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かたゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1882
性別 男性
年齢 48歳
自己紹介 自分なりの評価の基準は、
10・超大好きな作品。完璧。映画として傑作であるばかりでなく、自分の好みと見事に合致している。
9・大好きな作品。完璧に近い完成度。手放しに歴史に残る傑作といっていい。
8・好きな作品。本当に面白い。欠点があるかもしれないが、それも含めて好き。
7・少し好きな作品。普通に面白い。欠点もあるかもしれないが、そんなに気にならない。
6・普通の作品。可も無く不可も無く。最後までストレスなく観られる。面白いけど、心に残るものはあまりない。
5・少しつまらない作品。最後まで観るのにちょっとストレスを感じた。面白い部分も多少はあった。
4・つまらない作品。最後まで観るのが苦痛だった。ほとんど面白いところが感じられなかった。
3・かなりつまらない作品。最後まで観た自分を褒めてあげたい。観終えた後に、怒りのあまりDVDを割りそうになった。
2・超つまらない作品。時間と金を返せ。観終えた後に、怒りのあまり製作者全員を殴りに行きたくなった。
1・絶望的につまらない作品。最低。観終えた後に、怒りを通り越して死にたくなった。
0・死霊の盆踊り。

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21.  ブラック・スワン 《ネタバレ》 
これは凄い作品です。こんなにまで、自分の好みと見事に合致した作品は初めて。クラシックバレエの世界で頂点を目指すある一人の内向的な少女を主人公に、そのとてつもない重圧とストレスのせいで次第に狂気に捉われながら、なにもかもを失ってでもそれでも完璧な演技を追及する彼女の姿は圧巻です(ナタリー・ポートマンの熱演が凄い!)。現実と妄想が渾然一体となった、まるでガラス細工のような彼女の精神世界が加速度的に崩壊していく映像の美しさは見事としか言いようがない。嫉妬と重圧とエロスによって自分の正気の壁を致命的なまでに決壊させ、そして溢れ出した狂気の濁流にとうとう命までをも呑み込まれながら、最期に掴んだ儚くも精巧で完璧な美の世界……。僕がいままで観てきた数ある映画のなかでも、最高に美しいラストだ。哀切な余韻がいつまでも残る傑作と言っていい。
[DVD(字幕)] 10点(2023-04-17 10:39:16)
22.  不屈の男 アンブロークン 《ネタバレ》 
ルイ・ザンペリーニ、またの名を不屈の男――。第二次大戦前夜、ベルリン・オリンピックにも出場したトップ・アスリートの彼は、次の東京オリンピックでのメダルを目指し練習を重ねていた。だが、そんな充実した彼の人生にも時代の荒波が押し寄せてくる。突如として日本が真珠湾を攻撃し、アメリカは戦時体制への移行を余儀なくされたのだ。兵士として太平洋戦線へと送られた彼は、大日本帝国を相手にいつ終わるとも知れぬ戦いの日々を過ごすことに。そんな彼を新たな悲劇が襲う。ある日、乗っていた飛行機が故障し、広大な太平洋上に不時着してしまったのだ。見渡す限り何もない洋上で、二人の仲間と共に小さなゴムボートでただひたすら漂流を続けるルイ。食料も水も底を尽き、来る日も来る日も波に揺られ続けるという極限状況に次第に心が挫けそうになりながらも、ルイは神に縋ることで何とか理性を保っていた。すると、そんな彼の願いが聞き届けられたのか、とうとう彼らは陸地へと辿り着く。だが、そこに掲げられた旗を見てまたもや絶望に打ちのめされるのだった。何故ならそこには立派な日の丸が描かれていたから……。どんな状況でも決して挫けず常に前を向いて生きてきた男の生涯を、実話を基にして描いた伝記ドラマ。アンジェリーナ・ジョリーの監督二作目にして一部で内容が反日的だとして話題になっていた本作、いやいや別にこれくらい普通ですやん。これで反日なら、ナチスを扱った映画など全て反ドイツ映画になっちゃいますって。まあ騒いでいるのは一部の人たちなんでしょうけど。肝心の内容の方なのですが、ストレートな脚本ながら最後まで一気に見せきったところは素直に評価されてしかるべきでしょう。事実の重みも相俟って、この〝不屈の男〟ルイの波乱万丈の生涯といついかなる時も希望を見失わなかった生き様にただただ圧倒されるばかりです。最後、長野五輪で多くの日本人に声援を送られながら走る実際の映像など、同じ日本人なら誰もが何かしら思わずにはいられない。ただ、本作には極めて致命的な欠点が一つ。それは、「人間を全く描けていない」ということ。例えば主人公、どうして彼がそこまでの愛国心を抱き、生への希望を捨てなかったのか、その理由が一切描かれていないのです。だから、この主人公はほとんど泣いたり怒ったりしません。ただ淡々と困難を乗り越えてゆく。なので観客である僕たちも特に心を動かされることもない。意図してそう描いたのかもしれませんが、映画としてこれは大きなマイナス・ポイントと言わざるを得ないでしょう。それは、捕虜となったアメリカ人や冷酷な渡辺軍曹以外の日本兵にも言えることです。まるで書割に描かれた絵のようにしかそこに存在していない。これは監督の資質によるところが大きいのかもしれません。優れた監督は、脇役の一人一人にまで人間性を与えるものです。史実を知るための再現ドラマとしてはそこそこよく出来ているがそれだけ、というのが僕の率直な感想です。
[DVD(字幕)] 6点(2023-04-13 11:01:48)
23.  フィフス・ウェイブ 《ネタバレ》 
