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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 823
性別 男性

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281.  霧の旗(1965) 《ネタバレ》 
後味の悪さが後を引く作品。これは確信犯的なものだろう。人間の残酷さ、冷酷さ、恐ろしさ、理不尽さといったものを描き切っている。さすが松本清張・橋本忍・山田洋次という才能のある者が関わった作品だ。タイトルにあるように霧に包まれたようなボンヤリとした状態が続き、最後までその霧が晴れないという気持ち悪さを存分に味わえる。凡人ならば、大塚弁護士を悪徳弁護士の設定にして、もうちょっと彼に非があるようなものにしてしまうだろう。そのような設定にすると、印象もがらっと変わってしまう。「復讐が成功した」という晴れ晴れした気分となるが、単なる復讐劇でしかなくなり、すぐに忘れ去れてしまい、本作のような気持ち悪くなるインパクトが相当に薄れてしまうのである。 東京の高名で多忙な弁護士が九州の事件を断るというのは当然の流れである。弁護料と称して金だけぶんどって事件を解決しないという類ではない。事務員が断ってもいいものをあえて面談して比較的丁重な断りを入れている。その後も事件を独断で調査するというようなところをみせており、大塚弁護士自身は非常に仕事熱心であり、有能な人材ということがよく分かる。そのような彼が不当な扱いを受けなくてはいけないということが、人間や人生というものの奇妙さ・不可思議さ・理不尽さが垣間見られる作品へと昇華させる。 本作に描かれた2件の殺人事件は同じようなケースである。桐子の証言や物的証拠がなければ、有能な大塚弁護士でさえも無罪や釈放を勝ち取ることができないということは、裏を返せば九州の事件も大塚弁護士は解決できなかったといえるのかもしれない。 左利きの者が犯人ということが分かっても物的証拠がなければ、逆転無罪を勝ち取ることは困難だっただろう。桐子がいくら大塚弁護士に頼んでも、兄の事件の顛末は変わらなかったかもしれないということを桐子自身が分かっているということにもなる。 また、桐子の行動によって真犯人は野放しにされており、その真犯人はひょっとすると兄の事件の真犯人かもしれないということもいえる。桐子の行動は相当に自己矛盾をはらんでいる。人間の行き場を失った“恨み”というものはそういった矛盾や理性といったものすら凌駕するということを本作は伝えたいのかもしれない。 桐子の行動の不条理さが気持ち悪くて評価を低くしようとしたが、この映画はかなり深い(不快ではなくて)作品だ。
[DVD(邦画)] 7点(2009-11-28 10:36:52)(良:1票)
282.  イングロリアス・バスターズ 《ネタバレ》 
タランティーノ監督作品だけあり、さすがに万人受けする映画ではなさそうだ。自分もタランティーノの感性には完全にマッチングさせることはできなかった。ただ、心の底から楽しめたということはなかったが、自分なりの感性で楽しむことはできた。 元ネタを知らないので、小ネタやオマージュの類は一切分からない。その辺りの面白さは一般人には分からないが、あまりそういったことは気にならないようには製作されている。 ブラッド・ピットが率いる“バスターズ”がとんでもないヒトラー暗殺計画を企てるという、ありきたりなストーリーとは真逆の映画に仕上げていることが凄いことだ。 また、主役と脇役、善と悪、史実と妄想、男も女も国籍も関係なく、英語もドイツ語もフランス語も何もかもごちゃ混ぜにして、徹底的に“自由”に弾きまくっている点が特徴となっている。 タランティーノのやりたいことは、ブラッド・ピットの最後の行動に全てが集約されているのではないか。「(投降?)そんなの関係ねえ。俺はやりたいことをやりたいだけやるんだ!」ということだろうか。ブラッド・ピット同様に、タランティーノも映画の常識、文法、ルール全てを無視、登場する者はとりあえずぶっ殺していき、『史実?そんなの知らねえ』と突っ走るだけ突っ走っている。それがタランティーノのやりたかったことだろうか。何事にもとらわれずに、自由に自分の感性を爆発させるということはなかなかできないことだ。 ラストの締めくくりも、他の映画ではみられない“俺流”といえる。 “俺流”に徹することが果たして映画にとって良いのかどうかは判断の難しいところだが、奇をてらうことだけが目的にならなければよいだろう。 自分の好みは、どの章かは忘れたが、地下の居酒屋のシーンだ。 本題とは大きくハズれて、脱線してなかなか本線には戻ってこないというイライラ感が逆に次第に面白く感じてくる。 本題を忘れたころに、状況を一変させる辺りが上手い。 第一章のオヤジ二人の会話からも分かるように、どうでもいい会話を展開させて脱線していきながら、いいタイミングで本線に戻すというところはタランティーノの天才的なところだ。 主役の割には、放置される場面が多かったブラッド・ピットがノリノリで演じているのも救いとなっている。 画面の後ろの方で、表情を作っている姿をみると、自分の役割をよく分かっているなという印象をもつ。
[映画館(字幕)] 7点(2009-11-23 22:14:13)(良:1票)
283.  点と線 《ネタバレ》 
原作未読。 テレビ版も見たことがなく、今回が完全な初見。 「つまらなくはないが、ただの功名なトリックの汚職絡みの殺人事件だな」と思って見ていたが、いつのまにか女性の嫉妬や愛憎がメインとなっているというカラクリは面白い。 省庁の役人は業者を利用していたつもりでも、逆に業者に利用されている。 省庁の役人を手玉に取るほどの夫は妻を利用していたつもりでも、逆に妻に利用されている。 一番の大物は役人でも業者でも刑事でもなくて、“女”ということか。 よくよく考えると、意外と“深い”作品といえるかもしれない。 ただのサスペンスに終わらない松本清張の上手さが垣間見られる作品だ。 男と女の心中(のような殺人事件)に始まり、男と女の心中(のような殺人と自殺)で終わるという構図も面白い。 前者の心中については警察が疑問に感じたが、(お手伝いさんなどが愛人の来訪の件などの余計な証言をしなければ、)後者の方の心中を警察は追いつめられたことを苦にした単なる心中と処理するかもしれない。 巧妙なトリック殺人事件の影や顛末に、男と女の愛憎が映し出されているという面白さは評価したいところ。 ただ、刑事モノやトリックサスペンスとしてはイマイチなところも感じられる。 上映時間の短さもあるが、ややあっさりとしすぎており(一人で突っ走っているところもあるが)、刑事の苦心や事件を追う情熱を深くは堪能できない。 また、『今の時代ならば「飛行機」を使うけれども、当時はそうではなかったんだろうな』としみじみと思っていたら、普通に「飛行機」を使ったり、功名にみえて簡単に崩される穴だらけのアリバイも拍子抜けするところはある。 青函連絡船など、現代ではあまり見られなくなったものも見られるので、そのような楽しみは感じることはできるが。
[DVD(邦画)] 7点(2009-11-21 22:39:05)
284.  チャップリンの黄金狂時代 《ネタバレ》 
名作だからということを考えなくても高い評価を与えられる作品。 鑑賞前は『チャップリンの映画なんていつもと同じだろう』と思っていたが、同じように見えても大きく異なっている。 やはり、彼はタダモノではないと改めて感じさせる。 ストレートに笑いを追求しており、チャップリン作品らしいクドさがないだけに、本作がチャップリン作品の入門編として見易いかもしれない。 色々と意味やメッセージも付加しているかもしれないが、本作は何も考えずに純粋に楽しめるのではないか。 犬のロープを自分の腰に繋いでしまうような笑えないものもあるが、印象的なシーンがかなり多く、笑いのセンスは今でも十分通用するほどレベルが高い。 ラストのハッピーエンドについてはヒネリがないが、ヒネル作品でもないので、特に違和感を覚えなかった。 楽しく笑って、恋愛で温かな気持ちになれればという作品に仕上がっている。
[DVD(字幕)] 7点(2009-11-21 22:10:53)
285.  ぼんち 《ネタバレ》 
個性のある俳優・女優陣の競演がみられ、面白いとは思うが、少々すっきりとしないところもある映画。 『冒頭のうだつの上がらなそうなオヤジがどのように転落していったのか』ということに注目していったら、どことなく中途半端に幕を閉じたという印象。 “女の怖さ”のようなものも強くは感じられず(風呂で戯れる女たちに怖さを感じられないところは自分の甘さか)、結局、何が言いたかったのだろうかという想いは残ったが、あまりそういうことを考えない方がよい映画なのかもしれない。 本作にテーマやオチのようなものを求めるのは、野暮で無粋というものか。 こういうチカラを抜いた作品が作れるということが本当の才能といえるかもしれない。 現代では考えられないような“しきたり”や“因習”や、様々な“女”たちや“時代”に翻弄された一人の若旦那の半生を興味深く堪能すればよい。 若旦那が破滅をすることもなく、また商売始めるんだとラストで語るようなところをみると、女はもちろんしたたかだが、男も意外と負けていないようなしたたかさや、しぶとさがあるのかもしれない。 金はほとんどなさそうだが、噺家のような人にご祝儀をあげている辺りが腐っても“ぼん”なのだと感じさせる。 過去にあまり見なかったタイプの映画だったので、新鮮な気持ちで見ることはできる。 何を喋っているのか分からないところも多くあったが、基本的にはほとんどがニュアンスで感じ取ることはできるというのも面白い。
[DVD(邦画)] 7点(2009-11-02 00:29:59)
286.  パイレーツ・ロック 《ネタバレ》 
非常にセンスのある作品に仕上がっている。 ミュージック、ファッション、作風・世界観いずれにも見応えがあり、アメリカ作品とは異なるイギリス作品らしいユーモアセンスも抜群だ。 下ネタがかなり多いが、下品になっておらず、こちらも絶妙なユーモアとセンスで上手く調理されている。 「板垣死すとも自由は死せず」という有名な言葉があるが、「海賊ラジオ死すとも、ロックは死せず」ということだろうか。 ロックを語れるほど、ロックに傾倒しているわけではないが、その自分にも「ロック魂」「ロック愛」のようなものが十分伝わってきた。 政府に禁止されようとも、船が沈没しようとも、最後の最後までロックを流し続ける、ラジオを流し続ける“魂”が熱い。 当時の人々が熱狂したかもしれないという理由が分かる気がする。 見ているうちに次第に、個性のあるイカれた野郎どもと1人の女性コックが愛おしく感じてくる。 自分もこの船の乗客になったかのように、アットホームで仲間内な雰囲気に飲み込まれていく。 それぞれの個性は強烈であり、キャラクターも生きているとは思う。 しかし、何度か見れば、当然感想も変わると思うが、初見では乗員それぞれの内面というものまでもは完全には伝わりきれていない。 ただ、それぞれのキャラクターに変なエピソードを設け過ぎると、その世界観や映画としての個性が崩れる可能性があるので、難しいところだ。 ロックを愛する訳の分からない連中が騒いでいるだけの映画でも、本作にとってはよいのかもしれない。 長所でも短所でもあるのが、この“ユルさ”である。 バカバカしいようなところでも、そのユルさによって、バカバカしくは感じさせない。 しかし、前半はその独特な世界観にハマるが、ストーリーらしいストーリーがなくキャラクター及び世界観依存型の映画なので、中盤は多少ダレてくるところがあったような気がする。 個人的には、船の沈没間近でも革パンを履いてくるところや、命よりも大事そうなレコードを「これはクソだ」と放り投げるようなところが気に入った。 『それぞれのキャラクターの内面が伝わらない』とは書いたが、このようなどうでもいいシーン一つ一つに、各キャラクターの余裕と生き様を感じられるので、何度も見て深く堪能して、それぞれのキャラクターの内面を感じ取っていく作品かもしれない。
[映画館(字幕)] 7点(2009-10-25 23:46:57)(良:2票)
287.  g@me.(2003) 《ネタバレ》 
原作未読。よくよく考えればおかしなところも出てきそうだが、良質なサスペンスに仕上がっている。裏があるのは誰でも分かることだが、先が読みにくく、基本的には飽きずに楽しめた。 ストーリーの面白さだけではなくて、ほとんど“男の妄想”のような甘さのあるロマンティシズムで満たされているのも好意的に感じられた。 『女には騙されても、女を騙すことはできない』『愛を利用されることはあっても、愛を利用することはできない』というようなこともよく出来ている。 男性が観れば、少々共感できるところもある作品に仕上がっているのではないか。お互いの気持ちが通じ合っても、最後にウマくいかないところも悪くはない落としどころだ。 難点をいえば、「誘拐に対する決意」「二人の恋愛関係の発展」の描写が甘いようなところか。 「誘拐に対する決意」に関しては、プロジェクトリーダーから外されたからというような気がしたが、誘拐の決意の前に副社長と直接的なやり取りがあってもよかったと思う。意味は完全に理解できなかったが、「仮面のやり取り」を誘拐の決意の前に持ってくると、多少は「ゲームをプレイしたくなる動機」のようなものが強化できるような気がする。ビジネスというゲームにおいては負けたかもしれないが、何らかの方法で副社長を負かしたいという想いをもうちょっと感じさせて欲しいところ。 「二人の恋愛関係の発展」に関しては、崖のようなところで佐久間の家庭状況を聞いて、なんとなく父親に似ている、自分にも似ていると感じたから、動いたように感じられる。多少の理由が付加されているものの、唐突という印象も否めない。 原作はよく分からないが、“モロ”というよりも発展するのかしないのか“微妙”な感じで進めてもよかったかもしれない。“モロ”にラブシーンなどを描くと「一緒に逃げない?」「シドニー行きの切符を用意した」といった本音とも嘘とも分からないセリフも深みが増さないところがある。これらのセリフの受け止め方も、ある意味で男と女のGAMEに発展させるためには“微妙”な演出が求められるところだ。 女の嘘が分からない男、男の本音に気付かない女といったようなところまで描いてもよかったかもしれない。男を信じられずに、シドニー行きが自分をハメるようなフェイクだと思ったものの、実は本当だったというオチにすると、ラストの別れにも納得できるのではないか。
[DVD(邦画)] 7点(2009-10-19 21:15:41)
288.  ワイルド・スピード/MAX 《ネタバレ》 
クルマには全く興味がなくても楽しめる作品に仕上がっている。 ココロに何かが残るということはないが、2時間近い時間は飽きることなく、たっぷりと堪能できるのではないか。 スムーズさは多少欠くところはあるが、手の込んだ脚本となっている。 麻薬捜査と恋人に対する復讐をミックスして、ストーリーがやや複雑化することによって豊かになり、恋人を殺した奴はいったい誰か、黒幕はいったい誰かという手法でさらに盛り上げている。 驚くようなどんでん返しやオチもないが、カーアクションがメインの作品としては悪くはない脚本だ。 肝心のカーアクションも見所満載である。 Ⅰではお馴染みとなっている手の込んだトラック強盗を冒頭から描いており、本シリーズを好む者を喜ばせている。 成功率の低そうなやり方だが、普通に銃を使って奪う犯罪ではなくて、彼らにとってはゲームのようなものなのだろう。 難解であればあるほど、燃えるのかもしれない。 Ⅲに登場するハンとドミニクの関係も明らかになり、本シリーズと関係ないと思われたⅢとブリッジさせることができている。 最後のトンネルシーンは単なるカーアクションを超えたようなデキとなっており、クルマがまるで生きているような仕上がりとなっている。 欲を言えば、もうちょっとドミニクとブライアンの関係を掘り下げてくれると面白い作品になったと思う。 彼らはお互いを助け合うというような単なる相棒ではない。 助ける義理もなければ、助けられる義理もない。 この二人は似たもの同士でありながら、水と油ともいえる面白い関係である。 信念をリスペクトしたり、妹の恋人だとお互いに認め合いながらも、こいつにだけは絶対負けられないという想いもあるはず。 ラスト間際のドミニクとブライアンの会話にもそういう気持ちが表れている。 そういう微妙な関係をもっと上手く演出して欲しいところ。 それぞれの表面的な目標は、恋人に対する復讐及び麻薬組織撲滅かもしれない。 それぞれの目的のためにコンビを組みながらも、お互いのライバル心をもっとメインに持ってきてもよかった。 単なる犯罪組織を壊滅させるアクション映画は世間に溢れているのであるから、それらのような作品とは異なる要素を付加していくことによって、本シリーズの必要性が増していくのではないか。
[映画館(字幕)] 7点(2009-10-11 00:52:46)(良:1票)
289.  ワイルド・スピード 《ネタバレ》 
クルマには全く興味がないので、その辺り関してはほとんど熱くなれなかった。 しかし、カーアクションであり、犯罪モノでもあるが、どこか青春映画っぽい仕上りにもなっている点に対して興味をもてた。 後半の強盗失敗辺りからややバランスはおかしくなるが、全体的にリアリティのようなものや人間味のあるところが感じられる。 クルマに懸ける熱い想いを通して、“友情”“師弟愛”“愛情”のようなものが育まれていっているからではないか。 ブライアンに対して、自分の父親について語るドミニクの姿には彼に対する信頼感のようなものも感じられる。 また、成果はほとんど上げる事はできなかったが、おとり捜査という微妙な立場が面白い効果として機能もしている。 ドミニクが強盗に固執し、中国人の暴走する辺りから、普通のハリウッドアクションのテイストになっていくが、その辺りも楽しめないわけではない。 ラストにも一工夫が施されているように感じられる。 ブライアンとドミニクのラストのカーバトルに関しては、ドミニクのクルマの調子が悪くなってきたことから、ドミニクは踏み切りの手前でブレーキを踏んでトンズラをかますのではないかと思っていたが、二人ともアクセル全開でかっ飛ばすのは少々意外だった。 この辺りもどこか青春映画っぽく感じられるところだ。 ドミニクは、少しは狡猾なところがあると思ったが、ただのバカなのかもしれない。 確かに、クルマを置いて歩いて逃走しようとする辺りや、計画が狂っても自分のプランに固執する辺りから、そういう雰囲気を醸し出してはいた。 しかし、警察官と分かった相手でも逃げることなく、“自分”を貫く辺りはただのバカを通り越した、男として魅力のあるバカにもうつる。 そのようなドミニクを逃がすことによって、存在感が薄かったブライアンも印象が向上した。 「どっちの側につくのかはっきりしろ!」と自分の上司から言われていたが、ドミニクを逮捕してFBIサイドに付くこともなく、ドミニクと一緒に逃亡してドミニクサイドに付くこともなく、彼もまた“自分”を貫いたようにも感じられる。 彼らはいずれもスマートなキャラクターではなかったが、どこか憎むこともできないキャラクターとして形成されていたので、その辺りを評価したいところだ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-10-11 00:49:44)
290.  ウルヴァリン:X-MEN ZERO 《ネタバレ》 
正直いって、「X-MEN」シリーズはそれほど好きではない。 自分とブライアン・シンガーとの相性の悪さもあるが、純粋に楽しめる作品に仕上がっておらず、アクションエンターテイメント作品としてはどことなくヌルさを感じていたところである。 ただ、監督が代わったこともあってか、「ファイナルディシジョン」からは面白いと評価できるようになった。 このような経緯もあり、それほど期待していなかった本作だったが、何も考えずに楽しめる合格レベルのエンターテイメント作品に仕上がっていると感じられた。 それぞれのミュータント能力を活かしたバトルシーンは上手くかつ熱く描かれており、見せ場がたっぷりだ。 また、意外と丁寧な作品作りがなされていたことも好感がもてる。 戦場でしか生きることができなかった兄と弟の間に、微妙なズレが生じていくことを一連の戦争の歴史の中で描き出している点は上手いの一言。 さらに、兄と弟の関係や姉と妹の関係も描かれているのも面白い。 兄弟でいくらいがみ合っていても仲直りできてしまう点や、妹のために自分の愛さえも犠牲にできてしまう点など、切っても切れない“血”という宿命の面白さも感じられる。 ウルヴァリンと恋人の関係(特に名前に刻まれた想い)や、老夫婦とウルヴァリンの関係なども、短いながらも心にきちんと残るように丁寧に描かれており、監督の力量が窺われる。 命名の由来のエピソードは完全には理解できなかったが、恋人の“月”と引き裂かれた“ウルヴァリン”は、ローガンの方ではなくて、恋人の方だったというのは面白い。 確かに、孤高となり静かに夜に輝き続ける“月”と、孤独なローガンの姿は少々ダブるところがあるかもしれない。  展開は恐ろしいほど拙速なものとなっているが、極力無理がないように上手く編集されている。 各キャラクターの心情や動機を窺うことができるほど、心の深い部分まではきちんと描きこまれていないのは確かなことだが、エンターテイメント作品なので、この程度でも許されるのではないか。 しかし、ウルヴァリンが記憶を失うという“既定路線”に対して、上手くリンクできなかったことが悔やまれるところか。 「そうなっているのだから、しょうがない」と取って付けたような仕上がりにせざるを得なかったのはもったいない。 “続編”という手段もあるので、あまり急がなくてもよかったのではないか。
[映画館(字幕)] 7点(2009-09-12 23:21:05)
291.  96時間 《ネタバレ》 
