Menu
 > レビュワー
 > イニシャルK さんの口コミ一覧。3ページ目
イニシャルKさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1490
性別
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/22718/

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順12345
投稿日付順12345
変更日付順12345
>> カレンダー表示
>> 通常表示
41.  あゝ声なき友 《ネタバレ》 
所属していた部隊でただ一人生き残った男が、復員後、亡き戦友たちが書いた最後の手紙をその親族に渡すために全国を渡り歩く姿を描いた今井正監督の反戦映画。今井監督の「喜劇 にっぽんのお婆ちゃん」に脇役で出演していた渥美清が企画の段階からかかわり、主演した作品で、この頃、「男はつらいよ」シリーズで人気を得ていた彼の寅さんだけではなく俳優としてもっといろんな役を演じてみたいという意欲が感じられる作品となっていて、コメディータッチのシーンは一切なく、非常にシリアスな展開だが、今井監督らしいメッセージ性の強い力作で、映画としては佳作といっていい出来。しかし、春川ますみや財津一郎、松村達雄など「男はつらいよ」シリーズでも何度か見かける面々が何人か出ている(倍賞千恵子も出てるし。)こともあってか、渥美清のシリアスな演技に妙な違和感を感じてしまうのも事実。確かに今井監督はこういうテーマの映画にはうってつけの監督で、さっきも書いたように見ごたえのある力作に仕上げているし、これも繰り返しになるかもしれないが、寅さんのイメージを打破したかった渥美清の意欲も分かる。だがもし、今井監督でなく、野村芳太郎監督や山田洋次監督など渥美清と付き合いの深い監督がこの映画の監督だったら、この映画の印象はまったく違うものになっていたかもしれないし、なによりも渥美清という俳優の持ち味がもっと発揮される映画になったかもしれない。見終わってついそんなことを考えてしまった。
[DVD(邦画)] 7点(2013-03-14 14:00:31)(良:1票)
42.  あゝひめゆりの塔
のちに戦争映画の大作を何本か手がけることになる舛田利雄監督によるひめゆり学徒隊をテーマにした反戦映画。主演が吉永小百合と浜田光夫というのが不安ではあったが、「日本海大海戦 海ゆかば」のような中途半端な恋愛要素はなく、ひたすら悲劇的な末路を辿る少女たちの運命が丹念に描かれていて思ったよりはずいぶんいい映画だった。何回かリメイクされている「ひめゆりの塔」とは直接は無関係な映画だが、それでもこういう映画は見終わって何か考えさせられるものがある。白黒作品というのもリアリティーがあってそれのおかげで生々しさもより伝わりやすいものとなっている。でも冒頭の現代のシーンは最初よりもラストに持ってきた方が効果的だったと思うし、吉永小百合は熱演しているが、やはり少し演技力は微妙ではある。しかし、全体を通して神山征二郎監督の「ひめゆりの塔」(唯一自分が見たことのあるひめゆり学徒隊を扱った映画。)と比べると重みが全く違う作品になっている。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2012-05-01 12:04:52)
43.  あにいもうと(1953) 《ネタバレ》 
成瀬巳喜男監督による文芸作品。タイトル通り兄と妹を描いた物語なのだが、これがけっこうドロドロとしている。それでもこの映画に出てくる兄妹はどこか他人事ではない気がしてしまうのも事実で、兄(森雅之)が妹(京マチ子)を妊娠させた男(船越英二)に暴力を振るうシーンはこの兄の妹に対する素直な思いが伝わってきて感動したし、もしぼくが同じ立場なら相手の男に対して同じことをするのではないかとつい思ってしまった。だから、そのことを巡って起きる終盤の二人の凄まじいケンカのシーンは、兄と妹、双方の気持ちが理解できるような気がする。