381. 嵐の三色旗
《ネタバレ》 原作未読。乱世の中で、私の中の永遠のヒーローである岩清水弘による「君のためなら死ねる」を体現したロナルド・コールマン(今作では髭無し)の抑えた演技の中に溢れる切なさに身悶え。祭り会場の如き熱気に包まれた処刑場に「自由・平等・博愛」が聞いて呆れるフランス革命の黒歴史を初めて知る事となりました。迫力満点の映像による見応え十二分の秀作。 [DVD(字幕)] 8点(2019-07-28 19:23:12) |
382. 最高のルームメイト
《ネタバレ》 両親を亡くした幼児マイケルを引き取った祖父ロッキー75歳。以後30余年に亘る二人の成長物語。毒舌家だけどここ一番の時に孫を正しく導く慈愛深い姿が沁み入ります。「ママが死んだのは熱を出した私のせいなの」ポツンと呟く娘に見失った自分を取り戻したマイケルに泣けてしようがなかったです。コロンボ役以外でも味わい深い演技を見せてくれるピーター・フォークの名優ぶりを堪能しました。瑞々しいジュリアン・ムーアも印象的。本邦未公開が信じ難い秀作。 [DVD(字幕)] 8点(2019-07-17 01:01:06) |
383. ホワイト・ドッグ
《ネタバレ》 「殺すのは簡単だが、それでは解決にならない」一念での奮闘が報われたかと胸熱になった途端の狂気の顔つきに、子供時分に大人達が口にしていた「所詮は畜生やからなぁ・・・」が浮かびました。ポール・ウィンフィールドの遣る瀬無さ極まる姿にもらい泣きしそうに。作品に格調をもたらす音楽はモリコーネ流石の仕事ぶり。孫を連れた見た目温厚な好々爺のレイシストが、幼犬時から黒人使用人に命じて虐待させて黒人への憎悪を植え付け黒人殺人犬に仕立て上げる。洗脳のおぞましさは犬のみならず人間にも当てはまるホラーの枠を超えた考えさせられる秀作です。本作はNAACPの猛抗議によってパラマウントが公開に尻込みして上映禁止となり、サミュエル・フラーがフランスに移住したといういわくつきの作品でもあります。 [DVD(字幕)] 8点(2019-06-29 23:35:04) |
384. 泥棒貴族
《ネタバレ》 掘り出し物の傑作。脚本、キャスティング、音楽、舞台セット、全てが絶妙の小粋なクライムコメディ。最後の最後まで騙されてしまったのが心地良く余韻に浸ります。本作のMVPと言えるハーバート・ロムが絶品でありました。余談ながら、本作のリメイクがモネゲームと知り心底仰天。傑作を超絶愚作に貶めた罪深さにあの時の煮えくり返る思いが甦ります。 [DVD(字幕)] 8点(2019-06-24 00:16:18)(良:1票) |
385. イカリエ‐XB1
「スタートレック」「2001年宇宙の旅」に影響を与えたと言われる1963年チェコスロバキア産SF。古臭さを感じさせないシャープな造形美は特筆ものの美しさ。核兵器の醜悪さが語られているものの、未知への探求心に満ちたストーリーで未来への希望を表す結末が印象深いプロパガンダ臭皆無の傑作。 [DVD(字幕)] 8点(2019-06-16 23:34:17) |
386. 決断の3時10分
終始物静かなベンは西部劇悪漢キャラらしからぬ存在。ダンの心を見透かすように金で釣ろうとするネチネチぶりに血圧が上がる。甲斐性なしを突かれて金に転びそうになるダンを応援し続けて血圧が上がる「踏ん張れ!」 グレン・フォード、ヴァン・ヘフリンのキャスティングが絶妙 力が入りっ放しの展開を経た結末に釈然としないものを感じていたものがラストショットに消し飛んでしまった。乾いた心にまで沁み入ってくる雨模様が絶品。 異色であり上質の西部劇を堪能しました。 [DVD(字幕)] 8点(2019-06-10 22:04:53) |
387. 巴里の空の下セーヌは流れる
夜明けから翌朝までの一日の物語。多くの人の喜怒哀楽が絡まり合う脚本が実にお見事。最も印象深いシーンは少女に対する彫刻家の優しさで、人の心の奥底は分からない事を示してくれます。聞き覚えがあると思ったらフランソワ・ペリエだったナレーションが過剰なのが玉に瑕。 [DVD(字幕)] 8点(2019-05-25 01:46:56) |
388. 魔術の恋
《ネタバレ》 今でもアメリカではマジシャンと言えば第一人者と呼ばれるハリー・フーディーニの伝記ドラマ。存在を初めて知りました。ベスとのなれ初めから成功を収めて亡くなるまで、脚色が加えられているようですが、実に丹念に描かれて見応え十二分。流石にフィリップ・ヨーダンの脚本は見事です。ベス同様にもう余生は穏やかに過ごせばいいのにと思うのですが、命を懸けて観客を喜ばせたい「脱出王」の性が何とも悲しい。実生活でも夫婦の二人の華やかさも、これぞ映画スターの華やかさで見惚れました。 [DVD(字幕)] 8点(2019-05-23 01:41:30) |
389. ロープ 戦場の生命線
《ネタバレ》 ユーゴ紛争停戦時におけるNGO団体活動が描かれた秀作。虐殺はおろか一発の銃弾も飛ぶ事が無いにもかかわらず、牛の地雷・十数人の捕虜達・街並みの廃墟・首吊遺体・ぼったくり水販売といったシーンに無残さと人の卑しき心を見せつける脚本が見事。また、ボールの件でNGOと現地人の正義感の乖離は考えさせられる印象深さ。武器を持たず、天下無敵の突破力を見せる事もなく、徒労に終わっても、次の現場に立ち向かう皆様に頭が下がります。作品に華を添えている豪華キャストは彼等に敬意を込めての出演だったのでしょうか。神の思し召しのようなラストショットに救われます。もたつきを感じた展開が何とも惜しいところ。 [DVD(字幕)] 8点(2019-05-20 18:32:36) |
390. ライアンの娘
《ネタバレ》 初見。テレビの旅番組でも見た事のない絶景は鑑賞史上ナンバーワンであり特筆もの。浅はかな不倫話に観るの止めようかとしたものの、ロージーをその不貞も含めて愛しているチャールズ並びにロージーを只々慕う弱者マイケル並びに村人全員の教師たる神父の存在があって一気に完走できました。ロージーが初めて他人の痛みがわかる事となった身も心もズタズタにされるリンチシーンに於ける村人どもの下劣さは凄まじい。イギリス人監督の視線なのだろうか。神父はハサミを持ってるあの女にこそ鉄拳を食らわして欲しかった。それとあの父親にも天罰が下らん事を願って止みません。続いて行くそれぞれの人生を思わせるラストシーンに深い余韻が。 [DVD(字幕)] 8点(2019-05-19 17:38:56) |
391. 夜は千の眼を持つ
《ネタバレ》 奇術師トライトンの透視はステージ上での芸のみならずプライベートでも予知出来てしまう。儲け話に繋がる良い出来事ならまだしも人の死も。苦しさから逃れる為の隠遁生活20年。浮かんでしまった曾て愛した女性の娘の死に対してフィアンセや警察と共に阻止すべく立ち向かう。見えてしまう苦しみを表すエドワード・G・ロビンソンは控えめなキャラでも存在感は大きい。とりわけ自分の身に起こる事を察した(台詞無し)シーンは彼ならではの名演技で結末に繋がる。手堅い作りで無理筋が無く地味ながらも見応えがある秀作。 [DVD(字幕)] 8点(2019-05-03 16:46:57) |
392. ゲティ家の身代金
緊急登板による9日間の追加撮影で金しか愛せない守銭奴ジャン・ポール・ゲティを表現したクリストファー・プラマーに拍手喝采。「巨大な敵と闘っている」ミシェル・ウィリアムズの好演も印象深い。今一つ華に欠けたマーク・ウォールバーグに代わってコリン・ファースをキャスティングして欲しかったなぁ。 [DVD(字幕)] 8点(2019-04-29 01:59:38) |
393. ウィル・ペニー
《ネタバレ》 藤沢小説のようなたそがれカウボーイを見事に演じきっているチャールトン・ヘストン。こんな演技が出来るのに心底仰天。 いしだあゆみが思い浮かんだジョーン・ハケットを愛していながらの 「too late」 「遅すぎるという事は無い」考えの私に突き刺さった堪らないシーンでありました。 ドナルド・プレザンスが西部劇に出演でしかも長髪(初見!)彼の息子役がブルース・ダーン 物凄いキャスティングで存在感はありまくりですが、エキセントリックぶりの空回り感が惜しい。 主役二人の名場面に乱入してきた時には怒り心頭「何で今やねん、引っ込んでろ!」 味わい深い西部劇。名作です。 [DVD(字幕)] 8点(2019-04-21 21:05:45) |
394. 暗黒街(1927)
序盤はブルの馬鹿みたいな俺様キャラと、ブルの右腕としての活躍が描かれないロールス・ロイスにギャング映画らしさを感じられず、サイレントなのでこんなものかと眺めていました。途中から三角関係のメロドラマとして盛り上がってゆき、「人生を凝縮した数時間」に於けるブルは前言撤回の一匹狼に相応しい姿で痺れました。エドワード・G・ロビンソン、ジェームズ・キャグニーを始めとする多くのスターが活躍するギャング映画の先駆けとなった作品に敬意を表しての8点。 [DVD(字幕)] 8点(2019-04-18 01:53:59) |
395. ザ・バニシング-消失-
《ネタバレ》 スタンリー・キューブリック大絶賛作品で本邦劇場初公開という事で駆けつけました。 良き夫良き父親良き教師であるレイモンが自身の異常性を証明しようと静かに理路整然と行動する姿が怖くて息苦しい。 サスキア生存に一縷の望みを託したレックスの賭けの結果があまりにも酷過ぎて、誘いをかけ続けたレイモンを八つ裂きにしてやりたいと興奮状態に。 救いの無さが極まれるラストショットに後味の悪さを噛み締める。 1滴の血が流れる事も無く、殺人描写があるわけでもないのですが、上質のサイコロジカルサスペンスでした。 [映画館(字幕)] 8点(2019-04-18 01:29:05) |
396. 天国でまた会おう
《ネタバレ》 ピエール・ルメートルによる原作を映画化。ゴンクール賞受賞、セザール賞13部門ノミネート・5部門受賞も伊達ではない秀作。 WW1で命からがら帰還したエドゥアールは戦闘で顎と声を失い、彼に命を救ってもらったアルベールは職と婚約者を失う。戦没者に対する敬意とは裏腹に帰還兵を「よくもおめおめと帰ってこれたものだ!」と嫌悪する社会で、手をとりあって詐欺を企てる二人の友情。エドゥアールと父親(政財界の実力者にして大富豪)の確執。ここに因縁の相手で業突く張りのプラデルが絡む。陰惨で辛気臭くなりがちな話をエドゥアールの思いを代弁する少女の存在が和らげてくれる。エドゥアールが被る数々の仮面の妖しげな美しさ以上に印象深いのが、父親の鉄仮面ぶり。タイトルの意味が分かったシーンに胸が潰れそうに。現実離れ感が強いラストに違和感があったものの目の離せない愛憎劇を堪能しました。 かなり脚色が加えられているそうで、原作を読むことにします。 [映画館(字幕)] 8点(2019-03-25 12:17:35) |
397. 運命の饗宴
《ネタバレ》 一着の夜会服をめぐり袖を通す各人の運命を描く6つの連作ドラマ。シャルル・ボワイエとエドワード・G・ロビンソン共演に小躍りする思いだった当てが外れたものの魅力全開の両者を堪能出来ました。 1話:舞台役者と不倫相手の人妻とその亭主(トーマス・ミッチェルの怪演が光る)三人の対決に息が詰まりっ放し。ボワイエの気品に満ち溢れ且つ自信に満ち溢れる台詞回しにウットリと。 2話:苦手なヘンリー・フォンダによるラブコメに拍子抜けで淡々と眺める。 3話:落語の人情噺の作風で聴衆が夜会服を脱いでゆくシーンに胸熱。 4話:大学同窓会に出席したルンペンに落ちぶれた弁護士の人生ドラマ。圧巻。子供達に「気が多い」と言われる敬愛する方々の中で東の横綱はエドワード・G・ロビンソンだと実感しました。人間が持つ感情一つ一つを迫真の演技で見せてくれるその表情に感無量。ラストショットに胸激熱に。 5話・6話:4話が強烈過ぎて蛇足に思えました。再見すれば考えが変わるかもしれません。 [DVD(字幕)] 8点(2019-03-18 14:19:19) |
398. お熱いのがお好き
マリリン・モンロー出演のみ知っている本作。ジョージ・ラフト目当てで鑑賞。ワイルダーの笑いと毅然とした態度の塩梅に何時も酔わされている者としては、ドタバタ喜劇に楽しめたものの酔いは回らなかった。敵役ギャング一味は飾り物の子分とステレオタイプの親分で物足りないものの親分演じるジョージ・ラフトのパリッとしたいでたちには若きジゴロが齢を重ねたらこうなるのかっ!と目が釘付け。30年代ギャング映画へのオマージュを感じる場面の数々、バターミルク(ジェームズ・キャグニー)、コイントス(ジョージ・ラフト)、本人の目の前でコイントスをして粋がる若造がエドワード・G・ロビンソンJr、鳥肌もののワイルダーならではの演出に+1点。「完璧な人間は居ない」は撮影時暴君で手を焼かされたというマリリン・モンローへの思いなのだろうか。 [DVD(字幕)] 8点(2019-03-13 13:19:00) |
399. 80日間世界一周
初見。長くて他愛ない冒険物語ながらも、TV番組のアップダウンクイズ、兼高かおる(先日亡くなられたそうで、合掌)世界の旅、世界の車窓からが浮かび、子供心に外国旅行に憧れた記憶が甦りました。奇跡の様な絢爛豪華なゲスト出演者の中での極めつけ、バスター・キートン、マレーネ・ディートリッヒに感動。主人公たちのように財力・知力・腕力・行動力でもって本作を作り上げたプロデューサー、マイク・トッド(1958年飛行機事故死が惜しまれる)に敬意と感謝を込めての8点。 [DVD(字幕)] 8点(2019-02-11 14:17:25)(良:1票) |
400. ネブラスカ ふたつの心をつなぐ旅
《ネタバレ》 レンタルした理由が今も思い出せないのですが、掘り出し物の逸品でした。絶品だった御年77歳ブルース・ダーン。ヨタヨタ、頑迷、寡黙、痴呆気味、威厳無しと良い所皆無のウディがデイビッドに「何か残してやりたかった」と語る姿に涙が止まらなかった。親としての思いを知る由もない周りの者達のおこぼれにあずかろうとせびる台詞「・・・・・筋を通せ!」真相を知っての掌返しの嘲り、それぞれの生々しさに腸が煮えくり返る。この部分の演出、演技は特筆もの。デイビッドの粋な孝行に「良かった」と思うと共に、自分が父親に何一つしてあげられなかった後悔が押し寄せる。 [DVD(吹替)] 8点(2019-02-04 16:54:06) |