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プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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21.  激突!<TVM> 《ネタバレ》 
これは現代の「西部劇」とも言える。  西部劇が馬なら現代は鉄の馬同士の一騎打ち!  物語はどこまでも単純、どこまでもシンプル。   アメリカのだだっ広いハイウェイに車が一台。   そこに突然現れた巨大なトラック。   ノロノロで追い越させ、追い越させたと思ったら猛スピードで突進して来る。   借金の取立てが命の取立てになってしまった。   ブザーを鳴らす愉快犯かと思いきや、故障したバスを押してやったりと実は優しいのか?   いや、やっぱり主人公の車を付け狙う愉快犯か。  カフェの外で不気味にたたずむあのトラック。   主人公の心も恐怖と怒りでピークだ。    ともかくトラックの運転手は正体不明のまま。声も顔も出ない、不気味な二の腕だけが主人公を挑発する。   フロントバンパーに貼られた無数のナンバーは何を語ろうとしているのか。   トラック野郎にあるのは狂気だけなのか。   正体が解らないという恐怖。   スピードが出すぎ車が止まらないとう恐怖。   日常に溢れた恐怖を最高潮に引き立てるスピルバーグの妙技。   後の「ジョーズ」はかなりヒロイックな展開がされたが、この「激突!」はひたすら追いかけっこ。   だがそんな主人公も我慢の限界。 上等だテメエ!“決闘”だよバカヤロウ!  壮絶な二台の追走劇。   「車のエンジンが中々かからない」の始祖だが、これは衝突でエンジン部分がひしゃげたからこそ起こるだろうという現象であり、普通の車がそんな欠陥品なら会社なんか潰れてる。後の奴らは何か勘違いしてんだよな。   ラストのトラックと向き合い、車で迎え撃とうという様子はバスター・キートンの「セブン・チャンス」を思い出す。   迫る岩の大群、逃げるのをやめて「あえて」正面から避ける事にしたキートンの勇気と発想。   もしスピルバーグがこのキートンの傑作を見ていたとしたら、俺はもっと尊敬するぜ。   少くともカフェでのやり取りは黒澤明の「野良犬」が元らしい。  つうか主人公は何回車上で振り返るんだよ。   主人公がいつ余所見で事故るかそっちの方がよっぽどハラハラするわ。   バックミラー涙目。   教習所涙目。   ラストの夕陽のシーンがキレイだった・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 11:05:00)(良:2票)
22.  死の谷 《ネタバレ》 
ラオール・ウォルシュが描く西部劇の傑作の一つ。  ウォルシュ監督の「ハイ・シェラ」を西部劇としてより洗練させてリメイクした。  現代的な様相、何処か虚無的な雰囲気、ファムファタール(悪女)の誕生・・・フィルム・ノワールとしても面白い西部劇だ。   ガンファイトは物足りないと感じる時もあるが、冒頭から脱獄、駅馬車の襲撃など要所要所でアクションが程よく入り人間ドラマもかなり面白いのでダレが無い。  ラストの警備隊の追撃や二人の最期はガンファイトとしても素晴らしい&壮絶なシーンを見せてくれた。   本編は白人とインディの哀しき運命を描くストーリーだが、この映画は「生」と「死」が強調されている。 白黒の画面だからこそそれを色濃く感じられる。  主人公は犯罪を犯した“罪人”であったが、一度牢獄から出て「カタギの人間」としてやり直そうとした。  旅を続ける傍ら様々な事件に巻き込まれ、インディアンの混血の娘に惹かれる。  二人は次第に強い絆で結ばれていく。  祝福する者は誰もいない教会での結婚式・・・社会からはみ出した者同士にしか解らない痛みと温もり。 しかし運命は主人公を元の犯罪者という逃れられない「死」へと追い込んでいく。  一度犯罪を犯せばその烙印を一生背負う。  一度人を殺せばもっと重い烙印を背負い続ける。  そんな事を言われているような胸に響く映画だった。   この映画は90分だが、「たった90分」と思うほど時間が早く感じられる。  もう30分この二人のやり取りが見たいくらい切なくなってしまう幕切れだった。  握った手・・・二人は一緒にあの場所へ行けたのだろうか・・・。 「暗黒街の弾痕」といい、「ボニー&クライド/俺たちに明日はない」といい、どうしてこんなにも切ない映画が多いのか。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-30 10:10:01)(良:2票)
23.  チャップリンの黄金狂時代 《ネタバレ》 
もう密度が半端ないですね。 最初30分だけの短編にしても面白いですし、ラスト1時間も最後まで飽きずに見てしまいました。 雪山で出会った男が伏線だったり、二段構えとも言うべき傑作です。 また単なるコメディで終わらない所がいいですね。 実はこの作品は「偽牧師」と共に西部劇としての一面があるんですよ(まあ作品を見た方なら既にご存知だと思いますが)。 ゴールドラッシュで沸き立つ街、一山当てようと死に物狂いで山に挑む人間たち。 ある者は富を築きますが、その多くが飢えや殺し合いの中で消えていきます・・・事に本作は飢えの恐怖。 チャップリンなんか靴まで食べてしまうし、隣の大男は腹が減りすぎてチャップリンが巨大なターキーに見えてしまう・・・ちょっとオーバーかなとも思いましたが、飢えた人間たちが略奪や殺し合いに発展する様は恐ろしいです。 山での死闘、そして下山した街で巻き起こる騒動・・・クリスマスのシーンは笑いを通り越して涙が出てしまいます。 それでも最後まで彼女のために奮闘する健気さ。山小屋が雪山を滑り落ちるシーンなんか口あんぐりでした。 貧乏を経験したチャップリンだからこそ描ける凄い映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2013-12-29 15:19:16)(良:2票)
24.  SOSタイタニック 忘れえぬ夜
ジェームズ・キャメロンは好きな監督だが・・・何故か「タイタニック」だけは惹かれなかった。 その理由がジャン・ヴィゴの「アタラント号」やロナルド・ニームの「ポセイドン・アドベンチャー」、そしてこのロイ・ウォード・ベイカーの「タイタニック」にある。   1958年に公開されたこの作品は、あくまでドキュメンタリー風のタッチでタイタニック号が沈みゆく姿を描いていく。   登場人物の描写は「タイタニック」よりも希薄だし、キャメロンの映像に比べるとこの作品は見劣りしてしまうかも知れない。   けれども、この作品は無駄なものが無く、船が沈むまでの人々の動静を克明に映像化した作品だ。 登場する船もセットも総て本物ではないのかという危機迫る映像、白黒画面の黒い映像がより沈みゆく船の恐怖を倍増させている。   死を前に人は何をすべきか? 最後まで船に残り最善を尽くそうとする人々の生きる姿。 善悪のあるドラマではなく、人間味のあるドキュメンタリーだからこそ極限状態の緊張感と凄惨な絶望感を肌で感じられると思う。   この作品の持つメッセージやドラマ性の方が、キャメロン版より圧倒的に上だ。   かつてキャメロンの「タイタニック」を酷評した淀川長治さんも、恐らくこの作品を見ていた事だろう。
[DVD(字幕)] 9点(2014-05-08 20:56:41)(良:2票)
25.  ロッキー 《ネタバレ》 
うだつの上がらない三流ボクサーであるロッキー・バルボアが真の一流ボクサーへと成長していくヒューマン・ボクシングドラマ。 「ミリオンダラー・ベイビー」のように尊厳を貫いたり、「鉄腕ジム」みたいなアクション重視のボクシングも最高だが、やはり「ロッキー」も最高のボクシング映画だ。 何せ「スターウォーズ」と共にアメリカン・ニューシネマの暗い空気を殴り飛ばしてくれたんだから。  シリーズを通して見えてくるアメリカンドリームの光と影。  時には本気で殴り合うある迫力あるボクシングシーンも凄いが、それを盛り上げるのはやはり人間ドラマ。  愛情、友情、努力、勝利への執念。  シリーズを経る事にロッキーの戦い方や考え方は徐々に変化していく。  実際のボクサーがそうであるように、戦えば戦うほど様々な苦悩や経験を背負い込んで。  強敵よりも厄介なのが「自分自身に勝つ」という事だ。  ロッキーは持ち前のハングリーハートをバネに力強く戦っていくが、同時に複雑な環境がロッキーをとことん追い込む。  それに打ち勝てるからこそ、ロッキーはどんな強敵とも戦い抜けた。  そんなロッキーの魂の震える姿に、ベトナム戦争や不安定な社会情勢に打ちのめされてきた人々が勇気をもらう。  このロッキーが1~5そしてファイナルまで成長したのは、そんなアメリカ市民の心の支えがあったからこそだと思う。  どんな人間もそれぞれの夢を掴める。  辛い現状とどう戦い、どう打ち勝つか。  それをこの映画は教えてくれるんだ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-08-18 07:46:36)(良:2票)
26.  フルメタル・ジャケット 《ネタバレ》 
「突撃」に並ぶキューブリックによる戦争映画の傑作。 初見には重い戦争映画、二度目は「博士の異常な愛情」に通じるブラック・ユーモア。ハートマン軍曹とのやり取りは面白いし、戦場の報道部にはスヌーピーだわPT&ミッキーマウスでマーチ(行進)だわ。 彼らにとって訓練から既に戦争が始まる。 海兵隊訓練所における狂気、戦場での狂気。 冒頭は軍隊に入る兵士達が頭を刈る“儀式”から始まる。みんな憂鬱そうな表情で自分の髪とさようなら。 そこからハートマン軍曹による愛ある?薫陶(罵詈雑言)。「親のファ●クでシーツに残ったシミが貴様ら」だなんて言われたらヘコむ。このシーンで爆笑できるようになった人は立派なキューブリックファンです。俺も2回目見た時は爆笑し通しだったわ。あそこまで言われたらもう笑うしかねえww 「マスターピース」を暴言に出来るのはハートマン軍曹だけだと思う。 微笑みデブ(アーニーパイル)も黙りこむ。ジョーカーだけが彼を本名のレナードで呼ぶ良心。ハートマン軍曹は厳しくも彼を見捨てなかったが、ソレが他の訓練兵に憎悪を抱かせレナードに向けられ、微笑みデブは徐々にキリング・マシーンへと変わっていく。 後半のヴェトナムの戦場。「プラトーン」は密林、この作品は市街戦。 上司が次々に死にまくり、異教徒を殺すように機銃を撃つ輸送ヘリのドア・ガンナー、死体にパーティー、見えざる敵と戦う市街戦という名のコンクリート・ジャングル。そんな地獄で戦う彼らにインタビューする報道者たちは何を思うのか。 クライマックスを飾る狙撃者との息詰まる攻防。狙撃者の視点から語られる孤独な戦い、ジョーカーたちも倒れた仲間のために敵の根城に突っ込み“お礼参り”。ビルの中には他に誰かいるかも知れない・・・その緊張が最後まで持続するから凄い。 闇夜のミッキーマウスマーチ。彼らにとっては終わりが迫る喜びの歌、だが原作小説では彼らの戦い、いや地獄はまだ続く。まったく戦争は地獄だぜ。 その後にローリング・ストーンズの「黒くぬれ(Paint It, Black)」を聞くともの凄く切なくなるんです。 昔のキューブリックだったら腰振りのマネだけじゃなく本当に狙撃兵に死姦をかますとかヤッてたかもね。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-31 10:31:48)(笑:1票) (良:1票)
27.  ミッション:インポッシブル/ゴースト・プロトコル 《ネタバレ》 
