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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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241.  チャップリンのゴルフ狂時代 《ネタバレ》 
「のらくら」または「ゴルフ狂時代」。 汽車を待つ人々、降りてくるゴルフ狂たち、夫人の脚、荷物入れから出てくるチャップリン。何と言う無賃容赦。 車の後ろに座るが振り落とされる。 今回のチャップリンは放浪者と同時に身奇麗な紳士も演じる。ちょっと抜けたね。 ズボンの短さに不意打ちってパンツかよwwww新聞で隠してしゃがんで移動。 泣いてんのかと思ったらカクテルをシェイク。サイレント映画ならではのギャグ。  芝生をズカズカ歩き、ゴルフボールを気づかぬ内に蹴って運んでしまう。  正しい土の使い方、不憫すぎるオッサンの連鎖、チャップリン気づけよ、腹を踏むと次から次へとボールが出てくる昼寝中のオジサン。よく窒息しなかったなこの人・・・。  馬、乗馬する女性、ロバで追跡、自力で追うスピードの速さ!と出来たらいいな。  酒瓶を狙い撃ったようにしか見えないナイスショット、殴られ腫れ上がった面で再び現れるオッサンの受難、太めのオッサンも災難続きで帽子を踏む追い打ちまでされる。  人違い、地面かと思ったら沼にドボン、チャップリンと出会うゴルフ狂はみんな災難が降りかかります。  仮装パーティー、騎士に扮装する紳士、鉄仮面が取れなくなるパニック。  スリに間違われ警察とのおにごっこ、チケット、逃げた先で警察かと思ったらそれの仮装。  懐中時計をくるくる回しながらしまう、デブのオッサン相手に後の「猪木アリ状態」?、御夫人のスカートに失礼。 バグパイプ奏者、嬉しくないパンチラ、缶切り?で鉄仮面を切り開く一変する空気。 追いかけて交わす握手・・・を文字通り一蹴するのがチャップリン。「今更遅いわ!」
[DVD(字幕)] 8点(2015-06-11 23:41:24)
242.  チャップリンの独裁者 《ネタバレ》 
「生きるべきか死ぬべきか」や「我輩はカモである」に続く反ナチスコメディの大傑作。 警官だろうが突撃隊だろうがヒトラーだろうが、煙に巻いて徹底的に笑い飛ばす。 オマケに当時タブーだったユダヤ人に対する描写も余裕でタブー破り。 コレはエルンスト・ルビッチの「生きるべきか死ぬべきか」でもユダヤ人の悲劇を笑いかつ哀しみをふんだんに込めて描写していたっけか。 「公債」で嫌々やったプロパガンダだが、この作品はそういうものを一切感じさせずヒトラーをDisってDisりまくり。 物語は第一次世界大戦とナチスの政策を極限までパロディにした話。 冒頭の第一次大戦の戦場は「担え銃」を思い出す光景。あの作品は塹壕が主な舞台だったが、コッチは砲塔。砲台に振り回され、不発弾までグルグル回って兵士を翻弄する。 偶然助けた兵士と飛行機で脱出、逆さまになり水が落ちる場面をまるで水が天に吸われていくように映す。 チャップリンはいつも通りおどけて見せるが、時折見せる怒りの表情、さらっと流される死人の続出などブラック・ジョークも抜群。 「モダン・タイムス」でも共演したポーレット・ゴダードはいつ見ても可愛い。 それにしても随分好色なヒトラーだこと。 女好きはどう考えてもチャップリンの性癖な気が(ry  「サニーサイド」における床屋シーンのNGフィルムはこの作品で見事に“復活”。よりパワーアップし洗練された圧巻の場面。 ブラームスの「ハンガリー舞曲」の“演奏”!曲に合わせて高速で髪をカットしたり髭を剃っていく名人芸。  破裂されてまで拒まれる地球征服、床でいきなり滑ったり、手をかけそこねたりする場面は故意なのか事故なのか測りかねん。 不意打ちすぎて鼻水出たわ(笑) 絵や彫刻を創る側も対象がせわしなく動くのでイライラがピークに。 ムッソリーニとの食物ぶちまけケンカも死ぬかと思った(笑いすぎて)。 だがラストの演説は凄い。「ヒンケル」と「チャーリー」の演説! 入れ替わってしまうのは「替玉」以来だろうか。 最初の演説との違いはまるで「ボレロ」。積み重なった言葉の集約が「演説」にこめられている。 人間にアーリア人も白人もユダヤも黒人もいない・・・なんて「理屈」が一番伝えたいことじゃない。 ただ愛する女性、愛しい人へのメッセージ・・・「ハンナ」。 「ハンナ」は今作のヒロインの名前でもあるし、チャップリンの母親への手紙でもある。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-11 23:40:15)
243.  サニーサイド 《ネタバレ》 
男にケツを蹴られてチャップリンが起きるが、また寝てしまう。 そこに靴を投げる、で起きて着替えるのかと思いきやパジャマの下にシャツとズボンwww何という横着振り。 んで出たと思ったらまた窓からベッドに御帰宅。  コーヒー、牛を連れてきてそのミルクをコーヒーにそのまま入れてしまう。 ヤギが楽譜を喰うわ鳴くはいきなり車がクラッシュして事故るわ。  犬を蹴るような野郎にはパイをくれてやらあっ!  後半は牛のモーレツな勢い。牛が教会で大暴れ、窓を牛がブチ破る。  杖に蝋燭、あえて車に轢かれるチャップリン。 情事のために人一人殺しにかかるチャップリン。これは酷い(褒め言葉)。  牛のロデオで頭を打って“幻想的”な妖精たちと原っぱでダンス。 それを引き上げる“現実”のおかしさ。  NGフィルムにおける床屋シーンの狂騒は「独裁者」で復活した。
[DVD(字幕)] 8点(2015-06-11 23:39:17)
244.  ライムライト 《ネタバレ》 
チャップリンは様々な映画で人々の心に希望を灯し、次の旅先へ向い続けてきた。 それに一つの終止符を打つ「殺人狂時代」と「ライムライト」。 「キッド」や「カルメン」と違い真正面から死を見つめたこの2本は、一見正反対のようで根底には人の死が横たわる。 「ライムライト」は今まさに死が迫ろうとする女性の姿から物語は始まる。 街に溢れる音楽、アパートのある一室でぐったりとした美しい女性。右手の小さな瓶が総てを物語る。 その現場を目撃してしまうほろ酔いの男。 いつものチャップリンならドアを開けるまでにもう一騒動待ち受けているが、運命は彼に使命でも与えたかのようにドアを開けさせた。 何故かマイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガーの「赤い靴」を思い出してしまった。 あの作品も踊りを愛し、愛するが故に舞台の上で命を燃え上がらせる作品だった。ここでは、美しいプリマドンナを救うためにチャップリンという天使が現れたとしか思えない。 放って置きそうで黙って見過ごせない情、死ぬ事のつまらなさと生きる事の喜びを彼女にありったけ注ぐチャップリン。まるで最後の力を振り絞るように。  ノミのサーカスは「教授(チャップリンの教授)」以来の“復活”。  クレア・ブルームは命の恩人に惹かれていくが、チャップリンは「過去の人間」として「未来を歩みはじめた」彼女のために見守る愛を選ぶ。 かつての「サーカス」や「失恋」といった作品がそうであったように、チャップリンは本気でその人の事を愛してくれる人を見つけたら、潔く身を引いてしまう男なのさ。 彼は彼女を愛しているからこそ頬をひっぱたき、笑顔で励まし送り出してくれた。彼の愛が彼女の脚も動かしてしまう。 チャップリンとクレアのダンスシーンが本当にキレいでさあ。 ラストのバスター・キートンとの狂騒的なグランドフィナーレですら、笑えるのに切なくなってくる。それは上映時間が迫る「もうすぐお別れ」という感覚だからだろうか。二人の息の合った演目が素晴らしいほど、不安も大きくなる。 あんなに笑えてあんなに切なくなる“退場”の仕方って有りかよ。 道化師は去り、美しい白鳥が次の舞台を踊り続ける。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-11 23:38:22)
245.  南極料理人 《ネタバレ》 
猛吹雪の雪原、建物らしき黒い影。その中を駆け抜ける3人の男たち、倒れて揉み合う。逃げ場のない氷原、生きるために仲間を励ます。 「遊星からの物体X」みたいなサバイバルアクションでも始まるのかな?と思ったらぬくぬくとした部屋で麻雀始めちゃうんだもんなー。 撮影は「トウキョウソナタ」といった黒沢清作品でも腕を振るう芦澤明子。冒頭シーンの凍りつく画面、その後の居心地が良い画面が素晴らしい。  麻雀、漫画、ビデオ、音楽、ボウリングでストライク、カクテルとバー、卓球。極寒の密室、その極限状態に耐えるための娯楽、美味い飯!  命懸けで仕事に挑む人間たちが、飯を美味そうに食っているシーンの多さ。なんて腹の減る映画なんだ。心は満腹になるけどね。 飯を食いながら登場人物の紹介、好き嫌い、トマトに悪戦苦闘、丹精込めた料理に調味料をかけられすぎるのは料理人のプライドが見過ごせない。  空が晴れると白い建物。太陽が遮られた時はあれほど黒く見えたのに。  朝、ドアをめぐるやり取り、ラジオ体操と“目の保養”、落花生の箸置き、仕事内容の確認。  1年だけの付き合い、1年も務めなければならない厳しさ。  意気揚々と仕事にかかるプロフェッショナルたち、掲げられる旗、旗、旗。風の強さをストレートに教えてくれるし、時には誕生日といっためでたい日を祝う。   ボーリング調査といった仕事。 天然の冷蔵庫から材料を運び入れ、一品一品真剣な眼差しで作っていく。  サングラスをして何かを待つ男たち。「ワルキューレ騎行」と共に自転車に乗ってやってくる飯時。 飯めがけて全力で駆け、転ぶ。  読書中の主任に弁当の配達、積み重ねられ始める不平不満。基地のアチコチに張られた異性のポスター、受話器の向うの甘い声、家族の写真や宝物。すべてはホームシックの叫びを抑えるために。  雪を掘って水作り。他の面々も生きるために食飲み食いするものを作る。8人にとって無限に等しい原料。伊勢海老につられてくる面々、エビフライコール。  回想、揺れる船、帰りを待つ家族、胃がもたれる嫁の手料理は母の味。文句を言いながら食う食卓の団欒。 願った人間に訪れる事故、願わなかった人間に降りかかる仕事。 「家族と相談させて下さい」 「おめでとう」 「家族と相談・・・」 「行ってらっしゃいお元気で」 ああ殴りたいあの笑顔。  節分のお面、裸の鬼を締め出す・・・て殺す気かwww 劇中の面々は度々裸になって氷点下を満喫する。記念撮影もトライアスロンの特訓もパンツ一丁。 時間の限られた電話、砂時計、天然の氷で乾杯。  夜食を目の当たりにして「もう勝手にしろよ・・・」とドアを閉じる。人が何のために丹精込めて飯を作っているんだよと。 でも食う本人たちもそれはそれ、これはこれ。  凍傷への対応で怒る男たち。真剣な者と嫌々でやっている者たちの対立。  でっかい肉を外で火をつけて肉を振り回すシーンの面白いさこと。 「楽しいwww」  巻き込まれる主任、誕生日ケーキと肉のステーキでパーティー、料理人を支える娘の歯。  いちごの原液をかける天然のかき氷、原液はそのまま野球のベースラインに。  太陽を拝めない日々の鬱屈とした様子。 誰のための正装か解らない祭、凍傷が治った手と伸びた髪が物語る日数。  料理人もお母さん状態。 「あ~ぐ~ら」  ラーメン中毒者とバター中毒者が出てくる状況。重症です。  さあクソ主任との対決だ!後ろから迫る怒り、料理人も有無を言わさず蹴る、フラれたショックで自殺行為、医者「はい凍傷ね」  そして娘の分身に等しかった歯ああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁっ!!!!! 精神的にグロッキー。  胃にもたれる母の味が料理人に涙と活力を与える。仕事仲間たちが、家族たちが食べさせてくれていた愛情。お母さんと娘の計らい。  本土との通信。 「可愛い動物は~?」 こんなに可愛いおっちゃんたちがいっぱいいるじゃありませんか。おっさんは非売品。   “冠水”作り、ラーメン>>>>>>>>>>>>>>>>>越えられない壁>>>>>>>>>>>>>>>>>>オーロラ。  いつもの朝食風景が、食卓を囲む人々が消えていく瞬間の何ともいえない寂しさ。  再会、そして出会う人々。“声”だけで出会った恋人たち。  成長した子供たち、氷原と灼熱のアスファルトを駆け抜ける男の生き様。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-11 23:36:31)(良:1票)
246.  キートンのカメラマン 《ネタバレ》 
