181. チリ33人 希望の軌跡
地下・地上共に登場人物が多いので、個々の人物像の掘り下げは弱いものの「感動的な救出劇」として見ればそれなりに楽しめるとは思う。が、全体的には美談風に製作されているので、実際に地下で起こった負の側面の多くは語られていないようだし、救出後は金銭面での揉め事が生じており、33人は分裂してしまっているようなので、エンディングも金銭的な演出でしかないのだろう。また本事件の政治利用等も描かれておらず、「シビアな現実」を伝えるという面においては物足りなさもある。 [地上波(字幕)] 6点(2020-10-04 13:40:46)(良:1票) |
182. メカニック(2011)
全体的にはダレがなく雰囲気も悪くない。弟子の稚拙さで仕事に「手間」が掛かってしまうのはまあ仕方なくて、それが緊張感を煽ってはいる。でもこれじゃあ「暗殺」というよりタダの殺人でしかないのではないか。親父殺しのネタバレ部分はもうちょっと工夫が欲しかったし(なんで暗殺の証拠品を処分しないんだよ!)、白昼堂々の復讐はもはやバイオレンスになってしまった。実は女も暗殺者なんじゃないの?と疑心暗鬼になったんだが(ハニートラップによる展開があれば盛り上がったのではないか?)、ストーリーに関係ないなら登場させる必要はあったんだろうか。最終的なオチのつけ方はよかったのではないかと評価する。 [地上波(吹替)] 5点(2020-10-03 18:00:17)(良:1票) |
183. ライフ(2017)
登場人物の描き方が少々浅いような気もするが、密室パニックとしては中々面白いとは思う。ただし、乗組員が皆善人過ぎるのでもうちょっとクセがあったり内部でのイザコザがあってもよかったように思う。また、相対的にみれば単純に「カルビン」が悪であり、人間が善であるという事ではない点にも留意が必要である。科学者のチャレンジ精神は往々にしてリスクテイクとなる。元はと言えば、生物学者が相手を「刺激」した事が発端であり、さらに遡れば、「採取」という名の「収奪」が原因である。逆に考えれば、宇宙人生物学者が人間を採取して電気ショックを与えるのと同じである。このような科学(者)の暴走がどういう結果を招くのかは311で明らかとなっているし、科学による環境破壊によって早くて100年後には人類が地球には住めなくなるという危機も迫っている。よって、科学の活用の是非については全世界的な議論が必要である。宇宙開発は人間が地球上で生きられなくなった場合に備えて行っているらしい。その前に地球上で生きられるようにするためにはどうすればよいのかと考えるべきだと思う。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2020-09-30 13:34:44) |
184. ANNIE/アニー(2014)
オリジナルはよく知らないのだが、良くも悪くもアニーが世間ズレしていて物怖じしないので富豪と「対等化」しているように思えた。そこが、皆さんのおっしゃるアニーに魅力を感じないという要因ではないだろうか。経済的な格差拡大はあっても自由主義と(人権的な)平等主義が台頭した現代社会を投影しているのかと。その結果として、配役の人種的なバランスにも配慮しているんだろうし。 [地上波(吹替)] 5点(2020-09-29 01:20:41) |
185. シャドー・チェイサー
まだまだ世界中に異母兄弟がいる予感。マドリード舞台のアクション映画というのも珍しい。 [地上波(吹替)] 5点(2020-09-28 17:15:38) |
186. 帰郷(2019)
《ネタバレ》 映像はキレイ。役者も熱演している。ただし、全体的に物語上の年齢と役者の実年齢がふたまわりぐらい違うので終始違和感がある。音楽が仰々しく、ストーリーもイマイチ。そもそも最後の最後まで九蔵が宇之吉に気がつかないってのはかなり無理があるんじゃないのかと。 [CS・衛星(邦画)] 4点(2020-09-28 11:30:25) |
187. マダム・フローレンス! 夢見るふたり
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188. DESTINY 鎌倉ものがたり
