Menu
 > レビュワー
 > すかあふえいす さんの口コミ一覧。15ページ目
すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
41424344454647484950515253
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
41424344454647484950515253
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
41424344454647484950515253
>> カレンダー表示
>> 通常表示
281.  偽牧師 《ネタバレ》 
チャールズ・チャップリン短編時代の傑作の一つ「偽牧師」。  この「偽牧師」は「黄金狂時代」の前に撮られた西部劇の要素を含んだコメディだ。  チャップリンは「移民」や「犬の生活」辺りから優しさのにじみ出る映画が増えてきたが、本作はそんなチャップリンがブラックだった頃の面影を感じさせる。  今回のチャップリンは脱獄囚。  何で捕まったのかは知らないが、お腹が空いてホットドッグでも盗んだ(「犬の生活」)か、無銭飲食(「モダン・タイムス」)か、女性関係のもつれ(私生活ノンフィクション)で豚箱に入れられたかどれかだろう。  それよか下水道から脱走しただって!? 新聞にそう書いてあった。 後の「ショーシャンクの空」である(違います)。  そんでチャップリンは牧師の服を拾って偽の牧師と化す。  しかし運の悪い事に本物の牧師と勘違いされてチャップリンは街に居座る事となる。  教会でやりたい放題自由奔放なパフォーマンスを演じるチャップリン。  聖書を見て「宣誓!」の場面は爆笑したわ(裁判についての詳細はビリー・ワイルダーの「情婦」かシドニー・ルメットの「十二人の怒れる男」辺りが解りやすいかな)。  踊って、笑って、騙してバタバタ・・・「黄金狂時代」への布石が散りばめられた44分間。  でも流石に帽子は食えなかったか。  泥棒仲間との再会でギクリ、スピーディーなスリ合い、「牧師」から「紳士」への早変わりなど見事としか言えない。  ラストが実にチャップリンらしい締めくくりだ。 ありがとう保安官。どうせなら銃撃戦の無い場所でほっぽってくれれば良いのだが・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-01 20:13:23)
282.  眼下の敵 《ネタバレ》 
アメリカ、ドイツ両方の視点で描かれる潜水艦映画の傑作「眼下の敵」。 ロバート・ミッチャム演じる経験豊富な艦長は亡き妻のために意地でも潜水艦を叩きのめそうとしている。 一方、クルト・ユルゲンス演じる潜水艦の艦長もまた亡き息子達のために死に場所を求めてさまよう。  潜水艦の機雷が爆発するシーンの迫力、緻密な計算で魚雷を避けるシーン、“音をたててはいけない”シーンの緊迫感など100分弱のコンパクトさも手伝い並々ならぬ密度を持っている。   駆逐艦の名通りに徹底的に叩こうとするシーンは怖い。一方、潜水艦は酸素との戦いもあり時間的余裕はない。 計器が割れるほどの衝撃が襲う恐怖。 その恐怖を“歌”によって克服しようとするシーンが熱い。 “一騎打ち”だ!死なばもろとも、死ぬのは俺一人でいい、壮絶なクライマックスと敬礼、敵味方を超えて結ばれる友情。面白い。
[DVD(字幕)] 9点(2014-12-01 18:05:27)
283.  誓いの休暇(1959) 《ネタバレ》 
延々と続く白い1本道、そこを一人歩く黒いスカーフの女性。ナレーションによって女性と、その女性が待ち続ける“男”の話が語られはじめる。 この映画、水がところどころで印象的に映される。 川の水際で進軍する兵士たち、旅人たちを癒す水道水、行き先を阻む水溜り、ぬかるんだ泥水、列車の蒸気、人の汗、そして流される涙、涙、涙・・・。 舞台はナチスとソ連軍が死闘を繰り広げる戦場へと映り、アリョーシャという名の一人の兵士が戦車に追われる場面となる。まるで怪物のようにアリョーシャを追いかける戦車。モチロン操縦者の顔は映されず、アリョーシャは偶然にも拾った武器によって“英雄”になってしまう。余りに出来すぎた戦果が、後の悲劇をより際立たせる。 思わぬ幸運がくれた休暇。だが、日数は少ない。アリョーシャは無事母の元に行けるのだろうか。タイムリミットが刻々と迫る。 