トム・クルーズが立ち上げたこのシリーズは今までブライアン・デ・パルマ、 ジョン・ウー、 J・J・エイブラムスと名立たる監督が手掛けてきた。  特にこのブラッド・バードが手掛けた4作目は最高傑作になるのではないだろうか。  ブラッド・バードとエイブラムスが組んだ「ゴースト・プロトコル」は、トム・クルーズにとっても最高の1本!  「Mr.インクレディブル」を初めとする数々の傑作アニメーションを手掛けたバードの演出が冴え渡る! とりわけバードのアニメーションを意識した演出は、「カリオストロの城」といった縦横無尽なアクションとパワーを感じさせるほどだ。  ビルを上から上に登ったかと思えば、下から下へとガラスの壁を這うように動くトム・クルーズ。 ロック・クライミングなら岩を掴めば済むし、ハロルド・ロイドの「要心無用」も窓の手すりを掴めば一安心。だが、全面ガラス張りの窓を割れば速攻で水の泡。 片手でぶら下がるシーンの絶望感、そんな場面なのにトムがいるだけで何故か物凄く安心してしまう不思議。 初代の「M:I」にあったシリアスな空気は何処に消えてしまっただろうか(良い意味で)。  トムが車ごと落下するシーンにしたって、起爆装置だけを奪い合う殴り合いにしたって、まったく余りに馬鹿馬鹿しくて逆に超清清しかったぜチクショウ! この映画は落ちるシーンが多いね本当。  偽の映像で見張りを突破するコミカルなシーンや、 駐車場でのアクション、 女性陣の殴り合い、 砂嵐が迫る場面の緊張とスペクタクル等々「スパイ映画の無駄なスケールのデカさ」はどうしてこうも楽しいのだろうか。  ラストで「さあ次は何処へ行こうかと」意気揚々に次の戦場へと赴く表情、そして愛する者のために何処か孤独に戦う哀愁も感じさせる後姿が良い。
[DVD(字幕)] 9点(2014-09-23 22:39:41)(良:2票)
28.  キング・コング(1933) 《ネタバレ》 
世界恐慌直後のアメリカ。 職にあぶれた人間でごった返す当時の情勢は、その後の第二次大戦の暗い影も見えてきそうだ。 冒頭こそ淡々としすぎる映像だが、島に入ってからその面白さは加速する。 怪しげな原住民の儀式、 巨大な砦、 そしてそこに君臨する巨獣キング・コング! ねんどや人形のコマ撮りで動かしているとは思えないほどの動きと迫力! コングに掴まれたり身ぐるみ剥がされたりで叫びまくる女優の演技もリアルで凄い。 子供の頃は「何でゴリラと恐竜が戦ってんだよ」と理解に苦しんでいたが、今見るとその細かい戦闘描写に見入ってしまう。 コングからヒロインを奪還すべく追う主人公たち、ヒロインを守るコング。 そして事もあろうに、何とコングは人間の手で島からニューヨークに連れていかれるのだ! 安易な思い込みが命取りとなる。 何と愚かな事だろう。 ヒロインを見つけて拘束具を安々と外し逃げ出すコング。 コングはヒロインに惚れてしまったのだ。 セルズニックの演出には常に「愛」が存在している。 後年の「レベッカ」、「風と共に去りぬ」、「白昼の決闘」、「第三の男」における三角関係・・・心が怪獣にはあった。 人間のような感情がコングにはあった。 人間と同じように、コングも赤い血の流れた生き物なのだ。 ただ、コングの純粋な恋心も、人間には恐ろしい化物が叫ぶようにしか見えないのだろう。 コングは戦った。たった一匹で勇敢に戦い、壮絶に散って行ったのだ。 コングの遺体の傍で、コングを捕らえた男が一言漏らす。 いつの時代も、一番の原因となった悪党が生き残るのが世の常だ。 本当に恐ろしいのは、こういう人間なのである。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-20 20:06:44)(良:2票)
29.  バック・トゥ・ザ・フューチャー 《ネタバレ》 
再見。何度見ても色あせない、何度でも元気と勇気をこの映画から貰える。スピルバーグ&ゼメキス師弟の夢が詰まっているもんな。  このシリーズは「PartⅢ」のジョン・フォードやクリント・イーストウッドといった西部劇へのオマージュに溢れたアクションも素晴らしかったが、「PartⅠ」の面白さもブッチ切りだ。  ジョージ・パル「タイム・マシン 80万年後の世界へ」へをはじめ様々な映画へのオマージュが捧げられたファースト・シーン。 時計の針の音、時計、時計、時計、時計、夥しい時計が部屋中に敷き詰められた空間。デジタル、振り子、左右に動く動物の目玉、針にぶら下がるハロルド・ロイド「要心無用」。 新聞、写真、時間になるとラジオを付け、熱湯を流し、TVが付き、トースターがパンを黒焦げにし、缶を開けペットの皿にぶちまけ、ゴミ箱に捨てる。バスター・キートン「案山子」を思い出さずにはいられないワクワクするような始まり方だ。 扉を開けて入って来る訪問者、スケボーが転がる先にあるもの、ダイヤルを全開にするのは巨大なスピーカーが破裂する衝撃でぶっ飛ぶために!  電話、時計が鳴るのは少年を学校に走らせるため。 車から車に捕まり移動、待ち構えるのは好きな男の子を救おうとするため。バンドと好きな娘に捧げる青春、口づけを妨げる募金要求、父親でも止められな別れのキス。ジェニファーが可愛いすぎて辛い。  潰された車と大事な予定、作り笑いで耐える弱気な父親、全盛期で悪事の限りを尽くすビフ、いろいろとくたびれてる家族、車の中から煙をまとい登場するマッドサイエンティストのドク。  ドクの登場とともに再び現れる冒険心をくすぐるアイテムの数々。 夢と危険が詰まったデロリアン、防護服、キャメラが捉えるもの、ストップウォッチ、操縦リモコン、バックし、唸り声をあげ飛び出し、閃光をまとい、濡れたアスファルトに火花を走らせ風とともに駆け抜けるタイムスリップ!置き去りにされるナンバープレート、助手席に犬を載せる狂気は爆撃機に子犬を載せるハワード・ホークス「空軍」もビックリだ。 不意に襲い掛かる報復、銃が分ける命運、銃撃とチェイスと過去への全力疾走!案山子と民家に突っ込む激突!  広大な平地と目の前で捨てられる新聞は過去に来たことを告げるため。 巨大な看板に隠すもの、懐かしくも異世界に来てしまった感覚、電話帳、喫茶店での思いがけない出会い、見覚えのあるノックしてモシモシ、あの何とも言えない表情が面白い。 自転車、葉っぱが落ちるのぞき見、車の着地狩り、眠り事、灯りをつけるのは夢から覚めたことを告げ彼が直面している現実に引き戻すため。  檻の中のジョーイ、ジャッキー・グリースン、腰抜けなんて言わせねえ、スケボー小僧と不良軍団とのチェイス、車に押し付けられようが諦めない、困難に立ち向かい車上を駆け抜け乗り越えるアクション、ベリー・シット!! 消えゆく写真とタイムリミットが迫る恐怖、実験、積極的すぎるママ(18)、飲んだ酒をぶちまける煙草の火、車内という密室、招かれざる来客、トランク、ふり絞る勇気、震える手を握りしめる拳。 感謝の敬礼、最高の一曲。  エンジン中々かからない焦り、雷鳴、鉄線を滑り落ちるのは友人を未来へ送り届けるために!  変わるもの・変わらないものが教えてくれるありのままの素晴らしさ。 道がないなら作ればいい…物語は「PartⅡ」へと続いていく。
[DVD(字幕)] 10点(2013-12-29 15:27:05)(良:2票)
30.  少女ムシェット 《ネタバレ》 
再見。 何度見てもハートフルボッコの筈なんだがなあ…ヒロインの健気な姿を見るだけで元気になれるのは何故なんだろう。  「バルタザールどこへ行く」に並ぶ、少女の不幸を冷徹な眼差しで…いや見守ってやることしか出来ない無力さに打ちのめされるシネマトグラフ。 この映画を見て落ち込んだという方には同じブレッソン「スリ」「ブローニュの森の貴婦人たち」、ドタバタコメディ「公共の問題(公共問題)」、良い意味の“ハラハラ”を味わいたいんだよという人には「抵抗」を見て心を癒すことをオススメします。   薄暗い部屋で心配事を語る疲れ切った女性、森の中で茂みをかき分ける者、帽子から輪になった紐を取り出し、木の枝に括りつけて草木の上に置く者、“仕掛けた”者が待っていたもの、引っ掛かり悶える鳥、それを掴み取る手、一部始終を見届ける視線。 抜け穴、収獲、すれ違う帰還者と登校途中の少女。  授業でみんなが歌う中で口をつむぐ理由、だからって突き飛ばしピアノの前で首根っこ掴んでまで曝しものにするこたぁねえだろ。何度も歌わされ、嘲笑され、耐えきれなくなり顔を覆い泣き出してしまう。誰も助けちゃくれない。 男の子もわざわざ呼び止めてズボンを脱いで見せつける嫌がらせ。  家に帰れば父親たちは夜遅くまで酒に溺れ(警察にバレないように酒瓶を布で隠して)、冒頭で語っていた母親は病で寝込み、夜泣きする赤子の世話と忙しい。  だが彼女もただ黙って耐えるだけの少女じゃなかった。 ちょっと大人の男に視線を送っただけで平手打ちを浴びせるようなロクでなしの父親だ。教会にもわざと泥まみれの靴で入るのは、突き飛ばされるのが分かっていても暴力を振るう父親へのせめてもの抵抗。 それは散々な目に遭っているのにどうして宗教にまで縛られなきゃならないの。何もしちゃくれねえ宗教なんぞを信仰する馬鹿馬鹿しさ、冗談じゃないと彼女が…ブレッソンが叫びたかったことなのかもしれない。  下校時には道脇の茂みに伏せるように隠れ、女生徒たちに泥をブン投げまくる。例え振り返ったとしても隙あらば投げることを繰り返す。 幼い少女たちは下着が露になるのもお構いなしに鉄棒を回り、香水をかけ合い、男の子が乗るバイクにまたがり、早く大人になりたそうに振る舞う。 遊園地に行くのは憂さを晴らすため。ゴーカートのぶつけまくりぶつけられまくることが許された運転、回転飛行機で飛ぶように二人きりの男女を見つめる視線。  密猟の男たちが河原で拳を浴びせ揉みくちゃになるのは、仲直りし飲み合うため。  スカートからのぞく女の肢体、ストッキングを止めるバンド、泥に埋まり残される靴、雨に濡れた少女を“捕まえる”ための誘い、手の出血を焼けた枝で止める荒療治、蝋燭立てになった酒瓶、机の上に逆さまで並べられた椅子、カバンの中にしまわれる小銭?、ふら付き発作が起きようが泡を吹くまで飲んだくれブッ倒れる。虚空を見つめて目を開っきぱなし、そんな姿に思わず歌うのを嫌がっていたはずの少女が男を介抱するため、子守唄を聞かせるように歌声を響かせる。 豹変、酒瓶の山を落とし割り、机を薙ぎ倒し、燃え盛る火の前まで追い詰め襲い掛かる。どうして男ってこんな奴しかいないの?という絶望。  木の枝に紛れる逃亡、辛いことがあったら母親の手を掴み慰めてもらう。わずかに残った希望…。  森番に部屋の中まで連れられ夫婦揃って説教を喰らい、ミルクを買いに行った先で親切にスープとパンを振る舞いポケットに“ほどこし”を入れる女主人。ポケットに手を入れる「スリ」とは真逆の行動で彼女に幸せが訪れるのか…それを粉砕する様に割られてしまうカップ。机の上に投げ捨てられる“ほどこし”。  文句言いながら渡されるほどこしなんて御免だよと、絨毯を泥だらけの靴で踏みにじる。  ウサギ狩りで猟銃が刈り取る命、命、命。「バルタザールどこへ行く」の動物たちがそうだったように、この映画も容赦なく犠牲になっていくのだ。  もらった服も木の枝で引き裂き、寝転がり草まみれにし、それを纏いながら転がって、転がって、転がり続けた先…。
[DVD(字幕)] 9点(2014-02-28 18:41:11)(良:2票)
31.  エイリアン2/完全版 《ネタバレ》 
「初代」と「2」でどっちが好きかって?どちらかと言えば「最後の一人になるまで戦ってやらあ」って「初代」が一番好きだ。 が、キャメロンのガテン系武闘派リプリーも大好き。男勝りなリプリーが頼もしい。 「バイオハザード」はコレと「ゾンビ」の影響を強く感じさせる。 前回の戦いから何十年とさまよい、ようやく回収されたリプリー。だが目覚めた先でも“悪夢”は続く。リプリーは前回の経験から誰も信じられずにいた。しかし、事情を呑み込みハラも決めたリプリーは共に危機を脱したジョーンズ(猫)を残して新たなる戦いの場へと赴く。もう完全にヒロインではなく主人公の面構えです。 自分たちを殺そうとしたエイリアンの星を、人類が植民という名の“侵略”をしようとする。 当然、彼ら(エイリアン)も“侵略者”には容赦しない・・・! キャメロンのうなるようなメカニック描写やバトルを盛り込んだ演出は見応えがある。この頃のキャメロンは本当最高だね。 今度のアンドロイド・ビショップは誰よりも頼りになる奴だ。ナイフの芸の時も地味に仲間の手をかばっての作業。 助け出される唯一の生存者、変わり果てた人々の姿、エイリアンクイーンの圧倒的な存在感。 いつ何処からエイリアンの大群が現れるかハラハラドキドキの連続だ。 仲間のためなら強行突破に轢き逃げアタック! しかしいくら強力な武器を揃え様と奴らもタフだ。次から次へとキリが無え。 「アンタは本当ダメな男ね」 まんざらでも無さげな表情で散っていく仲間たち。 リプリーも娘の面影が重なるニュートのため、仲間たちのためにフル装備で単騎突入! “人質”をとってクイーンと渡り合うしたたかさ、邪魔するガッデムエイリアン共はブッ放せ、焼き払えっ!! いや~もうアレですね。何と言ってもラストバトル! 突然の襲撃、倒れ込む仲間、絶体絶命、そこに重武装で対峙するリプリー。 リプリーの「FU●K YOU」は気持ちが良い。 リプリーが相手に「F●CK YOU」と言う時は確実に野郎をブッ飛ばす時だけだぜ。 「初代」のリプリーは震えながら「F●CK YOU F●CK YOU(クソ野郎クソ野郎...)」と呟くリプリーが、 「2」ではクイーンに向って「SON OF A BITCH(クソババア!!)」 しかしマジで化物だなリプリーって。普通血管が破裂して死ぬぞアレは…まあ映画だからご愛嬌、いや本当にリプリーが化物なのか。
[DVD(字幕)] 9点(2014-08-15 16:20:25)(良:2票)
32.  花とアリス〈劇場版〉 《ネタバレ》 
岩井俊二という人間を誤解していた。というか、見るまでは悪い噂しか聞いて来なかった。  もっとこう「瞳をとじて(殴るから)」という思いにかられる「世界の中心で、愛をさけぶ」みたいなクソ甘ったるい映画でも撮るのではないかとレッテル貼りをしていた(撮影が同じ篠田昇なので)。  ところがどうであろう。 ふとした事で見つけ“惚れてしまった”男をたばかり、勝手に妬み合って勝手に許しあうという笑って泣ける素晴らしい映画ではありませんか。篠田昇の仕事振りも良い。  とにかくこの映画、踊って踊って踊る映画だ。 道、夕日を背に歩く女子中学生が二人、白い息が物語る季節、電車。服を引っ張り「危ないから下がって」と無言で友達に伝える。 男たちを見て談笑し、何時の間にか男たちをストーキングする二人。 彼女たちが通う中学の様子とかはまったく映されない。彼女たちにとって、その男たちとの出会いが中学時代一番の青春だったのかも知れない。 物陰から見つめるあこがれ、でっかいカメラで撮っておきたいほど、どんな部活でも入部して一緒になりたいほど惚れてしまった乙女心。  流石に高校ともなると、学校や部活・習い事での思い出も増える。たまった鬱憤はバレエで発散。桜の下で再会するやいなや仲良く躍り始める二人。 それぞれに恋を知り、見た目も中身も成長していく。ガッツポーズで「頑張れ!」と無言で健闘を祈る姿も微笑ましい。  思わぬ“事故”でとっさに宮本に近づくための“嘘”をでっちあげてしまうハナの小悪魔振り。 勝手に思いを寄せ、相手が自分を知らない事に勝手に怒るムチャクチャさ。なんて酷い女なんだ(褒め言葉)。 宮本も本気で心配になる。それは自分のためじゃない。見ず知らずの、赤の他人の筈の女のためだ。彼も何時の間にか、何かに本気で挑む彼女たちに惚れてしまったのだろう。ワケも分からないまま。 「ごめん(何か知らないけど)」 彼がCTに入った瞬間、俺の腹筋は終盤まで散々痛めつけられる事が決定した。テリー伊藤がヤブ医者にしか見えない。絶対狙ってやってるだろ岩井www 夢で彼女をよく見る?それは悪夢の間違いとちゃいますか? 彼女の黒歴史や祭りでばったり会う度に奇声を発して恐怖に怯える宮本先輩。そりゃあ手がヌルヌルの女に捕まれたらビックリしますよ。  い い か  ら さ っ さ と 雨 で 洗 え  ハナの悪逆非道さはエスカレートし、テメエの黒歴史をアリスになすりつけるというクズ振り(褒め言葉)も発揮。お経と写真が交互に腹筋に襲い掛かる。 それに乗っかってしまうアリスもアリスである。役者を目指すために、友のため男をものにするために“演技”に体を張る。名前を書かせる事で情報を得るしたたかさ。 女の友情は時に美しく、ムッチャ怖い。二人ともなんつー着信音してんだ。宮本先輩は泣いていい。そしてマジでキレていいよ本当。 「君誰?(マジギレ)」 「嘘だよそんなの(呆)」  ハナも何故か逆ギレ。酷いのはテメエの脳味噌だっ! 友人もゲス顔で「ケンカしちゃダメだよ」と畳み掛ける。その一言が後に違う形で心に響いてくるのだから面白い。  それに対して、アリスはどんどん可愛くなっていきます。母親も新しい恋をして泣く。アリスは恋に敗れる事の恐れ、ハナに対する嫉妬も芽生える。 砂浜で走り、ブチギレて顔に掴みかかるキャットファイトに転じる凄まじさ。先輩も怒りを通り越して(というかワケが分からないけど取り敢えず)止めに入る。先輩泣いていいぞマジで。 おにぎりサンド食べたくなっちゃうじゃないか畜生。 そんな先輩の疑問を確信に変えるトランプ。アリスの父との思い出が思わぬ伏線に。 先輩が優しすぎて俺まで惚れちゃいそう。俺だったら帯引き抜いて首絞めてるわ(冗談です)。 いや、先輩は二人に仲直りして欲しくて怒るどころじゃなかっただろね。だって惚れちゃったのだから。  女たちを再び結びつける写真、互いに吹っ切れてそれぞれの道を突き進む。 母ちゃんも過去はさっさと水に流し、また新しい恋に向っていそいそと掃除機をかける。 クライマックスを飾る即席シューズによる美しいバレエの“演目”!
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-02 19:58:16)(良:2票)
33.  運動靴と赤い金魚 《ネタバレ》 
靴、靴、靴。それに足を入れて走って走って走って大地を“蹴る”。 それがこの映画だ。  冒頭から「靴」の映画である。 壊れた靴を直してもらい、途中寄った店で靴が入っているとも知らずに持っていかれてしまう袋。それは妹の靴だった。ここから物語は始まる。 「9歳はもう子供じゃない」という生活を送るアリは、ノートによる“筆談”を経て妹ザーラに自分の靴を貸すハメになる。 妹も走って走って走り、履き替えた靴でアリもまた走って走って走って学校に行く。 たった二足の靴を兄妹で仲良く大切に洗うシーンは微笑ましい。同級生の靴を物欲しそうに見つめる妹が可愛いすぎて和む。「同情するなら靴をくれ」的な。 川に流れてしまった靴を懸命に追いかけるシーンの健気さ。 アリもまた家の手伝いや妹の靴の件もあって好きなサッカーも出来ない、家は貧乏&家賃滞納で大ピンチ、その鬱憤を学校への全力疾走にぶつけて彼は毎日市街を駆け抜ける。その走りの成果が役立つなどとアリもつゆ知らず。女子は午前で男子は午後の授業? あのお茶のポッドが欲しくなる。  父親の自転車が坂道で止まらなくなったり、用水路の予想外の水流の速さと、この映画はとにかく動いて動いて動き続ける。  アリはどんな困難も「妹の靴、そして妹のため」を思えばと乗り越える。 一等よりも三等の価値、終盤のラストスパート! スローモーションが焦らすに焦らす演出が良い。手に汗握る。  どんな結果でも、妹の喜ぶ顔が見れないと思うと哀しい表情をするアリ。  だが、アリの父ちゃんは二人を笑顔にする“とびっきりのもの”を自転車に乗せて帰ってくる。 アリの傷ついた足を水の中で優しく舐め迎え入れる金魚たちは、アリたちに訪れる幸福を予感させる。  こんな面白い映画、よく90分以内に収まったもんだ。傑作です。
[DVD(字幕)] 9点(2014-10-09 19:21:25)(良:2票)
34.  転々 《ネタバレ》 
三木聡は「亀は意外と速く泳ぐ」も面白かったが、この犯罪の匂いがたちこめる、頭空っぽで楽しめる愉快なロードムービー&コメディも好きだ。  まずファースト・シーンからして面白い。 後ろから来た黒ずくめの男が、いきなり部屋の中の男の口に自分の靴下を突っ込む!その口に突っ込んだものを履くなwwwww  借金返済に与えられた3日という猶予、喋らない岸辺一徳、ジャギ→ジャイアン。 その辺をブラブラと歩いて談笑、ちょっとした事件に巻き込まれる、何時の間にか仲良くなる楽しさ、面白さ。  ところどころに笑いが転がっていて楽しい。  募金に対して「何で?」と思わず聞いてしまう。自分の身がヤバいというのにどうして他人に金をやらねばならんのか。 解っていても公の場で中々口にできない。でも思わず心の声が出てしまう。  靴ひも→鍵→鞄の中身は大金だと思った?残念俺だよっ!! 「人を尾行るのは面白いよ(ゲス顔)」 食虫植物に捕まったも同然。ワケあり借金取り、文字通り旅は道連れ(あの世行き)。  恋人たちとしょっ引かれるホームレスの対比、串をヘバりつける、落ちたオレンジをちゃっかり猫ババ、被写体を追うカメラ、ラベルで即興。 「歩道を自転車で通ってんじゃねえっ!!」  必殺ベル外し&車のオッサンも酷い二連コンボ。BBA涙目  崖の匂いって何だろうね。ダイナミックセクハラ。  福原「解せぬ」  性分(タチ)、サッカー、神社 理不尽キック、女房の自慢話、理不尽コイントス、バカ息子とラーメン屋、みんな家庭がうまくいっていない奴ばかり。  こんなとこでごゆっくりできるかっー!  OL軍団、思い出なんて大嫌い、畳屋との死闘、「コスプレに年齢なし」、つげ義春「訴訟も辞さない」、残念コスプレは吉高由理子とチェンジで(吉高由理子がコスプレで登場すると思ったのに残念)。  ワニがいたら食われたい、ヤバいと解って応戦、月光変態仮面、美術家気取りの女、絵上手いね・でもちょっと待て、黒人のオッチャン涙目、ゲリラライブを演り慣れたギタリスト、警官「チッ」、何故か真似るオダギリ。  占いとバッタリ、ポスト「何だおまえは」、とんかつ茶漬け喰ってみたい、武闘派時計屋との死闘、立てつけとの闘い、トラックに飛び乗る謎のスリル、ハンガーで首を回す、うがいを飲むな。  ガラスに映るシルエット、女もパンツ一丁でキャーキャー走る(吉高由理子の尻!)、すき焼きとマヨネーズ、飯を食いたくなる家族団欒の空間。  ジェットコースターと記憶の中の真実、並木道を2人で歩いていく。  「私は若返りたくないんですよー」のやり取り。  優しい目で語りかける「じゃあな」! この男は本当に“やった”のかは最後まで明かされない。一体何がしたかったのだろう。そこが面白いし好きだ。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-08 19:27:56)(良:2票)
35.  雨に唄えば 《ネタバレ》 
ミュージカルって甘ったるいメロドラマや悠長な歌で退屈してしまう映画が多いが、この作品はとにかく踊って踊って踊る面白さ! ジーン・ケリーやドナルド・オコナーの物凄いダンス、デビー・レイノルズのパワフルな歌声。何気に暗黒街の情婦役でシド・チャリシーも出てんだね。「バンド・ワゴン」のチャリシーは凄えぜ。 ジーン・ケリーが剣戟映画のような動きをする場面は、自身も出演したジョージ・シドニーの「三銃士」へのオマージュがあるそうだ。  スケート靴で街を走り抜けるシーンが良い例だ。雨が振るなら土砂降りの中でも歌い続ける!そういう腹の底からエネルギーが沸き立つ作品だぜ。「雨に唄えば」の旋律が心地良い。  物語はサイレントからトーキーに移り変わろうとする時代。 「ジャズ・シンガー」のエピソードや、サイレント作品を無理やりトーキーにしようとする話はハワード・ヒューズの「地獄の天使」辺りのエピソードだろうか。  ジーン・ヘイゲン演じるリナは、サイレントという「温床」で悪声でも問題なかった時代の終焉を物語る。 「ハリウッド・レビュー」の“悪声オンパレード”で一体何人の俳優が地の底に堕ちていった事か。  舞台出身で声は問題なかったキートン等も、サイレント時代のイメージと合わないというだけで姿を消していってしまう。  サイレント時代の終わりは、同時に舞台でセリフやダンスを磨き上げた叩き上げのトーキー(喋る)役者たちの時代の到来。 ボードヴィル等で活躍したジェームズ・キャグニーやポール・ムニといった語りで魅せる役者たちのな。  そういうストーリーがあるが、終盤の華麗なダンスの数々はセリフが無くとも圧巻なサイレントの「魅せる」演出。それが面白い。美しい映像だ。  ジョージ・ラフトもどきが何人も出るのがまた楽しい。  キャシーが表舞台に出るラストは感動的だけど、リナはちょっと可哀想だなあ・・・なんて。  それにしても、ジーン・ヘイゲンは本当に名演。 ジーン・ヘイゲンの事を甲高いオバサンくらいに思っている人は、ジョン・ヒューストンの「アスファルト・ジャングル」を見てみると良い。低いトーンの女性らしい声なのだから。これが本来の彼女の声。 本当は上手いのに、ワザと下手なフリをするというのは簡単に出来る芸当じゃない。正しく彼女は女優です。
[DVD(字幕)] 10点(2015-01-21 19:55:39)(良:2票)
36.  スティング 《ネタバレ》 
「テキサスの五人の仲間」が最高のどんでん返しならば、「スティング」は最高の計画通り。 騙される愉しみではなく、騙していく愉しみがスティングの魅力だ。 ユーモアたっぷりの犯罪映画。 ロイ・ヒルは「明日に向って撃て!」の方が好きだが、「スティング」もまた大いに楽しませてくれる傑作! 脚本の完成度で言えば「テキサスの五人の仲間」の方が上だが、純粋な満腹度で言えばやはり後年の「スティング」を俺は選ぶ。今回再見してみて一番印象が変わったのは、ポール・ニューマンの相棒を務めたアイリーン・ブレナンもとびきりの美人てほどじゃないけど場数を踏んだ女傑という雰囲気を前回見た時よりも強く感じた。キャサリン・ロスとはまた違った魅力を再発見できたのが嬉しい。 冒頭の見事な「詐欺」、一瞬のすり替え、ドライな殺し合い・・・動きで魅せる事にこだわったロイ・ヒルの粋な演出。 物語は1930年代のシカゴを舞台に、詐欺や賭博で生活を立てるフッカーの波乱に富んだ生活と復讐の物語。 各章ごとに区切る事でより盛り上がるストーリー展開、初っ端から金を騙しとるフッカーたち、その瞬間から全てのからくりが動き出す伏線のオンパレード。 賭博師・警官・マフィアの三つ巴、殺し屋、詐欺師、ボディーガードの三連装! 警官に殴られてもタダでは金をやらないフッカー。 警官・マフィアとの三つ巴の逃走劇は命のやり取りを楽しんでいるようにしか見えない。正に生きるか死ぬかの大博打。  フッカーを追うスナイダーの執着ぶり。 ここまで来ると「ルパン三世」に出てくる銭形警部のような愛着が湧いてくる。ある意味一番幸せな男だ。 ゴンドーフの詐欺師振りも凄い。相手がヤクザだろうが何だろうが度胸一番、酒は飲んでも飲まれずキッチリ大仕事。古女房ビリーとのコンビが面白い。 さあ今回最大の被害者となるドネガン。いやいやコイツは受けて当然の仕打ちよ。 命を取られた人間が一番の犠牲者なんだから。 なーに財布の50万$やら100万$なんざ軽い軽い(精神的に廃人になるだろうけど)。  ラストの締めも最高のエンディングだった。 「やっぱりそうなったか!待ってました、予想通りの最高の終わり方!」  本作は「騙される」のを期待して見る映画じゃない。 主人公たちがいかに仇を「騙して」金を巻き上げるかを見守る作品なのよ。主人公と仇の温度差をな。 そんな最高の映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-25 13:18:37)(良:2票)
37.  メトロポリス(1926) 《ネタバレ》 
フリッツ・ラングが当時のアメリカの摩天楼に衝撃を受け、妻のテア・フォン・ハルボウと共に熱狂しながら構想した「メトロポリス」。   公開当時は「近未来」、今ではゴシック調のSFファンタジー・サスペンスとしての面白さがある。  当時のドイツ美術の粋を結集した美しさ、自らも脚本を手掛けた「カリガリ博士」を思い出す怪しげなロートヴァングの研究所、機械工場の爆発と押し寄せる水、街に放置された車の山の不気味さ、そしてアンドロイドマリアの誘惑によって狂気の渦と化す人の恐怖。   1984年に熱狂的なファンだったジョルジオ・モロダーが尽力して本作が再び注目され、  2002年にマルティン・ケルパーが映像をデジタライズ、  2010年に行方不明だったフィルムが発見され「完全版」として蘇った。   ゴシック調の摩天楼が居並ぶ近未来的な都市。   冒頭から力強い機械の描写、労働者と富裕層が完全に分断された格差社会が拡がっている。   そう、本編の主軸は鮮烈な映像だけではない。  中世の貴族趣味に興じる富裕層、  近未来のはずの都市に「複葉機」が飛んでいる事自体、富裕層の道楽ぶりを表している。  近代的な都市を闊歩する富裕層の下で、自らの力で機械を動かす労働者たちが蠢いているのだ。   どんなに機械が発達しようと、それを作るのは人間だ。  手塚治虫が本作に影響を受けた事からも解るように、機械を創れるのは結局「人間」なのだ。  人がいなければ機械は目覚める事も無い。   当然、人間も機械ではない。  超過勤務や過重労働で肉体は疲れ、精根尽きるまで死ぬまで働かされる。  これでは「奴隷」と同じでは無いか。   だが、奴隷になりつつある労働者たちも黙ってはいない。  「頑張ればきっと神様が助けてくれる」と神を心の支えにして必死に生きているのだ。  労働者を励ます少女の「マリア」は、天使聖母マリアの如く人々の拠り所である。   様々な人物模様がメトロポリスをきしませていく。   壮麗な未来都市、  丁寧な作り込みの美術、  魅力的な登場人物、  起伏に富んだストーリーなどなど、我々を飽きさせない。
[DVD(字幕)] 9点(2014-01-25 12:54:42)(良:2票)
38.  火垂るの墓(1988) 《ネタバレ》 
確かに自業自得で死んだかも知れない、確かにほぼ毎年放送されて「うっかりチラ見してしまうだけで不眠症になるだろうがふざけんな日本TV」と思うかも知れない、確かに「トトロ」の後にこんな悲惨なもんを見せられて監督を殺したくなるかも知れない。  おばさんだって好きでいじめてるワケじゃないし、妹のために我慢出来なかった兄貴も悪いのかも知れない。働きもしないのだから怒られて当然・・・だが、だが、だが・・・あの子供は「恥をしのぐくらいなら死んだ方が良い」という戦争教育の犠牲者だったのではないか。 兄はその父親の教えに染まりすぎ、我慢も出来ずに勝手に戦い民間人が空襲で焼き殺されるのも“見殺し”にしやがった軍隊の、政府のクソ共の犠牲者なのかも知れない。ここまでくると、無残に転がる黒焦げの遺体になってしまった人が、そこに到るまでの事も考えてしまうんだ。「日本のいちばん長い日」みたいにな。  こんな点を付けるのも嫌になるくらい哀しい映画があっていいのだろうか。  戦争の悲惨さ、直接的な描写をしなくとも分厚い包帯と夥しい蠅と煙・・・これほどアニメから「死臭」を感じた事は無い。  小さい頃はよく解らずに見てたけど、大人になった今は逆に見るのが怖くなってしまった。 今だからこそ見なきゃなんないのにな。  だってよー節子がよー、節子がドロップとおはじきをよーうわああああっ!節子!それドロップちゃう!おはじきや!死ぬなーうわー!  高畑勲と宮崎駿が本気で殺しにかかった残酷さを感じた。 いつも夢と希望に溢れる現実逃避な作品が多いジブリだが、1本くらいこういう作品があっても良いと思うんだ。  そんなわけで「はだしのゲン」と双璧をなすこの作品、忘れちゃいけないね。
[DVD(邦画)] 9点(2014-12-16 22:39:07)(良:2票)
39.  アッシャー家の末裔 《ネタバレ》 
60分版を鑑賞。 ジャン・エプスタン(ジャン・エプスタイン)監督、ルイス・ブニュエルも参加したホラー映画。ブニュエルが同監督の助監督を務めるのは「モープラ(Mauprat)」以来。 悪夢めいたイメージが多様されながらも、エドガー・アラン・ポーの原作に忠実な展開となっている。  不気味な木々、落ち葉が敷き詰められ湿っている不安定な足場、そこを荷物を持って歩いてくる男。 男は家らしきところを見つけるとドアを開け、住人に手紙を見せて「アッシャー家」を尋ねる。   「アッシャー」の名前を聞いて男たちは驚き、窓から馬車を覗く女も微妙な表情を見せる。 湿地を駆ける馬車、一方のアッシャー家。広い居間、椅子を挟んで見つめ合う男女、男は絵の具のプレートを取ると絵を一心不乱に描きはじめる。  愛した筈の妹への愛は絵に移ってしまったらしい。絵の中の精気に満ちた彼女、現実の今にも倒れそうな彼女。  馬車の行く手を阻むように立ち込める霧、霧が晴れるシーンは後に黒澤明が「蜘蛛巣城」でオマージュを捧げていた。 室内に流れる風、ワイングラス、女の肖像画、室内でコートを厚くはおる人々。寒いならなぜ窓を閉めないのだろうか。   風で燃え盛る蝋燭の火、本棚から落ちる本、舞い散る絵や木の葉、ゴミ。 響き渡るであろうギターの音色。海、霧がかった森の映像が交互に重ねられる。この霧や海、雲のイメージは幾度も繰り返し現れる。  屋敷の不気味なオブジェたち。甲冑の鎧、古時計、地べたを歩く猫、壁に描かれた別の女の顔。   男は憑り付かれたように絵を見つめ描き続ける。女はモデルとして同じ場所に束縛され、夥しい蝋燭の熱にうなされる。女は徐々に衰弱していく。女を襲う「めまい」。   疲れ果て椅子に座り込む女、男は立ってくれと懇願するように両手の手を掴む。女の顔を見て休ませようとか、そんな考えは毛頭ないのだろう。 無理な作業を続行させられ、とうとう両の手をひろげて倒れこむ妹、そこに居合わせてしまった来客。   いつまでも眼を見開いて見つめ続ける絵の中の妹、後ずさりをして脚にあたる倒れた現実の妹。絶望に満ちた表情で抱きかかえる。殺してしまった事への罪悪感か、あるいわモデルを失ってしまったショックか。  ベッドに横たわり沈黙する者、階段を降りた先で白い棺を抱える男たち、不気味なオブジェが並ぶ地下。 ゆっくりゆっくりと階段を上っていく、医者にすがりつき死を受け入れられない様子。「まだ彼女は死んでいない!!」とでも言いたげ。いや、男は女が再び自分の目の前に現れると信じきっているらしい。終始キラキラした眼をしているのはそのためなのだろうか。神経症の影響だけではないのだろう。  白いベールの彼女、黒衣をまとう絵の中の彼女。棺から溢れ出るベール。棺の釘を打とうとするハンマーを見て飛びかかろうとする男の狂気。「私の妹を閉じ込めるきか?」とでも言いたげな。   蝋燭が高い木のようにそびえる幻、棺を運ぶ男たちの黒い影がそこをゆっくりゆっくりと進んでいく。   死者を乗せる船、ベールは森の風になびき水面になびく、収められるベール、うらめしそうに葬儀屋たちを見つめる男の顔、棺桶に釘を打ちつけるショットを何度も繰り返す。   岩場の蛙の親子?夫婦?と現れ始める白い“幻”。 打ち捨てられたギター、弾ける弦、時計の振り子や歯車、不気味に揺れ続けるカーテンと光、光、光。暗闇を彷徨いはじめる男、それを見守る男。男は彷徨いそうになる男を落ち着かせようと朗読を始める。    風と共に迫りくる「何か」、白い幻、ひとりでに開く扉、闇の向こうに落ちる雷。雷はやがて館の木も焼き尽くす。 ひとりでに動きはじめる棺、手を組んで祈るように何かを待つ表情。待っていた者が来たのか、今までに見せた事のないような無邪気な笑顔を見せる。  炎のようになびく白いベール、扉の影から徐々に現れる白い幻想。ゆっくりゆっくりと近づいてくる。風によって吹き飛ばされる本、倒される甲冑。  気がつけば巨大な火が部屋を包み込もうとしていた。目の前に現れる白い幻、屋敷を包んでいく炎。絵の中の“幻”も燃え尽きる。   原作の世にも恐ろしい凄惨な結末とは大分違うが、これはこれで脱出した二人がまた絵のモデルと書き手になる狂気の作業を繰り返すのかと思うと怖くなる。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-07-12 13:53:20)(良:2票)
40.  鴛鴦歌合戦 《ネタバレ》 
「弥次喜多道中記」に並ぶオペレッタ時代劇の傑作。前者が歌と股旅映画が融合した作品ならば、この作品はミュージカルとしてより洗練された楽しさ。歌いっぱなしの「鴛鴦歌合戦」、歌ありアクションあり何でもござれの「弥次喜多道中記」。どちらも大好きな映画だ。  正月特番で作られた1時間映画だが、みんな「演じている」という堅苦しさが無い。量産性・劇団のような俳優陣の共通は何百回と稽古を積み上げた迫力を味わえる。みんな活き活きとした表情で元気に歌いあっている。当たり前だがみんな歌が絶品。ディック峰、志村喬と歌も演技も最高の面々が揃っている。  ストーリーそのものは典型的な時代劇だが、殿様見物、微妙な三角関係、価値観の崩壊(骨董収集がガラクタの山と化す志村喬)、金か愛か、ラストの踊る様な立ち回りなど見所が多い。  特に終盤の殺陣は面白い。無駄なチャンバラはせず、身のこなしだけで刀を避け敵を投げ飛ばす。  死人が出ない喜劇タッチの面白さ。  でもちょっとは斬り込めよディックさん・・・(笑) その辺ひっくるめて誠に愛らしい存在です。  ラストの展開は多少強引かなと思ったが、エンディングのカーテンコールの見事さに唸りっぱなし。   俺にとって作品の面白さに時代は関係ないんだな・・・という事を痛感させられた映画の一つです。
[DVD(邦画)] 10点(2013-12-29 14:52:41)(良:2票)

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