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プロフィール
コメント数 565
性別 男性
自己紹介 三度の飯より映画好きです。どうぞよろしく。
※匿名性ゆえの傲慢さに気を付けながらも、思った事、感じた事を率直に書いていますので、レビューによって矛盾が生じていたり、無知による残念な勘違いや独善的で訳分らん事を書いているかもしれませんが、大きな心でお許し下され。
※管理人様、お世話になっております。
※レビュワーの皆様、楽しく読ませて頂いております。

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21.  インクレディブル・ハルク(2008) 《ネタバレ》 
例えば工場で男にしつこく絡まれる女性に助け船を出すシーンのノートンの佇まいが、危険な香りがあってハルクを連想させます。そしてハルクの顔が映るファースト・ショット、大学内での戦闘で檻を彷彿させる渡り廊下で変身してしまうシーンで煙の中から出てくる手、あるいはヘリから落下した後、地面から突き出てくる手などのハルクの登場のさせ方、等々の瞬間瞬間は印象的です。また、人物設定がはっきりしていて、ノートンは科学者としての責任を果たすためヘリから飛び降り、ティム・ロスは戦士として最強の対戦相手との勝負を求め無線機を外し命令を無視し、リヴは愛する者としてノートンに尽くし肉体関係がもてなくともさめざめと泣いたりしません。誰もが(リヴの新しい彼氏までもが)見返り無しに自らの進むべき方向へ迷いなく前進し、行動基準がぶれないので見ていてスッキリします。・・・しかし、全体的に平坦で盛り上がりがなく、最後の街中での戦闘シーンもいまいち芸がなくて面白味に欠けていますし、わざわざノートンやティムを起用しているのだから変身後も少しは原型を感じさせて欲しかったです。それからノートンとリヴが久方ぶりに再会し、雨の中で抱き合うシーンにキスがないのは物足りません。もちろん、そこには二人の誠実さや時間の隔たりがあるのでしょうが、物語に大きく影響を及ぼしているわけではないので、あれはキスがあった方がずっと感動的だったと思うのです。
[映画館(字幕)] 7点(2008-08-07 18:37:48)(良:3票)
22.  狩人の夜 《ネタバレ》 
恐怖映画としては、もはや風化し古臭い印象を拭い去ることはできません(悪夢的幻想としては素晴らしい)。しかしながら本作は、脳裏にバッチリ焼き付くような陰影に富んだ映画的な場面の連続なのです。例えば、川に沈む母親の死体の奇妙な美しさは特筆すべきものですし、ロバート・ミッチャムと子供たちの食卓と地下室での攻防やボートでの脱出劇(移動感も良い)、あるいは馬でゆっくり追跡する不気味なミッチャムを目撃する納屋のシーン、そしてミッチャムとリリアン・ギッシュ!との対峙等々、設計も実に見事です。あざとい監督だったら、ミッチャムが家庭に入り込み母親が消されるまでの不毛な心理劇に時間を割いていたでしょうが、そんなことはせず常に転がし続けたところに面白さがあるのです。
[DVD(字幕)] 8点(2012-03-02 18:38:18)(良:3票)
23.  ドラゴン・タトゥーの女 《ネタバレ》 
本編の謎解きサスペンスは面白くなりそうで突き抜けてはいきません。それなりの要素をちりばめながらも、例えば、一癖も二癖もありそうな一族たちの人物描写が乏しいですし、ミスリードするようなトラップも無く、あるいは橋だけで繋がれた島というシチュエーションも携帯が圏外という精神的孤独感を示すだけで機能し切れているとは言い難いです。  ・・・しかし、リスベットの魅力が集約されているエピローグには参ってしまいました。リスベットがダニエル・クレイグの敵を葬るため(方法論が分からないがそんなことはどうでもいい)、上品なブロンド美女へと変身し、かと思えばカツラをパッと脱ぎ捨てドラゴン・タトゥーの女へと戻りタバコをスパッとやる…。この繰り返しがしばらく続くのですが、ここで初めて彼女の快活さを垣間見て格好良いと思い心を動かされたのです。しかも全て片付けば、威圧感たっぷりの風貌とは裏腹に純真な恋する乙女の姿まで見せる。雑誌社の表通りでクレイグのクリスマスの予定を尋ねるリスベット、ビルに配された大きな窓からクレイグの愛人がその様子を堂々と目撃するのに対し、クリスマスにリズベットは影から彼らの仲睦まじい様子を目撃し、用意したプレゼントを投げ捨て走り去る…。いじらしい彼女に胸がキュンとしてしまったのです。フィンチャー監督、恋愛映画もいけそうです。
