21. バートン・フィンク
なぜか面白いが、なぜ面白いのかよくわからない。理屈でストーリーを説明できなくても、鮮烈なイメージだけでも充分楽しめる。 ただし、脚本はあまり好きじゃない。他のコーエン映画で観たような気がするシーンが数回あった。とくにコーエン兄弟の映画で描かれる犯罪は、いつも行き当たりばったりで解決の仕方まで偶然だったりして、うすっぺらい印象を受ける。コーエン兄弟はそういうのが好きなんだろうが、個人的には何が面白いのかよくわからない。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2005-05-08 14:51:03) |
22. パリ・ルーヴル美術館の秘密
なんにも、面白くないですね……。説明もなく、たんたんと働いている人たちの姿を映すだけ。その様子も大して物珍しい作業でもない。たとえば絵の運搬風景は普通の引越しと変わらないし、救命訓練はただの救命訓練であって美術館とはあまり関係ない。またほぼ事務的な会話しかしない職員たちに感情移入することも魅力を感じることもない。インタビューや解説は意識的に排除したんでしょうが、失敗でしょう。非常に退屈。電車の窓から眺める風景の方がまだ楽しいくらいです。 1点(2005-02-23 22:26:51) |
23. バッファロー'66
都合のいい話と言われたらそれまでなんです。でも、そこがいい。 とことん情けないダメ男ビリー。でもレイラはビリーのダメな部分を知っていてなお、「あなたほど素敵な人はいない」と無条件に愛してくれる。大抵の人はこういう愛情を両親からもらいますが、ビリーにはそれがない。そのままの自分を受けいれてもらったことがないと、普通の自尊心を持つこともできない、心の安定を欠いた人間になってしまいます(単純な言い方ですが)。あれだけ冷たくあしらわれているのに、親の関心を買おうとするところなんかリアルで、すごく痛々しい。 そのビリーに向かって、「あなたは世界一優しい人、世界一ハンサムな人」ってレイラが言うシーン。もちろんそんな訳ないんだけど、それでもあんなふうに言ってくれる。たいしてのめり込んで観ていたわけではなかったのに、そこでポロッと泣いてしまいました。 親との歪んだ関係にとらわれてバカげた罪を犯しそうになったビリーが思いとどまったのも、あの言葉があったからでしょう。ビリーがレイラのような女性に好かれるなんて、ストーリーとしてはご都合主義と思われても仕方がありません。しかし、ビリーのような人にはそんな奇跡的な出会いが必要でした。 これはラブストーリーであると同時に、心に何かが欠けた人間が満たされるまでを描く物語でもあるのです。とても優しく、希望に満ちた映画でした。 9点(2005-02-23 21:17:37)(良:3票) |
24. パルプ・フィクション
時系列をばらばらにするプロットは普通ミステリーの文脈で使われるものだが、この作品はちょっと違う。無意味なものの積み重ねが、やがて絡み合い、だんだんと大きなうねりのようなパワーを生み出していく。 どこか頭のネジの足りない連中が、だらだらと無駄話をして、ときどき無節操に暴力をふるい、そしてちょっとした偶然に人生を左右される。その滑稽で、暴力的で、いかれた、しかしどうしようもなく人間くさい生き様――粗悪な紙に汚い言葉で記された俗悪な内容が、不思議と人を惹きつける。 この映画には意味がない。だけど確かに価値がある。 10点(2005-02-21 06:23:59)(良:2票) |
25. パイレーツ・オブ・カリビアン/呪われた海賊たち
何もかも普通なので、つまらない。僕には合いませんでした。友達数人で観たのですが、デップファンの女子が三人もおり、ことあるごとに「キャ~!」。デップがヒロインを助けると「きゃー!私も助けられたい~」、デップがヒロインを人質にとると「きゃー!私も人質になりたい~」、デップが敵を刺すと「きゃー!私も刺されたい~」。……うるさい。なんていうかもう、デップに代わって刺してやりたい。静かな環境で観ていたら、評価は上がったかもしれません。上がっても5点くらいでしょうが。 4点(2005-02-14 02:29:58)(笑:2票) |
26. ハピネス(1998)
《ネタバレ》 登場人物のほとんどが不愉快な人たちなんですけど、実は私が一番嫌悪感を覚えたのは三姉妹の長女でした。冒頭で三女に向かって祝福するようなことをいいながらも、実際には見下し、優越感を抱いている。そして何より性犯罪者の夫が自分の病理に苦しんで「僕を愛してる? 真面目な話なんだ」と何度も彼女に問いかけるシーン。寝ぼけた彼女は鬱陶しそうにあしらうだけ。「僕は病気だ」、罪の意識に苦しんでいる彼に対して「薬を飲めば」。「何があっても、僕を愛してくれるかい?」――返答なし。案の定、夫が捕まるとあっさり捨ててしまいました。もちろん、夫のしたことは到底許せることではありません。でも”ノーマル”な妻が、病理を抱えた人たちに対してはいかに無理解で、残酷に接することか。人の醜い部分からは眼を背け、”アブノーマル”な人たちへの侮蔑の上に成り立つ彼女のごく普通の「幸福」が、いかに虚飾に満ちたものか。 対照的なのはこの映画そのものの視点で、笑いものにしながらも、病んだ人々に対する確かな愛情を感じます。どんなに変な人々にも、幸福を求める権利があるのだと思うことができました。 9点(2005-01-21 00:46:00) |