(褒めてる) ドクターの判断は正しかったのか間違っていたのか。 “検査”のシーンは心臓バクバクだったよ。解っていてもこの恐怖、この面白さ。 どうせ死ぬなら道連れにしてやらあっ!吹っ飛べクソ野郎があっ!! 南極の空にあがる巨大な爆煙、それで助けが来るか来ないのか。あとは神のみぞ知るところ・・・。 カーペンターの良心は、この場に女性を巻き込まなかった紳士的なところにあるのかもな。(何じゃそりゃ)
[DVD(字幕)] 9点(2014-08-15 16:15:57)(良:1票)
253.  太陽を盗んだ男 《ネタバレ》 
「原爆」をテーマにした日本映画では「ゴジラ」に並ぶ傑作だと思う。  時計の音、原爆の実験、爆発、日の出、双眼鏡が覗く原発。  その光景とは打って変わって満員電車で大あくびをする城戸。「風船ガム」の仇名で呼ばれる教師、風船ガムは原爆の暗示? 休み時間は一人で壁当て、フェンスを雄叫びをあげながらよじ登る。男はいつそのエネルギーを爆発させるかその機会を待っていた。  家にギッシリと詰め込まれた野望の塊。 機材の山、出入りする猫に殺虫剤をかけて気絶させてしまう!飛び交う蚊が季節を語る。猫の次は警官をシュッー!   男が牙を研いでいる間に鬱憤を爆発させてしまったバスジャック犯。 修学旅行、機銃と手榴弾で乗り込んでくるオッサン、皇居に手榴弾wwwすげえ映画だな。序盤20分の強烈さ。   そこで山下警部こと菅原文太の兄貴の登場だ!「県警察vs組織暴力」の刑事役もメッチャ良いんだよなあ。 武器を置いてたった二人で乗り込んでいく、隙は絶対に見逃さない、男だけサークルを組むように連れて行く、“約束どおり”狙いをつける狙撃手、捨て身の行動。どんな奴だろうと怪我人は怪我人・・・カッコイイ。   それが城戸にとっての“起爆装置”だったのかも知れない。ひたすら原爆作りに打ち込むシークエンスを淡々と積んでいく描写。  原爆実験の様子、肉体改造、ベランダの塀の上でイメージトレーニング、何処までもスリルを追い求める狂気。 マスクを被り、潜水服に身を包み、海を泳ぎ、容易に侵入してしまう! 監視カメラだけが見た原子炉の棒を抜く瞬間の緊張、警備員たちとの戦闘。  発電機の爆破、想像以上に厳重(笑)、授業内容もどんどんおかしな方向に向かっていく。  のんきなラジオ、「鉄腕アトム」の歌とともに手作りの防護服、液体、放射能測定器、小さな小さな原爆製造工場、誰も立ち入れない猫でさえ。  ビールを飲み、TVを見ながら原爆を作っていく。その油断と爆発、そして彼も「被爆者」となってしまう。瞬間的に放射能を吹き出す事を物語る針、針、針。 完成までの作業もほぼ無言で続けられる。生まれたての汚れた鉄球がナイフで削られて磨き上げられ、不気味な光沢を帯びていく。 作ったものよりも失ったものの方が大きい。ぬこおおおっ! まさかの梅干しは“フェイク”、粘土、電池。一人で盛り上がる有頂天、ガイガーカウンターをマイク代わりに舞い上がる。   残り1時間30分は警察との手に汗握る駆け引き。 幾度もあらわれる太陽のイメージ、あえて爆弾を置いていく挑戦、現物による脅し。  腹の中に抱えたとんでもない爆弾、易々と国会に侵入、易々と監視、口調による攪乱、ボイススクランブラー。  9つ目の核所有“国”、ぽとりと落ちる髪の毛が肉体を蝕む放射能の恐怖を語る、爆弾を転がして子供のように、いや愛した猫のように遊ぶ。 パーティーで親交を深めた過去、屋上で座り込んで話し合う交渉決裂、両手で掴んでさりげなく胸にタッチ、いつの間にか接点を持つ人々。  