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1.  赤西蠣太
伊丹万作は伊丹十三の父にして「無法松の一生」等の名脚本家として、つとに知られている。が、彼の秀抜な映画センスを真に実感したければ監督としての彼を知らねばなるまい。本作は現在でも鑑賞可能な数少ない一作である。まずもってチャンバラ時代劇全盛期の昭和11年という時点で”パロディ”という概念を導入した斬新な発想が凄い!しかも講談・浪曲で手垢にまみれた「伊達騒動」を巧みに換骨奪胎して”コメディ”に仕立て上げた手腕には思わず舌を巻いた。間違いなく「天才」の成せる業である。開巻の雨傘が踊る俯瞰撮影の妙、BGMにショパンやメンデルスゾーンをあしらう大胆で小粋な処理、「ミスター時代劇」千恵蔵にコントラストも鮮やかな二役を演じ分けさせるブッ飛んだエスプリ、それでいて実に快調なテンポ、どれを取ってもズバ抜けた映画センスとしか言いようが無い。惜しむらくは生来の病弱な体質が彼に作品の量産を許さなかったことだろう。太平洋戦争へと突入した時点で日本の敗戦を鋭く予見した理性の持ち主であったが故に病床の身で書き上げた脚本を盟友・稲垣浩に託した彼の無念な心情は「無法松の一生」にも滲み出ている。生きていれば間違いなく小津や溝口にも匹敵する天才監督と謳われたであろう。残念ながら息子にはその才能の一部しか受け継がれなかったようだ。僅か46歳の若さで夭逝した孤高の天才に敬意を込めて10点。 
10点(2003-12-13 00:23:58)(良:2票)
2.  赤い河
 ハワード・ホークスという監督は豪快にしてテンポの良い娯楽作品を連発した極めて安定した力量の持ち主であるが、本作はそんな彼の本領が100%発揮された雄坤極まりない傑作西部劇である。キャトルドライブ、つまり牛の大群を市場まで移動させる旅に於けるカウボーイの生き様をココまで活写した作品を他に知らない。特に印象深い場面は夜中の牛群大暴走(スタンピード!)のド迫力!!もう一つはカウボーイ達が「またステーキかよ…。」とウンザリした声を上げる食事シーンである(くぅーっ!一度でイイからこういう台詞を洩らすくらいステーキ食いまくりてぇ~!)。ウェイン扮するダンスンも単純なヒーローではなく可成り性格にクセのある奥行きのある人物造形であり、フォード西部劇にも決して劣らぬ風格がある。正しく”本物のウェスタン”と呼ぶに相応しい。哀愁に満ちたディミトリ・ティオムキンの音楽、ウォルター・ブレナン扮するグルートによるナレーションも味わいを深める秀逸な効果を上げている。そうそう、モンティのデビュー作でもあるんだよね。なにしろ文句ナシの10点満点!!