この映画は、戦場の恐怖を描く映画からロードムービーに切り替わっていくが、それでも戦火はアリョーシャの故郷にまで拡がっていくのだ。 旅先での出会いと別れも印象的だ。 列車で交わされる談笑、片脚を失った夫を迎え入れる妻、貨物列車での出会い。 絶えず運動を続け行き先への距離を縮める列車は、男女の距離も縮めて行く。そんな二人も、別れを惜しんで旅を続ける。列車の看視兵との“取引”も面白い。 行き先々の街も空襲で廃墟と化し、列車を運ぶ橋すら人々から奪い取る。重傷を負っても生き延びる人もいるし、キレイな顔のまま死にゆく人々もいる。 アリョーシャの心に“折れる”名も無き車の姿、音楽の畳み掛けが卑怯すぎんだろチクショウ。 母親が駆け、それに気付いたアリョーシャも車から降りて駆けより、熱い抱擁を交わす・・・ああ、再会するという事がこんなにも嬉しい事だとは。 だが、戦争という見えない糸が、アリョーシャを再び戦場に連れて行ってしまう。それでも、アリョーシャは誓い、母は待ち続けるのだろう。たとえ二度と戻らないとしても・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-30 09:42:53)(良:1票)
284.  仁義なき戦い 《ネタバレ》 
2作目以降、特に「代理戦争」「頂上決戦」「広島死闘篇」は素直に作品の素晴らしさに打ちのめされても良いが、最初の「仁義なき戦い」はギャグでやっているとしか思えない。 壮絶、痛快、ドタバタ、もう滅茶苦茶。 戦後の闇市における混乱、日本刀で腕をブッた斬られる凄まじい幕開け。  アホだ。  馬鹿ばっかだ。  男は何て馬鹿な生き物なのか・・・人が死ぬたびに「テレレー♪」は卑怯だろ。笑うなって方が無理だ。  実録?実際だぁ? こんなん見て信憑性沸くかボケえ! 山守のオッサンが無敵すぎて笑うしかねえだろうがあっ! ラスボス:山守  「実録もの」特有の胡散臭さ。その臭さが良いんだよ! 今更「ゴッドファーザー」みたいな堅苦しい叙情詩をやるわけにもいかないし。  だからこそ破壊力を!壮絶極まる!血で血を争う破壊力を高めなければならない! 正に「ゴッドファーザー」の「劣化ウラン弾」!それをこんなに面白い映画にしてしまう深作欣二は凄えぜ。弾けた時の一方的な貫通力を極めた怪作なのだ。  任侠?仁義?んなもんはドスとハジキでバキュンキュンキュンよぉ!  なぁ文太の兄ぃ? 「最後じゃけん、言うとったるがの~狙われるもんよりも、狙うもんの方が強いんじゃ・・・そがな考えしとると、スキができるぞ」 テレレー・・・ テレレー・・・  ま、何だかんだ言って傑作です。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-30 06:33:13)(良:2票)
285.  仁義なき戦い 代理戦争 《ネタバレ》 
一番最初の「仁義なき戦い」は音楽の使い方がギャグとしか思えなかったが、2作目、3作目以降は音楽の使い方も死に様も漢たちの血生臭いドラマもどれをとっても切れ味しかなかった。 特に本作はシリーズの駆け引きと虚しさを噛み締められる一篇だ。群像劇としての面白さもより磨きが掛かる。  最初のダイジェストで前がどんなかおさらい、世界の代理戦争は、当然日本のヤクザ社会でも例外ではない。 今回の菅原文太の兄貴が味わう虚しさは、シリーズ随一。 小林旭の知性派というかインテリ的なキャラも喰えない野郎だ。 この世界、暴力だけじゃ食っていけないからねえ。 白昼堂々暗殺を仕掛けるヤクザの鉄砲弾ども、 相変わらず憎めない山村のおやっさん、 木刀から日本刀までブンブンうなる、 ビール瓶でも渇入れて~、 ちょっと可愛そうになってくるレスラーのおっさーん、 成り行きでヤクザになっちゃった倉元と母ちゃんのタバコの件が忘れられへん、 自重する気皆無な山守、 発炎筒もいきなりの強襲もビックリする時はビックリする人間臭いヤクザたち、 文太の兄貴だけ闘る気満々で空回り、 利用される女達の哀しみ、 停電の会合場面は妙に心に残る 、血で血を争うぐちゃぐちゃの殺し合い・・・。   クライマックスは何度見ても強烈だ。 文字通り粉微塵になってまで“殺され”続ける残酷さ。殺し屋たちも、時と場所は選べない。 砕け散った一片を、文太の兄貴が握り締め、打ち震えるシーン・・・!  原爆ドームが、戦後も広島を中心に繰り広げられる殺し合いを無言で嘆くかのように、物語を締めくくる。
[DVD(邦画)] 9点(2014-11-30 06:18:57)