謎の宇宙生命体〝アザーズ〟が突如として地球に襲来。大混乱へと陥った人類に、彼らは5つの段階を踏んで攻撃を開始したのだった。第1の波。それは強力な電磁パルスを発信し全ての電化製品やエンジンを使い物にならなくさせるというもの。第2の波。彼らは世界中で大地震を起こし津波を発生させると沿岸部の大都市に壊滅的な打撃を与えた。続く第3の波。強化した鳥インフルエンザを世界中で大流行させ、アザーズは生き残った人類をさらに追い詰めることに成功する。そんな中、密かに行われた第4の波。それはアザーズ自らが人類の脳へと寄生し互いに仲間割れさせるというもの。もはや人類の運命は風前の灯火と化していた。そして、最後の総仕上げとして謎に満ちた第5の波が着々と実行に移されるのだった……。宇宙人の襲来によりディストピアと化した世界で生き残りをかけて戦う一人のティーンエイジャーの壮絶な戦いと成長、恋と青春の日々をダイナミックに描いたサバイバル・アクション。主演は、『キックアス』で大ブレイクを果たしたクロエ・グレース・モレッツ。系統としては、最近ハリウッドで流行りのヤングアダルト系SF映画『ハンガーゲーム』や『ダイバージェント』の系譜に連なる作品なのですが、それらのショボ作品のさらに上をいく極めつけのショボショボ映画でしたね、これ。もう突っ込みどころの雨あられ。冒頭の津波シーンで予算を使い果たしたのか、以降のアクションシーンのショボいことショボいこと…。また、どうでもいい恋愛要素がだらだらだらだら最後まで続くため、ますます眠気を誘発させること半端なし。唯一の見どころであったクロエちゃんも、なんかちょっと微妙(笑)。結論。観終わった後、時間と金を返せと大声で叫びたくなる超ショボショボ映画でありました。
[DVD(字幕)] 2点(2023-03-22 13:46:05)
24.  ブラック・ファイル 野心の代償 《ネタバレ》 
大手法律事務所に勤める将来有望な若手弁護士ベン。仕事は順調なものの、看護師の妻とは最近擦れ違いがちで夫婦仲は必ずしもうまくいってない。そんなある日、ベンはフェイスブックで学生時代に付き合っていた元カノから友達申請を受けるのだった。多少の下心もあって、彼はそのエミリーという女性と連絡を取り合い二人で飲みに行く約束までしてしまう。だが、実際に会ってみるとエミリーの真意は別のところにあった――。大手製薬会社が金の力で隠蔽した薬害事案。なんとエミリーはその製薬会社の社長と愛人関係にあり、盗み出したこの情報を買い取ってほしいというのだ。「きっとこいつは金になる」。直感的にそう確信したベンは、すぐさま上司に掛け合い、その製薬会社を相手に訴訟を起こす。だが、彼はまだ知らない。事件の背後には様々な人物の思惑が複雑に絡まり合い、やがて彼を破滅の淵へと導くことを…。アル・パチーノとアンソニー・ホプキンスという二大オスカー俳優が豪華共演ということで今回鑑賞。冒頭から、この二人のさすがの存在感もあって、なかなか面白くなりそうな空気を漂わせています。彼らをはじめ、個性豊かな登場人物たちが織りなす複雑で緊迫感溢れる駆け引きに否が応でも期待は高まるばかり。でも、それも途中まででした。おかしくなり始めるのは、イ・ビョンホン演じる謎の男が登場したあたりから。どうやら腕の立つ殺し屋らしいのですが、こいつの存在がさっぱり意味不明なのです。誰に雇われて何を目的に行動しているのか全く理解不能。病気で余命幾ばくもないらしいのですが、それもこの企業の薬害が原因かと言うと特にそういうわけでもない。いったいなんだったんでしょう。また、主人公に秘密を暴露する社長の愛人もストーリーの混乱に拍車を掛けています。主人公と共犯になるのかと思いきや彼の妻に挑発的な態度を取ったり、偽装誘拐を試みたかと思えばあっさりと殺されたり。死んでからも、何故か主人公の部屋にその死体が移動させられてたりと物語上の役割がさっぱり意味不明。終盤でアル・パチーノが捕まる理由もよく分かりません。最後の妻の告白にいたっては「はあ、何それ?」と呆れるしかありませんでした。と、腑に落ちなさ120%の駄作なのですが、二大オスカー俳優の渋さに免じて+1点しときます。
[DVD(字幕)] 4点(2023-03-13 06:59:45)
25.  ブレット・トレイン 《ネタバレ》 
東京から京都へと猛スピードで運行する超高速車両を舞台に、偶然乗り合わせた殺し屋たちの壮絶バトルを終始ノンストップで描いたエンタメ・アクション。原作は、日本のベストセラー作家伊坂幸太郎。監督は、この手の分野を得意とするデビッド・リーチ。いかにもこの監督らしいごちゃごちゃわちゃわちゃとしたストーリーに、「あ、またか…」と前半は少々げんなり。大量の登場人物が入り乱れるお話は脱線につぐ脱線でとにかく分かりづらい!!アクションシーンは凄くキレがあっていいし、キャラクターもみな魅力的なのにどうして毎回こんな分かりにくいアプローチをしてくるんでしょう。すんごく勿体ないです。あまりの観客置いてけぼり具合に前半で観るの止めようかと思ったんですが、でも、後半のぶっ飛び具合はさすがにお金を掛けただけあってなかなか楽しかった。伊坂幸太郎らしい、伏線を最後に全て回収する練られたプロットも見事。とにかく殺し屋たちが全員キャラ立ちまくりなのが良いですね~~。自分は、可愛い着ぐるみにずっと潜んでいた毒ヘビ女アサシンが好きでした。レモンに殴られた時もじっと耐えてたのね(笑)。ドSな小悪魔少女アサシン〝プリンス〟も超可愛くて、自分もこんな女の子に徹底的に振り回されたいと思っちゃいました(ドM)。彼らが電車をガンガン破壊しながらバトルするクライマックスはもはやリアリティのリミットを3回くらい振り切ってます。到着が1分遅れただけで丁重に謝罪する日本の鉄道会社はこれ観てどー思うんだ??でも、そんな日本を徹底的に茶化したトンデモシーンも根底には凄く愛を感じたし、後半はけっこうスカッとしたので、ちょっぴりおまけの7点!