10点(2003-07-08 23:19:19)(良:1票)
3.  逢びき
 ノエル・カワードの渋い原作をコレ又激シブ且つ格調高く映画化したデビッド・リーンの最高傑作!!所謂不倫モノのルーツなんだが、「○曜サスペンス」や昼メロみたいな下品さ・俗悪さは微塵もナシ!!昨今の映画人は派手なSFXやアクションやお笑いなんぞにうつつを抜かす暇があったらコレを観よ!!と声を大にして言いたい。シリア・ジョンスン演じる人妻が、品格はあるが(目がギョロッとして)冴えないルックスなのも本作では実に説得力大である。ここでヴィヴィアン・リーみたいな絶世の美女なんか出てこられた日にゃウソっぽくて興醒めってモンだ。相手役のトレヴァー・ハワードも上品ではあっても、美男子ではないし、実に燻し銀の魅力。ラフマニノフのピアノ・コンチェルト第2番が何とも素晴らしく効果的。派手さもドラマティックさも用いずに二人の微妙な心理をキメ細かく演出する、女性映画の雄リーンの本領が発揮されまくった本作に…言うまでもなく10点満点で御座います。
10点(2003-02-23 02:15:21)(良:1票)
4.  甘い生活 《ネタバレ》 
「道」でも触れたけど、コレなんかもイヤらしい(別にイヤらしくなくてもいいけど)中年になって以降に見るとマストロヤンニ扮するゴシップ記者マルチェロへの感情移入度が(そりゃもうとんでもない程に)激変する典型的な作品だと思う。人間誰でも若い頃には胸に掲げる理想があり、将来への輝かしい展望を持つ。勿論、それを見事に達成する者も(ごくまれには)いるだろうが、やはり現実は厳しくこと志と違った地点に敢え無く到達してしまう人生の侭ならなさを痛感する者が大半だと推察する。私も御多分に漏れず今ではしがない塾の講師として辛うじて口に糊する日々なだけに、マルチェロの「流石にいつまでもこんな頽廃した暮らしを続けていてはマズイ。何とか脱却しなくては…!」という思いも束の間、いつの間にかズルズルと慌しくも気だるい日常に引き摺られてゆく描写は痛いほど共感してしまった。全くもってフェリーニの旦那は容赦ないッス。ラスト、砂浜に打ち上げられた巨大な腐魚の象徴する余りに重い後味に9点。嗚呼、意志弱き者よ。汝の名は…!
[CS・衛星(字幕)] 9点(2005-08-19 00:32:32)(良:2票)
5.  アンナとシャム王 《ネタバレ》 
1956年版「王様と私」に美しい色彩とロジャース&ハマースタインの流麗極まる歌曲があるならば、モノクロの本作にはジョン・クロムウェルの卓抜な抑制された演出力とそれに見事に応えた主演の二人がある!コトほど左様にアイリーン・ダンとレックス・ハリソンの持てるポテンシャルを存分に引き出して、尚且つ調子に乗って暴走させない鮮やかな手綱捌きを見せるクロムウェルのテンポ良く飽きさせないディレクションぶりは天晴れの一語だ。何よりアンナとシャム王モンクートが”色恋を差し挟まない大人の友情”でお互いを堅く信頼し合っていく一連の描写が格調ある情緒を醸し出す主な要因だろう。殊にレックス・ハリソンの演技力は特筆に価する。身勝手で自己中丸出しな言動の端々から滲み出る真摯で実直な努力家としての側面。欧米列強の接近を肌で感じつつ、いかにして植民地化を免れ近代国家に生まれ変わるかの苦悩・試行錯誤がリンカーンへの手紙などのエピソードを通じて観る者に伝わり、何とも微笑ましく憎めなくなってくる。最後まで二人のユーモラスな意地の張り合いで押し通して欲しかったが、惜しむらくはタプティムの火刑とルイの落馬事故はトーンが完全に異質で浮いてしまっており、個人的にはやや興醒めだったので悪いが1点マイナス。やっぱ流石にオリジナルはひと味違いますナァ…!!
9点(2004-11-09 04:06:40)(良:2票)
6.  アスファルト・ジャングル 《ネタバレ》 
ジョン・ヒューストンによる犯罪映画の佳作。周到に練られたハズの強盗計画が様々な思惑が絡み合った末に呆気なく水泡に帰す、というヒューストン十八番のストーリーがモノクロ画面の中、実に快調なテンポでスリリングに展開する。冒頭の面通し場面などは間違いなく「ユージュアル・サスペクツ」辺りに影響を与えていると思う。この手の作品は(仏のフィルム・ノワールも含め)枚挙に暇がないくらいに量産されて今日に至るが、詰まるトコロ名画のステイタスを獲得できた僅かな作品群に共通するのは描写の緻密さとキャラクターの活写である。本作を例に採れば、並みのカントクなら多彩な登場人物全員を捌くのは到底無理で精々ディックスとドク辺り止まりだっただろう。しかし流石はヒューストンだけあって弁護士エメリックや運転手ガス、金庫破りルイに競馬ノミ屋コビー、ハーディ署長に汚職警部補ディトリックに至るまで徹底的に人物像を掘り下げて物語に深みと厚みを加えることに成功している。ただ…漢(おとこ)を描くことには天下一品のヒューストンだが、女性を描くのは余り得意ではないようでドールとアンジェラは(役者のせいもあろうが)凡演。さしものモンローもこの時点では単なる添え物だ。ココが弱点と云えば弱点だが、元来が女性メインのストーリーではないので或る意味仕方が無いかも。場面的には宝石店襲撃シーンも勿論イイが、矢張りディックスがドクと交錯しつつボブを射殺する場面の鮮やかなショットが見事。原作はW・R・バーネットの同名小説だが、人物造形から何から映画の方が圧倒的に優秀。よって9点。
9点(2004-04-16 03:37:16)(良:1票)
7.  悪魔が夜来る 《ネタバレ》 
STING大好き様に粗方語り尽くされた感もあるが、私なりに本作をコメントしてみたいと思う。カルネ作品は初レビューなのでチョット緊張するけど(笑)。私はどんな作品でも役者の演技に引かれる性質(たち)なので中心はどうしてもソコに来る。本作キャストでの個人的なMVPは矢張り、悪魔を演じたジュール・ベリとなる。実際、ナチズムの理不尽さを体現し、ジルとアンナの純粋な「愛」に拮抗させる狡猾極まりないインパクトを生み出したのは彼の凄みを利かせた名演あってのコト。次いでドミニクに扮したアルレッティが秀逸。彼女のデッドパン(無表情)ぶりがユーグ男爵とルノーを両天秤に掛け、殺し合わせるに至る妖艶な魅力に絶大な説得力を放っていたと思う。ジルはアンナとの愛に目覚めるが、彼女は最後まで男を破滅させる悪女の道を貫いてピカレスク・ロマンの醍醐味というモノを我々に教えてくれる。本作でのドミニクというステップを踏んだからこそ「天井桟敷の人々」でのガランスに結実したのでは、とも思ったりする。レジスタンス魂を代表する主役カップルも勿論素晴らしい。特にジル役のアラン・キュニーのイケメンっぷりは「甘い生活」や「エマニエル夫人」での彼からは想像もつくまい。アンナを演じたマリー・デアも初々しいだけでなく、ジュール・ベリの怪演に一歩も退かぬ芯の強さを垣間見せ天晴れ。これら一連の演技を(新劇調のオーバーアクトを百も承知で)巧みに引き出したのが、見事にバランスの取れたカルネ演出とプレヴェールの格調高き台詞にあるとすれば、ましてやレジスタンス魂の最高傑作とも云うべき「天井桟敷の人々」への重要なワンクッションとするならば、本作は決して軽視さるべきではない!と確信する。
9点(2004-02-24 00:13:25)(良:1票)
8.  悪魔のような女(1955) 《ネタバレ》 
傑作「恐怖の報酬」には惜しくも及ばないものの、こちらも素晴らしい。何と言ってもラストの衝撃のどんでん返し!!一見ミステリかと思わせておいてホラーという展開は或る意味反則に近いのだが、アラン・パーカーの「エンゼル・ハート」なんかと違って、クルーゾーは直接ビジュアルで見せるような愚を犯さず、少年のさりげない台詞で絶妙に暗示するだけなので観る者の感性に遥かに訴えて実に秀抜。ジョルジュ・ヴァン・パリスの音楽が幕切れの不気味さを一層増幅させて見事!このミステリとホラーの絶妙なブレンドの味わいはディクスン・カーの傑作「火刑法廷」にも通じるものがあるナァ…。出演者では矢張りヴェラ・クルーゾーがMVP。名優シャルル・ヴァネルの使いドコロを誤った感が拭えないので悪いけど1点マイナス。リメイク版?論外!
9点(2003-10-16 15:00:23)(良:1票)
9.  暗黒街の顔役(1932)
 アル・カポネの逸話を下敷きにアーミテージ・トレイルが書いた原作を、伝説の富豪兼プロデューサーとして名を馳せたハワード・ヒューズが制作し、当時36歳の若きハワード・ホークスが実にダイナミックに監督したギャング映画の傑作がコレ。1983年にデ・パルマが「スカーフェイス」のタイトルで設定を現代化して(パチーノ主演で)リメイクしたが、このオリジナル版には遠く及ばぬ冗長な凡作。トニーを演じたポール・ムニの醸し出す凄味・狂気は本作が今を去ること70年前の作品という事実を踏まえれば見事と言うほか無かろう。しかし、本作とリメイク版との最大の差はトニーの舎弟役をニヒルに演じたジョージ・ラフトの(コインを指で弾く独特のポーズが実にキマった)圧倒的存在感に尽きる。本作で一気にブレイクしたのも納得!リメイク版のスティーブン・バウアーなんぞ比較対象にすらならないw。そして何よりもホークスの畳み掛けるかのような簡潔にして要領を得たテンポの良い演出で93分を一気に観せるってか魅せるのが矢張り最高!!ベン・ヘクトの練達のシナリオも貢献度大。以後の犯罪映画に与えた絶大なるインパクトに敬意を表して…9点!
9点(2003-07-28 03:39:15)(良:2票)
10.  アラバマ物語
原作はジャーナリストの夢であるピューリッツァー賞も受賞したハーパー・リーの小説「物真似ツグミを殺すには」。地方色を丹念に描写することに出色の冴えを示すロバート・マリガンが監督し、見事主演のグレゴリー・ペックにオスカーをもたらした社会派ドラマの傑作。ペック扮するやもめの弁護士が、偏見と差別が根強く残る南部の州アラバマでレイプ容疑の黒人を弁護したばかりに白人からも軽蔑の的になる、という何ともやりきれない展開は背景が世界恐慌の吹き荒れる1930年代であることも相俟って余りにも重苦しい。が、それを辛うじて救っているのがメリー・バダム扮する娘スカウトの存在。彼女と怪しい隣人ブー(ロバート・デュバル)の仄かな交流がラストの伏線になっているのもニクイ。オスカー助演女優賞ノミネートは伊達ではないと納得させる好演だった。余談だが、彼女の実兄が後に「サタデー・ナイト・フィーバー」や「ブルーサンダー」といった話題作を手掛けることになる監督のジョン・バダムである。
9点(2003-01-30 11:53:10)
11.  赤ひげ
 黒澤明が国内で撮った作品としては最後の輝きとなった印象深い傑作時代劇。山本周五郎の原作「赤ひげ診療譚」も氏の庶民への優しい眼差しに満ちた傑作だったが、映画化された本作も優るとも劣らぬ優れた出来栄え。特に座敷牢に閉じ込められた香川京子演じる狂女への診断を巡るエピソードは深く印象に残る。長崎仕込みの阿蘭陀医学をハナにかける青二才、保本登(加山雄三)は町医者風情の”赤ひげ”こと新出去定(三船敏郎)の見立てを胡散臭く思い、安っぽい同情心と赤ひげへの当てつけから無断で狂女を診察して危うく生命を落としかける。可憐な乙女から豹変する香川京子の鬼気迫る演技は下手なホラー映画も真っ青のコワさ!机上の学問だけでは見通せぬモノを直感的に見抜いていた赤ひげの診断の的確さを保本に悟らせるこのシーンは実に上手い。あと、善良な車大工、佐八(山崎努)の余りに哀しいエピソードも安直な「泣かせまっせ」映画と違い、ジーンと胸を打つ。天才子役・二木てるみ演ずるおとよもイイ。185分を全く長尺に感じさせない黒澤の手腕は矢張り凄いとしか言い様が無い。ただ、完璧に拘り過ぎて製作スケジュールの遅れが響いたため、円谷英二氏や本多猪四郎氏に皺寄せが来て「三大怪獣 地球最大の決戦」を超短期間で製作させられたウラミは決して許されないので、キッチリ減点させて貰いましょう。よって9点。
9点(2003-01-29 05:05:41)
12.  明日に向って撃て!
 何と言ってもロイ・ヒル監督の洒脱で小粋な演出が圧倒的に光る!この当時の他の西部劇ときたら、マカロニ・ウェスタンの影響を逆に受けたような残酷で暗いヤツばっかりで閉口していたんだから…!ウィリアム・ゴールドマンの練り込まれた脚本、コンラッド・ホールの鮮やかなカメラワーク、バート・バカラックの流麗な音楽、ニューマンとレッドフォードのユーモラスな遣り取り、どれを取っても一級品!!まぁ、史実のブッチとサンダンスは確かにケチな小悪党だったかもしれないけど、リアルにそのまま描けば良いってもんじゃあないだろ?悪党の末路が惨めなのは言わば自業自得なんだが、敢えて一斉射撃で蜂の巣にされる寸前でストップ・モーションにしたことで最後まで殺伐とせず、ペーソス溢れる青春ウェスタンの傑作へ昇華したと言える。こういうのを”センス”って言うんだよね~♪
9点(2003-01-19 00:52:04)(良:1票)
13.  アンダルシアの犬
至高のアヴァンギャルド映画として不滅の光芒を放ち続ける傑作中の傑作。僅か17分に込められた狂気の連続に君は耐えられるか?コレこそが、否、コレのみが「シュールレアリスム」なのだ!天才監督ブニュエルと抽象画家の巨匠ダリが紡ぎ出す摩訶不思議な映像に…酔え!!
9点(2003-01-07 23:55:00)
14.  或る夜の出来事
 流石に当時のオスカーを総ナメにしただけのことはある。コルベールもゲーブルも実に魅力的。モロに濡れ場を見せるような下品さを避け、「ウォール・オブ・ジェリコ」で表現する上手さ!ヒッチハイクの名シーンも後に数々の映画がパクったが、矢張りオリジナルが最高!結局こういうのって、作り手のセンスの問題であって時代の新旧じゃあないんだよね。キャプラの楽天性を嘲笑うのは簡単だけど、そういうシニカルを気取った連中って「エンターテインメント」というモノが分かってるのか?辛気くさいリアルさを描いてりゃ芸術だとでも?勘弁してくれ…!
9点(2003-01-01 04:56:25)(良:3票)
15.  あにいもうと(1953) 《ネタバレ》 
かつて1936年に木村荘十二監督によって「兄いもうと」の邦題で映画化された室生犀星の原作を名匠・成瀬がリメイク。味わいと完成度で旧作には惜しくも及ばないものの、こちらも実に素晴らしい。何より古き「日本の夏」の情景をここまで活写した作品はそうそう無い。表の往来に打ち水・井戸に吊るして冷やした果物・川辺で網を振るっての魚採り・壜入りラムネ・ふんどし一丁で川に泳ぐ子供ら・日傘・かき氷・もんがパクつくアイスキャンデー…etc。元来ストーリーに拘りのない成瀬は伊之ともんのいかにも新派好みな兄妹愛場面を極力省略し、愛憎劇の舞台たる(今は失われた自然豊かな)多摩川沿いの状況描写を優先させた。結果として劇的な昂揚感(ドラマツルギー)は著しく減退したが、うだるような夏の情景はしっかりとフィルムに込められることとなった。その是非は観る者の判断に委ねたい。俳優アンサンブルとしては母りき役の浦辺粂子が矢張り絶品。ダメダメな夫・息子・娘を欠点込みで丸ごと愛する包容力を誇張の無い全身の演技で見せる上手さときたら溜め息が出そうな程だ。気の弱そうな大学生・小畑を演じた船越英二の飄々とした個性も実に良かった。森雅之はウマイことはウマイけど、余りに作り過ぎた役柄なのが些かハナについたので若干減点。木村版の丸山定夫が見せたブルーカラー丸出しの石工職人ぶりには及ばず。
[ビデオ(邦画)] 8点(2006-04-23 01:43:31)(良:1票)
16.  雨に唄えば 《ネタバレ》 
MGMミュージカル数ある中でも抜群の知名度を誇る本作、確かに楽しくて歌と踊りも存分に盛り込まれ飽きさせない見事な作りなのは認める。ただ、個人的にどうしても気に入らないのが「サイレント<トーキー」といういかにも図式的なシナリオの安直さ。確かにリーナみたいに悪声で自滅したジョン・ギルバートのような実例もあるにはあるだろうが、サイレントへのリスペクトにチト欠け過ぎてやしませんか??チャップリンがトーキーの移行へ徹底的に抵抗した矜持とはいったい何だったのか、本作スタッフは恐らく全く理解していない。トーキー延いてはミュージカルというジャンルの「明るい未来」を余りにオプティミスティック(楽観的)に捉えているスタッフの過信(もしくは自惚れ)が無意識の内に作中に滲み出たのだとは思う。が、この論法でいくならばサイレント期の作品&スタッフ&役者は語るに価しない代物というコトになる。コレだけは絶対に!容認し難い。この論法を受け入れてしまっては今までの自分の映画観そのものを全否定することになるから。それと、ジーン・ケリーが不世出のダンサーであることに異論は無いが、タップ&ダンスのエレガンス(洗練)でアステアには残念ながら及ばないと思う。併せて2点マイナス。何か酷評しているように思われるかもしれないが、ハッキリ言いたいコトを指摘しただけで本作が好きであることは大多数の高評価の皆さんと同じなので誤解しないで欲しい。
8点(2004-12-03 23:06:12)(良:1票)
17.  赤い風車 《ネタバレ》 
19世紀末に実在した仏人画家アンリ・ド・トゥールーズ=ロートレックの波瀾の生涯をハリウッド風味で上品に仕立て上げたジョン・ヒューストン監督の伝記モノ映画。後期印象派に属し、今や巷に溢れる”宣伝ポスター”というものを創案した「イラストレーターの元祖」的存在、という評価が美術史上でのロートレックへの最も一般的な位置付けである。その画風は何とも猥雑で(良くも悪くも)人間の生きる姿を活写しているのが特徴だが、個人的にはどうにも好きになれないタイプ。本作でその彼に扮するはホセ・ファラー。カメレオン・アクターの称号はデ・ニーロやダニエル・デイ・ルイスの為だけにあるのではないコトが本作での彼の熱演を観れば実によく理解して頂けようかと思う。長身の彼が膝を折り曲げて僅か150cmの小男ロートレックを演じる姿には「役者バカ」という最大級の賛辞こそが相応しい。伯爵家に生まれながら不具者としてのコンプレックスと孤独に苛まれた彼がパリに出て根城に据えた一つが巴里名物のキャバレー「ムーランルージュ」(つまり邦題は店名のモロ直訳)。冒頭の踊り子たちが一斉にY字バランスをきめるシーンは圧巻だ。ここで酒をあおりつつ踊り子たちや酔っ払った客をひたすら描き続け、先述の”宣伝ポスター”へと繋がってゆく。しかし、皮肉にも”宣伝ポスター”をきっかけにして「ムーランルージュ」は彼の愛した”陽気で卑猥なバイタリティ”を失い「高級な紳士淑女の社交場」へと変貌してしまう。私生活でも娼婦マリーに捨てられた恋の痛手から、素直になれないばかりに掴みかけたミリアムとの恋までも失うことになるロートレック。まぁ実際のロートレックの私生活は酒と娼婦にまみれた、映画どころではない退廃ぶりだったのだが、ヒューストンのバランス感覚は過剰なリアリズムにまでは暴走しない。当時の検閲コードから考えても正解だろう。オズワルド・モリスの豊かな色彩に満ちたカメラワーク、ジョルジュ・オーリックによる主題歌「ムーランルージュの歌」も強く印象に残る。強いて言えば女優陣がホセの名演に拮抗しきれていない気が。コレット・マルシャンもシュザンヌ・フロンも勿論ザ・ザ・ガボールもだ。ココで遺憾ながら2点マイナス。
8点(2004-09-20 03:53:06)(良:2票)
18.  アルゴ探険隊の大冒険 《ネタバレ》 
 傑作「シンドバッド七回目の航海」に勝るとも劣らぬハリーハウゼンのマスターピース!!ファンタジーとはかくあるべき、という格好のお手本であろう。ストーリーの骨子は有名なギリシャ神話の「イアソンとアルゴノウツ」が金羊毛を探し求める冒険譚の前半部分だが、ハッキリ言って原作なんか全く知らない方がグッと楽しめるハズ。理由は後述するとして、本作の肝は当然の如くハリーハウゼンの拘りモンスター造形にある。最優秀賞は何と言ってもクレタ島の青銅の巨人タロス!に尽きる。錆びた青銅のボディを軋ませつつ動き出す勇姿に惚れ惚れしてしまう。ダイナメーションの弱点とも言えるカクカクした動きを逆手に取った大胆な発想にはもう脱帽である。原作では等身大だが、敢えて巨人にアレンジした映画的発想も素晴らしい。流石に”Mr.BIG”辺りとはセンスが違うw。その後の鳥人ハーピィや七首竜ハイドラ(原作では只の大蛇)は呆気なくて今イチだったが、最後の最後に”隠し玉”が待っていたぁ!!「七回目の航海」では単体での出演だったチャンバラ骸骨が団体さん(7体?だっけ)で襲ってくる!!しかもむっちゃ強い~!(因みに原作ではゾンビ兵士…それも観たかったが)イヤもう最高…お腹一杯食べ切れませんw。そうそう、原作を知らぬが吉な訳は…主人公イアソン(映画はジェイソン)のみならずコルキスの王女メディアも途中リタイアしたヘラクレスも全員揃いも揃って悲惨な末路が待っているから。どんな末路かどうしてもお知りになりたければギリシャ神話を(図書館ででも)お読み下され。「本作の余韻がブチ壊しになったじゃねーか!」とお怒りになられても一切責任は取れませんので悪しからずw。
8点(2003-09-23 01:07:10)
19.  愛と喝采の日々
 おお~そうそう、勘違いしてたよ。確かに「愛とほにゃらら~の云々」系おバカ邦題のオリジンは本作であって、「愛と青春の旅立ち」じゃなかった。「愛と青春の~」でのコメントは謹んで訂正させて頂くw。さて、本作だが久々のシャーリー・マクレーンが中年ながら溌剌とした名演を見せ秀作と言える出来。尤も、本作の後アレ程マクレーンが出まくるとは予想だにしなかった故の評価でもあるんだが…。でも本作の白眉は寧ろロバート・サーティスの鮮やかなキャメラワークに映し出されたミハイル・バリシニコフとレスリー・ブラウンの華麗なる”グラン・パドドゥ”シーンだと思う。流石は元・バレエ振り付け師だったハーバート・ロスだけに見せ方が心憎いほど上手い!アーサー・ローレンツのシナリオはいつもながら回想を巧みに使うなぁ…。でもでも、その後のマクレーン出まくりに興醒めした分、当時の感動も薄らいだので2点マイナース!
8点(2003-08-31 03:38:40)
20.  アンネの日記(1959)
 原作は御存知、世界的ベストセラーとなった「アンネ・フランクの日記」。コレを舞台劇に翻案したのを名匠ジョージ・スティーバンズ↑…じゃなくってぇ、ジョージ・スティーブンスが映画化したのが本作。知名度の割に原作を読んでいない無精な方向けのダイジェスト版といった趣。「ウエスト・サイド物語」のトニーことリチャード・ベイマーも出てるよ!厚かましくも姦しいファン・ダーン夫人を演じたシェリー・ウィンタースは確かに本作でオスカー(助演女優賞)をゲットしているが、↑主演女優のような表記は…正直いかがなモノだろう?個人的には「ロリータ」や「ポセイドン・アドベンチャー」での彼女の印象の方が遙かに強い。上手いんだけどね。シカトされがちな本来の主演たる新星ミリー・パーキンス嬢は…まぁ、印象薄いわな、大根だし。でも、アノ化け物超大作であるワイラーの「ベン・ハー」を向こうに回してオスカー3部門は天晴れなのでスティーブンスの健闘を称え8点!
8点(2003-07-21 04:47:31)
070.50%
180.57%
2221.58%
31007.17%
41228.75%
533123.73%
625918.57%
722215.91%
819413.91%
9856.09%
10453.23%

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