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1.  嘘を愛する女 《ネタバレ》 
エンドクレジットを見ると、脚本協力で奥寺佐渡子の名も。長澤側の科白などを助言したのかも知れない。 身分証明書の偽造とか、序盤にミステリー色を強調して引き込んだのは良いが、その反動か後半の種明かしと着地が凡庸な印象を与える。  人混みのなか気分を悪くしてうずくまる長澤まさみと、雑踏の中で足を止めて彼女の方へと向かうシューズ。 ここでまず足を介した二人の出会いが演出されることで、この後その通り足や歩行のモチーフが様々に展開されていくのだが、 終盤に車のタイヤが破損することでここからさらに歩行が活かされるのかと思いきや、さにあらず。 あっさりと車が直ってしまうので尚更落胆する。  後半乗れないのは、働き方改革とか、少子化対策まがいのスローガンが婉曲的な形でちらつくからかも。
[映画館(邦画)] 4点(2018-01-24 21:18:46)
2.  打ち上げ花火、下から見るか? 横から見るか?(2017) 《ネタバレ》 
水中の気泡、散水の水玉に始まり、湾曲した校舎の内・外観、ゴルフボールまで 含めて様々な円形、球体、回転のモチーフを並べて果て無い円環のドラマに結びつける という事らしい。 そして今時はやりの単にコギレイな背景美術には生活者や動物の気配はロクになく、 端から貧しく静的で独りよがりな観念的世界が広がっているばかりだ。 小首をかしげて思わせぶりにカメラをのぞき込むヒロインのアップの図とか、 ただ気色悪い。
[映画館(邦画)] 2点(2017-08-31 23:21:39)
3.  美しい星 《ネタバレ》 
浅目にみえながら、実は後景の脇役の芝居も抜かりなくドラマ語りに寄与させているという近藤龍人のフォーカスが絶妙だ。 (冒頭のレストランの後方テーブル席、産婦人科の廊下後方のソファなど) 霞が関近辺のインターチェンジのショットとか、地味だが凄い。  佐々木蔵之介を不気味に照らし出し、病室の逆光であってもなお橋本愛を美しく浮かび上がらせ、その切り返しでベッドのリリー・フランキーに 優しく注がせる白光の扱いも素晴らしい。雨垂れの陰影といい、不意に通過する列車の灯りといい、ライティングによる語りの演出が随所で冴え渡る。 病院を抜け出した四人家族は車で夜の繁華街を抜ける。車窓に照り返されるネオンの光芒が、それを見るリリーと重なり合うショットには情感が 溢れんばかりだ。  寄り添って、スピルバーグ的に光を見上げるラストの家族の鳥瞰ショットには条件反射的に感動するしかないだろう。  バリエーション豊かな音を響かせる渡邊琢磨の音楽にも惚れた。
[映画館(邦画)] 9点(2017-05-28 00:13:36)
4.  裏切りの街角(1949) 《ネタバレ》 
しかるべき見所の数々はまぶぜ氏が以下に具体的に一通り挙げられているのだが、 とりわけ特徴的なのはやはり縦構図の効果的な取り方だろうか。 バーの長いカウンターが形づくる鋭角的なラインや、現金輸送車の出入りスペースと手前の控室との組み合わせ、駅の売店越しに佇むイヴォンヌ・ ダ・カーロなど、深い奥行きを構成して人物の相関を示し、ドラマに緊張をもたらしている。 単なるエキストラに見えた一通行人が、ふと違和感のある動きをする。後にその人物が意味あるキャラクターとして登場してくるという巧さ。 病院のベッドに固定され、身動き出来ないバート・ランカスターが鏡を使って死角である病院廊下を覗く。 そこに映った、ソファに座っている男。その距離感、鏡面の歪みが生みだすサスペンス感が堪らない。  ドラマ上の必然からレイアウトされた厳密な構図の数々に魅入る。
[DVD(字幕なし「原語」)] 9点(2016-12-11 23:47:22)
5.  海へ See you 《ネタバレ》 
事あるごとに幾度も幾度も回想シーンに飛ぶという、最悪の語りで進む。仮にもレースの映画でこのような「後ろ向き」な進行は勘弁して欲しい。 桜田淳子との対話シーンとなると、その途中途中で説明の為のフラッシュバックに突入。 しかも、それがいしだあゆみ絡みの類似シーンの反復というから、クドい事この上ない。 いかにもこの脚本家好みだと思われる設定や女優が登場してくるが、ヒロイン二人もここではただ鬱陶しい。  南極の大地を駆ける犬たちのイメージを受け継いだ、砂漠を走る車両の空撮ショットも次第に単調と化す。
[DVD(邦画)] 3点(2016-07-23 23:59:45)
6.  海よりもまだ深く 《ネタバレ》 
「幸せとは云々」といった如何にも名言、的な人生訓を樹木希林らに語らせるのだが、阿部寛が小説書きという設定はそれらに対する照れ隠しのようにも 見える。幸い彼女の軽妙な芝居のおかげで、嫌味がない。  阿部寛の愛嬌ある表情変化や身振りも達者で、姉弟・母子・元夫婦同士の掛け合いもちょっとした台詞の妙で笑わせる。  台風の夜にしては、音響・視覚共に少し物足りなさを感じるが、これでいいのだろうか。 嵐の静かな高揚感をもう少し感じさせてほしい。 公園のシーンのロングショットでは『台風クラブ』を少し感じさせたが。  遊具の中で、懐中電灯のライトを反射した光を小さく宿す阿部の眼が艶めかしい。
[映画館(邦画)] 7点(2016-05-25 23:59:08)
7.  ヴィンセントが教えてくれたこと 《ネタバレ》 
嫌われ者だったビル・マーレイが衆人環視の中で賞賛の拍手を受ける。  感動の場面といいたいところだが、逆にその安易さに萎える。 大観衆による拍手喝采のカタルシスという、いわゆる感動ドラマの毎度のパターンだ。  せめて、本人をその場から除かせるとか、理解者をラストのテーブルの面々だけに絞るとか出来なかったものか。  結局は万人向けの道徳的な話に落ち着く訳だ。 脳卒中とリハビリのくだりも、演技賞狙いの設定かと邪推してしまいそうになる。  この種のコンビものなら山ほどあるだろうが、キャラクター性といい、競馬のシチュエーションといい まずは北野武『菊次郎の夏』が浮かぶが、その語り口のナイーヴさにおいて似て非なるものである。  気取った選曲の数々もどこかキャメロン・クロウっぽいと思えば、 ラストは「Shelter From The Storm」できた。
[映画館(字幕なし「原語」)] 5点(2015-09-06 17:18:23)
8.  動くな、死ね、甦れ! 《ネタバレ》 
映画の終盤近く、強盗団から逃れた少年と少女が束の間の休息をとっている。 そのままクレーンのカメラが昇っていくと、 晴天なのか曇天なのか白い空に黒々とした木の枝が映し出される。  この後、二人は機関車に乗って晴れて故郷へと向かうのだが、 その長閑で爽快なはずの空と木の図象は、白地に黒い亀裂が入っていくような、 何やら不穏で禍々しいものとしても迫ってくる。  果たしてその予兆通り、乾いた悲劇が二人を待ち受けるのだが、 それが暗示を意図したショットであるのかどうかは定かでない。  ともあれ、こうしたモノクロの優位を活かした画面造形の妙は全編に見られる。  雪や吐息・湯気・子豚の白、機関車や泥土の黒。  手持ちとロケーションを主体としながら、計算されたかのように それら白と黒が絶妙に配置されており、 さらにその中に様々なアクションと音楽性が組み込まれる様は何度みても驚異だ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-23 00:54:17)
9.  海街diary 《ネタバレ》 
高台からの眺望や、二階窓からの梅の木、花火、ちくわカレーや生しらす丼など、 対話の中に出てきた対象を続くショットで直接的に誇示するといった事をせず、 あくまでそれを見る姉妹、それを美味しそうに食する姉妹の姿を中心に ショットを構成する。 いわゆる「素晴らしい景色」、「美味しそうな料理」をどう映画表現するか、の慎ましい工夫がある。  彼女らの生い立ちはフラッシュバックの類を一切用いることなく、 あくまで今現在の言動、家屋の美術、小道具、衣装による性格付けで以て語る。 (釣竿振りは『父ありき』か。) これも、いわゆる「つらい過去」をどう映画として現前させるか、の工夫だ。  それぞれロケーションには緩急様々な勾配が施されて、豊かな画面をつくる。 花びら舞う桜並木のトンネルを抜けていく広瀬すずの官能的な表情。  こんなショットも撮るんだ、と少し驚く。
[映画館(邦画)] 8点(2015-06-19 16:57:56)
10.  宇宙戦艦ヤマト2199 星巡る方舟 《ネタバレ》 
宇宙戦艦ヤマトがラストには無事生還する予定調和を前提とした物語であるわけ だから、作劇的にはどうしても緊迫感を欠いてしまうのだが、 序盤で敵側の強力兵器の威力を見せつけ、 また自らの必殺兵器を封印することによって、何とかサスペンスを維持している。  中盤でのライバルとの葛藤―和解という流れにあたっては、 共同生活中の二人の衝突や交流をもっと丁寧に段取って欲しい。  そうしてこそ、クライマックスの共同戦線にさらなるカタルシスが もたらされたはずだが、テーマ曲と共に雲海を抜けていくヤマトの カットそれだけで高揚させてしまうのは、やはりマンネリの偉大さだ。 
[映画館(邦画)] 6点(2015-03-31 23:38:04)
11.  WOOD JOB! ~神去なあなあ日常~
某旬報の批評の中にもあった「身体性」。やはりこれだろう。 クライマックスの御神木落としのスペクタクルは、その直前の染谷将太の もやい結びや、伊藤英明の猛ダッシュのワンカットに及ばない。  染谷と長澤まさみがムキになるフィジカルなドッジボール。 その二人を素早い左右のパンで捉えるカメラワークは、 御神木に大鋸を入れ協働する伊藤・染谷の二人を捉えるパンニングへと連なっていく。  大型バイクを颯爽と駆る長澤、そして チェーンソーをあたかも本職のごとく扱いこなす伊藤の自信に満ちた身のこなし が清々しい。 別れのシーンでも、彼女は懸命に疾走し、彼は全力で抱きしめる。 ここでもひたすら身体的だ。  藁葺き屋根の民家へと登る坂道や森の木漏れ日など、いい情景も多数ある。 撮影は芦澤明子だ。    
[映画館(邦画)] 7点(2014-05-25 23:01:27)
12.  ウィンターズ・ボーン
タイトルバックの仰角ショット。 絡まりあう黒い枝々の合間から光を放つ薄日のイメージが映画の中で象徴的にリフレインされる。 生活感を滲ます家屋の質感と、中西部の寒々しい外気を伝える自然光主体の画面の感触がいい。 一癖も二癖もある登場人物たちの実在感と凄味。その佇まいだけで、主人公を取り巻くシビアな生存環境を語りしめる。 その過酷さの頂点にあるのが、壮絶なリンチを受け、左頬を無残に腫れ上がらせたジェニファー・ローレンスの痛々しい「顔」だろう。 それでも尚、擦り切れたミリタリー柄のジーンズにハーフコートを羽織り闊歩する彼女のタフで凛々しい相貌が素晴らしい。  淀んだ暗い沼の水面に落ちる月光の冷たい光と、チェーンソーのモーター音が苛烈に響く夜を彼女は越え、父の形見となった白いバンジョーを弾く幼い妹・弟と玄関前に寄り添い合う。  その三人のショットはナイーヴさを宿しながらも心強い。
[映画館(字幕)] 7点(2011-11-21 23:45:32)
13.  ウォール・ストリート
バイクを運転しながら、ヘアカットしながら、トレーディング・フロアを速歩しながら。携帯電話を駆使しての、せわしない「ながら対話」の生み出すリズム感と運動感。  点描されるマンハッタン遠望は、株価チャートになぞらえた右肩下がりの凹凸運動に転化され、父娘と恋人の和解は階段の段差の中にバランスが見出されていく。  冒頭でビル街を一気に上昇していく圧巻のカメラは、ドラマの市況状況に連動して上昇と急落を繰り返し、ラストで新たなバブルの緩やかな浮上を仄めかす。  デスクに置かれたコンピュータのディスプレイ群、キャラクターの人間性を示唆する衣装デザインも、業界の虚栄を華麗に視覚化している。  監督本人、チャーリー・シーン、イーライ・ウォラックのふとした出演シーンの愛嬌が映画を大いに和ませてくれて楽しい。(携帯電話の着信音楽が憎い。) 
[映画館(字幕)] 7点(2011-03-06 21:14:16)
14.  牛の鈴音
「農薬を使えばよいのに。」「機械を使えばよいのに。」夫婦間ではとうに了解済みのはずの矜持を、愚痴の形で観客に説明することを強いられる夫婦に同情する。キャメラという権力による暗黙の強要。可哀想なことに、逆説的な自慢に聞こえてしまう。企画段階から当然目論見通りというべき結部も、案の定、安易で破廉恥な品性を露呈させている。穿った見方で恐縮だが、余命一年のはずが予想外に寿命の延びた牛に予算不足のスタッフは何を思ったことか、実に興味深い。三年目にして、臨終が近いと連絡を受けたスタッフ達は「久方ぶりに」「勇躍」、現場に駆けつけたという(解説書参照)。町中で、デモの群衆の前に夫婦の牛車を思惑通りに配置させるいやらしい構図。市場で牛が売れないことをあらかじめ見越した上で、ぬかりなく用いられる感傷的な高速度撮影。埋葬場面に立ち入り、墓穴まで覗き込むキャメラの無節操、さらには媚びと阿(おもね)りそのものというべきBGMの挿入。いずれにもスタッフの醜い打算と邪心を感じずにはいられない。
[映画館(字幕)] 2点(2010-04-08 20:36:37)
15.  海の沈黙
居間の暖炉で小さく揺れる炎、ルームランプの落ち着いた灯りが人物の表情を厳粛に浮かび上がらせ、画面に重厚感を与える。光と影のコントラストが極めて印象深い端正な屋内撮影と、パリ市内や農村地区の風光を瑞々しく捉えた屋外撮影の対比が素晴らしい(撮影アンリ・ドカエ)。視覚のみならず、モノローグや時計音やピアノを効果的に活かし静寂と緊張感を最後まで持続させる至芸といい、三者を演じるキャストの存在感といい、感嘆すべきメルヴィルの長編第一作。三人が集う最後の夜。姪はようやく編みあがったスカーフを肩から掛けている。そこに刺繍された図柄(お互いに差し伸べあう二つの手)が彼女の内なる思いを雄弁に語っている。独仏融和の絶望を語るドイツ軍将校に対し、始めて視線を送る姪。その彼女を真正面から捉える、最も機能的で純粋なクロースアップの美しさ。慈愛と悲しみの交じり合うような深い眼差しが胸を打つ。ラストショットのシルエットの静謐さも味わい深い。
[映画館(字幕)] 10点(2010-03-24 21:25:17)
16.  宇宙戦艦ヤマト 復活篇
ロクに動かない、ほぼ一枚絵(「非アニメーション」)で表現された覚束ない野生動物の動き。要するに、観察力も作画力もなく、チェックシステムも機能していない。CG主体のメカニックアクションや、爆発描写には嬉々として拘る一方で、人間・動物のアクションはまるでダメという、アンバランス極まりない主流現代型日本アニメーションである。人物の動作は最小限、ほとんどがバストショットあるいは正面と横顔のアップで、単純な目パチ・口パク・頷きで間を持たすバリエーション。いかにもメッセージ・テーマを最優先させる典型的省エネ作品だ。個々のショットの豊かな活劇性を重視する宮崎監督型の対極。(手書きのタッチに拘った最新作とも好対照だ。)例えば、主人公の艦長が娘を残骸の下から助け出す作画の貧弱さ。宮崎監督ならば、腰をかがめ梃子を押し上げる渾身の動作をより力感をもって演出し父娘の感情表現に結びつけるだろうし、生存者を探す動作も忘れまい。何よりも上述した動物のアニメーションに対して絶対に手抜きしないだろう。この映画が一応掲げているらしい「地球賛歌・生命賛歌」の主題を提示する、本来なら最も重要な場面のはずなのだから。正に画面は正直で、この映画の謳うテーマが心にも無い取ってつけたようなものだから、肝心の場面で心のこもらぬ「動かない動物」の絵と成り下がる。
[映画館(邦画)] 2点(2009-12-22 23:01:43)
17.  ヴィヨンの妻 ~桜桃とタンポポ~
戦中戦後の時代を背景として夫婦間の機微を描いたドラマは必然的に成瀬作品との親近性も感じさせ、それらは美術セットの再現力や、役者の存在感のみならず、並び歩き、振り返り、借金額、風・雨といったさりげない成瀬的なモチーフにも微かにうかがえる。面会室で遠くに響く汽笛の音、高架下の列車通過音、弁護士事務所の時計音、浅野忠信と広末涼子が心中を図る山中の水音など、静寂を意識させる微妙な環境音の演出が、単調になりがちな固定ショットにリズムを与え、松たか子の働く居酒屋や、列車車両の場面などに差し挟まれるガラス窓越しのショットが愛憎ドラマに客観的なバランスを取らせている。狭い台所・居間・客席の構造が面白い呑み屋(椿屋)のセットや、侘しさ満点の夜間照明、節度あるCGの利用法なども良い。  
[映画館(邦画)] 7点(2009-11-01 13:37:16)
18.  
現地ロケによる地道な長期取材に基づき、自然と人間を描出していくセミ・ドキュメンタリーの手法は、明らかに35年日本公開の『アラン』(ロバート・フラハティ)からくるものだ。 またニュース映画全盛時代の、いわゆる写実的表現を尊重する時流の反映でもあるに違いない。 ただしフラハティの撮った過酷な辺境とは違い、日本の風土ならではの四季折々の豊かな風物が、軟調のローキー画面とフェード・イン、アウト、オーヴァーラップといった緩やかな画面転換を主とする日本的な時間表現の中で抒情詩的な味わいも醸している。  特に感動的な子馬の出産場面は優しいローキー画面の賜物といえる。 その柔らかな黒は迫真性の追及であり、夜間の静けさと緊張感、喜び、厳粛さの表現であり、主役たる馬への誠実な配慮でもある。  また、スタッフの写実性追及の姿勢は劇伴音楽の抑制という面にも現れている。 父親が病に倒れる秋は木枯らしの風音、馬が病臥する冬は吹雪の轟音、子馬の生まれる春はわらべうたの歌声、子馬と別れる夏はひぐらしの鳴声や夏祭りのお囃子、そして全編にわたり印象的な方言の響きといった具合に、あくまで環境音の採り入れ方の妙味によって「自然」と「ドラマ」両者を相乗的に引き立てており、秀逸だ。
[映画館(邦画)] 10点(2009-02-17 23:12:27)
19.  歌行燈(1943)
能における「幽玄」や「妙」(柔和、優艶、優雅)の映画的表現ともいえるのが「松風」を伝授する松林の場面における自然光の傑出した美しさだろう。木立を縫って緩やかに下降するクレーンショットの情調。かすかに揺れる木漏れ日の光。山田五十鈴の無心の舞。明け方の路地を歩むショットとの的確なオーヴァーラップとその反復。それらが渾然一体となった絶品のシークエンスである。撮影担当の中井朝一氏、照明の岸田九一郎氏は、同じく能の様式を取り入れた黒澤作品『蜘蛛巣城』などでも優れたスタッフワークを見せる。岸田氏は『ゴジラ』を始め、数々の東宝怪獣映画も手がけることになるが、超自然的存在を照明術によって映画の中に浮かび上がらせるという意味で、能の世界を主題とした本作と相通ずるものがある。  
[映画館(邦画)] 9点(2008-12-08 23:05:40)
20.  宇宙戦争(2005) 《ネタバレ》 
仮想的を「宇宙」に求めたバイロン・ハスキン版(53)とは異なるアプローチによる、本来あるべきウェルズ原作「世界間の戦争」の忠実な映画化である。 それは即ち、異なる価値観に生きる他民族同士の争いを問うという事だ。  第二次大戦後のパル=ハスキン版に対し、2005年にH・G・ウェルズをリメイクする意義とは、いわゆる9.11が触発した現在進行形のイラク侵攻(一方的軍事侵略)が突きつけた課題に映画人としてどう向き合うか、という事に他ならない。それを明確に象徴するのが旅客機の残骸の図であり、埃塗れのトム・クルーズであり、暴徒化し難民化する群衆の姿だ。  映画は大状況の説明には興味を示すことなく、小状況の中で争い合う人間の、いわば原理を追究していく。 だから、映画は地下壕での主人公自身による殺人行為に異様なほど十分な時間を割く。ドアを閉じ、ダコタ・ファニングを眼隠しすることがここで映画的効果を発揮している。  闇を効果的に強調するヤヌス・カミンスキーの撮影が相変わらず素晴らしい。
[映画館(字幕)] 9点(2007-08-04 22:21:04)
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