延々とついてくるディスクジョッキーと口づけを交わす、海辺、女も見る抜けた髪の毛、サングラスという仮面、したたる歯茎の血。   デパートでの追走劇も熱い。 電話線をカットする、覚悟、机の下、札の雨、警官もヤケクソ、あふれ出る人の津波、徐々に放射能に侵されていく肉体。   奪還ターザンで大暴れ、カーチェイスをラジオ中継、「勝手にしろ(勝手にしやがれ)」、諦めない文太の兄貴は不死身だ!ヘリに捕まりながら執念の追跡!  残り20分のラストバトル。  プールを地獄にかえる破片、新聞に隠された凶器、手錠つけると捕まったヤクザにしか見えねえ兄貴、嘔吐の隙に掴む起死回生の武器、屋上での綱引き、どっちも身も心もボロボロだ。   「さあ・・・いくぞお9番」 嘘だろ・・・まだ手がピクピクしてるぜ。音だけが語る結末・・・。
[DVD(邦画)] 9点(2015-07-14 13:43:58)(良:1票)
254.  ミルドレッド・ピアース 《ネタバレ》 
「深夜の銃声」または「偽りの結婚」の題でも知られるフィルム・ノワールロマンス。 カーティスの最高傑作は「カサブランカ」なんて退屈なメロドラマじゃない。 高密度でフルスピードの本作こそ、そしてジョーン・クロフォードにとっても最高の1本! これが本当にあの臭い映画を監督した人間が撮った映画なのだろうか。信じられないくらい面白いのである。何故こんな傑作が日本ではVHSどころかDVDもまともな形でリリースされていないのだ!これほど頭にくる事はないぞ!  まず波と共に現れ波にさらわれていくオープニングクレジットからして面白い。  この映画は鏡の映画だ。 年頃の娘が見つめる鏡、下から女の表情を鏡のように映すもの、弾痕が刻まれる鏡、遊んだ後に結ばれた髪をほどく女を映す鏡。   摩天楼、銃撃からはじまるファースト・シーンの衝撃!女の名前を一言もらす最期、鏡に刻まれた弾痕。 走り去る車、波止場、橋の上を歩く女の悲しき表情、ミンクのコートは遠出を予定している証。  手すりを叩く音、窓を叩いて女を呼び止める男。   机の下に放置される男、乾杯、男のコップを叩き落として口づけをことわる、、螺旋階段、ドアを閉めて男を密室に閉じ込め“擦り付ける”、倒れた電燈によって発見される遺体、自ら電話線すら絶ってしまう。    実に鮮やかな、見事なスタートダッシュから始まった12分間。  そこから警察署でめぐりあう知り合い、取り調べ、焦り 新たな男の登場と動揺。    20分を境に始まるミルドレッドの回想。  初っ端から険悪な雰囲気、子供たちとのやり取り、写真、引き出しにしまわれた凶器。  肉欲を求める野蛮な訪問者、ローブの紐をやらしい手つきで触ったり引っ張る素振り。女はそれを嫌そうな表情で払いのける。口づけ、肩を撫で回す。    二階には幼い娘と年頃の娘が二人、娘の尻を優しく叩く時の愛情とは大違い。     娘たちのために仕事につく母親の姿、着替える仕草、胸元がちょっとはだけているだけなのにあんなにも色っぽい。クロフォードの素晴らしい演技。  「風と共に去りぬ」やジョージ・キューカーの「ザ・ウィメン」でも見たことのあるような黒人の女中(バタフライ・マックイーン(Butterfly Mcqueen)の方。ハティ・マクダニエルじゃなくて)。   スカートで膝を隠す一瞬、何度も交わされる口づけ、家族がいない間の情事、水着で他の男と泳ぐ、謎の音、男が見てしまった女の帰り際。  浮気の時に起こった悲劇、メーターが物語る命が消える瞬間。  女は悲しみを忘れるために前にも増して働く、プレゼントをゴミ箱に捨ててしまう野蛮人、注文で敷き詰められた回転からメモがなくなりお開き、見てしまったカウンターでの口づけ、何度も叩き落とされるグラス。   