Menu
 > レビュワー
 > すかあふえいす さんの口コミ一覧。20ページ目
すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
41424344454647484950515253
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
41424344454647484950515253
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031323334353637383940
41424344454647484950515253
>> カレンダー表示
>> 通常表示
381.  雄呂血 《ネタバレ》 
脱歌舞伎の剣戟映画の開祖の一つである「雄呂血」。 「日本のグリフィス」こと牧野省三の総指揮、 監督に二川文太郎、 そして阪妻こと阪東妻三郎の驚異的な殺陣! 坂東妻三郎を始めとする俳優陣の演技と殺陣には歌舞伎には無い躍動感が溢れ「歌舞伎なんざブッ壊してやる」というエネルギーが伝わって来る。 バンツマの盟友と言われる「まぼろしの殺陣師」市川桃栗。 彼の破壊的で斬新な殺陣はいかにして生まれたのか。 その真髄に少しでも迫れるのが本作だ。 ジョセフ・フォン・スタンバーグが斬られる人数を数えるのに夢中になったと言われるぐらいとにかく斬りまくる。 オマケにサイレント特有の超早回し映像で、まるで機関銃で一人ずつ狙い打つように斬り倒していく。 坂東妻三郎が松ノ木を背に刀をかまえる場面もほんの一瞬。 その時のバンツマ(坂東妻三郎)が最高にカッコイイ。 絵になる一枚だね。  だが、本当の醍醐味は27分にも及ぶ大立ち回りではない。  一途な恋心が理解されず、誤解を重ねて追い込まれていく平三郎。 人間の本性を目の当たりにする度に、無頼漢に染まっていく平三郎の描写が良い。 奈美江に思いを寄せた後に運命に翻弄されて諸国を彷徨う平三郎。 眼がすわり、ヒゲを生やし、ボロボロになった服を着ながらも歩き続ける力強い姿が素晴らしい。  「世に無頼漢と称する者、そは天地に愧じぬ正義を理想とする若者にその汚名を着せ、明日を知れぬ流転の人生へと突き落とす、支配勢力・制度の悪ならずや」という字幕が語るように、悪党が本当に悪党なのか? 悪党と言われる者が、本当は真面目に生きる人間だったりするのだ。 そして正義と言われる者が、偽善を振舞い悪事を働くような者も世の中には溢れている。 人妻になろうと、平三郎の一途な想いは変わらない。 愛する女を守るため、己の身を犠牲にする覚悟で悪漢を叩っ斬る。 これで平三郎の覚悟は決まった。 散々に斬りまわった挙句、捕縛されて連行されていく平三郎。 民衆には平三郎は悪にしか映らず、奈美江たちには命の恩人なのだ。 その恩人を助けられない奈美江たちの悔しさと哀しみ、平三郎の無念。 解る奴は解ってくれるが、解らない奴は一生理解できない。 それがこの世の中だ。  これほどの作品を発掘し守った人々には、感謝しきれない。
[DVD(邦画)] 9点(2015-01-15 16:37:23)(良:2票)
382.  死刑台のエレベーター(1958) 《ネタバレ》 
愛の言葉で始まるファーストシーン、絵だけで殺人の様子を描き出す素晴らしい出だし。  ところがストーリーは3つに膨らんでいき、徐々に1つの事件へと結びつく・・・。   偶然が偶然を重ねる悲劇、ブラック・ユーモア的な感覚。  フランス映画は何から何までオシャレだ。フェチもエロも上品だから好き(イタリア映画も自由奔放なところが好きな俺である)。  特にこの映画は殺しの場面も上品。  血を見せないのが逆に残酷でさえある。  登場人物も何処か紳士的だから良いんだよね(フランス人なのに)。  パリっ子の粋な計らい(車をぶつけた相手を酒にさそってしまう、散らかしたゴミをちゃんと回収する、自殺の方法もシンプル)。  ある意味理想的で人間味のあるパリっ子がこの映画にはいるワケよ。  愛の言葉に始まり愛の言葉で終わる・・・本人じゃなく写真に向って言うシーンが印象的な映画だった。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-15 16:36:46)
383.  ゲームの規則 《ネタバレ》 
過大評価だ!・・・と言いたかったのに、何でこんなに面白いの。いやマジで。 個人的にジャン・ルノワールの最高傑作が「ピクニック」で一番好きな映画でもある事は間違いないが、この「ゲームの規則」もすげえ面白い 「大いなる幻影」よりもずっと面白いし、ブルジョワ共の狂騒と没落していく様子を愉快に描いた傑作コメディだ。 第二次大戦開戦前夜、戦争の足音も聞こえずオープンな性と浮かれきった貴族たちの危うさが生々しく描かれる。 社交場での絶えない笑い声、裏舞台で本音を洩らすように辛辣に語り合う人々、ユダヤ人に対する使用人たちの声など皮肉たっぷりの会話も怖い。 大陸を渡った英雄も、この狂騒に包まれた社交場では一人の人間でしかない。 まず、ファースト・シーンで一気に引き込まれる。冒頭の闇夜、熱狂的に騒ぐ民衆がひしめく場面から物語は始まる。 車の衝突音だの、銃の発砲音だの音楽とかマジでうるせえ。 「大いなる幻影」や「十字路の夜」はパンッパンッとリアルな音だったが・・・拳銃の発砲音まで狂騒してやがる。 「大いなる幻影」では静かに泣くように発砲音は小さかった。この映画は、貴族たちの笑い声のように音がデカい。 食事会の場面や、その後のパーティーで起こる騒動、時折現れる人形の不気味さとカオス。 狩りの場面は、とても神秘的で俺が好きな場面の一つだ。貴族たちのスポーツとして、余興として、滅びゆく貴族たちの絶頂が垣間見れる場面でもある。 林にわんさかいるウサギや鳥たちを、木に棒を打ちつける音で林の外へと追い立てていく。まるで祭りの囃子のようにカンカンカンと。 猟銃を持った狩人たちは、獲物が出てくる瞬間をひたすら狙う。 獲物が出た瞬間に一斉射撃。爆音が辺りに響きまくり、次々と獲物は地に倒され堕ちてゆく。本当に撃ち殺しているのだから凄い。 まるで戦争映画みたいだ。 銃声が響く中で情事にふけようとする男女の様子が印象的。  後半のパーティーでの騒動も笑いが止まらない。 浮気をする召使の男女二人、それにブチ切れて拳銃片手に走る森番との追いかけっこ。それを咎められてショボーンと涙まで流して落ち込む姿の可愛さは何なのだろうか。仲直り?する場面は最高に微笑ましい。  で、熊の着ぐるみに入って何してんだよルノワールは(爆)
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-15 16:36:39)
384.  黒い罠 《ネタバレ》 
市民ケーン」なんぞより遥かに面白いしワクワクする。 爆弾が爆発までをワンショットに収めてしまった見事なシークエンス。 ウェルズのバロック様式は大袈裟であり、壮大であり、大胆であり、見事だ。 闇が拡がるようにぶくぶく膨れ上がるウェルズの巨体は、警察組織そのものの“闇”を表現しているのだろうか。 それに挑もうとするチャールトン・ヘストンの小ささ、頼もしさ、危うさ。 服を引き剥がされ、背中を向けて冷たくなった女の惨たらしさ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-15 16:23:55)
385.  世にも怪奇な物語 《ネタバレ》 
未だと「世にも奇妙な物語」と言われそうなタイトルだ。  ロジェ・ヴァディム、ルイ・マル、フェデリコ・フェリーニ・・・変態ばっかじゃねえか(笑) 内容もエロっぽい。  この作品、総合的には★4つの80点。 ただ、個々の作品の評価は以下の通り。  ●黒馬の哭く館:ロジェ・ヴァディム 個人的評価:★★★(ヘンリー・フォンダがいないので不満) フォンダ兄弟を拝むためだけにあるような作品。ヴァディムの嫁自慢。弟がそんな変態野郎にブチ切れたのか「だったら俺にくれ」と姉と近親相姦をしようとする話(大嘘)。 父親のヘンリー・フォンダも揃っていたら★+1になったかも(何じゃそりゃ)  ●影を殺した男:ルイ・マル 個人的評価:★★★(ドロンパのファン向け) アラン・ドロンがドッペルゲンガーに悩まされるだけの話。 黒髪ブロンドのブリジット・バルドーが最高にキレイなのとドロンパファンだけ見ればok。  ●悪魔の首飾り:フェリーニ 個人的評価:★★★★★(大満足) これが大当たり。 三作目。 これもエドガー・アラン・ポーの原作の映画化なのだが、フェリーニは見事に別の作品に作り変えてしまった。  フェリーニでは珍しいホラー映画、そして最高のホラー映画。 フェリーニのこの映画を怖がる目的で見ようとする奴は何も解っていない。 ただ純粋にフェリーニの不気味で繊細な演出を味わうのが醍醐味だろう。  舞台は現代のローマ。  麻薬と酒に溺れたかつての名優。 彼が見た少女は酒や麻薬の幻覚?それとも・・・というお話。  昼は賑やかなローマも、夜になると静まりかえる不気味さ、 誰もいない街でフェラーリを猛スピードでぶっ飛ばす。真夜中に一人って怖いよな。 そんな孤独への恐怖があるからか、主人公の顔の白さがまた不気味だ。 「コイツもとっくに幽霊なんじゃねえか?」ってくらい。  ニーノ・ロータの生気を感じられない不気味な音楽が雰囲気を盛り上げる・・・ラストも衝撃だった。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 07:17:27)(良:1票)
386.  テキサスの五人の仲間 《ネタバレ》 
「スティング」も面白かったけど、度肝を抜いたという意味ではこっちの方が好きだ。 西部劇としては珍しいギャンブルが主題の隠れた傑作。  人間ドラマだけでストーリーを盛り立てたその見事な脚本。  「泥棒貴族」の原案や「ハスラー」の脚本家シドニー・キャロルの見事な筋書き。  カードのテクニックよりも、ポーカーフェイスといったドラマで魅せる映画だ。   ファーストシーン。  ジョン・フォードの「駅馬車」を彷彿とさせるスピード感と集う賭博師たち。   ポーカーをやるためだけに仕事も生活も投げ出してやってくる賭博馬鹿の五人。   その一大ポーカーを観るために集まるギャラリー。  ギャラリーにとっても大イベント。   キャストもヘンリー・フォンダやジェイソン・ロバーズ、チャールス・ビックフォード、ジョアン・ウッドワードといった豪華な顔ぶれ。  とにかく登場人物がどれも魅力的。   ラストの超どんでん返しは「騙された!」の一言。  もう一回騙されたくなる面白さがあるね。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 07:17:12)
387.  スティング 《ネタバレ》 
「テキサスの五人の仲間」が最高のどんでん返しならば、「スティング」は最高の計画通り。 騙される愉しみではなく、騙していく愉しみがスティングの魅力だ。 ユーモアたっぷりの犯罪映画。 ロイ・ヒルは「明日に向って撃て!」の方が好きだが、「スティング」もまた大いに楽しませてくれる傑作! 脚本の完成度で言えば「テキサスの五人の仲間」の方が上だが、純粋な満腹度で言えばやはり後年の「スティング」を俺は選ぶ。今回再見してみて一番印象が変わったのは、ポール・ニューマンの相棒を務めたアイリーン・ブレナンもとびきりの美人てほどじゃないけど場数を踏んだ女傑という雰囲気を前回見た時よりも強く感じた。キャサリン・ロスとはまた違った魅力を再発見できたのが嬉しい。 冒頭の見事な「詐欺」、一瞬のすり替え、ドライな殺し合い・・・動きで魅せる事にこだわったロイ・ヒルの粋な演出。 物語は1930年代のシカゴを舞台に、詐欺や賭博で生活を立てるフッカーの波乱に富んだ生活と復讐の物語。 各章ごとに区切る事でより盛り上がるストーリー展開、初っ端から金を騙しとるフッカーたち、その瞬間から全てのからくりが動き出す伏線のオンパレード。 賭博師・警官・マフィアの三つ巴、殺し屋、詐欺師、ボディーガードの三連装! 警官に殴られてもタダでは金をやらないフッカー。 警官・マフィアとの三つ巴の逃走劇は命のやり取りを楽しんでいるようにしか見えない。正に生きるか死ぬかの大博打。  フッカーを追うスナイダーの執着ぶり。 ここまで来ると「ルパン三世」に出てくる銭形警部のような愛着が湧いてくる。ある意味一番幸せな男だ。 ゴンドーフの詐欺師振りも凄い。相手がヤクザだろうが何だろうが度胸一番、酒は飲んでも飲まれずキッチリ大仕事。古女房ビリーとのコンビが面白い。 さあ今回最大の被害者となるドネガン。いやいやコイツは受けて当然の仕打ちよ。 命を取られた人間が一番の犠牲者なんだから。 なーに財布の50万$やら100万$なんざ軽い軽い(精神的に廃人になるだろうけど)。  ラストの締めも最高のエンディングだった。 「やっぱりそうなったか!待ってました、予想通りの最高の終わり方!」  本作は「騙される」のを期待して見る映画じゃない。 主人公たちがいかに仇を「騙して」金を巻き上げるかを見守る作品なのよ。主人公と仇の温度差をな。 そんな最高の映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 07:17:01)(良:2票)
388.  サーカス(1928) 《ネタバレ》 
サーカス映画の傑作と言うとフェデリコ・フェリーニの「道化師」や「道」、 ボリス・バルネットの「レスラーと道化師」、 マックス・オフュルスの「歴史は女で作られる」、 トッド・ブラウニングの「知られぬ人」「フリークス」、 アルベール・ラモリスの「フィフィ大空をゆく」、 エドワード・バゼルの「マルクス兄弟-珍サーカス-」、 ジョージ・マーシャルの「あきれたサーカス」、 D・W・グャィスの「曲馬団のサリー」、 ジョージ・パルの「ラオ博士の7つの顔」、とあるが、個人的な最高傑作はチャップリンの「サーカス」を挙げたい。 爆走が起こす破壊の連鎖で笑わせてくれるのはキートンやローレル&ハーディだけにあらず。 恐らくチャップリン映画で最も走ったりアクションに挑んだ作品が「サーカス」じゃなかろうか。 警察に追われるのはいつも通りだけど、今回の大目玉はクライマックスの綱渡り! クライマックスまで次々とハプニングを巻き起こす破壊力。撮影裏でもフィルムが現像ミスで4週間分も使えなくなるわ、二人目の妻リタ・グレイとの騒動でヘトヘトになるわ、「どうしてこんな事になってしまったんだ」という、そんな追い詰められたチャップリンの精神が反映されているかのようなシーンである。 これ吹き替え無しだぜ?しかも例の猿軍団は「キートンのカメラマン」にも出演していた連中だ。 キートンの「カメラマン」では強い意思を持って主人公を助け、チャップリンの「サーカス」では無意識に主人公を殺しにかかる。 ライオンの檻に入ってしまう場面はキートンの「恋愛三代記」への回答だろうか。 「君が着ぐるみなら、私は本物のライオンだ」的な。流石に首を折って撮影を続行(キートンの「探偵学入門」)はマネできなかったか。 アレをマネ出来る(する大馬鹿)野郎はジャッキー・チェン(「プロジェクトA」)だけでええわ!異能生存体かおのれらは。 キートンやハロルド・ロイドは体を張って笑いを生み、チャップリンは如何なる苦労も顔に出さずニッコリ笑って見せる。 喜劇王と呼ばれた男達に共通する事は“自分で動かなければ何も始まらない”という事だ。  特典映像で携帯?に話しかける女性は何者なのだろうか。謎だ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 07:15:59)(良:1票)
389.  弥太郎笠(1960) 《ネタバレ》 
1952年の「弥太郎笠 前後篇」の3時間を90分にまとめあげてしまうマキノ雅弘の妙技。 これぞ股旅時代劇「弥太郎笠」の決定版。   いや、淀川長治さんが絶賛していた稲垣浩の「弥太郎笠(彌太郎笠)」がいつ発掘される解らない。 なので、現時点での決定版という事で。  この「弥太郎笠」こそマキノ映画の文字通り“祭り”のエネルギーが脈打つ代名詞的な存在だろう。  本当は旗本の御曹司である弥太郎は、武士社会に嫌気がさして股旅の渡世人としての人生を選ぶ。 序盤からテンポ良く惹き込まれるのはいつもの事だが、幻想的な祭りの場面の踊りは御曹司(エリート)としての踊り、歌、剣の腕前を隠し、武士ではなく一人の人間としてお雪と交流する。   かつて世話になった恩人のため、惚れた女のためにヤクザ一家との死闘を選ぶ弥太郎。   全身からエネルギーがほとばしる中村錦之助のパワー、 少しふっくらした感じだが町のおっとりした可愛らしさが美しい丘さとみ、 これを中心としたマキノ流アンサンブルが繰り返され心地良い。  日本の時代劇の面白いところは、殺陣が無くても話の面白さで見入ってしまうところだ。    いや、殺陣もあるからこそ更に面白い。  1957年の「浪人街」じゃ本当に火花散らす鍔迫り合いがあったし、本作も負けてねえぜ。  「血煙(決闘)高田馬場」も、 「次郎長三国志」も何処か狂気地味たフルスピードの斬り合いが強烈だった。 この映画も凄い凄い。  お腹一杯になる傑作です。
[DVD(邦画)] 9点(2015-01-14 07:15:41)
390.  フォレスト・ガンプ/一期一会 《ネタバレ》 
「暗黒街の帝王レッグス・ダイヤモンド」よりも高密度で、「ヨーク軍曹」よりも出来すぎだと思うくらいの“実話”。 余りに出来すぎてて完全にギャグ映画の領域です。 人によってはその出来すぎ振りが嫌いな人もいると思う(俺だってエルビス・プレスリーの話は流石にギャグかよと)。 でも、俺は映画として本当に面白かったし、楽しかった。感傷に浸る間もなく次から次へとフォレストの半生は進んでいく。 待って、待って、待って。走って、走って、走って・・・。 政治家の背中よりも曲がった骨はいつしか逞しく伸び、「國民の創生」のように黒人への憎しみを募らせた祖父と違って、子孫のフォレストは黒人も白人も関係なく平等に、馬鹿正直に友情を結んでいった。 ババことベンジャミン・ブルーは良い奴だった。“ババ=ガンプ”は不沈だぜ。でもどんだけエビ好きなんだよ。 それに我等がダン・テイラー小隊長。 先祖代々名誉の戦死、でも本当は戦後に“生きる勇気が無かった”男だったのかも知れない。 ベトナム戦争のエピソードは好きなシーンの一つだ。いままで「M★A★S★H」の様な何処かふざけた雰囲気があると思ったら、雨のシーンの美しさ、そして音楽が鳴り止み銃声と悲鳴がこだまする戦場の恐怖。フォレストは友のために走るが、そこで運命はまたも彼に幸運と別れを授ける。 そこから時間をかけて“死ぬ勇気”から“生きる勇気”に目覚めていくテイラー。フォレストはテイラーの目の前で“足”ではなく“手”によって卓球をして見せた。「まだ腕があるじゃないですか小隊長」というフォレストなりの不器用な気持ちを感じ取っていたのかも知れない。やっぱり部下想いな男だったり、吹っ切れた後の小隊長はとにかくカッコ良かった。 何をやってもフォレストは総て上手くいく。だが、本当に心から欲しかったのはジェニーの愛。いつの間にか増えるポストのように、ジェニーに対する想いはどんどん大きくなっていった。 肝心のジェニーは、想う所があっても中々フォレストと一緒になろうとしない、いや出来なかったのかも知れない。ヒッピー、薬物、情婦・・・再会した彼女がフォレストと“歌った”のではなく“踊った”事が後を引く。彼女を待ち続ける変わりに、フォレストは走る事で彼女のいない溝を埋めようとしたのだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 07:15:32)
391.  ファウスト(1926)
ゲーテの戯曲を元にしたムルナウの傑作。 ムルナウの幻想的な演出はモチロン、冷徹なまでに重厚な空気で包まれる。  天上の天使と悪魔に運命を翻弄される人間たち。 疫病の苦しみから逃れるため、悪魔を召喚してしまうゲーテ。 メフィストフェレスはどんな願いも叶えてしまう。制約をしいて。 疫病と救世主、年老いたゲーテは己の無力さに絶望する。 若返り漲るような力を得ようと、結局は悪魔の力によって再び絶望に暮れてしまう。 余りに救いようが無い。  一時の幸せも、瞬く間に惨たらしく散っていく。  恐ろしいまでに冷徹な描写。  だが、ラストのあの美しさは何なのだろうか。あんな終わり方をされたら、黙って泣くしかないじゃないか。 何て最高に卑怯で泣ける泣けるクライマックスなんだ・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 07:15:02)(良:1票)
392.  ウンベルトD
あの犬はズルい。黒澤明の「生きる」と何となく似ている作品だけど、俺はコッチの方が好きかな。ヴィットリオ・デ・シーカ最高傑作の一つ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 07:08:02)
393.  十字路の夜 《ネタバレ》 
フィルム・ノワールは「マルタの鷹」以前に誕生していた。 フリッツ・ラングの「M」の影響をダイレクトに受けたヨーロッパ。そのフランスのジャン・ルノワールは「十字路の夜」を完成させた。 冒頭の“遺体発見”のシーンの見事さ、煙草の煙が構築する退廃的な空間、男を破滅に導く女(ファム・ファタール)の登場・・・加えてルノワール特有の“水の音”が、作品を更に幻想的なものにしている。これをフィルム・ノワールと言わないでどうする。 終盤で胸元の傷の痕を見せるシーンがエロチックだこと。刑事の後ろで着替える時の太もものエロさ。やはりルノワールに“巨匠”だなんて面倒なレッテルはいらない。偉大なる“むっつりスケベ”だ(尊敬ゼロだろ俺)。  暗闇から突然発砲して来る狙撃手、終盤の畳み掛けるような事件、銃撃戦、車上と夜景のカメラワークの迫力! 助監督のジャック・ベッケル、既に「現金に体を張れ」で見せた暗闇の迫力をとことん見せてくれる。 派手な銃声はいらない。淡々とした音の方が、夜の静寂を切り裂くのに相応しい。  最後の最後まで息を抜けない演出だ。“狙撃者”のやり取り、ラストシーンの別れ際・・・見事、見事である。傑作だ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 07:07:44)(良:1票)
394.  復讐は俺に任せろ
「L.A.コンフィデンシャル」が赤子に思えるほどの傑作中の傑作。  グレン・フォードが魅せるギャングvs警察のフィルム・ノワール。  「ゴッドファーザー」や「L.A.コンフィデンシャル」に多大な影響を与えたのはホークス、黒澤明、そしてフリッツ・ラング。  前半の丁寧なドラマ展開から一定に保たれた緊張の糸。  その糸が弾け飛ぶ時、主人公の壮絶な復讐劇は最高潮のままクライマックスを迎える。  “自殺”の場面から始まるファースト・シーンの強烈な導入、 最初30分はグレン・フォード演じる刑事が地道な聞き込み調査。 平和な家庭での日常、その裏では凶悪な事件を追う刑事だ。だが、まだ罪人を“徹底的に”潰す狂気は無い。優しすぎる一面を持っている。  用心棒をブチのめす場面も何処か優しすぎる甘さを感じさせる。その甘さが後半の狂気をより引き立てるワケでもあるのだが。  ま、アレですよ。とにかくバーの雰囲気とか、色々素晴らしい。 主人公の家庭に響く無言電話、ジリジリと迫る恐怖、積み木が崩れ去る暗示とかとにかく良い。  突然の死が重なる時、車が吹き飛ばされる時、警察バッヂを捨てる時、直接的な描写はなくとも沸騰したコーヒーを浴びせかけるシーンの恐怖、一生消えない火傷を負っても死ぬに死ねない女、外見は無傷でも爆発の衝撃で・・・男は復讐の鬼と化す! ラスト1時間の緊張感に満ちた展開。  主人公が探る一味も顔を出してくる。 リー・マーヴィンの悪党ぶりも良いが、何と言ってもグロリア・グレアムの存在!! こんな魅力的でエロティックで“女”を見せ付けてくれるファム・ファタールは中々お目にかかれない。別にヌードになるワケじゃない、脱がなくともそのセリフ、しぐさで勃起するくらい最高の悪女だ。 特に終盤の彼女は最高だったぜ。 今回のラングは女に容赦なさすぎる。 案外、少女の連続殺人を描いた「M」よりえげつないかも。  モチロン、我等がグレンも最高潮だ。 バーで一味と主人公が邂逅し“ゾッ”とする瞬間。  尋問される男は気の毒だ。 コンド●ムなんか机の上に置いておくから(関係ねえだろ)・・・。  首を締め上げてでも吐かせてやる!  終盤の銃撃戦までの流れも凄かった。 文句なしの傑作です。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-14 07:07:19)(良:1票)
395.  ロシュフォールの恋人たち
鮮やかなカラーリングを身に纏った女性が二人、カトリーヌ・ドヌーヴとフランソワーズ・ドルレアック。 ともにフランス映画を代表する魅力的な女性たちだ。  可愛らしげなドヌーヴに対し、ドルレアックは普通の顔立ちだが彼女の魅力は仕草や台詞回しといった色気。  そんな魅力的な女性二人が広場で踊ったりデュエットをしたり、とても心地良い2時間だった。  ダンスにはジーン・ケリーのようなキレはあまり無いが、その分独特な色彩とお洒落な感覚で我々の目を愉しませてくれる。  ありふれた日常をまるで“御伽噺”のように映画の中に閉じ込めた映画です。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-13 03:28:48)
396.  続・夕陽のガンマン/地獄の決斗 《ネタバレ》 
本作「The Good, the Bad and the Ugly 」の主題は善玉、悪玉、卑劣漢。  え?  善玉?  そんな奴この映画にいねーよ。とてもセンスのあるジョークだわ。   「続・夕陽のガンマン/地獄の決斗」の名でも知られる本作。  エンニオ・モリコーネの最高の音楽、前半のスピーディーな展開は前作よりも好きだ。  最初10分、会話がほとんど無いのに見るものを惹きつける面白さ。  主人公ブロンディ(イーストウッド)が捕まる場面だって仲間通しのイザコザという感じで違和感はあまり無い。  前作で味方だったエンジェルが敵として立ちはだかるのも面白い。  相変わらず同じような格好のイーストウッドもまた。  トゥーコ(イーライ・ウォラック)が銃をバラしたり組んだりして試し撃ちをするシーンはマニアをくすぐる面白い場面。  南北戦争時代の銃器のこだわり振り。この時代考証は完璧だね。  とにかくイーライ・ウォラックの悪どいキャラクターが最高だった。  見た目は太めのオッサン、中身がガッチリ凄腕のガンマン。  悪党だと思ったら意外と人に優しかったりする。  最初は金が目的だったが、次第に情が芽生える場面は熱い。  そしてまた逃げられ「バカヤロ~!」素晴らしい腐れ縁。   ただ,中盤の長回しのシーンが長いこと長いこと。   トゥーコが駅馬車を発見しなかったら俺も寝るとこだった(「アラビアのロレンス」もそれで寝そうになった)。  でも、そこからのドラマ展開が面白い。  ブロンディは情報を知っているから殺されない、トゥーコは金が欲しいから殺せない。  二人が南軍や北軍に潜り込んでアレコレ騒ぎを起こす場面は面白かった。  脱線だけど良い脱線。  敵となったり味方となったりするデコボココンビなブロンディとトゥーコのやり取りは見ていて楽しい。   最高だったのが風呂場での銃撃。 「喋ってないで撃たなきゃ」。聞いてるか007の馬鹿な殺し屋ども(それが007の魅力です)。 ラストの決闘がこれまた長い長いなっげー。 モリコーネの音楽が最高すぎて笑ってしまったのは俺だけじゃ無いだろう?・・・多分。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-13 03:26:18)(良:1票)
397.  ビリディアナ 《ネタバレ》 
カトリックの最高峰ヴァチカンを「冒涜的だ!!!」とブチ切れさせた問題作。 ヴァチカンすら怒らせるブニュエルの変態振りに敬意すら覚える。  ヒロインは受難に次ぐ受難でどんどん堕落していく。 「誠意をもって接すれば、相手も必ず誠意をもって返してくれる」なんて幻想は微塵も無い。  ネグリジェ姿のビリディアナの艶かしさ。 「皆殺しの天使」や「砂漠のシモン」でも美しかったシルヴィア・ピナルが最高。 さらに亡き妻を偲ぶドン・ハイメがコルセットやハイヒールを付けている。シュールすぎる。どんだけだよ。ここまで来ると完全にイッてます。 無駄に美脚だし。 黒ストッキングを脱ぐビリディアナよりもキレイかも知れん。  ハイメがビリディアナを襲おうとする。 ウエディングドレス?に着替えさせ、接吻をし、胸のボタンを外して豊満なバストを視姦。 だが、もう一歩踏み出せないドン・ハイメ。夢心地でさまよう彼女の生脚を凝視しもしたが、中々彼女を本格的には襲わない。視姦だけで愉しんでいるのか、それとも亡き妻を偲びすぎて心も乙女になってしまったのか。 そんな現場を少女に見られた日にゃ・・・縄跳び少女は見た! それに対するビリディアナの最高に洒落た“ジョーク”で大爆笑。 変態武装で来るドン・ハイメ、しかし肝心のビリディアナは夢遊病&“灰”で返答(意訳:灰になって死ね)。 ドン・ハイメは絶望して、笑いながら遺書をしたため縄跳びでアボーン。 縄跳びは少女に与えていたもの。ハイメは縄跳びで飛ぶ少女を想い描きながら死んだのだろう。どんだけ脚フェチなんだよアンタ・・・。 あの終わり方は酷すぎる(褒めてる)。  そして欲望に任せて乱痴気騒ぎの「晩餐」をする乞食の姿の凄まじさ。 ソファ越しに交わろうとする様子も凄い。  「アンダルシアの犬」以来のシュールさ、そして「皆殺しの天使」で頂点を極めた意味不明さ加減が最悪に挑発的で最高に心地良い傑作。 中毒性がヤバイ。マジで危ない。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-13 03:25:50)(良:1票)
398.  大人は判ってくれない 《ネタバレ》 
俺は「アメリカの夜」の方が好きだが、彼の最高傑作はやはりこの作品になるのだろう。 トリュフォーの自伝的内容のこの映画は、「野性の少年」で描かれた内面的な自伝要素とはかなり違う。生々しい、外に向かって放たれる痛々しさ。 彼の師であるアンドレ・バザンに捧げられた言葉と共に映画は始まる。教室でテストを受ける生徒たち。彼等は教師の目を盗んでポスターを回し、不運にも先生に見つかった生徒は人身御供として差し出される。 アントワーヌは日頃からチョークを投げつける教師に目を付けられ問題児扱いされ、家に帰っても母親に「成績が悪いのも当然ね」などと平然と言い放つ厳しさ、片身の狭さ。父親と同級生が心の支えになっていたが、そんな父も母親の顔色を伺い、母も共働きで不仲。アントワーヌも無理に家事を手伝わされ宿題も手につかないという有様。 寝る場所も裏口という寒い場所。アントワーヌはタバコやワインまで飲んでしまう不良小学生となっていく。教師が彼を目の敵にすればするほど、アントワーヌの心は益々荒んでいく。円筒形のアトラクションで遊ぶアントワーヌ。遠心力で動きがままならなく様子は、人々に振り回され閉所に押し込められていくアントワーヌのその後を暗示するよう。 アントワーヌが見てしまった母の情事。アントワーヌの怒りと失望に満ちた表情。アントワーヌは父を気遣いその事を中々言い出せない。彼にとっても信じがたい、嘘であってくれという現実。 勢いで飛び出す家、路上で人に見つからぬように牛乳を盗んで飲む、証拠隠滅まで図る。それでも一応心配して彼を抱きしめ母親、体を洗ってくれる愛情の欠片。 ヒビの入った家族をどうにか繋ぎ止める映画。疲れた父親すらハッスル(嫁の胸を乳揉み)させるエネルギー、母の言葉、本との出合い。せっかくやる気になってがむしゃらに頑張っても報われない虚しさ。だからといって丸写しで停学とはいくら何でも酷い。 一度付いた嘘は延々と足を引っ張る鎖になっていく。 売れなかったとはいえ盗み出したタイプライターを一人で戻しにいく健気さ。だが子供でも罪は罪、親友すら赤の他人という素振り、親にすら半ば見捨てられ彼の心は死んでいく。子も子なら親も親。夜の市街を見つめる眼差し。 脱走し走って走って走っても見えない出口。ようやく辿り付いた浜辺で、彼は何を思うのだろうか。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-13 03:25:09)
399.  海底王キートン 《ネタバレ》 
いやーこんなアイデア満載で面白いのがまだあったとは。  発想に次ぐ発想とはこの事。  最初は少し淡々としているが、徐々に次から次へと事件が起こる面白さ。  “煙草”で出会う男女二人(頭に落ちてたらシャレになんねえ)、  缶が開かねえ? ナイフ、包丁、ドリル、あーあー貴重な食料が。  しかし物がどんどんブッ壊れる話だな。 食料→服→トランプ→船 キートンよトランプに何の恨みがwww  窓から覗く“男”が怖えー。  蝋燭?ダイナマイト!?  チャップリンの「移民」も揺れればこっちも揺れに揺れてイスをドボーン。  船内生活も慣れてくると快適だ。 ボイラー室?がベッドで缶きりも料理もピ・タ・ゴ・ラ・ス・イ・ッ・チ♪  あちゃー船が座礁だー。 おーっと、都合よく置いてある潜水服!何とご丁寧に取り扱い説明書まで!!行き届いてるわ~。  セットがいつも以上に豪華でワロタ。流石キートン。なんたってさらに“船”も“火砲”も“ロケット”まで出てくるんだから。  潜水服でタバコ吸うなよ(笑) 今回どんだけアホな回なんだよwww  当時ガチで水に潜った偉大なる先駆者の一人キートン。当時は超危険だったから、中に潜るだけで4週間かけたんだと。最高の役者馬鹿だぜ。  「危険です」 誰も行かねえよ!  キートン「あー修理がキツイ。猫の手も借りたいなー」  ロブスター「おい小僧!」  そしてカジキ、地元民とのスキンシップ(海戦)もルンルン。  船上での戦いが凄えぜ!馬鹿のバーゲンセールだ!!  行くぞ戦艦キートン!  潜水服=イカダ。  それにしたって海から現れるキートンのカッコ良さは以上。 ヒロインを助けるときも無駄に。あらやだ超カッコイイ・・・。 肺活量パネエー。  水抜きは切腹が一番。  しかし女というものはどうしてこう濡れると色っぽく(ry  最後の最後まで発想の勝利に次ぐ発想の連続、ツッコミが追いつかねえ。  お腹いっぱいで大満足です。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-13 03:20:46)
400.  残菊物語(1939) 《ネタバレ》 
大根役者が親から自立し、歳月をかけて一流の役者に成長するという話。 主人公の菊之助は大役者の親の重圧、自分に才能が無いという板挟みの苦しみ。それを支える奉公女お徳。多少ズケズケとした物言いだが、嘘を付かずハッキリ言っては思いやるその優しさ。言わないことの厳しさよりも、いっそ言い放つ優しさの方が欲しい。それが人間の本音。その辺の描き方が良い。 まずファーストシーン。 歌舞伎のやぐらみたいな部分をぐるりと回し、舞台は歌舞伎の演目。 一場面が終わり、演目を終えた役者たちがゾロゾロ楽屋に入り愚痴をこぼす。 このショットと溝口の独特の間が、退屈を感じさせず観客を引き込む。でも祭りの席での会話は流石に字幕が無いと聞き取れん(最初字幕→次見る時は字幕なしで楽しめよ)。 そんな夏の熱い夜、スイカを食べ一時の至福を噛み締める二人の男女。赤ん坊に蚊帳をかける様子、スイカを斬る描写、口止めされた子供から駄賃で情報を聞き出す絵。 親はダメと言っても若い二人は止められない。太鼓もドコドコそんな二人を後押し。 物語は菊之助が軸であり、男心をじっくり描く、段々と女心も絡ませてくる。 親の心子知らず、子の心親知らず。菊之助のセリフが“溝口”の心を代弁する。 そんな菊之助を慕うお徳。 深まった中で“あなた”と優しく言う。二人の距離が縮まった事を、このたった一言で印象付ける。 しかし菊之助は中々芽が出ない。 5年の旅芸人生活で心が荒み始める菊之助。お徳の献身的な支えが、菊之助にかすかな良心と粘り強さを残す。苦よりも楽、失敗を恐れて現状に甘える菊之助。 そんな菊之助を、お徳は一計を案じてまで元の光の中に戻そうと努力する。こんなええ女何処にもおらんがな。人間一人じゃ生きられない、人の縁が人を活かす。 後に引けなくなった菊之助の覚悟と五年間の苦労が、大舞台の上で爆発する。 そんな姿を見て嬉しそうな表情と何処か哀しみを覗かせる顔をする。自分の運命を悟った上で。菊之助の成長を喜ぶ仲間たち、子の心を理解してくれた父親、だが菊之助の心は満たされない。動き出す列車、川を流れる船が運ぶのは菊之助の栄華か死にゆく者の魂か。菊之助の無言の苦しみがカメラワークだけで伝わって来る。 二人が黄泉の向こう、あるいわ生まれ変わって幸せに暮らせる事を心から願うばかりだ。
[DVD(邦画)] 9点(2015-01-13 03:19:54)(良:1票)
000.00%
100.00%
200.00%
300.00%
400.00%
500.00%
600.00%
700.00%
829828.46%
971868.58%
10312.96%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS