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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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261.  転々 《ネタバレ》 
三木聡は「亀は意外と速く泳ぐ」も面白かったが、この犯罪の匂いがたちこめる、頭空っぽで楽しめる愉快なロードムービー&コメディも好きだ。  まずファースト・シーンからして面白い。 後ろから来た黒ずくめの男が、いきなり部屋の中の男の口に自分の靴下を突っ込む!その口に突っ込んだものを履くなwwwww  借金返済に与えられた3日という猶予、喋らない岸辺一徳、ジャギ→ジャイアン。 その辺をブラブラと歩いて談笑、ちょっとした事件に巻き込まれる、何時の間にか仲良くなる楽しさ、面白さ。  ところどころに笑いが転がっていて楽しい。  募金に対して「何で?」と思わず聞いてしまう。自分の身がヤバいというのにどうして他人に金をやらねばならんのか。 解っていても公の場で中々口にできない。でも思わず心の声が出てしまう。  靴ひも→鍵→鞄の中身は大金だと思った?残念俺だよっ!! 「人を尾行るのは面白いよ(ゲス顔)」 食虫植物に捕まったも同然。ワケあり借金取り、文字通り旅は道連れ(あの世行き)。  恋人たちとしょっ引かれるホームレスの対比、串をヘバりつける、落ちたオレンジをちゃっかり猫ババ、被写体を追うカメラ、ラベルで即興。 「歩道を自転車で通ってんじゃねえっ!!」  必殺ベル外し&車のオッサンも酷い二連コンボ。BBA涙目  崖の匂いって何だろうね。ダイナミックセクハラ。  福原「解せぬ」  性分(タチ)、サッカー、神社 理不尽キック、女房の自慢話、理不尽コイントス、バカ息子とラーメン屋、みんな家庭がうまくいっていない奴ばかり。  こんなとこでごゆっくりできるかっー!  OL軍団、思い出なんて大嫌い、畳屋との死闘、「コスプレに年齢なし」、つげ義春「訴訟も辞さない」、残念コスプレは吉高由理子とチェンジで(吉高由理子がコスプレで登場すると思ったのに残念)。  ワニがいたら食われたい、ヤバいと解って応戦、月光変態仮面、美術家気取りの女、絵上手いね・でもちょっと待て、黒人のオッチャン涙目、ゲリラライブを演り慣れたギタリスト、警官「チッ」、何故か真似るオダギリ。  占いとバッタリ、ポスト「何だおまえは」、とんかつ茶漬け喰ってみたい、武闘派時計屋との死闘、立てつけとの闘い、トラックに飛び乗る謎のスリル、ハンガーで首を回す、うがいを飲むな。  ガラスに映るシルエット、女もパンツ一丁でキャーキャー走る(吉高由理子の尻!)、すき焼きとマヨネーズ、飯を食いたくなる家族団欒の空間。  ジェットコースターと記憶の中の真実、並木道を2人で歩いていく。  「私は若返りたくないんですよー」のやり取り。  優しい目で語りかける「じゃあな」! この男は本当に“やった”のかは最後まで明かされない。一体何がしたかったのだろう。そこが面白いし好きだ。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-08 19:27:56)(良:2票)
262.  かもめ食堂 《ネタバレ》 
この映画の大らかさが好きな人は、きっとカウリスマキの大らかさも好きになってくれると思う。 ただ、カウリスマキがフィンランドの町並みから社会の底辺や人々の闇も捉えるのに対し、この映画は太陽の光を注ぐように明るい、何処か陽気な雰囲気を終始貫く。  水のイメージとカモメたちのイメージから始まり、一人一人客が増えていくように、徐々にハマッていく作品だ。  地を歩くカモメ、かもめ、かもめ、かもめ。  ガラガラのレストラン、窓を隔て、女の耳に御夫人たちの噂は入ってこない。  客も来ないので居眠り、一人で泳ぐ、日課の合気道・・・よく一ヵ月も持ってたのが不思議なほど暇そうな顔で登場してくる。  「ガッチャマン」の歌を通じて出会う様々な人々、ニャロメを着た青年。頭から歌詞がスッと出てこず、止まる指。それが奇妙な巡り合わせで再びペンが入っていく歌詞。 歌が繋げる。   渋いオッサンのコーヒー講座、ちょっと怖いかもめの絵(「ムーミン」風?)、久々に食べる故郷の味に泣く、 アラスカ、タヒチ、ハモる女二人の談笑、森で花摘み、おにぎりを食べ、それを珍しそうにじっと見つめる人々。  ターヤ(Tarja Markus)のエピソードが一番面白かった。 無言でいつも店を睨み、入ったかと思うと無言で盃をグイッ、無言で見つめ合う。お?イメージ通り酒も強いのか?と思った瞬間にバッターンと倒れる。 胸にためこんでいた思いを打ち明け、帰らぬ夫の事を想いながら藁人形に釘を打ち込む。夫のTVも視界も砂嵐状態。  人魂のように揺れる電灯、サングラスで休日を満喫。ターヤもスッキリしたのか、大分女性らしい格好に。  泥棒を合気道で打ちのめす場面。この映画で唯一と言ってもいい対人へのアクション。しかしそれでもっと大きな事件が起きそうで起きない、この緩さ。  赤ん坊のようにコーヒーメイカーを大事抱きかかえる、黄金のように輝く花。  食堂もプールも孤独ではなくなった彼女の姿を映して物語りは締めくくられる。
[DVD(邦画)] 8点(2015-06-08 19:23:07)
263.  ソウ 《ネタバレ》 
最初この映画を見た時に感じた嫌悪感は何だったのか。 餓鬼(中坊)だった俺はジグソウのクソ野郎に殺意を覚えたこと、 低予算とか触れ回る割には編集技術の高さとか演出に「低予算」という説得力を感じられなかったこと、 BGMがうるさすぎて俺の中でしばらくギャグ映画という位置ずけになってしまった事。 というか、映画は本来低予算が当たり前だ。 ハリウッドも低予算だからこそディティールとかシナリオ、演出、俳優で勝負していた。 それがいつの間にか金を無駄にかけ時間も無駄に長くなり、低予算のB級的感覚を持った映画を白眼視する馬鹿が増えて“珍しく”なっただけに過ぎない。 クリント・イーストウッドとかスピルバーグとか、今でも想像より遥かに安く早く面白く作っている。それが当たり前の事だったからだ。 だから、ワンによるこの映画もその辺のA級を自認する退屈な文芸映画よりも遥かに面白い。 それは再見してその面白さに気付く事が出来た俺が保障しよう。 この映画を見直そうと思ったのも「死霊館」の面白さに感動したからだし(「死霊館」の方が俺は好き)、短編の「ソウ」に心を打たれたからだ。 ただ、短編の得体の知れないクソ野郎に振り回されるというのが最大の魅力だった筈なのに、この映画はクライマックスであっさり謎解きをしてしまう。 短編のエピソードは“影”だけで表現されていたのに対し、この映画ではガッチリ描写される。この場面だけでも短編より金かけているよね(面白いから別に良いんだけどさ)。 ほっぺがクルクルパーの人形とか、長編で思う存分殺りたい放題。白人も黒人も黄色人種も一人ずつ確実にブッ殺されていきます。 闇、水の中の男の顔、ハッキリしない暗い部屋、突然電気がついて明るくなり、この部屋が密室だという事が分かる。互いに素性をよく知らない、鎖に繋がれた二人の男、それぞれに与えられたヒントと“鍵”、中央に転がる“痛々しい”男、握りしめられた拳銃、画面の向こうでふんぞり返るクソ野郎の存在。 しばらく闇の中にいて突然明るくなるのだ。眩しさでしばらく眼を開けられない。 ポケットの中のヒント、レコーダー。 最初のうちは二人とも鍵を共有する精神的な“余裕”があった。試行錯誤を繰り返して先に進もうとするが、謎のメッセージに踊らされる二人。 トイレに手を突っ込むとか色々キツすぎる。画面の向こうのクソ野郎に弄ばれ、徐々に恐怖が苛立ちに変わっていく二人。そこに与えられる“鋸”。最初の15分は前に見た時より楽しめた。 そこに回想だけならともかくジグソーを追う外の人間やら凶悪犯との追走劇やら、別の映画で見たかったアクションばかり入ってくる。 それで外の人が頑張って犯人を…と思ったら実は!というのが狙いなのは解るけどさ…なんかねえ。 回想の処刑ショー、早回しで恐怖を強調するのはヒッチコックの「裏窓」を思い出す。 写真でゾッとする瞬間、ビデオのヒント、複数の赤い布、カメラのフラッシュで照らす、明かされる真実。二重三重の罠。 そしてああやっぱり音楽のせいでギャグ映画に。そもそもシリーズ化されている時点でギャグ映画確定じゃありませんか。 頑張れオッチャン!頑張れママ!父さんも脚をオープン・ゲットして今逝くぞー!顔面蒼白すぎて泣いた。 ジグソウ「地獄でまた会おうぜっ!」ガッシャーン 何でこんな奴に説教されなきゃならないのだろうか。まったく頭にくるほど面白い映画だ。  ・ソウ(短編) 俺は長編よりも、長編の元になった短編の得体が知れない恐怖の方が好きなんだ。 様々な不協和音が響くオープニング。 机で向き合う男が二人。警官と憔悴した謎の男、警官が男から事情を聴く。 捕えられるまでの記憶、捕らわれた後の記憶の中の恐怖。弄ばれる苛立ち、生きるために一線を越えなければならない葛藤。 鍵を得るための作業が“影”で演出される巧さ。この時点でジェームズ・ワンはズバ抜けた何かを持っていた。 帽子を被る人形のウザさといった。 この短編の内容は長編版「ソウ」において、別の人間によって繰り返される。こんな面白いもの、反復したくもなるぜ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-07 15:50:29)
264.  ミスティック・リバー 《ネタバレ》 
ラスト30分の畳み掛けを見るだけでもこの“復讐”の物語は傑作だという確信しか俺は持てないのです。  「チェンジリング」の母親の赤い唇、「ミスティック・リバー」の男に情報を提供する謎の女の赤い唇。  町、家々、男二人の談笑、路上でホッケー、セメントに刻まれる名前・・・楽しく遊んでいた子供たちを引き裂く謎の男。  子供たちに立ち退くように言い、屋根を叩き、乗るように強制する。後ろに座っている男が座席の少年に不気味な笑みを送る。 友人二人は見守るしかなかった。何も出来なかった悔しさ。セメントに刻まれた名前だけが真実として残る。それを成長した“子供”が再び目撃し、思い出す。このファースト・シーン。 漆黒の闇、密室、森、不協和音、逃げる子供、文字が刻まれたまま固まるセメント、時間経過。  時を超えて同じベランダで語り合う2人。 煙草に火をつけようとした時、話しかけられて火をつけ損なう。椅子に腰かけ、男二人で語らい合い、心情を打ち明け、静かに泣く。 大の男が度々泣くのだ。そこには人間の弱さ、脆さも刻まれている。  車に女が入ってきた瞬間に不意に手が、イタズラをする彼氏、それがあんな事になるなんて・・・。  バーのカウンターの上で踊りだす女 洗礼と事件の対比、受け入れたくない娘との“再会”。  いきなり負傷して帰ってくる夫は女に泣きつく。女はそれを優しく迎え入れる。 いやいや怪我してんのに情事に入ろうとするなwww旦那を殺す気かwww その夫が、後に泣く妻を優しく抱き留める。  地道な聞き取り調査、現場に踏み入ろうとする人々、父親のどうしようもない嘆き。  電話の向こうにいる赤い唇の女。その次は“影”で、観客だけにその存在が予告される。  残された写真の数々、雨が降る外、暗い部屋の中で激しく移動、亡き者の前で苦悩し、服を捧げ“仇討”を誓う。それが取り返しのつかない“過ち”だったとしても。家族を思うが故の狂気、暴走の悲劇。  バーの酒。既に注がれたグラスが幾つもあるのは男を酔い“潰す”事が決まっているから。4人目が来てから空気が変わる。  このラスト30分の加速の素晴らしさ。 少年たちの方も決着がつく。屋根に隠されたもの、少年たちを待伏せる者、ドアがいつ開いて他者が入ってくるのかという緊張。 闇の中で炸裂する暴力の恐怖、ナイフの切っ先の鈍い光。 二つの現場が交錯し、カットが徐々に短くなっていき、複数の視点が一つに収束していく事でより緊張を高める。 拳銃の閃光が曇り空の朝へと移る・・・過ちを犯してしまった男の心は晴れない。髪を乱してうなだれる。 再び現れる赤い唇の女は何を語るのだろう。  友人とはいえ、事情はどうあれ、それを黙って見過ごすしかない男のやり切れなさも何ともいえない。  すべてが終わった後の情事、海、パレード・・・「俺は忘れないからな」と指の“銃”で男を指す者の視線の冷たさ。それを甘んじて受け入れる男の表情。 後の「グラン・トリノ」では、その指の“銃”がすべての決着を付ける引き金になる。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-07 15:41:36)
265.  チャップリンの給料日 《ネタバレ》 
工事現場で働くチャップリン。下から放り投げられたレンガを上で見事にキャッチしまくる。 工事現場のリフトが絶妙なタイミングで上下する。それはチャップリンに食事を運ぶため。 カステラ?とフランクフルトのサンドって美味いのかしら。  笛の音でキッチリ作業を止める。後の「モダン・タイムス」にも繋がるような描写。  夫の給料が心配で見に来る恐妻。黙ってついてくる怖さ、ごまかしがバレる。嫁怖ー。フィリス・アレンのインパクト。  下水に杖を吸い込まれる、落ちるようで中々落ちない名人芸、たむろには水をぶっかけろ、たむろも傘で応戦。  死なないのはギャグ補正、酔って傘と杖を間違う、吊革とソーセージを間違える、バスが来た瞬間に待ち伏せでもしていたかのようにブワ~と登場する群衆に弾かれる。  靴も猫も飛ぶように去っていく、やっと寝られると思ったら朝になってしまい仕事場へ。トホホ・・・。
[DVD(字幕)] 8点(2015-06-07 15:38:39)
266.  別離(2011) 《ネタバレ》 
我々は一体、イラン出身の傑作を何本見逃し、何本過小評価してきたのだろうか。このアスガル・ファルハーディー(アスガー・ファルハディー)の「別離」は、そんな日本人の意識を変える抜群に面白い傑作の一つになるだろう。  スタートダッシュから言葉で殴り合うような素晴らしい冒頭5分間。 男女の身分証、様々な免許、パスポートをコピー機?が読み取っていく。 頭を覆う布を投げ捨てんが勢いで質問に答える男女。激しい口調で夫婦喧嘩。幾度も交わされる“おはよう”、みぶりてぶりを交え、男は前に出されサイン、女もサインをする。  シリアスな題材ながら何処かユーモラスさえ感じる男女のキリキリしたやり取り。特に女性の撮り方! アッバス・キアロスタミの傑作群にも参加したマームード・カラリのキャメラワークも功を奏している。 口舌の刃で彼女たちは斬り合い・・・いや鉄の塊で叩き殺して黙らせてやりたい気分だ。口論とは時にそういう感情も無意識に抱かせる瞬間がある。そんな表情をクローズアップで見逃さずに撮っている。その感情は徐々にエスカレートしていく。  荷物を鞄に詰めるが、イライラして中々閉まらない。  老人の介護疲れ、夫は仕事で介護から“逃げている”。あろうことか、それを家族ならまだしも他人の女に“押し付ける”始末。 俺だったら遺書を先に書いて「呆けたらさっさと殺して、保険金にでもしてくれ」とでも言っておくかな。こんな状態見ちゃうと。だってじいさんはされるがまま、口をもごもごさせるのみなんだもの。傍観者さ。その傍観者をめぐって家族に亀裂が入っているのにね。 流通するケータイは他の国の“使い古し”、子供たちは布を自由に取るが、大人の女性たちは頭の布にでも拘束されているかのよう。  ランプの上に隠された鍵が事件を起こす引き金にもなる。  ブラックなやり取りも多い。 女はドアを開けて出ていく、男がドアを閉めるとすぐにインターホンを押して帰ってくる。あるある。締め出しても合鍵で“侵入”。あるある(多分)。 娘と父親の階段での競走、酸素呼吸器で遊ぶ娘。じいさんを殺す気かwww無邪気って怖えー。 腕と脚に鎖をした男、不気味に嘲う、娘は怯える。 駆け出す女、老人の徘徊、車に轢かれないかどうかで冷や汗、 家族は楽しくゲーム、女は介護疲れで汗をぬぐう、バスの中でフラつく、一人黙々とゴミ捨て。  そんな女の苛立ちが積もりに積もり、事件は起きる。 バックミラーで娘を確認しての帰宅、いつもの“鍵”がない衝撃、ドアが開かないのは事件の匂い・・・サスペンスフルに描かれる。  「何故こんな事をしたっ!」 夫たちは娘たちを部屋の奥にやる、夫にとっては大事な父親、でも女には赤の“他人”。確かに介護を引き受けたのは彼女だが、男の無責任さにもハラを立てたくなる。 あれだけ近くにいて、男は本当に何も知らなかったのだろうか。  父を洗いながら一人静かに泣く。 家族が崩壊していく事、父がこうなってしまった事に対して何もしてやれなかった・・・様々な苦しみが男を襲う。  病院では口論の末に拳が飛び交う喧嘩になりかける、窓を叩き挑発、目の痣が生々しく残る女性。冒頭の罵り合いもこうなっておかしくない空気だった。 第三者が“監視する”前では口舌の刃で斬り合う。叩き斬ってやる、叩き殺してやるぞ、と。ドアに頭突きをかますほどの苛立ち。 感情を抑えきれずブチ切れ、女に手を出した事を思い出したかのように、空を切るように拳を振りまくる、女もガードするように拳をバチバチ弾く。   娘の車の助手席から見守るような視点。娘たちは傍観者に過ぎない。その傍観するしかなかった娘たちが、クライマックスの突破口を開く。見てしまった真実を、あるいわ嘘を話さずにはいられなかった。  階段でのやり取り、じいさんの窮屈そうなネクタイを取ってやる夫の優しさ。その優しさを妻や娘たちにもっと向けられていたら。  車で女を追う一瞬、クラクションで呼びかけ、女はサングラスをかけて“取り合わない”、他の車に衝突しまいかとハラハラする。  父の元を去っていく娘たち、母親、兄妹、“女”たち。独り寂しくうなだれる父親。 女と男を隔てる壁はない。そこには見えない“心の壁”が二人の間に横たわっているのだろう。エンドロールの“壁”が上がりきるまで、二人はどうなるのかという事が最後まで気になってしまう。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-07 15:33:38)(良:1票)
267.  亀も空を飛ぶ 《ネタバレ》 
バフマン・ゴバディは「酔っぱらった馬の時間」も凄かったが、「亀も空を飛ぶ」は圧倒的だ。  まず冒頭の強烈さからして引き込まれる。 風、曇り空、水面、下を向いて歩く崖の上の少女、すべてに絶望したような眼差し、その少女に向かって叫ぶかのように始まるオープニングの歌、そして亀の甲羅が映し出され、物語は彼女が崖の上に来るまでの過程を描きはじめる。彼女は崖下に飛んでしまうのだろうか。それとも・・・。この断崖の少女は、劇中度々映される。  戦争で大人たちは混乱し、子供たちは大人に頼る事なくたくましく生きている。戦災孤児たちの表情の凄味、活き活きとした様子。片足が曲がっていても松葉杖でヒョコヒョコと歩く姿。 TVを見るために率先してアンテナ組み立て、大人も巻き込む叫んでの演説、砲弾の薬莢が山積みになったゴミ捨て場を散策したり、地雷の撤去に精を出したり、銃を買出し土嚢を積んで射撃訓練を行ったり。  草の上に立てられるアンテナがもたらすアメリカの情報。異国へのあこがれ、自分たちをここまで追い込んだ張本人たちへの憎悪、恐怖。  そんな彼らの前に、冒頭の少女が姿を現す。彼女は夫のように両手を失った少年を連れ添い、背中には幼子を抱えるが、何処か奇妙だ。彼女はいつも幼子に対して複雑な眼差しを送る。 胸にしまいこんでしまった戦争の記憶、トラウマ、それを思い出させる幼子の存在。愛情と憎しみの間で揺らぐ。 幼子は何もしていない。ただ、存在するというだけで“わずらわしい”という不幸。幼子を守るのは彼女だし、それを殺そうとするのも彼女だ。自殺を思いとどまらせるのも、死にたいと思うのも幼子の存在。 彼女の事情を知らない者には、育児放棄気味の女にも見えただろう。 それとは対照的に、少年の方は両手が無い代わりに脚や首で仕事をこなし、首で幼子を“抱きかかえる”。幼子も彼を信頼して両手でしがみつく。慣れた口つきで地雷を引き抜く作業。  地雷探知機が不気味に鳴く小高い丘。金でも掘り当てるように人々は地雷を掘り続ける。 自分たちの友人を殺し、脚を奪ったのも地雷だし、ソイツが食いつなぐための貴重な収入源でもある。敷き詰められた掘り出し物。 それとも、憎むべきは地雷を埋めて行きやがった人間そのものだと割り切っているのだろうか。  彼らは同情もいらないし、同情するくらいなら金をよこせという心意気とタフさ、辛い過去を背負い時には投げ飛ばして前へ前へと進み続ける。それを投げ飛ばせなかった少女の悲劇。  自転車は移動手段であり、荷物を運ぶ荷台であり、クラクションで子供を安心させ、地雷探知機であり、身代わりでもある。犠牲になったのだ・・・。  鉄条網の境界線、脚を銃に見立てて見張りを挑発するのも幼子を命懸けで庇うため。 戦車の砲塔は上下して人々を見下ろす椅子になり、戦車の墓場は子供たちの遊び場だ。ドラム缶のような薬莢。これが雨のように降っていたのかと思うと怖い。その砲弾が空けた穴は水たまりに。 人を恐怖に震わせたであろうヘリも、今度は希望をバラ撒くために飛ぶ。  死への欲求がエスカレートする少女の恐怖。幼子を岩場に紐でくくりつけたり、放逐したり。地雷原に迷い込んでしまう恐怖。幼子はその恐怖を知らない、知っている者は騒ぎに騒いで泣き叫ぶ。あの瞬間の息の詰まる時間、粉塵が予想させる絶望。  彼は怒ってもいい。あれだけ必死になって助けたというのに・・・。見舞いの金魚もなんの慰めにもならない。 アメリカ軍の到着によって、この戦争はひとまず終わりを迎える。“ひとまず”であり、彼らの戦後は今も続いているのである。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-04 21:06:37)(良:1票)
268.  ウォレスとグルミットのおすすめ生活 《ネタバレ》 
1話2分、全10話で次から次へと繰り出されるオムニバス。  相変わらず扱き使われるロボット、転ぶわ爆発するわ、人選ミスだわチーズは自分で買いに行け。 にわとり、ペンギン、TVの逆襲、ゴミまみれ。 トラックに粉砕されるウォレス、クラッカーのホラー、グローブでぶっ飛ばされたり、掃除機の怪獣、下手すりゃ殺される全自動クッキング。 羊のコスプレ、サッカー、テニスと。誠に突っ込みが追いつかない内容となっています。
[DVD(字幕)] 8点(2015-06-04 21:05:09)
269.  ウォレスとグルミット/チーズ・ホリデー 《ネタバレ》 
本、本、本。大量の旅行本。行き先が中々決まらない、空っぽの冷蔵庫、チーズ探して「そうだ、月面に行こう」。 その発想はなかった。 ジョルジュ・メリエスの「月世界旅行」にも通じる遊び心よ!ヘルメットも宇宙服すらない。コックピットにトースターww  ただチーズを食いに行きたいからという理由だけで危険な旅行計画を立ててしまう貪欲さ。食欲って凄いね。  設計図を描き、台にされ、ドリルに振り回されるグルミット。鋸を引いた後に釘を打つ絶妙なコンビネーション。 畑を真っ二つにして発進だ!しまった!クラッカーが無い!?そういう問題じゃねえっー!!勝手にスリリングにしてしまう発進直前のドタバタ。ネズミの一同もサングラスをして見送る。  先駆者が置いて行った月の番人との交流。コイン式、四次元ポケット、初めて芽生える憧れ。 番人「つれてってよ~」 ロボットおおおっ!  破片で月面スキー、めでたしめでたし(でいいのかなあ・・・)。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-04 21:04:18)
270.  ウォレスとグルミット、危機一髪! 《ネタバレ》 
羊のシルエット、バイク、チーズ、ナイフ、振動。 トラックを食い破って脱走する者、追おうとする者、それを止める者。  ウォレスたちの朝になってやっとかかるいつものBGM。 レバーひとつで落ちたりクリームまみれになったり。バイクに乗るためだけにこさえる秘密基地。 謎の切り口、かじられた跡の数々、脚の下に現れる侵入者。侵入者は“不慮の事故”で裸に剥かれてしまう。条件反射で腕をあげて服を着てしまうウォレスに爆笑。  窓拭きは女に会うための口実、下水の格子に梯子の先を引っかけ、棒高跳びの要領で高所にたどり着く。そこに現れる番犬の不気味さ。グルミットの細首に手をかける“御挨拶”。 その謎を知ってしまったグルミットの追跡、ドアにはさまれた羊の毛、屋根裏に隠された真実。  人間たちを翻弄する番犬の悪党振りが凄い。犬の看板は「ペンギンに気をつけろ」にも登場、羊の洪水、グルミットはいつも一人で奮戦、偽の写真に羊たちも号泣。何コレ可愛い。 ウォレスも独房に“メッセージ”を差し入れる。でも羊の絵は嫌がらせにしか思えないwww  クライマックスを飾る大追跡劇!羊とウォレスたちのアクロバットな曲芸、電線でもくたばらない恐怖、ネオンはSOS、サイドカーはプロペラ機にトランスフォーム、冒頭のクリームは機銃の弾丸となって撃ちまくられる、プロペラは風穴を空けるため、とどめのターザン!  “去勢”されてまで飼い殺しに遭う罰。それを下した人間として共に生き、共に去っていく悲しさ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-04 21:03:12)(良:1票)
271.  荒木又右衛門 決闘鍵屋の辻 《ネタバレ》 
あんなにも疲労感を味わう決闘場面は中々御目にかかれない。 あの疲労感は伊藤大輔の「下郎の首」や小林正樹の「切腹」とは違う。 前者がストーリー面における疲労感だとすると、この映画は戦闘描写を徹底的に“みじめたらしく”見応えのあるものにしている。  冒頭に描かれるド派手な仇討劇場の“虚像”。あまりに白すぎるメイクと勇ましすぎる男たち、バッタバッタと何十人も斬り、二刀流、槍・・・その後に語られる“忠実な”記録。  まるで黒澤の「羅生門」における多襄丸の件を思い出す。多襄丸も役人の前では戦闘経験豊富な強者を“装って”いた。  この映画は現在の伊賀は上野を映し、舞台は寛永十一年に遡る。 決闘までの1時間をリアルタイムに描く。薄暗い空、旅の休みに茶屋に入る精悍な表情の武士たち。落ち着いた演技の三船。 桶からこぼれた水が、さらに過去の血痕に繋がる。語られるそれぞれの過去。桜を見ながらの三船と志村の会話の雰囲気。弓を引くだけで撃つ場面は映されない。それは決闘間近で三船が銭を数える時も手が映されなかった。 戦いが曝け出されるのは、クライマックスを待たなければならない。 リアルタイム進行は確かに緊張感があるが、それまで何も起らないと解ると恐ろしく退屈なものになる。同様の理由で「真昼の決闘」も俺はダメなのだ。 観客「待つのは辛いのう」  だが、この映画はそのラスト20分で今までの緊張が弾ける様子に圧倒される。着飾った男たちの“化けの皮”が剥がれていく瞬間のな。  左ト全の舞が面白い。この卜全と三船が「七人の侍」の二人とは思えない(良い意味で)。  上着を亭主に投げ渡して死の覚悟を伝え、決闘の準備を進める。  橋の上で見張る男の回想・掲げられる“槍”を黙って見送る。水の中の小石、森の中の木。 ロングショットで偵察、ハッキリ一人一人映される敵の姿、地図。 伝えに行こうとするが、恐怖と脚が動揺してなかなか前に行けない。それを勇気を奮って“歌”によって敵の接近を伝える。  ラスト20分の緊張、手ぬぐいで隠される防具、物見に出される箒を持った亭主、寒さ、敵の動静を見守る。 「七人の侍」は人を斬るのに慣れたプロフェッショナル同士の戦闘(百姓ですら落ち武者狩りで殺人を経験済み)だったが、この映画は人を初めて斬る人間が味わう恐怖がたっぷり描かれている。 怖がって逃げる人々、震える手で鞘から刀を抜く人々、睨みにビクッとして手を覆って引っ込む者、騒ぎで集まる群衆、血の匂いで吐き気を起こす者、初めての殺人で震える者、殺してしまった後に来る後悔の震え、痛みで狂ったように叫ぶ者、一瞬の光り、折れる刀。  この映画の真逆・・・即ち従来の荒木又右衛門が池田富保による「伊賀の水月」なのだ。竹をしならせて崖下に飛び降りるとか、この映画を見た後だと色んな意味でビックリすると思います。  黒澤はこの作品の後に「七人の侍」でより戦闘描写を追及していく。 三船敏郎、志村喬、加東大介、千秋実、左ト全、高堂國典、堺佐千夫、小川虎之助といった面々が共通している。
[ビデオ(邦画)] 8点(2015-06-04 20:54:40)
272.  酔いどれ天使 《ネタバレ》 
日頃から札付きのチンピラみたいな顔の三船がヤクザの「松永」を好演。  デビュー作「銀嶺の果て」から既に雄の匂いがプンプンしていたが、この映画でそれが爆発。 演技は駆け出しホヤホヤのチグハグで、何を言ってるか訳わかめ。 字幕があっても声が聞き取れねえ。  ただこの男が醸し出すオーラ! 戦争の暗さを背負い、それに負けない笑顔と怒りに満ちた三船敏郎は演技を超えた凄みを感じる。 地のオーラと動きで魅せる。  マキノ雅弘の「抱擁」でスマートなヤクザを演じていたのとは対照的だ。  オマケに仲間のヤクザに裏切られようともまだ仁義があると頑なに信じる松永。何度裏切られようとも。 酔いどれの医者に気遣われた恩を忘れずに庇い、「こんな腐った泥の中にも、一輪の蓮の花が残ってるはずだ」と信じ続ける。泥の中に咲く蓮の花を・・・。 こんなヤクザに同情すんなって方が無理だよチクショウ。  最後までヤクザを貫く山本礼三郎の存在も圧倒的。機銃のようにギターを抱えていやがる。  千石規子と久我美子は最高の癒し。 「静かなる決闘」の千石規子も良かったぜ。久我美子の初々しさが「白痴」であそこまで変貌しようとは思わなんだ。  壮絶な決着の後に、静かな感動をもたらしてくれる。 ペンキ塗れの壮絶な散り様は「野良犬」のクライマックスで“色”がつくラストにも繋がっている。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-04 20:53:33)
273.  静かなる決闘 《ネタバレ》 
本格的な医療ドラマ。 黒澤が大映時代に撮った映画はハズレが多いが、この「静かなる決闘」はかなりの力作。 医療ヒューマニズムは「赤ひげ」にも受け継がれる。  “音”の映画。雨音、車、ガラスの割れる、人々の叫び、叫び、叫び、「リンゴの唄」の音。 この映画の“決闘”とは、病との、己自身との闘い、対照的な二人の男たちの対比を描いた闘い。 雨と不協和音から始まるオープニング、第二次大戦下へ。 野戦病院、疲れ切った医者たち。雨の音が緊張を持続させる。  静かな三船。戦場ではまだ梅毒の兆候が出ない。 戦場から帰った戦後、愛するが故に結婚を諦めるしかない苦しみ。立ち聞きしてしまった衝撃。壁で踊る女の絵のヌード、花。  酒瓶を振り回そうとするのを止める一瞬。酒瓶を投げようとするのを女の悲鳴が止める。中の酒を震える手で注ぎ溢れさせる。この時から男の破滅は予告されていた。  ハーモニカの音色で笑顔になる人々の表情。欲望を爆発させる三船の一人語り。ドン引きして泣くしかない千石規子。  廊下で対峙する二人の男。看護婦のビンタに力のない反応。ガラスをブチ割り、絶望に沈む姿。
[DVD(邦画)] 8点(2015-06-04 20:52:41)
274.  ジャンゴ 繋がれざる者 《ネタバレ》 
「夕陽のガンマン」といったマカロニウエスタン、「ワイルドバンチ」といったアメリカン・ニューシネマが西部劇をブッ殺し、「許されざる者」がトドメをさしてくれて(褒め殺し)既に20年以上が過ぎ去った。  タランティーノによるこの「ジャンゴ」は古き良き西部劇を“死姦”するに足りえる傑作なのか。改めて再確認したいと思う。  傑作「イングロリアス・バスターズ」同様、冒頭からこの映画はブチかます! 前半60分のスピーディーなブッ殺しまくりは爽快だ。だが、後半80分は我慢の先の爆発を待つ内容となっている。  セルジオ・コルブッチの「ジャンゴ」を思い出すOP、居並ぶ漆黒の男たちが荒野を引き回される。OPが終わり、夕陽が沈むと共に復讐劇の幕が上がる。  「SCAR FACE(疵男)」ジャンゴの心に深々と刻まれた過去。奴隷として飼い殺しにされてきた、妻を奪われた。 彼に復讐の機会を与えるシュルツとの出会い。  奴隷主に巨大な“歯”を掲げて現れる一頭の馬車。薄暗い森の中、セリフによって緊張を高め、闇夜を照らす“一瞬”の破壊力! ハワード・ホークスの「赤い河」の、「リオ・ブラボー」における市街地での、セルジオ・レオーネの「続・夕陽のガンマン」における様々な一瞬がタランティーノの映画にも生きている。 ライフルは奴隷を連れまわすため、ランプを吊るすため、ジャンゴの顔を観客に映すため、仇を狙撃をするため。布を脱ぎ捨てるのは奴隷から“人間”になるために。  小高い丘からの視点でD.W.グリフィスの映画(「國民の創生」とか)を一瞬思い出した人もいるのではないだろうか。 町の人にはデリンジャーで“御挨拶”! 注いだビールの泡をヘラでカットし、師弟の関係を結ぶ乾杯。たった2人にビビッて重武装・多人数で取り囲む保安官たち。それを話し合いのみで切り抜けてしまう!タランティーノのセリフによる駆け引きも抜群。  思わぬところで出会う復讐の相手。歩みを速め、怒りをため、決闘に挑むような“宣戦布告”。動揺してもたつく相手の銃を踏み払い、ムチで滅多打ち!白いケシ畑を真っ赤に染める狙撃。  高らかなBGMと共に登場したKKKに爆笑、歯の“詰め物”には御用心、パニックを起こすのは頭をいぶり出して狙い撃つため。あれだけ殺っといて“無抵抗”を示されてもなあ…w こんな感じにシュルツたちはのらりくらりと逃げまくる。 鞍に刻まれる“D”の文字、新聞記事で文字の勉強、荒原、雪原、水面に見る幻、射撃訓練と寒さに慣れるための実戦、雪だるまと血だるま、親父が外道だと知らない子供が一番可哀想。  ここまでフルスピードで突き進んできたが、後半から登場する奴隷主カルヴィンとの闘いは長いしんどい辛かった。 暖炉の前で組み合うガチムチのオッサンたちの息苦しさが伝わってくるし、金槌を提供するシーンの戦慄、オマケにみんなオールバックでまぎらわしい。 そんな中でも存在感を発揮するディカプリオの演技の凄さ。流石に何回もクローズアップされるディカプリオの顔には笑ったが。 白人や同じ黒人からも白眼視される事に耐え、目の前でリンチされる同胞を助けられない事に耐え、サングラスの奥に復讐に燃える瞳を隠す。撃鉄と手が語る葛藤。 鉄の牢獄から出された者との思わぬ再会。失神するほどのショックと感動。タランティーノの映画でおっぱいを見れた事が嬉しいやら悲しいやら(おいコラ)。  豪勢な夕食シーンの何たる退屈さ。あのシーンの10分は絶対にいらない。 「イングロリアス・バスターズ」と違って、我慢ピラミッドを重ねるだけで終わるからタチが悪い。主にカルヴィンの脅しが(あの瞬間にだけ張り詰める緊張、頭蓋骨をノコで“剥がす”シーンの狂気)。  そのたまりにたまった鬱憤をシュルツが命がけで晴らしてくれます。密室での籠城戦とガンファイト!!敵の銃を奪って撃ちまくり、遺体は死後も“壁”としての役割を与えられる。  普通の映画ならここで終わるのだが、タランティーノの場合残り30分+してまで“二段構え”をブチかましたかったらしい。真の敵とのラストバトルを!  シュルツから受け継がれた交渉術、文字通りの大・爆・発! タランティーノwwwwあwwwんwwwたwwwっwwwてwww人wwwはwww  “処刑台”に向かう黒い影の不気味さ、女を迎えにきた影の安心感。この対比。 タバコは着火装置。カルヴィンが奴隷をいたぶるのに吸っていたタバコを、ジャンゴは裏切者を吹き飛ばすために使う。  結論:00年代の西部劇じゃ一番面白い(あとはケリー・ライヒャルトの「ミークズ・カットオフ」。「3時10分、決断の時」も好きだ)。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-04 20:50:11)
275.  花とアリス〈web〉 《ネタバレ》 
DVD特典版の感想。  最初にwebで公開されたver.とDVDに収録されているver.は細部が異なるらしい。 残念ながら最初のver.は見ていないので何とも言えない。   冒頭に「break town cinema」の文字が入る。キットカットの30周年記念の際に作ったそうだが、本編にキットカットと思わせるチョコは発見できなかった。web公開当時のver.には出ていたのだろうか。謎だ。   第一章「花の恋」が17分、 第二章「花の嵐 I 秘密」が13分、「花の嵐 II 乱舞」が11分、 第三章「花とアリス」が14分の三章四部構成。先に見た長編と比べると細部が結構違う。  最大の違いは長編がアリスの描写が多かった事に対し、短編は花がメインだ。 例えば、花の中学時代の電車の中。カバンを椅子に投げ込む不良風の金髪オールバック男とその女友達が出てくる。それを見て花がビクビクする様子が描かれるが、同時に隣に座った宮本先輩の存在にもドキドキしている状態だろうか。岩井俊二の手にかかれば不良も可愛らしい存在になってしまう。 その後に電車に差し込んでくる光を手に当てて戯れるような描写(さっきまでいた客がいなくなっているので、かなり時間が経ってからだと思われる)。花の横でメイクをする女も登場。  このように、本編と比較しながら見るのが楽しい。 ただ・・・長編で一気にダッーと見たせいか、同じような内容の短編を区切り区切り見るのはちょっと変な感じ。
[DVD(邦画)] 8点(2015-06-03 07:18:55)
276.  花とアリス〈劇場版〉 《ネタバレ》 
岩井俊二という人間を誤解していた。というか、見るまでは悪い噂しか聞いて来なかった。  もっとこう「瞳をとじて(殴るから)」という思いにかられる「世界の中心で、愛をさけぶ」みたいなクソ甘ったるい映画でも撮るのではないかとレッテル貼りをしていた(撮影が同じ篠田昇なので)。  ところがどうであろう。 ふとした事で見つけ“惚れてしまった”男をたばかり、勝手に妬み合って勝手に許しあうという笑って泣ける素晴らしい映画ではありませんか。篠田昇の仕事振りも良い。  とにかくこの映画、踊って踊って踊る映画だ。 道、夕日を背に歩く女子中学生が二人、白い息が物語る季節、電車。服を引っ張り「危ないから下がって」と無言で友達に伝える。 男たちを見て談笑し、何時の間にか男たちをストーキングする二人。 彼女たちが通う中学の様子とかはまったく映されない。彼女たちにとって、その男たちとの出会いが中学時代一番の青春だったのかも知れない。 物陰から見つめるあこがれ、でっかいカメラで撮っておきたいほど、どんな部活でも入部して一緒になりたいほど惚れてしまった乙女心。  流石に高校ともなると、学校や部活・習い事での思い出も増える。たまった鬱憤はバレエで発散。桜の下で再会するやいなや仲良く躍り始める二人。 それぞれに恋を知り、見た目も中身も成長していく。ガッツポーズで「頑張れ!」と無言で健闘を祈る姿も微笑ましい。  思わぬ“事故”でとっさに宮本に近づくための“嘘”をでっちあげてしまうハナの小悪魔振り。 勝手に思いを寄せ、相手が自分を知らない事に勝手に怒るムチャクチャさ。なんて酷い女なんだ(褒め言葉)。 宮本も本気で心配になる。それは自分のためじゃない。見ず知らずの、赤の他人の筈の女のためだ。彼も何時の間にか、何かに本気で挑む彼女たちに惚れてしまったのだろう。ワケも分からないまま。 「ごめん(何か知らないけど)」 彼がCTに入った瞬間、俺の腹筋は終盤まで散々痛めつけられる事が決定した。テリー伊藤がヤブ医者にしか見えない。絶対狙ってやってるだろ岩井www 夢で彼女をよく見る?それは悪夢の間違いとちゃいますか? 彼女の黒歴史や祭りでばったり会う度に奇声を発して恐怖に怯える宮本先輩。そりゃあ手がヌルヌルの女に捕まれたらビックリしますよ。  い い か  ら さ っ さ と 雨 で 洗 え  ハナの悪逆非道さはエスカレートし、テメエの黒歴史をアリスになすりつけるというクズ振り(褒め言葉)も発揮。お経と写真が交互に腹筋に襲い掛かる。 それに乗っかってしまうアリスもアリスである。役者を目指すために、友のため男をものにするために“演技”に体を張る。名前を書かせる事で情報を得るしたたかさ。 女の友情は時に美しく、ムッチャ怖い。二人ともなんつー着信音してんだ。宮本先輩は泣いていい。そしてマジでキレていいよ本当。 「君誰?(マジギレ)」 「嘘だよそんなの(呆)」  ハナも何故か逆ギレ。酷いのはテメエの脳味噌だっ! 友人もゲス顔で「ケンカしちゃダメだよ」と畳み掛ける。その一言が後に違う形で心に響いてくるのだから面白い。  それに対して、アリスはどんどん可愛くなっていきます。母親も新しい恋をして泣く。アリスは恋に敗れる事の恐れ、ハナに対する嫉妬も芽生える。 砂浜で走り、ブチギレて顔に掴みかかるキャットファイトに転じる凄まじさ。先輩も怒りを通り越して(というかワケが分からないけど取り敢えず)止めに入る。先輩泣いていいぞマジで。 おにぎりサンド食べたくなっちゃうじゃないか畜生。 そんな先輩の疑問を確信に変えるトランプ。アリスの父との思い出が思わぬ伏線に。 先輩が優しすぎて俺まで惚れちゃいそう。俺だったら帯引き抜いて首絞めてるわ(冗談です)。 いや、先輩は二人に仲直りして欲しくて怒るどころじゃなかっただろね。だって惚れちゃったのだから。  女たちを再び結びつける写真、互いに吹っ切れてそれぞれの道を突き進む。 母ちゃんも過去はさっさと水に流し、また新しい恋に向っていそいそと掃除機をかける。 クライマックスを飾る即席シューズによる美しいバレエの“演目”!
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-02 21:43:20)(良:2票)
277.  パッチギ! 《ネタバレ》 
毛沢東の豚野郎も金正日のファッ金ジジイもソ連もアメリカにも「パッチギ!」をブチかましてやりたい!それがこの映画である(違います)。  全方面に喧嘩上等な素晴らしい馬鹿映画。高らかに歌って歌って歌いあげる、「どちらも等しく馬鹿野郎だ!」な映画です。 カメラマンは「容疑者Xの献身」や「県庁の星」でも素晴らしかった山本英夫!  冒頭からバンドが歌いまくるかと思えば失神する女たち、そうかと思えば群衆スペクタクルで叫びまくってバスをブッ転がす! 川という“境界線”のせいで根強く残る差別意識が、負の連鎖が生んだ憎しみ合いが繰り広げられる小さな“戦争”。それを娯楽映画のアクションとして切り取った場面だ。  子供たちは暴力によって加害者とか被害者とかいう下らねえ“意識”を互いにリセットし、罵り合う。 時には同じ民族どうしで殴り合い、仲間の死因は“人間”じゃないものが決定打となるやりきれなさ。 それでも彼らは同胞のために戦う覚悟を拳に込めて押し寄せ、一方も拳で応じるのである。話をつける(物理)。 あのクライマックスを飾る河を挟んでの殴り合い!ナースが飛び蹴りを決めるのは新しい命の誕生を告げるため。  文句がある奴はみんなブン殴るわ蹴るわ飛び蹴るわセメントぶっかけるわゴールデンボール(キン●マ)をICPMでストライクするわギターもブッ壊すわ。 やられたらやり返すのエンドレス。誰も女に手をあげない謎の紳士振り(乳首は見せないがおっぱいはがっつり揉む姿勢は素晴らしいですね)。 もちろん両国人にとって、どちらかがボコボコにされる光景を何度も見るのは嫌なものだ。その合間で民族を超えて交流する人々の美しさ、「リムジン河」の音色の美しさよ。   危険がひしめく校舎に、甘い花の匂いに蝶が吸い込まれるように、美しい音色に誘われてくる主人公。 彼らはロシア人も朝鮮人も日本人もない、ただの“人間”として語らいあう。その親も流す人は流してしまう。何故なら同じ人間だから。   この映画よりも真摯に人種差別問題に踏み込んだ作品はいくらでもあるし、本気でこの映画の暴力が嫌だ、考えとかが嫌で低評価なら解る。言われても仕方がないさ。  井筒は朝鮮も日本もない、“人間”として最低のゴミ野郎だが、この映画は面白い。超ムカツクことにな。
[DVD(邦画)] 9点(2015-06-02 20:10:41)(良:2票)
278.  それでもボクはやってない 《ネタバレ》 
「シコふんじゃった。」や「Shall we ダンス?」みたいな痛快な映画と比べると、この映画はそういった楽しさが徹底的に削がれてしまった印象を受ける。  ビルを走る一本の電車。その密室では、突然尻をなでてくる者の手が“恐怖”へと変わるし、手を掴んだり密告される瞬間も恐怖と化す。  その恐怖を知る者は、その領域に入った瞬間に両手をあげて命乞いをする。まるで拳銃や刃でも突きつけられている様に。それを知らない者は、出会ったばかりの赤の他人に殺されてしまうのだ。社会的に。  この物語は、そんな社会的に殺されかけた男の孤独な闘いを描いていく。途中挿入されるわずらわしい音楽(最初から無音なんだから最後まで音楽の挿入はして欲しくなかった)も、監督がこの男に同情するが故だろうか。 絶望を語る筈の独房も妙に白いし、照明まで彼を暖かく照らすように明るすぎるのではないだろうか? 「どうしてこうなった」と無言で泣く男の姿だけで充分です。  動く密室の次は、取調室という密室で数人の男に尋問されるという恐怖。常に同じような事件に振り回される男たちの苛立ちは、捕まってしまった人間にブチまけられる。 捕まった人間にとっては「知ったことか」である。誘導尋問、脅し、レッテル貼り、疑心暗鬼、偽善、指紋。 そこに人権とか、偽善がどうとかといった感情は消えていく。あるのはブタ箱にブチこむという“作業”の繰り返し。 何度も何度も何度も「アナタハ痴漢ト疑ワレマシタ。ナノデ逮捕シマス」という具合に延々と同じ言葉を繰り返す。そのしんどさ。二度と見たいと思わない退屈さ。音楽まで似たようなBGMを繰り返しやがる。 あの気の遠くなるような説明は本当に早送りしたくなった。 主人公も感情が消えかけ嫌気が差しているのだから。この辺は社会派映画の悪いクセです。  独房の中で出会う常習犯たちの奇妙さ。それは事件の捜査に疲れて荒んだ警察も、態度をコロッと変える管理人にも、興味本位だけで犯罪を追っかけまわす男たちにも共通する。  痴漢被害に遭ってきた筈の少女の姿にも奇妙さが目立つ。彼女の親は何故裁判所に来ないのだろう。親は既に亡くなってしまったのだろうか。 だとしても、代わりに先生がくるとか、友達が来るとか。そういうのが描かれていないのが不思議だ。 壁に覆われて、主人公やその支持者たちも背中すら見る事が出来ない。主人公も、自分を警察に突き出した女性と一度キリしか会っていない。 そんな奴らに「貴様は犯罪者だ!悪魔だ!」と言われてみなさいよ。誰だって怒りますよ。憎みますよ。ガラスを叩いたり鉛筆を砕きたくもなりますよ。ピーポ君を傘でしばきたくもなりますよ(あのやり取りだけ唯一といってもいいギャグシーン)。 女子高生の視点を知るのは観客だけだ。観客だけがその映像に誘導され、揺さぶられるのである。  それとは対照的に、家族や友人たちはその奇妙さが消え去っていく。真実を知れば知るほど彼らは主人公を支え、一緒に闘うようになっていく。元カノも“信じている”からこそ体を張る。 最初は疑っていたからこそ、それに対する贖罪と共感・共に戦うからこそ得られる頼もしさ。 事件の再現から突破口を開こうとする瞬間、ここで初めて違う音楽が観客の心を洗い流す。様々な人間の視点や感情が真実を探り希望を見出し始めるのである。  それを嘲笑う社会の闇。 小日向文世を殴りたくなったのは初めてだ!素晴らしい演技!予告の躍りかかる主人公のように、あのにやついた顔面をブチのめしてえええっ  裁判のクライマックス。 そこには「それでもボクはやってない」と頑強に戦う覚悟を決めた男の表情だけがある。 主人公が一度挫折し、そこから立ち上がり成長していく姿は「シコふんじゃった。」や「Shall we ダンス?」にも共通している。  怒り裁判所を出て行った友人も、また彼のために戻ってくるのだろう。それでもカレはやっていないと信じているのだから。
[DVD(邦画)] 8点(2015-06-02 20:01:18)
279.  ホーム・アローン 《ネタバレ》 
この物語は、家を守るために鬼になって泥棒たちを殺す勢いでトラップ責めにした一人の少年と、 命がいくつあっても足りないトラップ地獄に挑み続けた二人のタフでクレイジーな男たちの物語である。  正直「ダイ・ハード」よりもハードです。マクレーンが1ダースくらいいないと攻略とか無理です。   大家族の末っ子のケビン。 兄弟からも「足を引っ張る」と邪険にされ、ある日の大喧嘩が元で一人家に閉じ込められる。密室の恐怖、「家族なんて無くなってしまえ」と世の中を恨む。  そしたら本当に家族が消えてしまった。前日から旅行を計画していたマカリスター家。 我が子と近所の子を間違えてしまったのだ。こんな酷い家族恨みたくもなるわ。自分の間違いによって息子一人を残してしまった事を悔いる母親。 ケビンも最初こそ殿様気分で自由を謳歌していたが、次第に寂しさで泣きたくなってくる。 そこに現れた愉快な強盗コンビハリーとマーブ。 ケビンは家を守るため、たった一人の孤独(ハリーとマーブとの愉快)な戦いに身を投じる。  「ダイ・ハード」は迎え撃つスリルと虎の穴に飛び込む緊張が同時進行するような映画だったが、この映画は砦に篭って迎え打って打って打ちのめしまくる。  ケビンと仲良くなるマーリーじいさんの協力を得て泥棒コンビをフルボッコ。 本編の遠因ともなったピザを運んできた配達員の悲惨さも、この映画から溢れ出るユーモラスな雰囲気に飲み込まれていく。  こんなにも痛そうだなと背筋が凍り、爆笑し、不覚にも泣いてしまった映画を俺は子供の頃から見させてもらっていたのか。ありがたい限りだ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-02 19:45:42)
280.  デルス・ウザーラ 《ネタバレ》 
黒澤のカラー映画と言えば俺は「赤富士(オムニバス「夢」に収録)」が一番好きなのだが、この「デルス・ウザーラ」も黒澤明によるロシア映画の傑作だし、黒澤明が苦手だという人にも「虎の尾を踏む男達」と共にオススメしたい逸品だ。  どうも「赤富士」以外の黒澤のカラー映画はダメなんじゃないかと思っていたのだが、この映画はかなり面白い。  ロシアの雄大な大地を突き進む探検家と猟師の友情の物語。 未開の地をひたすら突き進む冒険家たち。そこで巡り合った猟師のデルス。 野生の森の中で育ってきた者と、都会から野生に放り出された冒険家たちの意識の差、そして心の交流。 カラーで収められたロシアの雄大な自然。時に優しく、時に厳しく冒険者たちを迎え入れる。急流に飲み込まれ溺れそうになるスリル、吹雪が襲い掛かりそれと“格闘”するスリル、猟銃による腕比べの楽しさ。  物語は常に静かに流れていくが、時に激しく動きドラマに引き込んでくれる。デルスにとって、眼の怪我は完全な死にはならない。森から引き剥がされること自体が、デルスにとっての“死”なのである。そして大地と一つになっていく穏やかさがそこにある。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-02 19:41:24)
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