30分後には再び現代に戻ってくる。 また語られる過去、車、娘もどんどん破滅へと向かって歩みを加速させる、狂っていく娘の活き活きとした表情よ!  黒衣、女が破り捨てれば娘が頬をひっぱたく、亀裂の入る瞬間、列車、舞台の上で踊る目を疑う光景。  幼い娘の写真、一時の安息、誕生パーティーの裏で行われる蠢く黒い影、電話と決意・裏切りへの銃撃。家族を救うための身代わり、受話器の前でのやり取り・・・何もかも素晴らしい。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2014-05-13 22:42:13)(良:1票)
255.  キートンの蒸気船 《ネタバレ》 
これはね、もうアレですよ。終盤の台風が直撃するクライマックスはキートン映画最強の部類。 キートンがあんなにカッコ良く見えたのは久々だぜ。 「蒸気船関係無いやん!」と思っていたらビックリ。なるほど取って置きの切り札として船を利用するアイデアが秀逸。 そんでもって最後の最後まで海に飛び込むキートンはカッコ良かったぜ。最高。 これに匹敵する蒸気船映画はジョン・フォードの「周遊する蒸気船」だけやね。
[DVD(字幕)] 9点(2014-04-05 10:05:34)(良:1票)
256.  ダーティハリー 《ネタバレ》 
個人的にシーゲルは「殺し屋ネルソン」が最高傑作だと思うが、イーストウッドとのコンビはコレがベスト。 赤狩り(レッド・パージ)の嵐が吹き荒れる時代から戦い続けてきたリベラル派シーゲル、そしてスパゲッティウエスタン(マカロニウエスタン)を経てアメリカに戻ってきたアンチ・ヒーローが結んだ師弟関係。その二人が70年代に蘇らせる刑事アクション。 輝くバッヂと法の文章、ドス黒いサイレンサー付きライフル、スコープに映る標的、襲い掛かる凶弾…! 黒いサングラスで威圧するように登場するハリー・キャラハン。 ハリーは手がかりを得るためにひたすら歩き壁をよじ上る。どんなにボロボロになり砂の山に埋もれようとも。ペンが拾い上げる証拠、残される犯人からの挑戦状。ここからクソ野郎スコルピオとハリーの孤独な戦いが幕をあけるのである。  やさぐれ警官がやさぐれたのも腐った世の中で自分の意思を貫き続けたためであろう。むしろ汚名を背負ってまで仕事を、肌の色に関係なく平等に嫌い、思いやり、鉛弾をブチ込み、理由なく殺された人々の無念を晴らそうとするハリーを俺は心から応援してしまった。その姿勢は映画監督として「許されざる者」や「グラン・トリノ」といった傑作でも貫かれる。  食事中に事件が起きればマグナム片手に車ごとブッ転がす!水道が噴出する中をゆうゆうと、のしのしと歩き、撃ち尽くした拳銃の銃口を向けてショットガンに手をかけようとする犯人に警告を示す。犯人はそのことを知らない。 「ホラ、入ってないだろ?」って笑顔がたまらない。  対するスコルピオの次の標的を物色し不気味な笑みを浮かべる狂気。 ヘリによる捜索、夜の市街を淡々と走り、窓から覗くもの、窮地と救助、イーストウッドが監督したビルにおける説得場面。殴りつけて必死に抱え込む姿が面白い。 捜査とはいえ堂々と覗くハリーもやっぱり男。でも前の奥さんを気遣ってか再婚もしない。 ボルトアクションライフルによる狙撃とマシンガンによる銃撃戦、夜の暗闇で影が蠢き、あらゆる閃光が照らす。  脚に仕込むナイフ、バッグを抱えて公衆電話から公衆電話への移動、走り続ける追跡、トンネルでのひと悶着、銃撃戦、ナイフ。 