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S&Sさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 2389
性別 男性
自己紹介 〈死ぬまでに観ておきたいカルト・ムービーたち〉

『What's Up, Tiger Lily?』(1966)
誰にも触れて欲しくない恥ずかしい過去があるものですが、ウディ・アレンにとっては記念すべき初監督作がどうもそうみたいです。実はこの映画、60年代に東宝で撮られた『国際秘密警察』シリーズの『火薬の樽』と『鍵の鍵』2作をつなぎ合わせて勝手に英語で吹き替えたという珍作中の珍作だそうです。予告編だけ観ると実にシュールで面白そうですが、どうも東宝には無断でいじったみたいで、おそらく日本でソフト化されるのは絶対ムリでまさにカルト中のカルトです。アレンの自伝でも、本作については無視はされてないけど人ごとみたいな書き方でほんの1・2行しか触れてないところは意味深です。

『華麗なる悪』(1969)
ジョン・ヒューストン監督作でも駄作のひとつなのですがパメラ・フランクリンに萌えていた中学生のときにTVで観てハマりました。ああ、もう一度観たいなあ・・・。スコットランド民謡調のテーマ・ソングは私のエバー・グリーンです。


   
 

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41.  仁義なき戦い 広島死闘篇 《ネタバレ》 
シリーズ二作目は、北王子欣也=山中正治をストーリーラインのメインに据えた番外編みたいなお話しになり、菅原文太=広能昌三はいわば狂言回しのような役割となります。これはまだ抗争自体が燻っていたのに「二作目は広島戦争にしろ!」という岡田社長の号令に脚本の笠原和夫がビビったためで、いわばアリバイ稼ぎで書き下ろした感じみたいです。その為か山中正治のエピソードはかなり時期的にもずらされており(モデルの人物は昭和23年には死亡)、広能との絡みも創作みたいです。文太は出番の少なさに怒って一時降板を申し出る騒ぎもあり、文太なしでシリーズ四作が撮られていた可能性もあったのは興味深いです。 シリーズ中の最高傑作と評されるだけあり、登場キャラが立ちまくっているし群集劇としても見応えは十分です。中でもシリーズ中人気ナンバーワンのトリックスター、千葉真一=大友勝利の強烈な暴れっぷりと言動には惚れ惚れします。「あれらオ○コの汁でメシ食うとるんでぇ!」「人間うまいもん喰ってよ、マブイスケ抱くために生まれてきとるんじゃないの?」、いやはやこの倫理の欠片もない迷セリフの数々、やっぱ書いた笠原和夫を第一に褒めるべきなんでしょうね。北王子欣也も、銃を構えるところの演技が真に迫っていて、とくに最初の殺人のときのリアクションが実にリアルでした。またこの二作目は、北王子欣也と梶芽衣子の悲恋物語でもあるのですが、この梶芽衣子はシリーズ中で唯一の女性主要キャラとなります。まあこの山中正治というキャラは劇中では単なる鉄砲玉的な行動しかしてなくけっこうおバカな感じですし、梶芽衣子を婚家に戻そうとする村岡組長や若頭の考えもあながち理不尽だと断罪してしまうことも出来にくいんじゃないでしょうか。そう考えると、成田三樹夫=若頭・松永が、本作でもっともカッコよいキャラだったと思います。
[CS・衛星(邦画)] 8点(2021-01-02 00:18:49)
42.  仁義なき戦い 《ネタバレ》 
いい歳になるまでヤクザ・任侠映画をまともに観たことなかった自分が、三十年以上前の正月休みに初めてレンタルで観て、あまりの衝撃に休み明けまでに勢いで五作全部観てしまった記憶があります。でもね、これは大失敗でした。なんせ前作で死んだはずの山城新伍や梅宮辰夫や松方弘樹が何度も違う役で登場してくるので、最後の方は完全に自分の頭が混乱してしまいました。この五部作は多少間隔を開けて観た方がイイみたいです(笑)。 “レイズ・オブ・山守組”というのが一作目のストーリーラインですが、けっきょくラストまで生き残ったのは文太・金子信雄・田中邦衛の三人だけ。そうそうたる顔ぶれの山守組の面々は内部抗争で自滅、東映もまさかこんなに大ヒットするとは思ってなかったので松方や大物スターを惜しげもなく殺しちゃったのかな。観直してみると文太の広能昌三があまりにカッコよすぎという感は否めないけど、ヤクザの下劣な人間性をここまであけすけに描いた任侠ものはなかったから、やはり実録ものヤクザ映画というジャンルを開拓した功績は大きいと言えるでしょう。あの有名なBGMとともに流れる恒例の死亡テロップ、年月日だけでなく午前・午後まで表示するところはまた芸が細かいです。でも、やはりこの第一作は金子信雄のためのストーリーだったのかもしれません。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-12-03 21:57:05)(良:1票)
