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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 823
性別 男性

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201.  ミリオンズ 《ネタバレ》 
ダニー・ボイル監督らしいユニークであり、ファンタジックであり、独特な世界観は見事である。 また、全体的に子ども目線で上手く描かれているように思われる。 しかし、自分に宗教的な素養が足りないことも問題かもしれないが、物足りなさを覚える作品となっている。 教訓的な要素も、感動的な要素もあまり感じられなかった。 序盤こそ、面白みを感じていたが、中盤に差し掛かり失速していった気がする。 起承転結のうち、“転”が上手く描けていないのではないかと思われる。 お金の存在を知った父親と女性、犯人の登場、ユーロ騒動が上手く機能しているとは思えず、結論に対してスムーズにオチていないのではないか。 ユーロ騒動が描かれているが、彼らが欲を出しすぎて、時期を失して、ポンド紙幣が全て紙切れ同然となったというオチもなく、あまり意味をなさない(ユーロ騒動があったから大金が手に入ったわけだが)。 また、本作のテーマの一つである“母親が聖人になれたか”というオチに導くとすれば、ダミアンの起こした行動がもう少し周囲の人間を変えていくようなミラクルが欲しかったところだ。 ダミアンが正しい使い道を模索して、失敗を繰り返しながら、本当の使い道を探し出したり、周囲の者が大切なものに気づくという流れにもっていけなかっただろうか。 お金を燃やして終わり、井戸を掘り当てて終わりというオチは、キレいではあるが、どことなく疑問や中途半端さを感じた。
[DVD(字幕)] 5点(2009-05-10 21:40:20)
202.  レイチェルの結婚 《ネタバレ》 
“家族”を繊細に描き切った良作といえる。本作には“家族”の中に微妙な不協和音が常に奏でられている。その微妙な“空気感”が見事に演出されている点が素晴らしい。 問題ばかり起こす妹に対して、自分の結婚式は自分が主役だとばかりに邪険に扱う姉と、久しぶりに家族に会える喜びがあるのに祝福されない妹の間には、いつ爆発してもおかしくない空気が流れている。また、キムには弟を事故で死なせてしまったという拭い去れない過去があり、“家族”の中でもわだかまりが消えずに残っている。楽しく笑顔で溢れていた「食器洗い合戦」中にも、死んだ弟の影がかすめると、一気に笑顔や笑い声が消えてしまうような繊細さが描かれている。 このような問題を抱える“家族”であり、お互いにいがみ合い、憎しみを抱くような脆さもあるが、なかなか壊れることのないものだと感じさせる。どんなに罵り合っても、抱しめ合えば、憎しみも消えてしまう。ラストの風呂場での姉妹の姿は実に感動的なものだった。特別な言葉も何も要らないのかもしれない。姉妹というものはそういうものなのだろうか。 キムの“家族からの愛”を求める姿が痛々しく描かれている。 アン・ハサウェイがアカデミー賞にノミネートされたのも分かる演技だ。 どんなに愛されたいと願っても、まるで「はれもの」のように扱われてしまう。 姉の結婚を祝福する輪の中でも完全に浮いている姿が印象的だ。 心の中では「謝罪」で溢れており、心の中から楽しむことはできないのだろう。 キムには弟を失わせてしまったという苦しみを抱えているが、それを抱えているのは彼女だけではなく、母親もまた弟の死の責任を抱える存在でもある。 弟の死が離婚の原因ともなっていそうだ。 母親が素直に結婚を喜んでいないのは、キムと同じ境遇だからなのかもしれない。 愛を求めて母親に会いに行っても、同じ境遇同士が傷を癒せるはずもない。 ラストではキムは施設に戻っていくが、自分には“帰る場所”があると分かったのではないか。最後のキムには何かが“吹っ切れた”感じがした。 悪い意味のものではなくて、良い意味のものだと思いたい。 ホームビデオ風の映像もなかなか面白い。 まるでイラクから帰ってきた軍人が撮っている映像を見ているかのようだ。 監督の狙いは、観客は結婚式に呼ばれた客であり、あの場面に遭遇しているかのようにという意図を込めているのかもしれない。
[映画館(字幕)] 8点(2009-05-10 00:31:12)(良:1票)
203.  バーン・アフター・リーディング 《ネタバレ》 
他のコーエン作品のレビューでも同じ事を書いているが、面白い設定の割には、あまり面白さを感じさせない不思議な作品になっている。騒々しさだけは伝わってくるが、基本的にはあまり中身がないためと思われる。徹底的に自己中心的でアホな連中を登場させたり、徹底的なブラックさでグロく攻めてくれれば、多少は評価できるが、評価できる部分が見当たらない。本作のラストにおいて自己評価しているが、「何の教訓も得られない作品」としか言いようがない。コーエン兄弟はアカデミー賞を受賞したので、あえて“中身がない作品”を作ろうとしたのだろうか。 この手の作品は、“単純な複雑さ”が求められるものだ。本作は、単純なことを回りくどく描いているだけのような気がする。 Aの行動をBが疑い、Bのその行動をCが疑い、Cのその行動をDが疑い、Dのその行動をAが疑うようなものが“単純な複雑さ”といえるケースになるだろう。 「全身美容整形手術費用をフランシス・マクドーマンドが欲しい」という基礎となる根っこがあり、「マルコヴィッチから金をふんだくる」というところまでは悪くはないが、そこから話が上手く転がっていない。CIAやロシアといった面白いファクターもあるのに、有効利用されていない。マルコヴィッチは、マクドーマンドのことをギャングかロシアのスパイと勘違いして、動揺して金を準備して、そのマルコヴィッチの不審な行動を、妻のスウィントンは離婚のための資産隠しと誤解するというように上手く転がせないものか。