恐怖の鬼ごっこ、人の人権踏みにじっといて弁護士呼べとか言ってるクズの脚の傷を踏みにじって何が悪いというのか!人質最優先で手掛かりを得るために殺さない、あるいは警察という組織を信じているからこそ法の裁きに委ねようとしたのかもしれない。 ボロクソになっても諦めないスコルピオのしぶとさもたまげたもんだ。  あの明け方に哀しそうに、疲れ切ってたたずむハリーの姿といったらないぜ。病院への見舞いとレディ・ファーストな気遣いは数少ない癒し。  信じていたものに裏切られる絶望、悪魔が世に再び解き放たれ再び犯罪が繰り返されるやるせなさ。  バイソンの群れ、バスという密室で子供たちに狂気を振りまき、橋の上から走行する車両に飛び乗り一騎打ちへ! 工事現場の狭い道におけるジリジリとした追跡のスリル、石を運ぶレール、開けた空間に見つける切り札あるいは逃げ場を失う選択か。冥途の土産に弾丸も星もくれてやる。  「真昼の決闘」のゲイリー・クーパーは、自分でまいた種によって民衆にも仲間からも見捨てられたことを“認めて”か、バッヂを地面に捨て自分を信じてくれた若妻と一緒に去っていく。 本作のイーストウッドは民衆を信じ、腐敗した警官と法に対しての怒りをこめバッヂを投げ捨て独り寂して去っていく。 「荒野のストレンジャー」で「真昼の決闘」のifを描いたイーストウッドだ。あの場面は完全に当てつけです(褒め言葉)。
[DVD(字幕)] 9点(2014-03-10 20:43:10)(良:1票)
257.  ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ/完全版 《ネタバレ》 
「ウエスタン」、「夕陽のギャングたち」から続く「ワンス・アポン・ア・タイム」三部作の終局。 個人的には「続・夕陽のガンマン」がレオーネの最高傑作だと思っているが、俺の一番好きなレオーネの映画はコレ。 ドラマ、アクション、緊張、緩急、密度、そして漢と女たち。その集大成とも言える傑作だ。 「ゴッドファーザー」が殺しの依頼から始まるのに対し、この映画はいきなり“滅び”のシーンから始まる。 人気の無い暗い部屋、女が一人部屋に入ってくる。女が明かりを付けると、ベッドには人の形を象った弾痕の跡が。その瞬間、男の写真立てを割る拳銃を持った男たち。男たちが写真の男の行方を尋ね・・・というファースト・シーン。 冒頭からショッキングな場面が続く。一連の殺し合いが終わると、映画は過去へ遡り、そして“現代”と行き来をはじめる。 クローズ・アップのくどさに辟易するが、そんな事は壊れた壁の隙間から過去に飛ぶシーンの素晴らしさが忘れさせてくれる。 現在のシーンは昔を尋ねる場面だけで退屈なものになるのかと思っていると、あの壁穴から一気に過去へのジャンプしたもんだから驚きだ。 もう退屈と感じるシーンは微塵も無い。美しさと強烈さを秘めた映像が見る者の心を最後まで掴んで離さない。 ヌードルスたちがギャングに成長するまでの青春の日々が一番好きなんだよなあ。 大人になりかけの子供と言いますか。 レオーネ特有の長回しも皆無に近いのが逆に好印象。 ヌードルスたちが成長して殺しの限りを尽くすシーンも好きだ。密告、裏切、下剋上。 綿の機械?工場での追走劇はカール・テオドア・ドライヤーの「吸血鬼(ヴァンパイア)」を何故か思い出した。吸血鬼は工場のおがくずの中で息絶える。 車上で“暴走”するヌードルスの愛。あえて合成の車外映像が、ヌードルスの愛がデボラの心ではなく肉欲、“偽”の愛情である事を暗示する。 何いかにも哀しげな音楽で誤魔化そうとしてんだよ。無言の「別れ」が終わりを物語る。 それとも、ヌードルスはデボラを巻き込まないためにあえて彼女の心が離れるような事をしたのだろうか。 禁酒法の終わりはヌードルスたちの友情の終わりも告げる。 コーヒーカップをかき回すシーンの異様な緊迫、一世一代の“大博打”、明かされる真実、ゴミ清掃車という名の霊柩車。ラストのヌードルスの哀しき笑みは忘れられない。
[DVD(字幕)] 9点(2014-10-09 21:51:30)(良:1票)
258.  キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン 《ネタバレ》 
壮大な鬼ごっこ映画「Catch me if you can(できるもんなら捕まえてみろ)」。 「007」が英国諜報員と犯罪組織の鬼ごっこ映画だった事を思うと、「インディ・ジョーンズ」シリーズも鬼が捕まえては逃げたりの繰り返しがあった。 今回は「インディ」みたいな「お約束」なんてない、実在したフランク・W・アバグネイル・Jrの事件を映像化したのだから。 「007」がシリアスとギャグの融合体だったように、この映画もレオナルド・ディカプリオがノリノリなコメディ映画だ。 オープニングのアニメーションから既に追いかけっこが始まり、クイズ番組のゲスト紹介みたいな映像が流れる。 航空副操縦士の“アバグネイル、”小児科医の“アバグネイル”、弁護士の“アバグネイル”・・・。様々な職に成りすまし、警察まで騙くらかして莫大な金を稼いでいく。父親譲りのアドリブやハッタリ・ジョークを駆使してどんな困難も掻い潜る。クリームがバターになるまで粘りに粘る。 総ては何もかも失った父のため、そして母のために・・・。最初は家族が元に戻りささやかな幸せを手に入れられればそれで良かったのだろう。 だが、知ってしまった金の味、女の味、愛情・・・家出少年の旅と犯行はどんどんエスカレートしていく。 「007」並のたらし&絶倫(ry サングラス付き眼鏡ってなんか良いよね。 親想いの手紙が仇になる瞬間、芽生えた愛情で女を置いていきたくないという葛藤・・・気が付けば、総てを失った自分がいた。 だが、ここで終わらないのがアバグネイルだ。 親を一目見ようとトイレから脱走してしまう凄さ。 騙す側から暴く側に変わっていく姿。 そこには良き友人を手に入れ精気が蘇った男はいても、総てを失い絶望に暮れる男の姿はもうなかった。
[DVD(字幕)] 9点(2014-10-09 23:47:42)(良:1票)
259.  大脱走 《ネタバレ》 
第二次大戦末期。  「史上最大の作戦」と言われたノルマンディー上陸作戦。その裏で行われた「史上最大の大脱走劇」!  前半2時間の“大脱走”をするまでの工程を積み重ねていく楽しさ・個性豊かな面々が脱走の一瞬に命を賭ける熱さ・ノルマンディーで戦う何万という仲間のため・一人のために体を張って叫んで、走って、戦い抜く魂!  それをもう1時間も追走劇の緊張と興奮を味あわせてくれるんだもんなー。お腹一杯ですよ。 人物の描写や脱走までの工程がとにかく丁寧。捕虜収容所の複雑な関係も面白い。みんな個性があってよく描けてる。  実際に戦争に言った強者どもがひしめく。みんな良い顔してるぜ。脱走のシーンも、少しずつ慎重にいって、そして一気に弾け飛ぶ。   特にヒルツの生き様はカッコイイ。 仲間のために何度でも逃げ、何度でも戻ってくる。かならず生きて。盗んだバイクでのチェイスも凄い。いつも浮かべる不敵な笑みが良いね。  ラストはとても悲しいけど、最後にヒルツが戻ってくるシーンを見るだけでも「また見たいな」と何回も思ってしまうのです。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 11:06:46)(良:1票)
260.  鶴は翔んでゆく 《ネタバレ》 
「戦争と貞操」の題でも知られ、「誓いの休暇」とともにソ連(ロシア)の雪解け時代を象徴する作品。 「誓いの休暇」が戦場から始まるのに対し、この映画は平穏な日常からはじまる。どちらも“道”を駆けたり歩く映画だ。 川沿いの道を元気よく駆ける二人の恋人たち、橋、空を飛んでいく鶴の群れ、 水をまく車が二人を祝うように走り去り、駆ける道は教会へと繋がるよう。森で追いかけっこ 階段 犬の声に警戒して男は隠れ、女は駆け昇る 男はそれを追う 道路は水に濡れて湖面のように拡がる ドアから現れる犬とその飼い主、リビングで眠る両親、恋人たちは互いの家に戻っていき、二人とも朝方のベッドに飛び込む。  前半は戦争に行くまでの過程を丁寧に描いていく。友人が知らせる徴兵、戦争の接近。  工場での労働、部屋の模様替え、足で踏みつけてSMプレイ? 薄暗い部屋に彼らの目元を照らすように日が差し込む。 愛する人に贈るリスの人形、出征祝いの食事会。  24分を過ぎたあたりから戦争の足音が徐々に近づいてくる。行進する戦車の間を縫うように走り抜ける!間に合うのか、間に合わないのか・・・。  詰めかける群衆、恋人を夥しい群衆の中から必死に探す、もう二度と会えないかもしれない、無情にも人々を引き裂いていくマーチ、放られたプレゼントは群衆によって粉々に砕け散る。 電話を終えた彼女は、土嚢と対戦車用の障害物が敷き詰められた道を歩く。街もいつ空爆されるか解らない。サイレンの音、防空壕、爆撃音。 消火活動にあたる軍隊、ボロボロになった建物を駆けあがり、ドアの向こうに拡がる崩れ落ちた空間、時計の針の音を、故郷が焼ける音に耳をふさぐ。  幾度もかける電話、爆撃が迫る中でピアノを狂うように弾く。「君が逃げないなら僕も逃げないぞ」と言わんばかりに。何故なら彼女を愛してしまったから。 目の前に落ちる衝撃!たなびくカーテン、割れる窓ガラス、衝撃的な接吻。 死を前に男は女に愛を求める。女はそれを拒むように幾度もビンタを食らわせる。荒ぶるBGM!  42分を過ぎたあたりで場面は戦場に移る。 負傷者を抱えながら沼地を突き進む男たち。ここでも爆音が絶えない、 写真、ハーモニカ、有刺鉄線、爆撃と銃撃音が迫る中を仲間を抱えて進むスリル、死に際の眼に飛び込む太陽の光、めまぐるしく男の脳裏を駆ける走馬灯、幻・・・。 戦場からの手紙、雪が降り積もる外、病院を手伝うのは負傷兵の中に恋人かいないか探すためでもある。看護婦とは異性に尿瓶をあてて貰うのは恥ずかしい男心。  機関車が猛然と疾走するように市内を走って走って走り抜ける。死への疾走、轢かれそうになる子供に気づいて我に返る。まるでサイレント映画のような早回し。 コップをスプーンで叩いてあやそうとする、リスの籠に敷き詰められていた手紙、男の頬を何度も殴りつける、ハーモニカの音色。 洗濯をする手にそっと口づけ、戦争の終結と凱旋、彼女は最後の最後まで走り続ける。花束を受け取ってくれる人を探して。 それを“譲って”いくシーンが本当に哀しくてねえ。そして鶴の群れは再び大空を翔んでゆく・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2014-05-20 18:58:37)(良:1票)

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