[映画館(字幕)] 7点(2012-02-24 18:48:16)(良:3票)
24.  イングロリアス・バスターズ 《ネタバレ》 
「トゥルー・ロマンス」のクリストファー・ウォーケンの役を、タランティーノお気に入りのティム・ロスが演じたらこうなるというような不気味な〝ユダヤ・ハンター〟ことランダ大佐の人物造型が秀逸です(役者の力によるところも大きい)。 多言語にし会話劇を最大限に活かしているのもタランティーノならではでしょう。ということで第1章が一番のお気に入り(地下酒場のシーンも素晴らしいが)。野っ原の一軒家でシーツを干していたら遠くからナチがやって来る入り方からして上手いのですが、さりげなく美しい三人娘たちを登場させたりして不吉な前兆を感じさせたりするもの憎いです。さらに尋問が開始されれば何気ないコチッコチッっという時計の音や万年筆が紙をこする音などをしっかり入れて一層緊張感を高めています(残念なことにDVDではあまり聞こえない)。大佐の手の動きなど何気ない仕草も面白いです(これは誰かと対峙し、こういう仕草が始まるとドキリとさせられるほどだ)。また第1章のラストでは、ドア越しに娘が走って逃げる小さな姿が映し出され、次には大佐が狙いを定める姿が映し出されます。これで人命が虫ケラの如く消されてしまうのねと思わせるのですが、次には娘が大きく映し出され、もしや彼女は虫ケラじゃないのかも?と思うと無事に逃げ切れる…決して会話劇だけではなく、画面の構成も見事です。
[映画館(字幕)] 9点(2009-11-24 18:38:33)(良:2票)
25.  モダン・タイムス 《ネタバレ》 
初めて観たチャップリンの作品が本作。声を発しなかったのでまだトーキー以前の作品かと思って観ていたら最後に突然歌い出したので驚いた驚いた。今までずっとダンマリ決め込んで満を持してここぞと言う時に肉声を発し〝あっ〟と言わせてしまうなんて憎い。しかも字幕が出なかったので何故?と思い耳をそばだててみたが英語ではく仏語や独語でもない。スペイン語のようではあるが言語不明なのだ。これは一本とられた。先に歌の概要を説明してしまい音声を取り入れつつもサイレントと同じ効力にしてしまうとは天才的なチャップリンに脱帽だ。後に知ったことだが本作で初めて肉声を披露したとのこと。これはマイムへの愛であり意地であり、トーキーへの抵抗であり受容なのだと思う。鋭い社会風刺は斬新でラストのどんな苦境でも優しいチャップリンの笑顔に心温まるが、何と言ってもチャップリンが肉声で歌いだすシーンに感銘を受けた。
[ビデオ(字幕)] 8点(2006-09-19 18:24:59)(良:2票)
26.  トリスタンとイゾルデ
説話であり類型本がいくつか出ている物語なので詳しくは知りませんが、少なくとも大まかなストーリー展開以外かなり大本からアレンジが加えられています。人物設定も異なりますし媚薬や竜退治やイゾルデと同名の恋敵など物語の有名どころは登場しません。竜退治などはけっこう期待していたのでガッカリしたのですが…これがなかなか丁寧に作られていて面白いのです。もちろん高名な悲恋劇の古典もいまや単純過ぎるお話ですし、かりにも指導者たる者達がとるお間抜けな行動の連続には唖然としますが、あくまで二人の愛がテーマなので焦点を絞ったのでしょう。トリスタンとイゾルデ、それにマーク王の三者三様の想いが存在するなかで、若い二人がキッパリと決心することができず愛と忠義の間で揺れ動く姿が切ないです。それに今の時代、興行目当てで本当は安易にCGの竜など2、3匹出して景気付けたいところだろうし、惚れ薬や恋敵も使いたいアイテムでしょう。しかしそうはせず敢えて直球勝負で挑み、若手起用でほぼマイナーな役者で撮ったのは物語を伝えようという製作者サイドの真摯な意気込みを感じますので、とても好印象なのですよ、ええ。
[映画館(字幕)] 8点(2006-11-08 18:18:05)(良:2票)
27.  バットマン リターンズ 《ネタバレ》 
