1. お熱いのがお好き
《ネタバレ》 ビリー・ワイルダーの作品って評判ほど笑えないものも少なくないのですが、これもそのクチ。当時はジャック・レモンが女装してるだけで大受けだったんでしょうけど。今見るとモノクロというのが致命的で、これは色々な意味でカラーでなければいけない映画ではなかろうかと思います。相手をだましてきたのにハッピーエンドとなるのも、好みに合いません。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2021-02-19 23:56:29) |
2. ボディ・スナッチャー/恐怖の街
《ネタバレ》 「周囲の人間が違うものと入れ替わっている」という侵略SFの元祖でしょうか。日常に根を下ろしたSFという点では、眉村卓や光瀬龍などの学園ジュブナイルにも影響を与えているように思えます。元祖なので話の展開もオーソドックスですが、そのためか安定感があります。最後がちょっと弱いのですが、これも時代的に致し方ないところでしょうか。 共産主義批判というのも、時代がうかがえて興味深いです。ただ、ナントカ主義を離れても、「顔は知っているが何を考えているのかわからない」ということを考えれば、現代的な側面も持っていると思います。そういうところをSFではなく現実的に描くと、『サイコ』のような話になるのでしょう。何度もリメイクされているのも納得です。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-01-05 19:45:57) |
3. 太陽は光り輝く
《ネタバレ》 酒好き判事が主人公の人情ものですが、南北戦争後のアメリカ人の心象が端的に描かれていると思います。ケンタッキーが舞台ということで旧南軍の人たちが中心なのですが、「戦いには負けても人間として大事な部分では負けてはいない」という、誇りのようなものがよく出ていました。プリースト判事は「私の法廷では、宗教や人種で差別されることはない」と公言しており、あたかも“アメリカの良心”を体現しているかのようです。製作された時代を考えると、いわゆる赤狩りに対する批判もあるのでしょう。まさに“古き佳きアメリカ”という感じで、現代では望むべくもなさそうです。今のアメリカ人がこの映画を見てどう思うのか、ちょっと聞いてみたい気がします。ジョン・フォードらしくユーモアをふんだんに盛り込んだ、娯楽作でありながらちょっと考えさせる佳作でした。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2019-08-14 16:50:49) |
4. シェーン
《ネタバレ》 改めてみて見ると、敵であるライカーが話し合いで解決したがったりと、典型的な悪人には描かれていないところが印象的でした。「銃なんて時代遅れ」と言いつつ、結局はその銃でしか解決できないあたりに、現実の難しさを感じます。そういう点ではアクション的ではなく、あくまでドラマ中心の作りになっており、なかなか見ごたえがありました。「子供の視点から描いたヒーロー」みたいなことが言われるようですが、むしろ大人側の物語が印象に残っています。 今回デジタル・リマスター版で見たのですが、夜のシーンが暗くて、本当に何をやっているのかさっぱりわかりません。これでは見ていてストレスがたまるだけです。ここがダメだったので-1点しておきます。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2019-01-26 10:44:09) |
5. ジュリアス・シーザー (1953)
台詞回しは舞台劇らしくていいのですが、ちょっと眠くなる場面も。演説調の長台詞は、聞きごたえがあります。後半戦闘場面もあるのですが、あっさり終わってしまうのはご愛敬でしょう。話の筋よりも俳優の芝居合戦が見ごたえがあり、楽しめました。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-12-09 19:43:34) |
6. 雪国(1957)
《ネタバレ》 原作は未読。豊田四郎の格調高い演出でいかにも「文芸映画」というたたずまいなのですが、逆に言うと暗くて重い。気が滅入るほどではないですが、ままならない現実の中で抵抗しようとする女のはかなさ、みたいなものはよく出ていたと思います。岸惠子の芸者役ってどうなの? と思ったのですが、意外とはまっていました。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2018-11-24 10:49:27) |
7. 大砂塵
《ネタバレ》 終わってみれば、結局何がやりたかったのか、よくわからない映画。頭のおかしい女一人に、多くの人が振り回されたという印象しかありません。「東部から人がなだれ込んできたら自分たちが追いやられる」と言っていますが、それがどれほど現実的かよくわからないし、キッドに惚れているようなことを言っていますが、それも本当なのかどうかすらわからない。要するに、主要人物の心理というものがまったく描写されていないんですね。だからやることに説得力がなく、上っ面だけの描写になっています。見ていて共感できる人間がいないので、それほど面白さを感じられない。序盤の舞台劇風の展開で期待させたのですが、あとが続きませんでした。 それにしても、元はといえば白人が西部に進出し、現地の人間を追い払って力ずくで土地を奪ったのに、自分たちが同じ目に会うのは嫌というのは、まあ勝手な言いぐさですな。今のアメリカ大統領を支持しているような人は好みそうですが……。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-09-02 09:19:44) |
8. 巨人と玩具
《ネタバレ》 増村監督らしく、早口でわめき立てるようなセリフ。しかし業界自体の性格が表れているようで、ピッタリしていました。内容的にも現代にまで通じる「サラリーマン残酷物語」であり、マスコミの裏側に垣間見られるいかがわしさや非情さをうまく描いていたと思います。それを体現していた高松英郎もすばらしいけど(若くて最初は誰かわからなかった)、虫歯の野添ひとみもキュート。「大衆は何も考えていない」などの鋭いセリフも飛び出し、とにかくパワーのある作で、「笑うのよ」っていう締めもなかなか考えさせられます。60年近く経っても風刺精神が生きているというのは、人間の本質を捉えているからなんでしょうね。『三丁目の夕日』シリーズが好きな人も、一度見てみればいいんじゃないでしょうか。 本作のDVDを販売しているのが角川というのも、偶然ですが面白い因縁です。 [CS・衛星(邦画)] 9点(2018-08-11 23:04:32) |
9. 傷だらけの栄光
《ネタバレ》 いわゆる「アメリカン・ドリーム」の成功物語としては、まあ楽しめました。前半での素行不良の物語も、なかなか容赦ない。それでも成功できたというところが重要で、失敗してもやり直せる社会はやはり健全でしょう。それだけに過去をネタに強請られるという展開は、考えさせられるところがあります。ボクシング選手といえば硬派なイメージがありますが、女性には奥手でユーモラスな部分もあるところもよかったです。 [CS・衛星(字幕)] 7点(2018-08-11 22:39:19) |
10. 二十四時間の情事
おそらく、時代色が出すぎた映画。人物の心情などは、戦後14年という時点でなければ理解できにくいものではないでしょうか。ということで歴史的意義はあると思いますが、60年後に鑑賞に耐えるほどの普遍性はないと思います。もはや、当時の広島の風景が見られるということが、一番のとりえでしょう。 [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-04-29 20:22:17) |
11. 陽のあたる場所
《ネタバレ》 アイラ・レヴィンの『死の接吻』を読んだとき、ドライサーの『アメリカの悲劇』というのが引き合いに出されていたのですが、そんな小説は知らなかったのでそんなものか、とか思っていました。その『アメリカの悲劇』の2度目の映画化ということなのですが、正直どこがアメリカの悲劇なのか、さっぱりわかりませんでした。 おそらくこの映画、恋愛メロドラマとして作られたのだと思います。原作を読んでいないので比べようがないのですが、多分原作にある『アメリカの悲劇』的な要素は薄められ、美男美女のラブストーリーとしての側面が強調されているように思います。だから題名も変更されたのでしょう。アリスがわりとうっとうしい女性に描かれているのも、主役2人の仲を際立たせるためではないでしょうか。観客をジョージに同情させる手のようです。しかし私は、ジョージはあまり同情できるような人物には思えず、主要人物3人とも魅力を感じられなかったので、どうにも面白さを感じられませんでした。 だいたい、ジョージが軽率すぎる。「イーストマン家の人間であることに誇りを持て」と言われ、社内恋愛は御法度だとわかっているのに、会社の女に手を出してる。田舎者とか世間知らずで済ませられることではないでしょう。そんなことだから、その後の成り行きも自業自得としか思えず、むしろ呆れるしかありません。アメリカの悲劇ではなく、アホの悲劇ではないのか? [CS・衛星(字幕)] 5点(2018-01-03 18:14:59) |
12. 炎の人ゴッホ
《ネタバレ》 正直美術にはほとんど関心がないので、ゴッホについても「こういう人だったのか」と思いながら見ていました。エピソードはまあよかったと思いますが、序盤の宗教と美術との関連があるのかないのか、そのあたりをもう少し突っ込んで見てみたかったです。ゴーギャンも登場しますが、むしろ弟テオとの情愛の物語が中心のようで、そこはよく描けていたと思います。しかし、希望が持てるような雰囲気だったのになぜ自殺したのか、正直よくわからず不可解な気持ちになりました。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-12-19 21:04:56) |
13. スタア誕生(1954)
《ネタバレ》 映像が欠落した(?)部分をスチル写真で補った長時間版でした。 ミュージカルとしては聞き応えがありましたが、アル中の旦那はあまり好きになれない。後半は夫婦愛の話かと思いましたが、立ち直れない情けない夫では感動できません。友人のサポートも結局あまり役に立たなかったわけですし。それで勝手に死ぬのはどうよ、と思ってしまう。その結果「スタア誕生」になったという理屈はわかりますが、それより生きてちゃんとやり直した方がよかったんじゃないの? あまり晴れ晴れとしないお話でした。 [CS・衛星(字幕)] 6点(2017-05-15 16:07:46) |
14. 野火(1959)
《ネタバレ》 原作は読んだことがないのですが、聞いたところによると主人公はキリスト教徒なのだとか。それはけっこう重要な設定だと思うのですが、映画ではそれらしいことを示唆するだけで終わっているのが少々残念。 それはともかく、本作では「人間であるとはどういうことか」というのがテーマのようで、戦争というのはあくまで背景であり、カニバリズムも問題が顕在化した、ある種象徴のような扱いだと思います。だから本質は反戦ではないし、食人ばかりをことさら取り上げてあれこれ言うのも、ちょっとズレているかなぁという感じ。船越英二はあまりタフには見えないのですが、最後の「普通の暮らしをしている人間に会いたい」というところで納得。「見た目が普通」というのが大事で、強靱なタイプではあそこで逆に説得力がなくなってしまうでしょう。インテリのクリスチャンという点でも、よくあった配役だと思います。 [CS・衛星(邦画)] 8点(2017-05-04 20:22:26) |
15. 白痴(1951)
《ネタバレ》 登場人物の価値観に共感できないから、良さが感じられないんですよねぇ。やはりロシアの原作で、発表時期も古いから仕方がない? しかし監督としては、現代日本にも通じるから映画化したのでしょうが……。 舞台劇を思わせる構成で、それにふさわしく台詞のやりとりには堪能させられましたが、同時に舞台劇的重さも併せ持っていて、映画的な軽妙さがあまり感じられなかったのもマイナス。軽妙といえば、第二部前半での東山千栄子の軽妙なお芝居は楽しい。この方こういうのもできるのかと感心しました。そのほかの皆さまも熱演で、監督の演出自体も見るべきところが多く、引き込まれる部分もありましたが、しんどいところも少なくなく、結局はあまり高く評価できませんです。 [地上波(邦画)] 6点(2017-04-17 20:27:39) |
16. 浪花の恋の物語
《ネタバレ》 こういう「女に入れ込んで破滅する男」というのはよくわからないし、同情する気にもならないので、あまり高く評価できません。梅川は心優しくて魅力的に描かれてはいますが。それにしたって仕事で預かった金の封を切るというのはねぇ。よかったのは内田監督の演出で、特に終盤の道行からあとは見ごたえがありました。 [CS・衛星(邦画)] 7点(2017-04-13 08:54:40) |
17. 赤線地帯
《ネタバレ》 風俗映画としてはまあよくできていると思いますが、人物の描き方が薄いので、夫が自殺を図ったり息子に拒絶されておかしくなるというのが、唐突であまり説得力がないところが残念。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2017-04-05 08:41:35) |
18. 七人の侍
某テレビ局が黒澤明作品を大量に買い付けた時があって、それまでテレビではほとんど放映されなかった作品が次々と登場しました。私は主要な黒澤作品をこれで見た口で、評判だけは聞いていたものを、この目で確かめることができました。中でやはり傑作だったのはこの『七人の侍』で、なんとも面白い映画を作ったもんだなぁというのが、当時の感想でした。 その後数回見ましたが、今回改めてリマスター版を劇場で鑑賞し、面白いことは面白いのですが、はやり初見時の感銘には及ばないかと感じます。こちらが見慣れてきたということもあるのでしょうが、もしかしたらデジタル化したことと関係があるでは、とも思えます。映画の中に没入せず、やや距離を置いてクールに眺めてしまうところがあるのです。これはやはりそういう類の映画ではないだろうと思うので、こうして客観視してしまうのは、この映画を見る態度としては問題があろうかと思われるのですが、そこに少なからずデジタル化の影響があるように思えてなりません。たとえ傷があったり音がこもったりしていても、フィルムで見た方がより夢中になれるのではと勝手に思ってしまう次第ですが、まあそれは単なるノスタルジーによる思い過ごしかもしれません。「凄くて面白い」映画であることには、間違いないのですから。 内容的にはあれこれ考察することは可能ですが、そういうことをしてもつまらないのでやめておきます。「凄くて面白い」娯楽映画の傑作、これだけで十分でしょう。〔レビュー900本目〕 [映画館(邦画)] 9点(2017-03-31 23:39:47)(良:1票) |
19. 理由なき反抗
《ネタバレ》 近頃ではこうした親と子の相克を扱った作が少なく、特に昔は定番であった「父と息子」の話はほぼ絶滅状態なので(特に日本では)、逆に新鮮に感じました。まあ「強い父親に対するあこがれ」というのはマッチョな発想で現代的ではないのかもしれませんが、それでも今見ても見どころが多く、十分引きつけられました。やはり家庭劇というのはドラマの基本であり、家族の問題をちゃんと描けることが、劇作の上で必要とされるのではないかと思います。本作ではそれと「同世代との交流」が適度にからめてあり、最後の悲劇と希望を持たせる幕引きでうまくまとめてあると思います。今のような時代だからこそ、見る価値がある作品かもしれません。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-03-11 17:21:52) |
20. リオ・ブラボー
《ネタバレ》 「ジョン・T・チャンスと愉快な仲間たち」って感じの娯楽作。悪党を相手にするのにそんなにお気楽でいいのか、と思うほどユーモラスで楽しい。その一方でアル中から立ち直るデュードの話をからめ、シリアスな部分もありバランスを取っています。ドラマと笑いとロマンス、三拍子そろった楽しい快作でした。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2017-02-15 08:18:20) |