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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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321.  ウォーリー 《ネタバレ》 
 これは、ちょっと困った一品。   何せ観賞後の自分の感想はといえば「性別というものが存在しないロボット同士の愛を描いた映画」だったりしたのですよね。  で、そういう観点でレビューを書こうと思いつつ、念の為に情報収集してみたら、どうも映画のパンフレットではウォーリーが男の子でイヴが女の子と表記されているらしくて……もしも、それが公式設定だとしたら、ちょっと寂しいです。  「じゃあ結局は、人間の男の子と女の子の恋愛をロボットに置き換えてみただけじゃん」という気がしちゃいますからね。   一応、映画本編から受ける印象としても「イヴという名前の時点で、イメージ的には女性キャラなんだろう」ってのは分かる気がします。  でも、そこはやっぱり性別不詳だからこそ良いというか「性別なんて存在しないロボット同士でも愛情(あるいは友情)は生まれる」というメッセージ性を受け取った身としては、主役の二体を「男の子」「女の子」に分けるのは無粋じゃないかなぁ……と思った次第。   そんな具合に、出鼻を挫かれてしまったというか「自己の解釈と作り手の意図が大きく外れている可能性」を感じてしまい、何だか憂鬱な気分に襲われたので、以下は簡潔に良かった点を。   まず、特筆すべきは宇宙船アクシオム内の描写。  中々のディストピア感が漂っており「船内という閉じ込められた世界」ならではの息苦しさも伝わってきました。  移動も機械任せにして肥満しきった人類の姿は、滑稽であると同時に醜くも感じられ「これはもう人類はダメかも分からんね」なんて思わされたくらい。  それだけに、彼らが機械の支配を拒否して、自立して、地球に帰還する結末が心地良い。  作中でキーアイテムとなる「靴の中に生えた植物の小さな芽」が、エンディグにて巨木に成長しているというオチも良かったです。  名作映画、名作絵画などのオマージュ演出も、綺麗に決まっていたかと。   正直、前半は退屈で「こういう台詞が殆ど無い実験的な内容なら、二十分くらいのショートアニメの方が切れ味鋭く決まったんじゃないかなぁ」と思えたり、主役二人が可愛過ぎるというか、ちょっと仕草などが「あざとい」萌えキャラに思えてしまい、ノリ切れなかったりもしたのですが、難点と呼べそうなのは精々そのくらい。   観賞後は、誰かと手を繋ぎたくなるような……そんな映画でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2017-05-02 08:54:33)
322.  タイムクラッシュ・超時空カタストロフ<TVM> 《ネタバレ》 
 なんたる後味の悪さ。   普通、こういった歴史改変を扱ったタイムマシンネタでは「より良い未来に変わる」「結局は元通り」のどちらかになるのですが、本作では徹底して「主人公の行いによって未来がどんどん悲惨になる」という内容になっているのですよね。  飛行機や地下鉄の事故から人々を救った英雄的行為が「億単位での人口の変化」「原発事故によるカリフォルニアの消滅」などの未来に繋がってしまうという、皮肉過ぎる展開。  しかも息子を救う事が出来てハッピーエンドかと思われた空気の中で「歴史を変えた大犯罪者」と主人公が断罪される形で幕を下ろすのだから、本当にもう「そこまでやるか」と呆れちゃうくらい。   細かい矛盾点というか、気になる点も沢山あって、例えば冒頭で重要人物かと思われた「黒服の時間旅行者」が中盤にてアッサリ死亡する場面なんかは「えっ、何でもっと抵抗しないの?」「何で暴走する列車の先頭車両に立ち尽くしたままなの?」と感じるし、リセット云々の作中の専門用語の説明が足りていないように思えるしで、観賞後にモヤモヤが残ってしまうのは残念。  それでも「過去にあった災厄の数々の現場写真に、いつも同じ顔をした男が映っている」という不気味な導入部、事故を止めようと奔走する主人公の姿など、観賞中は飽きさせない魅力と勢いがあり、不満よりは満足度が高い内容だったと思います。   正直、こういう後味の悪い映画は苦手なのですが、ここまでやられると「参りました」と脱帽する気持ちも大きいですね。  九十四分という上映時間の分だけ、しっかり楽しめた一品でした。
[DVD(字幕)] 6点(2017-04-27 20:56:02)
323.  ブリタニー・マーフィ in 結婚前にすべきコト 《ネタバレ》 
 男性目線のラブコメが好きなので「邦題に反して男達が主役の映画である」という情報を元に観賞。   まさか、ここまでラブコメ要素が希薄とは予想だにしておらず、流石に驚きましたね。  マリッジブルーな主人公と、それぞれ悩みを抱える男友達連中が自らの人生と向き合い、前身してみせるというお話で、どちらかといえば青春映画といった趣きの一品でした。   その「男友達連中」に、様々なタイプの人物が配されており「これから結婚して父親になる主人公」の他にも「既に結婚して父親になっている男」「父親になれない男」「男しか愛せない男」「結婚出来そうもない男」と、非常にバラエティ豊かな面子が揃っています。  この映画の良いところは、そんな風にタイプの異なる男達が、全員エンディングにて、冒頭よりも幸せになっている事でしょうね。  結婚しても、父親になっても、父親になれなくても、男しか愛せなくても、結婚出来なくても、人は幸せになれるのだというメッセージが伝わって来て、とても温かい気持ちになれました。   「男と女の間に友情は成立しない」なんて言葉があるけど、この映画では「同性愛者の男性と、異性愛者の男性の間に友情が成立している」という形なのも、興味深い。  自分の友達がゲイだと知り「やっぱり男同士のカップルだと、女みたいに面倒な事を言い出さないから楽なのか?」と質問するも「そんなに簡単じゃない。男女のカップルと同じ」と素っ気無く答えられるシーンなんか、妙なリアリティがありましたね。   終盤にて「絶縁状態だった父との和解」「無精子症である事を妻に告白」という感動的な場面があり、個々のエピソードとしては中々良かったと思うのですが、話の流れとして「あるがままの自分を相手に受け入れてもらう場面」が二つ続いている形になっており、そこは少し残念。  また「結婚出来そうもない男」がストーカー紛いの行動を繰り返し、最後も「元恋人(あるいは、その弟)の車のシートに小便する」なんて悪戯で溜飲を下げて終わる辺りも、流石にドン引きです。  作り手としては「感動だけでなく、こういった馬鹿々々しいコメディタッチな結末を迎えるエピソードもあった方が良い」と判断したのかも知れませんが、自分としては笑えなかったし、折角のハッピーエンドに水を差されたような気分。   それでも、結婚式当日にて、悩みを乗り越えた皆が楽しそうな笑顔になっている姿を見ると「良いなぁ……」と、しみじみ思えましたね。  登場人物が幸せになる姿を、ゆっくりと見守る事が出来る、優しい映画でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2017-04-26 04:55:05)
324.  ツーリスト 《ネタバレ》 
 こういった旅行気分を味わえる映画って好きですね。  列車に、船に、豪華なホテルと、観ているだけで楽しくなっちゃいます。   男性ならアンジェリーナ・ジョリーと、女性ならジョニー・デップとのロマンスを疑似体験出来るようにも作られており「恋」と「旅」とを求めて観賞するなら、まず満足出来る一品かと。  その一方で、サスペンスとしての魅力は薄めであり、あんまりハラハラドキドキはしなかったのですが、本作の場合、このくらい緩めの緊迫感が丁度良かったように思えますね。  なまじ血が飛び出したり、身の毛もよだつような恐ろしいシーンがあったりしたら、せっかくの「程好いバランス」が崩れてしまっていた気がします。   主人公カップルが出会った際に、ジョニー・デップ側が「ごめんなさい」と謝っており、それが後の伏線になっていたりする辺りも上手い。  所謂「主人公こそが犯人だった」オチな訳ですが、犯人といっても悪党から金を盗んだ義賊に近い立場である為、受け入れ易い形になっているのですよね。  また、アンジェリーナ・ジョリー側も「実は警官だった」という事が中盤にて明らかになる為「一方的に彼女を騙して、酷い男だ」という印象には繋がらず、自然な仕上がりになっていたと思います。   目立った難点としては、数学教師という設定が活かされていない事。  そして、金庫を開けて正体をバラすシーンにて、周りに警官が一人も残っていなかったのが、都合良過ぎるように思えた事でしょうか。  前者に関しては、金庫の暗証番号を数学の知識を駆使して解き明かす(つまりは、ヒロインと警察に最初から暗証番号を知っていた訳ではないと思わせる為に演技する)展開にしても良かったんじゃないか……なんて思いましたね。   この手の騙し騙されモノとしては珍しく、後味爽やかなハッピーエンドであった点については、凄く好み。  緩くて温めなロマンス旅行映画として、しっかり楽しめた一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2017-04-19 18:55:08)(良:1票)
325.  北斎漫画 《ネタバレ》 
 夕立の中、皆が雨宿りする中で、一人だけ雨を意に介さず歩き続ける主人公の姿が、非常に印象的。  冒頭のシーンだけでなく、ラストカットでも同様の姿が描かれており、新藤監督としても、この「雨の中を歩く葛飾北斎」という強烈なイメージこそが、この映画を象徴するものであると考えていた事が窺えます。   十返舎一九や歌麿など、北斎の他にも当時の著名人が次々に登場する為、それだけでもワクワクするものがありましたね。  特に曲亭馬琴の登場のさせ方は上手く、北斎を居候させてやっている気の良い親父さんが「滝沢馬琴だとか、曲亭馬琴だとか、ご大層な名前付けて粋がって……」と妻に詰られる形で、自然と「この人が馬琴だったのか!」と観客を驚かせてくれるのだから、心憎い。  ちゃんと事前に「読み本書きを目指している」という伏線があった為、違和感も無かったですし、予め正体を察していた人でも、ここの件はニヤリとさせられたんじゃないかなぁ、と思います。   泥臭い創作者達の物語という事で、基本的なストーリーは非常に好ましいものがあったのですが、難点としては「いくらなんでもエロスに偏り過ぎ」「老人になってからの件はコントにしか見えない」という辺りが挙げられそう。  本映画の「売り」の一つであろう「蛸と女体の絡み」にしたって、そちらの性癖に疎いせいか、自分としては全くピンと来なくて、むしろ白けてしまったのですよね。   終盤にて「枕絵は、もうこれでおしめぇだ」「いつまでも若ぇ娘と茶番している暇は無ぇわな」と吐き捨て、いよいよ北斎が「俺自身が納得出来る絵」に取り掛かろうとした矢先に死んでしまう……という展開なのも、実に寂しい。  結局、この映画では「若ぇ娘との茶番」がメインになっており「富嶽三十六景」の件なんかも、サラッと短時間で流されてしまっていますからね。  劇中で描かれる北斎の人物像はとても魅力的だったと思うのですが「えっ、そこにスポット当てちゃうの?」という感じで、戸惑いの方が大きかったです。   情熱を秘めた主人公の北斎、良き友人であった馬琴、複雑な魅力を備えた娘のお栄の存在、この三者だけでも十分面白いだろうに、何で余計なエロスを交えちゃうかなぁ……と思ってしまったくらい。  自分の場合、そういうのはサービスシーン的にチラッと挟むくらいが好ましく、この映画みたいにメインに据えられてしまうと、どうも「そんなに沢山はいらないよ」と辟易してしまうみたいです。   そんなこんなで、中盤以降は観ていてテンションが下がってしまったのですが、それでもラストシーンの「雨の中の北斎」を目にすると、良い映画だなぁ……と思ってしまうのだから、全く以て困り物。  「終わり良ければ総て良し」という言葉を連想させられる、そんな一品でありました。
[DVD(邦画)] 6点(2017-04-18 16:31:10)
326.  兵隊やくざ 《ネタバレ》 
 冒頭にて「荒野に孤立した巨大な刑務所」という言葉が出てきますが、実際に刑務所映画に近いテイストを感じられましたね。  主人公の一人である大宮は極道だし、囚人同士の争いの代わりに日本兵同士で争うし、最後は脱走劇で終わるしで、非常に似通っていたと思います。   「兵隊の話は、もう御免」「カーキ色を見る度に胸糞が悪くなる」なんて独白から始まる以上、軍隊批判というテーマも込められていたのでしょうが、自分としては上述の通り「刑務所映画の軍隊版」という印象のまま観賞した為、重苦しい気分にはならず、娯楽作品として楽しむ事が出来ました。   とにかく上官が部下を殴る蹴るを繰り返し、胸糞が悪くなったところで、主人公の大宮と有田とが力と知恵を駆使してやり返してくれる訳だから、非常に痛快。  軍隊は階級が全てだとばかり思っていたら、さにあらず、実は勤務年数も力関係に大きく作用しているという辺りも、非常に興味深いものがありましたね。  喧嘩する相手が二年兵だと分かった途端に態度を豹変させ、上官であるはずの伍長に遠慮なく殴り返し、対等の条件での決闘に持ち込む件なんてもう、痺れちゃいました。   頭の良い兄貴分と、腕っぷしが強い弟分。  そんな凸凹コンビの二人が、様々な苦難を乗り越え、絆を深める姿を見せてくれる為、観ているこちらとしても微笑ましく、心地良い気分に浸れるのですよね。  それでも最後の最後「国家の命令」という強大な力には逆らえないのか……と思わされたところで、見事に逃げ出してみせるという流れも良かったです。   ただ、取り残された他の兵達は一年後に全員戦死したと語られている為、ちょっと影を落とす形となっており、爽快さに欠けるものがあったのは残念。  状況を考えれば仕方ないのだけど、主人公達だけが逃げて、残された皆は死んでしまったという形だから、罪悪感が伴うんですね。  戦争だから人が死ぬのは当たり前だし、軍隊に所属した以上は殺されたって不思議じゃないのでしょうが、それでもその重苦しい語り口と、直後の脱走劇の明るい描き方は、ミスマッチであるように感じられました。  ここの部分を、もうちょっと受け入れやすく描かれていたら、戦争映画ならぬ兵隊映画の傑作として、大絶賛出来た気がします。   それと、大宮を演じる勝新太郎が刃物を用いてチャンバラを披露するシーンがある訳だけど、それが原作小説にもある要素なのか、映画特有の「勝新ならチャンバラも見せなきゃ」というサービスなのかも、気になるところですね。  もし後者であったとすれば嬉しいのですが、真相や如何に。
[DVD(邦画)] 6点(2017-04-13 22:21:04)
327.  釣りバカ日誌 《ネタバレ》 
 映画「釣りバカ日誌」が一作限りで終わらずシリーズ化した理由としては「ここで終わられたんじゃあ、どうにもスッキリしないから」という点も大きいんじゃないでしょうか。  勿論、映画単体としても面白いのは確かなんですが、本作では「スーさんが社長だと知った後のハマちゃんの葛藤」「二人の和解」の比重が薄めで、ちょっと勿体無く感じられるんです。  他の同僚は見送りに来てくれたのに、四国に帰る新幹線の中で電話して終わり(しかもスーさんと話すのはハマちゃんではなく、妻であるみち子さんのみ)というのは、如何にも寂しい。  作り手側も続編を意識して、あえてこういう終わり方にしたのか、それとも単なる尺不足だったのか、気になるところです。   「合体!」「熱烈合体!!」の表現は、最初(何それ?)と呆れていたはずなのに、二回も三回も繰り返されると笑っちゃいましたし、下ネタなのに何処かほのぼのするものもあって、良かったと思います。  「釣りは道具じゃないからね」と言ってたくせに、いざスーさんが先に釣り上げたら「道具が良いからね」と言い訳するハマちゃんという、伏線を活かした笑いについても、上手いなぁと感心。   スーさんの見送りを兼ねて一緒に夜の町を歩きながら、みち子さんがハマちゃんとの馴れ初めについて話す場面なんかも、優しい雰囲気があって好きですね。  「僕は貴女を幸せにする自信はありません」「しかし僕が幸せになる自信は絶対ある」というプロポーズの言葉って、凄く素敵だと思います。  この後、ハマちゃんもみち子さんもスーさんも「幸せ」な人生を送る事が続編の数々にて描かれている訳であり、そう考えると、とても温かい気持ちに浸れました。
[DVD(邦画)] 6点(2017-04-12 09:55:41)
328.  僕達急行 A列車で行こう 《ネタバレ》 
 優しい映画ですね。  登場人物は善人ばかりだし、失恋というテーマを扱っていながらも暗くなり過ぎる事は無く、仕事での成功や友情など、明るく幸福な要素の方が色濃く描かれているように感じました。   森田監督の遺作という事で、最後に「ありがとう」という文字が浮かび上がる演出も、じんわりと胸に沁みるものがあります。  それだけに、全面的に作品を褒めたくなるような気持ちも強いのですが……正直に言うと、退屈に思えたシーンも多かったです。  「融資してくれーっ!」や「いちごミルク」の件なんかも、あと一歩で感動出来そうだったのに、ちょっとわざとらしく思えてしまい、ノリ切れない。   ゲームの話で盛り上がり、効果音付きで戯れてみせる件も、どうにもオタクっぽ過ぎるというか、観ていて痛々しく感じちゃいましたね。  監督さんに悪意は無いんだろうけど「鉄道の話で盛り上がるシーン」は非常に夢がある感じに描かれているのに「ゲームの話で盛り上がるシーン」はギャグで済まされており、そこに違和感が生じてしまった気がします。   その一方で、やはり主題となる「鉄道」に関する描写は力が入っているというか「模型」や「駅弁」など、押さえるべき点はキチッと押さえている感じがして、非常に好ましかったです。  自動車ではなく、電車を用いての移動ならば、恋人同士で話したり触れ合ったりする事に集中出来るし、お酒だって飲めるんだと示す辺りも上手い。   主人公が二人いる事を活かし「音楽を聴きながら窓に流れる風景を眺める」「電車が立てる駆動音や車輪の音に耳を傾ける」というタイプの異なる楽しみ方について、お互いに語らせる辺りも良かったですね。  それがラストの鉄道旅行における伏線となっており、音楽否定派だった方が笑顔で音楽を聴いている姿に繋がっていたりするんだから、実に微笑ましい話。   趣味を持つというのは如何に楽しい事か、友達がいる事は如何に素晴らしいかと教えてくれる、そんな一品でありました。