シリーズ最高傑作と言い切ってしまっても過言ではない本作は、キャットウーマンもイイですが、やはり徹底的にデフォルメされた敵役ペンギンの魅力に尽きるでしょう(口から出てる黒い液体は一体なんだ?!)。暗黒面よりも滑稽さや物悲しさを全面に押し出した異形の怪物ペンギンを一度は水没させ退場させたにもかかわらず、わざわざ復活させ筋書き上では何をさせる訳でもなく、動物のペンギンたちによる愛らしくも荘厳な水葬までしてみせたのは、ティム・バートン監督がペンギンというキャラクターを愛していたからに他なりません。それに応えるようなダニー・デヴィートの怪演。こんな立派な退場シーンをもった悪役はそういない。
[DVD(字幕)] 9点(2011-07-19 18:33:54)(良:2票)
28.  SOSタイタニック 忘れえぬ夜 《ネタバレ》 
模型のような船に発泡スチロールのような氷山が出てきた前半は時代とはいえこれは失敗作かと思いましたが、タイタニック号が沈没し始めてからは凄い。あまりの惨事に恐怖で息もつけません。ドキュメンタリータッチなので人物描写こそ希薄ですが、どうなるか分っているだけに小さい子を抱く老人が写るだけでバックグラウンドなどなくとも悲しい心持になってしまいます。そして、見える距離にいたカリフォルニア号には船員たちと共に何故気づかないんだと叫んでしまいたくなります。タイタニック号の悲劇を忘れてはならない出来事として深く記憶させてくれる良作です。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2006-03-31 17:47:24)(良:2票)
29.  列車の到着
映画が誕生した当時の技術にはカメラ移動も、寄りも引きも、切り返しもなかったので、短時間、同一の場所からフィルムを回しているだけなのですが、リュミエールはどこの位置にカメラを置けば列車を一番効果的に撮れるかを既に知っていました。百年以上経った現在も列車を撮るのに相応しい位置はおそらくあの位置。
[ビデオ(字幕)] 7点(2008-07-30 18:13:21)(良:2票)
30.  トゥルー・グリット 《ネタバレ》 
オリジナルの「勇気ある追跡」は数年前に一度見たきりなので良く覚えていないのですが、少なくともライフルをクルリと回すジョン・ウェインにジェフ・ブリッジスではお話にならないだろうと思いますし(だがコーエン兄弟にとってはこれはどうでもよい事らしい)、移動であるとか天候であるとか、あるいはマット・デイモンの怪我であるとかが不調に終わっていますが・・・オリジナルに少々手を加えた素晴らしい箇所もあります。例えば、14歳の娘が一人で川を渡り切ったのを見届け、ジェフ・ブリッジスは彼女を認め、それに対して娘の方はジェフ・ブリッジスが瀕死の彼女を抱きかかえ必死に走る姿を目の当たりにし彼が真に尊敬すべき対象へと変わる(ただ後者のシーンの見せ方は好みでない)。ラストは「ノーカントリー」と同じく、言わんとしていることが強過ぎると思いますが(コーエン兄弟にとってはここが重要でリメイクしたと思われる)、事件のことを当事者たちしか知らないという感じも良いです。
[映画館(字幕)] 7点(2011-04-19 18:18:19)(良:2票)
31.  地球が静止する日 《ネタバレ》 
SFの古典作品を再映画化する目的は何にあるのか?それは過去表現できなかったシーンをCGを駆使してリアルにすることだろうと思っていましたが…どうやらそうじゃないみたいです。宇宙人側にはあまり興味がないようで、その証拠に宇宙人のロボットであるゴートが犯罪的なまでに魅力に欠いています(巨大化すれば良いってもんじゃない)。クラトゥもキアヌ・リーブスの無感情な雰囲気が感じを出していますが、格別に謎めいた存在でもありません。どうも〝愚かながらも愛しい人類〟の側を描きたかったようで、わざわざ中国人のおじいちゃんに人類を説明させた上で、血の繋がりのない白人の母親と黒人の息子の愛をキアヌの目前で見せます。なるほどと得心したキアヌは去って行くわけですが、不思議なのはこの作品には集団というものがほとんど描かれていないことです。冒頭こそ科学者たちが集められるものの、以後はあらゆる場面でほとんど個人の判断で物事がなされます。クラトゥを治療する医師も自白をさせる男も一人、ゴートに攻撃する際や調べる時も一人の軍人や政治家?の指示で行われ、ノーベル賞の博士も厭世感を抱いていそうであり、きわめつけは国防長官で(キャシー・ベイツの超然とした様がいかにも個人主義)地球存亡の危機にほぼ独断で指揮をとり大統領との会談も一対一の電話ですませるのです。