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no oneさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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21.  ブロードウェイと銃弾
めちゃくちゃ面白かった。おすすめ。  ウディ・アレンとしては珍しく、一般受けしやすいバランスのとれた作品となっている。すべてのキャラが立っていて、コメディとしてとてもよくできていた(ただし相変わらず笑うところでもわかりやすい演出なしにさらっとすませているので、わからない人にはわからないかもしれない)。それでいてテーマ性も深く、芸術家とはどんな人種なのかを的確に言い当てている。  仮初めの芸術家としての自己顕示欲やナルシシズムに囚われた連中ばかりいるなかで、人知れず至高を求める真の芸術家の純粋さが、恐ろしく、また哀しい。凡人は特別な才能のある人物を見ると安易に羨ましがったりするけど、天才からすると気楽で幸福そうな凡人が羨ましく見えるのかもしれない。  ウディ・アレンとは波長が合わないと思っていたけど、本作で見直した。濡れそぼった子ヤギみたいな顔してるくせして、やるじゃないかアレン。本人が出演しなかったことも、この作品の水準を上げた一因じゃないかと思う(ひどい 笑)。本人が出なかったこと、そして恋愛を主題としなかったことで、過剰な自意識やコンプレックスが作品の均衡を崩すのを防げたんじゃないだろうか。
[ビデオ(字幕)] 9点(2007-12-16 18:26:14)(良:1票)
22.  スパイダーマン3 《ネタバレ》 
このシリーズはいつも必要以上にピーターに肩入れして観てしまう。MJの尻軽ぶりには本気で腹が立ったし、ブラックピーターの勘違いっぷりには目を覆いたくなった。しかしなんといっても親友ハリーとの関係に決着がついたのがよかった。展開はべたで大雑把だったけど、前二作まで引っ張っていただけあってカタルシスが大きい。  アクションシーンもシリーズ中でいちばんよい。文字通りの意味でのジェットコースタームービーで、実際に空中を振り回されているかのような感覚には年甲斐もなく興奮。CGもすごいけど、カメラアングルが工夫されていて、よく観るとさりげない部分がとても上手い。サム・ライミのキャリアに支えられた力量を感じる。  脚本は強引という表現では生易しいくらいの力技だけど、個人的には許せた。まず伝えたいテーマ、いわせたい台詞があり、それに向かって物語を組み立てていったのがわかる。ほとんど愚直なまでに真っ直ぐで、表現としては拙いのだけれどもその真摯さにかえって好感を覚えた。
[DVD(字幕)] 9点(2007-10-24 23:58:59)
23.  ヱヴァンゲリヲン新劇場版:序
我ながら9点は高すぎると思いつつも、やっぱり旧来のファンとして満足度は高かったので正直につけます。でもファンならともかく、前知識ゼロだと少々辛いかもしれない。  もっと丁寧に描写すべきだと感じる場面は多かったけれども、シンジの成長する姿を最後の決戦に集約させる編集は、成功しているといっていいと思う。とくに旧作にはなかった、クライマックスでシンジが壁を乗り越えるところ、あれは不覚にも涙腺にじわっときた。それまでがうざいくらいへたれ(笑)だっただけに、必死になって戦う姿に熱くならずにはいられなかった。それにしても長尺というわけでもないのだから、こんなに駆け足の展開にする必要はなかったんじゃなかろうか。その点はすごくもったいないと思う。  SF的な見せ場への力の入りようはものすごく、ほとんど「怪獣映画」の域に達している。対使徒戦の費用で日本の国家予算が破綻するんじゃないかとアホな心配をしてしまうくらい、凄まじい。兵器だの軍隊だのにはほとんど関心がない自分でも、それなりに感動してしまったくらいだから、多少なりとも心のなかに“男子”が残っている人なら、きっと楽しめることだろう。  にしても、旧作よりもサービスシーン(つまり、裸)が多いのはどうかと思った。綾波どころか、あの人まで……。そういう方面への心配りも欠かさないのも、いかにもエヴァらしい。良くも、悪くも。