“データ”も“金”というアイテムも上手く活かせていないので、面白くなりようがない。 それ以外にも、執筆者であるマルコヴィッチは気づいていないが、ブラッド・ピットが手に知れたネタが実は重要機密が書かれており、CIAとロシアをも巻き込んだ騒動になるという王道ネタにすれば、まだ面白くなったのではないか。 オチに関しても、上手くオチているようには思えない。 「実はAが○○だった」というどんでん返しもなく、バタバタした挙句に訳の分からない拍子抜けのオチで逃げてしまった感が強い。CIAがマクドーマンドの主張を飲む理由も分からず、最低な“オチ”といえる。「実はマルコヴィッチはロシアのスパイであり、マクドーマンドの行動がロシアの利益に合致した」でも、「実はブラッド・ピットが○○○でいなかった」でもいいので、“オチ”をマジメに考えて欲しかった。
[映画館(字幕)] 4点(2009-05-06 21:37:31)(良:1票)
204.  ウォッチメン 《ネタバレ》 
原作未読。ザック・スナイダー監督作だけのことはあり、ビジュアルには文句がない。 練りに練られた映画であり、デキ自体は素晴らしいが、原作未読者にはあまりにも情報量が多すぎる上に、あまりにもストーリーがぶっ飛びすぎていて、付いていくのが精一杯だ。ストーリーは一本の線に収束されるように作られており、捨てる部分がないという気持ちは“理解”できるが、あまりにも詰め込め過ぎではないか。オジマンディアスの行動に“理解”はできるが、“賛同”もできないのと同じように、本作の作りには“賛同”はできない。ヒーローモノに必要不可欠な純粋な悪役が不在のため、軸の不安定さがあり、映画を面白くさせておらず、飽きる観客も増えるのではないか。 ただ、面白い点もいくつか見受けられる。 「ヒーローの限界」「この世の中はジョーク」「理解できない行動を起こすという人間の奇跡」というのは面白い部分だ。 ヒーローは火事から住民を救ったり、ギャング達をなぶり殺しにはできるが、世界を核戦争から救うことはできるのかという命題に対して、皮肉的ともいえる答えを提示している点は面白い。ヒーローの限界を知っていたコメディアンに世界地図を燃やされた際のオジマンディアスの目がとても印象的だった。 ヒーローの新たな一面や、善と悪との表裏一体性は確かに感じられるおり、この部分は評価すべきか。 また、「西部劇役者が大統領選に出馬する」ように、この世界は確かにジョークなのかもしれない。ロールシャッハのようなジョークが効かない人間にとっては、生きづらい世の中になったということだろうか。キーン条例制定により、ヒーロー活動を禁止されても、引退せずに地道に活動を続けてきた彼だからこそ、現実を受け入れることはできなかったのだろう。彼のような生き方が否定されるべきではないことは本作を通して描かれていると思われる。 さらに、人間は滅亡すべき存在なのか、救われるべき存在なのかという点にも触れられている気もした。 計算上では理解できない人間の本質や、人間という存在の奇跡的な面が描かれているが、こうした哲学的なテーマに飛んだりするので、本作を理解することが難しくなっているともいえる。 これらために、本作はまさに見る者によって、形が異なるロールシャッハといえる作品に仕上がっている。
[映画館(字幕)] 6点(2009-04-19 22:36:20)(良:3票)
205.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 
歴史や背景に関する知識はゼロで鑑賞したが、知識があまり必要な作品ではなさそうだ。史実と異なるかもしれないが、そういうことはあまり気にならない。 史実をきちんと描く必要のある映画もあるが、作品を通して“何を描くか”“何を伝えたいか”ということが大事だ。『職業:戦士』という言葉が心に残るほど“スパルタ”の精神が上手く描かれている。無駄に死ぬよりも、何かのために戦って死ぬために彼らは自らを鍛え上げている。国のため、愛するもののため、仲間のため、自由のために、戦場で死ぬことこそ、名誉であり誇りであるという精神は見事であり、どことなく“侍魂”にも通じるところがある。 また、ザック・スナイダーの恐ろしいほどのセンスの良さも光る作品に仕上がっている。素人でもプロでも、この仕事を真似できるものはいないといえる。彼だからこそ出来る映像表現ともいえそうだ。 素晴らしいグラフィックだけではなく、見応えのあるバトルも見事である。 しかし、バトルにはやや飽きてしまったところもあった。 サイやゾウ、爆弾魔術師軍団、停戦交渉ありと、手を替え品を替えたバトルが展開されているものの、基本的にはワンパターンというところがある。 レオニダスを苦しめた中ボス級の強敵が一人いたものの、こういった特異なキャラクターをもっと出すとさらに面白くなったかもしれない。 また、隊長の息子をドラマもなく単に無駄死にさせたことはもったいないところだ。 父親や王を護って死ぬというようなドラマや、楽勝のための慢心さが生んだ心の隙というような展開でもよく、何か物足りない展開だった。 圧倒的なグラフィックで、ただただぶった切るシーンで圧倒するというのも分かるが、バトルの中にもう少し“ドラマ”が必要だったのではないか。 男の映画ではあるが、王妃を通して女の戦いもきちんと描かれている。 スパルタは男だけではなく、女も強いということを描きたかったのだろう。 しかし、こちらも完全にはオチておらず、裏切り者の政治家を刺し殺すくらいならば、交渉する必要があったのかとは思うが、彼らスパルタ人の愚直さを表しているのかもしれない。 自分のためというよりも、自分を犠牲にして何かを守るために戦うスパルタ人の気質を表しているようにも感じる。 素晴らしいビジュアルや才能であるが、バトル等においてドラマが不在だったことがマイナスと感じられた作品だ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-04-19 22:30:48)(良:1票)