ここには地球に共存する人類に不可欠な〝話し合い〟というものがなされていません。また「宇宙戦争」など襲来ものでは度々見られる群衆のパニックも皆無に近いです。〝人間は一人だと良いが集団になると厄介だ〟と言ったのは「メン・イン・ブラック」のトミー・リー・ジョーンズで、そのとおり怖いのは個人ではなく群集なのです。中国人のおじいちゃんは70年に及ぶ観測の結果、それを知っていたからこそ人類を愛しながらも殲滅を選んだのでしょう。なのに集団を全く描いてないので人類が助かったことについては説得力に欠けているのです。  それと言わずもがなですが、〝地球が静止する日〟ではなく〝アメリカが静止する日〟と言う感じがします。まぁ、実際のところ残念ながらアメリカが静止したら地球が静止したようなもんなんですけどね;。
[映画館(字幕)] 5点(2008-12-29 11:02:25)(良:2票)
32.  ヒート 《ネタバレ》 
骨太のドラマや街中での銃撃戦と見所に事欠かきませんが、やはり二大名優パチーノとデ・ニーロの激突に尽きるでしょう。確かに共演シーンは少ないですし正面向いて一緒の画面に納まっているシーンは皆無に等しいので物足りなさを覚えなくもないです。しかし、これはこれで凄いのです。「庭でバーベキュー、テレビで野球か」と対峙するカフェでの会話シーンなどとても良いです。この場面でも二人は決して共に映りません。あくまでパチーノは刑事であり、デ・ニーロは強盗。追う者と追われる者にしか過ぎず、互いに一目を置き共鳴し合っても相容れない両者だからこそ壁があり交錯しないのだと思います。  また、プロフェッショナルでストイックな彼らは、互いに仕留めずにはいられない獲物を求め、デ・ニーロは逃げずにハンドルを切り、パチーノは一刻も早くと病院の階段を駆け下りる。これは両者の対決の時が迫っていることを暗示させます。そして最後の決闘後、過酷な現実世界を闘った者同士、互いの存在を確認するかのように手を握り合い両者が一つの画面に納まります。誰もいない暗闇の中で死に瀕した最期の時だけ、刑事と強盗という枠を飛び超え人間レベルで互いの心を通わせる。初めてパチーノとデ・ニーロが交錯する。こういうのが男の映画なんだと思いますし、こんなにカッコイイ映画はそうないと思います。
[ビデオ(字幕)] 10点(2007-08-28 18:22:18)(良:2票)
33.  ブラックブック
いやぁ~凄かった。実話を基にしているみたいですが、政治的なことより単純に娯楽として面白かったです。何が凄いって回想シーンから導入していくので主人公の無事が完全に保証されているのにもかかわらず、劇中ハラハラドキドキしっぱなし。ポール・ヴァーホーヴェンが「女王階下の戦士」以来、正統派の映画も撮れるんだという事を見事に証明してくれました。もちろんエロもグロも要所でしっかり見せますが人間模様、殊に女性の描写がやっぱり良いです。内容についてはネタバレしてしまうとつまらないので控えますが、ヴァーホーヴェンの新しきファム・ファタール、カリス・ファン・ハウテンの美しいこと美しいことっ!歌声も素敵なんですが、彼女の素晴らしさはニコール・キッドマンのような気品が良い意味で無いこと。自由奔放と言いますか、あけすけと言いますか早い話がエロいんですねぇ。女性はどう思うか知りませんが男はああいう女性に弱いんですよ。鏡の前で下の毛を染めるシーン、汚れた足を便器の水で洗うシーン、もうやりたい放題で参っちゃいましたよ。それから彼女の友人となるロニーもまた凄いキャラクター。強いと言うか、しぶといと言うか、まぁたくましいんですね。もう生命力が溢れ出ているのです。この魅力的な女性たちと取り巻く多種多様な男たちとの妙、最後まであっという間に時間が過ぎてしまいました。
[映画館(字幕)] 9点(2007-03-28 18:47:40)(良:2票)
34.  誓いの休暇(1959) 《ネタバレ》 
