301. 黒い罠
ヒッチコックは「サイコ」を撮る際、この作品から相当なインスピレーションを受けたであろうと推測される。1950年代のアメリカ映画でドラッグパーティーや輪姦(具体的なシーンはないがジャネット・リーは当然モーテルでそういう辱めを受けたはず)が露骨に描かれている事に驚嘆。友情出演扱いのディートリッヒにもきちんと見せ場を作って花を持たせているあたり、やはりオーソン・ウェルズただものではない!教訓、ハネムーン中には花嫁を決して一人きりにしておかない事。 8点(2005-01-17 14:41:19) |
302. お嬢さん乾杯
一連の小津映画での良く言えばミューズ的、悪く言えばお人形さん的扱いの原節子よりも、きちんとした自分の意思を持ち最後には惚れた男の胸に飛び込んでいくこの映画の斜陽貴族のお嬢様のほうが自分には魅力的に映りました。随所にクスクス笑いを取れるような仕掛けが施されているが、自分が一番笑えたのは憂いを含んだ原節子の横顔をとらえ、どんな名台詞を吐かせるのかと思いきや「おなか空いたわあ・・・」と呟かせる抜群の木下演出! 8点(2005-01-10 10:51:33)(良:1票) |
303. シザーハンズ
ジョニー・デップの深い哀しみの色をたたえた瞳が圧倒的。特殊メイクの力を借りればある程度誰でもこなせる役だったとは思うが、彼ほどの存在感は出せなかったろう。バートンの「異形なもの」に対する愛情が強く感じられる作品です。 8点(2005-01-10 10:32:43) |
304. バージニア・ウルフなんかこわくない
主要人物4人ろくにツマミも食べず、何時間もジンのストレートをガブガブ飲み続け。これはもう、基本的に我々日本人の胃や肝臓とは強靭さやスタミナが違うと思われる。だからこそ泥沼状態の結婚にも長期間耐えられるわけで。ダーティワードの連発で公開当時はセンセーションを起こした作品らしいが、刺激に慣れすぎた今の観客にとってはどうって事もない。引きの構図が多い中、時たまサンディ・デニスの吐きそうになった表情とか、バートンのキレた瞬間の顔の大写しが挿入されるのが観ていて異常に怖い。エリザベス・テイラーはいつもの、聴きようによってはかなり耳障りな声質を極力押さえ、役作りに相当苦心したであろう跡が窺える。「バターフィールド8」はともかくこの作品での受賞なら大いに納得。ところで冒頭の会話にあったべティ・デイヴィスとジョセフ・コットン主演の映画のタイトルって何なんですか?(追記)かーすけ様、いつもフォローありがとうございます! 8点(2004-12-24 18:01:45) |
305. 奇跡の人(1962)
姫川亜弓の「雷に打たれたかような」、北島マヤの「はじけた風船のような」(炎のエチュード編参照)ウォーター演技の方が凄いと思ったけど(漫画と比べてどうする)いやあ直球勝負ド真ん中、ストレートに感動しましたよ、これ。腹違いのお兄さんの一歩退いた冷めた態度に自分は共感しました。 [DVD(字幕)] 8点(2004-12-15 10:10:43) |
306. シカゴ(2002)
何を隠そうミュージカル初体験は手塚治虫のアニメ「ワンサくん」だった自分、歌って踊ってワクワク出来るこの手の映画は理屈抜きで好き。「シカゴ」が画期的だったのは、ストーリーとミュージカルの境目部分でどうしても生じてしまう違和感を物の見事に払拭した点。2点減点分はオープニングシーンを見る限りじゃレニーとキャサリンのWヒロインでも全然おかしくなかったのに、レニーを賞レースの主演女優、キャサリンを助演女優の枠に収めたいが為に、意図的にキャサリンのシーンを削ったとおぼしき製作者側の小賢しい作為が見え透いてしまったせい。 8点(2004-12-11 15:55:42) |
307. 野菊の墓(1981)
皮肉なモンですね、出演したご本人が自分の過去のフィルモグラフィーから抹消したいであろう映画が作品としての評価は一番高いとは・・・。しかし自分がここで褒め称えたいのはこれが監督デビュー作となった澤井信一郎監督の職人的手腕である。当時の松田聖子の凄まじい人気を考えると、どんないい加減な駄作を作ったとしても一応はヒットしたとは思うが、単なるアイドル映画に貶める事なく映画の文法をきちんと踏まえた正統派の演出は素晴しいと思います。澤井監督の今現在に至るまでのご活躍も、これを見ればうなずけます。もう亡くなってずいぶん経つけど、明治生まれの俺のばあちゃんもこれ見て泣いてました。それ以来松田聖子がテレビに出るたんびに「あの民さんがねえ・・・」とニコニコ笑って応援してましたもん。彼女がその後スキャンダル等に巻き込まれる姿を見る事無くばあちゃんは天寿をまっとうして逝きましたが、それはそれでよかったのかなあ・・・なんて考えてしまいます。(追記)澤井監督の演出術の本が出ましたよね。この作品や「Wの悲劇」等を高く評価してる自分は非常に(立ち読みですが)興味深く拝見させて頂きました。 [地上波(邦画)] 8点(2004-12-04 14:03:46)(良:5票) |
308. 陽のあたる坂道(1958)
石坂洋次郎の原作長篇も良いけど、映画も名作です。西洋風の豪邸住いのブルジョア家庭の揉め事なんて下手に描けば鼻持ちならない絵空事になってしまいがちだけど、これ多分脚本がいいんでしょうね、裕次郎演じる次男の抱えるいびつなコンプレックスが、 観客にうまく同化できるよう真直ぐに伝わってきます。誉めすぎかもしれないけど、日本版「エデンの東」。足が悪い妹役の芦川いづみ、この映画でもメチャメチャ可愛いっす! 8点(2004-11-18 00:31:50) |
309. 刑事コロンボ/忘れられたスター<TVM>
何度も繰り返し観たはずの若かりし頃の自分の映像を、初めて観るかのように目を輝かせ食い入るように見つめる彼女の表情がなんとも痛ましい。こりゃコロンボの旦那もいつもの粘着質を手加減せざるを得ないわな・・・。ちなみにグレース役のジャネット・リーは今では「サイコ」(60)1本のみで映画史に名を残す女優になってしまったが、実は50年代が全盛期、「ヴァイキング」や「魔術の恋」等、このレビューにも登録されてないハリウッド娯楽作品に多数出演した女優。彼女著「サイコ・シャワー」を読むと、非常に謙虚で控えめな性格だったが故に、人気スターではあったが遂に一世を風靡する大女優にはなりきれなかった理由が良く判る。この映画で彼女に興味を持った方は是非ご一読を! 8点(2004-10-03 14:22:28)(良:3票) |
310. リリー
いいですよ、この映画。キャロン嬢のファニー・フェイス(個人的にオードリーより彼女こそこの呼称に最もふさわしい女優だったと思う)は、この年齢にしては幼すぎる感のある孤児リリーのキャラクターにぴったりで。「ハイ・リリー、ハイ・リリー、ハイロー」って主題歌もあまり知られてないけど、いつでも口ずさめる名曲だと思います。期待しないで食べた大味そうなデザートが、実は繊細な味で大満足でしたって気持ちにさせてもらいました。って例えが何か変ですかね~、俺甘党なもんですみません・・・。 8点(2004-09-19 15:58:39)(良:2票) |
311. ナイル殺人事件(1978)
心躍るわくわくするような殺人!不謹慎かもしれないがクリスティ原作の映画にはそんな優雅な雰囲気が漂っている。中でもこれはトリックといいキャストといい最高の出来。真相が判ってても繰り返し観たくなる。 8点(2004-08-29 16:17:07) |
312. 天城越え(1983)
「はばかりに行かせて!」の壮絶な取り調べシーン、そぼ降る雨の中、頭に被った袈裟を振り落とし集まった野次馬に一瞥を加え、その直後少年に投げ掛ける慈母観音のような笑み・・・。田中裕子という女優のか細い肉体から発せられるエロチシズムが全面的に押し出せた作品は後にも先にもこの映画一本のみ。それだけでも観る価値有りです。しかし・・・、雨に濡れた女性っつうのはマジ魅力的っすね。 8点(2004-08-28 12:58:51)(良:1票) |
313. 煙突の見える場所
溝口・小津作品以外の田中絹代、成瀬・木下作品以外の高峰秀子を観てみたい人には絶対お勧めの名作。見る場所によっては本当に何本にも見えたという北千住のお化け煙突を始めとする、もはや失われたかつての東京の風景は、当時の事を知らない自分でもたまらなく懐かしく目に映る。「愛染かつら」以来の名コンビ、上原・田中もここではいつも障子を締切って中で必要以上にイチャついてる仲睦まじい夫婦(正式ではない)を好演。例によって名脇役浦辺粂子が時たま出て来て場面をさらっているのも見物。 8点(2004-07-18 12:49:00)(良:1票) |
314. ボディ・スナッチャー/恐怖の街
何が飛び出してくるか解らない、荒れたモノクロ映像が却って恐怖感を倍増させてますよね。発端から一気に畳みかけてくるようなテンポの良さも凄いと思う。 8点(2004-07-18 12:04:59) |
315. 転校生(1982)
夏!夏!夏!って映画ですね。この映画で尾道っていう町を知りました。何故か懐かしのテレビ番組特集じゃ触れられないけど、「金八先生」の一番の出世魚は実は小林聡美じゃないかって気がします。既にこの頃から根性座った演技みせてますもんね。学校の屋上での志穂美悦子先生とのやり取り、二人で連絡船に乗ってどっかの島に行くシーン、良かったなあ。 8点(2004-07-10 17:23:04) |
316. ラスベガス万才
「ビバ~!(ビバ~)ビバ~!ラスベガス~!!」のっけからエルヴィス君は天然の愛敬振りまきまくるし、当時絶好調のアン・マーグレットは負けじと踊りまくるわ、観ていてこんな楽しい気分に浸れる映画なんか滅多にない!エルヴィス映画はこれ1本押えておけば事足りるはず。同年製作、同監督の「バイ・バイ・バーディー」とセットで観るのもお勧めっす。 8点(2004-06-06 12:54:44)(良:1票) |
317. スペース・カウボーイ
個人的に「ミスティック・リバー」よりこの映画のほうが「もうひとつのスタンド・バイ・ミー(但しシニアコメディ版)」って宣伝コピーが相応しかったような気がします。イーストウッドはいい歳の取り方してますよね。ジェームズ・ガーナーってもっと背が高いのかとずっと思ってました。「大脱走」じゃあの中で一番ノッポだったってイメージあったんで・・・。腰が曲がってきたのかなあ。(W)宇宙ヘ行ってからの展開は??って感じだけど、まあそれもご愛敬という事で。 8点(2004-06-05 11:31:22) |
318. 偽りの花園
ベティ・ディヴィス扮するレジーナが夫を見殺しにするシーン、凄い迫力です。このシーンだけでも観る価値有り。正に鬼気迫るという以外表現のしようがない。うーん、ワイラー監督は階段を使った画面構成がうまいっす!テレサ・ライトの可憐さが胃もたれしそうなアクの強いストーリーを救ってます。後年、エリザベス・テイラーが舞台でこのレジーナ役を演じたそうだが・・・土台演技の格が違いすぎ、無謀としか言いようがない。 8点(2004-04-25 11:26:56) |
319. 若草物語(1949)
「クリストファー・コロンブス!」J・アリスン扮するジョーが、ちょくちょくしゃがれ声で発するこの造語(多分「OH MY GOD」の意味)が激インパクト。自分も何かびっくりする事があると、ついこの一言を口にしてしまう。誰一人として突っ込んでくれないのは悲しいが・・・。キューカー版もウィノナ・ライダー版も観たけど色彩の鮮やかさ、出演者への親しみやすさも考えると、断然この49年度版が俺にとってはベスト。 8点(2004-04-18 15:18:53) |
320. 花嫁の父
「世界で一番美しい人は誰か?」と問われれば自分は躊躇する事なく1950年代初期のエリザベス・テイラーの名前を挙げる。自分がそもそもこのレビューに参加させて頂いたのも、彼女の50年代の主演作が殆ど登録されていない事に憤りを感じた為。後年のテイラーに嫌悪感を持つ人でもこの作品での可憐で、か細く(これ重要)初々しい花嫁姿の彼女を観れば多少なりとも評価は上がる?かも。スペンサー・トレイシーの礼服を着るシーンや愚痴モノローグ、名古屋式的に無駄金ばかリかかるパーティの準備とか、今観ても思わず笑ってしまうのは、結婚という儀式が誰にとっても何かしら身につまさせるものが多いからだろう。これからも「花嫁の父」が誕生し続ける限リ、この映画は古びないはず。 8点(2004-04-17 15:53:27) |