43.  仁義の墓場 《ネタバレ》 
“実録ヤクザ映画の極北”という評判ですが、たしかに想像のはるか上を行く壮絶さでした、『スカーフェイス』なんて可愛いもんです。主人公が“伝説のヤクザ”と呼ばれているというので、成り上がって組を創って暴れまわるのかと思いきや、最後までただのチンピラで終いにはヘロイン中毒というのはちょっとサプライズでした。この男のやることには何の筋も道理もなく自分の親分や盟友を傷つけたり殺したりで、ヤクザなのにハナ肇や梅宮辰夫がなんかすごく善人に見えちゃうぐらいです。たしかに渡哲也の演技は鬼気迫るというか狂気すら感じさせますが、実はこの役は彼が大河ドラマ『勝海舟』を病気降板してからの復帰第一作なんです。でも快癒というにはほど遠い状態で、後半の演技は体調の悪さがかえって迫力を生むことに繋がりました。冒頭で関係者のインタビュー音声を流す(なんと隠しマイクで録音してしかも無断使用!)など深作監督作としては珍しい手法、でも主人公の戸籍謄本まで晒しちゃうのは現代では炎上必死でしょう。終戦直後から始まるストーリーなので警察が三国人を抑えるためにヤクザを使ったという話はよく知られていますけど、殺人容疑で一審有罪判決を喰らった被告が控訴中に保釈されるという展開には心底びっくりです。それも1950年代の話しですからねえ、昔はいろいろと緩かったということなんでしょうか。あと渡哲也が逮捕されるシークエンス、窓から拳銃を乱射する渡に取り囲んだ警察とヤクザが石を大量に投げつけて対抗すんですが、監督の意図せず本作で唯一笑いを誘うシーンとなっています。たしかにあれじゃあ堪りませんよね(笑)。
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-11-07 23:02:31)
44.  地獄でなぜ悪い 《ネタバレ》 
海外の映画作家は自身の映画愛を吐露するような作品を撮ることが多いですが、邦画ではそういう私的な映画はほとんどないというか撮ることを許してもらえないという感じです。でもそこは園子温、まさに『映画に愛をこめて/アメリカの夜』ならぬ『セシル・B/ザ・シネマ・ウォーズ』という感じで映画愛をぶつけてきました、つまり彼は日本のジョン・ウォーターズということ?でもホントにやりたかったのは、『キル・ビル』青葉屋の死闘の再現だったみたい(笑)。 前半を観ている段階では、「この映画はいったいどこに向かっているのだろう?」という疑問しか浮かばず当惑しかないです。だって武藤組VS池上組の抗争と映画バカ集団ファック・ボンバーズとの接点がまったく見出せず、まるで違う映画のストーリーを交互に見せられているかのような感じです。まあ武藤組組長・國村隼が二階堂ふみを主演にした映画を撮ろうとしていることが伏線なのかもしれませんが、これをどう回収するのかと思いきや、お社で星野源が見つけた10年前の願い文が魔法の様に武藤組とファック・ボンバーズを結びつけるという強引な脚本!だいたい星野はなんで長谷川博己のことを知ってるんだよ!でもそこからの怒涛の展開はまさに園子温の本領発揮としか言いようがありません。園子温の映画では実力派俳優に怪演させるのがお家芸みたいなところがありますが、本作では堤真一がまさにそれ。あの表情というか顔芸はほとんどアホ芸という領域です。星野源もいまと違ってどちらかというとサブカル界隈の人というイメージで、これもかなりの怪演です。 閉幕近く長谷川博己の妄想の中で、首や脚など喪失した部位を包帯でつなぎ直した(?)死者たちが完成した映画にスタンディング・オベーションを送るところは、まるで『タイタニック』の感涙のラストみたいで良かったです。でも、ここで終わればいいのにあのメタフィクショナルな幕の閉め方は、いったいどういうつもりだ!でもこのずれたセンスがまた園子温らしいんだよな…
[CS・衛星(邦画)] 6点(2020-10-13 21:16:49)
45.  シシリアン(1969) 《ネタバレ》 
マフィアが欧州でも隠然たる勢力を保っていた60年代の映画ですから、“マフィア”や“コーザノストラ”という語句は劇中ではいっさい使われていません。ジャン・ギャバンがボスの組織はどう見てもその出身地や構成などからマフィアなのですが、せいぜい“シチリア人”と呼ばれる程度です。この組織の表の顔はゲーム機器を扱う会社ですが、「裏の稼業では人殺しは絶対しない」なんて綺麗ごとが過ぎる設定で、これもマフィア業界への忖度なんでしょうかね。ジャン・ギャバンがまた沈着冷静で友誼に厚い貫禄というものを擬人化したようなキャラで、『ゴッドファーザー』のヴィト・コルレオーネなんか目じゃないって感じです。こういう警察も全くマークしていないような組織が旅客機をハイジャックして宝石強奪する展開は、ある意味で逆転の発想ですけど突拍子すぎます。60年代にアラン・ドロンがジャン・ギャバンと共演した作品はドロンがチンピラ感あふれる小者キャラという共通点がある気がしますが、刑務所でドロンが入手した宝石展のセキュリティ設計図はけっきょく使われず、女に手を出して墓穴を掘る軽率な行動を繰り返し、けっきょくこのパターン通りでした。 よく言えば淡々とした、普通に観れば締まりのないストーリーテリングに華を添える(?)のがエンニオ・モリコーネの脱力系な音楽です。この人はマエストロとなって惜しまれながら世を去りましたが、若いころは“音符のチンドン屋”“来る仕事はすべて引き受ける”などと陰口を叩かれていたそうで、その悪い面がでた結果がこれなんでしょうね。でもあの“ポヨ~ン♪”は、意外とフランス人の哀愁を誘う音だったりして(そんなわけ、ないか)。
[CS・衛星(字幕)] 6点(2020-09-13 21:01:41)
46.  シェイプ・オブ・ウォーター 《ネタバレ》 
いやー、筋金入りのオタク監督がモンスター映画でオスカー作品賞と監督賞をゲットしたってことは、とりあえずめでたいことです(スピルバーグも、正真正銘のオタクですけどね)。正直言って作品賞獲るほどかな?とは思いましたが、このジャンルの今後の隆盛につながってくれればと期待します。 まず感じたのは、もちろん時代設定やプロットは全然違うけど驚くほど『パンズ・ラビリンス』と似たお話しだったなというところです。『パンズ』でサディスティックな悪役だったヴィダル大尉と対をなすのが“ハリウッドのヒロミ”ことマイケル・シャノン、その邪悪なパワーはシャノンがはるかに上回っていたと思います。『パンズ』のパンと本作の半魚人に至っては、スーツアクターは同じダグ・ジョーンズですからね。でも『パンズ』のような後味の悪さは本作にはなく、ある種の大人の童話として観れるんじゃないでしょうか。 キリスト教では「神は自分に似せて人間を創った」となっているそうですが、ラスト近くで銃撃で瀕死だった半魚人の復活を見てマイケル・シャノンが「お前は、神だったのか…」と呻きます。ここはけっこう含蓄のあるシーンで、人種の違いや障害の有無や異形の者であってもそれはすべて神の子なんだよ、というメッセージがあるような気がするんです。イライザの喉の傷が水中でエラに変化するところも、心に残るラストカットでした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-09-07 21:14:28)(良:1票)
47.  ジョン・ウィック 《ネタバレ》 
キアヌ・リーヴスが王道のガン・アクション映画に復帰という感じなんですが、この映画にはヘンと言うか独特のテイストが詰まっている感じがいたします。 「愛する妻や肉親を悪の組織に殺されて、復讐の鬼となって闇の世界に復帰する男」というプロットのアクション映画は腐るほどありますが、妻は病死で殺されたのは妻が残してくれた犬だというところが実にユニークです。犬をペットにしたことのない者には、たかが犬のためにここまで暴れまくるか?と理解を超越しています。劇中ではそれなりにキアヌの心情を投射して理解できないことはないけど、よく考えるとやっぱ引っかかります。そしてNYが舞台設定みたいですが、キアヌが生きている世界自体が不思議に現実離れした異空間みたいなところです。この映画では、妻の葬儀の参列者とクラブの客と自宅を訪れるパトロール警官(それもどちらも顔すら認識できない映し方)以外は闇の世界の住人たちしか登場しないんです。街中であれだけ大銃撃戦を繰り広げても、警察の姿すら見えない。そしてセリフのある登場キャラはみなジョン・ウィックのことを知っていて、彼のことを知ってなかったのはロシアン・マフィアの“犬殺し”の息子とその相棒だけ。タイムズ・スクエアの交差点に建つ三角形のビルそっくりな外観の殺し屋しか入れないホテル、ここなんかは異次元世界かと思わせるような異空間です。でもジョン・ウィックのガンさばきだけは超リアル、有象無象を倒すときでも必ず二発目は頭や顔に必ず弾をぶち込む非情ぶり、これぞプロです。その割には途中で敵に捕まりボロボロにされてラストに至ってはマフィア・ボスのナイフの切っ先を自らの肉体で受け止める荒業、ちょっと変なたとえだけどジョン・ウィック=ガメラと言えるかもしれません。でもお互いにズタボロになりながらもマフィア・ボスを仕留めずにまるで互いの健闘を称えあって再戦を約して別れたようなラスト、ジョン・ウィックいったいどうした?
[CS・衛星(字幕)] 6点(2020-07-30 20:38:31)
48.  ショーン・オブ・ザ・デッド 《ネタバレ》 
ゾンビ・コメディの草分けにしてこのジャンルの金字塔です。劇中でゾンビという単語が発せられるたびに「Zワードを使うな!」とショーンとエドが向きになって怒るのがなんか可笑しい。ゾンビが蔓延し始めているのに、まったく気づかずに恋人との別れ話やエドとのしょうもないやり取りを続ける前半がとくに秀逸です。ゾンビの存在を認識してからパブへの逃避行を経てのクライマックスになだれ込む展開ではどんどんシリアスに傾きますが、デヴィッドの最期などグロ要素もしっかり盛り込んでいるのでちゃんとゾンビ映画のツボは押さえています。クライマックスの銃で自殺をとまで追い詰められてからの急転直下の解決は、まるで『ミスト』のパクりというかパロディみたいな感じすらしました。ラストのオチはこれしかないというところですが、笑ってしまいます。できればビル・ナイにもっと活躍して暴れて欲しかったところですが、フィリップがゾンビ化したときのバーバラとの車内でのやり取りは傑作です。 ロンドン上空で人工衛星が爆発して散布されたゾンビ・ウィルスがゾンビを生んだという設定みたいですが、ウィルスに感染してゾンビになった人たちが街をさ迷っている光景は、コロナ・ウイルスにロック・アウトされた時のロンドンを見せられているような感じで、ちょっとゾッとしました。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-07-15 19:43:47)
49.  ショック療法 《ネタバレ》 
古来より若返りの秘術には禍々しさが付き物、そのためには胎児を料理することすら厭わなかった中華帝国皇帝の逸話すら存在するのに、アラン・ドロンが運営するこの療養所の秘薬はまあ大人しい部類じゃないでしょうか。大金を積んでやって来るいわゆる上級国民たちへ羊の胎児にポルトガル人の内臓と血液をカクテルして注射するのがミソ、まあそう言われればそうかもしれませんが大してショックはなかったですね。それよりもショックだったと推測されるのは、“ダーバン”のCMでその渋さが日本中で知れ渡っていた真っ最中に、陽気な音楽にのせてフルチンで砂浜を駆けるドロン様のお姿に女性ファンは驚愕(いや狂喜?)したんじゃないでしょうか。この療養所自体が半分ヌーディスト村みたいなもので、ヌーディズムなんてまだ未知の文化だった日本人には刺激が強かったかもしれません。それにしても70年代のフランスの男優・女優の脱ぎっぷりの良さには感心します。 サスペンスとしてはユルユルもいいとこで、まあ評価はできません。肝心のドロンのキャラがマッド・サイエンティストなのか単なる女好きなのか判断に苦しむようじゃ、どうしようもないですね。アニー・ジラルドのヒロインも、物語の探偵役なのか被害者サイドなのか立ち位置が不明瞭でしたね。ドロンと一夜を共にした朝、まるで少女の様にはしゃぎながらシャワーを浴びるところは苦笑するしかなかったです。たしか彼女は冒頭の問診には自分はレズだと答えていたのに、よっぽどドロンのテクニックが凄かったんでしょう、そりゃあ天下のアラン・ドロンですからねえ(笑)。
[CS・衛星(字幕)] 3点(2020-06-18 22:07:11)
50.  死刑台のエレベーター(1958) 《ネタバレ》 
いくら晩の19時といったって、パリのど真ん中であんなに明るい時分にロープでビルをロッククライミングしたら目撃者が続出でしょ。 というわけで“エレベーターに閉じ込められる”というプロットはあまりに有名で多数のフォロワーを生みましたが、サスペンス・スリラーの視点で観ると本作はあまりにユルユルな映画なんです。社長を自殺に見せかけて射殺するモーリス・ロネの計画も、同時刻に在社していることが社員にばれていてアリバイ工作にもなっていないなんて、犯罪としては雑極まりないところは否めません。というよりも本来は無関係な二組のカップルがひょんなことから接点ができ、それぞれが違う動機で殺人を犯して破滅してゆく過程をマイルス・デイビスの即興演奏がムーディに彩った映画だと言うのが正解でしょう。でもマイルス・デイビスの演奏は鳥肌が立つぐらい映像とシンクロしているし、この手法を考えたルイ・マルの才気には脱帽です。ルイ・マルはジャンヌ・モローの魅力・ポテンシャルを引き出すことにかけては名人で、モローは本作では単純な悪女ではなく最後までモーリス・ロネを追いかける情念の塊みたいな存在で、まさに彼女の本領発揮でした。ロネの車を盗みアホの限りを尽くすバカップルの無軌道ぶりは引いてしまいますが、ラストで同じフィルムから印画紙に焼き付けられる両カップルの画像には、社長夫人と戦争英雄のカップルにしても若いバカップルと同じ穴の狢だったんだよと語っているようでした。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-19 23:18:32)
51.  深夜の告白(1944) 《ネタバレ》 
バーバラ・スタンウィックと言えば今じゃすっかり忘れられた女優ですが、本作の悪女フィリスはこれだけしかないという彼女の代表作、あの独特のヘアスタイルは今でも悪女のアイコン的な存在であります。ハロプロ有名グループの某アイドルがこのフィリスとよく似たヘアスタイル(しかも金髪)だったことが懐かしく思い出されます、そういやこのアイドルもけっこう強気なキャラでしたね。 ジェームズ・M・ケインの原作をレイモンド・チャンドラーが脚色してビリー・ワイルダーが監督したのですから、そりゃ傑作にならないわけがないじゃないですか。でもチャンドラーとワイルダーは撮影中は険悪な関係だったみたいで、『見知らぬ乗客』でもヒッチコックと揉めているし、このレイモンド・チャンドラーという偉大な作家は人づきあいが上手くなかったみたいです。 “フィルム・ノワール”には色んな定義がありますが、本作は間違いなくその最初期に位置していることは間違いないでしょう。そしてたぶん本作がワイルダー唯一のフィルム・ノワールなんでしょうけど、要はこの人どんなジャンルでも手を出せば軽々と傑作にしちゃうし、やっぱ天才なんでしょうね。この時代は、優れた脚本を書ける映画作家が存分に腕をふるえる黄金時代だったと思います。 ストーリーテリングはフレッド・マクマレイが冒頭からヴォイス・レコーダーに事件を順繰りに語るというオーソドックスなものですが、それがナレーションにもなるというハードボイルド小説の定石みたいなテクニック、ここら辺にチャンドラーの爪痕があるのかもしれません。その単調になりがちなスタイルをぐいぐいと引っ張るのがやはりエド―ワード・G・ロビンソンの力量なんでしょうね。ただ一つ残念だったのは、フィリスが最後に二発目を撃てなかったうえにそこで(多少)改心したような展開になったところでしょう。なんか中途半端でとことんサイコパスみたいなキャラを通して欲しかったところですが、時代を考えるとヘイズ・コードが猛威を振るっていた頃ですからしょうがないかもしれません。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-05-16 20:56:35)
52.  女優霊(1996)
なるほどこれが中田秀夫の監督デビュー作なんですね。尺も短く低予算を逆手にとってほぼ撮影所内限定という舞台設定も良いアイデアです。主人公も初めて劇映画を撮る新人監督というわが身を置き換えたようなキャラ設定ですが、そこに柳“ユーレイ”を起用するというダジャレというか出落ち感があって面白い。撮影現場も古き時代の職人気質の現場という感じが良く出ているし、大杉漣を始めとするスタッフたちの自然な演技がまたリアル、ホラー的な要素を別にしてもこういう基本的な演出がキチっとできたというところにも、中田秀夫は並みのルーキーじゃなかったことが判ります。ホラー度は、まあ『リング』以前としてはかなりのレベルなんじゃないでしょうか。主演した女優が事故死したことでお蔵入りになって放映されなかったドラマ、その一般人が観てないはずの映像を主人公が記憶しているという不条理、やはりホラーの神髄は不条理にあるのですよ。 余談:脚本の高橋洋によると、この主人公が小3のときに観てあまりの怖さにTVが嫌いになった番組の元ネタは、あの有名な『シェラ・デ・コブレの幽霊』なんだそうです。かつて日曜洋画劇場で一度だけ放映された幻のホラー、私も放映された予告編を観ただけ震え上がってしまい、もちろん本編放送は観れませんでした。公開時に街頭に貼られた『恐怖の足跡』のポスターを見たことと『シェラ・デ・コブレの幽霊(の予告編)』は、私の生涯の二大トラウマ・ホラーです。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-04-30 00:06:53)
53.  新・平家物語 《ネタバレ》 
『新・平家物語』といいましても保元の乱以前の『ザ・レイズ・オブ・平家』とも言うべき清盛の青春時代が描かれていると言って間違いはない映画です。何故に?と申しますとこれは大映が平家物語三部作として企画した第一作で、溝口健二は他の二作には関わっていない、というか本作が溝口のラス前作で予定はあったのかもしれないがすでに彼はこの世にはいなかったというわけです。また、二本しかないカラー撮影作品の一本でもあります。 主演の雷蔵は映画デビューして二年目、世評では雷蔵は本作で演技開花したとされています。とはいっても、まず若人あきらかイモトアヤコかというぐらいの強烈なインパクトのある眉毛メイクに、眼が釘付けになっちゃいますよね。時代考証にうるさい溝口だけど、これにはなんか拘りがあるのかと訝しむばかりです。平清盛というと『平家物語』のせいでどうしても傲慢な悪役イメージがつきまといますが、考えてみれば公家政治を終わらせて武士の時代を切り拓いた人、織田信長の吉法師時代みたいな描き方もこれはアリでしょう。また自分の出自に悩み苦悩する清盛像も、ある意味現代的で斬新な感がありました。余談ですが、私の中では大河ドラマ版『新・平家物語』の仲代達也が、史上最高の平清盛だということになっています。 「女を撮らせたら溝口」というのが定番ですが、観れば納得できるように群衆や僧兵の大群などモブ・シーンの映像も素晴らしい迫力があります。それは名カメラマン宮川一夫の技量もありますが、これは長年コンビを組んで息が合った末に完成した名人芸でもあるでしょう。惜しむらくは保存状態のせいかフィルムの発色が劣化しているところで、貴重なカラー版溝口作品なのでぜひデジタルリマスターしていただきたい。
[CS・衛星(邦画)] 7点(2020-02-23 22:17:31)
54.  地獄の英雄(1951) 《ネタバレ》 
ビリー・ワイルダーと言えばどうしてもコメディが有名ですけど、実は人間のエゴや赤裸々な行動を描かせても天下一品なんです、要は何でも出来ちゃうということです。まだスターリンが生きてて朝鮮戦争の真っただ中という時代に、ここまで商業ジャーナリズムの偽善性とそれに扇動される大衆の愚かさをあからさまに描くとは大したものです。邦画では長い間「新聞記者と弁護士は正義の味方」というステロタイプが蔓延っていたことを思うと、日本映画の問題意識の欠如を嘆かずにはいられません。もっともハリウッドでは、フランク・キャプラの『群衆(41)』という本作と同様の視点で撮られた映画もありまして、キャプラもワイルダーと同じくコメディ畑の監督なのが面白いところです。主人公の野心ギラギラの新聞記者がカーク・ダグラスだというところで、もうこの映画が傑作になる運命だったんでしょう。脚本もワイルダーらしい巧緻な構成が光りまくっています。冒頭で押し掛けた田舎新聞社の編集長を「ズボンを履くのにサスペンダーとベルトの両方を使う男は騙せない」と評したダグラスが、一年後には同じスタイルになっているのは脚本の芸が細かくて笑わせてくれます。最初のころは半分は善意を持って集まってきた民衆が、だんだんイベント目当ての野次馬に過ぎなくなり、特別列車まで仕立てて押し掛けるエスカレートぶりの異様さ、もうここにはワイルダーの大衆に対する嫌悪すら感じます。ちょっと不満だったのは、最初は冷酷・無慈悲な人間だったダグラスが途中から生き埋めになったレオに同情するようになるところがいささか唐突なような感じを受けるところです。ラストになると完全に良心に目覚めて勧善懲悪っぽい幕の閉じ方で、これは例のヘイズ・コードや大スターであるカーク・ダグラスへの忖度があったのかもしれません。そこら辺は、時代が違えどもメディア報道をテーマにした、ジェイク・ギレンホールの『ナイトクローラー』とは偉い違いです。まあ『ナイトクローラー』はリアルではあるけどあまりにやり過ぎ、とんでもないお話しですけどね。
[CS・衛星(字幕)] 8点(2020-01-31 22:24:24)(良:1票)
55.  女王陛下のお気に入り 《ネタバレ》 
テューダー朝とは比べ物にならないけど、スチュアート朝もけっこう宮廷内はグチャグチャでなかなかのものです。登場人物はまずアン女王、英国の歴代女王としてはもっとも影が薄く、実際にも明敏な知性や決断力を持ち合わせてはいなかったみたいですが、治世中にはグレートブリテン王国(スコットランド王国との正式な合邦)が発足したりしてそれなりに国勢は伸長しています。そして彼女の幼馴染でもある筆頭女官のサラ、彼女の夫はマールバラ公ジョン・チャーチル、そう英国史上最良の軍司令官にしてウィンストン・チャーチルやダイアナ皇太子妃のご先祖様です。アビゲイルはサラの従妹で、彼女を頼って宮廷に仕官してきました。この女王とサラの関係がなんとも生々しいんです。即位する前から苦楽を共にしてきた親友みたいな感じで、女王に対するツンデレな態度がもう堪りませんし、さすがにこれはフィクションでしょうが二人はレズ関係なんです。いかにも策士といったレイチェル・ワイズと、ただのおばさんにしか見えないオリヴィア・コールマンの対比が面白い。オリヴィア・コールマンは普通のおばさんみたいなのに突然女王らしい威厳を見せるところなど巧みな演技、ヘレン・ミレンに続くクイーン女優の誕生ですか。ルックスからするとヴィクトリア女王役にも最適じゃないでしょうか。カメラ・ワークも独特で、魚眼レンズを使ったカットが頻繁に使用されているところが不思議な感覚です。全編を八章に分けたストーリーテリングなんかはどことなく『バリー・リンドン』を彷彿させられます、時代設定もほぼ同時期ですしね。でもアン女王には配偶者(王配)がいたのになぜか登場も言及もなく、まるで独身みたいなのが不思議。まあこの撮り方の方が、女王の孤独が強調されているとも言えますが。 面白いのは当時の宮廷政治の状況で、このあたりが現在まで続く英国議会政治の始祖と言えるのでしょう。一応トーリー党とホイッグ党という二大政党の体制ですが、議会が開催されていない時は宮殿であひるの賭けレースに興じたり、なぜか素っ裸になった大臣にみんなでトマトをぶつけて遊んだり(なんかの罰ゲーム?)、まるでガキの集団みたいです。議員といっても全員貴族、当時の上流階級の退廃ぶりが窺えます。この宮廷政治や外交政策の決定に、サラやアビゲイルの助言が影響力を持っていたとは史実とはいえ恐ろしくなります。
[CS・衛星(字幕)] 7点(2020-01-27 20:51:02)
56.  娼婦ケティ 《ネタバレ》 
ポール・ヴァーホーヴェンがハリウッドに行く前にオランダで撮った五本の長編映画の一編です。“娼婦”なんて邦題がついているけど、実は五本の中でいちばん大人しい映画なのかもしれません。ケイティ・ティッペルという女性の自伝小説が原作で、この人はなんとノーベル文学賞の候補になったことがあったそうです。 時は1881年のオランダ、ケティは貧しい労働者の家庭の生まれ。五人姉弟の二女だけど姉はしょうもないアバズレ、アムステルダムで娼婦をして家族を養っています。母親は長女に「もっと稼いで来い!」とハッパをかけるとんでもない鬼母です。雨が降ると家中くるぶしまで浸水、暖を摂る為に家族全員の靴を燃やしたり、ここら辺の貧困描写はヴァーホーヴェンらしく容赦ないです。仕事もクビになりよくあるパターンでケティも娼婦になるのですが、姉の様に娼館勤めではなく街娼(俗に言う立ちんぼってやつです)、しかもヒモよろしく母親が見張っているときます、ほんとに怖―いおばはんです。ところが商売中に知り合った画家のモデルになり、彼を含む三人の男がケティの運命を変えることになります。 結論から言うと後年自伝を書く作家になるぐらいですからハッピーエンドは当然のごとく予想できますが、『マイ・フェア・レディ』のヴァーホーヴェン版になってもおかしくないけど、そう単純な撮り方を彼がするわけないですよね。オランダ時代のヴァーホーヴェンは反権力・左翼的な視点が目立つ撮り方をしていますが、本作でも労働運動や極端な貧富の差などの社会矛盾が前面に出されていて、それに翻弄されながらも逞しく生きるヒロイン像が描かれています。ケティ役はモニク・ヴァン・デ・ヴェン、『ルトガー・ハウアー/危険な愛』では脱ぎまくってとんでもない演技を見せてくれた当時のヴァーホーヴェンのミューズです。本作では脱ぎはしますが比べたら大人しいもので、これは当時彼女と実質的な夫婦関係だった撮影のヤン・デ・ボンに遠慮したみたいです。ルトガー・ハウアーは気障な銀行員というキャラで出演ですけど、彼らしくないなんか可愛らしいルックスでした。 なんか大河小説の抜粋版の映像化というのが印象ですが、ヴァーホーヴェンはプロデューサーの介入が多かったとブツクサ言っていたそうです。それでも音楽なんかに青春もの映画のような雰囲気があったりして、ヴァーホーヴェンらしい味わいがあったのは確かです。
[ビデオ(字幕)] 5点(2020-01-19 22:54:02)
57.  人生はシネマティック! 《ネタバレ》 
バトル・オブ・ブリテンの真っ最中、空襲に痛めつけられている英国民を鼓舞しようと情報省はプロパガンダ映画の製作を企画した。題材はダンケルク撤退、「双子の姉妹が小舟でダンケルクに赴き兵士を救出した」という新聞の記事をもとにした英雄譚でいこうじゃないか!となって省内で白羽の矢を立てた女性職員を脚本家に仕立てて製作開始。ところが彼女が双子姉妹に会ってみると新聞の記事は話を盛り過ぎてほとんどフェイクニュース状態、姉妹が操縦した船はエンジン故障でダンケルクどころか英国領海を出てすらいなかった… というプロットの映画です、いわゆるバック・ステージものと言われるジャンルになるかと思います。映画製作の裏側を見せる作品はいろいろありますが、本作のヒロインは脚本家で脚本家の視点で撮られているところがその手の映画としては珍しい視点だと思います。“予期せぬ出来事が続いて撮影現場が混乱する”というのが定番のストーリーテリングですが、この映画ではそのシークエンスが割と抑え気味で、そのためかコメディ色が薄くなっています。ベテラン名優役のビル・ナイは確かに彼らしい役柄で光っていますが、全般にヒロインを含めて主要キャストが地味な顔ぶれなのがなんか弾けてない感を強くしてしまっている気がします、まあそこがいかにも英国映画というテイストなんですけどね。登場キャラやその周辺の人々がぽつりぽつりと空襲で死んでゆくのがリアルなところなのかもしれませんが、ヒロインと恋仲になる脚本家が死ぬところだけは「そんな死に方ありか!」とただただ驚いてしまいました。 決して悪い映画だとは思いませんが、観客の期待する水準までには達しなかったなというのが正直な感想です。コメディ要素がもっと強い方が良かったかと思います。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2019-07-26 23:39:26)(良:1票)
58.  ジグソウ:ソウ・レガシー 《ネタバレ》 
『ソウ』マラソン完走者のくせに、またまた新作が世に出たといって観てしまう自分が情けない、というか、お前ら性懲りもなくシレっと撮るなよ!とジェームズ・ワンおよびリー・ワネル両名に説教したい。 製作者たちは原点回帰と呼ばれたいのかもしれないが、よくよく考えると今回のお話しは前シリーズのエッセンスを薄めて一本の映画にしました、ってことなんですよ。ジグソウの後継者が誰か?というくだりは、まさに前シリーズの『3』当たりまでのストーリー展開とほとんど一緒だといえます。途中からジグソウ本人が登場してきてまさかの心霊ホラーかと慄きましたが、種明かしされればこれは『4』で使っていたような時系列をいじくった映像的トリックにすぎず、完走したくせに前シリーズの細部を忘却の彼方に追いやってしまった自分が情けない。でも言わせていただければ、これはミステリー系映画のトリックとしては禁じ手なんじゃないかと思いますけど… やはり私も、ラストは“Game Over”で幕を閉じてほしかった方です。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2019-07-19 00:41:46)
59.  13時間 ベンガジの秘密の兵士 《ネタバレ》 
2012年オバマ政権時代の事件なんだそうですが、「へー、そんなことあったんだ」ってくらい自分には「遠い」どころか「全然知らない」出来事ですね。実話なんだからしょうがないと言ってしまったら身もふたもなくなっちゃいますけど、事件の背景やら敵味方の区別がつかない現地勢力など観ていてストレスがたまることたまること。でも一番不可解だったのは領事館が攻められてなんと大使まで死亡しているのに、上空までドローンを送って状況を把握していてもけっきょく見ているだけで終わってしまった米軍の信じられないほどの不甲斐なさです。これはもちろん現場じゃなくて上層部の判断あっての対応でしょうが、さすが腰抜けオバマ大統領の面目躍如です。この映画の隠れテーマはこの対応に対する批判なんでしょうが、さすがにマイケル・ベイといえどもそこまで露骨に政治性をもった撮り方はできず、大統領選の真っ最中にリベラルが主流でヒラリー・クリントン支持一辺倒だったハリウッドではさすがにトーンダウンせざるを得なかったんでしょうかね。でも事件の概要などの予備知識をいっさい持たずに観たおかげで、先の読めない緊迫感だけはひしひしと伝わってきました(まさか大使が死ぬとは予想もしませんでした)。とはいえ作品の出来は『ブラックホーク・ダウン』には遠く及ばず、最近はこの手の非対称戦争ものが量産され過ぎのきらいがあるので、ちょっと食傷気味です。日本ではとうとう劇場未公開で終わったというのも、やむを得なかったんじゃないでしょうか。
[CS・衛星(字幕)] 5点(2019-05-29 23:10:34)
60.  将軍家光の乱心 激突 《ネタバレ》 
実はわたくしも、この映画が角川映画&監督・深作欣二じゃないってことに、今回ようやく気が付きました。本作が撮られたのは89年、この当時では角川映画は完全に失速し始めていたころで、チャンバラ映画の本家・東映が角川映画の切り拓いた路線に乗っかる形で公開した超大作、まあ時代はバブルの真っ只中でしたからね。 お話しはもちろん周知のごとく荒唐無稽ですが、内容はしごく単純極まりなく緒形拳率いる浪人集団が将軍家光の長男竹千代を江戸まで護送するだけのことです。道中を家光が放った追手というか大軍が襲いかかってくるわけですが、この攻防戦のアクションが想像以上に大迫力。悪役・伊庭庄左衛門の千葉真一が配下のJACの面々を動員してアクション監督を務めていますが、彼の持てる力を結集したようなシーンの数々は見ものでした。とくに馬を使ったアクションはすさまじく、「これ、撮影でケガさせて廃馬がけっこう出たんじゃない?」と心配してしまうほどです。中にはスタントマンから死者が出た『ワイルドバンチ』の有名な橋爆破アクションをそっくり再現したシーンまであり、まさか日本映画でこれをやるとは、とびっくりいたしました。本家との違いは、橋げたの部分が一枚の板になっていて爆破ともに落し蓋みたいに下に開く構造になっていて、ここら辺に安全策があったのかもしれません。千葉真一のスタッフとしての役割は、東宝特撮の円谷英二みたいな感じといえば判りやすいと思います。ここまでやれるなら、日本映画界はなぜ彼に予算をたっぷり与えてアクション映画を一本撮らせてあげなかったのかと、悔やむ次第です。 トンデモ映画みたいに評されることもありますが、わたくしはアクションと殺陣(千葉真一と緒形拳の一騎討ち)だけ見てればかなり評価が高いとおもいます。でもALFEEを起用した呆れるほどの音楽センスに一点マイナスといたします。
[CS・衛星(字幕なし「原語」)] 6点(2019-05-23 23:41:58)
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