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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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21.  デルス・ウザーラ 《ネタバレ》 
黒澤のカラー映画と言えば俺は「赤富士(オムニバス「夢」に収録)」が一番好きなのだが、この「デルス・ウザーラ」も黒澤明によるロシア映画の傑作だし、黒澤明が苦手だという人にも「虎の尾を踏む男達」と共にオススメしたい逸品だ。  どうも「赤富士」以外の黒澤のカラー映画はダメなんじゃないかと思っていたのだが、この映画はかなり面白い。  ロシアの雄大な大地を突き進む探検家と猟師の友情の物語。 未開の地をひたすら突き進む冒険家たち。そこで巡り合った猟師のデルス。 野生の森の中で育ってきた者と、都会から野生に放り出された冒険家たちの意識の差、そして心の交流。 カラーで収められたロシアの雄大な自然。時に優しく、時に厳しく冒険者たちを迎え入れる。急流に飲み込まれ溺れそうになるスリル、吹雪が襲い掛かりそれと“格闘”するスリル、猟銃による腕比べの楽しさ。  物語は常に静かに流れていくが、時に激しく動きドラマに引き込んでくれる。デルスにとって、眼の怪我は完全な死にはならない。森から引き剥がされること自体が、デルスにとっての“死”なのである。そして大地と一つになっていく穏やかさがそこにある。
[DVD(字幕)] 9点(2015-06-02 19:41:24)
22.  ゴッドファーザー PART Ⅱ 《ネタバレ》 
「ゴッドファーザー」は好きなシリーズだが、特に「PARTⅡ」はもう何度見たか解らない。 人によっては「PARTⅠ」こそ最高という人もいるだろう。 だが、俺は冒頭からヴィトの悲劇で始まり、ヴィトが栄光を掴んでいく“光”とマイケルが様々なものを失っていく“闇”が交錯する「PARTⅡ」が一番好きだ。ヴィトだけでなく、マイケルの過去も映されるんだ。ヴィトの思い出と混ざりながら。 初見の者にとって、ヴィトが今後どうなるかが気になって最後まで画面に釘付けにされたのだから。 シチリア島で葬儀が行われるシーンから物語は始まる。父、兄、母親まで地元のギャングに殴りこんで失ってしまうヴィトの悲劇。この瞬間からマイケルの復讐が始まり、同時に彼を救ってくれた島の人々の優しさがヴィトに生きる力と人を助ける愛情を育む。村の名前がヴィトを守る“偽名”となって。だから彼はシチリアに戻って来たのだと思う。困っている仲間や家族を守るために覚悟を決め、彼らの代わりに引き金を引いて。 彼らが奥さんの手作りパスタを美味そうに食べるシーンは和む。どうしてこの映画はあんなにも飯を美味そうに食うのだろうか。クレメンザとソニーは若い頃(物心つく前)からつるむ仲。 前半2時間のクライマックスを飾るのは、そんなヴィト自らが暗殺に向う場面だ。 ヴィトがどん底から這い上がり仲間や家族を得る一方、現代のマイケルは後半1時間30分をかけて最盛期からまた次々に最愛の仲間や家族を失っていく。フレドとコニーの何気ない会話が、別れの挨拶になるなんてさ。 華やかなパーティーですら暗い影が差し、寝室に銃弾の雨が振り込み安心して眠る事も出来ない。 議員も机の上の大砲をマフィアのボスに向けてケンカ腰。 痩せていたアル・ネリは亡きクレメンザの代わりを果たすかのように膨れ上がる。 数多の血みどろの殺し合いの後に、以前のマイケルたちが揃って食事をする場面なんかもう何回見ても泣きそうになっちゃうよ。ソニーは元気だし、コニーにブツブツ言ったりフレドとじゃれあう姿なんて・・・それが独りで煙草を吹かし、現在のマイケルの瞳に光が失われて幕を閉じる。
[DVD(字幕)] 10点(2015-05-13 20:01:55)(良:1票)
23.  オーソン・ウェルズのフェイク 《ネタバレ》 
騙す事の楽しさ、騙される事の楽しさ。それが詰まった「フェイク(贋作)」。  細野不二彦の作品で「ギャラリーフェイク」という漫画があるが、90年代に描かれた漫画に先駆けて70年代にウェルズは「贋作」の醍醐味を映画で語っていたのだ。  ファーストシーンで手品を披露するウェルズ。この場面こそこの映画の全て。自ら「ペテン師」と称し、「嘘」を映像の中で「本物」にしていく作家としての、舞台俳優としての演目。  ファーストシーンが終わって1時間は、稀代の贋作家と稀代の偽作家のエピソードをインタビュー形式で淡々と語る。 やや退屈な1時間だが、ラジオ時代の「宇宙戦争」に関する面白いエピソードやピカソの情事は興味深い。 その後に訪れる17分間の「オヤ」のエピソード。今までの退屈さをなかった事にしてもいいくらい画面に吸い込まれる。どこまでが嘘でどこまでが真実か。 最後まで見ないと絶対に損をする映画です。  この映画のトリックはオープニングから既に始まっていた。 実在の美人モデル、贋作家、偽作家など様々な「フェイク」がインタビュー形式で出てくる。 そこから既に「騙し」が始まっていた。  歳を取っても若い頃の情熱は失わない。 最後まで少年の遊び心で映画を作り続けたウェルズのこだわりが感じられる。  それはラジオ時代の「宇宙戦争」の頃から変わっちゃいない。 白熱した実況で視聴者に「本当に宇宙人が攻めて来たのか!?」と騙くらかしたエピソード。後の猛抗議も、ウェルズにとっては「してやったり」。  映画デビュー作「市民ケーン」もそう。 実在の新聞王ウィリアム・ハーストの「偽物」チャールズ・フォーガスタ・ケーンを産みだした。 その偽物の新聞王を映画の中で「本物」にしていく面白さ。ケーンの壮絶な生き様が「本物」にした。確かに映画の中に生きていたのだから。  「黒い罠」はタイトル通り、観客を騙す「罠」。これも最後まで見ろないとアカン映画だね。  「オセロ」や「マクベス」は心理描写の騙し合い。自分自身すら「騙して」追い込んでいく人間の限界を魅せつける。  ともかく、この作品はウェルズのお遊び精神の結晶の一つ。
[DVD(字幕)] 8点(2015-04-28 21:29:33)(良:1票)
24.  時計じかけのオレンジ 《ネタバレ》 
人間好きなものは、嫌いなものは一生好きになれないのが性というものらしい。 もちろんキューブリックは好きな監督だよ。キューブリックの戦争映画にハズレはないって思っているし、犯罪映画でも初期の「現金に体を張れ」や後年の「シャイニング」は大好きだ。 でも「時計じかけ」だけはマジで勘弁して下さい。もう一度あの狂気に満ちた世界を見ろだなんて俺にとっては拷問といってもいい。ダメなものはダメなんです。途中出てくるルドヴィコ治療法の映像だって俺には怖すぎる。 同じSFで人間の狂気を描く作品なら、俺は「博士の異常な愛情」を選ぶだろう。  でもこの映画がすごいという事は認める。認めざる負えないよ。 近未来的で不思議な世界観、そこを闊歩する若者たちの狂気、狂気、狂気!女が服を破られおっぱい丸出しでレイプされる寸前、変態どもが乱入して縄張り争い。老人をなぶり、車を猛スピードで飛ばして次から次へと悪事を重ねていく。仲間ですら腹に杖を撃ち付け川に叩き落し「上下関係」をハッキリさせ、支配しようとする。強盗、強姦、虐待、何だってやる。ルイス・ブニュエルの「忘れられた人々」を思い出す強烈さ。  だが彼らに罪悪感なんて欠片もない。何故なら「楽しい」から。自分たちが同じ目に遭うなんて考える気もない。今しか奴らは見えていない。 いつの時代も若者は時代を逆走する。「世界を変えられるのは俺たちだけだ!」それが巧を奏せば“英雄”にされる。だが大抵は“愚か者”となって自分の愚かさを思い知らされていく。 主人公なんか正にそう。怖いものなんて何も無い。いや怖いものを「まったく知らない」から。止める人間がいなければ何処までも奴は突っ走る。ソイツに共感する奴もいると思う。  俺?俺の場合は共感どころか「クソ野郎がブッ殺してやりたい」と素直に思ったね。この映画の後に「雨に唄えば」を見たからこそ言っておきたい。誰かアレックスをジャック・ニコルソンの斧でブッ殺せるゲーム作ってくれマジで(嘘ですゴメンナサイ殺さないで下さい)。  偽善者?そう思いたい奴はそう思え。ただ主人公を見てムカツかない奴も俺はどうかと思うぞ。 なんせアイツが好きな音楽も聞けない、悪事も出来ずに仲間にも裏切られていく様子は不覚にも同情しちまいそうになった。犯した女が筋肉モリモリマッチョマンの眼鏡になっているわ、美味そうなスパゲッティ喰いながら失神するわ、部屋に監禁されて好きな音楽に“殺され”そうになるわ。 「こんな奴に同情するなんて・・・」でもこれが人間だと思う。  でこのまま死ぬのが普通の映画だろ?ところがどっこい、重傷負って死ぬどころかピンピンしてら。オマケに開き直って女とヤリまくり、いつも通りの主人公だ。見事に「免疫」が出来ちまった。  ただただ「(゜д゜) 」だったよ。 殺意も同情も呆れ果てて失せた。  馬鹿は死んでも治らない奴っていんだな・・・。
[DVD(字幕)] 8点(2015-04-28 20:31:10)(良:2票)
25.  ストーカー(1979) 《ネタバレ》 
2時間45分という長さは、全2部構成として1つずつ別けて見ればどうという事はない(と思う)。 「惑星ソラリス」に続くSF映画だが、この映画は冒頭のウォーレス博士の短い言葉が字幕で語られ、ストーカーたちが追う「ゾーン」と呼ばれる空間だけがかろうじてSFの機能を果たす。ここでの“SF”は、完全に要素の一つとして使われるのみ。 いや、もっと言えば身近な科学…例えばこの映画では原発の描写を暗示または予兆している。 タルコフスキーの映画はこの作品から難解と言われるようになるが、俺にはこれほど解り易い映画も無いと思う。 確かに途中の劇中会話は謎も多いが、大筋は“願いがかなう場所に旅人を案内するハンター”の話だ。 長セリフで少し退屈する時もある(意味不明だし)が、あの長回しの映像は見ていて何故か飽きない。 電車の振動が「ボレロ」のように幾重にも響くこの映画は、ストーカーという運び屋がとある酒場に入る場面から始まる。酒場には物理学者が二人。彼らは興味本位・欲望の赴くままストーカーに身を預ける。 だが「ゾーン」に入ればありとあらゆる願いが叶うと信じられていた。人々はその願いのために命懸けでストーカーと共に冒険へと出る。 冒頭から夥しく飛び込む水と光のイメージは、湿地帯の静かさを除けばところどころ人間の欲望で穢れてしまった空間ばかり。 ストーカーはあの空間に安らぎを見出しているが、旅人には危険な「パンドラの箱」でもある。 部屋で揉める旅人と運び屋の取っ組み合いを不気味に静観するように“待ち続ける”「ゾーン」。「ゾーン」は拒む事も手招きもしない。ただ彼らが部屋に入るのを待つだけでいい。 旅人たちは己との戦いの果てに答えを出す。 ストーカーも以前は同じ旅人の一人だったのかも知れない。 だが、彼は過去の出来事で同じ旅人が部屋に入った結末を知ってしまっている。 だからストーカーは運び屋であり、傍観者になる事を決めた筈だった。その傍観者が旅人から「ゾーン」を守るために己の“欲望”を優先して傍観者を止める。ストーカーもまた作家になじられる旅人でしかなかったのだ。 ストーカーは絶望を口にするが、彼はその絶望を何度となく味わうであろう宿命にある。 その宿命は、その妻や娘をも狂わせていくのだろう。ストーカーの家族が旅人にならないという保障は何処にもないのだから。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-26 06:41:04)(良:1票)
26.  迎春閣之風波 《ネタバレ》 
香港映画界の巨匠キン・フー(胡金銓)が手掛けた究極の武侠映画。 ブルース・リーの師匠みたいなもんだし、何よりサモハン・キンポーが武術指導。そこにキン・フーの静と動の演出を撮り抜く演出。 それは日本で言えば伊藤大輔や黒澤明のような重厚さがあり、尚且つマキノ雅弘や山中貞雄のような肩の力を抜いて楽しめるシャープでスピーディーな・・・まあ理屈をこねても仕方ない。とにかく面白れえ。 モチロン、アクションだけ関して言えばブルース・リーやジャッキー・チェンといった後続の方が洗練されているだろう(キン・フーの場合はブッ飛びすぎ)。 ただ、個性豊かな登場人物やドラマの面白さは今の中国映画なんぞより遥かに面白い。 冒頭15分はそんな丁寧でコミカルなドラマで楽しませてくれる。 「迎春閣之風波」は中国は明の時代が舞台。 お上の殿下率いる田豐たちと朝廷に反旗を翻す朱元璋一門の戦いを描く。 舞台は朱元璋一門の門派が密かに開設した料理屋「迎春閣」で繰り広げられる。 「迎春閣」に訪れる奇妙な客たち、それを迎える武闘派姉ちゃん・姉さんたち。 博打をやる者、飯を食う者大歓迎、ただし強盗連中は容赦なく滅多打ち。 序盤のドタバタした楽しいやり取りを見ていれば解るだろう。機密文章だとか、敵味方が誰か解らないとか、怪しげな美女とか、キン・フー映画に其の辺のスリルは皆無です(褒めてます)。 いや、いつ誰が刃を抜き放ってもおかしくないという肌を刺すような緊迫感は「龍門客棧」の方が圧倒的だ。だが楽しさは断然コッチだろう。 そこから中盤はシリアス一色になってくる。緊迫したやり取りや次々と血に染まる「迎春閣」、そしてラストのダイナミックなバトル、バトル、バトル!ラストバトルの壮絶さ、華やかより男勝り・女傑振り!愛嬌より度胸!それがキン・フーの女たちだ。 しかしコレで驚いていてはいけない。 「大酔侠」や「忠烈図」はもっとブッ飛んでるから(スタントマンじゃなくて猿が飛んでんじゃないかってくらい)。 個人的にキン・フーの最高傑作は「忠烈図」と「侠女」だが、一番好きなのはやはり「大酔侠」と本作だ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-24 09:33:01)(良:1票)
27.  ゴッドファーザー 《ネタバレ》 
「ゴッドファーザー」は続編の「Part2」の方が一番面白いし大好きだが、初代も好きだ。 この作品は「映画の面白さ」というものを教えてくれる作品の一つだ。 魅せる、語る、惹きつける。 一度見ただけでは解らない。しかしこの映画には何度も見たくなるような面白さと仕掛けが散りばめられている。 一回で理解できるシーンも多いが、一番のミソは見れば見るほど理解を深められる作品だと思う。二度見てこそ、いや見れば見るほどその圧倒的な世界観に惹き込まれる。 一見すると「マフィアの暴力礼讃」のようにも見えるが、この映画の訴えたいことは「暴力の愚かさ」しかない。 暴力を振るえば振るうほど失っていく大切な何か。 「家族」とファミリーという名の「組織」。 この二つを守った者と、守りきれなかった者。 その二人の人間の光と闇を見せ付けられる。  この映画に溢れる「生」。 家族と語り合い、食事をし、人を愛す。 その裏で繰り返される破壊と「死」。 特にpart2では壊れていくマイケルの家族が「死」として、家族を創っていくヴィトが「生」として見て取れる。 このゴッドファーザーは、マリオ・プーゾの原作小説を元に描かれるが、元々は1本だけで済ます予定だった。 ところが、映画の人気が、マイケルたちの行く末やコッポラの人生まで左右し始める。 part1ではマイケルの青春とその終わり、 part2では父の光を通してマイケルが闇に堕ちていく様子を描き、 part3ではマイケルの苦悩と挫折に満ちた幕引きで終わる。 一人の男が何を成し、何を失っていったか。 それが実に心に響く。 哀しみに満ちちゃあいるが、何故か不快な感じはない。 これほど飯が食いたくなる映画は無い! みんな美味そうに飯食うんだもん。 クレメンザが頬張ってたパスタとサンド、ワイン。 ガツガツ食べてみんな死んで行く・・・。 特にpart3を見た後だと、無性にpart1やpart2のマイケルやソニーたちに会いたくなんだよな・・・。 マーロン・ブランドのしゃがれ声、 ジェームズ・カーンの兄貴ぶりなど、俳優陣の演技は全て素晴らしい(タリアは除く) アル・パチーノの演技も素晴らしいの一言。  ソニーとコニーは「暗黒街の顔役」と「悪い奴ほどよく眠る」、中盤の車の爆発は「ビッグ・ヒート/復讐は俺に任せろ」を思い出す。本当に映画が好きなんだなあコッポラは。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-24 09:29:00)
28.  ポセイドン・アドベンチャー(1972) 《ネタバレ》 
CGも発達していない時代にこんな凄い映画を造りやがった!!  ポール・ギャリコの原作をここまでリアリティのある大作に仕上げた超A級のパニック映画。  「あんな沖にいて巨大な津波に襲われるのか?」という疑問を破壊してくれる造り込み。  いや、あの時代だからこそやる意義があったし、あの時代のうねりがこの映画を産み出せた。  舞台は大洋にポツリと浮かぶ豪華客船。 逃げ場の無い海上、「方舟」は一瞬にして巨大な「棺桶」と化す。 甲板が地獄で船底が天国という皮肉。 船を大津波でひっくり返すって発想が面白い。 実際こんな目に遭ったら「悪夢」だけど、映画としてならやってみたい魅力的な「夢」だ。 天地逆転した船の中でパニックに陥る乗客、冷静な判断で生き残っていく人々。 押し寄せる海水、爆発で揺れる巨船、そして試される人間の尊厳。 極限状態で生き残ろうと必死に抗う人々の力強さ、死。 生き残るはずだった者、死ぬ運命にあった者、その容赦の無さ。  撮影も命懸け、俳優陣も持てるポテンシャル全快で命懸けの熱演を魅せてくれた。  今でもジーン・ハックマン演じる牧師の名ゼリフが聞こえてくる。 「主よ、助けてくれとは申しません。どうか邪魔はしないで下さい・・・!」
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-22 09:33:38)(良:1票)
29.  ゾンビ/ダリオ・アルジェント監修版 《ネタバレ》 
ジョージ・A・ロメロとダリオ・アルジェントによるゾンビ映画の金字塔。 冒頭はスタジオにおけるTV番組の収録風景からはじまる。 何故死体が蘇りゾンビが現れたのか・・・理由は解らない。 得たいの知れない恐怖との戦い、まるでガンシューティングゲームのように次から次へとゾンビを撃って撃って撃ちまくる。スリルの連続でまったく退屈しなかった。 特にロジャーとピーターの警官コンビの無敵ぶりは気持ちが良い。抜群のコンビネーションで危機を切り抜けていく。 ゾンビの動きはトロいが、人海戦術には気を付けろ。頭を狙え。跳弾でゾンビを仕留める戦法はお見事。 デパートにおけるゾンビ狩り。コレは収録作業楽しかっただろうねー。俳優陣も超ノリノリ。そーれ轢き逃げアタックだ! だが、キリの無い戦いで徐々にロジャーは正気じゃなくなってくる。調子に乗りすぎて魔がさしてしまう。 その代わりロジャーたちに助けられたフランとスティーヴンは成長していく。 「ファ●キンサノバビッチ!!」 負傷したロジャーも台車に乗り込んで移動砲台に。ロジャーを乗せて~(ドナドナ) ゾンビを一掃して得た一時の平和。救援が来るのを信じてひたすら待つ。 「F1」のクラッシュは予兆か。ロジャーぇ・・・。 そして待ち受ける人vs人の死闘。世紀末ヒャッハー軍団との戦闘はゾンビをも引き込みカオスの坩堝。 男たちは生き残るために引き金を引く。覚悟を決めた男たち、散っていく男たち、そしてある男は“生きる勇気”を選ぶ!!あの瞬間には震えたもんよ。 残り少ない燃料・・・それでも最後まで諦めず暁の空を飛んでいく。
[DVD(字幕)] 9点(2015-04-22 09:26:44)
30.  燃えよドラゴン 《ネタバレ》 
イップ・マンに師事し、キン・フーといった武侠映画にも親しんだブルース・リーの武術を活かすため、極限までシンプルにまとめられたアクション映画。  一見すれば荒唐無稽で無茶苦茶な世界観を、ブルース・リーの足運びの静けさ、気を一気に放出する動の空気が包み込む。 映像で魅せる映画にはもってこいのアクションの連続。 そこに貫かれるのは、道を外した者への「復讐」。 彼らにとって武術は「殺し合いの手段」である以前に「己を高める道」の武道。 アクション・スターとしてその武を極限まで高めたブルース・リーは後者であろう。 他人を守るための武術。己を制してこその武術。 その道を逸れ、人を殺すためだけの道具として武を使う者には破滅が待っている・・・そんな所も込みで楽しめる映画。  サモ・ハン・キンポーとのスパーリング(後の総合格闘技)、訓練、船の上での騒動、要塞での大会、潜入捜査、殺し合い、大乱闘!  クライマックスの「上海から来た女」を思い出す鏡の中での死闘!
[DVD(字幕)] 9点(2015-03-20 21:00:30)(良:1票)
31.  トラ・トラ・トラ! 《ネタバレ》 
リチャード・フライシャー、深作欣二、舛田利雄、製作のエルモ・ウィリアムズ、そして黒澤明をはじめとする脚本陣!アメリカと日本を代表する娯楽映画の名匠たちが組んだ傑作。 この面々が初っ端から娯楽スペクタクルをぶちかますのかと思いきや、日本軍が真珠湾(パール・ハーバー)への奇襲をするまでの過程を日米双方の視点から淡々と、かつ深刻に描き緊張を異様に高めていく流れが面白い。 暗号解読をめぐるアメリカの油断、そこに切り込む日本側の「もう後には引けない」という賭け、覚悟。渥美清のとぼけた笑顔は癒し。 後に待ち受ける地獄、運命を変えるために男たちは戦うしかなかった。アメリカ本土から遥か離れたハワイ。日本にとっては日系人という同胞が住む、敵の船団が集中する最短の“アメリカ”だった。 その緊張が真珠湾で一方的なまでに爆発していくスペクタクル!演習中の兵士たちのあっけにとられた顔。「そんな馬鹿な」という表情で爆炎の中に消えていく兵士たち。揺れる艦橋、爆沈する船、船、船!ワレ奇襲ニ成功セリ。ワレ奇襲ニ成功セリ。 必死になって機銃で迎撃を試みる表情、警報に何かの間違いではないのかと驚嘆を隠せない表情、この機を逃せないと必死で爆弾を投下する男たちの表情。 帰路に味方が1機撃墜されるだけでも、巨大なる“敗北”を感じずにはいられない。大物を逃した男たちの、虚しさに包まれた顔。 嵐が去った後に敵の侵入を易々と“見逃して”しまった苛立ち、悔しさの滲み出た顔、顔、顔・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2015-03-20 14:03:15)(良:1票)
32.  西部戦線異状なし<TVM>(1979) 《ネタバレ》 
ルイス・マイルストン版と是非とも見比べて欲しい。 こちらは原作に沿ったカラー版。この作品も素晴らしいんです。スコップの件とか、瓶を割る件とか。マイルストン版になかった描写と見比べられるのが嬉しい。もちろん、どちらも名作です。 それに改めて気づかせてくれたラストシーン! ラストシーンもカラー(TVスペシャル)と白黒(マイルストン)で見比べられるなんて・・・!是非とも見る時は両方。
[DVD(字幕)] 8点(2015-03-15 12:06:55)
33.  スター・ウォーズ 《ネタバレ》 
SF、西部劇、時代劇・・・あらゆる映画への愛に溢れた記念すべき第1作。完成度では「帝国の逆襲」や「ジェダイの復讐(帰還)」を挙げる人もいると思う。俺は第三部の畳み掛けが一番好きだ。 が、やはりこの作品無くして「スター・ウォーズ」は語れないだろう。  俺にとっての幸運はBSの再放送で「スターウォーズ」の旧三部作を小学生の頃に見れたという事。ガキだった俺は純粋に全シリーズ楽しんで見れた。本当に良かったと思う。 新3部作もリアルタイム。 だが大人になると色々なものに衝突する。捉え方も360度違うものになっちまった。それでも面白いものは面白いし、感動するもんだよ。  シンプルを極めた、王道を王道で踏破する娯楽映画の代表だね。 いきなり戦闘場面から始まる古典的かつ最上のファーストシーン、 「メトロポリス」を彷彿させる洗練された美術、 見た目は下手物、動けば実に活き活きとしているアニマトロニクスの実在感。 魅力的な登場人物も面白い。 純粋な少年のルーク。血が繋がらなくとも家族の愛情を知っている優しさに溢れた青年。「捜索者」のイーサンのように憎しみと葛藤しながら成長していく姿が力強い。 悪党と義侠心を貫くハン・ソロのカッコ良さ、 男勝りなレイア姫の気高さ、 長き修羅場をくぐり抜けた者としてのケジメを払おうと戦うオビ=ワン、 人間のように感情豊かなC-3POとR2-D2、 宿敵ダース・ベイダーのベールに包まれた底知れぬ魅力などなど。  心の強さを反映する武器「ライト・セーバー」での打ち合いは手に汗握る。光が触れた瞬間から勝負が決まるようなジリジリとした攻防がいいね。  ウィリアム・A・ウェルマンの「つばさ」等あらゆる航空映画を思い出す宇宙空間での戦闘。 迫力は元の航空映画たちには及ばないが、それでも音楽やセリフの応酬、銃撃でどんどん盛り上がる戦いはやっぱり興奮する。これぞゴリ=オシ。  ラストの決戦の破壊力、主人公たちの戦いの終結を称えるエンディングも良かった。 色々粗はあるけど、粗探しも映画の楽しみ方の一つ。むしろそれすら“娯楽”として楽しませてくれるのだからっ!
[DVD(字幕)] 9点(2015-03-03 05:53:15)
34.  ジュリア 《ネタバレ》 
フレッド・ジンネマンは苦手だけど「ジュリア」は凄く良い映画だと思う。 最初は執筆の日々に追われる日常を描いた恋愛映画でもあるし、後半はジンネマンらしいサスペンスフルな緊張が奔る。 特に列車内のシークエンスでジリジリと張り詰める緊張、ベルリンの食堂で再会する場面の鮮烈さ。彼女が乗る前に慌てて転ぶ瞬間からその緊張は始まる。煙草の煙にむせ、隣で音が聞こえる度にビクビクしてしまう様子。 ジンネマンの映画は常に孤独との戦い・恐怖・怒り。 それを劇中にぶちまけるリリアン・ヘルマン(ジェーン・フォンダ)の強烈さ! ウィリアム・ワイラーの作品に多数参加した事でも知られるリリアン。その容赦の無いシナリオには戦慄を覚えるほど唸るものが多い。特に「偽りの花園」は凄えぜ。 劇中でも煙草プカプカやりながらタイプライターを叩いて叩いて叩き、ゴミ箱を蹴るわタイプライターをムシャクシャして窓からぶん投げるわ、サンドをムシャムシャ食うわ、野郎にビンタを浴びせるわと絶えず何かにイライラしている。 そんな女を優しく受け止めるダシール・ハメット(ジェイソン・ロバーツ)の存在も忘れられない。闇夜を静かに照らすように燃える焚き火、波の音、くゆらせた煙草の煙のように流し、なだめる。 そしてリリアンと深い友情を結んだジュリア。 映画では回想を含めミステリアスな存在で短い時間の登場だったが、実際は友情以上の感情も抱いた仲だっただろう。食事の後に仲良く踊ったり、ベッドで語らい合った以上の関係に。 リリアンにとってジュリアは古くからの友人であり、尊敬すべき師であり、女として愛してしまった掛け替えの無い女性でもある。 女たちは既に語り終えている。それを観客の前でグダグダやらずに、表情だけでその“時間”を感じさせてくれるのだ。役者陣の演技の素晴らしさもこの作品をより際立たせる。 ジュリア(ヴァネッサ・レッドグレイブ)といいリリアンといい、戦う女は何時の時代も美しい。 彼女たちは独りで戦うが、心の中には常に友の存在があった...たとえ死によって二人が永遠に別れようと、回想を通じて心の中に生きつづける友の魂は次の世代にも受け継がれていく。 「地上より永遠に」とはまた違った戦争の描き方。あの映画は波打ち際で抱き合う恋人たちの姿が忘れられないが、この作品も湖上のボートから見る曇り空がラストには美しい夕焼けとなって映る。
[DVD(字幕)] 8点(2015-02-27 15:52:21)
35.  フェリーニのアマルコルド 《ネタバレ》 
「アマルコルド」とは北部イタリアのリミニ地方の古い言葉で“エム・エルコルド”(私は覚えている)。 この映画は、1930年代を舞台にフェリーニが忘れられない1年を語り、春夏秋冬で彩られ2時間をあっと言う間に駆け抜けるコメディだ。 桜の花びらが舞い、春一番が吹く港町。 夜になれば、からくたの山に冬の女神の人形を掲げて火を放ち、寒い冬が明け暖かい春の訪れを祝う祭りを開く。 ブラスバンドの演奏を、拳銃や爆竹の“音色”で盛り上げる狂騒振り。劇中で幾度と無くバイクが猛スピードで路地を走りぬけ、盛大に燃やされる古い家財道具の山、盲目のオルガン弾きや狂女の、群衆が奏でるアンサンブル! 祭りは終わっても、街には人々の歓喜や悲鳴がこだまし続ける。 食卓での大喧嘩。息子がお手玉をしだせば、爺さんは屁をブッ放しオトンはキレだしテーブルクロス引きを失敗、オカンもブギレまくりの大騒動。お父さんの血管がいつ切れてブッ倒れるかと心配になる。頭にコブ?みたいな変な塊もあったし(お父さんの“マグマだまり”かな)。 それにしても、フェリーニのこの時期の映画はふくよかな女性が多いこと。あれだけふくよかな女性を下品かつ妙なエレガンスすら感じさせて撮れるのは凄い。 子供がその豊満なバストにむしゃぶり付くシーン。まったくエロくないのが凄い。それよりも、馬車の上でたたずむ赤いドレスマダムのの方がずっと色っポイとはどういうワケだ。服を一枚一枚脱ぎ、後はベットで愉しんで下さいってか。エロイッす。 ムッソリーニの出来そこない見たいな軍隊どもの行進。彼らはヴァイオリンの演奏に銃弾の雨を下から浴びせ、鐘楼を打ち落としその響きで演奏を締めくくる。 宮殿におけるアラブ風のベールに包まれた腰の締まった妖艶な美女たちのダンス。もっと長く見たかったなー。 夏には蝉の代わりに狂男が半日叫び続け、船に揺られて盛大に遭難。 霧の中でのダンスシーンは凄いぜ。霧がたち込め手探りで前へ進み、男たちは踊る女性の相手がいない寂しさを友達と手を繋いで埋めるのであった。 秋は車やバイクが猛スピードで走り去るようにあっと言う間に過ぎる。 冬は雪合戦でみんな真っ白、雪と共に広場に舞い降りる孔雀が美しい。 葬式でちょっぴりしんみり、その次は結婚式で新しい命が生まれる事を願いながら映画は幕を閉じていく。再び桜の舞い散る港を映しそれぞれの“春”を祝福するのである。
[DVD(字幕)] 10点(2015-02-24 22:47:40)(良:1票)
36.  スティング 《ネタバレ》 
「テキサスの五人の仲間」が最高のどんでん返しならば、「スティング」は最高の計画通り。 騙される愉しみではなく、騙していく愉しみがスティングの魅力だ。 ユーモアたっぷりの犯罪映画。 ロイ・ヒルは「明日に向って撃て!」の方が好きだが、「スティング」もまた大いに楽しませてくれる傑作! 脚本の完成度で言えば「テキサスの五人の仲間」の方が上だが、純粋な満腹度で言えばやはり後年の「スティング」を俺は選ぶ。今回再見してみて一番印象が変わったのは、ポール・ニューマンの相棒を務めたアイリーン・ブレナンもとびきりの美人てほどじゃないけど場数を踏んだ女傑という雰囲気を前回見た時よりも強く感じた。キャサリン・ロスとはまた違った魅力を再発見できたのが嬉しい。 冒頭の見事な「詐欺」、一瞬のすり替え、ドライな殺し合い・・・動きで魅せる事にこだわったロイ・ヒルの粋な演出。 物語は1930年代のシカゴを舞台に、詐欺や賭博で生活を立てるフッカーの波乱に富んだ生活と復讐の物語。 各章ごとに区切る事でより盛り上がるストーリー展開、初っ端から金を騙しとるフッカーたち、その瞬間から全てのからくりが動き出す伏線のオンパレード。 賭博師・警官・マフィアの三つ巴、殺し屋、詐欺師、ボディーガードの三連装! 警官に殴られてもタダでは金をやらないフッカー。 警官・マフィアとの三つ巴の逃走劇は命のやり取りを楽しんでいるようにしか見えない。正に生きるか死ぬかの大博打。  フッカーを追うスナイダーの執着ぶり。 ここまで来ると「ルパン三世」に出てくる銭形警部のような愛着が湧いてくる。ある意味一番幸せな男だ。 ゴンドーフの詐欺師振りも凄い。相手がヤクザだろうが何だろうが度胸一番、酒は飲んでも飲まれずキッチリ大仕事。古女房ビリーとのコンビが面白い。 さあ今回最大の被害者となるドネガン。いやいやコイツは受けて当然の仕打ちよ。 命を取られた人間が一番の犠牲者なんだから。 なーに財布の50万$やら100万$なんざ軽い軽い(精神的に廃人になるだろうけど)。  ラストの締めも最高のエンディングだった。 「やっぱりそうなったか!待ってました、予想通りの最高の終わり方!」  本作は「騙される」のを期待して見る映画じゃない。 主人公たちがいかに仇を「騙して」金を巻き上げるかを見守る作品なのよ。主人公と仇の温度差をな。 そんな最高の映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 07:17:01)(良:2票)
37.  北国の帝王 《ネタバレ》 
「アクションは必ずしも殴る蹴るや銃を撃つ必要は無い」という事を証明するシンプル・イズ・ベストな傑作。 無賃乗車を繰り返すホーボーと、それを阻止し列車を守ろうとする鉄道員の戦いを描いたアクション映画。 冒頭からニワトリの奪い合いで始まり、経験豊富という感じの男がいそいそと列車に乗り込み、ソレを見たマーヴィンのニワトリを奪おうとしていた青年が彼を追って列車に乗り込む。 その青年の気配に気付いたか、車掌のような男は彼らが乗り込んだ車両に鍵をかけ閉じ込めてしまう。 列車が動き出し、中の2人は会話をはじめる。車掌の仲間達が待ち受ける駅に近づけば近づくほど青年は焦り、もう一人は狂ったフリをして意外な行動にでる。 冒頭から対象は呼吸をするように動き続け、緊張感を持続させる事で駅に着くまでのスリルを極限まで高めている。 その後のマーヴィンとボーグナインのどちらが勝つかと賭けるところの斬新なカット、それを巡る男達の狂気の場面。イスごと叩き付ける場面が示すように、ボーグナインは客の安全を守るというよりはその思いが暴走し本来列車を補助する道具を凶器に変えて襲い掛かる。 まあ、ホーボーたちの無賃乗車がいきすぎれば鉄道会社が倒産しかねないからね。手をこまねいてもダメだし、彼のようにやりすぎてもマーヴィンのような“大者”を惹き込んでしまうのだが。 一方で、ホーボー仲間として協力する筈のマーヴィンとキャラダインも知らず知らずの内に互いの脚を引っ張り、やがて決別の時が訪れる。キャラダインに「薄情野郎」と言われてあたりを見回し「俺?」と返すシーンは爆笑。 仲間というより「あくまで利害の一致で協力していたに過ぎない」というドライな人物像は初期から貫かれてきた。本当に友情を結んだ例もあるけど、基本的には利害の不一致が起きれば争いになるのがお約束みたいなもん。 この映画は水も象徴的に出てくんだよねー。 マーヴィンが水で体を清めたり、霧や雨の中を走る列車の雰囲気、給水タンクに刻まれた文字、ホーボーを焼く蒸気。 視界が悪い中ホーボーたちの罵りと対向車とのギリギリのすれ違い、何度も列車に挑むマーヴィン。 急ブレーキの怖さを実感する場面は戦慄を覚えた。ラストの一騎打ちも熱い傑作!
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-11 19:33:29)(良:1票)
38.  激突!<TVM> 《ネタバレ》 
これは現代の「西部劇」とも言える。  西部劇が馬なら現代は鉄の馬同士の一騎打ち!  物語はどこまでも単純、どこまでもシンプル。   アメリカのだだっ広いハイウェイに車が一台。   そこに突然現れた巨大なトラック。   ノロノロで追い越させ、追い越させたと思ったら猛スピードで突進して来る。   借金の取立てが命の取立てになってしまった。   ブザーを鳴らす愉快犯かと思いきや、故障したバスを押してやったりと実は優しいのか?   いや、やっぱり主人公の車を付け狙う愉快犯か。  カフェの外で不気味にたたずむあのトラック。   主人公の心も恐怖と怒りでピークだ。    ともかくトラックの運転手は正体不明のまま。声も顔も出ない、不気味な二の腕だけが主人公を挑発する。   フロントバンパーに貼られた無数のナンバーは何を語ろうとしているのか。   トラック野郎にあるのは狂気だけなのか。   正体が解らないという恐怖。   スピードが出すぎ車が止まらないとう恐怖。   日常に溢れた恐怖を最高潮に引き立てるスピルバーグの妙技。   後の「ジョーズ」はかなりヒロイックな展開がされたが、この「激突!」はひたすら追いかけっこ。   だがそんな主人公も我慢の限界。 上等だテメエ!“決闘”だよバカヤロウ!  壮絶な二台の追走劇。   「車のエンジンが中々かからない」の始祖だが、これは衝突でエンジン部分がひしゃげたからこそ起こるだろうという現象であり、普通の車がそんな欠陥品なら会社なんか潰れてる。後の奴らは何か勘違いしてんだよな。   ラストのトラックと向き合い、車で迎え撃とうという様子はバスター・キートンの「セブン・チャンス」を思い出す。   迫る岩の大群、逃げるのをやめて「あえて」正面から避ける事にしたキートンの勇気と発想。   もしスピルバーグがこのキートンの傑作を見ていたとしたら、俺はもっと尊敬するぜ。   少くともカフェでのやり取りは黒澤明の「野良犬」が元らしい。  つうか主人公は何回車上で振り返るんだよ。   主人公がいつ余所見で事故るかそっちの方がよっぽどハラハラするわ。   バックミラー涙目。   教習所涙目。   ラストの夕陽のシーンがキレイだった・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-11 19:33:20)(良:2票)
39.  軍旗はためく下に 《ネタバレ》 
文句なしに深作欣二の最高傑作。 ギターの重低音、白黒とカラーが交差する映像。 軍旗の中に埋められた真実とは何か。 戦後数十年の時が流れ、未亡人となった妻は未だに夫が“殺された”本当の理由を知らない。夫の罪が誠だという証拠も何処にもない。 「無罪を立証する積極的証拠なし」として頑なに真相を隠そうとする国、だが妻は諦めず四人の“生き証人”たちに辿り着く。  戦闘ではなく骨太のドラマに主眼を置いた作りが良い。 新藤兼人はつくづく監督よりも脚本を書いている時の方が圧倒的に面白いという事を実感。  いくら指揮を下げないためとはいえ、まだ戦える兵士をブッた斬る狂い振り。どのみち、行き着く先は三途の川さ。 「死ぬ時は一緒だ!」の悲痛な叫び、彼らの血も訴えも海の藻屑と消されていく非情。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-10 19:29:04)(良:1票)
40.  仁義なき戦い 代理戦争 《ネタバレ》 
一番最初の「仁義なき戦い」は音楽の使い方がギャグとしか思えなかったが、2作目、3作目以降は音楽の使い方も死に様も漢たちの血生臭いドラマもどれをとっても切れ味しかなかった。 特に本作はシリーズの駆け引きと虚しさを噛み締められる一篇だ。群像劇としての面白さもより磨きが掛かる。  最初のダイジェストで前がどんなかおさらい、世界の代理戦争は、当然日本のヤクザ社会でも例外ではない。 今回の菅原文太の兄貴が味わう虚しさは、シリーズ随一。 小林旭の知性派というかインテリ的なキャラも喰えない野郎だ。 この世界、暴力だけじゃ食っていけないからねえ。 白昼堂々暗殺を仕掛けるヤクザの鉄砲弾ども、 相変わらず憎めない山村のおやっさん、 木刀から日本刀までブンブンうなる、 ビール瓶でも渇入れて~、 ちょっと可愛そうになってくるレスラーのおっさーん、 成り行きでヤクザになっちゃった倉元と母ちゃんのタバコの件が忘れられへん、 自重する気皆無な山守、 発炎筒もいきなりの強襲もビックリする時はビックリする人間臭いヤクザたち、 文太の兄貴だけ闘る気満々で空回り、 利用される女達の哀しみ、 停電の会合場面は妙に心に残る 、血で血を争うぐちゃぐちゃの殺し合い・・・。   クライマックスは何度見ても強烈だ。 文字通り粉微塵になってまで“殺され”続ける残酷さ。殺し屋たちも、時と場所は選べない。 砕け散った一片を、文太の兄貴が握り締め、打ち震えるシーン・・・!  原爆ドームが、戦後も広島を中心に繰り広げられる殺し合いを無言で嘆くかのように、物語を締めくくる。
[DVD(邦画)] 9点(2015-01-05 18:18:08)
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