[DVD(字幕)] 7点(2023-03-02 13:11:39)
26.  フォービドゥン/呪縛館 《ネタバレ》 
アメリカのとある郊外に佇む古びた洋館、ブラッカー邸。第二次大戦前に建てられたというその豪邸はかつて街の有力者が暮らしていたものの、今や寂れて酷い状態となっていた。そんな館を格安で借り、この度一組の夫婦が越してくることに。夫とともに幼い息子を育てている最中で建築家の肩書を待つ妻のディナは、引っ越し早々、この古びた館をリフォームする計画を立てる。古い屋敷だけにいたるところに襤褸が来ており、まともに住めるようになるのにかなりの時間と労力が必要だった。それでも新たな生活のために腕を振るうディナ。しばらくするとおかしなことが起こり始める。いつの間にか庭に現れ息子の姿をじっと見つめる猟犬、何度も襲う幻覚の数々、そして誰も居ないはずの小さな部屋に灯る幽かな灯り…。やがてディナは知ることになる。この館には見取り図にさえ載っていない秘密の部屋があり、そこはかつて“失望の部屋”と呼ばれていたことを――。古びた洋館に越してきた一組の家族が体験する、そんな恐怖の日々を描いたモダン・ホラー。最近つまらない映画にばかり出ているケイト・ベッキンセールが主演を務めた本作、あまり期待せずに観始めたのですが、そんな僕の期待値を遥かに下回るつまんない映画でしたね、これ。映画が始まってから中盤までとにかく思わせ振りな展開ばかりが続き、物語のギアが全然かからない。しかも怖がらせ方がいちいち古臭くて、ホラー映画なのに全く怖くないのです。正直退屈で眠たくなっちゃいました。挙句、後半からびっくりするぐらいグダグダな展開に。いつの間にか家へと招かれていた友人たちにいつの間にか酔っ払っていたケイト・ベッキンセールが突然キレ始め、しかもその間、大事なはずの息子は物語の展開上邪魔になるからとずっと何処かにほったらかしにされて、一連のその流れが終わってからまた再登場するというあからさまなご都合主義には開いた口が塞がりませんでした。また、物語の重要なカギとなる、過去に重度の障害を負った自らの子供を幽閉したという“失望の部屋”の扱いも雑。こういうデリケートな問題を単なるホラーの道具として使うのは極めて悪趣味というしかありません。最後は取って付けたようなハッピーエンド。え、まさかの妄想オチですか(笑)。久しぶりにこんな酷い映画を観てしまいました。あと、最後にもう一つ。日本の配給会社の方、いくら酷い映画だからってクライマックスの映像を丸々使い本編のお話をまるで違うような作品として宣伝するのはさすがにあかんのちゃいまっか。
[DVD(字幕)] 2点(2022-12-26 12:24:10)
27.  ブラック・シー 《ネタバレ》 
第二次大戦時、莫大な金塊を積んだまま海の底へと沈んでしまったナチスドイツの潜水艦、Uボート。元潜水艦乗りで現在失業中のロビンソンはある日、半世紀もの長きにわたって海の藻屑となっていたそんな潜水艦の情報を偶然耳にする。妻とは離婚、愛する息子とも自由に会うことも出来ず、仲間とともに酒場へと入り浸るようなどうしようもない毎日を送っていたロビンソン。「自分の人生を一発逆転させてやる!!」。仲間とともにそう決意した彼は、大金を求めてウクライナ近海の海底へと旅立つことを決断するのだった。だが、当然のように一人で出発することなど出来ない。旧友のつてでイギリス人とロシア人による12人のにわか混成チームをどうにか集めたロビンソンは、現在は退役した旧ソ連の潜水艦を格安で手に入れるのだった。それぞれの思惑を抱えた彼らは、見渡す限り闇に閉ざされた暗い海の底へと繰り出してゆくのだが…。潜水艦内という閉ざされた世界で繰り広げられるそんな男たちの熱いドラマを重厚に描いたサスペンス・アクション。監督は、社会性の強いエンタメを得意とするケビン・マクドナルド。彼の代表作である『ラストキング・オブ・スコットランド』同様、こういう狂気と英雄紙一重の危険な男を描かせたらやっぱり巧いですね~。ジュード・ロウ演じる主人公が最初はいかにも艦長らしくみんなを纏め上げていたのに、様々な計画の綻びや仲間たちからの反発で神経をすり減らし、次第に暴走していく過程が説得力抜群。彼らが乗るという中古の潜水艦が、その余りに年季が入っていそうな錆びついたボディで登場したときも不安感ヤバかったです。うん、今にも沈没しそうなこんなおんぼろ潜水艦に乗るなんて絶対いや(笑)。また即席で集められた12人のイギリス人とロシア人という最初からうまくいくはずなんてない彼らの内輪揉めも緊迫感があり、徐々に始まる銃撃戦は見応えありました。まあこういう映画のお約束ながら、最初から最後までむさ苦しいおっさんばかりが出ずっぱりで女っけゼロなのはご愛敬。にしてもジュード・ロウ、すっかり禿げたなぁ(笑)。ラストはちょっとあっさりし過ぎかな。もう少し彼らのその後のドラマが見たかったような気がしなくもない。それでも乗組員12人の個性もそれぞれちゃんと描き分けられていたし、潜水艦映画の醍醐味であるキリキリするような閉塞感も感じられたし、僕は充分楽しめました。7点。
[DVD(字幕)] 7点(2022-12-05 12:41:24)
28.  フェンス 《ネタバレ》 
1950年代、ゴミ収集の仕事をしながら家族を養うアフリカ系アメリカ人、トロイ。彼とその家族の一見平凡に見える生活を描きながら、この時代に生きる黒人たちの、貧困、差別、閉塞感等々、様々な目に見えない〝フェンス〟を炙りだす社会派ヒューマン・ドラマ。主な舞台は、この主人公家族が住む一軒家とその裏庭、そしてストーリーもずっとこの家族が交わす会話でのみ進行していくという内容に、「これはもしかして舞台劇を映画化した作品なのかな」と思って観ていたら、案の定、デンゼル・ワシントンが過去に主演した舞台を基にしたものだったのですね。今回、D・ワシントンが監督も務めたということで彼の並々ならぬ熱意が伝わってきます。そう、この作品はとにかくそんな実力派の役者陣が織りなす圧倒的な演技力を堪能するためのものだと言っても過言ではないでしょう。それくらい役者の演技は素晴らしいものがあります。特にアカデミー賞を受賞した、主人公の妻役のヴィオラ・デイビスには圧倒されました。この時代、黒人で女性で主婦というもっとも弱者の象徴である彼女。その姿を通して、社会の中で虐げられた人たちの抑圧され続けてきた魂の叫びが聞こえてくるようでした。確かに内容的には地味ではあるけれど、なかなかの良作と言っていいんじゃないでしょうか。
[DVD(字幕)] 7点(2022-12-05 12:05:09)
29.  プリズナーズ・オブ・ゴーストランド 《ネタバレ》 
最近見た、ニコラス・ケイジ主演のB級ホラーコメディ「ウィリーズ・ワンダーランド」がすこぶる面白かったので、同じニコジーの何とかランド繋がりで今回鑑賞。監督は、僕とは昔からあまり相性の良くない園子温。率直に言ってさっぱり面白くなかったです、これ。このオリエンタルとアメリカの西部劇っぽい感じを強引に同居させたような、いかにも無国籍でいかがわしい世界観もさっぱり嵌まらず。「ウィリーズ~」が、あの超絶バカバカしい内容にもかかわらずあれだけ面白かったのは監督のセンスと勢いとテクニックがあったからこそ。でも、本作にあるのは勢いのみ。センスはちょこっとだけ感じましたが、テクニックは欠片もありません。タマタマ爆弾やママチャリで荒野を行くニコジーとか、ところどころのネタが完全にすべってましたし。最後のグダグダ感なんて観ていて痛々しいほどでした。「ウィリーズ~」が余りにも面白かっただけに、残念!!
[DVD(字幕)] 4点(2022-10-07 08:03:40)
30.  フォールアウト(2021) 《ネタバレ》 
もはやアメリカでは日常茶飯事と化してしまった学校での銃乱射事件。ある日突然引き起こされるそんな凶行に巻き込まれたものの、何とか生き延びたとある女子高生のその後をリリカルに綴った青春ドラマ。冒頭の突発的に起こる犯行シーンはかなり凄惨で、妹からの電話に出たことでたまたま生き残ってしまったという主人公の苦悩は確かに分かります。同級生が無慈悲にも殺されてしまった教室でこれまで通りの生活を送るなんて到底できないと、次第に引きこもりがちになるのも理解できる。そんな彼女を見守る家族の葛藤もリアル。ただ、そこから物語として全く深化していかないのが本作の弱いところ。冒頭の衝撃から一転、その後は特に何事も起こらない淡い恋と友情のお話がただ淡々と続いてゆきます。恐らく監督は自分のセンスにかなり自信があるんでしょうね。だから、そんな平凡な日常を描いても自分の映像&音楽センスで充分観客を惹き付けられると過信したんじゃないでしょうか。確かにそこそこセンスは感じました。でも、あくまでそこそこレベルです。途中までは題材の現代性もあってそれなりに興味深く観ていられたんですけど、ずっと何処かで見たようなシーンがひたすら続くので自分は正直退屈に感じてしまいました。トラウマに苦しむのも分かるけど、だからと言ってここまで家族や社会に甘えてひたすら友達とダラダラされた日にゃ、「そろそろシャキッとせい!!」と説教しそうになりましたし。最後のオチも取ってつけたようで、銃社会という現代アメリカが抱える病巣に鋭く迫ったとは到底思えません。監督のそんな自己満足感が終始ハナにつくなんとも残念な作品でありました。
[DVD(字幕)] 4点(2022-09-13 03:24:20)
31.  ブレイン・ゲーム 《ネタバレ》 
夜の街で多発する猟奇的な連続殺人事件。全く関連のなさそうな様々な人物が、鋭利な刃物で頚椎を一突きにされるという残忍な手法によって命を奪われていた。捜査を担当するFBI捜査官ジョーの懸命な捜査にも関わらず、いまだ犯人の痕跡すら発見できずにいた。業を煮やしたジョーは、今はもう引退したもののその超科学的な予知能力によって数々の難事件を解決してきたクランスキー博士に協力を依頼する――。そう、彼は誰であろうとその手に触れることによってその人の過去やそう遠くない未来を読み取ることが出来るのだ。彼に懐疑的な若い女性捜査官とともに現場へと赴いたクランスキー博士は、そこに残された犯人の全てを見透かしたようなメッセージに愕然とする。「犯人は、自分と同じ能力を持っている」。人智を超えた予知能力を備えたFBI捜査官と冷酷な猟奇殺人鬼。彼らの命を懸けた頭脳戦が今、幕を開ける…。アンソニー・ホプキンスとコリン・ファレルの豪華共演でおくる、そんな特殊能力を持った二人の男たちによる極限の頭脳戦をスタイリッシュかつグロテスクに描いたサイコ・スリラー。まあ一言で言ってしまうと既視感バリバリのよくある作品でしたね、これ。と言うか、アンソニー・ホプキンスが過去に主演したあのサイコサスペンスの古典的名作『羊たちの沈黙』とほとんど同じシーンがあるんですけど、これってどうなんですかね。こういうのを典型的なパクリと言うのでは?まあそういうのを抜きにしても、全体的にテンポが悪く、また思わせぶりな展開が多いので途中でだれてしまうのが本作の残念なところ。コリン・ファレル演じる真犯人が登場するのがかなり遅いので、見せ場となる彼らの神経戦がいまいち盛り上がりに欠けるんですよね、これ。ただ、時間が停止した電車内をカメラが自由自在に移動するシーンは、マトリックス以来何度も目にしてきましたが、それでもなんかワクワクしますね。そのシーンや、博士が侵入する犯人や被害者の精神世界の描写にときおり目を見張るような印象的なシーンがあっただけに、なんとも残念な作品でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2022-08-29 11:02:38)
32.  プラットフォーム 《ネタバレ》 
ここは何処までも限りなくそそり立つビルの48階層。何処にも出口のないその小さな部屋の中央には、食卓がすっぽり入りそうな大きな穴があいている。その穴から上を見上げれば、ここと同じような部屋が何処までも続き、下を見れば同じような部屋が何処までも続いている。そして各階層には、男女も年齢もバラバラな二人の人間。彼らは皆、その“とき”を心待ちにしていた。一日に一度、豪華な食事が並んだ食卓が上の階層から順に下へ下へと降りてくるのだ。当然、下の階層になればなるほど、食卓は食べ残しばかりとなり、100層を越えた辺りになればそこに食事が残っていることはほとんどなかった――。48階層で目覚めたゴレンは、同居人のトリマガシと名乗る怪しい中年男とともにここで暮らし始める。一か月ごとにそれぞれ住む階層が変わるというこの施設。上の階層の食べ残しをいただきながら、ゴレンはやがてここへ来て一か月が過ぎようとしていることを知るのだった。そしてある日、彼とトリマガシは違和感を抱きながら目を覚ます。気が付くと、彼らはなんと171階層に移動させられていたのだ。もはやここまで来ると食べ残しはほとんど残っていない。飢えと不安感から二人はやがて、底知れぬ狂気へと囚われ始めるのだった……。理屈では到底説明できない不条理な事態に陥ってしまった人々の極限状況を禍々しく描き出すシチュエーション・スリラー。まあ同分野の名作『キューブ』がヒットして以来、散々作られてきたアイデア一発勝負の低予算スリラーなんですけど、目の付け所が良かったのか、けっこう面白かったですね、これ。上の階層からの食べ残しをひたすら待ち続けるというこの設定だけで90分持たせたのは凄い。最初は豪華で美味しそうだったであろう食事が、どの階層でも全く美味しそうに見えない、そればかりかほぼ残飯と変わらないと言う描写が悪趣味すぎて大変グッド(笑)。下の階層の人々が極限の飢餓状態からカニバリズムに走るというのもベタながらアリ。また、死んだ同居人たちが主人公の幻覚として現れるシーンもけっこうセンスを感じました。ただ、本作の惜しい点は、肝心のメタファーが分かりやすすぎるところ。先進国と発展途上国、そして最貧国のそれぞれの経済格差からくる搾取構造を描いてるんでしょうけど、それが単純すぎて自分は物足りないものを感じてしまいました。いつだって犠牲になるのは弱い立場にいる子供たちだ、先進国はこの現実から目を逸らすなという最後のメッセージは、余りに説教臭くて好きじゃないです。とは言え、映像的には抜群にセンスが良く、アイデア一発勝負ながらストーリーの見せ方も巧く、映画としての完成度は普通に高い。この監督の次作に期待!
[DVD(字幕)] 7点(2022-08-01 04:00:13)(良:2票)
33.  フューチャー・ワールド 《ネタバレ》 
核戦争後の荒廃した近未来。秩序はことごとく破壊され、人々は剥き出しの本能のみを頼りに生きながらえていた。そんな絶望的な世界で、暴行と略奪を繰り返す“侵略者(レイダース)”の襲撃に怯えながらも、何とか平穏な暮らしを送っていたオアシスの民。だが、彼らは今、深い哀しみに暮れていた。長年、その秩序の象徴として崇められていたクイーンが重い伝染病を患い、死の淵に瀕していたからだ。「なんとしても母の命を救いたい」――。彼女の息子であるプリンスは、どんな病気でも治すという薬を求めて荒野へと旅立つことを決意する。わずかな銃弾が詰められた拳銃のみを手に、その薬があるというパラダイス・ビーチを目指して危険な荒野をゆくプリンス。そんな彼に、凶悪な〝侵略者(レイダース)〟の魔の手が迫っていた…。血と暴力に満ちた世界で、僅かな希望を求めて旅する一人の男と彼を付け狙う荒くれ者との攻防を描いたバイオレンス・アクション。まあ『マッドマックス』以来何度も何度も描かれてきた、よくあるディストピアSFなのですが、監督も務めたジェームズ・フランコやミラ・ジョヴォビッチ、懐かしのルーシー・リューも出ているということで今回鑑賞してみました。率直な感想を述べさせてもらうと何の捻りもない、凡庸な出来でしたね、これ。先に述べた豪華な役者陣は全て脇役、主人公はこのプリンスという若者なのですが、まぁーこいつがびっくりするくらい魅力に乏しいんです。情報収集に来た売春宿で、仲間の忠告も聞かずに可愛いおねーちゃんとベッドインしようとしてその仲間を殺されちゃうというドアホぶりで、その後もちょっと痛い目に遭わされるとすぐに故郷の場所を吐いちゃうというヘタレ具合。そこから成長するのかと思いきや、危機に陥るたびに敵を裏切った女ロボットに何度も助けてもらうという彼の他力本願ぶりには唖然としちゃいました。また、物語の鍵となるこの女ロボットの存在も正直よく分かりません。ようやく辿り着いた目的地(これもけっこうあっさり着いちゃって、え、もう着いたんかいとずっこけそうになっちゃいました笑)に君臨する、ミラ・ジョヴォビッチ演じる女ボスも意味不明。何故か薬を飲ませた男と戦わせて、勝ったらその腹割いて薬取ってもいいよってどーゆー趣味?!そしてその女ロボットを巡って急に仲間の女とレズ三角関係に発展しちゃうとこなんて、「はぁ、何その唐突な展開?」と頭ポカーン状態。どうしてこの凡作にハリウッドの有名どころが多数出演しているのか、もはやその存在自体が謎の作品でありました。男たちのパラダイス、ラブ・タウンでのおっぱい大安売りに+1点!!
[DVD(字幕)] 4点(2022-07-04 11:13:39)
34.  ファイナル・スコア 《ネタバレ》 
人質は、スタジアムの観客3万5000人――。米軍特殊部隊の元兵士であるマイケル・ノックスは、久しぶりにロンドンへと訪れる。目的は、かつてイラクで戦死した同僚の遺された家族に会うため。実の娘のように可愛がっている彼の娘ダニーとの久しぶりの再会を喜ぶマイケル。だが、ダニーは父の死をきっかけに荒んだ生活を送っていた。少しでも気を紛らわせようと、マイケルは彼女と一緒にサッカーの試合を観に行くことに。超満員のスタジアムは、人気チーム同士の対戦ということもあってかつてないほどの熱気に包まれていた。否応なくテンションが上がる二人。だが、彼らはまだ知らなかった。その裏で、凶悪なテロリストたちによって恐るべきテロ計画が進んでいたことを――。電波妨害によって外部との接触を遮断された巨大スタジアムには、いたるところに爆弾が仕掛けられていたのだ。瞬く間に指令室を占拠した犯人たちは、要求を呑まなければ観客ごとスタジアムを爆破すると宣言。密かにその事実に気付いたマイケルは、独自に行動を開始するのだが…。と言う、もう分かりやすいくらいダイ・ハードのテンプレにのっとったベタベタなアクション作品なのですが、演出のキレがいいので最後までぼちぼち楽しめました。エレベーターやレストランの厨房でのアクションシーンなど、わりかしグロ描写多めでサクサク進んでいくので普通に面白かったですね。それに、主人公の相棒となる中東系の警備員が愛すべきダメキャラで、そんなハードシーンのいい緩和剤となっているのが大変グッド。対するテロリストたちもそれぞれキャラが立っていて、特にイカレタ女兵士が本当に良い感じにぶっ壊れてます。彼女と、はねっかえり娘であるダニーとの激しい女の戦いは見ものでした。ただ、さすがに後半は突っ込みどころが多いのが本作の残念なところ。スタジアムの通路でバイクチェイスや激しい銃撃戦をやってるのに、観客が誰も気づかないってあり得ます?天井から主人公がダイブして巨大ビューイングにぶつかってるのにそのまま試合続行って、イギリス人はどんなけサッカーバカなんですか(笑)。また、ファンの人には申し訳ないんですが、主人公を演じた俳優さん、主役としていまいち華がないように感じました。見た目こそごりごりの軍人っぽいんですけど、銃を構えたり敵を追って走ったりする姿が全然サマになってないんです。この人、主役より脇役の方が合ってるんじゃないかな~。まあでもエンタメ映画としてはアクション・シーンもけっこう迫力あったしお話も分かりやすいし、気軽に観る分にはそこそこ楽しめると思います。
[DVD(字幕)] 6点(2022-05-18 05:05:58)
35.  フルートベール駅で 《ネタバレ》 
彼の名は、オスカー・グラント。まだ22歳のどこにでも居るような平凡な若者だ。カリフォルニアの小さなアパートにまだ籍は入れていないが優しい恋人と一緒に暮らしている。そして、二人にはかわいい盛りの幼い娘タチアナもいる。愛する家族のためにも、オスカーはこれからますます頑張らなければいけない。でも、現実は厳しく、彼自身の遅刻によりスーパーの仕事は2週間前に首になったばかり。過去にちんけなヤクの取引でムショに入った経験もあり、先行きは厳しいがそれでもオスカーは愛する娘のために真人間になろうと誓ったのだ。恋人も母親もそんな彼を精いっぱい支えてくれている。周りに誘惑も多いが、それでも一歩ずつ人生を立て直そうと必死に頑張っていた。そう、あの日あの時に、〝フルートベール駅〟で降りるまでは――。大晦日の夜、オスカーはたまたま乗った電車で過去に因縁のあった知り合いと乱闘騒ぎを起こしてしまう。通報を受けてやってきた白人警官に彼は無理やり電車から降ろされ、ホームで拘束されることに。何も悪いことはしていない。俺が黒人だからか。当然のように抗議するオスカー。騒然としていく駅のホーム。やがて、興奮した警察官によって……。実際にあった、無抵抗の黒人青年を警察が駅のホームで射殺したという事件を基に、彼の人生最後の1日を丹念に追ったヒューマン・ドラマ。のちに幾つものハリウッド大作を手掛けることになるライアン・クーグラー監督らしく、ことさら人種差別の問題を強調しなかったところにまず好印象。お互いに相手のことをそこまで敵視していたわけではないのに、ちょっとした思い込みから起こった悲劇として事件を捉えている。きっとこの監督のスタンスは、人種差別に「怒っている」のではなく、「哀しんでいる」のでしょうね。人種間の対立を必要以上に煽る作品が巷に溢れる昨今、この冷静な視線は素晴らしい。そして、この完璧なまでのストーリーテリングの巧みさ。オスカー・グラントと言う平凡な若者の人となり、そしてこれまで歩んできたであろう人生を過不足なく観客に伝えることに成功している。確かに若さゆえの過ちは幾つも犯してきただろう。仕事をクビになったのも彼の自業自得。でも、だからと言って駅のホームでたくさんの乗客が見守る中、射殺されるほどの罪は犯していない。ある日突然、理不尽にもその人生を絶たれることになった若者の哀しみが静かに伝わってきて、胸が締めつけられそうでした。よくテレビのニュースで流れるようなありふれた事件の一つ一つにも彼のような人生があり、哀しむ人たちがいる。そんな普遍的な事実に改めて思いを馳せられる、良質の人間ドラマでありました。
[DVD(字幕)] 8点(2022-04-28 07:01:05)
36.  2人のローマ教皇 《ネタバレ》 
2012年、全世界に10億人以上の信徒を有するカトリック教会は揺れていた。資金洗浄や聖職者による信者への性的虐待などスキャンダルが相次いで発覚したのだ。教会の頂点に位置するローマ教皇ベネディクト16世は、事態を打開するため異例ともいえる決断をする。それは、生前退位――。数百年に及ぶカトリックの歴史の中でも前代未聞の異例の事態だった。密かに呼び寄せられたアルゼンチンのベルゴリオ枢機卿は、ローマ教皇のその決断に断固として反対の立場を表明する。誰も居ないバチカンの密室で今後のことについて話し合う二人。すると、いつしかベルゴリオ枢機卿の心に過去の思い出が交錯しはじめる。神父になると決意した若かりし日々、当時付き合っていた恋人との哀しい別れ、常に神の存在を身近に感じていた聖職者としての人生、そして軍事独裁政権下の過去に犯した自らの過ち……。お互いの思いを述べあううちに、枢機卿はローマ教皇の本当の真意を知ることに。実話を基に、生前退位と言う前代未聞の決断を下したベネディクト16世と彼の跡を引き継ぐことになる後のフランシスコ教皇を描いた対話劇。監督は『シティ・オブ・ゴッド』や『ナイロビの蜂』などで貧困に喘ぐ第三世界の真実を見つめ続けるフェルナンド・メイレレス。実在した二人のローマ教皇を貫禄たっぷりに演じるのは名優、アンソニー・ホプキンスとジョナサン・プライス。正直、この二人の爺さんの宗教的な話し合いが延々と続くという、おおよそ面白くならなさそうな題材なのに、最後までちゃんと興味深く観られたのは、この二人の演技力による部分が大きい。健康に気を遣って万歩計を手放せなかったり、過去の確執から最初は一緒に食事をしなかったり、お互いの趣味を薦め合ったり、最後はピザ片手に一緒にサッカーを観て盛り上がる…。おおよそ宗教家らしくないそんな二人の人間的な部分に思わずほっこりしちゃいました。いくらローマ教皇でも、プライベートはそこらの定年退職した親父と大して変わらないんですね(笑)。二人揃ってアカデミー賞ノミネートも納得です。また、二人の対話劇の背景となる、バチカンの壮大な建物や美麗な装飾品の数々も歴史と伝統を感じさせて見ていて飽きさせません。そして後半、この枢機卿が過去に犯した過ち――軍部に目をつけられた信徒を救えなかったという事実に目を向ける視点はいかにもメイレレス監督らしい。歴史の巨大なうねりの陰には、常に名もなき人々の犠牲がある――。そんな普遍的な事実を改めて考えさせられる、ヒューマン・ドラマの秀作でありました。
[インターネット(字幕)] 7点(2022-04-25 06:39:05)
37.  フラクチャード 《ネタバレ》 
寂れた田舎町に佇む、とある総合病院。ある日、そこに幼い一人娘を抱えた父親レイが駆け込んでくる。「娘のペリが工事現場の穴に落ちた!どうやら骨が折れてるみたいだ。すぐに医者を呼んでくれ」――。一緒にやって来た妻とともに、受付の女性に必死の形相でそう訴えかけるレイ。だが、受付の女性は事務的な説明を繰り返すばかりでなかなか診察してくれない。仕方なく家族とともに患者でひしめく待合室に向かったレイは、不安に駆られつつもただひたすら待つことに。ようやく診察が開始され、ホッと胸をなでおろすレイ。娘の病状は大したものではなかったが、一応精密検査をしようと言う医者の言葉にレイは素直にうなずくのだった。看護師に連れられ地下へと向かった妻と娘を、レイは一抹の不安を感じながらも待ち続ける。だが、何故かいつまで経っても家族は戻ってこない。業を煮やしたレイが文句を言いに行くと、受付の女は信じられない言葉を吐くのだった。「そんな患者はこの病院にはいません」。当然のように声を荒げ、強引に病棟内へと乗り込んだ彼は、愛する家族を求めて院内を駆けずり回るのだった。ところが、何処をどう捜しても家族の姿は見つからない。あろうことか、病院側はそんなレイをまるで精神病患者のように扱い始めるのだった…。サム・ワーシントン主演で送る、世にも奇妙な世界へと迷い込んだ男の恐怖を描いた不条理系スリラー。監督は『マシニスト』のブラッド・アンダーソン。彼の観客の生理に直接訴えかけてくるような不穏な世界観は相変わらず健在で、散りばめられた細かなエピソードの数々も実に不快指数マックスなものばかりで大変グッド。娘の腕が折れてるかも知れないのに、万が一の場合臓器提供を希望するかしないかをしつこく聞いてくる受付嬢など、すんごく気持ち悪いんですけどなんか癖になる魅力があります。ただ、肝心のお話の方は正直微妙というほかありません。特にミスリードありきのこのオチは賛否が分かれるところ。ここでネタバレすると、ことの真相は途中で、①病院が悪者で男の家族はちゃんと拉致監禁されていた②本当はこの男が家族を殺していて自らの記憶を改竄していた③男はやはり精神病でそもそも家族は最初からいなかった、と言うだいたい三つに絞られるのですが、最後に明かされる正解はその中でも最もムリ筋なものでした。到底納得できないうえに、後味も最悪という、ね。正直、もうちょっとすっきり終わって欲しかったなあ。全編に漂うこの不穏な世界観はすこぶる魅力的だったのに、なんとも勿体ない。
[インターネット(字幕)] 5点(2022-04-14 09:53:10)
38.  プロミシング・ヤング・ウーマン 《ネタバレ》 
彼女の名は、キャシー・カサンドラ。何処にでもいるような平凡なフリーターだ。町の小さなコーヒーショップで働く彼女は、もうすぐ30になろうとしている。実家で両親と暮らし、特に夢や理想があるわけでもなく、長い間彼氏もいない。そんなキャシーだったが、彼女には誰も知らないとある秘密があった。それは、夜な夜な濃い化粧をして酒場へと出向き、そこで泥酔したふりをして寄って来たスケベな男どもに制裁を加えること。下心満々で近づいてきた男どもは、必ず彼女の仕掛けた罠にかかり恐怖の一夜を過ごすことになるのだ。だが、それは当然危険と隣り合わせの行為でもあった。なぜ、キャシーはそんな危険を犯してまで男どもを憎むのか?それは彼女がまだ医大生だった時に、親友だったクラスメイトがとある事件がきっかけで人生を台無しにされてしまったことが原因だった…。心に闇を抱えたある一人の女性の孤独な復讐を描いたサスペンス・ドラマ。若い女はとにかくヤる対象としか考えていない男どもへと、そんな執念ともいえる憎しみを抱く主人公を演じるのはキャリー・マリガン。確かに凄く良く出来たお話で彼女の鬼気迫るような演技もあって最後まで目が離せかったんですけど、やはり男としては何とも居心地の悪い映画でした。自分は男ですが、長い間世間で生きていると「女は頑張った自分へのご褒美だ」と真剣に考えているような男どもが圧倒的に多いなとは感じます。そんな横柄で醜い男に自分は絶対ならないでいようと思う反面、自分も欲求不満を感じたら普通にAVも見ますし、日常生活で女性を図らずも性的な目で見てしまうこともあります。この映画はそういう男性の習性を全否定してるんですよね。恋愛小説の名手と言われ自分も大好きだった女性作家、島本理生さんが代表作『ナラタージュ』の中で、「男のお〇んちんなんて全部ちょん切ってしまえばいい」と書いていたのを読んで正直引いてしまったことを思い出してしまいました。でも、そんな居心地の悪さを終始感じながらも、それでもこの映画を面白いと思えてしまうのは、この感覚がとにかく振り切れているから。「男ども、あんまり調子に乗ってるとそのうち大事なものをちょん切ってしまうぞ!それこそ命懸けでね」という痛快さがとにかく最高なんです。その矛先は、男社会にうまいこと順応して生きている女どもへも向けられているのもフェアで良い。主人公が心惹かれる優しい彼氏もまた同じような過去を持っていたなんて、この男への不信感はもはや徹底している。未だ根強く残る男社会への笑えない寓話として、僕は最後まで面白く観ることが出来ました。自分を含めた男たち、あんまり調子に乗りすぎないように気をつけよう!ちなみに自分、島本理生さんは今も大好きです。
[DVD(字幕)] 9点(2022-04-07 07:14:54)
39.  フロッグ 《ネタバレ》 
始まりは、10歳の少年の失踪事件だった――。人気のない森の中である日、一人の少年が謎の失踪を遂げる。現場に残されていたのは、少年が乗っていた自転車と緑色のナイフのみ。そしてそのナイフは、10年以上前に発生した連続誘拐殺人事件で使われた凶器と同じものだった。だが、犯人はすでに捕まり刑務所に収監されている。犯人が再び犯行を行うことは不可能だ。かつてその犯人を逮捕したハーパー刑事は再び、事件の捜査を担当することに。これは模倣犯なのか、それともかつての犯人は冤罪だったのか?難航する捜査を尻目に、今度はハーパー刑事の自宅で不可解な現象が続発するのだった。いつの間にか無くなっている銀食器、急に点灯するテレビ、そして家の中を密かに蠢く謎の影……。次第に追い詰められてゆくハーパー刑事とその家族たち。果たしてこの事件に隠された驚きの真相とは。少年誘拐事件をきっかけに、そんな不可解な現象に巻き込まれてゆくある家族を描いたサスペンス・スリラー。なんか思いっ切りB級感プンプンのそんな本作、さして期待せずに今回鑑賞してみました。ところがどうして、これがエッジの効いた演出の力が光るなかなかの掘り出し物でいい意味で裏切られました。物語の前半は余りにもお話がフワフワしてて「なんだよく分からない映画だな」と思いつつも、その不穏な世界観に引っ張られて見ていたんです。ところが物語の中盤、驚きのどんでん返しが!そうか、全てはそういうことだったのね!これは確かに予想が出来ませんでしたわ。まあネタとしては、ちょっと前の怪しいジジイをテーマにした某B級映画でも使われてましたが、見せ方としてはこちらの方が相当巧い。なるほどアレは実はそういうことで、アレはこいつのアレだったのね…ってこれだけ聞いてもさっぱり意味分からないでしょうけど(笑)。急に手持ちの手振れ映像に切り替わるのもいいセンスしてるし、なかなか面白いじゃん、これ!っと思っていたら、まさかの更なるどんでん返しが!いやー、これは完全にやられちゃいました。この脚本はかなり作り込まれてますね~~。明らかな低予算映画だけど、練られた脚本の力と工夫を凝らした映像の見せ方で幾らでも面白い映画が創れるという見本のような作品でありました。これは是非とも予備知識なしで観てもらいたい一本。
[DVD(字幕)] 7点(2022-04-04 09:20:52)(良:1票)
40.  フェアウェル 《ネタバレ》 
アメリカで鬱屈した日々を送る中国系移民の学生ビリー。ある日、彼女の元に本国の親戚から哀しい知らせが届く。子供のころから優しくしてくれたお祖母ちゃんが、癌で余命幾ばくもないというのだ。両親とともにすぐさま中国へ帰ろうとするビリーだったが、何故か両親はお前は残れと言ってきかない。何故なら、中国では末期の癌と診断された者は告知せずに逝かせてあげようという伝統があり、すぐに感情を表に出してしまう彼女が来たらすぐお祖母ちゃんに悟られてしまうと親戚たちに判断されたらしい。到底納得いかないビリーは、両親とは別の便で密かに中国へと向かうのだった――。そうして帰って来た実家では、お祖母ちゃんに悟られないよう孫息子の結婚式という名目で親戚一同が会していた。戸惑いながらも彼女を迎え入れてくれる親戚とビリーの両親。そして、久しぶりに会ったお祖母ちゃんも心の底からの笑顔でビリーを出迎えてくれるのだった。孫息子の結婚式という建前で、形だけは和気藹々と進む一家団欒。そんな親戚一同の優しい〝嘘〟の行方は?末期癌を患う祖母とその家族の悲喜こもごもを終始淡々と綴ったファミリー・ドラマ。確かに、この大してドラマティックでもない平凡なお話を最後まで見せ切った監督の演出力の高さは素直に認めます。美しい映像に気品あふれる音楽、最後まで流れるように続くセンスのいい編集の仕方、そしてお祖母ちゃんをはじめとする役者陣のナチュラルな演技……、完成度の高さとしてはかなりの水準に達していると言って間違いはないでしょう。ただ、自分としては全く嵌まれませんでした、これ。正直、さして仲良くない知り合いの結婚式のビデオを延々見させられたような感じで、後半からは退屈で退屈で仕方なかったです。末期癌を患うお祖母ちゃんのために内緒で家族が集まるという肝心の設定も、物語として活かされていたかというと特にそんなこともなく、最後までひたすら普通。おじさんおばさんがただ飲んで喋って笑って泣くだけです。そして、最後に明かされる衝撃のオチ。いやいや、ここまで引っ張っといてそれかい!!と、僕は不謹慎を承知の上で突っ込んじゃいました。こういう『100日後に〇ぬワニ』みたいな手法は勘弁してもらいたい。というわけで、自分には全く合わない作品でありました。
[DVD(字幕)] 5点(2022-03-07 21:42:16)
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