206.  レッドクリフ Part II ―未来への最終決戦― 《ネタバレ》 
「あまりエキサイトできなかった」というのが正直な感想。 なまじ三国志をかじっていると「こんなもの三国志じゃない」という気持ちが強くなり、冷静に楽しむことができなかった。我々が見聞きした「三国志」とは異なる、誰も知らない新たな「三国志」を作りたいというのがジョン・ウーの狙いかもしれない。 そのチャレンジ・スピリットは評価したいが、オリジナルを超えられなければ、それはただの改悪ということになってしまう。 一番の問題は、孔明の存在があまりにも軽すぎるのではないか。 孫尚、小喬よりもインパクトが欠けるというのは、いかがなものかと思う。 平安な未来への戦いにおいて、男ばかりではなく女も戦ったということを描きたいという気持ちは分かるが、あまりにもバランスを失している気がする。 “間者”や“茶”というアイディアが逆に良すぎるので、もっと比重を軽くしてもよい。また「赤壁の戦い」において語る必要のある「連環の計」「苦肉の策」「拝風台」も無視あるいは適当な処理でごまかしているのも問題だ。 これらを描かずに、孫尚と蹴球の選手との交友を描いたり、疫病の万延を描く必要があったのだろうか。 孫尚と蹴球の選手との交友を描くことによって、敵も味方も分かり合えるということを描きたいのかもしれないが、上手くオチているとは思えず、ただのお人好しを利用したようにしか思えない。描くとするのならば、戦場での再開においてもう一工夫あってもよかった。 疫病の万延に関しては「これはきっと孔明のワナに違いない」「終盤には曹操の虚を突くだろう」という期待通りだったが、「呉軍が曹操軍の逆襲に遭い絶体絶命になる」→「窮地に陥った際に、背後から劉備軍が登場する」→「ピンチから形勢逆転する」→「疫病による仲違いは実は計略だったと観客に明かす」というのが普通の“流れ”ではないか。“計略”というものは、敵だけではなく味方を欺くことが必要だが、観客をも上手く欺く必要がある。それにもかかわらず、途中から手の内を明かしているようでは全く欺きになっていない。この流れだけ見ても、ジョン・ウーの演出にはやや疑問が残る。肝心のバトルについてもそれほど見応えを感じられなかった。 ジョン・ウーのバトルに対するビジョンが見えてこなく、それぞれのキャラクターがそれぞれの仕事をきっちりと果たしたといえない。
[映画館(字幕)] 5点(2009-04-12 01:32:24)
207.  イエスマン "YES"は人生のパスワード 《ネタバレ》 
あまり期待はしていなかったが、なかなか爽快なコメディに仕上がっている。 本作を見たくらいでは大きな影響はないが、見終わった後は、ちょっと“前向き”になれる作品であり、こういう作品は貴重だ。 全ての事象に“YES”という必要はないが、“YES”と“NO”で悩む場合には“YES”と言ってみようかなと思わせるパワーがある。 アメリカのコメディは、たいてい下品でクダらない作品が多く、笑えないモノが溢れているが、本作は全体的に意外とセンスが良くて(特に音楽)、ただ笑えるばかりではなくてキレイにまとめられている(衝撃的なエロネタもあるが笑えるものとなっている)。 アメリカのコメディもだいぶ進化していると感じられる一本だ。 ジム・キャリーはもともと嫌いではないが、本作でもまったく嫌味やうざったさは感じられなかった。 多彩な顔の表情や、身振り手振りなど、彼の演技を真似することはできないはずであり、真の意味でのコメディ俳優だと思う。 コメディ俳優と名乗る者は多いが、彼はやはり超一流だと再認識できる作品だ。 多くのキャラクターも映画用にデフォルメされたものばかりではなくて(隣人のおばちゃんや自殺オトコなどは例外)、どことなく自然でリアルに感じられた。全体的に親近感が沸くような血が通った者が多かった点も好印象だった。 特に、ズーイー・デシャネルのナチュラルなキュートさも魅力的だった。 序盤のホームレスの存在、序盤の謎の夢シーン(この夢をみたおかげでセミナーに参加することとなるが)、終盤の交通事故(バイクシーンやケツ見せシーンが撮れるという効果はあるが)など、意味ありげのシーンに対して、投げっぱなしも多く、特にラストのオチを含めて「?」という展開もあるが、コメディなので細かいことは気にする必要もないだろう。 コメディに完璧さを求める必要はない。
[映画館(字幕)] 8点(2009-04-12 01:22:05)(良:2票)
208.  ダウト ~あるカトリック学校で~ 《ネタバレ》 
「メリル・ストリープは化け物か!」と思われるほど、彼女の存在感が際立っている。 アカデミー賞ノミネートは伊達ではない。単なら“名前”だけではなくて、真の“実力”による評価だ。本作を見れば、メリル・ストリープが評価される理由がよく分かる。他の出演者の演技も素晴らしく、彼らの共演を見るだけでも価値がある。 ストーリー自体は難解ではないが、テーマはやや難解だ。根底にはキリスト教の思想があると思われるので、完全には理解しにくい。“神父は少年に手を出したのか否か”という点がストーリーの核となっているが、この真相は明らかにされていない。結論としては、物事に対して白黒をはっきりさせることが重要ではなくて、グレイであることも重要であるということを意味しているのだろう。「ダウト」は、ある意味では絆を強める効果はあるものの、過度な「ダウト」は自分と他人を苦しめて、事態を悪化させ、物事をさらに混乱させるだけなのかもしれない。 個人的には「爪は長くても清潔であればよい」という神父のセリフが特に引っ掛かった。神父は確かに規則に違反していたかもしれないが、救済や愛という宗教に根付いたものであるのならば行為自体は問題ではないということを暗喩しているのだろうか。 自らの欲求を満たすためではなくて、父親からの暴力や自らの性質等に苦しむ黒人の少年を認めて、彼を救うための行動であれば、罰せられるべきではないのかもしれない。 