アクション映画としては、満足できる仕上がりとなっている。比較的リアリティを感じさせるアクション・設定となっている点が好感をもてる。悪い意味での“突っ込みどころ”が少なく、鑑賞中には嫌悪感や疑問符などは感じさせなかった(「頼むから、クルマごとクルーザーまでダイブしないでくれ」と祈っていたら、きちんとクルマから降りて、橋から飛び降りてくれて一安心した)。 また、純粋なハリウッド作品ではなく、フランス製ということもあり、いい意味で洗練されていない“粗さのある切れ”が逆に引き付けられる。 リーアム・ニーソンの存在感によって、クールかつ重厚な作品にもなっている。 腕っぷしの強さだけではなくて、名刺一枚で乗り込んでいく度胸や知的さ、冷静な状況判断などは、あまり見られないタイプの主人公だ。 そういう意味においても、評価できる作品になっている。 さらに、前半に父親としての愛情及び、愛情を上手く注げない寂しさや苦悩を存分に描くことによって、それがストーリーにいいスパイスとなっており、効果的に機能している。 いい父親にはなれなかったからこその想いも感じられる。 フザケタ作品にはなっていないので、最後のオチだけがやや悔やまれるところ。 ハッピーエンドにすること自体は反対しない、むしろ無事に父と娘が再会できたときはちょっと感動することもできた。 しかし、能天気にアーティストに会いに行って、「俺は義父よりも凄いんだぜ!」という子どもじみたオチを見せられると、ちょっと疑問符も生じてくる。 犯罪組織とはいえ、あれほどの大量虐殺を行ったのだから、なんらかの代償を払ってもよかったのではないかという気もする。 犯罪組織やフランス警察にあれほどの喧嘩を売ったのだから、“もう日常生活には戻れない”“もう娘とは会うことが出来ない”といった“苦しさ”や“やりきれなさ”を最後まで維持して欲しいところでもある。 自業自得ともいえる主人公の娘と、無関係な者にまで暴走し続ける父親なのだから、もう少し自己中心的になり過ぎない程度に抑えないといけない。 “悪いヤツは全員ぶっ殺して、俺たちだけは幸せになりました”ではいつものリュック・ベッソン映画になってしまう。 観客に最後まで“スカっとした気分”になってもらうためには、仕方のないオチを製作陣は選択したのかもしれないので、不正解というわけではないが、正解ともいえないところ。
[映画館(字幕)] 7点(2009-09-05 21:42:02)
292.  HACHI/約束の犬 《ネタバレ》 
評価をするのは難しい映画だが、素直に感動することもできるので、それほど悪くはない映画に仕上がっている。 映画としてはかなり物足りない作りにはなっているが、ラッセ・ハルストレム監督がベテランらしく温かくて優しい映画を作った。 パーカーとHACHIとの関係ばかりではなく、夫と妻との関係、父と娘との関係をもきちんと盛り込まれている。 特別なイベントは存在しないが、彼らの関係性やお互いに対する気持ちは伝わってくる。 本作のストーリーははっきり言って存在しないといってもよいが、ゴチャゴチャと話を膨らませるよりも、HACHIだけをメインに撮ろうと余計なストーリーを省いた点は逆に潔いともいえる。 本作において必要不可欠な「パーカーとHACHIとの交流」「パーカーを待ち続けるHACHIの姿」だけあれば十分と判断したシンプルさが最近の映画には見られないものであり、評価できる点にもなっている。 秋田犬は、表情が豊かなため、色々と問いかけているようにも感じられるので余計な説明も要らないだろう。 ストーリーは最後の最後まで極めてシンプルとなっている。 新聞に載ったからといって変なミラクルも起きず、登場人物と絡んで余計な感動を強いることもなく、駅で待つHACHIにあり得ないようなハプニングも襲わない。 ただただ、周囲の人々はHACHIを見守るだけだ(時折食事を与えるだけ)。 観客も彼ら同様に、主人を待つ続けるHACHIを見守るしかない。 それだけでよいのではないか。 パーカーの孫のやり取りは、本作を見る子ども達向きには良いまとめをしてくれたと思う。 HACHIの姿を通して、“愛する人を忘れない気持ち”を大事にするという大きな話でまとめてくれれば、これが特別な話ではなくて、自分にとっても身近な話だと分かるだろう。
[映画館(字幕)] 7点(2009-08-16 22:44:17)(良:2票)
293.  それでも恋するバルセロナ 《ネタバレ》 
かつてはニューヨークを舞台とした映画を得意としていたウディ・アレン監督だが、ヨーロッパとの出会いを果たし、今回はスペインとの出会いにより、監督の新たな一面が引き出されている。 ニューヨーク時代のシャープで冷淡な雰囲気とはまるで異なり、スペインの陽気な雰囲気がそうさせているのだろうか、全体的に丸みが感じられる。 また、ストーリーがどんどんと予期しない方向に進みながらも、完全な調和が保たれている点が素晴らしい。 本作を見るまでは、アレン監督の衰えを感じていたが、ベテランの円熟した手腕を発揮したばかりか、新たな境地を模索している点は驚かされる。 まだまだ彼は終わっていないようだ。 アントニ・ガウディの作品、スペインのギター、写真などを利用することにより、芸術的な雰囲気に溢れている点も見逃せない。 さらに、ウディ・アレンらしさは失われてはいなかった点も評価したいところ。 各キャラクターは結局、同じところをぐるぐると回っているだけだろうか。 レベッカ・ホールは婚約者を愛しておきながら、人生の不満を抑えられずにいるものの、スペインで世話になった奥さんと同様に現状を維持しようとする。 スカーレット・ヨハンソンは何かを得たとしても、現状に納得できずに自分探しを延々と続けている。 ハベエル・バルデムとペネロペ・クロスはお互いを傷つけながら、別れたり、戻ったりを繰り返している。 人間というものは、悩んだり、苦しんだりしながら、結局スタート地点から進められずにいるものなのかもしれないというようなことを、本作を見て感じた。 人間というものは変われるようで変われないのだろうか。 エンディングについては、特にオチもなく、投げっぱなしにしたことは、本作のテーマや趣旨を考えれば、ベターな選択だろう。 確かに、何らかの結論を付ける類の作品ではない。 ただ、シニカル的な味付けをもうちょっと工夫すると、一般の観客には分かりやすい作品になったかもしれない。 アカデミー賞を受賞したペネロペは、(役柄の違いがあるにせよ)スカーレット・ヨハンソンを圧倒する存在感をみせている。 彼女の登場により、空気感が明らかに変わるという面白い効果が出ている。 それまでもカオスな状態だったのに、さらに異次元のカオスに突入しているが、ウディ・アレン監督がそれを上手くまとめ上げている。
[映画館(字幕)] 7点(2009-07-12 14:32:28)
294.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:破 《ネタバレ》 
テレビ版のストーリーは一応知っている程度のそれほどシリーズに興味がない立場からレビューしたい。 テレビ版から上手く再構成・再構築が図られている。「テレビ版と全く同じものを作るのならば、わざわざ劇場版を作る必要はない」という製作者の強い想いが感じられる。テレビ版の各キャラクターは周囲と意思疎通が図れず、それぞれの“孤独”が前面に押し出されているだけの悩める中学生に過ぎなかったが、劇場版はシンジ、綾波、アスカともに“大人”になっている。テレビ版では人形のような存在だった綾波は恋愛感情(ぽかぽかした気持ち)を持ち、碇親子の関係修復にチカラを貸そうとしている姿は、大きすぎる変化だ。テレビ版では自分のことしか考えずに暴走していたアスカが、そうした綾波の気持ちを知り、三号機のテストに乗ると言ったのも大きな変化だ。シンジが三号機のテストパイロットがアスカだと知っていることもテレビ版とは異なり、大きな意味をもった。「攻撃できない」というシンジの意思がより加わり、ヱヴァから降りるという決意についても、大きな意味をもった。また、アスカを攻撃できないということだけではなく、使徒に取り込まれた綾波を助けたいという強い意思をシンジから感じられるところも大きな変化だ。ひたすら謝って現状を維持することを望むシンジにも大きな変化が感じられる。テレビ版を見ていた視聴者も十数年が経ち、悩むだけの“子ども”ではなくて、強い意思をもった“大人”に変わらなくてはいけないとでも庵野総監督は伝えたいのだろうか。 脚本的には、上手くまとめあげられていると思うが、映像上においてはややまとまりを欠いているところもある(新宿MILANOの音声状態が悪すぎたという問題もあるが)。 シリーズのファンは自己補正できるかもしれないが、あまりシリーズを深く楽しんでいない者にとっては、詰め込まれすぎているためか、それぞれのエピソードがぶつぎられていると感じられるところもある。“序”の方が、まとまり感はまだ良かった。 多少期待していた新キャラクターの真希波については、今回においてはそれほど重要なキャラクターではなかったか。コアの変換もなしに二号機を操縦できたり、ビーストモードを起動できるというのは謎だが、戦線を離脱したアスカと、テレビ版におけるスイカ畑での加持の代わりをさせたに過ぎない。坂本真綾を起用したかっただけのような気もする。
[映画館(邦画)] 7点(2009-07-04 16:32:46)
295.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序 《ネタバレ》 
正直に言うと「エヴァンゲリオン」は今までまったく興味が無かった。過去に一話たりとも見たことはない。しかし、ここまで盛り上がりをみせられるとどれほど凄いのかをこの機会に触れておくのが、ベターではないかという思いを強くした。とはいえ、いきなり見たとしても時間と金の無駄になるのが目に見えていたので、一通りDVDで旧作をさっと見ることとした。 今回の劇場版はネームバリューで客を釣る単なる金儲けという企画ではない。決して旧作の焼直しではない、まさに新たに生まれ変わったオリジナルストーリーに近い仕上がりをみせている。製作者のプライドや信念が感じられる渾身の作品だ。「今さらなぜヱヴァなのか?」という問い掛けに十分応えるものだ。この新作により、シリーズ全体の更なる底上げに繋がるものとなるのではないか。 全体的に編集が非常に上手く、過不足を感じない内容となっている。 前作と同様の内容でもあるが、旧作の数倍のブラッシュアップが感じられる。 「ヤシマ作戦」が成功するのは、誰しもが知っていることだが、それにも関わらず、ぞくぞくするような緊張感、迫真の盛り上げ方は評価できる。 恐らくストーリーは我々が知っているものとはかけ離れていくのではないか。それとともに、各キャラクターも知っているものではなくなっていくような気がする。今回の作品でも、各キャラクターには微妙に変化を感じられる。シンジは確かに弱くて情けない姿を露呈しているが、今回の彼にはどことなく“強さ”を感じる。「ヤシマ作戦」から逃げなかったのは、彼の成長だろう。彼の成長を描くために、前作とは異なり、簡単に終わらせるのではなく、「ヤシマ作戦」をスケールアップした壮絶なものとして描いている。父親ゲンドウの更迭発言を乗り越える逞しさを感じられる。 ミサトもシンジを強く信じる気持ちが随所に現れている。序盤において、リリスをシンジに見せて、シンジ一人ではなく、誰もが共に戦っているという想いをシンジに伝えている。トウジとケンスケのボイスメッセージも、その視点の表れである。 綾波レイも非常に重点を置いて描かれていると思う。新シリーズの彼女はどこか違う。 人形ではない、彼女の意思がどこかに感じられる。「次は、もう少し(シンジを)レイに接近させる」というゲンドウの会話からも、シンジとレイの関係が大きなテーマにもなりそうだ。
[映画館(邦画)] 7点(2009-07-04 16:25:03)
296.  スター・トレック2/カーンの逆襲 《ネタバレ》 
タイトルを見れば分かることだが、前作のような哲学的なテーマには挑戦せず、今度こそは普通の対戦型SFになっているだろうと思っていた。 そのため、80年代という時代背景を考えれば、今のSF作品を見慣れている自分にとっては恐らく見るに耐えないレベルの低いものになるのではないかとタカをくくっていた。 しかし、予想に反して、意外に面白いと感じられて、この世界観に引きずり込まされた。 80年代において、このクオリティ、壮大なスペクタクル感、人間模様、激しいバトルを描くことができるというのは、流石は人気シリーズだけのことはある。 日本においては、他のSFの陰に隠れてしまったことが、もったいない。 このシリーズは過去に一度も観たことはなかったが、シリーズを全部観てもいいかなと思わせるほどに、楽しむことができた。 カーンとカークの過去の関係についてはテレビ版で深く描かれているようであり、本作ではあまり語られていないので完全には理解できないことは残念だが、この程度ならば「過去に何かあった」ということだけを感じ取れれば、問題ないだろう。 “規則”とそれだけに囚われない“直感的な行動力”の重要性についても本作のテーマになっている。 “直感的な行動力”がカークの勝因であり、またカーンの敗因だろうか。 常識に囚われない発想こそが、冒険の“基本”であることが描かれているのと同時に、規則に則って、会話を“暗号化”していることも見逃せない。 “規則”ももちろん必要なことだろう。 要するに“臨機応変な行動”こそが冒険にとって重要ということのようだ。 残念なことは、「スポックが死ぬ」ということを、本作を観る前から知っていたことだ。 当然「スポックが復活する」ということも観たこともないのに知っているが、それを知らないで見たら、果たしてどう感じただろうか。 “感動”はもっと大きかったように思われる。 バルカン人らしく、感情では行動せずに、すべて論理的に考えた末での行動ではあるが、やはり“友情” “エンタープライズ号に対する愛着”という非論理的な感情を思わずにはいられない。
[DVD(字幕)] 7点(2009-06-14 03:09:46)
297.  天使と悪魔 《ネタバレ》 
原作未読。前知識もほとんど入れずに鑑賞。「ダ・ヴィンチ・コード」とは異なり、本作には比べる材料がないので、普通に楽しめた。スリリングな展開が繰り広げられており、大して難しくもないストーリーを追っていけば、それほど悪くはない映画といえる。宗教にはそれほど詳しくないので、逆に興味をもって本作を観ることができる。 ただ、「ダ・ヴィンチ・コード」同様にストーリーをひたすら進めることに主眼が置かれており、それぞれのシーンや登場人物の内面などをゆっくりと堪能することはできない。ロバート・ラングドンという者が優秀なのは分かるが、彼が何を考えていて、どういう人物かは伝わってこない。“神”について、カメルレンゴと語るという見せ場は用意されているが、それだけでは弱い。 説明的なセリフが多いのも難点だ。色々なことを喋っても次のシーンに行けば、大半は忘れてしまうのだから、重要なことを語らせればよいのではないか。 小説というものがあるのだから、詳しく知りたい人はそれを読めばいい。 映画の役割は別にあり、映画は重要な“骨格”だけでも問題はないだろう。 オチに関しては、多少のサプライズが用意されているが、それほどの驚きはなかった。 まず、リヒターという衛視隊の隊長が登場した瞬間に直感的に“怪しい”と感じられた。シュトラウスという枢機卿もかなり“怪しい”人物だ。黒幕は彼らだろうかと当初は考えた。しかし、あからさまに“怪しさ”を押し付けるために、逆に彼らは“白”なのではないかと考えるようになっていった。このあからさまな押し付けはミエミエの引っ掛けであり、一番“怪しくない”人物こそが“黒”ではないかと考えて、リヒターが日記を隠した辺りでほぼ確信に至った。結果はその通りになったわけだが、自分のヨミが鋭かったというよりも、ロン・ハワードのツメの甘さが目立つのではないか。観客をミスリードさせたいという彼の生真面目さが逆に裏目に出てしまっている。 また、同じ“神”を信仰する者同士が争うという虚しさや、“宗教”を守るために大切なものを奪うという矛盾をもっと込めれば、現代の紛争に対するメッセージにもなったので、その辺りにも、チカラを込めて欲しかったが、単なるサスペンスで終わった感は強く、深みは感じられない。“宗教”メッセージを込めると、また問題が再燃するので、あえてそういう色を省いたのかもしれないが。
[映画館(字幕)] 7点(2009-05-24 01:34:00)
298.  フロスト×ニクソン 《ネタバレ》 
裏をかきあうような心理戦が攻防されるわけではないが、それぞれの思惑が交錯して、緊張感のあるインタビューを堪能できる。インタビュー程度でここまで面白く仕上げたことは賞賛できる。終盤までは一方的な展開だったが、見応えのあるバトルにはほとんどスポーツを鑑賞しているかのようなノリで引き込まされる。奇をてらわず正面から描ききった実直な真面目さは、ロン・ハワードらしい作品といえる。 本作のニクソンは意外と魅力的に描かれていたのではないか。 大統領らしい威厳としたたかさに溢れている一方で、人間らしさも感じられる。 ニクソンがこだわっていた靴のエピソードにしても、ニクソンはあのような靴を履きたかったけど、弱々しいイメージを嫌って履きたくても履けなかったのではないか。 本当にしたかったことが、彼は出来なかったのだろう。 インタビューのラストで、ようやく自分がやりたかったことができたのかもしれない。 本来ならば、ニクソンは主役になるべき存在ではなくて、脇役としてチカラを発揮するタイプなのかもしれない。 不相応な場を与えられたことが、彼自身の悲劇なのだろうか。 議会でも裁判でもなく、メディアだからこそ、彼の本音を引き出すことができたということも特筆すべきなのかもしれない。 ニクソンもまたカメラの前だから、自分の本音を語ったのだろう。 本作には、メディアのチカラの大きさということも描かれている。 資金難に苦しむフロストの姿も描かれていたが、やや中途半端な仕上がりになっている。 この辺りはばっさりと切るか、触れるのならばもうちょっと踏み込んで描くともっと面白くなったのかもしれない。 マスメディアに関するマネービジネスという視点からも描けば、より深みが増したのではないか。 本作を機会にニクソンの映画を何本も観てきたが、正直言って、ニクソンという人物がよく分からなかった。 孤独で弱い男なのか、それとも誰にも負けない強い男なのか。 無能な男なのか、それとも才能がある男なのか。 わがままで自己中心的なのか、それとも人一倍周囲に気を使っていたのか。 彼は世界を変えられるチカラのある男なのか、それとも無力なのか。 分かったことは、人間を単純に判断することはできないということだろう。 一人の人間には、当然光もあれば、闇もある。 人間は複雑な生物であり、その中で特に複雑なのがニクソンといえる。
[映画館(字幕)] 7点(2009-05-17 22:10:33)
299.  ニクソン 《ネタバレ》 
この時代について詳しいわけではないので、はっきり言って誰が誰だか完全には分からなかった。 また、本作に描かれた内容が事実に即しているのか、中立なものかを判断する尺度も持ち合わせていないので、そういった観点からも批評はできない。 決して面白い映画ではないと思うが、映画自体のレベルは非常に高いと感じられた。 確かに、焦点はボヤけているとは思う。 本作では「ニクソンはこういう人物である」とはっきりとは描かれていない。 「ニクソンは最低の大統領だ」と一義的に決め付けて、その方向に向けて製作することは簡単かもしれないが、あえてオリバー・ストーンは方向性を決め付けずに多角的な視点からニクソンを描き出そうとしていると感じられた。 父親、母親、兄弟との関係、妻や娘との関係、部下や支持者との関係、戦争を反対している若者との関係、他国の指導者との関係など余すところなく描かれている。 ニクソンという人物が薄っぺらく描かれているのではなく、かなり深みが増して描かれている。 そのため、本作を見たそれぞれが、それぞれの思いでニクソンをジャッジできるのではないか。 賛否両論のある者を描く際にはもっとも適したアプローチをオリバー・ストーンは行ったと思う。 Wikipediaを読んだ方がよほどマシと思える映画ではなく、やはり彼の手腕は本物だと感じられた。 ニクソンについてよく知らないので、あまり書くべきではないが、本作を見た印象としては、「白を黒と言い張り、黒に変えてしまうほどのパワーのある政治家」のような気がした。 まさに政治家らしい政治家といえるかもしれない。 政治家として黒と主張すること自体は悪くはないが、貧困な家庭環境等の影響のためか、根底となる“魂”が歪んでいたような気がする。 彼の外交政策は評価するところが多いにも関わらず、彼が嫌われた理由としてはその辺りにありそうだ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-05-17 22:07:25)
300.  大統領の陰謀 《ネタバレ》 
「ウォーターゲート事件」の詳細や、ニクソン大統領政権下の情勢等に疎いので、はっきりいって“何がなんだか分からない”“誰が誰だかよく分からない”という状態だったが、何らかのパワーのある作品ということはよく分かった。 それを支えているものは、“ジャーナリスト魂”と“報道の自由の精神”だろうか。 面白みには欠けるが、“電話取材”“インタビュー取材”“メモの重要性”“ネタに対する裏付けの根拠”等の取材の基本を忠実に描いているために、こういった精神がきちんと伝わってくるのではないか。 また、基本的にはもちろんジャーナリスト寄りだが、一方に片寄るわけではなくて、なるべく中立に描こうとしている点も好印象。 実際の映像を用いて、相手方の言い分や反論もきちんと描きこまれている。 さらに、映画らしい余計な展開もない点もなかなかの思い切った演出となっている。 サスペンスタッチで描くこともできただろうし、国家の陰謀を大げさに描くこともできたはずだ。 そういった手法を取らないことによって、“面白み”や“派手さ”はなくなってしまったかもしれないが、“真相を追い求めたいという姿”や“圧力等に負けない精神”を虚構ではなくてリアルに感じられる作品に仕上がっている。 単純な面白みには欠けるものの、“目に見えない圧力”は過剰には描けないもののきっちりと描かれているので、そういった面白みは感じられるものとなっている。 地下駐車場でのなんでもない物音、夜道を歩いている際のプレッシャー、情報提供者と話している際の周囲からの視線などの演出が上手い。 圧力に屈するのは簡単なことだが、圧力に対して抗うことの厳しさや、単純で地味な作業が報道を支え、その報道が世界を動かしているということの重みを感じさせる作品だ。 本作を見れば、“報道”に対する見方が少々変わるかもしれない。
[DVD(字幕)] 7点(2009-05-17 22:06:33)
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