101. フラガール
《ネタバレ》 ベタであっても良いものは良い、と思わされた。泣いた泣いた。女の子達が頑張って、苦労を乗り越えてプロダンサーになる、外枠だけ聞けば凡庸なスポ根みたいだけれど、丹念に描かれた背景の生活の厳しさ、貧しさが彼女らの立場を切実なものにする。日本は、貧しかった。家屋の狭さ、古さ。学校に行ける子、行けない子。紀美子は制服なのに、親友の早苗は家庭の事情で通学できる余裕が無い。昭和40年代の炭鉱街の女の子にとって、華やかさがどれほどの憧れであったか想像に難くない。夢を諦めざるを得なかった早苗が街を去るシーンは、嗚咽しすぎて気分が悪くなってしまった。 どの役者もしっかり見せてくれるけど、富司、松雪、蒼井の女三代が凄く良い。華やかな夢など見ることも望めず、仕事に誇りを持つしかなかった富司の世代、夢の世界に裏切られて、現実を知る松雪、そしてひたむきに新しい世界を目指す若い世代の蒼井。三者が絡み合い、互いの理解を得ながら大団円へと進む。いやあ、ベタだけど号泣した。いい話だ。 [DVD(邦画)] 9点(2013-11-22 00:35:49)(良:1票) |
102. ブラックブック
まあなんと濃密で疲れる140分であることか。監督の描く“人間そのもの”が生々しいったら。狡さも善良さも愛も嘘も、人間を構成するこれらのものを内側からひっくり返してはらわたまで引きずり出してみせる、この悪趣味なこと!ナチにもレジスタンスにも一般市民にも残虐な者、狡猾な者、良き心を持つ者、判断を誤る愚かな者がそれぞれ一定数存在していて、ナチ=悪、レジスタンス=正という安易な筋立てとは一線を画す。そしてそれこそがリアルな人間社会のような気もする。 「あ、良かった、うまくいった」と安堵したのも束の間、次の瞬間には梯子を外され急落下の繰り返し。すごくたくさん嫌な汗をかく。個人的にはロニーが好き。彼女だって必死に生きていたに違いない。けれどそれを表に出さず、身体を張ってしたたかに生き抜いた軽やかさに惹かれた。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2013-10-18 00:49:11) |
103. フレイルティー/妄執
ラストの怒涛のタネ明かし、これなかなか凄いです。中盤までの、「ああーこのイカレ親父を誰かなんとかしてくれよう~」という辟易感が一気に変換されました。伏線がやたら早くに張られていたんだと気づくのもまた楽しい。子供の辛さに我慢して付き合って最後までご覧ください。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2013-10-11 00:41:21) |
104. プルーフ・オブ・ライフ
ちょっとちょっと、メグさあ、もう少しお芝居がんばろう。泣きマネする女優なんてアリですか。きっとあれだよ、ラッセル・クロウに惚れたから、泣き過ぎの鼻水たらした顔になんかしたくなかったんじゃないかね。いっつも可愛いもん。旦那が命の危機に晒されてるっていうのに憔悴してないもん。ストーリーがあまりにアレなんで、これでは誘拐されたダンナの立場が辛すぎると思ってか、D・モースにそこそこ男気ある活躍させてる脚本。とほほ。 [CS・衛星(字幕)] 4点(2013-09-27 00:09:40)(笑:2票) |
105. ブリジット・ジョーンズの日記 きれそうなわたしの12ヶ月
《ネタバレ》 続編の宿命、とでもいいますか、前作よりもパワーアップしなければということで、C・ファースはより一層不器用に、H・グラントはより一層ヒキョー者に。で、レニーは二回りほど太っての登場。ええー、レニーそこですか・・。パターンは一緒なので前作を楽しめた向きには今作もそこそこ楽しいはず。コリンとヒューのキレの悪い取っ組み合い、おじさん同士ハアハア言ってて笑わしてくれます。展開はもう、先がまるっと読めちゃうんだけど、いや秘書の彼女がブリジットに惚れていたとは予想できなかったわ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-09-22 23:14:16)(良:1票) |
106. ブレア・ウィッチ・プロジェクト
《ネタバレ》 評価が難しいなあ。前代未聞の、“反則を堂々とかました”作品ですからねえ。それでもあまりにその反則技が鮮やかにきめられたものだから、敵(?)ながらあっぱれ、という気持ちにもなります。手ぶれカメラの不安定な気持ちの悪さ、パニックになってゆくメンバーの取り乱しっぷり、これかなり怖かったですよ。怖いといっても、もちろん“予告プロモーション込み”でのことですが。フィクションとネタばれしてしまえば、尻切れラストも「想像の余地を残す怖さ」から「なんだよもっと落とし所考えろよ」に格下げになってしまう。なんであれ(反則宣伝でも)“第一人者”ということに価値がある、そこんとこの評価でこの点数です。 [インターネット(字幕)] 6点(2013-08-28 00:36:18) |
107. プロヴァンス物語/マルセルのお城
《ネタバレ》 前作の幸福感の裾野をさらに広げての続編、マルセル思春期へ突入。前半のマルセル初恋物語もどこかとぼけた味わいで好きだけど、やはり圧巻は後半大きな存在感を放つマルセルのお母さん。息子のために校長夫人相手に意外や政治力の高さを披露、丘へ週末ごとに出かける計画を立てる母。近道の幸運や、屋敷の主人の厚意を得られるのもひとえに彼女の慎ましい美徳がかの老紳士の心を捉えたから。親切な人あれば、意地悪な人もいて窮地に陥る一家のくだりでは、落ち込む父に貯金を打ち明けて場を和らげる母。かくも母は美しく優しく偉大で、彼女から幸せの磁場が発生しているかのようなマルセル家。今作でも幸せのおすそ分けをいただいた。だからラスト5分は画面がにじんで胸がつかえて言葉にならなかった。私は本当にこの映画の人たちが大好きだったのだ。 [ビデオ(字幕)] 9点(2013-08-18 23:17:10) |
108. ブルース・ブラザース
正直、ギャグシーンなんかは時代の洗礼を受けちゃって、今さら笑えるレベルではなくなってしまっているのだけど、それでもラストまでエンジンフルスロットルで突っ走る勢いの良さと、そうそうたるミュージシャン達が聴かせてくれるかっこいい音楽、まったく理不尽なまでに暴力的なレイア姫、この3点要素で7点はキープできてると思います。 [映画館(字幕)] 7点(2013-07-21 00:57:29)(良:1票) |
109. ブロークバック・マウンテン
《ネタバレ》 この映画って大変に革新的なのでは。かつて一世風靡した“ボーイズ・ラブ”モノはヨーロッパ系の美形男子が担うものと相場が決まっていたように思う。それが今作はカウボーイ二人、身体はがっしり、山の自然は雄大だけれど耽美性は無し、そのうえ両者の行為もそこそこはっきり映すんだ。実際抵抗のある人もたくさんいるようで。けどワタシは泣けてしまった。なんといっても、ヒースとジェイクの力演、これにつきる。ヒースの苦渋の表情と、ジェイクのすがるような瞳の演技。真に心を通わせる者を求める、心の渇き。男が男に魅かれてしまったら、もしも私がヒースの妻であったなら心の奥底でかなわない、と瞬時に悟るような気がする。最後になってしまった湖畔での逢瀬の場面、やり切れなさを吐露するジェイクと、苦しさに崩れ落ちるヒース。あまりにつらくて切なくて、この場面で“ブロークバック・マウンテン”は私にとって“ひまわり”と並ぶ悲恋物語となったのでした。 [DVD(字幕)] 10点(2013-07-20 00:56:03) |
110. ブラザーズ・グリム
面白そうだなあ、と観始めて、いつ面白くなるのかなーと待ちながら終わってしまった感じ。魔法も幻想も盛り込んであるわりに何故かそんなに気持ちが乗らない。ほんとなんでだろう。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-07-11 00:26:07) |
111. ブリキの太鼓
《ネタバレ》 所謂「名作」かと思っていたので、観た時はもーびっくりしちゃって。なんかもうグロかった。“耽美”じゃないただのグロ。ことさらに人間の不快感覚を刺激するべく描いているみたいだった。耳障りなオスカルの叫び声。生魚。唾液。牛の頭部の死骸からウナギ。果ては3歳児の性交。小人という畸形をビジュアルに置いて何を描きたかったんだろう。戦争が終わって小人をやめるオスカル。精神と肉体が乖離しているこの奇妙な存在と、所属先の無い自由市だったダンツィヒの混沌が象徴的に重なるのか?うまいこと読み解ければ評論家になれるのだろうけど、ちょっと私にはわからない。“ショック”という意味では、この映画、“時計じかけのオレンジ”にも匹敵するけれど、「ブリキ」で描かれるグロさは言ってみれば平凡で、大きな声では言えないがこの程度のグロテスクならば、私は軽く十や二十は考えつく。展開がことごとく予想を上回る“オレンジ”よりもずっと評価が低くなりました。 [ビデオ(字幕)] 5点(2013-06-11 00:49:55)(良:1票) |
112. フラッシュダンス
《ネタバレ》 お話は・・、そうねそんなには面白くないかも。ベタですし。封切当時はまさに青春まっさかりで、若さのさなかにいた時は他人のサクセスストーリーにそれほど感じ入らなくて「ふーん」程度の感想だった。それから数十年、ああ青春の輝きは遠い所から見るほどに気付くもの。J・ビールスの若々しさ、初々しさ。夢を追う友人たちの健気さと挫折、後押ししてくれる叔母、恋人だけど上司といった周りの人達のドラマもバランス良く織り込まれて正統派なドラマの作り。演出になかなかセンスを感じるのですよ。路上でのパントマイマー達や、交通整理のお巡りさんのアクションをもコミカルに描写しちゃう場面。事務のおばさんの食事中の悲劇。ブサイク犬グラント君も重要な脇役、ラストのおめかし姿は必見。なにしろオープニングの音楽からどーっと当時の感覚を呼び覚まされてしまうので、なつかし補正も手伝ってちょっと大甘の点数ではありますが。 [映画館(字幕)] 8点(2013-06-07 00:40:07) |
113. フォーチュン・クッキー
入れ替わることによって母娘が互いの心を理解する、そこらへんの描写が意外と?上手くて終盤の披露宴スピーチにはほんの少し泣かされました。リンジーのバンドの音楽、かっこいい。そしてジェイミー・リー・カーティスには惜しみない拍手を。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2013-05-31 00:13:11) |
114. ファントム・オブ・パラダイス
悪意も悲劇もデ・パルマの悪趣味が炸裂してて大げさで毒々しい。ラストシーンなんかね、死をもってしても悲劇と受け止めてもらえない残酷さ。胸が悪くなります。残酷の谷に咲く原色のあだ花、かなり良く描けていると思うけどいかんせんあのプロデューサーがケチなチビ男(どこが美少年やねん)なのが説得力に欠けるというか納得いかないというか。 [DVD(字幕)] 6点(2013-05-10 00:40:54) |
115. フィラデルフィア
トム・ハンクスの演技が凄すぎて、ただただ胸が痛い。こういう話は、なんかもうぐうの音が出ないほど「ごもっとも」なので特に感想もわかない。バンデラスが立派に(?)ゲイに見える!大した役者魂だ。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-05-09 00:33:28) |
116. ブラックホーク・ダウン
「ブラックホークダウン!ブラックホークダウン!」「RPG!RPG!」等の叫びが頭にこびりつく悪夢のソマリア市街戦。たくさんスター俳優が出てるのだけど、個々人のドラマに焦点を当てるということが無いので、誰が誰だか分からない。皆一兵士となって戦火のなかで阿鼻叫喚である。酷い。映像はドキュメンタリーの如く極めて冷静でクリア。140分の長きにわたって生き延びるのに必死な様子を見せられていると本当に疲労困憊。この映画を観て素直に反戦を叫ぶべきなのかアメリカも大変ねえ、と思うのが正解なのか、もおよくわからない。 [DVD(字幕)] 6点(2013-04-27 00:27:31) |
117. フォー・ルームス
どの話もそれほど面白くは無い。一話めが最低につまらない。ティム・ロスの浮いてる演技がこれまた鼻につく。やりすぎ、作りすぎ。ぬう、と立ってるだけでなんとなくやばい雰囲気のバンデラスのみ良かった。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2013-04-26 00:08:17) |
118. ブーリン家の姉妹
映画の感想で、歴史上の人物の悪口を言うのはなんか違う、とはわかっているのだけどヘンリー王ってやっぱどうかしてるわあ。ほいほい貴族の首がとぶ時代とはいえ、6人も王妃を娶ってうち2人の首を斬るって・・ああ猜疑心が渦巻く王宮の凄まじいこと。エリック・バナが肖像画と違いすぎる。あんな気弱なイケメンなんかじゃなかったはずだー絶対。いかにして娘を王に差し出すか、という節操の無さがお話の大勢を占めているのだけど美術は完璧だし、王妃役のアナ・トレントがひとり凛として美しくて私は完全に王妃派でした、はい。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-04-18 17:55:31) |
119. 不倫期限
《ネタバレ》 ルーマニア映画。あまりなじみの無い国制作の映画を観るときは、その国らしさや目新しい風俗なんかを探すのも楽しみなんだけど、不倫が引き起こす人間関係のもつれってのはいやはや洋の東西を問わないらしい。展開する泥沼模様は日本の昼ドラとちっとも変わるとこが無い。ルーマニア色皆無。愛人は本妻を見て取り乱し、コトを打ち明けられた妻は逆上し絶縁宣言、何も知らぬ両親は孫を猫可愛がり、と。なんてことない家庭の日常を隅々まで描いているのが上手い。兄嫁がどうしたとか、子供の歯の矯正時期とか、まあ夫婦の会話なんてつまらないものです。そういうものです。それらの日常が崩壊するさまを見せられて、他人事ととらえてその後を無責任に予想するもよし、わが身を顧みてリアルにぞっとするもよし。(?) [CS・衛星(字幕)] 6点(2013-03-12 00:10:29)(良:1票) |
120. フレンチ・コネクション
街が、寒い。灰色で冷たくて、厳しい。息を白く吐いて両手をこすり合わせながら任務につくG・ハックマンとR・シャイダー。きついことにラストも甘くない。厳然としたリアリティと冴えない中年オヤジ二人の執念。自らに酔わないタイプのハードボイルド、心にずっしりと溜まります。 [ビデオ(字幕)] 7点(2013-03-06 00:42:53) |