[DVD(邦画)] 6点(2017-04-10 19:44:44)
329.  冷たい熱帯魚 《ネタバレ》 
 てっきり主人公が「連続殺人の主犯」だと思っていたのですが、さにあらず「傍観者」「共犯者」という立場の人であった事に驚かされました。   で、そんな彼も次々に人を殺していくようになる終盤の展開は圧巻だったのですが……何故でしょう? 同監督作の「愛のむきだし」や「地獄でなぜ悪い」程の衝撃は無かったように思えましたね。  単純に、自分がこの手の衝撃に慣れてしまったというのが大きいのかも知れませんが (実録犯罪物路線かと思ったけど、結局は何時もの園子温映画になるのか……)  と、達観するような思いで画面を眺めていた気がします。   勿論、そんな「何時もの園子温映画」は好きなんですけど、本作に関しては最後まで実録風に纏めて欲しかったという気持ちが強いですね。  監督さんも「主人公が疑似的な父親である村田を刺す場面」で終わらせても良かったかも知れないとインタビューで語っておられるみたいで、自分としてもそちらの方が自然な仕上がりになったんじゃないかと思えました。   序盤「冷凍食品をレンジで温めるだけの妻」「食事中でも平気で携帯電話を使い、途中で抜け出す娘」「妻の喫煙を見て見ぬ振りをする主人公」などの印象的なシーンによって、家庭が崩壊している事を端的に示してみせる手腕は、お見事。  でんでん演じる村田も存在感があって良かったし、吹越満演じる社本の善良さと臆病さが入り交じった感じも秀逸でしたね。  先程の発言に反するような形となりますが、終盤の主人公の変貌っぷりというか、眼鏡を捨ててからの吹っ切れっぷりは痛快なものがあり、こういう姿を恰好良く演じられる辺りには、役者さんの凄みを感じます。  監督さんも何だかんだで終盤の展開をカットせず採用したのは、主演俳優の熱演に「これを切り捨てるのは惜しい」と思われたから、なのかも知れませんね。   ラストシーンに関しては、父親の死体を蹴り続ける娘の感情が「本心から父親の死を喜んでいる」「実は内心では死を悲しんでおり、起き上がって欲しいと願っている」「その両方」と、大まかに三通りに分けて解釈出来るようになっており、これに関しては(上手いなぁ)という思いと(ズルいなぁ)という思いとが混在。  元々この手の「観客に判断を委ねる」ような結末って好みではない事が多いのですが、本作に関しては主人公の自殺で幕を下ろす形でもある為、どうしても「逃げた」という印象が強かったりしたんですよね。  「人生ってのは痛い」と主人公が説教するのは結構だけど、その後に自殺されたんじゃあ「人生は痛い。だから死にます」という敗北にしか思えない訳で、そんな後ろ向きな終わり方されても困るよ……というのが正直な感想。  最後に「丸く、青い地球」を映し出して終わるというのも「地球は単なる岩だ」という劇中の台詞に照らし合わせると、現実逃避の象徴であるように思えてしまいます。   とかく園子温監督の作品はパワーがある為、それが自分好みの方向に進んでくれた時は凄まじい傑作に思えるのですが、好みから外れてしまうと、何ともコメントに困る品が出来上がる……そんな事を再確認させてくれた一品でした。
[DVD(邦画)] 6点(2017-04-06 17:10:31)(良:1票)
330.  七年目の浮気 《ネタバレ》 
 マリリン・モンローという女優さんは、ダメ男と絡むラブコメが似合うなぁと、しみじみ実感。   彼女に「可愛さ」や「色気」だけでなく「母性」も備わっているからこそ成立する話なのでしょうね。  ともすれば主人公に恋愛感情があったのに振られた為、強がって突き放しただけというヒロインになりそうなところを、彼女の演技によって踏み止まっている。  「相手を一人前の男として認め、その魅力を自覚させたいと願っている優しい女性」なのだと、しっかり伝わってきました。  その「母性」を示す為の小道具として「大アマゾンの半魚人」を用意し「あの怪獣かわいそう」「愛に飢えてるのよ」などと言わせる辺りも上手い。  そういった伏線が丁寧に張られている為、ラストにて笑顔で主人公を送り出す姿にも、全く違和感を抱かずに済みました。   冒頭にて「この話は先住民とは全く無関係」というナレーションが入るのに、実は意外と関係があったりするという惚けっぷりも良かったですね。  愛嬌のある映画、という感じがします。  シャンパンにポテチを浸す食べ方は真似してみたくなるし、二階に住んでいるモンローが階段を降りて会いに来てくれるシーンなんかも、男の憧れを満たしてくれるものがあり、印象的。  その他、動揺の余りトーストを零し、掌にバターを塗る主人公の姿にはクスっとしたし「マリリン・モンローかも」というメタな台詞も(当時既に、こういうギャグが成立する程に彼女は人気者だったんだな……)と思わせてくれて、微笑ましかったです。   そんな本作の難点は、とにかく主人公の独り言、妄想が多い為、少々辟易してしまう事でしょうか。  妻の幻影に対し、自分が如何に女にモテるかとしつこく語るシーンなんて、同じ男としては苦笑する程度で済んだけど、女性が観たらゲンナリしてしまうかも。  「あの種の女は口が軽い」なんて偏見を口にしたり、誤解ゆえに男友達を殴って気絶させたりして、好人物とは言い切れない性格である事も気になりましたね。  一種の錯乱状態だし、単なるギャグに過ぎないのでしょうが、ちょっと感情移入し難いキャラクターでした。   それと、劇中の通風孔のシーンは「あの有名なスティール写真とは違っている」という情報を承知の上で観賞したのですが、それでもいざ実際にその場面を観ると、落胆の念が大きかったです。  何せ、スカートが捲れ上がる時にはモンローの顔が映っておらず(これって影武者さんじゃない?)と思われても仕方ないような見せ方でしたからね。  ビリー・ワイルダー監督としても、検閲さえ無ければ、あそこはもっと扇情的な場面にしたかったのではないでしょうか。   都会的でオシャレな雰囲気が漂っており、今観てもさほど古さを感じさせない辺りは、純粋に凄いと思います。  浮気をテーマとしているけど、主人公は妻子を選んでみせるハッピーエンドであった点も、後味が良くて好ましいですね。  マリリン・モンローと浮気出来る可能性があったのに、それを蹴ってみせた男の話……と考えると、実は凄い映画なのかも知れません。