286.  グランド・ブダペスト・ホテル 《ネタバレ》 
ウェス・アンダーソンの現時点での最高傑作。 戦争、刑務所まで駆け抜けるスリルに満ちたコメディ映画だ。 ウェス・アンダーソンの映画には短編「Bottle Rocket」の頃から銃がよく登場するが、この映画も銃によって終盤は盛り上がる。 回想形式で語られるこの映画は、あるホテルの取材をする男と、その寂れたホテルを買収した男の会話、そして男はいかにしてこのホテルと関わり、買う事を決めたのか。物語は過去へと飛び、事の顛末を面白可笑しく、ちょっぴり切なく語り始める。 風景画のように美しくそびえる「グランド・ブダペスト・ホテル」。従業員としてホテルに配属されたゼロが出会う様々な人々。 とにかくこの映画、グスタヴの頭の回転の速さ、行動の速さで走って走って走りまくる。 グスタヴ支配人が口が超悪い上に84歳の夫人まで絶頂させちゃう紳士。何時の間にか逮捕されるわ絵をパクッちゃうわブタ箱にブチこまれるわ戦争に巻き込まれるわ大脱走するわ銃撃戦に遭遇するわで災難続きだが、人に対する恩はけっして欠かさない。 自分の従業員を侮辱する奴には恐れる事無く怒って守ろうとし、その恩が、人の縁がグスタヴを助けまくってくれる。 それに仕えるゼロも何時の間にか遺産相続の問題や時価数億の絵まで任されるわ雪山を猛スピードで滑るわ殺し屋を突き飛ばすわ恋人とバキューンッするわで色々ヤッちゃってます。一体いつから映画館はラブホ●ルになったんだっ! 絵を取り替えてしまう件は絵の破壊力も合わさって腹筋を持っていかれた。 アガサも自分のケーキで人助けにはなるけどあんな事に使われて複雑な気持ち。 ドミトリー側にしても、まるでオークションの競売でもするかのような雰囲気。金目当てで“家族”になる連中ばっかり。 猫も落ちれば殺し屋も若きカップルも落ちます落ちます。 洗濯かごはギャアアアアッ、修道僧の連係プレー、盗んだバイクで走りだす~、終盤の銃撃戦とサスペンス映画としても面白い。この辺は「生きるべきか死ぬべきか」の流れを感じさせる見事さ。 終盤のサクサク事が運ぶ部分は楽しく見ていたが、彼らの運命は画面が白黒になってまでしんみりと締めくくられる。列車にはじまり、列車によってまた。いくら金があったって、最愛の人が隣にいないなんて寂しいもんなあ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-30 05:36:07)
287.  昭和残侠伝 死んで貰います 《ネタバレ》 
全盛期のマキノと比べると落ちるという人もいるかも知れないが、俺はマキノが晩年に咲かせた傑作の一つだと思っている。  高倉健にとっても、健さんの生き様が鮮烈に刻まれた1篇だ。  夜、ヤクザが賭博をする場面から映画は始まる。若い男が博打の不正を“眼”で訴えるが、話は入れられず男は後を去り、道端で先ほどのゴロツキが男を袋叩きにし“警告”をして去っていく。  雨が降りしきる中、傷ついた男を若い乙女が手当てをする。傷ついた心に、暖かい酒と優しさが染み渡る。この場面がキレイでさあ。  そっから3年後、どうしてこうなったヤッパ片手に不正ごとをブッ刺し、賭博をブッ壊してブタ箱行き。見破ってこそイカサマなんて言うから・・・。 健さんは、一体何度映画の中で捕まっているのだろうか。  「ヤクザもここまで落ちたら一人前の馬鹿だ」 菅原文太「サーセン」  地震で絶たれる想い、家族の帰りを待ちわびて死んだ人々への申し訳なさ・・・。 「“きらく”って宿知っているか?」 「きらくきらくと言われても・・・」 ツマんねえギャグ言ってんじゃねえよコノヤロウ。  震災後の混乱がヤクザも追い込む。  出所後はまっとうになろうと振舞うが、惚れた女の危機には黙ってられねえ人情、その女のためにひたすら耐えて、耐えて、耐える。 二人っきりで本音を洩らす男気、それに応える侠の精神。  料理人の腕前もまた“血”で決まってしまうのだろうか。俺も健さんの玉子焼き食いてー。 松っちゃんのスタイリッシュ面接。  ただ、彼自身が変わっても、それを知らない人間は絶えず追いかけてくる。今まで流した血や体に刻まれた傷、犯してきた罪はどんなに洗っても拭われない。  そして、たった一枚の紙切れのために死んでいく人々の無情さ。  積もり積もった怒りは、爆発させるしかない。柳の木が連なる長い道を、ゆっくりと歩いていく漢たち。  抜刀、血しぶき、凄絶に散る侠たちの生き様、死に様。 馬鹿は死ななきゃ治らねえ・・・「死んで貰うぜ」・・・!