キートンの傑作は数多くあるが、俺が一番好きなキートンはこの「カメラマン」! 他のアクションが凄い傑作群に比べると地味な印象を受ける人もいるだろう。でも俺は群衆に始まり群衆に終わるこの映画が大好きなんだ。 まずキートンの出で立ちからして面白い。ベレー帽を被り、使い古された三脚付きカメラをまるで機銃でも抱えるように持ち運ぶ。三脚は容赦なく人に襲い掛かるし事務所のガラスも割ってしまう凶器と化す。 それを支える可愛らしい二人の“相棒”とのやり取りも楽しくてしょうがない。 一人は冒頭偶然出会ったニュース班務めの美しい女性で、情報面から彼の孤独な闘いを支える。 もう一人は街中で偶然出会ったちっこくて素早い気の利く可愛い奴だ。傍らでここぞと言うときに助けてくれる頼れる存在。 冒頭出てくる戦場で命をかけるカメラマン、だが人の住む都会でニュースを追うカメラマンたちも命懸け。 何も無い広場をあっと言う間に埋め尽くす人の群れ!津波のように押し寄せるスペクタクル、そんな場所で出会った女性を追ってキートンは街角カメラマンからニュースを追う記者へと変わっていく。 彼女もまた彼の優しさに同情して良い情報を流してくれるが、失敗が続いて中々上手くいかない。それでも諦めず次に進もうとする無邪気さ。彼女とのデートはとにかく愉快だ。 バスに乗ろうとするが押しのけられ必死でバスの外にしがみ付く、落ちても全力で追いかけ飛びつく。 プールの脱衣所でおっさんと揉みくちゃになるシーンは爆笑。 マーセリン・デイの水着姿は可愛くて色っポイ。こりゃ男どもも群れを成すわな。 終盤のマフィア同士の熾烈な抗争を掻い潜り暗黒街を駆け抜けるシーンも凄い。 心強い“相棒”と共にカメラを回し続け、落としたナイフをもう一度握らせ殺し合わせたり柱が倒れようがマフィアに機銃やナイフで狙われようがそれを全力で回避しつつ撮影を続けるカメラマン魂。 それでも報われない努力、でも報われなくたっていい、惚れた女のために暴走した船が水上を裂くように走る現場に飛び込む勇気。 「蒸気船」の時といい、何も言わずにすぐさま他人のために行動できるキートンはカッコ良い。 その真実をスクープした“相棒”の存在!キートンが他者に助けられるという人間臭い一面も見せる面白さ。総ての真実が明かされた後、まるで二人を祝福するかのように現れる人々の群れ。
[DVD(字幕)] 10点(2015-06-10 18:49:11)
247.  ワンス・アポン・ア・タイム・イン・アメリカ/完全版 《ネタバレ》 
「ウエスタン」、「夕陽のギャングたち」から続く「ワンス・アポン・ア・タイム」三部作の終局。 個人的には「続・夕陽のガンマン」がレオーネの最高傑作だと思っているが、俺の一番好きなレオーネの映画はコレ。 ドラマ、アクション、緊張、緩急、密度、そして漢と女たち。その集大成とも言える傑作だ。 「ゴッドファーザー」が殺しの依頼から始まるのに対し、この映画はいきなり“滅び”のシーンから始まる。 人気の無い暗い部屋、女が一人部屋に入ってくる。女が明かりを付けると、ベッドには人の形を象った弾痕の跡が。その瞬間、男の写真立てを割る拳銃を持った男たち。男たちが写真の男の行方を尋ね・・・というファースト・シーン。 冒頭からショッキングな場面が続く。一連の殺し合いが終わると、映画は過去へ遡り、そして“現代”と行き来をはじめる。 クローズ・アップのくどさに辟易するが、そんな事は壊れた壁の隙間から過去に飛ぶシーンの素晴らしさが忘れさせてくれる。 現在のシーンは昔を尋ねる場面だけで退屈なものになるのかと思っていると、あの壁穴から一気に過去へのジャンプしたもんだから驚きだ。 もう退屈と感じるシーンは微塵も無い。美しさと強烈さを秘めた映像が見る者の心を最後まで掴んで離さない。 ヌードルスたちがギャングに成長するまでの青春の日々が一番好きなんだよなあ。 大人になりかけの子供と言いますか。 レオーネ特有の長回しも皆無に近いのが逆に好印象。 ヌードルスたちが成長して殺しの限りを尽くすシーンも好きだ。密告、裏切、下剋上。 綿の機械?工場での追走劇はカール・テオドア・ドライヤーの「吸血鬼(ヴァンパイア)」を何故か思い出した。吸血鬼は工場のおがくずの中で息絶える。 車上で“暴走”するヌードルスの愛。あえて合成の車外映像が、ヌードルスの愛がデボラの心ではなく肉欲、“偽”の愛情である事を暗示する。 何いかにも哀しげな音楽で誤魔化そうとしてんだよ。無言の「別れ」が終わりを物語る。 それとも、ヌードルスはデボラを巻き込まないためにあえて彼女の心が離れるような事をしたのだろうか。 禁酒法の終わりはヌードルスたちの友情の終わりも告げる。 コーヒーカップをかき回すシーンの異様な緊迫、一世一代の“大博打”、明かされる真実、ゴミ清掃車という名の霊柩車。ラストのヌードルスの哀しき笑みは忘れられない。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-10 18:48:29)(良:1票)
248.  くもとちゅうりっぷ 《ネタバレ》 
昆虫たち、てんとう虫の少女、蜘蛛の紳士。蜘蛛の巣のハンモック、美しい花々。交互に歌い合う二人。 蜘蛛は優しい口調で“得物”を誘惑する。  蜘蛛のナンパ、てんとう虫の女の子は羽で飛ばずに草から草に飛んでいく。怖がって羽の下に隠れてしまう。 蜘蛛が糸でするする降りたり昇ったりするアニメーションの軽やかさ。  ちゅうりっぷの介入、花の中の顔、蜘蛛の糸を大量に出してがんじがらめに巻きつける。 蜘蛛は糸をマフラーのように、鈴のように、タオルのように巧に操る。  空の上、雲の上から風を飛ばす者たち、雨風の猛烈さ・空爆のような雨。  子供のようなミノムシ?冒頭のミツバチ?がてんとう虫の女の子たちを助けるキッカケに。  傘にくるまって飛ばされ、草木はそれを跳ね飛ばすように運ぶ。
[DVD(邦画)] 8点(2015-06-10 18:28:15)
249.  なまくら刀 《ネタバレ》 
フィルムセンターで鑑賞。  別名「塙凹内名刀之巻(はなわへこないめいとうのまき)」。 舞台は江戸時代、買ったばかりの刀で試し切りをしようと座頭に後ろから声をかける。それを馬が脚蹴を食らわすように侍を蹴り飛ばす。 飛び散る☆といった表現。表情の変化も豊かだ。  この後も侍は散々な目に遭い、肝心の刀も実は・・・という見事なオチ。  90年以上前の日本で、既にこれほど豊かな表現に満ちたアニメが生まれていた事に感動した。
[映画館(邦画)] 8点(2015-06-10 18:27:07)
250.  蒸気船ウィリー 《ネタバレ》 
子供の頃、ミッキーのビデオで見て以来。 黒い煙を噴き上げる蒸気船。口笛をふきながら舵を切るミッキー、伸びる胴体、五月蠅いオウムにバケツごと水をぶっかける。 細い牛にデカいベルト、それを草を食わせて太らせる。乗船し遅れた乗客をパンツごと引き上げる。楽譜とギターはヤギに食わせる餌。音だけが残る。 楽器になるyアギ、ありとあらゆる物が楽器と化す楽しさ。猫やガチョウ?、子豚、豚、牛の歯すら楽器に。 俺が見たビデオ版(Disney ミッキーマウス/ブラック&ホワイト特別保存版)には豚の母親が仰向けになってアコーディオンのようにされるシーンはカットされていたかも知れない。 硬そうなチョコ?ガム? ハメを外しすぎた罰に、芋の皮むき。五月蠅いオウムは再び叩き落される。
[DVD(字幕なし「原語」)] 8点(2015-06-10 18:25:00)
251.  おくりびと 《ネタバレ》 
死者を送りだす「生きる」人々 緩やかな、何処までも緩やかな映画。 にも関わらず、これほど人の神経を逆なで、魂を揺さぶる“あぶない”映画もないだろう。私はそういうあえて危険な道を行くこういう映画が大好きなのです。  霧、道を走ってくる車、喪服を着た男のセリフ、雪原。 葬式、仏の顔を覆う布をとり、手を合わせ、顔をなでて表情を整え、固く結ばれた両手を指の一本一本ほぐし、再び布団をかぶせ、衣服を下から抜き去り仏に被せる。  漆黒の喪服ですら、死者を優しく送るように何処か明るみを帯びている。撮影は「生きてるうちが花なのよ死んだらそれまでよ党宣言」や「女優霊」でも知られる浜田毅。 滝田洋二とは「病院へ行こう」や「壬生義士伝」でも組んだコンビだ。  布の下に手をやり、体を清める。そして雰囲気をブチこわす本木の一言の破壊力。 師匠も“勲章”を確認。  音楽で食っていた男が、死者のためにレクイエムを奏でる存在になる。妻のために嫌々やっていた“作業”が、誇れる“仕事”になる瞬間。  葬式のPVで死んだフリ入門。  死への接近、冷え切った肉体への接触、対面した人間にしか解らない匂い、それを周りの人間の噂話で理解し、銭湯で生きている実感を、嫁に抱き着き服をまさぐる事で生きる喜びを味わう。温もりと呼吸。死んだら嘔吐も抱き合う事もできない。 社長もまた派手な咀嚼音で生きる瞬間を噛み締めている(と思いたい。つうかちょっとは自重しろよ社長)。  父を恨んでさえいた男が、同業者の“無自覚さ”によって怒る。いなくなって初めて解る存在の大きさ、拳に握られていた物の大きさ、流れる涙。 妻もまた、最後まで「生きた人間」として死者を送り続ける夫の仕事を見届ける。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-10 18:24:04)
252.  千と千尋の神隠し 《ネタバレ》 
車の後部座席で花束を抱えて仰向けになる少女。窓の外にアカンベー。  見知らぬ森の鳥居、大木、ほこら?薄暗い道。 両親の好奇心に振り回される娘。まるで童心に還った子供のように。遺跡を探索するようなピクニック気分。それを笑って“迎える”ように立つ像。謎の建物の黒い、異様に暗い穴に吸い込まれていく人々。  地面をガリガリ削るように走る車の躍動感。そっから竜が飛ぶわ化物が駆け回るわ、相変わらずそのスピードへのこだわりにビックリだ。そういうシーンの数々を見るだけでも、方向性とかテーマとかそんなものどうでも良くなりそう。  演技はそんなに悪くないと思う。これ以降のジブリ作品が特に酷いというだけ。  菅原文太の兄貴の演技、夏木マリの素晴らしい演技を聞くだけでもそんな事はどうでもよくなる。  無人の市街地の不気味な静寂。相変わらず食欲をそそられる食い物の数々。 サンプルのような山盛り料理と、二人が食べるぷりぷりした質感の違い。その違和感が、この映画そのものの違和感を物語る。度々聞こえる列車の音。  食いだしたら止まらない止められない恐怖、謎の少年の警告、かけられる“呪い”、人質を助けるために奪われる名前、個性。溶けて“ゼロ”になりかける肉体と心。  それを取り戻すために少女は“千尋”として様々な事件を乗り越えていく。  劇中の人々は、外見も中身もメチャクチャ変わっていく。取り戻す名前と自分、家族。 劇中の人々は、外見も中身もメチャクチャ変わっていく。あの「カオナシ」すら自分を見つめ直そうとするのだから。 そんな人々の中で、魔女はあまり変わらない。それは正反対の性格を持った“もう一人の自分”が既にいたからなのだろうか。必要悪、絶対悪としての存在。それが揺らいでしまう事への恐れ。夏木マリの演技力に恐れ言った。  そういう存在がいなかった「ハウルの動く城」をめぐる魔女は、おどろくほど様変わりしてしまう。   車を覆う草木だけが経った時間を語る。遠のいていく穴、何とも言えない寂しさ。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-10 18:23:18)
253.  ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー 《ネタバレ》 
銀河から集まったアウトロー集団の大暴れを描く快作。 ダークで主人公がウジウジするようなアメコミは嫌だ、頭からっぽで楽しめるのが見たい!という面々が撮った痛快なカウンターパンチ。  それはかつての西部劇といった娯楽映画にも通じる流れ。 「真昼の決闘」という退屈なクソリアリズム西部劇は御免だよ、という人々に向けて撮られた痛快な傑作「ヴェラクルス」や「リオ・ブラボー」といった流れを思い出す。  ただ、最近のアメコミはダークさとツッコミどころにも溢れた従前たるアクション映画の傑作・良作の方が多い。数十年前より遥かに進歩している事は確かだ。  要は雰囲気の問題。 とにかく単純明快で楽しいのが見たいという人に「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー」を全力でオススメします。   冒頭の病室における別れとレクイエム、膨大な過去が眠るであろう遺跡でダンス、そして踊るようなバトルとそれを盛り上げる“音楽”。 「キック・アス」にも参加したベン・デイヴィスの軽快なキャメラワークも良い。冒頭のお葬式ムードが嘘みたいに馬鹿馬鹿しくなっちまった(褒め言葉)。  時代を超える魂のリズム!クラシックが何百年の時を超えるように、音楽は時代を選ばないし、好きなものに過去も未来も存在しない。その人にとっての現在進行形。それは映画でもアメコミでもアニメでも、すべての娯楽に共通する醍醐味だ。  「スクービー・ドゥー」や「ドーン・オブ・ザ・デッド」の脚本・「スーパー!」を監督したジェームズ・ガンの演出は楽しい。 今まで参加してきた作品にあった暴力性(ヴァイオレンス)の快感。それを子供も楽しめる生粋のエンターテインメントに仕上げている。 クラシックとアクションが弾ける瞬間!  音楽とダンスは戦闘前にアドレナリンを高めるおまじない。俺には天国のママンがついているぜっ!アジトに殴りこんで獲物を奪い逃げていく見事さ、グリーン姉さん(検索する際は細心の注意を)の大立ち回り、刑務所での大騒ぎと大脱走、次々に増えていく面子。  最愛の人の手を握ってやれなかった幼き頃の悔しさ、今度はもう離さない!たとて氷点下の宇宙だろうと!  え? 横でその他大勢の正義のために立ち上がった面々がアボーンしまくっているって? 主人公のスルースキルがありえないんだぜって? ここまでCG使うならいっそフルCGにしてくれた方が違和感なかったって? 細かい事は気にするな!ツッコミどころの多さもまた楽しんだもん勝ちの娯楽よぉ!  ラストで“生まれ変わった”者が踊りあげる生命のダンスも可愛い&グッとくるじゃないか。  特に好きになったキャラは宇宙海賊ヨンドゥのオッサン。 地味に無双するわクイルたちの事も何だかんだ言って気にかけてくれる。 流石に原作漫画のモヒカン族(インディアン)スタイルはNGだったか。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-09 21:08:19)(良:1票)
254.  ニーベルンゲン 第I部 ジークフリート 《ネタバレ》 
ラングによるファンタジー映画の大作。第一部「ジークフリート」、第二部「クリームヒルトの復讐」。 同じ大作でも「ドクトル・マブゼ」は謎解きと犯罪活劇の面白さがそこかしこに満ちていたが、この映画はそれほど緊張がみなぎる作品だろうか。 そりゃあ細部にいたるドイツ美術の見事さには目を見張るし、ジークがドラゴン退治をするシーンは中々迫力があって面白かったが、それまでの20分はちょっと退屈だった。  この2時間30分の第一部は、大いなる序章に過ぎない。 むしろ第二部の2時間10分、特にラスト50分の凄絶な復讐劇こそこの映画の真骨頂!なので、思い切って第二部から見て見るのも面白いかもしれない。   さて話を一部に戻そう。 おどるおどろしいドイツ語の文字がかもしだす雰囲気、虹のかかる山、林と住民、剣を叩き鍛える青年、それを見守る老人。 老人に完成した剣を見せ、空を舞い落ちてきたワタが切れる。このセリフの無い導入部の5分間、完璧だ。  日の光を背に立つ城、黒い影をまとい移動する兵士たち。  上記でも述べた竜退治の迫力!一見すると巨大なトカゲがのそのそやっているようで拍子抜けする(眼は可愛らしすぎるし)が、造形や動き・演出が凝ってる。噂を聞いただけで、劇中では実質何もしないまま殺されるドラゴン。オマケに眼も可愛気で何処か哀しい表情。これじゃジークがただのDQNじゃないか(え?原作も大体そんな感じ?)。 滝が落ち、木の影から剣を抜いて様子をうかがう。剣を振り上げ火を噴くドラゴンの眼をえぐる!喉をついて血が流れ落ちる。剣にベットリついた血の跡。鳥だけがその一部始終を見ていた。 滝のように溢れる竜の血を、水につかるように浴びる。この間わずか3分。  ジークの旅は続く。霧がたちこめ、木がうねった不気味な森の雰囲気、変な網で透明になり変装もできる魔法のアイテム、月夜が差し込む渓谷、奇妙な洞窟、映像を映す光の玉、石になる人々・・・。  影のようにうねる砂絵の迫力!鳥、光と闇。  一色触発の事態を止める真の主人公とも言うべきクリームヒルトの登場。どうでもいいけどマユ太い。殺し合いそうになった男たちが手を取り合い、そして再び殺し合う運命。  男勝りなブリュンヒルデとの対決。炎で埋められた大地、そこにそびえる城。 中性的な顔立ちのブリュンヒルデ。石投げ競争、投擲による一騎打ち。使い込まれた盾を砕く一撃。戦士から“女”の顔になってしまう。 腕輪、ドロドロになっていく関係、ジークとクリームヒルトの淡い結婚生活、萌える木々が枯れていく残酷さ、森の中での競争、眼と影で表現される“暗殺”。異様な影で表現される“下手人”。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-09 21:04:04)
255.  ニーベルンゲン 第II部 クリームヒルトの復讐 《ネタバレ》 
二部から先に見て欲しいくらい。というか、二部の方が面白い。 亡き者の墓の前で建てられる誓い、フン族の王たちの蛮勇を利用する計画、黒衣は復讐の決意。普段は傷を負った兵士たちを励ますが、瞳の奥には復讐の炎を燃えたぎらせる。  従者が見てしまった真実、クリームヒルトもそれを見届ける。雪の下の土に眠る“愛した人”を布に包む。遠景で一行が去っていくショット、娘の決意を黙って見送るしかなかった人々の辛さ、楽器を城壁に打ち付けて憤りを表す。  出撃して突っ走る軍隊の疾走感。木の上から飛び降り、馬に乗り換えて迎う伝令のスピード。木の周りを裸で踊る子供たち、彼等に金を振る舞う兵士たちの気前の良さ。 蛮族の前で堂々と屹立するクリームヒルトの存在感!それを迎える蛮族のダンス。  ラスト50分、修羅場と化す酒宴。 密かに渡される武器、合図と共に切りかかる!弓矢の一撃、斧の投擲、二重三重の悲劇。 死者を弔いながら行進する人々、凄惨な殺し合いはエスカレートしていく。何度も押し寄せる群衆スペクタクル、死者を弔う暇もない、焼き討ち、パニックになり当たった矢を1本1本抜く姿。既に火はまわっているのに。 階段を駆け下り、崩れ落ちる瓦礫にまきこまれ重傷を負う者、燃えた瓦礫の中に消えていく戦士たち。滅びを見届ける演奏者。死者へのレクイエムは、阿鼻叫喚の地獄の中でどれほどの人間に届いたのだろう。サイレント映画だからこそ、その想像を掻き立てられる。 門の前で“待伏せて”いた男の一撃、“首”が無言で語る絶望・・・!
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-09 20:59:04)
256.  善き人のためのソナタ 《ネタバレ》 
00年代、実際の出来事を“告白”でもするかのようなドイツ映画が複数撮られた。 一つは「ヒトラー ~最期の12日間~」によって戦時中を、 もう一つはこの「善き人のためのソナタ」によって戦後の闇を告白するように。  冷戦時代の尋問というとリシャルト・ブガイスキ&アンジェイ・ワイダによる「尋問」を何故か思い出した。 「尋問」は監視者が監視対象だった者から“証拠”をでっちあげ、自分のテリトリーに引きずり込んで散々痛めつける事で屈服させようとした。 この映画は、監視者が監視対象から“証拠”を引きずり出せるか出せないかという過程を追っていく。疑はしきは罰せよ、何かされる前に先手を打たなければならないという恐怖。 この二つの映画に共通する事は、一人の女性が他の人間のために“犠牲”になる事を選ぶということ。  劇中でも引用されるベルトルト・ブレヒトの存在。 ブレヒトもまた戦時下のナチスに反撥してフリッツ・ラングと組んだスパイ映画「死刑執行人もまた死す」を発表している。 ラングのこういった映画の女性たちが活き活きとしていた事に比べ、この映画の女性たちは観客の感情移入を許さないような深い闇を背負っている。   廊下、腕を捕まれ連れてこられる“監視対象”だった男。男の声からテープレコーダー→現在→過去を行き来する。 疲弊していく男の表情を知るのは立ち会った本人だけ、声を聞いて当時を想像するのは生徒たち、そしてこの映画のスタッフたちだ。 椅子に付着した“匂い”、涼しい顔で男を言葉によって弄り続ける男。教壇に立つ男は、自分の過去を隠すことなく、生徒たちに教えていく。きっと同じような“告白”を何度も繰り返してきたのだろう。  劇場の鑑賞会から既に監視は始まる。上からの視点・パンフレット。 標的の家に慣れた手つきで黙々と盗聴器とカメラを仕込んでいく。ありとあらゆるところに。 その監視者を“監視”してしまった者の視点。  この映画の監視者は、勝手に疑い、勝手に同情し、勝手に揺さぶられ、勝手に自分を緊張状態に追い込む。監視されている者は何も知らないし、生を謳歌している。知らない事の不幸・幸福。妻の隠す真実にすら中々気付けない。妻と楽しんでいる間も、情報は絶えず流れ続ける。 勝手にピアノの音色に心を打たれてしまうのだから。男の葛藤が表情一つで語られ、その音楽は監視される者たちの“抵抗”の証になっていく。 人の出入りが少ない“仕事場”で画面や針、タイプライターとにらめっこ、ヘッドフォンの音に耳をそばだてていなければならない。そりゃあ監視対象に興味を持って退屈しのぎもしたくなる。ハイタッチする気分でも無くなってくる。エレベーターで子供とおしゃべりをする一時、暇な時は豊満な情婦と楽しい一時でもせにゃやってられない。豊満なバストに顔をうずめても何処か満たされない様子。そりゃ監視者は人妻の方が気になるし、情婦とも真に仲良くなれない。偽りの愛だ。  その監視されている者たちが、監視者を意識し、恐怖し、反撃に出る瞬間の恐怖。スパイのように潜り込む男たちも、いつ監視者側を裏切る・・・いや表返るか解らない。 ケーキの下の“武器”、盗聴器への“祝杯”は監視者への宣戦布告。  監視者の存在を知りながらドアの鍵をかけない。床下の“武器”の存在を偽らないのも妻を信じていたから。 妻も夫を愛していたからこそ“言わなかった”し、“躊躇”しなかったし、耐える自信も無かった。監視者との決定的な違いがそこにあった。 床下を剥がす瞬間に奔る緊張。  一瞬映る新聞が物語る“終焉”、それぞれが失った物の大きさ。  ラスト20分は真実を知っていく者たちの顛末。 コードを引き抜く力なき姿、表情。大量の書類に眼を通し、人々の告白でも聞く様に読み進める哀しげな表情。  そこには互いを探り合った憎悪ではなく、直接会って語り明かす事のできない哀しみだけが横たわっている。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-09 20:56:24)
257.  ゴーン・ガール 《ネタバレ》 
クソ女vsクソ男によるハイレベルなギャグ映画 デヴィッド・フィンチャーによるまったくもって頭にくる実に不愉快な傑作です。キャラに殺意を抱いた映画は久しぶりだ。こういうフィンチャーを俺たちは待っていた!復活じゃー!  冒頭で女の頭をなでる男の視点。「頭蓋骨」というワードが出てくる時点で既に異常さが漂い、観客を揺さぶりはじめる。 バーの棚にたまったパズル、文字通りのグミ打ち、グラスがカウンターの上を流れると同時に過去へ。 男の回想の次は女の回想。このクソぬるい馴れ初め話で観客のイライラを高めていく。「セブン」の簡素さとは正反対だ。殴りたいほど素敵なクソ夫婦ですね。  人生ゲーム 窓ガラスが物語る事件の匂い ところどころに付着する血痕。 長年一緒に暮らしていた筈なのに妻の事をよく知らない男 妻が消えたというのにこの冷静さ。男も男だった。残された手紙の謎。  図書館「表に出ろクソカップル」  メディアリテラシーに踊らされる民衆、ニュース、Twitterであっと言う間に波及していく。  「笑って」で笑えるワケがな・・・って笑っているし( ゚д゚)。 「俺が嫌いでしょ?」 俺ら「当然だよ」  妹さん、もっと言ってやって下さい。 「女に批判されるのは不愉快だ」 黙れヤリチン野郎!何回S●Xしとんじゃわりゃああああっ!!この男がグラスを割ったところで俺の腹筋も崩壊した。  スイーツ(笑)「素敵ね」 まとも「キモ サイテー」  うおああああ!これが後44分も続くと思った時の恐怖は無いぜ!  ところが、後半はこのダメ夫たちとクソ女によるどちらが先に制すかという駆け引きで面白くなる。  アイドル(偶像)を追いかけまわす群衆の恐怖。 クソ完璧な女を演じるアメイジング・ファ●キン・サノバビ●チ・エイミー。アソコも「ザ・ワールド」! ノエル涙目。  「クソ結婚する」 「君のアソコは世界」 なんて素晴らしい訳なんだ。松浦美奈さんには心から敬意を払いたい。  そしてありがとうDQNカップル。どうか末永く爆発してくれ。良いケツしてやがったぜ。スカートをまくるイタズラに笑顔で応えるのは、二人の関係を暗示していた。 金を奪いやがって酷いだ?いいや慈悲深いぜ・・・指や腕をへし折ったり顔面を粉砕したり殺さなかっただけな。殺されなかっただけありがたいと思うんだな。  監視カメラすら利用する計画殺人はデジーの狂気すら凌駕する。デジー逃げて超逃げて。  弁護士のオッチャン、もっと笑ってくれ。   手のひら返しする人々、血まみれで登場する“アイドル”、音楽自重wwww嘘をつくな嘘をwwww  エレンのクソBBAも死ね。氏ねじゃなくて死ね。  マーゴが可哀想だ。デジーはコイツら殴っていいぞマジで。  ロングショットで薄気味悪い笑みを浮かべる女の顔を。殴りてえー。頭蓋骨カチ割りてー。  だから音www楽www自www重www やめろ!二度と観客の前で脱ぐな!てめえの裸体なんざ見飽きたわ!マーゴの美乳おっぱいの方が見たいわ(意味不明)!!!  冒頭で頭を撫でていた男の視点で、この映画は終わる。男は、妹を守るためにこの女を“受け入れる”しかなかった。  クソ完璧なアメイジング・ファッ●ン・サ●バビッチ・アス・エイミーは、「ゾディアック」と同様に野放しにされる殺人鬼なのである。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-08 21:24:31)
258.  ゆれる 《ネタバレ》 
ブラックコメディ「蛇イチゴ」のにおける素晴らしい馬鹿馬鹿しさと比べると、この映画は狙い済ましたかのように「ゆれる」映画である。 カメラそのものまで大袈裟に「ゆれる」。複数の人間の視点で観客の心も「ゆれる」。何が真実で何が嘘なのか。あるいわ・・・。 超極端に言えば、西川美和は観客を「騙まし討ち」にする事を予告している。その騙まし討ちを楽しめるか楽しめないか。 俺はその騙まし討ちを楽しんでしまった者として、この映画の感想を書いていきたいと思う。  細部のこだわり(照明や心理描写など)に思わず眼がいってしまう。 台所の流しに注がれる水、酒の一滴、ビールを注ぐ、ペットボトルの水、ホース、シャワーの、吊り橋の下の激流の“音”。 猛は女と接吻をして家を出て行くが、彼女もまた猛のフレームに映される“仕事仲間”の一人に過ぎない。  年代物の車を走らせて寄るガソリンスタンド。そこで出会った女と意味あり気に視線を交え、サイドミラーに写される女の表情を確認して男は去っていく。そこで観客は二人の関係を何となく察する。  葬式に普段どおりの格好で現れ、父親は詰り、猛もまた父親を詰る。それを止める兄の稔。稔はいつも耐えて耐えて耐えている。家族のために。  猛と女は再会してすぐに性交できるほどの“仲”。 ベッドで弟が情事を楽しむ間、兄は黙々とトラックにオイルを注ぐ。まるで弟あるいわ女に嫉妬するようにその場面を挿入してくる。トラックが微妙に上下している様子も気になる。  男が去った後、独りで男の煙草の匂いを嗅ぐ。残されたトマトが暗示する食事を食べたか食べなかったのか、そして二人の関係。  渓谷へのピクニック気分。 バックミラーに光る男女の顔。嫉妬、本音。 普段はヘコヘコ、その鬱憤を大自然で開放する稔。あるいわフリをしているのか。   渓谷にかかる吊り橋の上。その上にいるだけでサスペンスは起きる。閉鎖的空間の息詰まる雰囲気。ボロボロの橋、激流、幼い子供のように服を掴む挙動、怒声。  目撃者は独りだけ。しかもファインダーでなく肉眼だけ。その男の視点すら直後には明かされない。ただ橋の上に残った者に対する対応だけが描かれる。真実を語るのは手の傷だけ。 写真家は見ていたにも関わらずだんまりを決め込もうとする。 静かに励ます男、流れてくる靴、庇い過ぎる者への疑念、シャワーで亡き者を思い出し、汗と涙を洗い流す。封筒の報酬は前払い。  死に追いやった疑いのある人間を憎むどころか、むしろ殺されるような人だったの?という疑問つぶやいてしまうような母親。 弁護人同士の舌戦も、二人にはどうでもいい事なのだろう。 スーツの正装は初めて自分を出すために。  過去を物語るのは8mmフィルムだけ、それを見て今まで冷淡だった者が、過剰なまでに感情を揺さぶられて泣くのである。ここまできて観客の心を揺さぶるのか! 後悔し、全力で車を走らせる者の表情の出る“本音”、それに笑顔で応える者の表情は本音だったのか、それとも・・・。最後の最後まで謎を残す。そこに俺は惹かれる。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-08 21:11:01)
259.  誰も知らない(2004) 《ネタバレ》 
人によっては「歩いても 歩いても」や「空気人形」の是枝裕和を選ぶ人も多いかと思う。だが、俺はこの映画の異様さにこそ惹かれる。  餓鬼が嫌いって奴は、テメエが小さい餓鬼だった頃も忘れちまう。この映画は、それをすっかり忘れた大人たちに振り回される子供たちの生き残りをかけた姿を追っていく。  冒頭からこの映画の異様さを目の当たりにする。 電車、夜、車内の椅子に座る虚ろな眼の少年。ボロボロの爪と服、夜の町。  そこからアパートを仲良く歩いてくる“影”に切り替わり、少年の過程を描き始める。 家族はバラバラのルートで来る。荷物を人のように撫で、カバンの鍵を外すと中から子供が笑顔で出てくるのである。 せまい鞄に押し込められ、まるでペットのように。 階段を走る姿の“元気”さ。この頃は荷物を一緒に運ぶほど仲も悪くなかった、髪をとかす親娘。そういやYOUってマジで歌手だったね。  ただ、子供とはいえ女の一人旅。再会するまでずっと一人で来た。娘の、家族の疲れた表情を少年は見る。  アップの食事場面、子供一人一人に語りかけるような、別れでも言うような視線。 ああ、この女を子供たちを見捨てる。そういう嫌な予感が、緊張が最後まで張り詰める。孕ませた張本人の父親はどっかに行っちまい、母親は一人で子供を育ててきた。この女のストレスも限界だ。 子供のために働いてきた仕事は、唯一子供の面倒を見なくてもいい捌け口・快楽にもなっていたのだろう。  母がいなくても逞しく子供たちは家事をこなしていく。公園での洗濯、風呂、家事手伝い。  それでも中々整理されない箱に入れっぱなしの荷物など、子供たちは限界を目の当たりにして徐々に押しつぶされていく。 バイトやパチンコをしようにも年齢という壁が行く手を阻む。 窓の外の家族へのあこがれ、寂しさ。雨、帰らぬ者の存在、子供が見てしまったタクシー。  寂しさをまぎらわすように一人でキャッチボール、少年も他の兄妹も学校へ行きたい他の人と遊びたい、親に自分を見て欲しい。  生活力を身に着けていく子供たちのサバイバル、周りの人間はその逞しさを“嘲笑う”。直面しないと誰も解ってくれない。誰も知らないのだから。 警察に話してバラバラになる事への恐れ、引っ越しの時からバラバラできてるのだから。バラバラになって生きる可能性よりも、一緒に暮らして死んだ方がマシと思っていたのかも知れない。  大人たちは、犯罪を犯した子供を初めて“見る”。今まで無関心だったのに、監視カメラと子供の顔を覚えていた大人だけは“見ていた”。  時折聞こえるアニメの音声(「地球防衛企業ダイ・ガード」?詳細求む)、ゲーム(「ドラゴンボール」?)、少年たちが立ち読みする雑誌は何なのだろうか(「週刊少年ジャンプ」?)  10円の例に札束を無言で渡す優しさ。  迷う手、子供にすら打ち明けられない孤独、目と目で解り合う孤独な人々、請求書は絵を書く紙になっていく。見て見ぬフリ。  普通の子供たちは変わっていくが、彼等は変われずにいる。赤い血のような口紅。  冷麦、大量のカップ麺、おじやと同じような食事の繰り返し。部屋を綺麗にする気力もない。   それでも食卓で夢を語り合う子供たちの眼にはわずかな光が残る。 階段を競争する元気、公園の遊具(グローブジャングル)を廻して遊ぶ元気、フラフラでも野球に参加してストレス発散。  冒頭で親と一緒に歩いた大きな影は、真実を知って独り寂しくトボトボ歩く小さな影になっていく。 飢え、とうとう電気も水道も来なくなる、TVの光は消えてラジオの音に、虚しい“お年玉”。  落ちる植木、カップ麺で菜園、流星のように連なるモノレールの光。  揺れる椅子の恐怖、初めて介入した第三者。興味本位か同情か。少年は彼女の姿に自分たちを捨てた母親の面影を思い出す。 軽蔑した筈の者と、優しくしてくれた者が重なる瞬間の戦慄。少年は彼女に母親と“同じ”になって欲しくなかった。  “ちゃん”と“へ”の違い、髪も伸び声も変わる、歩きながらゲームの真似。  少しずつ助けてくれる大人、とうとう大家も登場(でも登場するだけ)、“成長”した事に気付き震える泥まみれの手、泥だらけの服、涙。  ラストは彼等の眼に再び光が宿り、希望に向かって歩むような期待を抱かせる。だがモデルとなった実際の事件を知る者には、あの後姿に絶望を感じるのである。  どうでも良い話、ダイハツのCMで柳楽優弥とYOUが再共演したやつを思い出した。「誰も知らない」の事を思い出しちゃってかなり複雑だった(二人とも良い笑顔だこと)。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-08 21:10:25)(良:2票)
260.  歩いても 歩いても 《ネタバレ》 
「誰も知らない」と比べると、その穏やかすぎる雰囲気に驚く。YOUも毒が抜けて浄化されてしまった感じ。毒のない人物ばかりでちょっと退屈だった。 「花よりもなほ」も最後の“笑顔”を見るまで我慢するような映画だったが、この映画もあの海辺のシーンを見るまで我慢するような感じ。 夏場に田舎の祖父のところまで行く過程、過ごす雰囲気とかは好きなんだけどさ。 小津安二郎の映画にも通じる雰囲気。その雰囲気に共感を覚える者は多いのだろうが、俺はあまり共感できなかった。 のぼったり、おりたり、とにかくゆっくりと歩く映画だ。電車、バス、階段。  荷物を持ってもらう事よりも、父親を名前で呼ぶことをお願いする母。 でも「どっちか持とうよー(怒)」  歯磨きの場面は「誰も知らない」といい、是枝裕和の作品で幾度も挿入されてきた。 野菜を切る音、てんぷら、風呂場の割れたタイル。  子供たちの会話、夏休み、食事。割ったスイカは見えない。じいさんを動かすのは“音”。 写真に作文。ぼやける絵、遠目の写真。当の本人とって、自分の思い出はそれほどぼやけてしまっているという事なのだろうか。  窓ガラスに映る顔、遺影、ドアから出て遊ぶ子供たち、孤独でいたい爺さん、祖母の声をさえぎる子供の声、手で孫を誘う祖父、祖父を睨む父親(息子)。 家族の甘さに対する苛立ち、本業なのに相手にしてもらえなかった苛立ち。取り残されていく苛立ちと哀しさ。 それに対し妻は「ブルーライトヨコハマ」を懐かしみ、蝶を追って呑気ささえ感じさせる。   成長した息子と卒塔婆の数。大体それだけで事情は察する。ナレーションはいらない。 寂しいエンディング、そして天国でも暗示するかのような階段。 バスが去り、静かに坂を上り始める夫婦。  初めてハッキリ映る“絵”、意識する幼い頃の記憶の断片。  蝶、船、影、終盤やっと出てくる海・・・。
[DVD(邦画)] 8点(2015-06-08 20:17:51)
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