《ネタバレ》 まず本題に入るまでが長い。だから全体的なストーリーに無駄が多い。そして、死者の無念や遺族の喪失感といった感情部分の描き方も弱い。そもそも映像の力で押し切る作品であって、ストーリーや感情面に期待する作品ではないのかもしれないが。ただし妖怪?も不必要に多すぎるような気がして映像的にも子供っぽさも感じるし、可愛らしさもないので見ていて多少不快になる部分もある。 テーマや設定そのものは悪くはないし、ラストの「想像の力」で乗り切るところは結構哲学的でもあり、観念の映像化としてもっと面白く料理できたのではないか。物語的にも映像的にも大人向けに工夫すればよかったのにと思うが、マンガ原作を映像化するとこうなるのは仕方ないのかもしれない。 [地上波(邦画)] 5点(2020-09-26 18:36:55) |
189. 闇の歯車
サスペンス的要素の中に人生というか男女の機微みたいなものが描かれており全体的にはキレイにまとまってはいる。俗な言い方をすれば、カネと女に振り回されているだけなんだが、所詮男の人生なんてそういう「歯車」のようなものなのかもしれない。他方、女性陣の方は妄想的というか各々ベタに描かれていたような気がしないでもない(強盗先に元カノが居たというのもご都合主義というか)。 難点はもう少し時間をかけて主役以外の仲間の素性についての描き方を丁寧にすればよかったのではないかという事と、役を作りすぎてしまったのか、瑛太の演技が硬くて暗くて陰気であり、粋ではないという事。もうちょっと軽めで明るくしなやかにするべきだったのではないかと思う。 [CS・衛星(邦画)] 6点(2020-09-26 18:07:46) |
190. ファイナル・スコア
『ダイ・ハード』系だがブルース・ウィルスに比べると、確かに主人公には華がなく面白みもなし、ジョークっぽい台詞もスベってるというか似合ってない印象。が、生真面目で無骨な感じは悪くはない。他方、案内係のファイザルがコミカルでいい味出していた(「テロリストジョーク」は皮肉が効いていてよかった)ので、配役のバランスは取れている。娘がもうちょっとバカで緊張感をさらに煽るとよかったかも。尚、ピアース・ブロスナンが出ていた事には気がつかず。007しか知らないし、老け過ぎててこれじゃあわからないよ~ [地上波(吹替)] 6点(2020-09-24 17:31:06) |
191. 沈黙 ーサイレンスー(2016)
《ネタバレ》 原作は中学時代に読んで、まったく理解できず挫折。で、映画でリベンジ。尚、近年の教科書では「踏み絵」(板)と「絵踏み」(行為)は用語として使い分けられている事に留意する必要がある(原作は仕方ないが、台詞や字幕は工夫できたのではないか)。 序盤で日本人が「モノ」を求める事を神父が懸念する場面がある。これは偶像崇拝につながるからだろう。であるならば、「踏み絵」も単なる偶像崇拝に過ぎないと考えれば、絵踏みをする事にはそんなに躊躇はないはずである、という話は時々耳にする(カトリックとプロテスタントの違いはあるだろうが)。逆に日本人はモノに神が宿ると考えるので絵踏みには躊躇があるだろう。が、そもそも絵踏みをしたところで棄教したとは言えないし、こんなのは「形式的」な儀式に過ぎない。また「信仰を捨てた」と白状したとしても、本当に棄教したかどうかはわからない。なぜなら「内面の自由」は誰にも侵すことはできないし、他人の心の内などそもそも誰にもわからないからである。終盤までそういった事はうまい具合に映像表現されていたように思うが、その分ラストの「手の内」の映像は余計だった。「心の内」では心許無いので最後の最後で映像による「偶像崇拝」の誘惑に負けてしまったようにも思える(これが映画の限界なのかもしれないが)。あとは皆さん仰るように英語を流暢に話す江戸時代の日本人と「神の声」も難点ではあるが、概ね違和感なく見る事はできた。 遠藤は日本にキリスト教が「根付かない」理由としてローカライズ(日本化)に失敗したからだと述べていたと記憶している(デウスを大日如来とするのはどうかと思うが、こういう「勘違い」で広まった側面はあるだろう)。なら、沼に生える「麦」を蒔けばよいわけだが、禁教であった近世日本においても数百年間隠れキリシタンとして信仰を守ってきた事実をどう考えるべきか。16~17世紀に渡ってきて殉教した宣教師達はある種の「一粒の麦」になりえたと言えるのではないか。他方、当初は「普遍」や「真理」にこだわっていた宣教師達が「転んだ」後はある意味日本流に信仰を守り抜いたという点ではローカライズを体現したと言えるのではないか。遠藤の本作に込めた真意はわからないがそんな印象を持った。ただし、ローカライズというのも信仰スタイルの問題ではなく「原始仏教→大乗仏教」のような教義的な事が言いたかったのかもしれないし、遠藤としては人口の1%に留まっている日本の信者数への不満はあるのだろう。その起源や原因をどこに求めるのかは人それぞれではあるが、本作で描かれたような歴史を認識しておく必要はあるだろう。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-09-24 14:55:38)(良:1票) |
192. 映画 「咲-Saki- 阿知賀編 episode of side-A」
マージャンは若いころによくやっていたが、原作もTVも前作も知らない状態で鑑賞。見所はクールな浜辺美波ぐらいかな。スピンオフなので浜辺美波を差し置いて桜田ひよりが主役になっている格好だが、もうちょっとキャスティングを工夫すればよかったのに。女子学生大会なせいか点棒のやりとりが礼儀正しく丁寧なのが新鮮。 [地上波(邦画)] 4点(2020-09-22 11:28:45) |
193. 日日是好日
就職難や男の裏切りや親の死といった、傍から見ればありきたりではあるが当人にとっては重大な「苦難」を、茶道を極めていく事で乗り越えて成長していくというロスジェネ世代の女性の物語なんだが、基本的には映像・音声中心の「頭で考えてはいけない」感じる作品になっているので、こうやって「どういう意味があるのか」を解釈して文章化する事を拒否する作品なのかもしれない。ただし、心情表現は独白形式になっているので、逆に説明臭いというアンバランスを感じるのだが、この辺は脚本化に失敗したのだろうか。 ちなみに原作はかなり有名なようであるが恥ずかしながら未読なので、映画の『道』は茶「道」にかけているのかどうかはわからないのだが、茶「道」の方は「伝統」を表すので「意味」は全く異なる。女の生きる<道>とでも考えれば両者を媒介可能なのかもしれないが、それにしてもここまで男不在な作品というのも違和感がある。 尚、調べてみると原作者は1956年生まれのようで映画の設定よりも15年程度上であり、これを映画化するに伴いロスジェネ世代に置き換えた事によるズレが色々と生じているように思える。従兄弟の商社就職も実際には雇用機会均等法前の話だろうし、地元に帰って医者と見合い結婚して寿退社というというのもいつの時代の話だよとツッコミたくなる。そもそも少女時代に映画の『道』を劇場鑑賞したという設定に違和感があるのだが、家族で名画座に行ったという事なんだろうか。ロスジェネ世代ではありえない設定ではあるが。 [地上波(邦画)] 4点(2020-09-21 17:24:47)(良:1票) |
194. ちいさな独裁者
《ネタバレ》 所謂なりすまし系サスペンスであり、いつバレるんだろうという緊張感が持続する。スタンフォード監獄実験にもあるように立場や役割が人格を作るとはよく言われるが、本作は制服を手に入れた人間が権力を手に入れ、暴走していくというのがメインストーリーにはなっている。ただし、本作の中心テーマは権力や権威に対して人間はどのような態度を取るのか?といった社会的問題である。権力に対しては、積極的に加担したり、保身から仕方なく従ったり、異を唱えたり、様々な対応がある。それは学校や職場やさらには家庭でも言える事である。ちなみに、有名なアイヒマン実験(ミルグラム実験)によれば、人は権力に服従する事によって残忍になる事が明らかにされている。 本作では各人の対応が明確に描かれる事は少なく、多種多様ながら概して曖昧な形で描かれる。よって、鑑賞中はこの辺が少々わかりにくく、モヤモヤする事が多かった。しかしながら、権力に対する対応は個人の中でも一様ではなく、状況や場面によって変化するものであるし、そもそも曖昧でグレーなものである。そういったグレーさを描いたという点では非常にリアリティーのある作品に仕上がっているとも言える。他方、作品は中途半端なところで終わる印象も受ける。できれば主人公が処刑される最後までしっかりと描いて欲しかった気もするが、それを描かなかったのは主人公の生涯がテーマではないからだろう。 エンドロールでは主人公が現代によみがえり、我々に「独裁者」を突きつけてくる。これは過剰な演出とも言えるが、こうでもしないと歴史的出来事として片付けられてしまうのではないかという製作者の危機感故かもしれない。歴史的実話ながら現代的テーマとして重く響く作品である。 [CS・衛星(字幕)] 8点(2020-09-19 11:38:34) |
195. イコライザー2
《ネタバレ》 2の方が面白い。街の解決人から話が大きくなり深みも増しているし、相手もタダのヤクザから元同僚へとパワーアップしているので緊迫感も増している。「善も悪もない、敵も味方もない、罪も美徳も無い。あるのは運不運だけ」という台詞が印象的。価値観を相対化すればそういう事にならざるを得ないが、この相対主義にどう抗うかがある意味「人生とはなにか?」そのものであり、それを主人公が体現していると言えなくも無い。尚、作中に出てくる『世界と僕のあいだに』は面白そうなので読んでみようかと。 [CS・衛星(吹替)] 6点(2020-09-18 11:49:51) |
196. イコライザー
現実的には「正義」なんてない。そういった正義無き世の中のファンタジーかな。表と裏の顔にもっとギャップがあってもいいような気もするが。主人公が強すぎて危機感が薄いのが難点。 [CS・衛星(吹替)] 5点(2020-09-18 11:03:59) |
197. アメリカン・アサシン
マジメに作ってるんだかフザケテで作ってるんだかよくわからない作品。だからツッコミどころも各所にはあるが、全体的にはムダなくダレないスパイアクションで、主人公が未熟かつ未完成なのもいい感じ。ただし、鬼教官はちょっと脇が甘いような気もするが。 [地上波(吹替)] 6点(2020-09-17 17:04:38) |
198. 2ガンズ
平凡でありきたりな刑事モノ?かと期待しないで見たら、テンポがよくて多少のヒネリもあり結構楽しめた。コメディなせいか危機感が薄いので、もうちょっと硬派にして2人がもっと追い込まれた方がよかったかも。 [地上波(吹替)] 6点(2020-09-16 17:13:51) |
199. 図書館戦争 THE LAST MISSION
「表現の不自由展」の騒動やSNSの言論規制等、表現の自由が問題となっている。という意味では「メディア良化法」が制定されてもおかしくはない状況でもないとは言えないわけで、非常に重要なテーマを扱っている作品ではある。しかしながら、中途半端な戦闘シーンばかりで問題の核心には迫っていない。国民の表現の自由への無関心と図書館隊の無力感をもっとしっかり描くべきではないか。原作未読なのでわからないが、戦闘ばかりしてるわけじゃないだろう。それじゃあ小説にならないし。基本的な対立構造としては国家組織と地方組織の武力衝突になっているわけだが(ここが荒唐無稽過ぎていくらフィクションとは言えリアリティーがなさすぎるという難点があるのだが)、あいちトリエンナーレでも問題になったように国家と地方の問題も重要なテーマであり、これらのテーマをしっかりと映像化すればとても興味深い作品になりえたと思うが。 [地上波(邦画)] 4点(2020-09-16 01:04:47) |
200. マッドマックス 怒りのデス・ロード
荒廃した未来における資源争奪戦というのが本シリーズの基本的なモチーフだと思うのだが、そこに女性解放や障害者活躍といった現代的な社会テーマだったり、魂の再生といった宗教テーマだったりと倫理的問題も盛り込んでしまった結果、本来のテーマ性が薄れてしまって全体的な世界観がボヤけてしまった印象。好意的に見れば現代風に世界観をアレンジしたといえなくもないが、正直マッドマックスシリーズに倫理問題を持ち込むのはどうかと思う。マックスの存在感のなさは女性の抵抗運動に奉仕する役割でしかない事の証左だろうし、宗教的カリスマ(ジョー)への忠誠心から「仲間」への自己犠牲といったウォーボーイズ(ニュークス)の心情変化も荒廃した世界観の中ではウェットでミスマッチな印象を受ける。とはいえ、アクションは進化しているので、テーマ等は考えずに単純な「鬼ごっこ」として楽しむ分にはいいのかもしれない。 [地上波(邦画)] 6点(2020-09-15 17:44:04) |