[DVD(邦画)] 9点(2014-11-30 03:51:41)
288.  日本のいちばん長い日(1967) 《ネタバレ》 
岡本喜八の最高傑作を1つ挙げるとすれば何か。それは意見が別れると思うが、日本人として最高傑作を挙げるならやはりこの作品になるだろう。 映画は日本列島を映した地球儀、鳴り響く爆撃音と共に始まる。20分に及ぶ“プロローグ”が。ドキュメンタリー映画のような映像がしばらく続くが、短いショットと殴りつけるように放たれるセリフは一切の退屈を許してくれない。 空襲で焼かれる都市、焼け焦げた遺体の惨たらしさ。それを何度も見せられ“くどい”と感じる者もいるだろう。だが、実際にあの日を生きてきた日本人は、ああやって何度も地獄を見せられ“慣れてしまう”現実が存在していた。どんなに嫌でも、眼を背けられないような現実に耐えるしかなかった。 20分に及ぶプロローグが終わり、そこからが本番。 戦争を終わらせようと人々が動き始め、歯車が回り、映画としての面白さも動き出す。彼らが流す涙の中には、本当に懺悔している者もいるだろうし、敗北した事への悔しさ、これから日本が辿る未来を絶望視して泣いている者、様々な人間がいただろう。 「日本の国民を生かすも殺すも」ってやり取りが強烈だぜ。 本土決戦だの特攻だの頭のおかしいトチ狂った言葉を並び立て、一体コイツらは何人同じ日本人を“見殺し”にしているのか。まだ殺し足りないのか貴様ら。 この瞬間にも、母親が丹精込めて作ったであろう握り飯を美味そうに食べ、守る者のために出撃していく漢たちがいる。死を覚悟して。ああ、早く、早く降伏してくれ・・・そう思ってしまう。 様々な人々の主義主張やイデオロギーのぶつけあい、口舌の刃による斬り合い。 それが本当に刃を抜き放ち、銃を突き付けて殺し合うまでに発展してしまう。実際にこんな事があったのだから恐ろしい。 自転車をこいで行き来するシーンの何と狂気地味た事か。本当に何を言っているのか解らないわめき振り。 斬られた首はイスに隠されても、事件そのものは隠蔽しきれない。 官邸に一人残っていた女性の胆力に恐れ入る。或る意味、今回唯一クレジットのある女優・新珠美千代が一番強烈だったかも。 複数の玉音版による撹乱、放送室で軍人を睨みつける放送員の加山雄三、そして力尽き、自らに“ケジメ”を付ける軍人、軍人、軍人たちの散り様。 男たちは走った。走って、走って、走り尽くした。でも一体誰がために?何のために?そんな虚しさが、画面を包み込む。
[DVD(邦画)] 9点(2014-11-30 03:05:24)
289.  俺たちに明日はない 《ネタバレ》 
ボニー&クライド物はフリッツ・ラングの「暗黒街の弾痕」の方が粋で好きなのだが、アーサー・ペンのこの作品も大好きだ。 街でバッタリ会ったボニーとクライドが次から次へと銀行を襲っては逃げ、そして滅んでいく様を描く。 実際に起きた連続強盗事件を元に描くが、前科のあるクライドはカタギでやっていくには辛い身の上であり、何よりも銃を片手に強盗に興じる日々に充実感を得ていた。 そんな時に出会ったボニー。 彼女は退屈な毎日から抜けるため、クライドの危険な日々に惹かれてしまう。 ボニーはホームシックになりながらもクライドを愛し、クライドもそんなボニーを元気づけながら硬い絆を結んでいく。 後半から登場する運転手のC・W・モス、クラウドの兄貴バック、兄貴のヒステリーな妻ブランチ。デコボコな3人が加わり益々騒がしくなる面々。 同時に滅びの足音も静かに聞こえて来る。 直接的な性描写をせずに、キスと事後の所作だけを描いた点が良い。 匂わせるだけで二人が互いを受け入れた事がよく解るのが凄い。 ボニー&クライド一味はワイルドバンチ強盗団の如き八面六臂の大暴れ。 何処に行ってもトラブル続きの毎日。 死を覚悟するような日も稀になってくる。 俺たちは何処で何を間違えたのか。 俺たちに明日はあるのか、ないのか。 ボニーの母親たちとの別れ。もう二度と会えないとも知らずに・・・。 ラストは強烈な光景だが、妙な静けさが画面を包んでいく。 因果応報な幕引きではあるが、世の中に縛られずに好き勝手に生き、好き勝手に死んでいった者たちの無言の哀しさが伝わって来る。 罪を犯してきた二人は、真っ赤なリンゴに祈りをささげる。 一つのリンゴを互いにかじり「あの世に行っても結ばれような」という願掛けか。 車に残ったボニー、外に降りてしまったクライド。 史実では二人っきりで車ごと、映画で離れた瞬間に二人の運命は決してしまう。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-27 21:33:20)(良:2票)
290.  ギルバート・グレイプ 《ネタバレ》 
ラッセ・ハルストレムの最高傑作は「HACHI 約束の犬」なのかも知れないが、やっぱりハルストレムはのどかな田舎で起こる騒動を描いた映画が一番落ち着く。「やかまし村のこどもたち」とか「ショコラ」「サイダーハウス・ルール」「マイライフ・アズ・ア・ドッグ」とか。 冒頭に登場する長い道は、家族という“鎖”から解き放たれ、旅人が大地を歩みはじめる事を待っている。 知的障害の弟アーニー、夫の死のショックで肥満になってしまった母親、それの面倒を見なければならないギルバートたち兄妹。そのストレスを晴らそうと、不倫を受け入れるギルバート。 自分の母親を「鯨」呼ばわりする彼だが、本当は家族を守りたいと一生懸命。必死に自分を押し殺して生きようとしている。 そんな彼を解き放とうとする様々な出会いや事件。 アーニーの行動がギルバートの鬱憤を爆発させ、不動の母を大地に立たせ歩ませる。 妹の“中指”に車の“バック”で返事?するシーンは爆笑。危ねえなあもう。 首の無い状態で腰を振り続けるカマキリを想像してしまって泣いた。色んな意味でオスを「ごちそうさま」ですかそうですか。 男を喰らう母親もいれば、我が子のために死を選ぶ母親もいる。 グレイプを刺激するベッキー。 帽子を被った可憐な少女かと思えば、帽子を取ればボーイッシュで活発な女性に。 多くを語らないベッキーママも粋な事。 不倫に奔る母、 愛する子のために恥を捨てて行動する母、 娘を静かに見守る母・・・様々な母親がギルバートたちを囲む。 終始何処かコミカルだが、終盤はシリアス。 喧嘩と仲直り、別れの前の交わり、そして“火葬”・・・しがらみから解放されたギルバートたちは、愛する者と共に果てしなき大地へと旅立っていく。 メッチャ良い映画やんけ。 ダーレン・ケイツが幼い頃に体験した両親の離婚。家族が死ぬのと同じくらい彼女にはショックだったのだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-21 21:22:01)(良:1票)
291.  獣兵衛忍風帖 《ネタバレ》 
山田風太郎の忍者もの、深作欣二の「柳生一族の陰謀」等を思わせる奇奇怪怪な伝奇アクション。 川尻善昭による妖気を帯びたかのような作画が凄まじい。  俺は「ヴァンパイアハンターD(1999年)」の雰囲気の方が好みだが、このエログロヴァイオレンスな美女と野獣と化物が殺し合うハイテンションかつ破天荒、破壊的なまでの傑作を紹介しないワケにはいかない。   獣兵衛こと牙神獣兵衛と鉄斎による岩を切り刻むような戦いに始まり、奇想天外人外な忍者軍団との激闘に次ぐ激闘! 特に竹林における強力若本との斬り合いは凄い!キン・フーの傑作武侠映画「侠女」を思い出すような苛烈さ! 豊満なおっぱいを撫で回す様子がここまでエロくないのはこのアニメくらい。アゴは気にするな!  偶然助けた毒とアゴのキツいくの一、陽炎と関わった事で彼女を狙う鬼門八人衆という恐ろしい変態集団と闘うハメになる主人公の獣兵衛。 彼もまた主君を“ある理由”で失ってしまったはぐれ忍び。 オマケに黒幕とも言える怪しい坊主に鬼門八人衆の野望を探ってくれと頼まれる始末。 このように巻き込まれ型の時代劇だが、徐々に主人公が何故はぐれ者になってしまったのかも解き明かされていく。  とにかく獣兵衛がかまいたち的な技(斬撃?)一つと気合で化物連中と戦っていく姿は応援したくなる。オマケに超人情家。こんなカッコイイ男に惚れないワケがない。  時代劇が好きという人、エログロ?むしろ大歓迎という人に超オススメ!
[DVD(邦画)] 9点(2014-11-17 21:57:41)
292.  ストレイト・ストーリー 《ネタバレ》 
デヴィッド・リンチは怖い映画が多いけど、こういうほのぼのとした映画も好きなんだよなあ。 村上龍、はまのゆかが組んだ絵本も良かった。 デヴィッド・リンチの真価は、「ツイン・ピークス」に代表されるように予算の限られた制作下で発揮される。 いかに低予算で人を愉しませられるか。リンチはその使い方と心の掴み方が上手い。 この映画は何せ芝刈り機でアイオワ州からウィスコンシン州まで行こうというのどかさだ。 隣通しとはいえ何10Kmも離れている。 これが実話なんだから凄い。 病気で倒れた兄を見舞いに芝刈り機だぜ?弟のアルヴィンじいさんも凄いけど、兄貴もスゲーよ。 冒頭の「ウ゛ッ」といって突き飛ばされたのはアルヴィン? アメリカの広大でのどかな農村風景。 道中で出会う様々な人々。 妊娠した若い女性やシカ事故で嘆く女性、機械に強いおっさんなどなど愉快な出会いばかり。 たまに酒で戦争の記憶を吐露するしんみりした場面も。 坂道を下る瞬間が怖いこと。 それまで兄貴が病で死なないかソッチの方が心配だけどな。 結構呑気だが、死んでも旅を終えようとするアルヴィンの男の意地を見せられる映画でもあるのよ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-16 18:35:09)(良:1票)
293.  シザーハンズ 《ネタバレ》 
再見。 往年のサイレント映画やゴシックホラーの懐かしさもある、ティム・バートンなりの愛情が注がれた作品。  雪が降りしきるある夜、不気味な階段、鋏、得体の知れない機会が運動を繰り返す。 ビスケットのように型抜き、丘の上にそびえる古城、それを見つめる年老いた女性は、布団に入る孫娘に素敵な昔話を語り始める。  窓から過去へ、星のようにきらめく小さな町、それを見下ろす暗い城。 実にカラフルな色彩だこと、冴えないセールスマンの女性、包み隠す女性と解放的な女性たちとの対比。女性たちには解放的してくれるような男がいる。彼女にはまだそれがいない。  ふとミラーに映る新たな「商売相手」。虎穴に入らずんば虎児を得ず、仕事人としての性。 吸血鬼の城のように人々を寄せ付けないが、中に入ってみると可愛らしい庭園が拡がっていた。セールスマンから抵抗が薄らぐ。 こんな素敵な庭を作る人だ、きっと城の主も素敵な人なのだろう…ところが、城に入ってみると怪しげな機械が並び風穴のあいた天井のある空間。 セールスマンの心に渦巻く期待と不安、それを後押しするのは重そうに抱え込んだ商品を売るため。  物騒な手や服装とは裏腹に、何て悲しげな顔をする奴なのだろう、顔の傷とその表情が彼の過去を語る。 それを化粧品で優しく包み隠そうとする女心。そこには仕事人としてであり、母性をくすぐられてしまった一人の女性として、異性としてすでに惹かれていたのかも知れない。  瞬く間に町中に拡がる噂、指は串に、庭師に、美容院に。  押しかける女、女、女、男の群。飛び交う罵詈雑言と視線がシザーハンズの心に突き刺さる。 自分を変えてくれた恩人のために階段を駆け上る、それを引き裂く銃撃、瓦礫よりも重い人間からの一撃、抱きしめられないのなら、触れられないのなら、解り合えないのなら…。  唇だけが別れを惜しむように触れ合う。 冷たい鉄の塊は「手」として認識され、群衆を退かせる。  氷の彫刻が紡ぎだす雪、雪、雪の舞い。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-16 18:31:23)
294.  グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち 《ネタバレ》 
「小説家を見つけたら」と共にガス・ヴァン・サントで一番好きな映画だ。 舞台は1970年代、大学の講義のシーンからはじまる。 数学の難問を朝飯前のように解いてしまうがウィル少年。オマケに「f●ck!」を連呼する命知らずの馬鹿でもあるバリバリのインテリ不良。 出会う人間にはデッドボール(暴言)ばかり投げているが、本当は打ち解ける事を恐れていた。親も含めて大人なんざクソッたれ、頼れるのは子供の頃からつるんできた不良グループだけ。 能力はあるが己の能力に少し酔っているというか、とにかく過去のトラウマを引きずり自分の殻から抜け出せずにいた。“超絶クソすばらしい完璧主義者”である彼は。 完璧だと思い込む人間ほど、その均衡が崩れようとする際は動揺するものだ。 物事を知りすぎて逆に自分の目で直接見る事を恐れていた。傷つける・傷つけられる事を誰よりも恐れ、面接すら“替え玉”。 一体過去にどれほどの苦痛を味わってきたのだろうか。 彼の才能に目を付けた教師たちは彼を更正させるべく“司法取引”で勉学を薦める。 しかしウィル少年の心の傷は予想以上に深く、彼を更正させようとする教師も心の傷を開いていく。 教師たちは知識ではなく経験や“癖”によって本だけでは得られない“本当に大切な何か”を語っていく。 「答えは自分で探すんだ」 「ああ言えばこう言う。なのに簡単な質問には答えられない。つまり“答え”を知らないんだ」 ウィルも痛いところを突かれてダンマリ。先生の“女房自慢”を何処か羨ましそうに聞くウィル。 ウィルは知り合った女性に性行為をせがんで“現実逃避”。それは同時に初めて芽生えた対抗意識でもあった。 ウィルは先生のような“良い大人”にもっと早く出会いたかっただろう。ウィルの心も次第に変化していく。 旅立ちの時…とにかく自分の殻を“ブッ壊したくて”しかたない。 不良グループの兄貴のセリフはトドメの一撃。 「他の奴が持っていないもんを無駄にするなんて俺は許せねえっ!」 ウィルは“宝くじ”を既に持っている。しかも努力しだいでどんな夢でも叶えられる大切な宝物を。 いや、不良たちが手に持っていたのはバットだったが、心の中には最高に“グッド”な何かを持っている奴らだった。 ウィルはようやく先生たちに本音を打ち明けられたのかも知れない。 最高のオンボロ車、最高の手紙、そして最高の“サノバビッチ”。良い映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-16 18:28:23)(良:1票)
295.  エレファント・マン 《ネタバレ》 
トッド・ブラウニングの傑作「フリークス」を思い出す作品。 「エレファントマン」ことジョゼフ・ケアリー・メリック(ジョン・メリック)の人生を淡々と描いていく。 ファースト・シーンで女性が象に襲われるモンタージュ。この夢はメリックの誕生に関わる重要なテーマだ。彼を妊娠していた母親は事故に遭い、そのショックでメリックは全身に腫瘍が出来る奇形児となってしまった。 子供の頃は腫瘍もまだ大きくなく、普通に喋り一般の学校にも通っていたようだ。 それが成長していく過程で腫瘍が肥大化し、徐々に症状が悪化していく。 人々はメリックの姿を見て「奇人」だの「化物」だと罵り差別し、遂にはサーカスの見世物小屋で「エレファントマン」となってしまう。彼は偏見の目や傷つけられる恐怖で言葉も知識も封印してしまう。 そんな彼を、医者は好奇心と正義感から救おうとする。単眼の袋で覆われた“心の壁”を取り除こうと。 しかしメリックをサーカスに引き込んだオッサンは本当に不器用な人だ。 看護婦ですら悲鳴をあげるメリックの姿、だが婦長の献身的な介護や医者の熱心な語りかけでメリックは普通に喋るようになっていき、人間性を取り戻していく。 医者がメリックから“声”を聞こうとするシーンは熱い。視覚と耳に訴える。 メリックが聖書の件をする場面も良いシーンだ。院長がメリック“さん”と改めるのも。 「彼の人生は誰にも想像できないと思う」 メリックの苦労は誰にも解らない。どんなに解ったつもりになっても。我々は知り、考える事しか出来ない。 時折見せる寂しき横顔。メリックは右腕と外見の変わりに豊かな想像力と心を手に入れたのだろう。 メリックがスーツに身を包んで例の女優と語り合うシーン。彼女はメリックの“心”を見ているのだろうか。遂にはヴィクトリアの女王まで動かしてしまう。 彼の存在が認められる度に看守たちの嫉妬も大きくなる。人助けかエゴイズムか。 メリックはある出来事で再び心を閉ざしてしまう。それでもメリックの理解者でもある子供やサーカス仲間たちの協力。「俺たちみたいなのには“運”がいるんだ」 さらに駅での一件が再びメリックの心を呼び覚ます。「僕は人間なんだ!」 とりあえず婦長がGJすぎる。 再び平和な時を取り戻したメリック。彼が夢の中に見た女性は母親だったのだろうか? 彼は安らかに眠り、母親の元へと行ったのだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-16 18:20:28)(良:2票)
296.  ディア・ハンター 《ネタバレ》 
マイケル・チミノによる異色の戦争映画。 一応ベトナム戦争を軸に据えた映画なのだが、最初1時間は延々と主人公と友人たちとの他愛の無い日々を描く。 3人の男はベトナム戦争に徴兵される事となった。 送別会を兼ねた結婚式、乱痴気騒ぎ、最後の鹿狩り・・・戦争とはまったく無縁の彼らが、戦場に送られていく。 本当に他愛の無い1時間・・・それをいつまでも見ていたいくらいなんだ。 彼らの運命を考えると・・・。 1時間たち、舞台はベトナムの戦場に移る。 血まみれで横たわる男、捕虜にされ命懸けのロシアンルーレットと逆襲、脱出。 その後の戦いから解放された者たちの虚無感・・・家に帰った主人公をいつもの仲間たちが暖かく迎えてくれる。 ただそこに“彼”はいない・・・。 戦場から帰って2年、得意の鹿狩りも弾が当たらない。 戦場での恐怖がマイケルを縛り付ける。 共に戦場から戻った友も、代償を負って戻ってきた。 マイケルの友人たちは優しかった。ただ、世間そのものは帰還兵を快く思っていない。  打ちひしがれるマイケル、だが“彼”が生きているという。  マイケルは再び戦場へと戻っていく。国のためじゃない。 自分のため、そして友のために。 ラストはとても悲しいが、最後の最後で彼らの笑顔で締めくくるラストには救いを感じられる。  ロバート・デ・ニーロが完全に別人。 それくらい凄い演技。  病を押して最後まで自分と戦ったジョン・カザールに安らかな眠りを・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-16 18:15:23)(良:1票)
297.  狩人の夜 《ネタバレ》 
本作は名優チャールズ・ロートンの唯一撮った映画にして傑作フィルム・ノワール。これが本当の“一発”映画です。 ディヴィス・グラッブの傑作小説、ジェームズ・エイジーの脚本を手直ししたロートンの巧みな演出、完璧なシナリオ、ロバート・ミッチャムの怪演とリリアン・ギッシュの力演。 物語は大胆な空撮とリリアン・ギッシュの謎の聖書の文句から始まる。 これが既に伏線なんだから凄い。上空から人々を写していく様子は、まるで「神が空から見ている」とでも言いたげで神秘的。 そこにロバート・ミッチャム演じる殺し屋が独り言を言いながら登場する。 左手に「LOVE(愛)」、右手には「HATE(憎悪)」を刻んだこの黒衣の男。 犯罪を重ねる偽の牧師であり、女性の性交に対して異常とも言える憎悪を抱いている。 「女性の体は快楽のためにあるのではない。神から子を授かるために在るのだ。」 正論のように聞こえるが、「女性は子を産む機械だ」とかほざいた例のクソ政治家とどっこいどっこいの持論ですよ。まるでこの世は「聖母マリア以外の女性はみんな死ねばいい」とでも言いたげだ。オマケに狙いはみんな未亡人だぜ?変態はどっちだよと。 そんなロバート・ミッチャムは車を盗んで捕まったのがポルノ小屋だぜ? ポケットから出したナイフは勃起した息子(せがれ)か?つーかそこで捕まるって…。 とまあ、このように色々ぶっ飛んでるサイコ野郎。こんな奴がただ黙って仁王立ちでもしてみろ?スゲー怖い。 そんな男にある家族が目を付けられ、偽牧師の魔の手がじわじわと締め上げる。 ロバート・ミッチャムに狙われる兄妹はある「秘密」を握っている。それは父の遺言とも言えるものだ。 冒頭で警察に取り押さえられる父親。これもまた伏線だった。 追い込まれる兄妹、反撃され奇声を挙げながらも襲いかかるミッチャム。 牧場から盗んだ馬で二人追跡するミッチャム。 白馬の王子様ならぬ白馬の死神。恐ろしいミスマッチだ。 そんでもって終盤出てくるリリアン・ギッシュのばあちゃん。 孤児を引き取り女で一つで子供たちを育てる逞しい女性だ。 キリストの教えも「心の支え」として教える程度。キリストを「殺人動機」として利用するミッチャムとは大違い。 オマケに猟銃で武装だぜ?逆にミッチャム待ち構えてハントしちゃうBBAなんだぜ? BBA結婚してくれ。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-15 08:14:02)(良:1票)
298.  あなた買います 《ネタバレ》 
「人間の條件」以降の小林正樹は苦手だが、それ以前の「この広い空のどこかに」や「黒い河」「三つの愛」といった庶民的でコンパクトなドラマはかなり好きだ。 小林正樹が苦手という人も、初期の作品を見てから判断しても遅くはないだろう。  この「あなた買います」もまた、そんな好きな映画の一つだ。 当時のプロ野球界の選手獲得問題を巡って、ドロドロかつシュールな奪い合いを描いていく。 いつもの堅苦しく窮屈な感じはしないし、何より利用する側と利用される側の立場が徐々に入れ替わっていく駆け引きが面白い。無垢な人間を“演じて”いた事が発覚する瞬間が怖い。   まず冒頭のシークエンスからして素晴らしい。 駅に着いた機関車から車、新聞とシーンが繋がっていく。 新聞に掲載された野球選手の写真、運転手と男の会話。これだけでも彼が「野球と何か関わりがある」と想像させてくれる。 男は山から海まで誰かを探しまわり、ビルの事務所らしき場所に“戻り”、またすぐに野球場へと“出掛けて”行く。 車が轢きそうになった女性が、野球場で活躍するある選手に笑みを送る女性として再び姿を現す。  とここまで、短いショットを繋げたスピーディーな演出で一気に引き込まれてしまった。  佐田啓二の演技も良いし、何より伊藤雄之助の存在感!  後期の小林正樹が好きな人は物足りなさを感じるかも知れないが、俺のように後期よりも初期の小林正樹の方が惹かれるという人にこそこの映画を見て貰いたい。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-10 22:07:29)
299.  ニュールンベルグ裁判 《ネタバレ》 
スタンリー・クレイマーは「渚にて」や「真昼の決闘(フレッド・ジンネマン)」がダメだったけど、この映画はとても見応えがあって面白かった。  冒頭でナチスのマークを吹き飛ばすシーン!ここからもクレイマーの凸精神?を感じられる。  物語はナチスの首脳陣を裁いた後、残った法律学者やナチスと関わった複数の人間の関与する占領した側と占領された側の法廷“闘争”。連合国にとっての残党狩り、ナチスいやドイツ人にとっての最後の抵抗戦。  アーネスト・ラズロのカメラは短いショットを繋げた映像で法廷特有の緊張感を生み、退屈を感じさせない。 でも、360度パンはちょっとクドいと思った。  同じく密室劇の傑作「十二人の怒れる男」が面白いのも、ボリス・カウフマンのカメラが退屈を感じさせないショットだったからだろう。  ドイツ本来の法を捻じ曲げて国民を苦しめた罪、だがそれを防げず逆に服従を選んだドイツ国民にも罪があるという意見のぶつけ合い。 その理由となる「ホロコースト」の惨状をドイツ国民も、ナチスの人も“心”に焼き付いているからだ。 ホロコーストの映像は人間の眼、耳、そして魂に訴えかける。 それに顔の表情の細かい変化や夕食のジョッキから法廷のハンマーへと繋がる演出、終身刑を言い渡される時に銃声のように響くハンマーが印象的だった。  リチャード・ウィドマークの、マクシミリアン・シェルの、そしてバート・ランカスターの叫び、叫び、叫び。 まるでヒトラーが演説するように時にはオーバーな叫びをあげてまくしたてるシェルの様子は恐怖すら感じさせる。 あっと言う間に過ぎ去っていく時間は3時間という長さを感じなかった。傑作です。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-09 22:10:34)(良:2票)
300.  バルタザールどこへ行く 《ネタバレ》 
「少女ムシェット」以上に残酷な映画だ。 ロバのバルタザールは、美しい野原の光景と共にやって来る。 マリーやジャックに可愛がられたバルタザールは、不幸が重なって別れてしまう。 再会したバルタザールは、美しく成長したマリーに“惚れて”しまう。 だが、同じくマリーに好意を見せる不良のジェラールに“嫉妬”されてしまう。 マリーがジェラールに襲われる場面で、バルタザールは虚ろな瞳で傍観するしかなかった。痛めつけられるバルタザールの無力さ。バルタザールは、黙って見守るしかない我々観客でもある。 マリーは何処に行ってしまったのか。バルタザールの瞳は、彼女の行方を知ってか知らずか、ただただ虚空を見つめるのみ。 とても悲しい映画だが、悲惨さを優しく包み込む美しい原風景には癒される。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-09 18:41:01)
000.00%
100.00%
200.00%
300.00%
400.00%
500.00%
600.00%
700.00%
829828.46%
971868.58%
10312.96%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS