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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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301.  アラバマ物語 《ネタバレ》 
グレゴリー・ペックの演技がとにかく最高。 ジョン・フランケンハイマーの「I Walk the Line」やラオール・ウォルシュの「艦長ホレーショ」「世界を彼の腕」に並ぶベスト・アクト。  個人的には「拳銃王」や「廃墟の群盗」「無頼の群」「白昼の決闘」のようなアウトロー役も好きだが、ペックはやっぱり冷たいようで本当は根が厚い正義漢が一番。 「ローマの休日」みたいな王女のスキャンダルを書いてやろうと思っていたら、何時の間にかその人柄に惚れて助けたくなってしまった・・・そんな感じこそ俺にとってのペックなんだ。  「大いなる西部」のようないかにも正義感の塊というペックは好かない。   この「アラバマ物語」は、ホームドラマとしても、一つの法廷劇としても見れるこの映画。 前半は弁護士の父親と家族の団欒、父親が扱う事件を巡ってのトラブルなどなど、実にアメリカらしい社会背景が詰まっている。 そして子供たちの小さな冒険譚。 内容はてんこ盛りだが、ストーリー自体は淡々と事を運んでいく。  裁判のシーンは少し長め。 事件の真相を探っていく内に、差別や貧困といった問題も絡んでくる。  最後まで戦い抜いた父親だが、待ち受ける顛末は残酷なものだ。  ただ、ラストでちょっとした奇跡が待っている。  心の暖かい人間ドラマです。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-08 19:07:22)(良:1票)
302.  パピヨン(1973) 《ネタバレ》 
フランクリン・J・シャフナーとダルトン・トランボ、スティーブ・マックィーンが組んだ傑作。  シャリエールの原作では、主人公はその後ベネズエラ市民権を獲得したらしいが、本作の主人公はひたすら「自由」に向かって諦めようとしなかった。  金庫破りと殺人の冤罪で刑務所に放り込まれた「パピヨン」。 蝶のように自由に生きてきたこの男は、監獄という針で標本にされようとしていた。 マックィーンが捕まるのは「大脱走」や「ネバダ・スミス」を思い出す。  だがパピヨンは最後の最後まで諦めない。 隙を伺い、泥を這いずり油虫すら食してひたすら耐えに耐える。 やせ細り、髪が白んでも眼の輝きと魂は灯火を絶やさない。 かつて「大脱走」で見せたマックィーンの不屈の精神! 友情を結んだ「ドガ」をいつも気にかけてくれた情の厚さ、看守を睨む不敵な笑み。  何度でも逃げ、何度でも戻ってくる。 そして最後の最後に「自由」を掴み取る!  基本的には暗く陰惨だが、言葉が通じずとも心で通いあった村人との交流、教会でのやりとりなど見所も多くそれなりに楽しめる。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-07 17:29:35)
303.  ダウン・バイ・ロー 《ネタバレ》 
ジム・ジャームッシュによる愉快な刑務所&ロードムービー。 ジャームッシュの最高傑作はコレだろうねえ。 歌を歌うように淀みのない会話で人と人とが繋がっていく楽しさ。 デコボコだった3人の男たちが、会話や音楽によって「親しい兄弟のような間柄」になっていく映画だ。 こういうセリフが多い映画は、速さが足りない字幕なんぞで愉しみきれない。 戸田奈津子のカスみたいな字幕で楽しめるワケねえだろうがあっ!! 原語だけで愉しむのが一番だ。 まあ、そんな事はどうだっていいんだ。 この映画は、軽快な音楽と共に郊外の自然や市街地を移動撮影で映していく場面から始まる。 男と女が熱く愛を語っていた筈のベッドは冷たくなり、女に愛想を尽かされた男達は家を出て行く。 「あんたの音は聞き飽きたの」とばかりに散乱するレコードの破片、破片、破片。 外の町だってゴミだらけ。 銃を背中に向け「撃つわよ」と弾を込める音をわざわざ聞かせる女、それを「君になら撃たれても良い」とばかりに黙って立ち尽くす男。 男は背中で語る。こういうシーンが大好きです。 白いベッドに横たわる黒い女の裸体がエロい。布団を優しくかける紳士すら捨てられていく。 ジャックとザックは女に捨てられるわ罠に嵌められるわ仕舞いにゃブタ箱。 独房の壁のザラザラした音が耳障り。あの感触を想像するだけで胸が痛くなる。 だが、そのブタ箱で思わぬ出会いをする3人目の男ロベルト。 この男が衝突する2人の間を取り持ち、潤滑油のように友情を深めてしまう。 喧嘩するほど仲が良い。 ジャックとザックの殴り合うような掛け合いだけでも面白いが、そこにロベルトが加わる事でアンサンブルはより楽しくなる。 3人の合唱は独房全体に響き渡り、警官の警棒がフィナーレを締めくくる。最高に楽しい場面だった。 独房の中心でアイ(スクリーム)を叫ぶ(スクリーム)。 ロベルトは壁に“窓”を書いて「ここから出ちまおうぜ」と言ってのける。 本当に出ちまうんだから面白い。 逃亡という名の森林散策。 船で沼地を進む3人ををロングショットで捉えたシーンの幻想的なこと。 ウサギの丸焼きは美味そうだ。 飯喰って仲直り。 道の一軒屋で3人を持て成してくれた奥さんがキレイな人でねえ。 ロベルトもまた恋に出会う。 やがて別れていく3人だが、分かれ道でのやり取りの何と粋な事。 「おまえが左なら俺は右よお」
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-07 16:47:30)(良:1票)
304.  ファニーとアレクサンデル 《ネタバレ》 
この映画は、愛のドラマでもあるし「狼の時刻」のようなホラーでもある。 水の激しい流れで各章は始まる。 まるで人生が流れるように、2年かけて一つの家族のドラマを群像劇風に描いていく。 プロローグのアレクサンデルの幻視体験と一人舞台に始まり、聖夜(性夜)の祭り、家族の死、家族の再婚、新しい生活とアレクの受難、主教の苦悩とアレクの悪夢、そしてエピローグの新しい命の誕生。 冒頭のアレクが見る幻。動くはずのないものが動く恐怖、死神が予告する死の恐怖。 愛情をまんべんなく注く父親や母親。 子供達に文字通り“臭い”ジョークを飛ばして愉しませる。オナラでろうそくを消すシーンは爆笑。 愛情が注がれた子供達は、メイドと枕を炸裂させて聖夜を楽しんでいる。 うら若き母親と中年気味の父親もベッドを粉砕するほど性夜を(ry そんな楽しき夜も、父親はもっと身近に家族達といたいと嘆く。まさか不幸な形で彼の望みが現実になるとは。 父親の代わりとして現れる、悪魔の様な主教がアレクを苦しめていく事になる。 母親は子供達を養うために止む無く再婚を選ぶ。 主教も厳しく子供達にあたるが、それも新しい父親として子供達を立派に育てようとする想いが空回りしているのかも知れない。 舞台の装いを止めさせたのも、父の死という辛い記憶から残された人々を解放しようとしての事だったのかも。 だが、アレクは憎悪を抱いてしまう。 冒頭の動くだけの人形は、人の化身となってアレクの話し相手となる。 亡き父親もその一人として彼を見守る。アレクは未だに前の父親が忘れられない。 それはアレクの寂しさ故だ。妹のファニーがいるだけじゃ寂しさは収まらない。ただ家族の愛に飢えている。 しかし、見守るだけで彼を直接助けようとはしない。 「いるだけならさっさと成仏しちまえよっ!」とばかりにブチ切れるアレク。 主教の家を焼いた業火は亡霊が放ったのか。それとも単なる偶然なのか。それは解らない。 アレクは自分のした事を悔やむ。本当に祈った事は、こんな事じゃなかった。ただ暖かい愛が欲しいだけだったのに・・・。 クライマックスは、新しい命の誕生、主教とアレクが“再会”するシーンで締めくくられる。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-07 00:49:12)
305.  ナサリン 《ネタバレ》 
ブニュエルの映画は不条理な作品が多いが、この作品はある意味「忘れられた人々」よりも虚しさに襲われる映画だ。 神父以外みんな疲れた顔をしている。貧しさに疲れ果て、心も卑しさに満ちていた。 首吊り自殺に失敗する女性もいれば、女同士の取っ組み合いも日常茶飯事。 そんな汚濁のようなこの街に、馬鹿正直で理想を失わない男がまだいた。 ナサリン神父は、殺人を犯してしまった娼婦を救おうと懸命に努力をしたが、結局家に火を付けられてしまう。 挙句には娼婦との肉体関係を疑われ、神父としての資格まで奪われてしまうのだ。 いくら神父が熱弁を振るおうとも、娼婦にはキリストの絵がこちらを嘲笑しているようにしか見えなかったのである。 過去の男の思い出で狂ったように笑う女。 ナサリンは、いつか解ってくれる人がいる、救える人がいる筈だと巡礼の旅に出た。 だが労働場でも後ろから石を投げられる始末。 「やったらやり返す」・・・ナサリンは手を出さなかったが、他の不満を持つ男達が怒りを爆発させる。 銃を抜いて殴ったら、その後ろから男からシャベルで一撃。鳴り響く銃声・・・。 蹴り→棒切れ→蹴り。 警官たちも喧嘩っ早い。そのクセ、人が倒れていても放っておくのだ。 ナサリンの旅は続く。途中で出会った、男に裏切られた母親とその娘。 彼女の甥の病気を直したことでようやく明るい兆しが見え始める。 ナサリンは親娘に慕われる。 3人は疫病の蔓延する村で献身的な努力をするが、無駄に終わってしまう。 子のために狂ったように祈る女が忘れられない。 だが、ナサリンたちは確実に何かが変わり始めていた。 これから希望に向って進もう・・という時にナサリンたちを再び不幸が襲う。 母親はともかく、娘が一番不幸ではないだろうか。 母親の前から何の挨拶もできず連れ去られる娘・・・男のやらしい手つきが、娘が男から離れた理由を語るようだ。 徐々に女らしく、自分を取り戻してキレイになってきた彼女が、偶然にも昔の男に“惚れ直されて”しまう悲劇。愛していない男にだ。しかも、心は別の男に移っていた時に・・・。 冒頭の笑うキリストは、将軍の肖像に変わりナサリンを睨む。 娘とナサリンがすれ違うラストシーンが強烈。 ラストで鳴り響くドラムロールは、ナサリンの力強い前身を物語るのか。それとも、より過酷な試練を予告しているのか・・・それは解らない。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 13:06:50)
306.  トゥルー・ロマンス 《ネタバレ》 
トニー・スコットとタランティーノが組んだ最狂のロードムービー「トゥルー・ロマンス」。 トニスコにとっても「クリムゾン・タイド」や「マイ・ボディーガード」に並ぶ最高傑作。 「地獄の逃避行」はモチロン「拳銃魔」だの「ボニー&クライド」だの「暗黒街の弾痕」だの色々なトチ「狂い咲きサンダーロード」(褒め言葉)がこの映画の源流だ。 今までの逃避行ロマンスは、みんな派手にくたばる道を爆走する事が魅力だった。 だが、この映画は違う道を走る事を選ぶ。  冒頭はただのバカップ(ry・・・が紡ぐ恋愛映画、しかし女の素性が判明するにつれて男の運命は狂いはじめる。 いや、男はそれと解ってあえて狂った道を突き進むのだ。何故ならその女に心底惚れてしまったから。  「ヒズ・ガール・フライデー」も顔負けなマシンガントークを、トニー・スコットが機関砲の如く飛ばしまくる。 売春ディスコ?での殺し合い、真っ白い“爆弾”を選び取る男、ビッチの痛快な逆襲、電話中にBOXセックスを聞かされる上に犯罪に巻き込まれる友人カワイソス、電話帳「F●ck you!」、傷口に油はキツい、クライマックスのファ●キングストーム! 警察、マフィア、クラレンスたちの三重奏。 それがセリフによって緊張感を異常なまでに上げる。 タランティーノのシナリオ、トニスコの手堅い演出。 しかしつくづく強運なバカップルだ。いや、最後まで諦めず粘った・・・その結果道を拓いたんだろうね。  売春宿における電灯で顔を照らしたりプラプラやるシーンが地味に好きだ。まるで警察が犯罪者を尋問するみたいに。 その警察が犯罪スレスレの捜査をやってのけるんだから怖いもんだ。 デニス・ホッパーのカッコ良さは異常。 「地獄の黙示録」や「スピード」の狂ったホッパーも好きだが、真面目な役を貫くのもカッコイイ。 ブラッド・ピットが後の「イングロリアス・バスターズ」で活躍するとはこの時誰もそう思わなかっただろうね。 サミュエル・L・ジャクソンが相変わらず良い仕事しかしません。  
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 02:16:19)
307.  思ひ出 《ネタバレ》 
サイレント時代のエルンスト・ルビッチ最高傑作を1つ選ぶとするなら、俺はこの作品を選ぶだろう。 ドイツ時代に磨かれたエレガンスな雰囲気とエロティックなやり取り、そしてメロドラマの切なさ・・・。 この映画はルビッチらしい洗練された美しさを味わえる作品の一つだ。  主人公のハインリッヒ王子の成長を美しい“想い出”と共に語る悲しき恋の物語。 乳母に育てられた王子。 彼の理解者であるユットナーは、幼い王子の遊び相手でもあった。  成長した王子は同級生、そして想いを寄せる女性たちに出会う。 そのシーンが本当に素晴らしい場面ばかりでさあ。 例えば、握手を求められるシーンでどんどん弾き出されるユットナーの様子がコミカルに描かれるし、  女性が一生懸命話しているのにソッポを向く王子のやり取りも面白い。 「あたしの膝の上に乗って」とばかりにベッドに誘ったりする彼女の姿をシカトするシーンに笑う。 そこに睨みを利かす守衛とか色んな人間が絡んだりしてさ。 ドアを開けたらその守衛みたいなオッサンが居たりして思わずクスとなってしまった。  王子がパーティーに参加する場面でも、彼女が一気飲みするならこっちもイッキに・・・に飲めないのでチビリチビリと飲んでいく。   王子の幼少時代の場面も良いんですよ。 将軍に向って一斉に「乾杯!」するシーン、一斉に帽子を脱ぐシーン。 ドラムロールと人の脚が重なる演出、幼いハインリッヒ王子が大砲の音にビックリして電車の中に戻るシーンがカワイイ。 ユットナーと結ぶ絆も深い。  青春時代のコメディタッチが、その後に待ち受ける王子の運命、それに向き合う悲しき王子の姿をより際立たせる。 掛け替えの無い友人たちよりも、一国の王の跡取りとして友人たちへの想いを断ち切らねばならない哀しみ。  だが、王としての孤独を癒すのは、一瞬でも彼の心を満たしてくれた想い出なのです。 皆さんも若いうちに良い友達に会える事を祈ります。友人て良いもんですよ、本当。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 01:49:12)
308.  紅夢 《ネタバレ》 
チャン・イーモウとホウ・シャオシェンが組んだ女性映画の傑作。 イーモウとしては「活きる」に並ぶ最高傑作だと思う。 少女が林の中を一人歩いてくるファースト・シーン、たどり着く先には巨大な提灯が赤々と、熟れた果物のように灯をともす。 貧しい生活と、その生活を愚痴る母親に嫌気がさし頌蓮は家を出て嫁いできた。 だが、嫁ぎ先はもっと息苦しい思いを強いられる場所でしかなかった。 春夏秋冬の一年ではなく、女達が真の幸せを得る“春”は永遠に来ないのかも知れない。 男には3人の夫人が既におり、彼女は4番目の女として迎えられた。 見かけこそ寵愛を注ぐという赤い提灯が掛けられているが、実際は4人目の女に注がれる愛情など少ない。頌蓮にとっても、顔が遠くからぼやけて映る程度の“記憶”しかない男なのだ。 劇中では何度となく響き渡る小羅が印象的。 第一夫人の大太太、第二夫人の卓雲は同情を寄せるが何処か影がある、第三夫人の梅珊は元舞台女優としてのプライドからか彼女に対抗意識を向ける。朝方響く彼女の歌声は、大旦那や他の夫人たちに対するアピール。召使の雁兒も大旦那に可愛がられる女の一人だ。人に見えない場所で頌蓮の洗濯物にツバを吐くほど敵意を見せ、夫人の一人になるべく彼女の部屋は赤い提灯だらけで禍々しく光る。邸宅の閉塞感や抑圧が、一層彼女の心を圧迫する。 形見の笛を探した先で見る頌蓮を“呪った”人形、 意外な人物の敵意を知るショック。彼女もまた女たちの潰し合いに嫌がおうにも巻き込まれていく。 梅珊もまた頌蓮に味方をする傍ら、卓雲を潰すために一時手を組んでいるだけに過ぎないのかも知れない。 とうとう頌蓮も“牙”を向いてしまう。 例え本心からじゃなかったとしても、心の何処かで「邪魔者は死んでしまえばいい」と思ってしまったのかも知れない。 召使の部屋から提灯を全部出させて焼き尽くすシーンは、抑圧されたものが弾けるようなシーンでもある。心を“破壊”するのだ。 人間の命のなんと儚い事か。 あんなに赤々と灯された火が竹筒の一吹きで消えてしまうように、人間の命も簡単に消えていく。 ロングショットで一人の人間の“灯”が消えていくのを見つめる場面。 新しくやってくる第五夫人はかつての“大太太”であり、“頌蓮”でもあるのだろう。 赤く燃えるような提灯は何を語るのだろうか。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 01:30:45)
309.  赤い風船 《ネタバレ》 
アルベール・ラモリスによる最高に可愛らしいファンタジー映画。 セリフがほとんどないのにこんなに面白い映画を撮れる。無粋なセリフはいらないのだ。冒頭に出て来た犬のように、少年の目の前に現れる風船はペットのように、人間のように感情豊かな姿を見せる。 ガス灯から風船を“救い出す”シークエンスから始まり、風船は意思があるように自ら浮いたり降りたりする。 乗船拒否されれば、勝手に少年を追うだけだ。 濡れたレンガの路地の上を飛んでいく風船、 尻尾のようになびく紐、 白と赤のコントラスト、 傘から傘へ移って行く少年。 赤い風船は青い風船に惚れ、青い風船も赤い風船に反応する。これが伏線になろうとは・・・。  他の子供達は、赤い風船と少年に“嫉妬”して彼らを追い回す。 階段や路地における追走劇のスリル! 通りすがりの婆さんのオフェンス。 ちょっとしたファンタジーとか短編とか子供向けの映画とナメてかかっていたらコレだ! まさかここまで面白いとは思わなんだ。  子供達は赤い風船を“さらう”。男の子たちに混じって女の子がいない事も不思議だった。まるで一人の女を取り合うように。 綱引きや柵のやり取り、訪れる“死”。 少年の悲しみが起こす風船、風船、風船の奇跡。 空の向こうに消えていく美しいシーンだが、本当に死んだのは果たして・・・。 この映画の後に「白い馬」を見るのが最高なんです。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 01:08:50)(良:1票)
310.  白い馬(1952) 《ネタバレ》 
アルベール・ラモリスは「赤い風船」が最高に面白かったが、俺はこの「白い馬」もかなり愉しむ事が出来た。 とにかく馬の凄さを堪能できる一篇だ。 まるでサイレント映画の活劇がそのままトーキーに移ったような作品だった。 白黒の美しい画面の中を、馬たちが時に荒々しく、優美に駆けて行く。 草原を、湿原を、砂漠を、浜辺を走って走って走りまくる。  牧童たちは、野生の馬の美しさに憑りつかれている。 特に野性の馬たちを束ねる白馬の美しさにだ。 まるで西部劇さながらに馬を追い立てる。 人間のために乗馬され、かつての仲間を追う馬たちの心境はどんなものだろうか。 「早く仲間になっちまえよ」とか、それとも「捕まったら俺たちみたいになるぞ早く逃げろ」とか思っているのだろうか。  捕まっても大の大人4人を相手に大暴れの逞しさ。 「!誰が貴様らの奴隷になるものかっ!俺は自由に生きるんだ」とばかりに柵をブチ破り脱走。  後の「花の慶次」における松風である。  船を漕ぐ少年は最初傍観者だが、彼もまた白馬に心を奪われた一人だった。 牧童たちが無理矢理馬を従わせようとしたのに対し、少年は馬に“認められる”まで喰らい付いた。 白馬は少年を認める。印象深いシーンだ。 彼は馬を救うべく匿うが、交流も束の間で手当てしたばかりの身体でまた走り出す。 妹涙目。イチイチ破壊される柵涙目。じいさん爆睡。  ドラムが白馬と牧童たちのチェイスを盛り上げる。 馬同士の喧嘩も凄い。顎で馬の皮膚をむしるようにちぎる。 草むらにかくれた馬の炙り出し、炎の中を駆け抜ける馬と少年。 白馬がウサギを追うシーンが可愛かった。  渇いた土に弾痕のように刻まれる足跡。 いよいよ牧童たちとの追走劇もクライマックスだ。 水面、フラミンゴの群、距離感が掴めないチェイス。  馬は海を泳ぐワケじゃない。脚を動かして海の中を“駆けて”ゆくのだ。何処までも。 
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 01:04:58)
311.  ストーカー(1979) 《ネタバレ》 
2時間45分という長さは、全2部構成として1つずつ別けて見ればどうという事はない(と思う)。 「惑星ソラリス」に続くSF映画だが、この映画は冒頭のウォーレス博士の短い言葉が字幕で語られ、ストーカーたちが追う「ゾーン」と呼ばれる空間だけがかろうじてSFの機能を果たす。ここでの“SF”は、完全に要素の一つとして使われるのみ。 いや、もっと言えば身近な科学…例えばこの映画では原発の描写を暗示または予兆している。 タルコフスキーの映画はこの作品から難解と言われるようになるが、俺にはこれほど解り易い映画も無いと思う。 確かに途中の劇中会話は謎も多いが、大筋は“願いがかなう場所に旅人を案内するハンター”の話だ。 長セリフで少し退屈する時もある(意味不明だし)が、あの長回しの映像は見ていて何故か飽きない。 電車の振動が「ボレロ」のように幾重にも響くこの映画は、ストーカーという運び屋がとある酒場に入る場面から始まる。酒場には物理学者が二人。彼らは興味本位・欲望の赴くままストーカーに身を預ける。 だが「ゾーン」に入ればありとあらゆる願いが叶うと信じられていた。人々はその願いのために命懸けでストーカーと共に冒険へと出る。 冒頭から夥しく飛び込む水と光のイメージは、湿地帯の静かさを除けばところどころ人間の欲望で穢れてしまった空間ばかり。 ストーカーはあの空間に安らぎを見出しているが、旅人には危険な「パンドラの箱」でもある。 部屋で揉める旅人と運び屋の取っ組み合いを不気味に静観するように“待ち続ける”「ゾーン」。「ゾーン」は拒む事も手招きもしない。ただ彼らが部屋に入るのを待つだけでいい。 旅人たちは己との戦いの果てに答えを出す。 ストーカーも以前は同じ旅人の一人だったのかも知れない。 だが、彼は過去の出来事で同じ旅人が部屋に入った結末を知ってしまっている。 だからストーカーは運び屋であり、傍観者になる事を決めた筈だった。その傍観者が旅人から「ゾーン」を守るために己の“欲望”を優先して傍観者を止める。ストーカーもまた作家になじられる旅人でしかなかったのだ。 ストーカーは絶望を口にするが、彼はその絶望を何度となく味わうであろう宿命にある。 その宿命は、その妻や娘をも狂わせていくのだろう。ストーカーの家族が旅人にならないという保障は何処にもないのだから。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 01:02:09)(良:1票)
312.  天使の涙 《ネタバレ》 
ウォン・カーウァイの「花様年華」に並ぶ最高傑作の1本。 「恋する惑星」よりコッチの方が解り易いし、面白さはこの作品だろうね。 「恋する惑星」の続編というか、一部になる予定がそのまま独立した作品になったそうだ。 「恋する惑星」では一瞬だけだった銃撃が、今回は派手な銃撃戦も楽しめる。 しかし物騒な町だなオイ。 一人ずつエピソードを紹介し、交錯して行く話だが深入りはしない。 冒頭からして引き込まれるではないか。 男女の会話から回想、一つの家にまったく違う住人が住む。 女はベッドメイキングしてまで痕跡を残さない。女の手の震えが気になる。 そこに男が入ってくる。 どうやらここは男の家のようだ。 女は男に協力する傍ら情報を流し、男はその情報を頼りに標的たちを血祭りに上げる。 夜のトンネルを駆け抜けるシーンは早回しで撮られ独特の雰囲気を醸し出す。 二挺拳銃が一瞬で炸裂するシーンは強烈だ。 殺し屋に保険はない。 友人は悪い奴じゃないし、巻き込まないためにも過去は断ち切るしかない。 殺し屋がいない間に女は過ごす。 酒場の電子音と共に女の肉体が艶かしく揺れるシーンはエロい。脚! 咳き込むくらいなら密室で煙草を吸うな。 後半登場するモウの行動でイチイチ笑う。 金城武は俺を笑い殺す気か。 不法侵入して豚のマッサージから野菜の叩き売り&寝た人間の叩き起こし、無理矢理散髪に腹がくだるまでアイスを食わせるなど迷惑甚だしい。 愛すべき馬鹿。 アイスのくだりから父親のエピソードが出てくるのが面白い。 アイスに火を付けるのって美味いのか? 「恋する惑星」にも出て来たよく似た店とスチュワーデス(死語)の女が、続編というか前作とのリンクを物語る。 一方の殺し屋も取立てが命の取り合いに。 家を直接狙われない不思議。 スタイリッシュなマクドナルドのCM。 金髪女との出会いと別れ。 一方、“相棒”はフラれたショックか一人で喘ぐ。 黒のガーターがエロいっす。 モウは1回死なないくらいじゃないとアカンとちゃうか? ネタが多すぎてツッコミきれねえよ。 殺し屋とのギャップが酷すぎる(褒め言葉)。 怖ええよ金髪アレン。 モウが父親に“誕生日プレゼント”を送るシーンは微笑ましい。  「無断で人の店を開けてはいけないんだ」 当wwたwwりww前wwだwww あのモウがちゃんと働いている姿を見るだけでも思わず感動。
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 00:50:07)
313.  眼には眼を 《ネタバレ》 
アンドレ・カイヤットはヴェネツィア国際映画祭金獅子賞を二度も受賞した存在であるが、最近まで彼の存在は忘れ去られていた。 フランス本国やアメリカでもカイヤットの名は余り聞かない。 知る人ぞ知る存在にすぎなかったカイヤットだが、TUTAYAからもDVDが出たし、今最も再評価が進む作家の一人だ。 というより、非常に日本人好みの映画なのかも知れない。  この「眼には眼を」は一言で言うと、“逆恨み”を極限まで高めた究極とも言える映画である。 復讐者も意地っ張りだし、それに対峙する医者もどうしようもない頑固者。意地と意地のぶつかり合いだ。 「あんたが殺したって言ってんだろ!!」 「あれは事故だっつってんだろうがっボケェ!!」 馬鹿VS馬鹿。 人々の葬儀の様子からはじまるファースト・シーン、画面は病院へと移る。 医者たちの淡々としたやり取りが、やがて壮絶な意地の張り合いへと発展していく。 不幸な偶然が重なり起こる“死”。 助手の「先生なら助けられた!」という一言も妙に突き刺さる。 それと同時に医者の周りで異変が起き始める。 冷たくなった女の顔、その顔が移った写真、 無言電話、 無言で何かを語りかける車、 時々姿を見せるサングラスの男の不気味な影・・・。 アンリ=ジョルジュ・クルーゾーのような徐々に緊張感を高めていくスリルだ。 撤去した筈の車が元通りになっているのもゾッとする。  120kmが空耳で300kmと聞こえた俺は病院行った方がいいのかも知れない。  翌朝よそよそしくなる妹も怖い。 それにしても、長くいて現地語を殆ど覚えていない医者も医者だけど。 ま、密室で付きっきり、通訳もいればそんな気も起こらないだろうか。 それにしたって通訳を連れて来なかったのはおかしい。 せめて帽子くらいは被ろうぜ・・・。  ナイフ投げのシーンやゴンドラの異様な緊張。 医療器具を落としたのも絶対“ワザ”とだろう。 復讐者の変質的な嫌がらせもエスカレート。家族もいるのにこの男は・・・酷い野郎だ。  砂漠の様な場所を延々と歩き続ける。 出血多量になろうがそれすら演技にしてしまう恐ろしさ。 復讐者の体力も凄まじいが、医者も気力でふんばる。 動物の死骸が腐っていく様子が恐ろしい。   医者は余りに絶望的な“良い旅”へと出掛けていく・・・。 
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 00:43:11)(良:1票)
314.  ガメラ3 邪神<イリス>覚醒 《ネタバレ》 
未公開シーンは絶対見ろ-シリーズ最高傑作 日本が誇る「ゴジラ」に並ぶ最高の怪獣「ガメラ」。 ガキの頃のトラウマばっかりだが今見るとしょせん作り物。 だが、その作り込まれたメカニックや模型、破壊的なまでのストーリーは見応えしかない。 CGはチャちだが、月夜に舞うイリスの美しさ、ガメラとイリスの壮絶な死闘がそんなチャちさを感じさせない迫力! 仲間由紀恵もアボーンッ。 東宝はどんだけ東京と京都を火の海にすりゃ気が済むんだ! ちったあ自重しろよ(褒めてる)!!  だのにあれだけ重要な伏線を全部未公開シーンにぶっ込むたぁ、一体どういう神経してやがる。 幼少イリスはキモカワイイ。頭部の可愛さだけは異常。 熊涙目。触手プレイまでしちゃって覚醒。夕陽をバックに触手を拡げるシーンの禍々しき美しさ。イリスも勃(ry ギャオスの生々しさ、ガメラの容赦のなさ。 子供を守った“ように見える”だけなんだろうねえ。 いいかっ!「ゴジラ」の自衛隊が頭おかしいだけなんだよ(褒めてる)! この「ガメラ」だって航空自衛隊の回避能力はおかしい(賛辞)。 毎度生き残る大迫さんも色々おかしいです。  腹の次は腕を吹き飛ばすラストバトル。  ガメラ「俺たちの戦いはこれからだ!」  
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 00:27:05)(良:1票)
315.  X-MEN:ファースト・ジェネレーション 《ネタバレ》 
「キック・アス」を手掛けたマシュー・ヴォーンによる傑作。 「X-MEN」シリーズの前日譚にあたる作品だが、今までのシリーズよりも活き活きとしたエネルギーに満ちている。 続編となる「フューチャー&パスト」も中々面白かった。 マグニートってこんなにカッコ良かったかなあ・・・。 設定が矛盾しているとかいうけど、そこは「キック・アス」に通じる馬鹿馬鹿しさとシリアスのバランスが面白いという事で。  ユダヤ人として生まれた魂は、その怒りによって能力に目覚める。 やがて訪れる復讐者と仲間達の出会い。  テレパシーでどんな人間にもコンタクト、 全身真っ青で誰にでもなれる女性、 全身をダイヤモンドにしてキレイに円を描くパッキン女性、 あらゆるものを吸収してしまう不老の元ナチス、 見た目は野獣中身はイケメンな頭脳派、 呼んでますよアザゼルさんなどなど超人&変態の万国博覧会。 手から刃を出しまくるオッサンも一瞬登場。   人を信じて生きてきたプロフェッサーX(チャールズ)、人を信じないで生きてきたマグニート(エリック)の対比が痛々しい。  敵が“潜る”なら“引きずり”、叩きのめすのみ、 撃ってくるなら全部弾き返すだけよおっ! ブラックバードで飛来してくるシーンは超ワクワクしたぜ。   ローガン「おとといきやがれっ!」
[DVD(字幕)] 9点(2014-11-01 00:22:11)(良:1票)
316.  赤西蠣太 《ネタバレ》 
伊丹万作の傑作喜劇調時代劇。 この映画は原田甲斐の「伊達騒動」、それに志賀直哉の小説を読んでからの方が楽しめるだろう。 冴えない下級武士の赤西蠣太。しかし実は陰謀の真相を探るべく送り込まれた密偵の一人だった。 世継ぎ騒動で揺れる仙台藩。その真相を暴くべく命懸けの日々・・・なーんてシリアスな空気を感じにくいコメディタッチのやり取り。 かといってドタバタしたものではなく、落語の名人が語るような洗練された流れ。 歌舞伎調のキャラ原田甲斐とブサイクな赤西蠣太を演じ分ける片岡千恵蔵の名演。 顔は悪くとも心は腸捻転を自力で治そうとするほどの肝っ玉。 「脱走」のアイデアや追っ手をけむに巻く手口など大胆不敵だ。 少ない時間だが若いサラリーマンのような武士を演じる志村喬の演技も忘れられない。 「時間がありません」もう結婚しろよおまえら・・・
[DVD(字幕)] 9点(2014-10-23 18:26:04)
317.  男の顔は履歴書 《ネタバレ》 
これぞ、役者がそこにいるだけで絵になる魂が躍るような映画だ。  加藤泰の、そして俳優としての伊丹十三の「偽大学生」「家族ゲーム」「草迷宮」に並ぶ最高傑作。  戦後の闇市における日本人と朝鮮人の対立を正面から描いた極太の作品。  左頬に刻まれた疵。安藤昇の存在感は黙っていても映える。 一方の伊丹も言葉という極太の“刃”を持って社会に切り込もうとしている。  静と動の鮮やかな対比、そして「何故みんなは黙っていられるだ。誰も動かんなら、俺がやってやらあっ」とタブーにズカズカ踏み込む勇気と危うさ。  それは映画を愛するが故に「誰も撮らんなら、俺が撮ってやらあ」と数々の傑作や問題作を残して謎の死を遂げた十三の未来を暗示するようでゾッとしてしまう。  劇中では戦場の辛い記憶や戦後の混乱、愛する女のための行動などが彼を死に急がせる。 クライマックスにおける怒涛の展開も彼の生き様を物語るようだ。  父親の伊丹万作も、その友人の山中貞雄も志半ばで早逝してしまった。 天は何故素晴らしい人間から命を奪っていくのだろう。 これが神の仕業とでもいうなら、神なんてクソ喰らえだ。
[DVD(邦画)] 9点(2014-10-23 18:09:34)
318.  ライムライト 《ネタバレ》 
チャップリンは様々な映画で人々の心に希望を灯し、次の旅先へ向い続けてきた。 それに一つの終止符を打つ「殺人狂時代」と「ライムライト」。 「キッド」や「カルメン」と違い真正面から死を見つめたこの2本は、一見正反対のようで根底には人の死が横たわる。 「ライムライト」は今まさに死が迫ろうとする女性の姿から物語は始まる。 街に溢れる音楽、アパートのある一室でぐったりとした美しい女性。右手の小さな瓶が総てを物語る。 その現場を目撃してしまうほろ酔いの男。 いつものチャップリンならドアを開けるまでにもう一騒動待ち受けているが、運命は彼に使命でも与えたかのようにドアを開けさせた。 何故かマイケル・パウエル&エメリック・プレスバーガーの「赤い靴」を思い出してしまった。 あの作品も踊りを愛し、愛するが故に舞台の上で命を燃え上がらせる作品だった。ここでは、美しいプリマドンナを救うためにチャップリンという天使が現れたとしか思えない。 放って置きそうで黙って見過ごせない情、死ぬ事のつまらなさと生きる事の喜びを彼女にありったけ注ぐチャップリン。まるで最後の力を振り絞るように。  ノミのサーカスは「教授(チャップリンの教授)」以来の“復活”。  クレア・ブルームは命の恩人に惹かれていくが、チャップリンは「過去の人間」として「未来を歩みはじめた」彼女のために見守る愛を選ぶ。 かつての「サーカス」や「失恋」といった作品がそうであったように、チャップリンは本気でその人の事を愛してくれる人を見つけたら、潔く身を引いてしまう男なのさ。 彼は彼女を愛しているからこそ頬をひっぱたき、笑顔で励まし送り出してくれた。彼の愛が彼女の脚も動かしてしまう。 チャップリンとクレアのダンスシーンが本当にキレいでさあ。 ラストのバスター・キートンとの狂騒的なグランドフィナーレですら、笑えるのに切なくなってくる。それは上映時間が迫る「もうすぐお別れ」という感覚だからだろうか。二人の息の合った演目が素晴らしいほど、不安も大きくなる。 あんなに笑えてあんなに切なくなる“退場”の仕方って有りかよ。 道化師は去り、美しい白鳥が次の舞台を踊り続ける。
[DVD(字幕)] 9点(2014-10-14 17:53:54)
319.  サウンド・オブ・ミュージック 《ネタバレ》 
ロバート・ワイズは「罠」といったフィルム・ノワールやSF、戦争映画と傑作・力作揃いだ。 だが、やはりミュージカル映画が最も評価の高いジャンルなのだろう。 この作品は「雨に唄えば」に並ぶミュージカル映画の最高傑作だと思う。  雄大な自然を捉えた美しいキャメラワークと撮影。 誰が撮ったのかと思ったらジョン・ヒューストンの「黄金」やエリア・カザンの「エデンの東」を撮ったテッド・マッコードではないか!道理で雨のシーンや山々の幻想的な映像が際立っているワケだ。   教会で修道女をやるような器では収まらないマリア。 他の修道女はマリアが歌う事を咎めるが・・・ってアンタらも歌っているじゃないか。  送り出されたマリアは絶倫トラップ大佐の元に。 トラップ大佐の家族は腕白な一個正体(5姉弟)。 マリアにとっても、子供たちにとってもヤッた事のない“冒険”のはじまりだ。  マリアは自分に言い聞かせるように歌う。 やがてその歌は子供たちの心も動かしていく。 聞き覚えのある名曲たちが子供たちの、トラップの、そして我々の心を満たしてくれるのだ。  「私は犬ではありません大佐(少佐)」 「さきの奥さんの記憶が辛いのでしょう」 「イキすぎたのよ(子作り)」・・・意味深なセリフの数々。 家政婦が(メッサー)シュミットときたもんだ。 奥さんの死因は絶対トラップ大佐のピスト(ry  まつぼっくりの“あいさつ”、 雨の中のダンスの可憐さ。雨にしっとり濡れた感じが色っぽい。 アシダカ軍曹、お疲れさまっす。 「稲妻に返事をする雷」とはマリアらしい考えだ。  辛い時、泣きたい時は楽しい事を考えてしまおう!  歌で心が通う感動。  伯爵夫人も悪い人じゃない。相性の問題さ。自ら身を引いていく潔さ!  迫るナチスの影、だがマリアたちは諦めない。 「隠れても問題は解決しません。立ち向かうの。自分の道を探すのです」 トラップもまた男。潜水艦の艦長は溺れねえぜ。 垂れかかったナチの旗は破っちまえっ!   終盤におけるナチス将校たちとの緊迫したやり取り。 大佐(少佐)が本当カッコイイ。  ロルフよありがとう。そして生きろよ!  ラストの山々の風景が最高だった。
[DVD(字幕)] 9点(2014-10-14 17:30:49)(良:2票)
320.  エンジェル・アット・マイ・テーブル 《ネタバレ》 
「ピアノ・レッスン」が海のイメージからはじまるように、この作品もまた海のイメージを持つ。 だが、「エンジェル・アット・マイ・テーブル」の冒頭は緑の芝の中を貫く1本の道から始まる。 自然豊かな自然、動物達の声。 「ブライト・スター」ほどじゃないが猫も出てきます。 幼いとはいえ、彼女も立派な女の子。 瑞々しい心理描写には息を呑む。 列車は彼女の人生が旅そのものでもある事を示す。 ジャネットの少女時代から学生、大人の女性へと徐々に成長していく物語。 明るい子も入れば仏頂面の子供もいる。 ジャネットも成長すればするほどどんどん垢抜け、美しい女性へと成長していく。たまに幼少時の面影が出たり消えたり。 先生が教卓で話している時に一瞬映った“剣”は何を象徴しているのだろうか。 成長した少女達の青春、タンゴで踊り狂いたくなるほどエネルギーに満ちる姿。 穏やかな日々、突然の死、涙、初潮、過去との決別・・・。 再び画面に映る列車は、彼女を次の場所へと運んでいく。 初恋?とつまみ食い、不気味な森、ショックで自殺未遂を図る衝撃。 だからっていきなり精神病院はもっと悪化しそうだけどどうなの? いい加減な説明を鵜呑みにしてしまうのだから、相当ショックが大きかったのだろう。 虫歯を放っておいたら全滅、ベッドに拘束、200回目の電気イス、ロボトミー・・・よく無事に帰ってこれたなジャネット。延々と続くかのような苦しみと恐怖を、観客も体験する。 自分を救ったのが、思いを綴った小説だったとは。 余りに精神的に繊細で脆かった彼女も、様々な経験を経て自分を変えていく。良い意味で“わがまま”な彼女は、もう他人の言いなりにはならないし、誰も彼女の想いを止める事はできない。 奪われた8年間を返せと恨むでもなく、彼女は溢れんばかりに想いを込めた小説で自分の心に溜まったあらゆる物を吐き出すのだ。 久しぶりに外に出た彼女は、家族と再会し、やがて誰にも縛られる事の無い海のある開放的な町を目指す。 故郷にも海が拡がっていたが、もっと広い広い場所へだ。 美しき母のような海原は、ジャネットが恋に落ちやがて母親になる事を暗示しているかのようだ。 「ピアノ・レッスン」のエイダもまた一児の母だった。 再び故郷に戻る彼女。その表情には、もう精神病院に送られてしまうような心の弱さを感じない。 一人の強い女性としての彼女がそこにはいる。
[DVD(字幕)] 9点(2014-10-11 15:38:26)
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