若者の通過儀礼のように人生の酸いも甘いもつまった旅中の一つ一つの挿話が印象的である。松葉杖の負傷兵の行く末を見届けたくなってしまう展開と最後の最後で片足だと分かる巧さ。戦時に青春真っ盛りで、見ているこっちまで顔が赤くなってしまいそうな二人の若い男女関係は瑞々しく描かれ、どうしたって温かく見守りたくなってしまう。さらに人生の苦味の部分では石鹸を持ち去る抵抗をみせ若者の純潔さを実に爽やかに描出している。しかし一番のクライマックスはやはり母親が畑を疾走するシーンであり、その姿の感動的なことといったらない。しかも〝戦地に赴き二度と戻らぬ息子を持ち続ける母〟という最初からネタバレされたこの哀しみ最上級の設定に涙腺が刺激され、主人公に肩入れせざるを得なくなるところが憎い。そのうえ様々な出来事で明るみに出てくる彼の人物像ときたら好感度抜群なのである。そして何よりこの物語はヒューマニズムの極致であるにもかかわらず、決して感動の押し売りをしていないところが良いところだ。
[ビデオ(字幕)] 9点(2007-04-18 18:15:56)(良:2票)
35.  ウィスキー 《ネタバレ》 
真面目なハコボとマルタは定時にシャッターを開き電気をつけ、お茶をいれる決まりきった生活を送っている。その機械的に物事をこなす様子から、かなり長い間同じ事を繰り返していることが窺えます。そこへ起こる弟の訪問という外部からの刺激。積極的におめかしするマルタのリアクションは女心をしっかり捕らえたもので、少なからず何か変化が起こるのではという期待が感じられます。それに対して相変わらず無関心なハコボの様子が、部屋の説明をしながら電気をパチパチすることで示され、いつもの通りの事務的な出来事の一つと同じだと分かり男のダメさ加減を身につまされる思いになります。そして陽気な弟と過ごした後、マルタは定時にやって来ない。マルタ自身に変化が訪れたことと、ハコボには何の変化も訪れなかったことを暗示しています。同じ種族に見えていた二人は実は全く違っていて、二人がそろって笑えるのは〝ウィスキー〟という掛け声の時だけという淋しさ。少ない台詞ながら一定の行動様式で男女の心の機微を鋭く描出し、ついつい見守りたくなってしまう作りが巧いです。二人が〝ウィスキー〟なしで笑える日が来ると良いなぁと思ってしまいますね。  ところでウルグアイ(もしかして南米辺りではどこでも?)では写真撮る時に〝ウィスキー〟って言うんですね。なんか〝チーズ〟より良いなぁ。
[DVD(字幕)] 7点(2006-02-26 11:38:36)(良:2票)
36.  リミッツ・オブ・コントロール 《ネタバレ》 
これは〝殺し屋〟の映画などではなく〝映画〟のための映画です。 意味深な「自分こそ偉大だと思う者を殺せ」という指令、2杯のカップ、同種のマッチ箱に入れられたメモ、ヘリコプター、個性的な登場人物たちの背景、裏切り者の存在、あるいは警備の厳重なターゲットの部屋への侵入、などなど…これらの詳細は一切説明されず省略されますが、まるで映画においては全て不要なものであると声高に宣言しているようです。そして必要に見せるのは繰り返し。例えば、バンコレの決まり切った行動様式がカフェでギャルソンとのやり取りに笑いを生み出し物語をシンプルにつむぎ出します。一つ一つのショットも芸術的でありながら嫌味にはならず、バンコレの絵画的な顔も強烈な印象を残します。 ・・・ただ、活劇としての弱さは感じます。もちろん殺し屋の物語なのに拳銃が出てこないのですから、あえて排除しているのでしょうが。それと個人的好みの問題が大きいのかもしれませんが、バンコレは顔は良いのですが動きにはいまいち魅力がありません。
[DVD(字幕)] 8点(2011-04-26 18:33:58)(良:2票)
37.  第十一号監房の暴動 《ネタバレ》 
これぞ決定的に刑務所の映画だと思わせるのが、ズラッと並ぶ監房の前の一本スッーと細長くのびた閉塞感が漂う廊下の使い方です。オープニングショットからその廊下の表情が映し出され、まず最初に、監房から抜け出した囚人が看守を追い詰める場面でその力を発揮し、看守にグングン走り迫って行く囚人を後ろからハンディカムで捉え恐怖を感じさせます。そしてクライマックと言っても過言ではないのが爆破を中止させる電話をのシーンで、鳴り響く電話を取るために長い廊下の奥も奥から囚人たちが全速力でドッと駆けてくる…受話器を早く取らなければ爆破されてしまう一刻を争うドキドキの緊張感を、廊下の長さを使うことによって見事に表現しています。こういった単純に走る場面であっても見せ方により、実際に暴力シーンや派手な爆発シーンなど見せずとも十二分にスペクタクルを起こせるのです。まさに純度100%の紛れも無い刑務所の囚人のパワーを描いた映画。
[CS・衛星(字幕)] 9点(2010-06-23 18:40:36)(良:2票)
38.  1408号室
この作品は〝音〟に気を遣っていると思います。例えば特に序盤では、グラスの触れる音やペンを走らせる音…そういった細かい音がちゃんと拾われているのです。こういう音というのは生々しくて神経を鋭くさせ恐怖を体感し易くする効果を促しています。さらに登場は少ないながらもホテルの支配人を演じるサミュエル・L・ジャクソンの怪しさも存分に生かされていますし、あの何の変哲も無いはずの1408号室の孤立した雰囲気も良く出ています。そしてドンドン主人公に迫ってくる危機を演出するCGもまた効果的だったのですが・・・、個人的には最初の方の〝いつのまにかチョコが!?〟や〝不気味な部屋に親父がポツンと座っている〟というシーンの方がずっと怖かったですし、水に襲われるシーンはもっとしっかり見せて欲しかったですし、途中の自殺してゆく幽霊?のCGは、本当に〝ホーンテッドマンション〟かってぐらいのもので本作とマッチしておらず興ざめでした。それでもテンポは良いですし、あの煙草スパッーはやっぱり決まってますね。
[映画館(字幕)] 7点(2008-11-28 18:42:57)(良:2票)
39.  サンシャイン 2057 《ネタバレ》 
筋はあるものの観念的なストーリーはあってないようなもので感覚で味わうという印象が強いです。ですからセンスの一致如何で見る人を選ぶと思います。個人的にはアジア人がクルーの中心であったりする未来的さや、それとは反対に宇宙服などが非常にレトロなデザインなのにクスっとなりつつ、雰囲気の盛り上げに一役も二役も買っているサウンドにクルーらと共に宇宙空間に居るような気分にさせられましたし、冷めた演出、イカロスの神話をなぞった結末は好きです。・・・ただしかし、本作では太陽光に限らず〝光〟がかなり重要な要素を担っていると思うのですが、どうもそれがしっくりこないのです。光というのは、例えば船長やサールが望んだように気分を高揚させたり恍惚とさせるものとして捉えているのに、多用される暗闇に懐中電灯の光一つとってもあまり刺激的に感じられず心動かされません。そのせいか物語は極めて深刻な状況であるのにちょくちょく退屈なシーンがありました。さらにサブリミナルは効果的としても忙しなく切り替わる画面は観難いです。もちろんダニー・ボイルのことですから確信犯で心理的揺さぶりをかけてきているのでしょうが、それが過ぎているので疲れてしまいます。・・・・・ところで、この退屈さどこかで味わったことあるなぁと考えてみたら私の苦手な「2001年宇宙の旅」でした。そう言えば手緩いHALが登場しますし、ラストシーンに映る黒いあれってモノリスでしょ?
[映画館(字幕)] 5点(2007-04-23 18:15:38)(良:2票)
40.  トンマッコルへようこそ 《ネタバレ》 
シーンだけなら素敵な部分もありましたが・・・何よりトンマッコルが格別魅力的な場所に思えないのが致命的です。ほぼ村人の人物描写がなく幸せな暮らしや楽しい風景などの外見を見せられただけで村の本質を描いていません。個人レベルで敵味方問わず友好関係を築くだけの物語なら特別なコミュニティは必要ないはず、そこを敢えてトンマッコルに集合させたのですからただの平和な村ではなく得がたい理想郷の存在を期待してしまいます。それなのにこれでは隔離されたイイ人が集まった集落にしか思えません。しかも争い皆無の平和なトンマッコルを賛美する一方で最後の戦闘への流れは戦争は避けて通れないのだと訴えているように感じ矛盾を覚えます。そしてその答えは序盤で村人たちによって提示されそうになりつつも放棄されます。彼らはイノシシ騒動の時、殴ったら復讐されるからイカンと話し合っていましたが、結局は兵士たちが殺す事で解決してしまいました。ポップコーンの雪が降る幻想的な村なればイノシシ問題も退治するのではなく突拍子もなくもトンマッコル流の方法で和平的に解決してこそ皆が夢見るユートピアとなったと思います。その方法を見せることこそがトンマッコルの秘密、魅力でありひいては映画の魅力となったのではないでしょうか。
[映画館(字幕)] 5点(2006-11-02 18:28:37)(良:2票)

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