[映画館(邦画)] 9点(2007-09-23 15:20:15)
24.  松ヶ根乱射事件 《ネタバレ》 
山下敦弘監督作品としてはもっとも手の込んだ脚本で、唸らされた。上手い。相当に上手い。徹底的にリアルで、過剰な部分が完璧に削ぎ落とされている。今までもこの人は面白いものを撮るなぐらいには認識していたけど、ここまで安定した手腕を発揮するとは思わなかった。掛け値なしに、恐ろしく力のある人だと思う。  これまでの作品ではだめ人間を描くにも笑いを交えてやんわりと表現していたが、今回はかなりブラックな味わい。田舎町の逃げ場のない人間関係のなかで、どうしようもない連中にうんざりしつつ、結局は自分も同類に過ぎないのだ、と思い知らされる主人公。そりゃ、拳銃ぶっ放すしかないわな。正気のたがが外れそうで外れない、でもやっぱり外れる。しかしそれでも殺人鬼にまでは堕ちない――言い換えれば、殺人犯にすらなれない、というのがほんとうに、怖気がふるうほどにリアル。  嫌な映画だ。人間という生き物を知り尽くしていないと撮れない、不愉快な秀作だ。
[DVD(邦画)] 9点(2007-09-21 02:22:25)(良:2票)
25.  時をかける少女(2006) 《ネタバレ》 
今の記憶を持ったまま昨日に戻れたらいいのに、なんて考えたことは誰しもあるはず。そういった湿っぽい後悔の念を何重にも塗り重ねて生きてきた自分のような人間にとっては、タイムリープは夢のような力に思える。そのためか、どっぷり感情移入して観てしまった。  序盤で主人公の真琴が力を利用して好き勝手する姿はとてもうらやましかった。だけどそう上手くは行かないだろう、と構えていると、案の定真琴もまたツケを払うはめになる。取り返しのつかない失敗、後々になっても自分を責め続ける、精神の負債を背負わされてしまう。ところが最後の最後に千載一遇のチャンスが巡ってきて、真琴は幸運にもそれを振り切ることに成功する。  どうにもならない別れだってあったし、けっして傷のない結末とはいえないはずなのに、この見終えたあとの爽快感ときたらどうだろう。真琴の向く方向が過去から未来へと切替ると同時に、タイトルの意味もまた反転し、胸の奥が透き通るような真っ白な気持ちだけが残る。「前向き」なんて言葉じゃ足りないほどの、未来への圧倒的な肯定感。ぽんぽん跳ね回る元気な主人公に背中を押されたような気がした。  また、あらゆるものが夏の色をしている映像もすごくいい。一枚一枚の画がしっかりと、しかもさりげなく構築されている。あと、これは説明してもあんまり伝わらないかもしれないけれど、真琴がベッドに寝転んで電灯を真下から見るショット、個人的には妙に感激した。とても何気ない画ではあるけれども、普通は映像に起こそうなんて思いつかない。ほんとうにやわらかな感受性で丁寧に日々を送っている人でなければ、ああいう画は描けないんじゃないだろうか。  タイムリープというSF的なアイディアを用いて、誰にでも覚えがあるような胸の痛みを鮮やかに浮かび上がらせる。タイムスリップものの小説で、ハインラインの『夏への扉』というこれまた爽やかな名作があるけれども、それに並べても遜色のない素晴らしい作品だったと思う(※原作は未読なのでわかりませんが)。
[DVD(邦画)] 9点(2007-06-22 01:21:30)(良:4票)
26.  グエムル/漢江の怪物 《ネタバレ》 
アメリカ人には逆立ちしても作れないモンスターパニック。アクションでもホラーでも、題材を替えて同じパターンを繰り返すだけになりがちなもの。安手の使い古されたネタで、よくぞここまで斬新な物語を展開したものだと思う。  まず軍や警察ではなく、どちらかという生活レベルの低い庶民、しかも一家族を主役に据えているのが新しい。こういうのはたいてい偶然居合わせた連中がやむを得ず戦ったりするわけだけど、家族を中心に展開されるだけで否応なしに引きずり込まれてしまう。馴染みやすさが全然違うし、加えて、サスペンスで無理に盛り上げなくとも観客を惹きつけることができる。結果として豊かなドラマ性が生まれ、モンスターものなのにホラーというジャンルに収まりきれない異色作となっている。  またあの怪物の大きさがイヤだ。大きすぎず小さすぎず、ありえないんだけどありえそうな、ちょうどいいくらいのサイズ。クモザルみたいにひょいひょい移動するあの動作も巣に餌を溜め込む習性も、なんだかもっともらしくて、妙な説得力がある。  そして怪物が生まれた背景には人間の浅はかさがあるというテーマは大昔の『ゴジラ』からあるものだけど、これほど怪物よりも人間の怖さを思い知らせてくれる作品も珍しい。軍隊なんか全然頼りにならないどころか、隠蔽するために危害を加えてくる始末。ここらへんのリアリティなんかもう、気色悪いくらいである。  エンターテインメントなのにシリアスで、シリアスな割にはエンターテインメントしている。バランス感覚が絶妙というか、独特だ。すべてにおいてそうで、音楽や映像のセンスもけっしてB級ではないのに気取りすぎてもいない、ほんとうに絶妙な加減にとどめている。  この妙なリアリズムからいってもベタなハッピーエンドはありえないと思っていたので、この結末には素直に納得した(少なくとも、個人的には)。怪物に襲われても政府に踏みつけにされても結局は生き残る庶民のたくましさ、雑草魂が印象付けられる、いい結末だったと思う。米国の責任問題を報道するニュース番組を、「つまんないから」の一言で消してしまう、あの図太い神経。ああ、大丈夫なんだな、何があってもこいつらは生きていけるんだな、という安心感があった。  ハッピーエンドとも言い切れず、かといって救いがないわけでもない。ここでもやはり不思議なバランス感覚が発揮されている。
[DVD(字幕)] 9点(2007-01-29 15:14:25)(良:2票)
27.  ブロークバック・マウンテン 《ネタバレ》 
題材は同性愛ではあるが、けっして社会的には容認されない愛情を隠れて守り続けることの苦しさは、性癖の壁を超えて共感できた。荘厳な前半の風景に対して、後半は世知辛く現実的な場面ばかりが続き、二人の記憶のなかでただブロークバック・マウンテンだけが美しくあり続けたのだとわかる。結末、二人の愛はあっさりと暗い現実に押しつぶされてしまったように見えた。だけれど最後の台詞で、儚さの奥にある力強い絆が垣間見える。甘ったる過ぎるくらいの陳腐な台詞なのに、胸が潰れるような思いがした。
[DVD(字幕)] 9点(2006-10-26 18:49:30)
28.  さらば、わが愛/覇王別姫 《ネタバレ》 
いやあ、素晴らしかった。  何よりもまず、普通に面白い。カンヌでパルムドールだとかいうとやや難解なイメージがあるが、これは娯楽性と芸術性を見事に両立させている。172分という大尺を感じさせないだけの牽引力を持った物語で、しかも映像や美術を楽しむといった観方もできる贅沢な作品だ。   二人の役者の波乱の生涯とそこに秘められた愛が、中国の近代史に重ねて壮大かつ豪華絢爛に描かれる。大抵こういった歴史もので描かれるのは偉人や英雄の姿だが、蝶衣と小婁は才人ではあるものの、偉人には程遠い不完全で無様な人間だ。ときにはかっこ悪く、惨めで、卑怯としか言いようのない器の小ささを見せる。それなのに、なぜか憎めない。   その要因は物語が蝶衣の視点で語られていることにあるのかもしれない。蝶衣は確かに京劇に一生を捧げた演劇狂いではあるのだが、その裏には『覇王別姫』という演劇の中でしか愛する男と結ばれない、という切な過ぎる想いがある。舞台の上では蝶衣は誰よりも小婁と深い絆を繋ぐことができるのに、現実の世界では決して重いが通じることはない。蝶衣の人生のひずみのほとんどはそこから生じたもので、だからこそ観客は彼を憎むことができない。蝶衣の視点から、愛情というフィルターを通して見た小婁も同様に。   「運命は自分で切り拓くもの」とはよく言うが、こういった作品に触れるとその言い回しが実に軽々しく感じられる。歴史の奔流に弄ばれた二人は最後まで運命の呪縛に囚われ、抜け出せることなく消えていったように見える。   救いなのは、哀しい結末が必ずしも不幸とは断じられないことだろう。二人はどこまでいっても覇王と虞姫であり、ある意味では誰よりも近い存在であるに違いなかった。蝶衣は最後の舞台で、微笑んだ。彼は幸福と絶望の両方を噛みしめながら喉を突いたのだと思う。その運命は残酷だが、本人にとっては確かに価値のある生涯だったのではないだろうか。
[DVD(字幕)] 9点(2006-06-29 14:08:17)
29.  ティム・バートンのコープスブライド 《ネタバレ》 
死者の世界のはちゃめちゃでにぎやかなイメージや、全編に散りばめられたユーモラスな味付けがよかった。声帯がないくせにいい喉をしている骸骨たちの歌とダンス、ミュージカルは嫌いだけどこれは楽しかった。真っ二つの死体や生首など、普通に考えれば悪趣味としかいいようのないキャラクターが抵抗なく受け入れられる。甦った骸骨の犬(←可愛い…)と生きている犬が再会してお互いのお尻の臭いを嗅ぐところなんかツボにはまった。何気なく秀逸なユーモアが織り込まれているのが嬉しい。   ただ後になって考えてみれば、中盤が楽しいのは切ない幕切れに向かうための布石だったのかな。ディズニーなんかは中盤で落ち込んで最後にハッピーになるわけだけど、これは逆。ティム・バートンなんだから予想されてしかるべきだったんだけど、不意を突かれて泣きそうになった。単純にハッピーエンドともバッドエンドとも言い切れない静かなラストシーンには、心の奥底まで届く何かがあったと思う。
[DVD(字幕)] 9点(2006-04-14 08:44:33)
30.  ブリキの太鼓 《ネタバレ》 
アゴタ・クリストフの『悪童日記』を思い出した。残酷でユーモラスで、重厚で軽妙、邪悪なエネルギーにあふれた摩訶不思議な寓話。西欧史には詳しくないが、主人公オスカルの運命ががそのままポーランドの歴史の暗喩となっていることはなんとなく察しがつく。簡単に身体を許す祖母と母親、ポーランド人として闘う弱い男とナチズムに迎合する強い男という二人の父親はいかにも象徴的だ。後者の父親を死に追いやった後、主人公は墓穴に落ちたのを契機に再び成長を始める。かりそめの「死」を迎えることでようやくまともに成長を始めるオスカル。それは物理的にも心理的にも侵略されたポーランドが、徹底的な壊滅によってリセットされ、再びまっとうな国家として歩みだす姿でもあるのだろう。もっとも、そんな難しい解釈をしなくても普通に面白い作品ではある。主人公の少年役はほんっっっとうに可愛くなくて、よくこんな適役を見つけてきたものだとある意味感心した(子供なのか小人なのかわからないと思っていたら、小人症の子供だったらしい)。
[ビデオ(字幕)] 9点(2006-03-17 23:46:26)
31.  都会のアリス
すごくドラマチックな出来事が起きるわけではないんだけど、このほんの数日間が二人の人生にとって特別な時間になることがわかる。無気力で弱い中年男と、身勝手な母親にふりまわされる少女の間に、不思議なくらいに深い共感が絆をつなぐ。アリスが連続写真を眺める場面はいい。似たようなエピソードは他の映画でもあるけど、この映画が一番無垢で、嘘がなかった。冒頭は色彩に欠ける寒々としたモノクロだと思ったが、後半になると白い日差しが中心になった温かいモノクロになる。心にしみわたるような、やわらかくて淡い光がある。   また、アリス役のイエラ・ロットレンダーがすごく魅力的な空気を持っていた。気が強くてわがままで、でも寂しがりやで健気。無邪気で可愛らしく、だけど微かに女性を感じさせる微妙な年頃でもある。とても美しい子だと思った。フィルが守ってあげたくなるのもわかる。   優しく、素敵な作品だ。この映画には川原で拾ったきれいな石のような、素朴で手のひらに馴染む柔らかな美しさがある。
[ビデオ(字幕)] 9点(2006-03-17 15:34:49)(良:1票)
32.  何がジェーンに起ったか? 《ネタバレ》 
『ミザリー』の原型とおぼしきストーリーは、似たような例をいくつか知っているため新鮮味はない(もっともこちらの方が先だけど)にもかかわらず、ベティ・デイビスの圧倒的な演技力にぐいぐいと引っ張られた。あの魚の腹のようにぎとぎとした光を放つ三白眼。   しかも途中まではありがちに思えた物語は、終盤の逃避行に至って予想外の着地をみせる。あんなにおぞましかったジェーンが、信じられないことにいじらしく、可愛らしくさえ見えてきて、それまでの恐怖と嫌悪が憐れみと哀しみに反転する。   ラストで明かされる意外な真実。ブランチの無防備すぎる行動にも、姉をいたぶりながらも肝心なところで姉にすがりつくジェーンの行動にも、合理的な説明がついたのには感心した。   ジェーンは二つのストロベリーアイスを手にして言う「だめよ、これはブランチのなんだから」。この台詞で、彼女が姉を愛していたことがわかる。姉を妬み、憎み、その一方で罪悪感に苦しみつつ、間違いなく姉として愛していた。単純に憎むことも愛することもできない、同じ女優ゆえ、姉妹ゆえの複雑な感情。   何がジェーンに起ったのか。それを知っていたのは姉のブランチだけだった。いや、本当は、誰も知らなかったのだろう。彼女が人知れないところでどんな苦悩を抱えていたのか、彼女がどんな風に心を病み、狂気の渦に飲み込まれていったのか。ラスト、ジェーンは海岸でみんなに囲まれて楽しげに踊る。彼女を遠巻きに眺める人々の顔には恐怖と嫌悪、嘲笑と好奇だけしかない。何がジェーンに起ったのかは、誰も知らない。その壮絶な孤独に、胸が苦しかった。
[DVD(字幕)] 9点(2006-02-10 20:38:30)(良:4票)
33.  トレマーズ
実はこれ、頭脳戦がメインですよね。ユーモアで包んでいるので難しい感じはまったくしないんですが、非常にゲーム的な作りで、なんとモンスターが知性を持ち、戦略的な攻撃を仕掛けてくる。モンスターの生態として上手にゲームのルールを設定している。   ①地中のみを移動し、姿を見せるのは攻撃時のみ。 ②ただし、コンクリートなどの堅い物質は通過できない。 ③視覚が退化しているため、音に反応して襲ってくる。   この三つの基本ルールの枠内で、およそ考え付く限りの騙しあいが行なわれる。ダイナマイトでぶっ飛ばすなどのありがちな始末の付け方もほぼ不可能。頭脳戦を極限まで突き詰めたコミック、『ジョジョの奇妙な冒険』でも似たような設定の敵が登場するけど、やっぱりこういう特殊な設定はバトルを新鮮にする。   おまけに一緒に闘ってくれるのは愛すべき連中ばかり。これでは楽しめないはずがない。軽いノリで時間も短く、舞台のスケールの小ささでなめられているけど、普通に秀作です。
[地上波(吹替)] 9点(2006-02-09 07:41:02)(良:3票)
34.  シンドラーのリスト
前編と後編、二日に分けて鑑賞したのだが、間に挟んだ夜はなんだか神経がざわざわして、夜中に何度か目が覚めてしまった。  もちろんホロコーストのことはいろいろな書物や映像である程度の知識を持っていたが、この作品を観ると改めて衝撃を受ける。映像の残酷さでいえば現実の映像には敵わないだろうが、たとえばシャワー室に入ったユダヤ人女性たちが次第にパニックを起こしていく場面に見られるような、ユダヤ人たちの心情に沿った表現はまた違った意味で衝撃的だ。選別、ゲットー解体、収容所の建設など、猥雑で殺伐とした雰囲気、埃っぽい空気の臭いまで伝わってくるようだ。  これほど画面を前に体を強張らせた作品はなかった。彼らの恐怖を(ほんのひとかけらにせよ)体感できる。これは資料映像ではない、映画だからこそできたこと、映画がやらなければならなかったことだと思う。
[ビデオ(字幕)] 9点(2006-01-25 17:52:06)
35.  蜘蛛巣城 《ネタバレ》 
序盤はやや冗長と感じたのだが、鬼気迫る終盤でささいな瑕疵など吹き飛んだ。これほど壮絶という形容がふさわしい作品はない。運命に絡めとられるように破滅へと突き進む武時の姿から一時も目を離すことができなかった。『七人の侍』などに比べるといささか寓話めいてはいるが、もっと知名度が高くてもいいはずだ。  森に棲む妖婆の怖さは『妖怪百物語』の置いてけ堀の下りを思い出させる。が、はっきりいって怪奇映画であるあちらよりも怖い。そして皆さん言及しておられますが、なんだかんだいっていちばん邪悪な奥方、山田五十鈴さん。あんた怖すぎるよ! 夢に出てきちゃうから! あんまり怖いので森の化生が憑依してるのかと疑ったくらいだ。  何の前知識も無しに観たために、三船敏郎が矢の雨のなかでの絶命する場面には口があんぐり。かっこいい決め台詞を言わせたり堂々とした態度をとらせたりせずに、みじめに悲鳴をあげて這いずり回るのが非常にリアル。すさまじい迫力だった。『俺たちに明日はない』のボニーとクライドが銃弾の嵐を浴びる場面に勝るとも劣らない名場面でしょう。  個人的には『七人の侍』よりも好きかも。登場人物に温かみがない分、白と黒だけで映される荒涼とした風景が胸に沁みる。なんともいえない虚無感が閉幕後もしばらく後を引くのです。
[DVD(字幕)] 9点(2006-01-06 15:43:27)
36.  双生児
感激した。江戸川乱歩という異世界を自分のものにして、原作に負けないくらいの映像にできる才能が存在するとは思わなかった。俳優、映像、メイク、美術、音楽、すべての要素において優れ、さらに全体として調和している。中でも美術班の功労は大きく、ねばりつくような耽美の世界を完璧に作り上げていた。本木雅弘がこんなに細やかで迫力のある演技ができる人だとは知らなかったし、眉毛を落としてもまったく見劣りのしないりょうの美しさには驚嘆した。浅野忠信も、ちょっと顔見せしただけなのに瞼に焼きつくくらいのかっこよさ(これも美術班の力かな?)。音楽は大好き。個人的にこういうぎゃんぎゃんしつつも綺麗な音、好きです。気持ち悪いような、心地良いような、日本的な妖しさ。だけど不思議に新しい感じもする、アヴァンギャルドな江戸川乱歩。素晴らしい。人を選ぶだろうが、選ばれた人にとっては最高の映画だ。
[DVD(字幕)] 9点(2006-01-06 04:33:02)(良:2票)
37.  バタフライ・エフェクト/劇場公開版 《ネタバレ》 
タイムスリップという題材が使われる場合、たいていはすべてが収まるべきところに収まる完璧なハッピーエンドとなる。本作は既存の作品に比べてはるかにハードで、甘えのない展開を選んだのが功を奏している。オアシスの素晴らしいエンディングと相まって、ほろ苦さがいつまでも尾を引いた。あまり目を見張る映像がないのだけが残念だけど、脚本の出来がそれを補って余りあるほどに素晴らしい。
[DVD(字幕)] 9点(2006-01-05 12:59:02)
38.  バリー・リンドン
ロココ絵画の名作を思わせる、夢のように美しくて荘厳な映像。絵画を観るのが好きな人なら、これだけでも観る価値があると思う。脚本も恐ろしく完成されており、映像がそうであるように全体の構成が完璧なシンメトリーを描いている(前半は決闘に勝利したバリーが故郷を追われた後に富と名誉を得るまで、後半は財産を浪費したあげく名誉を失ったバリーが決闘に敗れ、故郷へ舞い戻るまで)。登場人物への感情移入を拒否するような作りも面白い。バリー・リンドンは間違っても善人とはいえないが、かといってとんでもない悪党と言い切ることもできない、ある意味ではすごく人間くさいキャラクターだ。エピローグの言葉を人間に対する否定ととる向きが多いようだけど、逆に救いを読み取ることもできないわけではない。ブロンテの『嵐ヶ丘』の結末にも似たような言葉があって、そちらは激しい生を全うした人物たちがようやく安らぎを得た、という慈愛の意味で使われている。栄光を求めて這い上がり、最後には己の欲望に足をとられて転落したバリー・リンドン。ひとりの人間の生涯を、綺麗な部分も醜い部分もひっくるめてまるまる映画にする。ただ「彼が生きた」ということをありのままに提示する。人間を描く方法として、もっとも実直で嘘のないやり方だ。いつものキューブリック作品には人間に対する皮肉や批判が見られるが、今回は趣きが違う。人間の愚かさを受容する、キューブリック流の人生賛歌を唄っているのではないかとも思えた。
[DVD(字幕)] 9点(2006-01-04 01:59:32)(良:2票)
39.  ギャラクシー・クエスト
前半のマイナス要素が、後半になってすべてプラスに転じるというカタルシス。似たような話の流れを繰り返して主人公の成長を示すというテクニックはしばしばみられるが、これほどきれいな形で着地させている脚本は珍しい。巧みに張り巡らされた伏線が収斂していくさまは、ほとんど推理小説のように秀逸だ。基本的には笑えて楽しく、それでいて何度も目頭が熱くなる。夢中になってのめり込んで、待っているのは爽快なハッピーエンド。娯楽作品としての一つの理想形ではないだろうか。
[ビデオ(字幕)] 9点(2005-12-02 20:15:40)
40.  父、帰る
シャープで洗練された映像感覚が素晴らしく、個人的につぼにはまった作品。それだけで妙に高評価になってしまったが、冷静に考えるとそんなにたいした話ではないような気もしてくる。リアルで迫力があるし、宗教や政治についての象徴性はよく考えられているが、その実こころから感動できるほどのめり込める物語ではなかった。無骨で愛情表現の下手な父親との間の絆が、悲劇を通して回復する。子供たちに欠けていた父性が、わずか一週間で受け継がれるまでを描く。父親が自分の親の姿と重なり、少し切なかった。(ところで、説明不足な点はそんなに気にならなかった。大体見当はつくし、謎解きは主眼ではないので説明しなくてもほとんど差し障りはないと思う。)
[DVD(字幕)] 9点(2005-12-02 07:26:05)(良:2票)
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