[DVD(字幕)] 6点(2017-04-03 20:59:44)(良:2票)
331.  スーパーヒーロームービー!! 最'笑'超人列伝 《ネタバレ》 
 基本的なストーリーは「スパイダーマン」(2002年)を踏襲している事。  そして脇役ながらもレスリー・ニールセンが出演している事。   この二つの要素が、効果的に作用しているように思えましたね。  前者は「パロディ映画だけど、話の筋を追い掛けているだけでも面白い」という結果に繋がっているし、後者に関しては流石の貫録で、画面をビシッと引き締めてくれました。   下ネタもあったり、人死にが絡んだ際どいネタもあったりと、多少鼻白む場面もありましたが、相対的には楽しめた時間の方が長かったです。  肖像画と思ったら本人だった件と、ネイルガンでのやり取りに「五分だけくれ」の台詞なんかが、特にお気に入り。   一応はヒーロー映画調なのに最終決戦が盛り上がらない点や「とうとう空を飛べた」というハッピーエンドかと思いきやヘリに激突オチが付く辺りは微妙に思えましたが、その後のNG集(というか何というか)でトントン、といった感じ。  劇中曲も、結構良かったと思います。   こういったパロディ映画は基本的に「一度観たら、もう二度と観ない」というパターンが多かったりするのですが、これは例外的に「忘れた頃にでも、もう一度観てみたいな」と思わせるものがありました。
[DVD(吹替)] 6点(2017-03-29 10:25:44)
332.  それでも恋するバルセロナ 《ネタバレ》 
   (結局、ヴィッキーとクリスティーナどっちが主役なの?)とヤキモチしたりもしたのですが、終わってみれば良いバランスだったように思えますね。    どちらかといえばクリスティーナの出番が少なめで、影が薄く無個性になってしまいそうなところなのに「欲しくないものは分かるけど、何が欲しいかは分からない」などの台詞によって、彼女というキャラクターを的確に表している辺りも上手い。  この手の恋愛映画ではお約束の「現実的な女性」「ロマンスを求める女性」という組み合わせな二人だったけれど、実は前者の方が内心ではロマンスを求めており、後者の方が意外と根っこの部分は現実的という対比も面白かったです。   序盤にて「彼はありがちなタイプじゃない」というクリスティーナの言葉に対し「ありがちなタイプって、ダグの事を言っているの?」と喧嘩腰に反論するヴィッキーという場面を描く事により「実はヴィッキーは婚約者のダグに物足りなさを感じている」と、観客に自然と覚らせるのも良かったですね。  こういう描写で、わざとらしさや押し付けがましさを感じさせず、すんなり理解させてくれるのって、凄い事だと思います。   「翻訳で失われるものは多い」という、字幕や吹き替えに頼っている身には耳の痛い言葉が劇中で飛び出す辺りも印象的。  この映画に限っても、字幕では「成就しない愛はロマンチックだ」と表示される台詞が、吹き替えでは「成就しない愛だけが本当にロマンティックだ」という台詞になっていたりするんですよね。  どちらかといえば、後者の言い回しの方が好み。  確かに色々と失われているかも知れないけど、翻訳によって生み出されているものも多そうだなぁ……と感じました。   ラストには「非現実」を求めた二人がそれに失望し「現実」に戻っていくオチとなる訳だけど、そんな二人が、実に味わい深い表情を浮かべていた辺りも良かったです。  安易な表現になってしまいますが「大人になった」というか、憧れていたロマンスさえも結局は下らないものだったと知ってしまった虚しさというか、そういうものを感じさせてくれました。   しかしまぁ、あれだけの事を「つかの間の恋」の一言で済ませ、婚約者には真実を告げないまま夫婦になるという辺り、女性は強かというか、怖い存在だなぁ……と再認識。  主人公の女性達に関しては、どうも感情移入出来なかったというか、最後まで距離を感じていた気がしますね。  それと、劇中では基本的に「退屈な男」とされている婚約者のダグが優しくて良い奴であり、作中の美女達にモテまくるファンの方が薄っぺらで魅力が無いように思えた辺りも興味深い。  これって作り手側も意図的にそうしたのかどうか、気になるところです。   観客もバルセロナを旅行した気分になれるという、バカンス映画に必要な要素がしっかり詰まっている辺りは、好印象。  途中出場にも拘らず、大いに存在感を発揮してくれたペネロペ・クルスも、忘れ難い味がありましたね。  ウディ・アレン監督作とは肌が合わない事も多かったりするのですが、これは中々楽しめた一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2017-03-22 05:24:17)(良:1票)
333.  恐竜・怪鳥の伝説 《ネタバレ》 
 とにかく恐竜の姿を見せずに焦らすもんだから「早くしてくれよ……」と、ヤキモキさせられましたね。  映画が始まってから四十分程が経過し、我慢の限界が近くなったところで、ボートに乗った女性が襲われるシーンに突入するという流れ。  ここで、それまで焦らされた分を取り戻すかのように、たっぷりとプレシオザウルスの姿を見せてくれたのが嬉しかったです。  女性が喰われるシーンが予想以上に残酷で、血生臭い演出であった点も、衝撃的でした。   ボートにしがみ付いてきて、まだ生きているかと思われた女性を引き上げたら、上半身だけの姿になっていた場面なんて、ちょっとしたトラウマ物。  この辺りの描写は恐竜映画というより、鮫などを題材としたモンスター・パニック物に近い魅力があったように思えますね。  実際に「JAWS/ジョーズ」の影響を受けて作られた品という逸話もあったりして、大いに納得です。   現代の観点からすると、ちょっと稚拙に見えちゃう特撮。  歌詞も曲調も、映画の内容と全然合っていない気がする歌やBGM。  「恐竜がいるなら翼竜がいてもおかしくない」という理屈で、唐突にランフォリンクスまで出てきちゃう脚本。  それらは普通なら欠点となりそうなところなのですが、自分としては妙に愛嬌が感じられて、憎めなかったです。  渡瀬恒彦演じる主人公が、恐竜の生存を信じていた亡父のロマンを受け継ぐかのような形で恐竜と向き合い「プレシオザウルス、お前はやっぱり生きていた……」と胸中で呟く場面なんかも、凄くシュールで、ほんのり情感も込められていて、何となくお気に入り。   それでも、いざ恐竜と怪鳥との戦いになると失速感が半端無かったというか「無理して戦わせなくても良かったんじゃないの?」なんて思えてしまったのが残念でしたね。  作り手としても力を込めたのは上述の「恐竜が人を襲う場面」であって、終盤の対決場面は、大してやる気が無かったんじゃなかろうか……って気がしました。  最後はお約束の「火山が全てを飲み込む」エンドだし、主人公とヒロインが溶岩に飲み込まれまいと樹にしがみついてジタバタする場面を延々引っ張るしで、流石にシュールさを楽しむ余裕も失せて、退屈な気持ちの方が強かったです。  主人公達が死んだのを連想させるバッドエンド風味なのも、好みとは言い難い。   とはいえ、最初から「奇妙奇天烈な怪獣映画」という予備知識があった為、大抵の事柄にはツッコミを入れながら笑って観られたし「予想以上に凶暴で恐ろしいプレシオザウルス」というサプライズもあった為、何だかんだで楽しめた一品でした。
[DVD(邦画)] 6点(2017-03-22 01:45:55)(良:1票)
334.  羊たちの沈没 《ネタバレ》 
 この手のパロディ映画の中では、結構良く出来た品じゃないかなと思います。   笑いが下品過ぎなくて、観ていて不快になるシーンが皆無というだけでも安心させられるものがありましたね。  他のパロディ映画では、放屁だの嘔吐だのといった下ネタが多かったり、視覚的にキツい場面が頻出したりする事も珍しくないだけに(おぉ、意外と上品だな……)と感心させられたという形。  元ネタの作品を露骨に馬鹿にする笑いが皆無だったのも良かったと思います。   細かい不満点やら、目に付いた欠点やらを論ったらキリが無いだろうけど、それでも幾つかクスっとさせられる場面はあったし「腕時計」や「電話ボックス」の件なんかは、感心させられるものがありました。  「犯人は、アルフレッド・ヒッチコック……に変装した別人」というオチも、実に馬鹿々々しくて、憎めない。   ちょっと疲れている時とか、映画なんて単なる娯楽だろうと再確認したい時には、丁度良い一本かと。
[DVD(吹替)] 6点(2017-03-19 19:10:47)
335.  GAMER ゲーマー 《ネタバレ》 
 同監督作「アドレナリン」のラストでもゲーム風の演出がありましたが、本作でもラストに「全てはゲームの中の出来事だった?」と思わせる演出がありましたね。  現実と非現実の対比、今いる世界もまた誰かに支配されているゲームの世界なのではないかと、作り手の真意について色々と考えさせられる深い映画……なんて事は全然無くて、お気楽SFアクションとして楽しむのが得策な一本なのだと思います。   序盤において主題となるゲーム「スレイヤーズ」の勝利条件が不明な事とか、不満点は色々あったりするのですが「そんなの気にせず楽しんだもん勝ちだよ」と思わせる作品としての大らかさがあるんですよね。  ラストのゲームオーバー画面にしたって「全てはゲームの中の出来事。だから劇中で科学考証とかが間違っていてもツッコまないでよ」という免罪符であり「その代わり、色々アクションとかエロスとか詰め込んで、ゲームらしい楽しい映画だったでしょう?」というメッセージでもあったように思います。   それでも、せっかく主人公とプレイヤーの少年が意思疎通出来るようになったのに、その後に二人が全く絡まず、何の絆も生まれず、ラスボスを倒すのに少し手助けしただけで終わったというのは、何とも寂しかったですね。  あくまでも「ゲームの中で操られている主人公が、自分を取り戻し、家族も取り戻す物語」で終わらせたかった為、意図的にプレイヤー側の出番を減らしたのだと思われますが、そこはもうちょっと欲張って、両者の交流を描いても良かったんじゃないでしょうか。   俳優陣は豪華な顔触れの為(こんな人達をゲームのキャラクターとして操作出来たら、そりゃあ楽しいだろうな……)なんていう、不謹慎な欲望を刺激するものがあり、作中で「ソサエティ」が流行っている事への説得力にも繋がっていて、良かったと思います。  主人公の奥さんが扇情的な恰好をさせられて、四つん這いになった時のお尻がエロかったとか、でもそんな奥さんを操作している男は極度の肥満で、しかも裸でプレイしている姿が最高に気持ち悪かったとか、この設定ならではの印象的な場面が幾つかあるのも好印象。  「窮地の主人公を前にして、黒幕が自らの目論見について得意気にベラベラ喋り、それが中継されているせいで墓穴を掘ってしまう」なんていうテンプレ展開を、堂々とやってみせる辺りも、短所ではなく長所であるように感じられましたね。   全力で肯定するのは難しいけど、楽しめたか否かという基準で判断すれば、しっかり楽しむ事が出来た一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2017-03-16 20:28:18)
336.  キャンディマン(1992) 《ネタバレ》 
 最後のオチありきの映画ですね。  作り手側も、あそこの部分をやってみたくて制作に踏み切ったんじゃないかな、と思えました。   しかも、そこをあっさり描かないで「鏡の前でヘレンの名前を何度も呟いてしまう」というシーンを適度に勿体ぶって描いているから(あっ、これもしかして……)と観ている自分も気が付けたし、キャンディマンの代わりにヘレンが出てきた時には(ほぉら、やっぱり!)と、予想が当たって嬉しくなったのを憶えています。   基本的なストーリーラインとしては、主人公のヘレンが酷い目に遭い、最後は都市伝説の中の怪物になってしまうという悲劇なのですが、それほど後味は悪くなかった点も好み。  これに関しては作中で「人質に取られた赤ちゃんを救う事は出来た」という救いが示されているのが大きいのでしょうね。  わりと良い人そうだったヘレンの元彼氏が殺されてしまう件に関しても、作中で何度も「ヘレンが入院する前から実は浮気していた」という伏線が張られていた為(可哀想だけど、まぁ自業自得な面もあるか)と納得出来る感じに纏められており、脚本の巧みさが窺えます。   その一方で「本当にキャンディマンは実在するのか?」「全ては精神を病んだヘレンの妄想ではないか?」と思わせるような展開もあり、これが中々迫真の展開ではあるのですか(いや、明らかにキャンディマンの仕業でしょうよ)と思わせる情報が事前に多過ぎたので、何だかチグハグな気がしましたね。  例えば、冒頭にてキャンディマンの声で「血は、流す為にあるのだ……」なんて観客に語り掛ける演出がある訳だから、彼女の妄想の産物であるとは、ちょっと考えにくいんです。  このような展開にするなら、もっと序盤でキャンディマンの実在性をボカす演出(インタビューで聞いた話の中でのみ登場する、など)にしておいた方が良かったんじゃないかな、と。   あとは主人公のヘレンの存在感が強過ぎて、怪物役のキャンディマンの影が薄くなっている点なども気になりますね。  とはいえ、全体的な印象としては程好いサプライズが味わえた、中々面白い映画でありました。
[ブルーレイ(吹替)] 6点(2017-02-28 07:43:20)
337.  白い嵐 《ネタバレ》 
 海洋学校を舞台とした青春ドラマ、嵐による遭難、船長の責任を問う裁判と、大まかに分けて三つのパートで構成されている本作。   何やら詰め込み過ぎな印象も受けますが、配分としては「青春ドラマ」が主である為、落ち付いて観賞出来ましたね。  確認してみたところ、映画が始まって九十分以上経過してから、ようやく嵐に遭遇し、残り三十分程で完結する形となっており、作り手としてもメインに据えたのは「嵐に遭遇する前の日々」である事が伝わってきます。   自分としては、海洋学校のパートは楽しかったし、嵐のパートも迫力や悲壮感があって良かったと思うのですが、ラストの裁判に関しては、ちょっと納得いかないものがありましたね。  無言で鐘を鳴らすというメッセージ、生徒側の弁護、船長の毅然とした態度など、きちんと見せ場は用意されているのですが、結論が「免許取り消しは保留された」「だが、船長が海へ戻る日は来るだろうか?」なんていう、実に曖昧な代物だったので、どうにも反応に困ってしまいます。  ハッピーエンドの爽快感も無いし、バッドエンドの重く沈む気持ちも味わえないし、何だか観ているこちらの心も宙ぶらりん。  この辺りは、実話ネタならではの歯痒さでしょうか。   その他、意地悪な見方かも知れませんが「自分が米国人だったら、もっと感情移入出来たかもなぁ……」と感じさせる描写も多かったですね。  宇宙開発やら冷戦やらについてのラジオ放送が、劇中で頻繁に流れる演出なのは、作中の時代背景を伝えるという以上に、米国人のノスタルジーに訴える効果を狙っていそう。  それと、イルカを殺した件をあんなにも重大事のように扱う辺りも(確かに可哀想だ)と思う一方で(外国の人達って、本当にイルカが好きだよな)なんて考えが浮かんだりもして、ちょっと作中人物に距離を感じてしまった気がします。  前述の冷戦やら何やらの放送にて「アメリカの正義」を主張されていたせいか、途中で「キューバの魔の手から、毅然とした態度で少年達を守るアメリカの船長」なんて場面がある事にも、少々鼻白むものがありましたね。   序盤にて「船からの飛び込み」という適度な山場を用意し、観客を映画の世界に招き入れる巧みさなんかは、流石リドリー・スコット監督という感じだし、あんまり褒められた事じゃないだろう「飲酒」「買春」などのパートを爽やかに描いて「これも少年達の成長に繋がる、青春の一ページ」と感じさせてくれる辺りは、良かったと思います。   タイトルに反し、嵐に出会う前の、主人公達が生き生きとした姿を見せてくれる場面の方が面白く感じられた一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2017-02-27 06:06:27)(良:1票)
338.  -less [レス] 《ネタバレ》 
 序盤の時点で「あぁ、これは死後の世界か何かに迷い込んでいるんだな」と気が付かされる訳ですが、そんなネタバレ状態でも楽しめる一品でしたね。   七時半で車内の時計が全て止まっている件などは「つまり、その時刻で事故が起こった訳か」と推測させてくれるし「あの白い服の女性は誰?」(=事故の相手となった車の運転者)など、適度に謎も残してくれているので、一番大事なオチが分かっていても、細かい部分の答え合わせを行えて、退屈しないという形。  ラストにも分かり易く死神風の男が現れるし、日本で言うところの「怪談」映画だったのだなと納得して、モヤモヤを抱えずに観終わる事が出来ました。   とはいえ「怪談だから整合性とか気にしなくても良いんだよ」感が強かった辺りは、難点と言えそう。  登場人物の行動が不自然で、ちょっと感情移入し難いものがあったのですよね。  例えば、主人公のマリオンだけが車を降りて夜道に一人きりになる際に、彼氏も一緒に降りない理由が不可解だし、マリオンの弟が野外で唐突に自慰行為を始めるのも理解不能。  運転手である父親が飲酒したりなど、色々と道徳的、あるいは宗教的なメッセージが込められているのかも知れませんが、それらを読み解く楽しさよりも、置いてけぼりな気持ちの方が強かったです。   そもそも、隠されたテーマが云々と言い出したら「去年は高速道路を使ったので事故を起こさなかった。つまり、この映画には『皆も高速道路を使おう』というメッセージが込められているんだ」と言い張る事だって出来そうな感じなんですよね。  深読みしたら、作中の延々と続く道路同様に、キリが無さそう。   一家全滅ではなく、主人公だけは助かっているので、後味が悪いという訳ではないのですが「最高のおじいちゃんになる」という、もはや叶わぬ願いが書かれたメモが拾い上げられるシークエンスと、実は去年のクリスマスの時点で笑顔だったのは父親と娘だけ(しかも娘の方は作り笑いっぽくて、家族全員が違う方向を見ている)と明らかになる写真を映し出して終わる辺りには「悪趣味だなぁ……」とゲンナリ。  総合的には楽しめた時間の方が長くても、こんな具合にラストが好みでなかったりすると、評価が難しくなってしまいますね。   彼氏が「今夜プロポーズするつもり」と語った途端に、別の場所でマリオンが「彼に別れ話を告げる練習」をしている姿を映す演出は上手いと思ったし、中弛みしそうなところで「目に見えて狂い出す母親」という展開にして、観客の興味を維持させる辺りも、感心させられるものがあります。  「実は両親揃って不倫していた」なんて下世話な真実を明かしてくれるのも、作り手のサービス精神が伝わってきましたね。   観ると幸せな気持ちになれるという類の映画ではありませんが、平均以上の満足感は与えてもらったように思います。
[DVD(字幕)] 6点(2017-02-19 18:24:13)
339.  HATCHET/ハチェット 《ネタバレ》 
 同監督作の「フローズン」と同じように、この映画も「痛い」描写が目白押し。   とはいえ、あちらの精神的にキリキリと響いてくるような痛みとは違って、こちらは盛大に血が噴き出して、思わず笑っちゃうような描写でしたね。  殺人鬼が出てくるシーンでも「ばぁっ!」って驚かすように画面下から飛び出したりして、どこかギャグの要素が込められている感じです。   自分としては、どちらにしても残酷描写は苦手なのですが、こういったスラッシャー映画自体は好きだったりもするので、無難に楽しむ事が出来ました。  何といっても、殺人鬼に遭遇する前の「沼地探検ツアー」の件が、妙に面白かったのですよね。  「彼女に振られて傷心中の主人公」「陽気な黒人の男友達」「隣の席に座っている訳あり気な美人ヒロイン」という主要人物の組み合わせだけでも、観ていて楽しくなっちゃう。  他のメンバーも「手持ちカメラでポルノ映画の撮影をする監督と女優達」「おしどり中年夫婦」「ガイド役は胡散臭いアジア人」といった具合に、個性的な面子が揃っていて、本当にワクワクさせられました。  (もう殺人鬼とか出さずに、このままおっかなびっくり沼地探検して平和に終わって、主人公とヒロインが結ばれるだけの映画にしても良いんじゃない?)  と思ってしまったくらいなのですが、そういう訳にもいかず、やっぱり沼地の途中でボートが事故を起こし、そこから先はお約束の血煙道中に突入。  本作の殺人鬼さんは見た目もグロテスクだし、殺し方は派手だし、テンポも良いしで、人によっては「ここからが本番」「ようやく面白くなってきた」という感じなのでしょうけど、自分としては「出て来なくて良いよ」「殺さないでよ」なんて、ついつい思ってしまいましたね。  結末に関しても「主人公は腕をもがれて瀕死」「ヒロインも殺人鬼に捕まる」「他のメンバーは全員殺され済み」という、悲惨な状況下で唐突に終わってしまう為、どうにも後味が悪かったです。   スラッシャー映画にハッピーエンドを求める方が無粋なのかも知れませんが、本作のように登場人物に魅力を感じてしまうと、やはりバッドエンドは辛いものがありますね。  ジェイソンとフレディ、更にはキャンディマンを演じた俳優さんまで起用するなど、このジャンルの映画に対する愛情は伝わってくるだけに、胸を張って「傑作だ!」と言えない事が歯痒くなってしまう一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2017-02-14 14:08:15)(良:1票)
340.  ディスクロージャー 《ネタバレ》 
 主人公が窮地を脱するのが「間違い電話の録音」「盗み聞き」などの偶然によるイベント頼みである事。  「自分を陥れようとした悪女に証拠を突き付けて、見苦しい言い逃れをする相手に勝利する痛快さ」を二度続けて描いている事。  上記が難点となっているのですが、それを差し引いても面白い映画でしたね。   何といっても、配役が絶妙。  マイケル・ダグラスは如何にも好色そうで、周りから「セクハラしたんじゃない?」と疑われてしまうのも納得だし、それだけに彼が「家族」を選んで誘惑に打ち勝つ姿が光って見えました。  デミ・ムーアの方も性的魅力に満ちていて、中身は「嫌な女」なのに、観ていて全く不快に思えないから不思議。  本作の主人公からすれば紛れもない悪女な訳だけど、本人なりに「男性社会で苦労して出世してきた」という矜持のようなものはあったんだろうな……と感じさせる辺りが、役者さんの上手さなのでしょうね。  そもそも会社側が隠蔽工作の為、主人公をクビにしようと画策していた訳だし、彼女の誘惑は「彼と再び関係を結んで弱みを握り、仲間に引き込んで守ってあげる」のが目的という、歪んだ愛情表現だったのかも知れないと考える事も可能だと思います。   作中のあちこちにて「女性が世に出て働くようになった事を警戒する男性」が描かれているのも、特徴の一つですね。  「その内に精子を提供する者だけが少数残されて、残りの男は滅ぼされる」なんて際どいジョークが飛び出すのだから、当時の世相なども窺えるようで、興味深い。  女性が働いて出世するのが当たり前になった現代すると、何だか滑稽にも感じられるのですが、それでも当人達にとっては深刻な問題だったのだろうな、と思えます。  男性側の目線で描かれた作品であり、偏った世界観となってしまいそうな中で「最終的な勝者となったのは、副社長に就任した女性」となっている辺りも、上手いバランスだったかと。   結局、主人公の出世は叶わずに「Friend」の正体が明かされるというオチについては(まぁ、そんなものか)という程度で、さほど感銘を受けなかったのですが、その後に「家族からのメール」で〆る構成には、唸らされましたね。  思えば事前に「どんなに悪い噂を立てられても、子供達は父親の無実を信じている」という伏線が張られていた為「パパ、早く帰ってきて」というメッセージと、手描きのイラストの威力が倍増しているという形。  出世する喜びなどではなく、家族と一緒にいられる幸せを感じて笑う主人公の姿が、実に恰好良かったです。   「セクハラ問題」「会社内の権力闘争」と、ドロドロした内容が続いていただけに、気持ちの良いハッピーエンドでした。
[DVD(字幕)] 6点(2017-02-10 18:25:42)(良:1票)
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