こういう考え方が、古い時代からの脱却となり、新しい時代の考え方に繋がるということになるのだろうか。 シスターの考えは、どういう理由であろうと爪が長ければ駄目だというものだろう。 しかし、規則を無視して視力が低下した年配のシスターをかばったり、生徒から取り上げたラジオを楽しんだり、嘘をつき相手を陥れ、過去に罪を犯したこともあるとも言っており、矛盾だらけの存在である。彼女はある意味では勝ったのかもしれないが、ラストシーンにおいて彼女が勝利者ではないことが分かる。彼女は自分の“確信”だけではなくて、“理念”や“信仰”にすら「ダウト」を感じているのではないか。本当に必要なものは“寛容”“赦し”という精神なのかもしれない。 シスター同士の会話を遮る邪魔者、電話の音、割れる電球、雷などを意味ありげに使用されている。絶妙なタイミングでのエンディングも奥深く、レベルが高い作品に仕上がっている。
[映画館(字幕)] 7点(2009-04-12 01:19:53)
209.  ワルキューレ 《ネタバレ》 
けなしたくなるようなレベルの低い映画ではないが、個人的には面白みがほぼ皆無と思われた。唯一面白かったのは、ゲッベルスが青酸カリと思われるカプセルを口に含み、それを吐き出すまでだろうか。 肝心の緊張感や緊迫感に欠ける仕上がりとなっており、本作のような作品に必要な信念の深さや志の高さもそれほど感じられない。彼らが死んでも、正義は死なないというような熱い映画にはなっていない。 ブライアン・シンガー映画に精通しているわけではないが、彼の映画に多くみられる致命的な欠点は、テンポがほぼ同じということだ。盛り上がりが必要なところも、そうでないところも、ほぼ同じリズムで演出されている。血が通ったような映画ではなく、無機質ように淡々としている点が問題だ。ただただ事実と思しき現象を映像化しているにすぎず、ドキュメンタリー映画の再現フィルのような仕上がりとなっている。 一流の監督ならば、観客に対して「面白い」と感じさせる手腕があるはずではないか。 「ヒトラーの暗殺が成功していない」「ワルキューレ作戦が成功していない」という事実を知っている我々に対して、真正面から正攻法で攻めても成功するはずがないと思わないのだろうか。ワルキューレ作戦が成功しなかったのと同様に、本作の映画化作戦も致命的な失敗だったのではないか。 なぜワルキューレ作戦が成功しなかったのかをもっとクローズアップした方が面白かっただろう。 突然の会議場所の変更、予定の2つの爆弾を使えなかったこと、カバンの位置をずらされてしまったこと、何人かは死んだのにヒトラーはほぼ無傷だったというヒトラーの悪運の強さなどの偶然が重なったことをもっと丁寧に描くべきではないか。 本作でも、これらは完全に描かれているが、何もかもサラリと描かれすぎてしまっているのは勿体ない。 ワルキューレ作戦が遂行された後も、大きな混乱が描かれることはなく、知らず知らずのうちにこちらの方が追いつめられてしまったという感が強い。 これほど大掛かりなクーデターなのだから、双方において大きな混乱や焦りがあったはずである。双方の息が詰まるような攻防や展開を描いた方が盛り上がったのではないか。予備隊の少佐への電話一本、生存を伝えるラジオのみというのは味気ないところがある。 ただただ「ワルキューレ作戦」の表面をなぞったにすぎず、深みも重みもない映画を高くは評価しにくい。
[映画館(字幕)] 4点(2009-03-21 02:12:10)(良:2票)
210.  ユージュアル・サスペクツ 《ネタバレ》 
過去に鑑賞したことがあるので、ネタを知っている状態で再見。 ネタが分かっていても、ぐいぐいと引き込まれる仕上りにはなっている。 過去や現在、真実と虚偽が入り混じる複雑なストーリーではあるが、再見してみると、それほど複雑でもないことが分かる。 絡まった線のように見えて、解き解そうとすると意外とシンプルで分かりやすい。 また、絡まり方も複雑で堅くなっているのではなく、誰でも解けるように丁寧に易しく絡まっていると思われる。 しかし、いくつかの謎や辻褄が合わないところも散見されてしまう。 一番の問題は、ソゼが逃げられる状態でありながら、わざわざ捕まって、警察に嘘八百を並べ立てることとだろう。 「ソゼ=キートン」と警察に誤認させるという目的があったと考えることもできるが、納得はいかないところではある。 しかし、これを否定すると、映画が成り立たなくなるので、深くは考えない方がよい。 辻褄が合わなくなることは承知で、こういう映画は構成されているので、粗を探すよりも単純に鑑賞する方が面白いと思う。 ネタに関しても、それほど嫌悪感はなかった。 「誰がカイザーソゼであるか?」ということをメインにして、観客に問うているのであれば、この結末に対して、ぶち切れるかもしれないが、本作のメインは「事件の顛末」を解き明かすことであると思われる。 ネタが分かっていて鑑賞していたためか、「真犯人は誰かを予想する」「どういうオチかを予想する」類の映画とはやや異なる方向性で製作されている気がした。 なかなか見所のある映像的なカットも多い点が特徴。 ブライアン・シンガーのことを完全に理解しているわけではないが、彼らしくないスタイリッシュなカットも評価できる。 ケヴィン・スペイシーの演技も素晴らしく、彼の怪演があったからこそ、これほどの映画史に話題作となったのだろう。 そういう観点からも高い評価はしたいところだが、驚かされるものの手放しで評価したくなる映画でもない。 ネタを知っていたにせよ、知らなかったにせよ、何か足りない部分はありそうだ。 これに何かを付け加えるのも蛇足となるので、そういう意味では完結しているともいえるが、何かが足りない。 他の映画のネタバレができないので、ここでは書けないが、オチが素晴らしい映画とされているものにはオチだけではなくて、それ以外にも重要なことが描かれていた。
[DVD(字幕)] 7点(2009-03-21 02:09:09)(良:1票)
211.  DRAGONBALL EVOLUTION 《ネタバレ》 
鑑賞前は「いじめられっ子だった少年がいじめっ子を見返すためにカンフーを修行して、修行の成果でいじめっ子を倒した後は、なんやかんやでピッコロ大魔王と戦い地球を救う」というもっとメチャクチャなストーリーだと思っていたので、逆の意味で裏切られた感が高かった。 20世紀フォックスらしいトンでもない映画なのは間違いなく、はっきりいってネタのつもりで見に行ったが、その観点からも期待を裏切るかもしれない。 冒頭の説明から「いったい何の話をしているんだ!」と期待を高めてくれて、映画を観ていても「キミ達はさっきからいったい何をしているんだ?」と突っ込むことはできるが、悪い意味でマジメに作られており、笑うに笑えない代物となっている。 「ナマステ」「ハイスクール青春ストーリー」「パーティー」「陳腐な修行」「ヤムチャ」「どこが大猿?」「人を生き返らせるためにカメハメ波を喰らわす」「布団で寝るピッコロ」などの突っ込みどころは当然満載で、「課題ができなくてズルしようとしていた奴が、エロのパワーによって一瞬で課題をクリアする」などのメチャクチャなところは多数見られるが、ネタ映画としてもそれほどのレベルではない。 我々の期待を裏切り、それなりにマジメに作られているので、つまらない作品というよりも、単に「やる気と情熱と才能と予算がない集団が作り出したデキの悪い中途半端な作品」ということになるだろうか。 高額な制作費といわれているが、実際にはそれほど掛かっていないチープな仕上がりとなっている。 しかし、中身はないが、ストーリーはポンポンと繋がりなく進むので、それほど飽きるということはなく、「何が伝えたいのか、何をやりたいのかが分からない」ような怒りに震える駄作というものとはヤヤ異なる気がした。 人々の記憶から消えることのない歴史に残るような駄作を期待したが、一瞬でストーリーが記憶からなくなる普通のどうでもいいカンフーアクション作品となっている。
[映画館(字幕)] 3点(2009-03-14 20:42:52)(良:4票)
212.  チェンジリング(2008) 《ネタバレ》 
イーストウッド監督は、正直言ってそれほど好きではない。たんたんとストーリーが流れていき、初見では何を伝えたいのかが理解できないことが多い。世間一般では評価されているが、苦手としている監督の一人でもある。 イーストウッド監督に対して苦手意識を持っている自分であっても、本作は“素晴らしい”と認めざるを得ない作品に仕上がっている。今まで観てきた映画とは“次元が異なる”と言っていいほどの完璧なデキには驚きを隠すことはできない。 まず、全体に漂う“空気感”が他の映画とはまるで異なる。張り詰めた緊張感は切れることなく持続しており、映画内の世界に完全に引きずり込まされる。あらゆる意味において“現実”よりもリアルさを感じられる。 ストーリーについては、通常のイーストウッド監督作品同様に、たんたんと流れていく。ミスを認めようとしないLAPDを過度に非難するような感情は込められていない。犯人に対する憎悪のような感情も深くは込められていない。クリスティンに対しても、哀れみを誘うような過度な感情も込められていないと思う。 そのような感情は深くは込められてはいないが、被害者の子どもたち、加害者の子どもを含めて“子ども達に対する深い愛情”が注がれていることに気付かされる。 そしてLAPDを非難することよりも、子どもに会いたい、子どもを捜して欲しいという“母親の愛情の強さ”がしっかりとした基盤となり、彼女の強さや行動に対する原点になっていることに気付かされる。 アンジェリーナ・ジョリーの演技はまさにパーフェクトだ。セリフだけではなくて、表情が素晴らしい。表情だけで何もかも語っているほどのレベルになっている。 彼女に対してセリフを語っている者の表情よりも、セリフを聞いている彼女の表情に深く魅入られてしまったほどだ。彼女だけではなく、すべての演者がパーフェクトとしかいいようがないほどのキャスティングには脱帽だ。 ラストに関してもまさに秀逸だ。残酷なストーリーかもしれないが、本作にはきちんと“希望”が描かれている。クリスティンは永遠に“希望”を持ち続けることができたと感じられるものとなっている。救いのあるラストには、まさに“映画らしさ”を感じられる。そしてイーストウッドの映画に対する愛情もまた強く感じられる。 10点を付けられないのは、受け手である自分の未熟さの問題であり、映画自体は満点といっていい。
[映画館(字幕)] 9点(2009-02-22 21:26:36)(良:3票)
213.  7つの贈り物 《ネタバレ》 
結論を抜きにすれば、全体的にはそれほど悪くはない映画とは思う。(賞を取りたいという)関係者の熱意やマジメさは十分に伝わってくるレベルの高い仕上がりにはなっている。 問題は、ベンの選択に対して賛同や共感ができるかどうかだろうか。批判を承知で映画を作っているとは思うが、「他人の人生を不幸にした者には、ああいう形でしか救いがない」というオチでよいのかどうかは疑問に思う。もし、そういう人が本作を観たとすると、どういう気持ちになるだろうかと考えてしまう。 映画というものは、観た者に対して、希望や夢を与えてくれるものではないか。 確かに、ベンのような気持ちになり、誰かを救いたいという気持ちは分かる。 彼のプランも十分に理解はできるが、エミリーとの出会いにより、ベンの心に何らかの変化が生まれて欲しかったところだ。 自分を犠牲にして誰かを生かすよりも、“償い”の方法には別のものもあるはずだと。 エミリーと接することで、人を救う方法には様々な形があるということを。 病気に苦しむ誰かの人生を助けようとして、助けようとしている誰かに逆に助けられていると気付く。そういうものが人生ではないのだろうか。 ベンの閉ざされた心を、死に迎えつつある病人のエミリーならば開くことはできたはずだ。仮に、エミリーが死ぬことになっても、エミリーはベンを助けることができれば、人生の意義を見出せたのではないか。ベンは愛する人を含めて多くの人を救い、助かる見込みのない愛する者を救いたいという想いを成就させたものの、彼の人生はある意味では絶望のままで終わってしまうこととなる。 どんなに酷いことをした者であっても、人生は続いていくものではないか・・・。 親友がいて、弟がいて、愛する者がいながら、一人で背負った苦しみから、誰も彼を救うことができなかったことが、何か寂しさを感じる。 気になったのは、交通事故を起こした者が考えることは「自分を犠牲にして誰かを助ける」ということよりも「もう二度とクルマには乗らない」ということではないか。 暴れたら事故が起きそうな大型犬をクルマに乗せることが、果たして事故を起こした者のやることだろうか。 映画自体はマジメには作られているが、こういったことも含めて根本的な部分で本作には相容れないところがあるので、やや評価を下げたい。 それにしても、序盤のアップの多さはなんとかならないものか。
[映画館(字幕)] 6点(2009-02-21 23:08:28)(良:1票)
214.  マンマ・ミーア! 《ネタバレ》 
ABBAについてはよくは知らなかったが、「どこかで耳にしたことがある、この曲ってABBAの曲だったんだ!」という驚きが大きかった。 それにしても、30年前のグループの曲なのに、音楽が生き続けて、歌い続けられるということは“奇跡”と思わざるを得ない。 年月を経てもまったく色褪せないのは、音楽くらいではないだろうか。 歌のチカラはやっぱり凄いと実感させられる。 はっきりいって「歌がそれほど上手くない」「ストーリーがメチャクチャ」「恐ろしいほどにダサい」とは思ったが、“それがどうした?”というような映画だった。 “楽しくて、ハッピーならばそれでいいじゃないか!”というノリで押し切られてしまった。 いい意味での“適当さ”や“ダサさ”がABBAの曲やギリシャの陽気さにマッチングしている。 ミュージカルは完璧さが追求される世界かもしれないが、完璧なダンスや、メチャクチャ上手い歌を聴かされたら、本作においては逆効果になるかもしれない。 また、ストーリーと世界観とのバランスが難しく、「二兎を追うもの一兎も得ず」ということになるくらいならば、「ハッピーになれる」という長所を確実に狙ってきたのだろう。 奥深さは全くないが、狙い自体は成功したといえるのではないか。 上映終了後、劇場で鑑賞していた女性たちは皆楽しそうな表情をしていた。 ただ、ストーリーにケチを付けるのは野暮だが、映画としては、あまり高くは評価できない仕上がりにはなっている。 ドナとソフィの親子愛、女の友情、ある意味では敗者であるドナの悲哀、若いソフィが狭い島から抜け出して、世界に羽ばたくといったことなども、きっちりとは歌い込まれているが、あまり高いレベルの深さはなかった。 すべてをきっちりと高いレベルにしろとは言わないが、何かひとつ“ドナとソフィの親子愛”辺りは感動できるようなレベルにまで、きっちりと描いて欲しかったところだ。
[映画館(字幕)] 6点(2009-02-11 22:47:39)(良:1票)
215.  ベンジャミン・バトン/数奇な人生 《ネタバレ》 
初見では「感動した!」「凄い面白い!」と評価できるほどの単純な作品ではなかった。泣ける感動作でもなければ、“数奇な人生”に驚かされ圧倒されるわけではなく、評価は難しい。 しかし、『一人の男の人生』をコンパクトに過不足なく見事に描き切った監督の手腕は素晴らしいものだった。 あえてドラマティックには演出していない抑えた演出が光る。 映画を見ているというよりも、まるで詩のように叙情的に描かれている作品だ。 そもそも、ベンジャミン・バトンの人生が“数奇な人生”かどうかは疑わしい。 生まれて、恋をして、働いて、旅をして、様々な別れを経て、死ぬというのは、我々ともそれほど変わりがないように感じられる。 80歳で生まれて、徐々に若返っていく人生を送れる人は「幸せなのか」「不幸せなのか」という問いがあるとすれば、その答えが本作にあるのだろう。 人生において重要なことは“年齢”ではない、“気持ち”の問題なのではないか。 ティルダ・スウィントン演じる人物が、若いころには達成できなかった海峡水泳を、年齢を経てから達成できたということもヒントのように思える。 たとえ人生に『もし』があったとしても、たとえ自分の人生をもう一度やり直せるとしても、自分が変わらなければ、何もできないだろう。 バトンの人生を見て“数奇な人生”と思う人もいるだろうが、彼の人生はそれほど“数奇な人生”ではなくて、少しだけ変わった“ありふれた人生”を送ったような気がする。 一人の“数奇な人生”ではなく、誰にでもあり得る“ありふれた人生”だったからこそ、色々と“人生”について考えさせられる点が多い深い映画となったように思われる。 本作は現在の人生をより充実して生きて欲しいと願うフィンチャーなりの応援歌ではなかったか。 また、本作において一貫として描かれていることは「永遠なるもの」の存在だろうか。 年齢や容姿が変わろうとも、決して変わらないものがある。 それが“愛”であると伝えようとしていると強く感じられた。 年老いて贅肉が付き、背中が染みだらけになったケイト・ブランシェットを見つめる若いブラッド・ピットの眼が印象的だ。 自分が若く、相手が老いたとしても、“愛”だけは決して変わらない。 そして、晩年のケイト・ブランシェットと若くなりすぎたブラッド・ピットとの接し方はやはり愛情以外の何物でもない。
[映画館(字幕)] 7点(2009-02-08 23:56:23)(良:1票)
216.  チェ 39歳 別れの手紙 《ネタバレ》 
ゲバラが死を迎えるときですら何も感じられず、「つまらない」以外の一切の感情が沸かなかった。 ソダーバーグはいったい何を伝えたかったのかが全く分からない。 「一人の英雄がジャングルで死んだ」という15文字程度の出来事を4時間も掛けて見せられたら、怒りたくもなる。“英雄”を描いてくれればいいが、“英雄”すら描いていないのも問題だ。ゲバラの生き様を描くというよりも、ゲリラ活動のドキュメンタリーかHOWTOモノでも見させられている感じだ。 ボリビアのゲリラ活動を描くとしても「なぜゲバラはボリビアでの革命に失敗したのか」というポイントに絞っているわけでもなく、前編に引き続きストーリーは何に等しく、山中行進や逃避行や脱走などが繰り広げられているだけだ。肝心の緊迫感・緊張感・追い込まれ感といった観点からみても何かが足りない。 ゲバラについてはほとんど知識がないので、何も知らずにこんなことを書くのは恥ずかしいことだが、素人考えではゲバラの「ボリビアのゲリラ活動」はゲバラを語る上ではそれほど重要ではないと思っている。 本当に重要なことは「別れの手紙」を書くに至るまでではないのか。 キューバでの革命に成功させたゲバラが理想の追求により、キューバ政府内において孤立していき、カストロとの距離が徐々に大きくなり、国際会議での演説によりカストロとの亀裂が決定的になったことが重要ではないのか。 カストロ個人宛に書いた別れの手紙を、自分の意思には反してキューバ国民に公表されてしまい、アルゼンチン人の外国人であるゲバラがキューバに居場所をなくして、アフリカのコンゴ・南米のボリビアへと新たな居場所もしくは死に場所を求めたことが重要ではないかと思っている。 ゲバラを描く上で必要不可欠な“カストロとの関係”という肝心なことをすっ飛ばして、どうでもいいことを描いたと感じれば、点数は低くせざるを得ない。自分が思い描いた作品ではないという理由ではなく、ポイントがズレていると感じるので評価を下げたい。 本作を見る前に「モーターサイクル・ダイアリーズ」を見直してみたが、あれこそまさに“革命”への想いが感じられる熱い映画だった。本2部作とは何かが決定的に異なる作品だ。ソダーバーグ作品には「スゲぇ面白い」という作品もあるが、多くは「何が言いたいの」としか感じられない。本作をもって彼の作品には別れを告げることになりそうだ。
[映画館(字幕)] 2点(2009-02-07 23:38:30)(良:1票)
217.  ザ・ムーン 《ネタバレ》 
映像は豊富であるものの、「月面旅行」を体感できるような類の映画ではなく、基本的にはコリンズ(アポロ11号に乗ったのに月面を歩けなかった人)を中心とした宇宙飛行士たちが語るエピソードがメインの眠くなる類のドキュメンタリーだ。 しかし、この手の分野には興味のあるものの知識がなかっただけに、“人類の進歩や挑戦”の苦労や興奮を体感できたり、「冷戦」を背景とした当時の“宇宙開発計画”の時代の裏側を知れたりと、非常に興味深い時間を過ごすことができ、いい勉強にはなった。 神秘的な映像を見られると思った人には、おっさん達のつまらない話としか感じないが、関心のある人には優良ドキュメンタリーとなるだろう。 本作を見ることで、ニール・アームストロングの『That's one small step for a man, one giant leap for mankind』(これは一人の人間にとっては小さな一歩だが、人類にとっては偉大な飛躍である)という有名なセリフの深さや重さを味わうことができた。 このセリフには感動させられる。 先人たちの無謀ともいえるチャレンジスピリッツがあるからこそ、現在の豊かな暮らしに繋がっているとも感じられるとともに、人類や人間には不可能はないということも感じられる。 そして、“月”を描くということは、間接的には“地球”を描くということにも繋がっているとも感じられた。 本作の裏のテーマは“地球”であるのは間違いないだろう。 奇跡の惑星である“地球”の美しさは見事としかいいようがない。 “月”から“地球”を眺めてみれば、“地球”を汚染したり、ちっぽけなことで争いをしている人類の愚かさを改めて実感させられる。 “地球”の奇跡を享受することを当然のことのように考えるのは、間違っているとも感じさせられる。 確かに、眠くなるドキュメンタリーかもしれないが、本作を見ることで、人類や地球について何かを感じ取れることができるのではないだろうか。
[映画館(字幕)] 6点(2009-02-07 23:30:28)(良:1票)
218.  007/慰めの報酬 《ネタバレ》 
傑作「カジノロワイヤル」よりは少々落ちるものの、満足のいく仕上がりとなっている。カーアクション、モータボート、飛行機、パラシュートと、過去の“007シリーズ”で描かれてきたことが非常に多く盛り込まれていると気付かされる。石油まみれで殺された女性の死体の描き方はもちろん「ゴールドフィンガー」からの引用だろう。 このシリーズに愛着ある者には“ニヤリ”とさせられるシーンが数多かった。 本作はやはり紛れもなく“007シリーズ”の系譜を引いている作品だ。 悪く言えばオリジナリティが欠如している作品かもしれないが、本作のオリジナリティといえば“復讐”の描き方だろう。 復讐に燃える二人の男女を描き、『復讐とは何か』を問うている。 鑑賞中は「ボンドは彼女に復讐を果たさせない」というベタなオチで締めくくるのかと思っていたが、「彼女に復讐を果たさせる」という予想外の展開だった。 確かに「彼女に復讐を果たさせない」よりも「彼女に復讐を果たさせる」方がより“深み”を増すという結果になっている。 たとえ、復讐を遂げたとしても、その後には何も残らない、呆然とへたり込んで一歩も動けなくなり、ただ死を待つだけだ。 “復讐を果たしても何にもならない”と言葉で説得するよりも、“実際に何もならない”と描く方がより説得力が増している。 ポール・ハギスの脚本の上手さがよく分かるシーンだ。 真の意味で“復讐を果たす”とは、「復讐するという気持ちを忘れて、復讐から自由になること」ということなのだろうか。 ボンドが投げ捨てたペンダントからは、そういう趣旨が伝わってきた。 ボンドが飛行機の中で6杯ほど飲んでいたお酒は、ボンド命名の“ヴェスパー”というお酒。前作で死ぬほど愛したのに裏切られた女の名前を付けたお酒だ。 こういうシーンも奥深くて、非常に上手いと感じられた。 ボンドの苦悩が感じられ、まだ開放されていないと知ることができる素晴らしいシーンだ。 そして、「相手を許して、自分も許せ」とマティスの言葉にも重みがある。 ボンドに対して恨みがあるからこそ、マティスの言葉には胸を打たれる。 さらに、かつてGUCCIのデザイナーをしていたトム・フォードの手掛けたボンドの衣装も必見だ。ファッションに興味のある人には、注目して欲しい。
[映画館(字幕)] 8点(2009-01-25 21:55:41)
219.  チェ 28歳の革命 《ネタバレ》 
ゲバラについては詳しくは知らないが、ドキュメンタリーを見たことがあるので、「名前」を知っているというレベルではない。ある程度の全体像を掴んでいたので、それなりには楽しむことはできた。上映前の説明と本作の映像だけでは足りないので、“知識”で流れやキャラクターや時代背景などを補えないと少々苦しいか。 それにしても、ソダーバーグ監督の相変わらず訳の分からない演出が微妙だ(他の作品よりはマシなレベルか)。一貫としたストーリーはなく、イメージやエピソードをぶつ切り状態にしている。ドキュメンタリー風なタッチをメインにして、観客にも一人の兵士として参加してもらおうとしているのだろうか。 そういう趣旨は分かるが、“狙い”はやや空回りして、むしろ“逆効果”のような気もする。全体的にボヤボヤしすぎてしまい、全体像が掴みづらくなってしまう。 後編を見ないとなんとも言えないが、単に山中を行進して、市街戦を繰り広げて、国連で演説したり、インタビューを受けたりしているとしか描かれていない。 素直に撮りたくないというのは分かるが、“褒めること”も“貶すこと”もしにくい映画に仕上がっている。 確かに、ゲバラをヒーローに描くことはできないのだろう。 アメリカ人には敵国ともいえるキューバの革命を賞賛することもできない。 こういう場合には、ありのままの“事実”のみを描かざるを得ない。 一方のサイドに感情を込めて肩入れすることはできないので、ニュートラルのまま突っ走らざるを得ないのは分かる。 そうすると、彼の「革命」に対する想いが見えてこなくなってしまう。 『革命とは“愛”だ』という言葉はカッコいいが、その“愛”を感じさせるものが欲しいところだ。 戦うことだけではなく、食料を調達することも、仲間の怪我を治療することも“革命”というセリフがあった。 読み書きを教えることも当然“革命”なのだろう。 規律を厳しくしたり、仲間を処刑することも、兵士に革命を放棄させることも彼にとっては“革命”だ。 本作に描かれていることは、彼にとっての“革命”の総てなのかもしれないが、“革命に対するパッション”というギアをもう一段、深く入れて欲しかったところだ。 後編を見たところで、「ゲバラの生き様」「ゲバラがなぜ賞賛されるべき人物なのか」「革命とは何か」を感じることはできないだろう。 こういう部分は本で勉強するしかないようだ。
[映画館(字幕)] 5点(2009-01-24 23:45:07)(良:1票)
220.  ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー 《ネタバレ》 
ギレルモ・デルトロ監督は評価されている監督だが、今まではちょっとピンと来ない部分があった。個人的にはそれほど評価していなかった監督だが、本作を見れば、彼の世界観の豊かさ、イマジネーション力の素晴らしさには圧倒される。 ギレルモ・デルトロ監督は間違いなく才能ある監督だと確信した作品だ。 アメコミ作品の多くは、ヒーローの苦悩といったダークな面がことさら強調されているが、本作のような能天気でユーモアに溢れており、スケールが大きなファンタジックな作品こそ、コミックらしい面白みを感じられる。 緊迫感が足りない微妙なユルさやバランス感覚が非常に上手いと思った。 昨今のアメコミ作品の中は、中途半端な作品が多く満足できないものが多かったが、本作は満足できる優秀な作品だ。 ストーリー、アクション、世界観、キャラクターいずれにも満足できた。 バトルシーンがあっけない部分があるが、前作同様であり、このシリーズの特徴でもあるので多少は目をつぶれる。 アクションや様々なクリーチャーも見所の一つだが、ヘルボーイたちの人間らしい部分も見所の一つになっている。 誰かを好きになったり、妊娠を悩んだり、だらしのない恋人をしかったり、しかられたりと、彼らは人間よりも人間らしい。 そんなときは、酒を飲んで、歌を歌って、嫌なことも悩みも吹き飛ばすというのも非常に面白い描き方だ。 見る人によってはバカバカしいと思うかもしれないが、本作のコアな部分は『どうでもいいことで悩むヘルボーイやエイブたちの姿』だと思っている。 どうやって世界を救うかということで悩むよりも、どうやって恋人の機嫌を直すか、どうやって好きな人に愛を伝えられるかということで悩むかという点に面白みを見出せるかどうかがポイントになるかもしれない。 彼らとは対照的に、容姿が醜く、自分達と異なるからといって、軽蔑したり、化け物扱いをする人間の浅ましい心を描くことで、何かを感じて欲しいという想いをデルトロ監督は込めたのではないか。 ヘルボーイたちが唐突に人間達に嫌われることに違和感がないわけではないが、“流れ”を考えると仕方のないところだ。 ヘルボーイたちの非常にピュアな心を描くことで、エルフが嫌った人間の心を間接的にも描いているような気がする。 そして、冒頭の教授と幼いヘルボーイのやり取りも素晴らしい。 本当の親子のような姿が描かれている。
[映画館(字幕)] 8点(2009-01-22 22:02:50)
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