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六本木ソルジャーさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 823
性別 男性

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301.  300 <スリーハンドレッド> 《ネタバレ》 
歴史や背景に関する知識はゼロで鑑賞したが、知識があまり必要な作品ではなさそうだ。史実と異なるかもしれないが、そういうことはあまり気にならない。 史実をきちんと描く必要のある映画もあるが、作品を通して“何を描くか”“何を伝えたいか”ということが大事だ。『職業:戦士』という言葉が心に残るほど“スパルタ”の精神が上手く描かれている。無駄に死ぬよりも、何かのために戦って死ぬために彼らは自らを鍛え上げている。国のため、愛するもののため、仲間のため、自由のために、戦場で死ぬことこそ、名誉であり誇りであるという精神は見事であり、どことなく“侍魂”にも通じるところがある。 また、ザック・スナイダーの恐ろしいほどのセンスの良さも光る作品に仕上がっている。素人でもプロでも、この仕事を真似できるものはいないといえる。彼だからこそ出来る映像表現ともいえそうだ。 素晴らしいグラフィックだけではなく、見応えのあるバトルも見事である。 しかし、バトルにはやや飽きてしまったところもあった。 サイやゾウ、爆弾魔術師軍団、停戦交渉ありと、手を替え品を替えたバトルが展開されているものの、基本的にはワンパターンというところがある。 レオニダスを苦しめた中ボス級の強敵が一人いたものの、こういった特異なキャラクターをもっと出すとさらに面白くなったかもしれない。 また、隊長の息子をドラマもなく単に無駄死にさせたことはもったいないところだ。 父親や王を護って死ぬというようなドラマや、楽勝のための慢心さが生んだ心の隙というような展開でもよく、何か物足りない展開だった。 圧倒的なグラフィックで、ただただぶった切るシーンで圧倒するというのも分かるが、バトルの中にもう少し“ドラマ”が必要だったのではないか。 男の映画ではあるが、王妃を通して女の戦いもきちんと描かれている。 スパルタは男だけではなく、女も強いということを描きたかったのだろう。 しかし、こちらも完全にはオチておらず、裏切り者の政治家を刺し殺すくらいならば、交渉する必要があったのかとは思うが、彼らスパルタ人の愚直さを表しているのかもしれない。 自分のためというよりも、自分を犠牲にして何かを守るために戦うスパルタ人の気質を表しているようにも感じる。 素晴らしいビジュアルや才能であるが、バトル等においてドラマが不在だったことがマイナスと感じられた作品だ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-04-19 22:30:48)(良:1票)
302.  ダウト ~あるカトリック学校で~ 《ネタバレ》 
「メリル・ストリープは化け物か!」と思われるほど、彼女の存在感が際立っている。 アカデミー賞ノミネートは伊達ではない。単なら“名前”だけではなくて、真の“実力”による評価だ。本作を見れば、メリル・ストリープが評価される理由がよく分かる。他の出演者の演技も素晴らしく、彼らの共演を見るだけでも価値がある。 ストーリー自体は難解ではないが、テーマはやや難解だ。根底にはキリスト教の思想があると思われるので、完全には理解しにくい。“神父は少年に手を出したのか否か”という点がストーリーの核となっているが、この真相は明らかにされていない。結論としては、物事に対して白黒をはっきりさせることが重要ではなくて、グレイであることも重要であるということを意味しているのだろう。「ダウト」は、ある意味では絆を強める効果はあるものの、過度な「ダウト」は自分と他人を苦しめて、事態を悪化させ、物事をさらに混乱させるだけなのかもしれない。 個人的には「爪は長くても清潔であればよい」という神父のセリフが特に引っ掛かった。神父は確かに規則に違反していたかもしれないが、救済や愛という宗教に根付いたものであるのならば行為自体は問題ではないということを暗喩しているのだろうか。 自らの欲求を満たすためではなくて、父親からの暴力や自らの性質等に苦しむ黒人の少年を認めて、彼を救うための行動であれば、罰せられるべきではないのかもしれない。 こういう考え方が、古い時代からの脱却となり、新しい時代の考え方に繋がるということになるのだろうか。 シスターの考えは、どういう理由であろうと爪が長ければ駄目だというものだろう。 しかし、規則を無視して視力が低下した年配のシスターをかばったり、生徒から取り上げたラジオを楽しんだり、嘘をつき相手を陥れ、過去に罪を犯したこともあるとも言っており、矛盾だらけの存在である。彼女はある意味では勝ったのかもしれないが、ラストシーンにおいて彼女が勝利者ではないことが分かる。彼女は自分の“確信”だけではなくて、“理念”や“信仰”にすら「ダウト」を感じているのではないか。本当に必要なものは“寛容”“赦し”という精神なのかもしれない。 シスター同士の会話を遮る邪魔者、電話の音、割れる電球、雷などを意味ありげに使用されている。絶妙なタイミングでのエンディングも奥深く、レベルが高い作品に仕上がっている。
[映画館(字幕)] 7点(2009-04-12 01:19:53)
303.  ユージュアル・サスペクツ 《ネタバレ》 
過去に鑑賞したことがあるので、ネタを知っている状態で再見。 ネタが分かっていても、ぐいぐいと引き込まれる仕上りにはなっている。 過去や現在、真実と虚偽が入り混じる複雑なストーリーではあるが、再見してみると、それほど複雑でもないことが分かる。 絡まった線のように見えて、解き解そうとすると意外とシンプルで分かりやすい。 また、絡まり方も複雑で堅くなっているのではなく、誰でも解けるように丁寧に易しく絡まっていると思われる。 しかし、いくつかの謎や辻褄が合わないところも散見されてしまう。 一番の問題は、ソゼが逃げられる状態でありながら、わざわざ捕まって、警察に嘘八百を並べ立てることとだろう。 「ソゼ=キートン」と警察に誤認させるという目的があったと考えることもできるが、納得はいかないところではある。 しかし、これを否定すると、映画が成り立たなくなるので、深くは考えない方がよい。 辻褄が合わなくなることは承知で、こういう映画は構成されているので、粗を探すよりも単純に鑑賞する方が面白いと思う。 ネタに関しても、それほど嫌悪感はなかった。 「誰がカイザーソゼであるか?」ということをメインにして、観客に問うているのであれば、この結末に対して、ぶち切れるかもしれないが、本作のメインは「事件の顛末」を解き明かすことであると思われる。 ネタが分かっていて鑑賞していたためか、「真犯人は誰かを予想する」「どういうオチかを予想する」類の映画とはやや異なる方向性で製作されている気がした。 なかなか見所のある映像的なカットも多い点が特徴。 ブライアン・シンガーのことを完全に理解しているわけではないが、彼らしくないスタイリッシュなカットも評価できる。 ケヴィン・スペイシーの演技も素晴らしく、彼の怪演があったからこそ、これほどの映画史に話題作となったのだろう。 そういう観点からも高い評価はしたいところだが、驚かされるものの手放しで評価したくなる映画でもない。 ネタを知っていたにせよ、知らなかったにせよ、何か足りない部分はありそうだ。 これに何かを付け加えるのも蛇足となるので、そういう意味では完結しているともいえるが、何かが足りない。 他の映画のネタバレができないので、ここでは書けないが、オチが素晴らしい映画とされているものにはオチだけではなくて、それ以外にも重要なことが描かれていた。
[DVD(字幕)] 7点(2009-03-21 02:09:09)(良:1票)
304.  ベンジャミン・バトン/数奇な人生 《ネタバレ》 
初見では「感動した!」「凄い面白い!」と評価できるほどの単純な作品ではなかった。泣ける感動作でもなければ、“数奇な人生”に驚かされ圧倒されるわけではなく、評価は難しい。 しかし、『一人の男の人生』をコンパクトに過不足なく見事に描き切った監督の手腕は素晴らしいものだった。 あえてドラマティックには演出していない抑えた演出が光る。 映画を見ているというよりも、まるで詩のように叙情的に描かれている作品だ。 そもそも、ベンジャミン・バトンの人生が“数奇な人生”かどうかは疑わしい。 生まれて、恋をして、働いて、旅をして、様々な別れを経て、死ぬというのは、我々ともそれほど変わりがないように感じられる。 80歳で生まれて、徐々に若返っていく人生を送れる人は「幸せなのか」「不幸せなのか」という問いがあるとすれば、その答えが本作にあるのだろう。 人生において重要なことは“年齢”ではない、“気持ち”の問題なのではないか。 ティルダ・スウィントン演じる人物が、若いころには達成できなかった海峡水泳を、年齢を経てから達成できたということもヒントのように思える。 たとえ人生に『もし』があったとしても、たとえ自分の人生をもう一度やり直せるとしても、自分が変わらなければ、何もできないだろう。 バトンの人生を見て“数奇な人生”と思う人もいるだろうが、彼の人生はそれほど“数奇な人生”ではなくて、少しだけ変わった“ありふれた人生”を送ったような気がする。 一人の“数奇な人生”ではなく、誰にでもあり得る“ありふれた人生”だったからこそ、色々と“人生”について考えさせられる点が多い深い映画となったように思われる。 本作は現在の人生をより充実して生きて欲しいと願うフィンチャーなりの応援歌ではなかったか。 また、本作において一貫として描かれていることは「永遠なるもの」の存在だろうか。 年齢や容姿が変わろうとも、決して変わらないものがある。 それが“愛”であると伝えようとしていると強く感じられた。 年老いて贅肉が付き、背中が染みだらけになったケイト・ブランシェットを見つめる若いブラッド・ピットの眼が印象的だ。 自分が若く、相手が老いたとしても、“愛”だけは決して変わらない。 そして、晩年のケイト・ブランシェットと若くなりすぎたブラッド・ピットとの接し方はやはり愛情以外の何物でもない。
[映画館(字幕)] 7点(2009-02-08 23:56:23)(良:1票)
305.  1408号室 《ネタバレ》 
スティーヴン・キング原作だけあり、かなりぶっ飛んだホラー作品だ。 現実的とはいえない部分も見られたが、全てが非現実的な部分だけではなくて、現実的な部分と非現実的な狭間を上手く描かれている。 完全な作り物とはいえない部分が面白い。 殺人鬼やゴーストなどが登場する映画は、基本的には視覚的な刺激やびっくり音による刺激に終始している。 しかし、本作は「幽霊」「幻影」などによる“視覚”、「耳が突然聞こえなくなる」「ラジオの突然の音」「フロントとの恐怖の電話の会話」などによる“聴覚”、「雪」「水」「凍えるような寒さ」「汗が滲むほどの暑さ」などによる“触覚”、(「チョコ」や「酒」による“味覚”)といったようにほぼ五感をフルに刺激させるような作りとなっている。 ジョン・キューザックの上手さもあるが、様々な“恐怖”を丁寧に描いている。 五感を刺激するだけではなくて、「無限ループ」「抜け出すことの出来ない閉鎖性」「親族の登場」といったように精神的なダメージまでをも食らわせるという優秀なホラー作品と評価できる。 自殺するまでやむことのない地獄を味わせるという“恐怖”が描かれている。 ラストも個人的には好みの仕上がりとなっている。 表面どおり見る人には、「1408号室」に打ち勝ったハッピーエンドと考えることもできる。 テープは、主人公の単なる妄想ではなくて、現実だったということを強調しただけかもしれない。 しかし、深読みする人には、まだまだ「地獄は続いている」とも考えることはできる。 見る人によって、解釈が異なるラストは悪くない。 部屋の秘密は明らかにはなっていないが、何もかも明らかにする必要もなく、神秘的なものは謎のままの方が“恐怖感”は高まるのではないか。
[映画館(字幕)] 7点(2008-12-01 00:35:56)(良:1票)
306.  バンク・ジョブ 《ネタバレ》 
「追いつめられて」「13デイズ」のロナルド・ドナルドソン監督作品だけあり、緊張感ある作品に仕上がっている点が特徴だ。 また、本作の内容が実話かどうかは実際には定かではないが、リアリティのある内容に対して、「実話かも・・・」と錯覚してしまうほどのリアリティを醸し出しているのも特徴だ。 個人的に、上手いと感じさせる部分は、いくつかの対立軸を浮き彫りさせて、緊張感を高めている手法だ。 『「王女の写真」を巡る、MI5(又はMI6)と黒人ギャングとの関係』 『「汚職台帳」を巡る、売春関係者・汚職警官と警察との関係』 『「銀行強盗」を巡る、警察とMI5(又はMI6)との関係』 そして『「主人公」を巡る彼の妻と彼を愛する女性との関係』 これらの張り巡らされた関係の中に、突如放り込まれた主人公たちの困惑・焦りが見事に描かれている。 描き方によっては、「社会派映画」に仕上げることもでき、もっと複雑で緻密な玄人好みの映画に仕上げることもできたが、エンターテイメントを重視した軽めの仕上がりを選択したように感じられる。 この「エンターテイメント」と「緊張感」と「リアリティ」とのバランスが絶妙であり、なかなか好感がもてるものとなっている。 潜入していた女性の描き方を含めて、物足りなさを覚える部分はかなり多いかもしれないが、おかげでかなり見易くなっているのではないか。 70年代の古臭い事件をマジメに演出してもそれが正解というわけではないだろう。 ただ、車の中古屋のオヤジが、銃を持った殺し屋とレンガで立ち向かうというのはちょっとマイナスか。 アクション映画ではないのだから、あまりリアリティのないストーリーを展開させても仕方がない。 あそこは絶体絶命の危機に主人公に陥らせておき、最後の最後に「警察」に登場させればよかったと思われる。 ステイサムが殺し屋達を倒しても、倒さなくても結果は変わらない展開なのだから、なぜあんな展開にしたのかはやや真意が図りかねる。 オチの付け方に関しても、イマイチすっきりとはしないものだったが、実話の未解決事件なのだから、仕方がないところだろう。 偉い人と銀行強盗側との取引が既に成立しており、たとえ逮捕したとしても裁判で喋られてしまうのは困るという配慮があったものとは推測できる。
[映画館(字幕)] 7点(2008-11-24 22:50:45)(良:1票)
307.  X-ファイル:真実を求めて 《ネタバレ》 
「こんな映画作って誰が得するんだ」と1%の期待もしていなかったが、テレビシリーズを比較的見ていたので、最後の締めくくりとして、やむを得なく鑑賞することとした。 まったく期待していなかったためか、予想外の展開・いい意味での裏切りが個人的にヒットした。 本作には、政府の特殊機関も特殊な極秘プロジェクトも、宇宙人も、UFOも登場しない。派手さが微塵もない、捜査官が巻き添えを食らっただけの誘拐事件に過ぎない。 予算の制約もあったと思われるが、このような小さな事件を取り扱った点が意外な潔さを感じる。大国を脅かすテロリスト事件、地球規模の災害、宇宙人とのバトルといったものが最近の映画の流れではあるが、この流れに乗らず、むしろ逆行したことに本作の意義があったのではないか。時代はかなり進んだが、時代に合わせるのではなくて、製作者は原点に回帰しようとしたと思われる。 モルダーとスカリーの関係が実に上手く描かれている。 久々の事件にのめり込むモルダーと、以前のように事件にのめり込まず、自分の新たな使命を見つけたスカリーとの対比が実に素晴らしい。心と体では二人は結ばれていても、もはや昔のような二人には戻ることができない。彼らの関係をみていると、“時の流れ”や“時の無常”を感じられる。“時間”というものが何かを変えてしまったようだ。 しかし、変わってないものもある。それが“超常現象の神秘性”のようなものか。 超常現象を信じないスカリーの胸に引っかかる“言葉”、引っかかる“何か”を見せることで、それが我々の心の中にも何かが引っかかるのではないか。 もはや、誰もオカルトチックな超常現象なんて信じていないだろう。 だから、100%胡散臭い・リアリティゼロのストーリーで構成するのではなくて、比較的現実的なストーリーの中に少しの超常現象で構成したという点が意外な上手さを感じられる。また、荒唐無稽な超常現象というよりも、誰にでも共感できる「あきらめないこと」、「人間の業」の深さや「神の赦し」という普遍的なテーマに落とした点はそれほど悪い落としどころではないと思う。 興行収入的に失敗しており、このシリーズは恐らく完結ということになると思われる。興行収入に失敗し、往年の作品を期待していた我々を裏切る形となったが、製作者の想いや彼らが辿り着いたアンサーが伝わってくる作品となり、いい形で幕を閉じたような気がする。
[映画館(字幕)] 7点(2008-11-17 01:06:12)(良:1票)
308.  容疑者Xの献身 《ネタバレ》 
原作未読。1ページも読んでいない。 原作は相当に素晴らしいのだろうなというのが第一印象。 堤真一が演じる石神が素晴らしかった。 自分の才能を活かせる場がなく、自分の人生に絶望していた際に、愛する人たちのために自分の才能を活かせる場を与えられたことに対する喜びのようなものが伝わってきた。彼は初めて生きることへの意味を見出せたのではないか。 彼が唯一失敗したとするならば、あまりに“美しい回答”を求めすぎたことだ。 石神がただ単にアリバイ作りや遺体処理をしただけならば、恐らく花岡靖子も彼に最後まで従っただろう。 自分の組み立てた方程式が崩れたときに、泥臭く泣き崩れる姿が印象的だった。 いかに天才であろうとも、人間の感情までも計算どおりにはならないということか。 また、意外だったのは湯川が真相を暴いたことだ。 鑑賞中は友人のために真相を闇の中へ葬るのかと思っていたが、暴いたことでさらなる“深み”が増したような気がした。 友達のために真相を暴くべきではないという苦悩や葛藤、真実を明らかにしなくてはいけないという使命、同じ志を持つ同士として頭脳を犯罪に利用したという怒り、そういった複雑でどうしようもならない感情が湯川には渦巻いていた。 本作において影が薄かったところがある湯川だが、内海を冷たくあしらったり、内海に打ち明けたりと悩める深みのあるキャラクターには仕上がっている。 そして、本作で一番伝えたかったことは、人間の不可思議さということではないかと感じられた。石神が罪を犯そうとした心理、花岡が最後に取った行動、湯川が真相を暴こうとした理由、どれも論理的ではない。 科学や数式や論理では解明できないのが“人間の感情”ということなのがよく分かる作品だ。 本作において問題になりそうなのは、演出ではないか。 冒頭の実験やドッペルゲンガー的な分身といったシーンはあるものの、“過剰な演出”は極力避けようとしているように思われた。恐らく原作の良さを殺さないようにという意図を込めて、ニュートラルな状態を保とうとしたのだろう。 確かに、原作の良さは殺していないのかもしれないが、原作の良さを活かし切ってもいないようにも感じられた。 もうちょっと自分らしさを出してもよかったような気もする。
[映画館(邦画)] 7点(2008-10-20 23:19:10)
309.  デトロイト・メタル・シティ 《ネタバレ》 
原作未読。1ページも読んだことはない。 デスメタルの知識もないので、ジャック役の人がもともと何者かもよく分からなかった。 しかし、鑑賞前から気分が悪くて、テンションが低かった自分でも、体調の悪さなど吹き飛ぶほどに楽しむことができた。 最後は加藤ローサのように「ゴー・トゥー・DMC!!」と叫びたくもなった。 変な前知識もなく、比較材料もないからこそ、かえって楽しめたのかもしれない。 やはり、なんといっても根岸と社長のキャラクターに、松山と松雪をキャスティングできたのが成功といえる。 松山よりも松雪に驚かされたが、ダウンタウンとコントをやっていただけのことはあり、思い切りの良さが目立った。 ストーリーは恐ろしく基本に忠実のもの。 “夢”というキーワードを基に、青春映画の教科書通りの「成功」→「挫折」→「克服」という流れを踏んでいる。 基本に忠実なストーリーに対して、異世界のデスメタルという素材を掛け合わせた効果が意外と高い気がする。 もし王道素材に対して王道路線で描いたらつまらないものとなり、逆にアブノーマルな世界を描く映画に対してアブノーマルな方向で描いたら、恐らく誰もついていけなくなるだろう。 珍しい素材を王道ストーリーで攻めたおかげで、誰もが楽しめる映画に仕上がった。 また、デフォルメされているが、根岸というキャラクターが我々自身の姿と被らせることもできる。 幼い頃に思い描いた“夢”と現在の状況とは異なるかもしれないけれども、“夢”を追い続けていれば“道”は開けるのかもしれない。 その“道”も思い描いたものではないかもしれないけれども、何が正解で何が間違いかなどは誰も分からない。 一生懸命にやっていれば、誰かが共感してくれたり、誰かが応援してくれたりもして、その“道”が自分の“夢”へと気づかないうちに変わることがあるのかもしれないというようなメッセージとして受け取った。 完璧ともいえず、天才とも思えないが、笑いのセンスも悪くない。 笑いについてはよく分かっているなという演出家だ。 直球の笑いもあったが、変化球の笑いが多く、それがなかなかツボだった。 映画のレベル自体は高くないもの、点数については甘めの7点を付ける。 6点にするか悩みどころだが、それなりに楽しむことができたのでおまけしたい。
[映画館(邦画)] 7点(2008-09-25 23:46:57)
310.  ウォンテッド(2008) 《ネタバレ》 
現実離れした馬鹿げたマンガ的な世界観であるが、個人的には好みのストーリーと世界観だった。 独特の自虐的なユーモアを交えつつ、勢いのあるストーリー展開によって、強引にこの世界観に引き込まれてしまった。 多少の無理や無茶も、許容できてしまうほどだ。 製作陣がきちんと独特の世界観を作り上げた成果だろう。 スタイリッシュな映像もまたこの世界観を構築する一役を買っている。 アンジェリーナ・ジョリーはさすがの存在感を放っていた。 彼女の妖しい魅力がなければ、本作のイメージも大きく失われていただろう。 彼女がいたから、なんでもありの世界が許容されたのかもしれない。 現実離れした彼女の存在が、現実離れした本作の“扉”を開ける“鍵”のような存在になっており、この“鍵”がなければ、あの世界観に上手くハマり込むことはできない。 マカヴォイの代わりはいても、ジョリーの代わりはいなかっただろう(ジョリーのファンではなく、ファンになるつもりもない)。 彼女の最後の選択も納得できるものに仕上がっている。 自分の過去を話し、彼女に刻まれた刻印を示すことで、本当の自分は、幼いころにとっくに死んでいるという気構えであり、彼女はこのシステムと心中する覚悟があるのがよく分かる。 彼女を主役にしたスピンオフを作ってもヒットするのではないか。 父親に関しては上手いミスリードを観客にさせることができたので、組織に関してももうちょっと上手いミスリードをして欲しかったところだ。 あの描き方では、見ていて組織が破綻しているのが分かり、組織の秘密が分かっても驚きを感じることはできなかった。 伏線の張り方が下手というわけではないが、もうちょっと観客の頭を信用してもいいのではないか。あれでは分かりやすすぎる。 もうちょっと使命感のある組織ということを強くアピールして、さらに観客をミスリードさせてもよかった。 ラストの仕掛けに関しては物足りないと思ったが、オチ自体はあれ以外考えられず、多少の無理を承知で、あのオチを選んだものと思われる。 フリーマンが誤解するようなストーリーを変に小細工して作るよりも、オチを優先させた思い切りの良さも評価したいところだ。 ストーリーがおかしな部分はあるが、細かいところを描くべき映画でもなく、ストーリーよりも映像を優先させることが大事と考えたのだろう。
[映画館(字幕)] 7点(2008-09-23 12:35:20)(良:1票)
311.  イグジステンズ 《ネタバレ》 
クローネンバーグ監督の「ビデオドローム」を見ている人ならば、この世界観をより理解できるだろう。 「ビデオドローム」の世界を別の角度から、分かりやすく描いたような仕上がりとなっており、クローネンバーグ監督の入門編ともいえる作品かもしれない。 本作を見てもダメならば、「ビデオドローム」は見ない方がいい。 クローネンバーグ監督作品を自分はあまり多くは見ていないが、この独特の世界観には上手くハマることはできた。 「ビデオドローム」同様に、現実の世界と虚構の世界との区別がつかなくなることに対するクローネンバーグ流の警鐘ともいえる作品となっている。 虚構の世界において、主人公がゲーム感覚の人殺しをヒロインに諌めておきながら、現実の世界において、主人公が躊躇なく人殺しをしてしまうところに、クローネンバーグ流の強烈な皮肉を感じる。 虚構の世界において、ゲーム感覚の人殺しの問題点に気づくということ自体もひとつの虚構ということなのだろう。 虚構の世界で感じた善の意識など、しょせんはまがい物であり偽善でしかない、現実の世界において何一つ影響を与えないということかもしれない。 ただ、一方で虚構の世界におけるゲーム感覚の人殺しは、現実の世界において影響を与えたり、問題となっている。 善の感覚は現実に影響しないが、悪の感覚は現実に影響するというのは、矛盾しているようで矛盾していないのかもしれない。 思った以上に、本作は哲学的にはなかなか深いのかもしれない。
[DVD(字幕)] 7点(2008-07-04 23:13:05)
312.  JUNO/ジュノ 《ネタバレ》 
作り物のような別世界のストーリーではなく、ナチュラルで身近に感じられる点が本作の良さではないか。 賞を狙って背伸びしてカッコつけるのではなく、ジュノたちのようにありのままの姿を自然体で描こうとしている点に好感がもてる。 本作には、映画やドラマにありがちな劇的な事件や劇的な変化があるわけでもない。 ただただ、それぞれの登場人物がゆっくりと前に向かって歩んでいこうとしているだけだ。 したがって、感じ方はなかなか難しいものとなっている。 つまらないと感じさせる部分は皆無だったが、「メチャクチャ感動した」「メチャクチャ面白い」「非常に共感した」というようなことはなかったのが正直の感想。 アカデミー賞で評価されるほどの作品かどうかはやや疑問だ。 ただ、男性と女性、又は年代(特にティーンかどうか)によって感じ方が異なる作品かもしれない。 個人的に強く感じたことは、人生においては失敗するということは何度もあるけれども、深く悲観する必要はないということではないか。 人生が完璧ということやパーフェクトということはあり得ない。 あの夫婦や、ジュノの父親も一度は失敗している。 失敗や何かを恐れて行動しないよりも、自分を偽らずにありのままの姿を晒して、自分らしく生きろということだろう。 あの夫婦のうち、夫の方はあきらかに自分を偽っていた。 そして、妻は夫に偽りの姿を演じさせることを強要していた。 自分らしく生きることができないと夫婦関係や恋人関係には歪みは生じるということなのだろう。 そんな欠点のある妻に、ジュノは自分の息子を託したのは、子どもを持ちたい・子どもを愛したいという彼女の気持ちには偽りがないとジュノは感じたからではないか。 彼女は子どもが欲しいという気持ちをありのままさらけ出していた。 分かりやすいコメディタッチの女子高生妊娠モノ映画と思われがちだが、演技・演出・脚本など、細かい部分を繊細に描かれているような気もする。 一般向けというよりも、やや玄人向けの映画と思われるので、自分には少々向かないところもあった。
[映画館(字幕)] 7点(2008-07-02 23:39:33)(良:2票)
313.  ラスベガスをぶっつぶせ 《ネタバレ》 
まさに起承転結通りの教科書映画であり、予想外には楽しめないが、予想通りに楽しめる。 友情あり、恋愛あり、親子関係あり、嫉妬あり、挫折あり、復讐ありのフルコースが描かれており、バランスも悪くはない。 ただ、“友情”以外は、どれもこれもやや中途半端に終わっており、“傑作”と手放しで誉める映画には仕上がっていない。  特に、本作のキーでもある「教授と主人公の関係」が弱すぎる点はもうちょっと補強した方がいいのではないかと思われる。 本作の描き方では、学生を利用するだけの強欲で冷酷な金にガメツイ教授としか映らない。それでは単純すぎるので、好ましくない。 師弟関係は磐石ではないものの、師弟の絆が相当に良好であることを示すエピソードをトレーニング中にもっと描いた方が、ラストのオチを考えるとより効果的になる。 二人の関係は良好だったが、感情に走らずマシーンのようになることを望む教授と、マシーンではなく、感情に左右される単なる人間であった主人公とのズレが彼らの関係にヒビを入れるということを上手く描いて欲しかったところだ。 教授をハメる作戦についても、しょせん教授も人の子であり、彼もまたマシーンではなく、ただの人間だったというような趣旨も加えてもよかったのではないか。 いくら大金を儲けても、チョコレートやシャンパンを盗んでしまうように、人間の本質は変わらないということを描く必要もある。  また、ブラックジャックがテーマでもあるので、ブラックジャックの勝負をもっと上手く描くことはできなかったか。 どんどんとコインが増えていくだけの演出は、はっきり言って二流の演出としかいいようがない。 カードカウンティングのシステムはよく分からないが、勝負すべきところと勝負すべきではないところを上手く描いて、彼らの神業的な凄さをより分かりやすく演出すべきだ。 そもそも本作の導入部分である「3つの扉の後にある新車とヤギ」のネタがピンと来ない描かれ方をしているのがもったいない。 カードカウンティングの説明を映画の中で事細かく描くことはできないので、こういったネタを一つだけでもしっかりと押さえておけば、その後のストーリーはなんとかなるはずだった。
[映画館(字幕)] 7点(2008-06-16 01:27:33)
314.  インディ・ジョーンズ/最後の聖戦 《ネタバレ》 
過去のシリーズのような派手さはないが、作り込みは悪くない。 インディ・ジョーンズシリーズ特有のユーモア感を残しつつ、「レイダース」以上に硬派な宝探しアドベンチャーに仕上がっている。 父親ヘンリーがユーモアのある、いい味のキャラクターに仕上がっており、インディとのバランスが取れているのも好感がもてる。 宿命のライバルであるナチスとの宝探し合戦、親子の確執、親子愛、学者の宿命など盛り込まれており、全体的にもバランスが良い。 なんといっても、ラストのやり取りも素晴らしい。 溝に落ちた聖杯を取ろうとするエルザと諌めておきながら、インディ自身が同じ境遇に陥った際には、同じようなことをしてしまうのは考古学者の性でもあろう。 そのような息子に対して、息子の名前(実名でないところが素晴らしい)を言うだけで諦めさせることができたのも父親として、学者として威厳があるからなのだろう。 優しくて、重みのある雰囲気がまさに父親らしいものであり、素晴らしい演技だった。  本当は学者ヘンリーこそ誰よりも聖杯を望んでいたはずであり、そんな父の姿を見て育ち、学者としての先輩の姿を見てきたからこそ、彼の言葉に重みを感じられただろう。 大事なのは“物”そのものではなく、“真実”ということなのではないか。 捜し求めていたものが存在したということが重要であり、“宝物”そのものに価値を求めることは大して重要ではないということを伝えているような気がする。 この辺りの考古学的なロマンにも惹かれるようになっている。 ただ、過去のシリーズには超有名なシーンがあるが、本作にはそういったシーンがないので印象が薄くなっているのが残念だ。
[DVD(字幕)] 7点(2008-06-15 02:47:55)(良:1票)
315.  レイダース/失われたアーク《聖櫃》 《ネタバレ》 
製作から20年以上経っても、何度観ても、まったく色あせる事がない傑作アクション。 ただ、傑作ではあるものの、自分の判断基準では7~8点が妥当なところだ。 SFX技術のレベル云々ではなく、ストーリーや登場人物の内面を深く掘り下げていない点が減点材料だろう。 インディ・ジョーンズというキャラクターは魅力的に描けているが、もう少し内面に踏み込んでもよかった。 アークの爆破を躊躇ったような考古学者の内面をもっと描いて欲しかった。 ナチスよりも早くアークを見つけるという任務は遂行する必要があるが、考古学者として歴史の真実を知りたい葛藤にさいなまれてもよかった。 ジョーンズの怒り・悲しみ・嘆き・楽しみといった感情があまり膨らんでいないのが気になるところだ。 ただ、深い映画ではないが、万人が何も考えずに楽しめるという軽さこそ本作の長所だ。 今観ても何度観ても楽しめる理由の一つが、その点にある。 エンターテイメントアクションという製作趣旨やバランスを考えるとやむを得ない部分に落ち着いているのではないか。 アクション映画としては、素晴らしい作品に仕上がっている。 本作の素晴らしさは、なんといってもスピルバーグの確信犯的ともいえる演出だろう。 現実的な描き方ではないが、「もう絶対間に合わないぞ」という展開をあえて描き、それを何度も何度も繰り返すことで、ハラハラ感を最大限に増加させている。 常識的な描き方ではなく、リアルな描き方でもないのに“わざとらしさ”や“いやらしさ”を感じさせない演出的な上手さもある。 そのように感じさせない理由としては、特有の“ユーモア”が本作にあるのも要因ではないか。 「そんなことあるはずないじゃないか」という批判を上手くユーモアでかわしているような気がする。
[DVD(字幕)] 7点(2008-06-15 02:45:59)(良:1票)
316.  アイリス(米英合作映画) 《ネタバレ》 
「ジョン」と「アイリス」を演じた4名の役者の素晴らしい演技の共演が見事である。 特に、ジュディ・デンチの演技は恐ろしいほど完璧だ。 同年のハル・ベリーはなかなか強敵ではあったが、このような演技にこそ、アカデミー賞を送るべきだろう。 演技だけでなく、映画としてもなかなか奥深いものがある。 ジョンからは、アイリスと分かり合いたくても、分かり合えない辛い気持ちが伝わってくる。 一緒に寝ている呆けた妻に向かって、何もしていないのにボロクソにけなすシーンなど本当に素晴らしい。 ただ単に献身的に介護するだけでなく、このような感情を露(あらわ)にするシーンがあるからこそ、彼の愛情の深さを知ることができる。 二人の出会いのときから、アイリスの死によって二人を分かつまで、あの二人は完全には分かり合えなかったのかもしれない。 しかし、「分かり合えなくても、一緒にいるだけでよいのではないか」ということが本作から伝わってくる。 本当の「愛」とはこういうものなのではないか。 アイリスもアイリスなりに、ジョンの愛情を受け入れようとしているのがきちんと現れていると思う。 ラスト間際の、車から飛び降りたジュディ・デンチの「I LOVE YOU」というセリフだけでなく、若い時代に出来上がった小説を見てもらおうとする際のケイト・ウインスレットの演技もかなりの出来だ。 また、若者の時代から老人の時代になり、アイリスが病気になることに伴い、二人の関係で変わってしまったもの、変わらないものも味わい深く感じることができる。 派手さは全くないが、いい映画とはこういう映画をいうのではないか。
[DVD(字幕)] 7点(2008-06-08 00:38:56)(良:1票)
317.  ランボー/最後の戦場 《ネタバレ》 
“戦う”ことの意義を問うた作品に仕上がった。“戦う”ことに対して悩み続け、そして逃げ続けても決して“答え”は出ない。“戦う”ことに真正面から向かい合ってこそ、何かしらの“答え”が出るのではないか。故郷の地に戻ることができたのも、彼なりの“答え”が出たことの証だろう。 武装船を燃やすことによって“戦い”から逃げたいというランボーの心境を表すとともに、過去のシリーズをフラッシュバックさせることでランボーの傷が癒えていない事をアピールしている。そして、最後まで戦い続けた結果、人々に笑顔が戻ったことで、ランボーなりの“答え”が出たことを観客に伝えている。何も考えていない銃乱射のグロアクション映画ではなく、押さえるべき点をきちんと押さえているので好感が持てる仕上がりとなっている。 「ロッキー」シリーズもそうだが、「ランボー」シリーズも等身大のスタローンが反映されている。“戦う”ことから逃げてきたランボーは、「ロッキー」や「ランボー」の栄光から逃げてきたスタローンに似ている。演技派と認めてもらおうとイメージをいくら変えようとしても、結局は自分を偽ることにしかならない。 徹底的にハードなアクションにこだわった理由としては、「自分にはこれしか出来ない」という潔さを感じ取って欲しかったからではないか。この映画からは、“偽り”は感じられなかった。 スタローンという役者は実は凄い役者ではないかと感じた。 スタローンは決してジョニー・デップやトム・クルーズのようにはなれない。 しかし、ジョニー・デップらの名優が伝えることができないことをスタローンは我々に伝えてくれるのではないか。不器用(本来は監督・脚本・演技ができるので不器用ということはないが)で、才能がなくても、自分が出来ることを愚直なほどに真っ直ぐに貫けば、きっといつか輝けることができるはずだと教えてくれている気がする。誰かの真似をする必要もなく、自分自身を偽って背伸びをする必要はない。たとえ、誰もが認めてくれなくても、自分自身が最後には納得できるはずだと教えてくれている。これらのことが「ムダに死ぬか、何かのために生きるか」というセリフに凝縮されている。 スタローンの生き様には一目置きたい。本作はただのハードでグロいアクションばかりではなく、生き様、哲学、人生を語っている作品でもある。
[映画館(字幕)] 7点(2008-06-03 23:44:55)(良:3票)
318.  ランボー 《ネタバレ》 
ⅠからⅢをみると、Ⅰの良さは際立っている。 アクション映画としても楽しめるが、ベトナム帰還兵の悲哀も強く感じられる点が評価できるポイントだ。 戦場に駆り出された戦士にとっては、戦争の悪夢は消えることはない。 戦争自体は終わっているはずだが、戦士にとっての戦争はいつまでも終わることはないと感じさせる。 国家のために戦ったのに、国家から爪弾きにされるという矛盾・自分の国なのに居場所がない孤独が訴えられている。
[DVD(字幕)] 7点(2008-06-03 23:36:51)
319.  ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 《ネタバレ》 
ダニエル・デイ=ルイスの演技は完璧だ(完璧すぎて一緒に仕事をするのは大変そうだ)。彼の演技を見るだけでも、本作を見る価値はあるだろう。 ただ、“映画”としてはそれほど面白いものではなかった。 正直いって、個人的には作品には全く入り込めなかった。 これは作品の出来が悪いということはなくて、常人には入り込めるような余地がない、常人を拒絶するような作品なのかもしれない(音楽も拒絶する要因になっている)。 アンダーソン監督は、あえて挑戦的な映画を製作したように思われる。 「金よりも大切なものがある」「金中心の自分の人生を最後に後悔する」というような、ありきたりな甘い作品になっていないのもポイントだ。 「金のためならば自分の魂までをも売る」というのは、ある意味で人間の真理の一面でもある。 人間には善の部分も確かにあるが、悪の部分もあるのは間違いないだろう。 こういった人間の本質的な部分を描き切った点は非常に評価できる。 通常のハリウッド映画には到達できない境地といっていいだろう。 ダニエルは、冒頭の青年時代の金採掘時から、ラストの老年時代に至るまで、全くブレていないのかもしれない。 他人の成功を妬み、自分が成功することのみを追求し続ける。 それがある意味で人間らしく素晴らしい。 ただ、ブレる要素はあった。 思いもよらぬ息子や弟の登場により、彼にも変わるチャンスはあった。 ただ、実際に血の繋がりがない肉親ではないために、関係が脆いものだったのが不幸だったのかもしれない。 ダニエルなりに葛藤はあったが、他人に対して自分本位の物の見方でしか、接することができなかったのだろう。 息子が独立したいといえば彼の見方では商売敵になる、赤の他人が近づいてくれば彼の見方では自分の金を狙っている、神がいるという者は嘘つきだという考え方しか彼はできなかった。 ただ、この世の中においては、彼の見方も一つの真実であるので、タチが悪い。 他人の生き血を吸い続けるという彼の生き方が何もかも間違っていると断言できる自信は自分にはない。 彼を「勝利者」とはいえないが、「敗者」でも「可哀相な人」でも「破滅した人」でもない。 何ともいえない深さが本作にはあり、初見では全体が見えてこないかもしれない。 何度も見るべき作品だろう。 「ノーカントリー」よりも、将来的に語られる映画は、恐らく本作の方だと思う。
[映画館(字幕)] 7点(2008-05-19 22:39:16)(良:1票)
320.  ブギーナイツ 《ネタバレ》 
アンダーソン監督は素晴らしい才能の持ち主だと分かる作品だ。 凡人の監督が本作を監督しても、これほど面白い作品には仕上がらないはずだ。 独自の世界観や映像を追求するだけではなく、王道的な“流れ”をきちんと踏まえている点も好感がもてる。 「導入」→「成功」→「綻び」→「失敗」→「再生」という非常に分かりやすい流れを辿っている。 自分らしさを上手く出しながら、観客が楽しめる作品に仕上がっているのは流石だ。 また、驚異的なのはバランスの良さだ。 これほど多くのキャラクターがいるのに、どのキャラクターも光を放っている。 そして、どのキャラクターも心の闇が映し出されている。 しかも、主人公をないがしろにするわけでもなく、主人公にも完全にスポットを当てているのが恐ろしい。 2時間掛けても1人のキャラクターすら描くことができていない作品が多いのに、これほど多くのキャラクターをきちんと描くことができるというバランス感覚のよさは素晴らしい。 そのキャラクターを演じた俳優陣も凄い顔ぶれだ。 当時はそれほど有名ではなかったのかもしれないが、これほどのメンバーが一同に介するとは驚きだ。 素晴らしい作品だが、あえて文句をいえるとすれば二点ある。 一点目は、監督と主人公の仲違いの理由がイマイチなのが、ややもったいないところだ。 単に横柄な態度によることで仲違いになるのではなく、もうちょっとドラマティックな展開でもよかったのではないか。 例えば、芸術性も何も理解していないのに、芸術性の違いによって監督と衝突させてみたり、ビデオ参入を決めたことに対して抗議したりというような展開でも面白いだろう。 作品が素晴らしいのは“スターである自分”が出演しているからであって、監督を含めて、その他は無用の存在という思い上がった姿勢をもうちょっと違う角度から描いて欲しかった。 二点目は、偽クスリを巡る銃撃戦があったが、あの部分は蛇足気味のような気がする。 主人公が駐車場でボコられて、監督に謝罪するという流れでも話はすんなりと通るのではないか。 一方、監督側の方も、企画モノの撮影の際に素人をボコボコにしたことで監督の傷も浮き彫りになっていたところである。 両者の傷が上手く融合することで、仲直りというクライマックスに持っていくこともできる。 あの爆竹が鳴る家の銃撃戦を挟むと、やや流れが悪くなったという印象を持った。
[DVD(字幕)] 7点(2008-05-19 22:30:22)
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