しかし、ラストのもんがさん(久我美子)に兄に対する思いを打ち明けるシーンがこのドロドロとした兄妹愛を描いた映画のラストとしては実に後味がよく、このシーンがあるからこんなドロドロとした映画を見終わったあとでもさわやかな印象が残り、成瀬監督の余韻の残し方のうまさを感じる。大映作品であるためか京マチ子や船越英二が成瀬作品に出演していているのが珍しいし、ほかの成瀬作品と比べてストレートに感情を表現するシーンが多く、終盤のケンカのシーンの凄まじさもあり、映画としてはなんだか同じく成瀬監督の「あらくれ」に近い印象。兄を演じる森雅之が少しミスキャストのような気がするのが惜しいところだが、それでも成瀬監督らしい人間の描写が素晴らしく、じゅうぶんに佳作といえる映画だと思う。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2011-12-24 14:44:51)(良:1票)
44.  赤い波止場 《ネタバレ》 
舛田利雄監督による裕次郎主演のアクション映画。舞台となる神戸の街が白黒の映像とすごくマッチしていて、雰囲気がかなりよく、思ったよりは楽しめた。岡田真澄が射殺されるシーンで直接は撃たれるシーンを描かないなど、舛田監督の演出も見せ方に凝っている。ラストも安易なハッピーエンドでないのがよかった。しかし、クライマックスのニセ新聞を使って主人公をおびき出して逮捕するという警察の作戦はあまりにもリアリティーがないように感じられ、もっとほかの方法もあっただろうにと思ってしまう。裕次郎映画のヒロイン役が北原三枝の時代の作品で、とうぜんのように本作もヒロインは北原三枝なのだが、個人的にはイマイチこの人の魅力が分からないので、このヒロインにもあまり感情移入ができない。(「愛のお荷物」の秘書役はけっこう好きなのだが。)裕次郎の命を狙う組の兄貴分を演じる二谷英明もすっかり裕次郎映画での悪役イメージが出来上がってしまっているため、安心して見ていられる反面、新鮮味には欠ける気がする。でも、さっき書いたように映画のムードはなかなかいいので見ていて退屈するようなことはなかった。中原早苗が出演しているが、自分の中では「仁義なき戦い」シリーズや「修羅雪姫」での強烈な印象が強くなっているせいか、(日活時代の出演作をあまり見ていないというのもあるんだが。)若々しくて可愛く見えたことが新鮮といえば新鮮だったかな。
[DVD(邦画)] 6点(2011-11-23 13:37:23)
45.  アキレスと亀 《ネタバレ》 
北野武監督の「芸術家三部作」の第三作。「TAKESIS」と「監督・ばんざい!」では自分自身をそのまま主人公にしたような映画になっていたが、本作は少年時代に絵という芸術に魅せられ、画家を志した男の一代記を描いており、前2作とは毛色のだいぶ違う映画になっている。主人公の少年時代と青年時代は暗いトーンで描かれており、セリフも少なめで、それでいてブラックユーモアも織り交ぜてあるなどいかにもたけしらしい映画に仕上がっている。(登場人物が死にまくったり、寺島進がヤクザ役でワンシーン出るのもたけしらしい。)後半、中年になった主人公(ビートたけし)が妻(樋口可南子)と歩む芸術家人生は喜劇タッチになっていてつい笑ってしまうシーンも多くあるが、そうまでして自分の芸術に対する思いを爆発させる主人公を皮肉っているようにも見える。しかし、ちょっとおだてられるとすぐにその気になる人というのは確実にいて、でも、やがてそれが趣味の域を出ないものと分かってしまったり、自分にはそんな才能なんかないと思い始めて、自信を無くしてしまう人も中にはいるだろう。少年時代から中年に至るまで絵のことしか頭にないようなこの主人公はそんなこと一切なしにひたすら自分の信じた道を異常なまでに突き進むのだが、ここまで自分の信じた道をなんの疑いも迷いもなく突き進む人って現実にはなかなかいないと思う。今はまったくそうではないが、僕自身が昔、できるだけ多くの映画を見ようと今よりもたくさん映画を見ていた時期があり、(将来は映画評論家だねと周囲におだてられてその気になっていた。)この映画とはちょっと違うのだが、一つのことに熱中する姿にその頃の自分と重なる部分が感じられ、どんなに絵を酷評されても描くことをけっしてやめようとしないこの主人公には少し感銘を受けた。それだけでも見て良かったと思える映画だ。主人公を皮肉っているように見えると書いたが、それでも「芸術家三部作」の中ではたけしが唯一本気で芸術を描こうとしているのが分かるし、三本の中ではこれがいちばん良かった。それに全盛期(「その男、凶暴につき」から「HANAーBI」くらいまでの作品。)には及ばないが、久石譲を音楽に起用しなくなってからのたけし映画の中ではこれがいちばん映画監督としてのたけしの良さが出た映画だと思う。たけしは「HANAーBI」や「バトル・ロワイアル」でも自作の絵を登場させていたが、この映画では自身の絵描きとしての側面をテーマにしたこともあってか、登場する自作の絵の持つ意味がその2本よりも大きいのは言うまでもないだろう。
[DVD(邦画)] 8点(2011-10-13 16:38:35)(良:1票)
46.  悪霊島 《ネタバレ》 
監督 篠田正浩、脚本 清水邦夫。これだけ聞くとATG映画を思い浮かべてしまいそうになるが、角川映画の金田一ものである。あまりいい評判を聞かない映画で、全然期待していなかったが、まあ思ったよりは楽しめたし、石坂浩二の金田一に慣れてしまっていて見る前は多少不安のあった鹿賀丈史の金田一も悪くはない。しかし、時代設定が1969年で金田一と知り合う古尾谷雅人演じる青年がヒッピーだったり、テレビからコント55号のバラエティー番組が流れているのは違和感を感じる。しかも、そこに袴姿の金田一がいるというのもなんか浮いて見える。金をかけて使用権を獲得したという劇中に流れるビートルズの曲や冒頭に流れるジョン・レノン射殺のニュース映像もイマイチ意味がよく分からないし、ただ使いたかっただけのようにも思える。それに金田一もので洋楽というのはやっぱり合わないな。岩下志麻が演じる双子が実は同一人物であったという展開も早い段階で読めてしまい、意外性はない。ただこの岩下志麻の狂気じみた演技はやっぱりはまっていて、岸本加世子の首を絞めるシーンや、伊丹十三を殺そうとするシーンなどは、彼女が演じているからこそよけいに恐怖を感じられるものになっていると思う。撮影は宮川一夫で相変わらず撮り方もうまい。劇中に人間の手首をくわえた犬が登場するのは同じく宮川一夫が撮影を担当した「用心棒」を思い起こさせていて、セルフ・パロディーかと思ったがおそらく偶然だろう。
[CS・衛星(邦画)] 5点(2011-08-13 14:08:42)
47.  アウトレイジ(2010)
「全員悪人」と謳われているとおり本当に全員がワルで、またそれぞれが個性的に描かれていて面白かった。出演者がたけし以外は全員、北野武監督の映画に出演するのは初めてというのも異色。登場人物が次々殺されていく映画をというところから企画が始まったらしく、とくに後半は殺人のオンパレードで、普通なら目を背けたくなるようなシーンの連続なのになぜか安心して見ていられるから不思議。ヤクザを演じる俳優陣は國村準、石橋蓮司といった強面はもちろん、あまりこういう役をやる印象のない加瀬亮や三浦友和といった面々まで好演している。とくに三浦友和がなかなかいい。逆に山王会会長を演じた北村総一朗は確かにうまいけれども「踊る大捜査線」でのとぼけた署長役の印象が強すぎて(ほとんどあの役しか見たことがないのもあるが。)どんなに凄んでも笑えてしまう。たけしの最近の監督作を見るのは「座頭市」以来だったが、全体的に「座頭市」と同じく娯楽に徹している感じで見やすくなっているが、つい最近「その男、凶暴につき」や「3-4X10月」を見たばかりなので、それらと比べるとセリフの量が増えて見せ場が派手になり、初期の映画にあったどこか冷徹な雰囲気もあまり感じられなくなっているのは少々残念。「座頭市」や本作のような娯楽に徹した作風も面白いし、嫌いではないが、個人的には初期の監督作品のような独特の静けさの中に狂気を感じさせる映画のほうが映画監督としてのたけしらしさを感じられて好きだな。
[DVD(邦画)] 7点(2011-06-23 13:33:20)(良:3票)
48.  網走番外地(1965) 《ネタバレ》 
高倉健が一躍大スターとなるきっかけとなった作品で、このあと「昭和残侠伝」とともにシリーズ化された一作目。東映時代の高倉健の主演映画を見るのがまだ3本目なのだが、ストイックで寡黙なキャラをこの頃から演じている・・・と思ったら高倉健がほかの囚人たちと一緒に陽気に裸踊りをするシーンは自分の高倉健に対するイメージを覆すもので、今見るとかなり新鮮に感じられる。前半がとくに面白く、雪道に捨てられたタバコの吸殻を拾ってうまそうに吸うシーンが妙にリアルだし、アラカン演じる老人服役囚と高倉健演じる橘との絡みも印象的だ。しかし、後半はなんちゃって「手錠のままの脱獄」になってしまい、終わり際も南原宏治が母親の名前を口にするのがやや唐突に感じてしまったのがちょっと残念だったかな。出演者の中ではやはりアラカンが存在感があり、日本映画草創期の俳優らしい威厳を感じさせていて印象的だった。彼が八人殺しの鬼寅だとほかの囚人に明かすシーンは見ていてなんだか笑えるが、同時にそのシーンがこの映画におけるアラカン最大の見せ場だと思う。そうそう、石井輝男監督の映画を見たのはこれが初めてだったのだが、カルト映画の監督と聞いていたからあんがいオーソドックスなつくりに逆にちょっとビックリ。(最初に書いた高倉健が陽気に裸踊りするシーンはこの監督ならではのことなのか?)まあ最初からいきなりカルトな映画を見るよりはこのほうが入っていきやすいかもしれない。
[DVD(邦画)] 7点(2011-06-08 23:27:53)
49.  嵐が丘(1988)
吉田喜重監督がエミリー・ブロンテの名作文学を中世の日本を舞台に脚色し、映画化した作品。中世を再現したセットは、黒澤明監督の映画で美術を担当する村木与四郎だけあって、黒澤監督の「乱」のような重厚さがあり、全体的に見て非常に芸術性の高い映画になっている。しかし、吉田監督の演出はやや力みすぎの印象があり、松田優作は主人公 鬼丸を彼ならではの野性味あふれる演技で演じているが、相手役の田中裕子との共演シーンは二人の相性がよくないのか少し違和感を感じたし、ストーリーもやや退屈に感じる。石田えりをかなり久しぶりに見たような気がするが、三國連太郎が出ていることで、実際の共演シーンが無いにもかかわらず、この年始まった「釣りバカ日誌」シリーズのスーさんとみち子さんを思い浮かべてしまった。
[CS・衛星(邦画)] 4点(2011-05-13 21:25:06)
50.  天城越え(1978)<TVM> 《ネタバレ》 
のちに松竹で映画化もされた松本清張の原作をNHKがドラマ化した作品。映画も傑作だったが、このドラマ版もなかなか面白かった。演出はNHKのディレクターだった頃の和田勉なのだが、登場人物の心理描写や、風景描写がかなりしっかりとしていて臨場感たっぷりで見ごたえがあり、テレビで見せるタレントとしてのコミカルな雰囲気からは想像もつかないような素晴らしい仕事ぶりに感服。役者陣も寡黙な佐藤慶、少年を演じた子役時代の鶴見辰吾(この翌年が「3年B組金八先生」で、その次の年が「翔んだカップル」か。)、この二人のバランス感覚も絶妙で、とくに鶴見辰吾は、嫉妬が殺意に変わる少年という難役を好演していてとても印象深い。映画で大塚ハナを演じた田中裕子が素晴らしかっただけに本作の大谷直子の大塚ハナはどうなのかと思っていたが、さすがに田中裕子ほどのインパクトは感じなかったものの、それでも大谷直子もなかなか良いと思う。ラストで事件を目撃する遍路の役で松本清張自身が出ているのがちょっと驚き。ほかにもいくつかの作品でのカメオ出演があるようだ。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2010-04-06 14:35:14)
51.  悪名一番勝負
「悪名」シリーズ第15作。このシリーズは5年ほど前に1作目と2作目を見ただけだったが、その状態でいきなり事実上最後の回である本作を見た。このシリーズに馴染みがあると田宮二郎が出ていないのは違和感を感じるかも知れないが、まだこのシリーズを見るのは3本目ということもあってか、そこは全く気にならずに楽しめた。勝新演じる朝吉のドスの利いた河内弁や豪快なキャラクターはとても魅力的で、座頭市とはまた違った良さがある。それに本作はマキノ雅弘監督が手がけた作品ということもあってか、勝新以外の脇役たちも実にイキイキとしていて、それぞれの登場人物がみんな魅力的に描かれていてその面でも非常に面白かった。マキノ監督の映画ってまだあんまり見てはいないのだが、この頃には東映で任侠映画をたくさん手がけていたみたいで、大映の本作もその頃の任侠映画ブームに乗ってマキノ監督を起用してるんだと思うのだが、東宝の「次郎長三国志」シリーズのようなお祭り的な雰囲気のある作品に仕上がっていたのが嬉しい。「次郎長三国志」といえば本作に津川雅彦がドモリのヤクザ役で出演しているが、重傷を負ったのと引き換えにドモリが治るあたり森の石松を思わせていて、これもマキノ監督の石松への愛着を感じさせていてなんだか嬉しかったなあ。
[DVD(邦画)] 7点(2009-12-24 14:39:18)
52.  天城越え(1983)
「砂の器」でもそうだったが、本作もサスペンス・ミステリーよりは人間ドラマに焦点が置かれた重厚で深みのある作品で、天城峠の美しいロケーションも素晴らしい。しかしなんといっても田中裕子。今まで何本か映画やドラマで見てるけど、こんなにも美しく、妖艶な魅力を放つ彼女を見るのは初めてな気がする。とくに犯行を自供したあと雨の中でびしょ濡れになるシーンはなんともいえない美しさでついウットリしてしまう。はっきり言ってこれなら主人公少年でなくてもこちらも惚れてしまいそうなくらいとにかく美しく、そして切ない。中盤の取り調べのシーンの演技もかなりの熱演で今まで田中裕子に対してこういう激しい演技をするというイメージがあまりなく、どちらかといえば少し病弱そうでおとなしい役が多いイメージが強かったため、かなり驚いた。そんな田中裕子にすっかり魅せられてしまったからか、ラストはやるせない気持ちになった。最初に書いたように重厚で深みのある映画で、映像も美しいのだが、やはり田中裕子の存在がこの映画の質をかなり高めているのは間違いないだろう。じゅうぶんに傑作といえる映画である。
[DVD(邦画)] 8点(2009-06-17 20:38:18)(良:2票)
53.  ああ爆弾
自分がここ数年見た岡本喜八監督の作品といえば「日本のいちばん長い日」や「侍」をはじめ、どちらかといえば直球勝負のシリアスな作品が多かった気がするが、今回見たこの作品はいかにも喜八監督ならではという感じのシュールなミュージカルコメディー映画で何も考えずに楽しめた。冒頭の拘置所でのやりとりから引き込まれ、そこからもう喜八ワールド全開という感じ。主演の伊藤雄之助というと毎回印象に残る演技を見せる名優であるが、この映画では越路吹雪とのかけあいや、お経の太鼓の音に合わせて起き上がったり、汲み取り姿で散髪屋に入ってくるシーンなどとにかく笑える演技が多く、とにかく見ていて楽しい。銀行でのミュージカルシーンも馬鹿馬鹿しくてつい笑ってしまう。(有島一郎と桜井浩子がうたうシーンなんかはとくに印象的。)そんなバカみたいな展開の中にも権力者に対する喜八監督の怒りのようなものも感じ取れ、そういうところも喜八監督のらしいところだと思う。「日本のいちばん長い日」のような直球大シリアスな喜八作品も好きだが、喜八作品といえばやはりこういう一風変わった映画のほうが個人的には好みかもしれない。そうそう、能が取り入れられていて、伊藤雄之助が出てるからかちょっと川島雄三監督の「しとやかな獣」を思い出してしまった。
[DVD(邦画)] 9点(2009-03-25 20:00:35)(良:1票)
54.  青葉繁れる
テレビドラマにもなった井上ひさしの原作を岡本喜八監督が映画化した青春映画。丹波義隆をはじめとする三人が実に田舎臭い演技で本当に田舎の学生のように見え、それに東京からやってきた草刈正雄を加えた四人組が主人公なのだが、これが四人とも実にいいキャラをしていて、やりとりを見ているだけで楽しい。喜八監督の映画としては特に傑作といえる出来ではないが、それでも喜八監督らしい明るい映画になっていてそれでいて少し切ない展開もあり、全体的に見てもとても面白かった。「ロミオとジュリエット」の稽古のシーンで太った中年の女性の先生が「おー、ロミオ!あなたはなぜロミオなの」と有名なジュリエットのセリフをいうシーンには思わず爆笑してしまった。「二女校のマドンナ」ことひろ子を演じる秋吉久美子もかわいくて魅力的だ。そしてなんといっても校長を演じるハナ肇が素晴らしい。最近自分の中でクレージーキャッツの映画でのイメージが強くなりつつあったが、やっぱり一人の役者として見てもとてもいい俳優だと思う。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2008-11-24 18:08:29)
55.  赤頭巾ちゃん気をつけて 《ネタバレ》 
森谷司郎監督といえば黒澤組出身で、「日本沈没」や「八甲田山」といった超大作映画の監督というイメージが強いが、「日本沈没」以前は青春映画を連作していたようで、これもその一本。時代背景なども盛り込まれていてそのあたりは興味深いが、淡々とした山場のない展開に退屈してしまい、どこが面白いのか分からないまま終わってしまったような感じで、はっきり言ってつまらなかった。原作は当時の若者に支持されたらしいので、公開当時にリアルタイムで見ていればまた違ったかもしれないがそのころまだ産まれていなかったし。それと、個人的な話になってしまうが、冒頭で死ぬ主人公の飼い犬が犬種は違うが、わが家で飼ってる犬と同じ名前だったのはまったくの偶然とはいえやはり嫌な気分になってしまった。森谷監督の青春映画を見たのはこれが初めてだったのだが、これを見て森谷監督のほかの青春映画に興味がわくかといわれれば、うーん、ちょっと微妙かもしれない。
[CS・衛星(邦画)] 3点(2008-11-23 14:08:06)
56.  あじさいの歌
裕次郎と芦川いづみのコンビ作はかなり久しぶりに見たが、やはり若い頃の裕次郎はアクション作品よりもこういう文芸作品で等身大の青年役のほうが個人的には好きだ。相手役の芦川いづみはこの映画でも抜群に可愛く、美しく、彼女を見ているだけでこちらの顔が自然とほころんできて、これだけでもこの映画を見てああ良かったなと思う。劇中、芦川いづみが裕次郎に自分は世間的に見て美しいのかとたずねるシーンでは思わず見ているこちらがうなずいてしまった。それくらい本当に可愛くて美人で素敵なのだ。そんな可愛くて美しい芦川いづみを何年も自宅の外に出さなかった東野英治郎がはっきり言ってすごく羨ましい。って何書いてんだ俺。脇役陣をみると轟夕起子や殿山泰司、北林谷栄なんか出てて「洲崎パラダイス 赤信号」や「わが町」を見てる身としてはつい川島雄三監督を思い浮かべてしまった。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2008-08-23 11:26:21)(良:1票)
57.  青空娘
若尾文子といえば落ち着いた上品な大人の雰囲気が漂う女優、あるいはちょっと小悪魔的な魅力を持つ女優というイメージがあるのだが、増村保造監督との初コンビ作となる本作では、そのイメージとは違う明るく元気なヒロインを演じていて、川島雄三監督の「しとやかな獣」や「女は二度生まれる」でも印象的だった彼女だが、ここまで爽やかで清潔感溢れる魅力を感じるのは初めてだ。映画の面白さや完成度としては確かに「しとやかな獣」や「女は二度生まれる」、同じ増村・若尾コンビの作品なら「華岡青州の妻」のほうが上だと思うものの、この映画の若尾文子の明るい魅力にはとにかく「やられてしまった」という感じですごくかわいい。そして映画としても増村監督らしいハイテンポな演出も見ていて心地よく、軽い仕上がりになっていて、とても見やすく楽しいものになっている。脇のミヤコ蝶々や南都雄二もいい味を出していて楽しいが、とにかく本作「青空娘」は、何度も同じことをいうようだが、若尾文子、若尾文子の魅力に尽きる映画だ。
[DVD(邦画)] 8点(2008-07-08 20:28:32)(良:2票)
58.  あらくれ(1957) 《ネタバレ》 
とにかく荒々しい主人公を熱演する高峰秀子の演技に圧倒されてしまい、見終わった特にはなにかすごいものを見てしまったという気がした。とくに加東大介扮する夫との取っ組み合いの喧嘩のシーンはすごく、今まで成瀬巳喜男監督の映画何本か見てるけどここまでテンションの高いシーンのある作品はなかったし、ラスト近くでの主人公が夫が愛人と会っているところに乗り込んでくるシーンもものすごい。この二つのシーンは本当に今まで見た成瀬作品から考えれば異質であるし、青観さんが書かれてるように川島雄三監督の作品のような勢いを感じた。そんな中でもこの映画は運命に翻弄される一人の女の生き様を描いたドラマとしても見ごたえのある作品になっていると思うし、最初に書いたように荒々しく、強く、逞しいヒロインを演じる高峰秀子が圧倒的な存在感を放っており、演技力も抜群で素晴らしいの一言である。それから、最初の夫を演じる上原謙が陰険なダメ男というのも珍しい。いつもと印象が違いすぎてしばらく気がつかなかった。映画館のシーンは弁士がいたり、途中でフィルムが切れたりして舞台となった大正時代の時代性がよく出てる。劇中頻繁にかかるチンドン屋の音楽も印象的。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2008-06-23 00:16:40)(良:2票)
59.  青い山脈(1949)
二部構成三時間の大作と聞いて、ちょっと躊躇してしまったが、実際見始めるとゆったりと展開していく映画にも関わらず長さをあまり感じずにだれることなく見られた。とにかく、映画全体に漂う明るく爽やかな開放感がたまらなく心地よい。10年くらい前に1度だけ見た吉永小百合主演の日活版にも爽やかさはあったが、もう全然違った印象を受ける。おそらくこの違いは、日活版は青春アイドル映画的爽やかさであり、この映画の爽やかさと心地よさは既に青観さんが指摘されてるように終戦間もなき頃の貧しい時代に作られたことが影響してるのだろう。これだけでもこの映画が製作されてから60年近く経った現在でもなぜ名作と呼ばれているのかが分かる気がする。出演者に目を向けると、池部良や伊豆肇なんかは当時既に学生役を演じるには無理のある年齢だというのに、違和感がほとんどないし、原節子や木暮実千代の美しさには思わず目を奪われてしまう。特に木暮実千代がこんなに綺麗な女優だったとは今まで何本か出演作見てるのに思わなかったのが不思議なくらいだ。杉葉子や若山セツ子も可愛らしかった。今井正監督の作品を見るのは初めてで、書籍などでかたい作風の監督というイメージがあったのだが、会議のシーンなど笑えるシーンも多く、全体的にそんなに深刻にならずに見られたのも良かった。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2008-04-14 01:34:59)(良:3票)
60.  愛のお荷物
冒頭のハイテンションなナレーション(「幕末太陽伝」と同じ加藤武)から一気に引き込まれた。その後すぐの国会での菅井きん演じる女性議員(「ゴジラ」)と山村聡演じる大臣との質疑のシーンから川島雄三監督らしいテンポのいい演出で見ていて楽しいし、それでいながら答弁に対して周りの議員から野次が飛んだりするのもリアルに演出されていて感心した。ほかにも川島監督ならではの笑いが随所に盛り込まれた喜劇映画で、電話越しに婚約者にドラムを演奏して聴かせるフランキー堺(本物のドラマーだけあって上手い。)とか、仮病を使う東野英治郎が最高に笑える。一人三役を演じている三橋達也とかこの後、「暖簾」で再び川島監督と組むことになる山田五十鈴も出ていてなかなか豪華で贅沢なキャスティング。後に裕次郎夫人となる北原三枝は「狂った果実」を見て以降悪女というイメージが個人的には強いのだけれどもこの作品では全く違う魅力を出していてとても良かった。全体的な内容としては少子化の現代に見るとちょっと時代を感じてしまうのも事実であるが、非常に楽しい映画だった。
[DVD(邦画)] 8点(2007-12-18 14:06:03)
000.00%
190.60%
230.20%
3463.09%
4493.29%
531921.41%
634323.02%
734723.29%
828018.79%
9563.76%
10382.55%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS