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すかあふえいすさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 1047
性別 男性
年齢 30歳
自己紹介 とにかくアクションものが一番

感想はその時の気分で一行~何十行もダラダラと書いてしまいます

備忘録としての利用なのでどんなに嫌いな作品でも8点以下にはしません
10点…大傑作・特に好き
9点…好き・傑作
8点…あまり好きじゃないものの言いたいことがあるので書く

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421.  皆殺しの天使 《ネタバレ》 
「皆殺しの天使」・・・いやー聞いただけで「それ何てヴァイオレンスアクション?」と想像してしまうねー。  ま実質タイトル詐欺です。  中身があるんだか無いんだかよく解らない、何を考えているのか、いや何も考えていないかも知れないブニュエルらしい映画。  音、悪夢、手、そしてセクハラ・・・ブニュエルと言えばこの内3つは確実に映画の何処かに入れてくる(セクハラはほぼ100%)。   ストーリーはパーティーに招かれた様々な富豪たちを密室に閉じ込めてしまうというもの。  密室というか、パーティーに招いておいて給仕が大量に辞めたり、何故か居座り続ける富豪たち。  何処までも変な作品だ。  解ったから早く出ろよ・・・。   ウィリアム・ゴールディングの「蝿の王」って本があるな。  あれは逃げ場のない孤島で人々が殺し合うが、こっちは別に鉄格子で閉じ込められるとかそんな話じゃない。  出ようと思えばいつでも出られた。  だが「どうしてここに居続けるのか解らない」という映画だ。  「じゃあ出ればいいじゃん」と言っても誰も出て行かない。  そう、出るのは簡単だ。  だが誰も出ようとしない。  死体遺棄がバレるから?  それとも下らない意地の張り合い(サウナの我慢大会みたいな)?  まるでボンドを追い詰めておいていつでも殺せるのに、何故か引き金を引けない悪党みたいな連中ばっかり。  かといってボンドみたいに秘密兵器で「テレッテレー♪」してくれる人間も出てこない。  延々と屋敷に篭って我慢大会だ。  屋敷の外で見守る連中も何故か誰も入ろうとしない。  なにこの暗黙のルール。  外から入ったら時限爆弾でも爆発すんのか?どうなんだよ?さっぱり解らん。  水が欲しい?  じゃあ壁を崩して水道から飲もう!  腹が減った?  それなら山羊を食いつくそう!  死体が出た?  悪夢にうなされる?  バカッぷるが乳繰り合ってる?   い い か ら 外 に 出 ろ (怒)  いい加減にしろよてめえら!  何の我慢大会だよ!?  つうかいつになったら「皆殺し」が始まんだー!!(期待するところがおかしい)  てっきり食べた食事に毒があって一人だけ生き残る・・・ソイツが“天使”だった!・・・的なオチを期待した俺が間違いだった ・・・だが何故か飽きない。 解ったから早く出ろよ・・・
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-10 19:30:43)(良:1票)
422.  夕陽のガンマン 《ネタバレ》 
マカロニウエスタンが邪道だなんて知った風な事をほざく奴らは、「真昼の決闘」のように西部劇の常識を溝に捨て、プロ意識の欠如した作品こそ真の邪道だという事に気付いていない。  西部劇は、「大列車強盗」の頃から銃をブッ放して当たり前の筈だ。  しみったれた詩情や、湿っぽい西部劇などツマランだけだ。  レオーネは最高だよ。 ホークス、デミル、アルドリッチのように「グダグダ言ってねえで撃って撃って撃ちまくりやがれ」という精神だから良い。 むしろ凄惨な殺し合いの合間合間で光る一瞬のドラマの方が俺は惹かれる。  「ウエスタン」は自分にはちょいと退屈だったが、この頃のレオーネはただただカッコ良い。  「続・夕陽のガンマン」も間延びした感じでちと退屈なのだが「喋ってないで撃てよ」という神セリフを聞く度に全てを許してしまう。  大体、帽子を撃ち合うだけであそこまで楽しませてくれるんだから最高だ。 リー・ヴァ・ンクリーフが鞄をガパッと開いて大量の銃器を観客に印象付ける場面も良い。 大量の仏をリアカーに積み上げて「金がたんまり入るぜ」ってシュールな絵面が素晴らしい。この死生観のあやふやな感じが良い。 死んで終わりではなく、死後も“役”が与えられるのが良いじゃないですか。 銃声がデけえ?何言ってやがる、「シェーン」なんか爆撃音じゃねえか!!  モリコーネの曲は何度聞いても気持ちが良いね。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-10 19:30:33)(良:1票)
423.  シンドラーのリスト 《ネタバレ》 
自身もユダヤ系アメリカ人であるスピルバーグは、約10年の構想を経てこの大作を撮りあげたという。 スピルバーグの映画で最も長く、最も見応えのある映画の一つだ。 ヤヌス・カミンスキーによる撮影は、カラーのパートにおいても“黒”のコントラストを失わない。 それは市川崑と宮川一夫の「おとうと」から続く“銀残し”にも精通する彼の実力が存分に発揮されているからだ。 冒頭と終盤を除いて白黒で撮られた映像。 まるでアラン・レネの「夜と霧」のようにドキュメンタリータッチでユダヤ人の悲劇を描く時もあれば、 バッハ(劇中の“モーツァルト”は間違い)の「イギリス組曲第二番のプレリュード」が虐殺と共に奏でられる胸糞の悪さと芸術的な興奮すら感じさせる“憎たらしい”場面もある。 バッハ好き発狂間違いなし。 序盤の「暗い日曜日」だって陰鬱さは無い。 朝セ●クス後のアーモン・ゲートのクソ野郎が事後処理とばかりに狙撃するシーンも最高に胸糞が悪い&悔しいけどそそられる。これほど美人のおっぱい見て素直に喜べない映画も無いよ。 居住区と元住居の対比、ありとあらゆる場所に隠す財産・人、それすら見つけ嬲り者にするナチスの黒い影。 不気味な鉄ヘルメットの行進は、虐殺を愉しむように、家畜を殺すように引き金を引くのだ。人を治すためでなく殺すために使う聴診器、閃光が語る虐殺・・・。 白黒の画面の中を駆け抜ける赤い服の少女。観客とシンドラーだけが、あの少女に気付く。 そんなドイツ兵も“ロシア戦線”は怖いらしい。冬将軍恐るべし。 列車のシーンは見る度に絶えず絶望感を拭えない。“手違い”でアウシュビッツに送られるシーンの恐怖といったら。 同胞の死体を火葬しなければならない苦しみは彼らにしか解らない。  蝋燭に火を灯す場面からはじまるこの映画は、次々とその灯火が消えていく。その灯火を拾い集め、最後まで絶やさなかったのがオスカー・シンドラーという男だった。 彼は安い賃金で働くユダヤ人を“労働力”として社員集めをし工場に迎え入れる。 飼い犬を可愛がるように接していたが、面倒見が良すぎるシンドラー社長はやがて同じ“仕事人”として、一人の人間として惚れ込んでしまう。自分の総てを犠牲にしてでも“仲間”たちを守りたいと思うようになる。仲間の名前は一時一句総て覚えている。 「私はドイツ人だ。それがどうした?」
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-10 19:30:24)(良:1票)
424.  軍旗はためく下に 《ネタバレ》 
文句なしに深作欣二の最高傑作。 ギターの重低音、白黒とカラーが交差する映像。 軍旗の中に埋められた真実とは何か。 戦後数十年の時が流れ、未亡人となった妻は未だに夫が“殺された”本当の理由を知らない。夫の罪が誠だという証拠も何処にもない。 「無罪を立証する積極的証拠なし」として頑なに真相を隠そうとする国、だが妻は諦めず四人の“生き証人”たちに辿り着く。  戦闘ではなく骨太のドラマに主眼を置いた作りが良い。 新藤兼人はつくづく監督よりも脚本を書いている時の方が圧倒的に面白いという事を実感。  いくら指揮を下げないためとはいえ、まだ戦える兵士をブッた斬る狂い振り。どのみち、行き着く先は三途の川さ。 「死ぬ時は一緒だ!」の悲痛な叫び、彼らの血も訴えも海の藻屑と消されていく非情。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-10 19:29:04)(良:1票)
425.  エンジェル・アット・マイ・テーブル 《ネタバレ》 
「ピアノ・レッスン」が海のイメージからはじまるように、この作品もまた海のイメージを持つ。 だが、「エンジェル・アット・マイ・テーブル」の冒頭は緑の芝の中を貫く1本の道から始まる。 自然豊かな自然、動物達の声。 「ブライト・スター」ほどじゃないが猫も出てきます。 幼いとはいえ、彼女も立派な女の子。 瑞々しい心理描写には息を呑む。 列車は彼女の人生が旅そのものでもある事を示す。 ジャネットの少女時代から学生、大人の女性へと徐々に成長していく物語。 明るい子も入れば仏頂面の子供もいる。 ジャネットも成長すればするほどどんどん垢抜け、美しい女性へと成長していく。たまに幼少時の面影が出たり消えたり。 先生が教卓で話している時に一瞬映った“剣”は何を象徴しているのだろうか。 成長した少女達の青春、タンゴで踊り狂いたくなるほどエネルギーに満ちる姿。 穏やかな日々、突然の死、涙、初潮、過去との決別・・・。 再び画面に映る列車は、彼女を次の場所へと運んでいく。 初恋?とつまみ食い、不気味な森、ショックで自殺未遂を図る衝撃。 だからっていきなり精神病院はもっと悪化しそうだけどどうなの? いい加減な説明を鵜呑みにしてしまうのだから、相当ショックが大きかったのだろう。 虫歯を放っておいたら全滅、ベッドに拘束、200回目の電気イス、ロボトミー・・・よく無事に帰ってこれたなジャネット。延々と続くかのような苦しみと恐怖を、観客も体験する。 自分を救ったのが、思いを綴った小説だったとは。 余りに精神的に繊細で脆かった彼女も、様々な経験を経て自分を変えていく。良い意味で“わがまま”な彼女は、もう他人の言いなりにはならないし、誰も彼女の想いを止める事はできない。 奪われた8年間を返せと恨むでもなく、彼女は溢れんばかりに想いを込めた小説で自分の心に溜まったあらゆる物を吐き出すのだ。 久しぶりに外に出た彼女は、家族と再会し、やがて誰にも縛られる事の無い海のある開放的な町を目指す。 故郷にも海が拡がっていたが、もっと広い広い場所へだ。 美しき母のような海原は、ジャネットが恋に落ちやがて母親になる事を暗示しているかのようだ。 「ピアノ・レッスン」のエイダもまた一児の母だった。 再び故郷に戻る彼女。その表情には、もう精神病院に送られてしまうような心の弱さを感じない。 一人の強い女性としての彼女がそこにはいる。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-10 19:28:57)
426.  ビッグ・フィッシュ 《ネタバレ》 
「大ボラ吹き」の意味合いを持つ「ビッグ・フィッシュ」。 この映画は奇想天外な物語と現実が交差する“嘘の様な本当の話”みたいな流れが好きだし、魚とか猫とか動物もいっぱい出てきて楽しい。 謎に満ちたドアを次から次へと明けまくり、運命を切り拓くような映画だ。 幻想的な回想や現代の時間の色合いやトーンの違いが、父の語る“夢”を強調する。 そりゃあ1000回も自分が脇役の話されたら誰だって嫌になるわい。 指輪で池の主を釣り、出世魚のようにどんどん成功を掴んでいった男の話。 父「俺の指輪を返せ!(怒)」 魚「その指輪を俺に喰らわせたのはテメえだろうが!!(憤慨)」 ダイナミック出産、運命を知る眼帯魔女。 自分の運命を素直に受け入れる潔さ。 プッチ神父「覚悟は幸福(ry」 手を触っただけでお腹の中の子が男の子か女の子か解る医者とかスゲえな。 謎の急成長、スポーツ、芝刈りだってスポーツだ、巨人との友情、幻の町でのニート生活、本当の父は牛乳屋?、サーカスでの出会いと「ザ・ワールド」&「メイドインヘブン」。 友人を救うべく愛してきた狼に銃を向ける道化師。見た目は道化でも、心の中は涙を流して躊躇を見せる暖かさ。 バートンのこういう演出が大好きだ。 狼は一匹狼じゃ生きられない。自分を受け入れてくれる存在が必要な、寂しがりやだったのさ。 フィアンセは奪うためにある(真顔)。 「運命で彼女と結婚する事になっているからっ!というか先にサーカスで出会ったの俺だしー、おまえ消えてー!」 何 た る ジ ャ イ ア ニ ズ ム。 ロマンチックだって? ドンが可哀想すぎて泣いたわ畜生! よりによってトイレでとか(´;ω;`)ブワッ ピエロすぎだろドン・・・。 花嫁を奪ったかと思いきや今度は戦争。 このタイミングはドンの呪いか? だが残念な事に相手は死亡フラグクラッシャーだ。 愛する女のために突撃一番、単騎特攻。 シャム双生児の女優の美声、暗視スコープで無敵。 サンタ「訴訟も辞さない」 詩人ラズロはニートをやめて強盗に転職。金をやるから実業家に転職してマジの天職に。 “夢”を買収する瞬間がこれほど暖かいのはこの映画くらいか。 何処までが嘘で、何処までが真実かは解らない。 だが、彼が辿った“人の緑”は夢を現実に変える力を持っていたのだろう。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-10 19:28:47)(良:1票)
427.  うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー 《ネタバレ》 
子供の頃は、BSで昔懐かしのアニメを夢中になって見たものだ。 「ガンダム」や「機動警察パトレイバー」の劇場版で徹夜してしまった子供時代。私は子供の頃から再放送を含めて色んなアニメ・ドラマ・映画で育ってきました。多分、そういう今の時代には失われた何かに子供ながら魂を惹かれていたんだと思う。 このアニメも、夏の暑い夜に無我夢中で見たアニメの一つだった。 いえね、最初目に入った時は絵柄で距離を置いてしまったのだ。何かフワフワしているというか。そもそも下着姿でいつもうろつくという概念が子供心に理解できなかった。今はそのフワフワした柔らかい絵柄が好きだったりする。なんか和むと言うかね。あとメガネの存在が最高すぎる。 それでも、やっぱりラムはラフな格好よりも制服着てもらっている時の方が落ち着きつくし好きだ。 色気というものは隠せば隠すほど逆に出る筈(多分) 奇妙奇天烈な押井守のSFワールド。 高橋留美子の「るーみっく」と呼ばれるSFに似たようで、まったく違う不思議な世界観。 主人公のあたるたちはいつの間にか“夢”の中に閉じ込められてしまう。 夢の中は何でもやりたい放題、永遠に続くかのように楽園にいるような生活。夢が終われば心の楽園は消えてなくなってしまう。でも、夢から目覚めなければ学園祭はやれない、明日は来ない、次に進めない。  あたるたちは、自分のため、愛する人のため、そして明日のために夢から抜け出そうとアレコレ奔走する。謎は真相究明に向っているのか、それとも深まっているのか。 意外な依頼人の正体、そして永遠に「胡蝶の夢」が続いてしまうのか、終わりはあるのだろうか。 様々な映画作家や画家たちの世界観を引用して、ゴチャゴチャに混ぜて観客を揺さぶる無限の映像世界。虚構と現実が混ざり行き着く場所は何処なのか。  「うる星やつら」を知る人も、知らない初見の人もワケが解らなくなる前衛的な作品でもある。  だが、映像よりいつものあたるを取り巻く女性や野郎どもの会話を聞いているだけでも楽しくなってしまう。 こんなにも高橋留美子がブチ切れ、こんなにも飯が喰いたくなって2828(あたるとラム)してしまう映画はそうそうないよ。 あたるの何気ない一言が妙に残る。 「あれは夢だったんだよ」・・・まるで今は無き故人と夢の中で出会い、別れてきたように。
[DVD(邦画)] 9点(2015-01-10 19:28:33)
428.  チェンジリング(2008) 《ネタバレ》 
物語は終始特に盛り上がるでもなく淡々と語られていく。 アンジェリーナ・ジョリー演じるクリスティンは時々怒りで叫んだりするが、基本的には劇中の黒のハイコントラストのような重々しい沈黙を選択する事が多い。 それはありのままを見せるドキュメンタリーといった記録がそうであるように、イーストウッドもあくまで実際の事件の再現に務めている。 真の対象は、事件そのものではなく事件によって人生を狂わされた人々の、怒りを抑圧する事を迫られる苦痛だ。 実際に起きた警察の不祥事、事件ごと揉み消されそうになる人間の実在、そして明かされる連続殺人の影・・・次々に真相が解明されていく瞬間の一瞬“ゾッ”とする感じがたまらない。 クリスティンが子供を捜してもらおうと電話する場面。こっちは急いでいるのに「24時間待って下さい」と言われる瞬間の焦り、恐怖、苛立ち。 誰よりも子供の肌に触れてきた母親が記録や記憶によって疑念が確信に変わる瞬間。 アメリカで“割礼”が拡く普及するのは第二次大戦後の1945年。 息子の捜索はやがて警察との全面対決へと変わっていく。 息子を見つけるため、何より母親としての自分や他人を否定した総てのものを許さないために。 クリスティンを助けてくれたキャロルの辛い過去もまた、彼女に戦わせる力を与えただろう。 今まで消極的な部分が多かったクリスティンに闘志が宿る。電気椅子なんざもう怖くない。 また、クリスティンのために粘り続けたブリーグレブ神父、それに警察として己の正義を貫くヤバラ刑事! 警察の腐敗した部分だけでなく、責任を果たそうとする人間など多面的な部分も描かれていて良い。 ゴードンもまた、自分が“くびり殺される”事など考えていない男だった。 警察も何度サンドバックにされようと歪みがない。 「ミスの批判よりも解決した事を評価して欲しい」じゃあ肝心のミスとやらを失くしてみろよファ●キュー。 論点をすり替え続けた警察がそうであったように、この映画は「自分がそうされたらどうしよう」なんて考える奴はほとんどいない。みんな自分が可愛くて、他人に睨まれるのが怖くて何も言えなくなってしまう。クリスティンは、そんな社会から逃げる事をやめた人間の一人だ。 神父は「神の力だ」とクリスティンに語るが、本当は神とか愛する我が子を心の支えにして戦い抜いた人間の奇跡なんです。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-09 17:27:55)(良:1票)
429.  人情紙風船 《ネタバレ》 
山中貞雄は何を成し、何をやり残し戦場に散って行ったのか。  この「人情紙風船」にはそんな山中貞雄の死を感じさせる描写が散らばっている。  生きるか死ぬかの博打の日々を送る新三、  士官先を求めて何度も頭を下げては断られ続ける浪人の又十郎。  それを取り巻く女たち。  何度袋叩きにされようとめげない新三、何度断られようと通い続ける又十郎。  そんな二人の物語が交錯していくドラマの厚み。  二人は「共謀」を図った。  一時でも良い、死んだって良い。どうせ明日は無いんだ。一瞬でもいいから何かを成してから死んでいきたい。  金でも地位や名誉でもない。  意地が彼らに行動を取らせた。  酒屋での宴会は最後の晩餐か。  死んだことにも気づかず逝った男、死んだか生き残ったかも解らない男。  皮肉にも山中貞雄は己の死と向き合ってこの世を去っていった。  だが彼の代わりに、この作品に出演した俳優たちは息の長い活躍を続けた。  まるで亡き監督の魂を受け継いだように・・・。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-09 17:24:38)(良:1票)
430.  GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊 《ネタバレ》 
押井の「パトレイバー2」は大嫌いだが「攻殻機動隊」は別腹大好き。 士郎正宗のエロいイラストじゃなくなった事だけは残念だが、無機質なオーバーテクノロジーの集合体みたいな動きには圧倒される。 人間が「義体」に体を入れ替えていく様子が怖かった。人間何処まで機械化されてしまうのか。 トグサには人間でいて欲しい。 巨大なタチコマみたいな戦車との戦いが凄い。少佐がメスゴリ(ry 少佐もそうだがバトーも無茶しすぎて毎度ジャムッてます。押井流「ジャムおじさん」? 「素子、新しい体(義体)よ!」(嘘)  つうかラストの素子が原作じゃマイケル・ジャクソンもどきだったのがコッチじゃゴスロリ少女ときたもんだ。何でコッチの方が可愛いいんだよっ! いや、市街地の戦闘直後にバトーが素子に「ファサアッ・・・」ってやるシーンのバイザー素子も可愛いと思うんだ(´・ω・`)  戦う女はどうしてこうカッコ良いのだろうか。  所長は人間なのか機械なのかヤクザなのか一番謎だ。  まったく、「ネットは広大だわ(ネットの海は広大だわ)」。
[DVD(邦画)] 9点(2015-01-09 17:24:12)(良:1票)
431.  思ひ出 《ネタバレ》 
サイレント時代のエルンスト・ルビッチ最高傑作を1つ選ぶとするなら、俺はこの作品を選ぶだろう。 ドイツ時代に磨かれたエレガンスな雰囲気とエロティックなやり取り、そしてメロドラマの切なさ・・・。 この映画はルビッチらしい洗練された美しさを味わえる作品の一つだ。  主人公のハインリッヒ王子の成長を美しい“想い出”と共に語る悲しき恋の物語。 乳母に育てられた王子。 彼の理解者であるユットナーは、幼い王子の遊び相手でもあった。  成長した王子は同級生、そして想いを寄せる女性たちに出会う。 そのシーンが本当に素晴らしい場面ばかりでさあ。 例えば、握手を求められるシーンでどんどん弾き出されるユットナーの様子がコミカルに描かれるし、  女性が一生懸命話しているのにソッポを向く王子のやり取りも面白い。 「あたしの膝の上に乗って」とばかりにベッドに誘ったりする彼女の姿をシカトするシーンに笑う。 そこに睨みを利かす守衛とか色んな人間が絡んだりしてさ。 ドアを開けたらその守衛みたいなオッサンが居たりして思わずクスとなってしまった。  王子がパーティーに参加する場面でも、彼女が一気飲みするならこっちもイッキに・・・に飲めないのでチビリチビリと飲んでいく。   王子の幼少時代の場面も良いんですよ。 将軍に向って一斉に「乾杯!」するシーン、一斉に帽子を脱ぐシーン。 ドラムロールと人の脚が重なる演出、幼いハインリッヒ王子が大砲の音にビックリして電車の中に戻るシーンがカワイイ。 ユットナーと結ぶ絆も深い。  青春時代のコメディタッチが、その後に待ち受ける王子の運命、それに向き合う悲しき王子の姿をより際立たせる。 掛け替えの無い友人たちよりも、一国の王の跡取りとして友人たちへの想いを断ち切らねばならない哀しみ。  だが、王としての孤独を癒すのは、一瞬でも彼の心を満たしてくれた想い出なのです。 皆さんも若いうちに良い友達に会える事を祈ります。友人て良いもんですよ、本当。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-09 17:23:08)
432.  ノスタルジア 《ネタバレ》 
これは、タルコフスキーが苦手・タルコフスキー入門に最適な最高の映画だ。 俺もタルコフスキーの映画から一番好きなものを選べと言われれば、何の躊躇もなくこの作品を挙げるだろう。 「ストーカー」とか長い映画はちと退屈してしまったが(それでもスゲエ面白かったけど)、この映画は何時の間にか30分とか1時間経っているような感じで一切退屈しなかった。 タルコフスキー独特の美しき映像世界、幻想的な水面の輝き…いや、水面を照らす光というべきか。 劇中のアンドレイは、この映画を撮った数年後にこの世を去ったタルコフスキー自身の分身らしい。 遺作は「サクリファイス」だが、俺は「ノスタルジア」の方がダイレクトに死の匂いを感じた。 「ノスタルジア」のアンドレイは自分の死期をさとり、奴隷にされると解っていても生まれ故郷に骨を埋めるつもりだった。どうせ死ぬなら、故郷の美しい風景を見ながら死にたい。 彼は助手のエウジュニアという女性を連れ、自殺した作曲家の取材をしにイタリアの地を訪れる。 アンドレイは何故死人に思いを馳せるのか。やはり自分の死期が迫っているからなのか。 ホテルで会話する二人の平和な一時が好きだ。 一瞬何処にいるのかと思うと、部屋の中でイスに腰掛けて談笑する二人の姿が見えてきたり、エウジュニアが階段目掛けてスタートダッシュを決めようとしたら、電気が消えたのにビビッてすっ転んでしまうシーンに和む。何これ可愛い。 だが、先の長くない自分の身を彼女に背負わせるような事は出来なかった。 訪れたイタリアの温泉に二人が入ろうとしなかったのも、仲が深まるのを避けたからだろうか。 彼女の尻の叩き方だって、愛する女性に対するものというよりは教え子や子供に対する感じだった。 やがてアンドレイは一人で旅を続ける。 世界の終わりを待つ狂人ドメニコを救おうとして。いや、アンドレイとドメニコの対峙は二人の男同士による闘いそのものだ。 死期をさとったからこそ前に進もうとするアンドレイ、終わりを信じ込み自分の世界に閉じこもってしまったドメニコの対比。 ドメニコは絶望で自分を燃やし尽くしてしまうが、アンドレイは己の命を賭してドメニコを救おうと彼の“依頼”を成し遂げる。 結局は哀しい結末が待ち受けていたが、我々はアンドレイのように自分の死期と向き合えるだけの魂があるのだろうか。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-09 17:22:43)(良:1票)
433.  ダウン・バイ・ロー 《ネタバレ》 
ジム・ジャームッシュによる愉快な刑務所&ロードムービー。 ジャームッシュの最高傑作はコレだろうねえ。 歌を歌うように淀みのない会話で人と人とが繋がっていく楽しさ。 デコボコだった3人の男たちが、会話や音楽によって「親しい兄弟のような間柄」になっていく映画だ。 こういうセリフが多い映画は、速さが足りない字幕なんぞで愉しみきれない。 戸田奈津子のカスみたいな字幕で楽しめるワケねえだろうがあっ!! 原語だけで愉しむのが一番だ。 まあ、そんな事はどうだっていいんだ。 この映画は、軽快な音楽と共に郊外の自然や市街地を移動撮影で映していく場面から始まる。 男と女が熱く愛を語っていた筈のベッドは冷たくなり、女に愛想を尽かされた男達は家を出て行く。 「あんたの音は聞き飽きたの」とばかりに散乱するレコードの破片、破片、破片。 外の町だってゴミだらけ。 銃を背中に向け「撃つわよ」と弾を込める音をわざわざ聞かせる女、それを「君になら撃たれても良い」とばかりに黙って立ち尽くす男。 男は背中で語る。こういうシーンが大好きです。 白いベッドに横たわる黒い女の裸体がエロい。布団を優しくかける紳士すら捨てられていく。 ジャックとザックは女に捨てられるわ罠に嵌められるわ仕舞いにゃブタ箱。 独房の壁のザラザラした音が耳障り。あの感触を想像するだけで胸が痛くなる。 だが、そのブタ箱で思わぬ出会いをする3人目の男ロベルト。 この男が衝突する2人の間を取り持ち、潤滑油のように友情を深めてしまう。 喧嘩するほど仲が良い。 ジャックとザックの殴り合うような掛け合いだけでも面白いが、そこにロベルトが加わる事でアンサンブルはより楽しくなる。 3人の合唱は独房全体に響き渡り、警官の警棒がフィナーレを締めくくる。最高に楽しい場面だった。 独房の中心でアイ(スクリーム)を叫ぶ(スクリーム)。 ロベルトは壁に“窓”を書いて「ここから出ちまおうぜ」と言ってのける。 本当に出ちまうんだから面白い。 逃亡という名の森林散策。 船で沼地を進む3人ををロングショットで捉えたシーンの幻想的なこと。 ウサギの丸焼きは美味そうだ。 飯喰って仲直り。 道の一軒屋で3人を持て成してくれた奥さんがキレイな人でねえ。 ロベルトもまた恋に出会う。 やがて別れていく3人だが、分かれ道でのやり取りの何と粋な事。 「おまえが左なら俺は右よお」
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-08 05:35:02)(良:1票)
434.  アラバマ物語 《ネタバレ》 
グレゴリー・ペックの演技がとにかく最高。 ジョン・フランケンハイマーの「I Walk the Line」やラオール・ウォルシュの「艦長ホレーショ」「世界を彼の腕」に並ぶベスト・アクト。  個人的には「拳銃王」や「廃墟の群盗」「無頼の群」「白昼の決闘」のようなアウトロー役も好きだが、ペックはやっぱり冷たいようで本当は根が厚い正義漢が一番。 「ローマの休日」みたいな王女のスキャンダルを書いてやろうと思っていたら、何時の間にかその人柄に惚れて助けたくなってしまった・・・そんな感じこそ俺にとってのペックなんだ。  「大いなる西部」のようないかにも正義感の塊というペックは好かない。   この「アラバマ物語」は、ホームドラマとしても、一つの法廷劇としても見れるこの映画。 前半は弁護士の父親と家族の団欒、父親が扱う事件を巡ってのトラブルなどなど、実にアメリカらしい社会背景が詰まっている。 そして子供たちの小さな冒険譚。 内容はてんこ盛りだが、ストーリー自体は淡々と事を運んでいく。  裁判のシーンは少し長め。 事件の真相を探っていく内に、差別や貧困といった問題も絡んでくる。  最後まで戦い抜いた父親だが、待ち受ける顛末は残酷なものだ。  ただ、ラストでちょっとした奇跡が待っている。  心の暖かい人間ドラマです。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-08 05:34:27)(良:1票)
435.  ゆきゆきて、神軍 《ネタバレ》 
凄まじい。恐らく邦画史上最も凄まじい部類に入るドキュメンタリーになるだろう。 過去の旧日本軍内で実際に起きた事件の真相を探っていく流れが本当に凄い。鉄拳飛び交う情報収集、行き着く先に待つ答えがいやはや。 本当に全力で右に進む映画だ。突き抜けすぎて逆に笑いがこみ上げてくるくるくらい馬鹿な“何か”がこの映画にはある。 日本人なりに「戦争とは何か」を考え抜いた一つの答えがこの作品に刻まれているのだろう。この映画は99%奥崎謙三で出来ています(嘘)
[DVD(邦画)] 9点(2015-01-08 05:34:22)
436.  ストレイト・ストーリー 《ネタバレ》 
デヴィッド・リンチは怖い映画が多いけど、こういうほのぼのとした映画も好きなんだよなあ。 村上龍、はまのゆかが組んだ絵本も良かった。 デヴィッド・リンチの真価は、「ツイン・ピークス」に代表されるように予算の限られた制作下で発揮される。 いかに低予算で人を愉しませられるか。リンチはその使い方と心の掴み方が上手い。 この映画は何せ芝刈り機でアイオワ州からウィスコンシン州まで行こうというのどかさだ。 隣通しとはいえ何10Kmも離れている。 これが実話なんだから凄い。 病気で倒れた兄を見舞いに芝刈り機だぜ?弟のアルヴィンじいさんも凄いけど、兄貴もスゲーよ。 冒頭の「ウ゛ッ」といって突き飛ばされたのはアルヴィン? アメリカの広大でのどかな農村風景。 道中で出会う様々な人々。 妊娠した若い女性やシカ事故で嘆く女性、機械に強いおっさんなどなど愉快な出会いばかり。 たまに酒で戦争の記憶を吐露するしんみりした場面も。 坂道を下る瞬間が怖いこと。 それまで兄貴が病で死なないかソッチの方が心配だけどな。 結構呑気だが、死んでも旅を終えようとするアルヴィンの男の意地を見せられる映画でもあるのよ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-08 05:31:51)(良:1票)
437.  メトロポリス 完全復元版(1926)
フリッツ・ラングは「M(エム)」、それにアメリカ時代の「ビッグ・ヒート/復讐は俺に任せろ」や「激怒」「スカーレット・ストリート」いった作品の方が完成度が高いが、今回「メトロポリス」の完全版を見た上で大満足な出来だったのでレビューしたい。 フリッツ・ラングが当時のアメリカの摩天楼に衝撃を受け、妻のテア・フォン・ハルボウと共に熱狂しながら構想した「メトロポリス」。 完全版ではヨシワラにおける人間達の欲望が弾ける様子、フレーダーセンの部下がヨザフォートに迫るサスペンス、アンドロイドマリアのダンスシーンの一部などなど重要な部分が修復されている。修復部分の痛みは激しいが、今まで欠けていた部分が補われた事でより、いや本来の魅力を存分に愉しめるようになったのである。 今日では散逸したフィルムも補完されて「完全版」として楽しむ事が出来るようになったが、それまでの80年を生きてきた人にとってはどれほど長い道のりだったか・・・。 そしてそのフィルムを含めて、今日まで作品を守ってきた人々は、もっともっと評価されなければならない。 ここに感謝の意を評したい。 ありがとう・・・!
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-08 05:22:35)
438.  グランド・ブダペスト・ホテル 《ネタバレ》 
ウェス・アンダーソンの現時点での最高傑作。 戦争、刑務所まで駆け抜けるスリルに満ちたコメディ映画だ。 ウェス・アンダーソンの映画には短編「Bottle Rocket」の頃から銃がよく登場するが、この映画も銃によって終盤は盛り上がる。 回想形式で語られるこの映画は、あるホテルの取材をする男と、その寂れたホテルを買収した男の会話、そして男はいかにしてこのホテルと関わり、買う事を決めたのか。物語は過去へと飛び、事の顛末を面白可笑しく、ちょっぴり切なく語り始める。 風景画のように美しくそびえる「グランド・ブダペスト・ホテル」。従業員としてホテルに配属されたゼロが出会う様々な人々。 とにかくこの映画、グスタヴの頭の回転の速さ、行動の速さで走って走って走りまくる。 グスタヴ支配人が口が超悪い上に84歳の夫人まで絶頂させちゃう紳士。何時の間にか逮捕されるわ絵をパクッちゃうわブタ箱にブチこまれるわ戦争に巻き込まれるわ大脱走するわ銃撃戦に遭遇するわで災難続きだが、人に対する恩はけっして欠かさない。 自分の従業員を侮辱する奴には恐れる事無く怒って守ろうとし、その恩が、人の縁がグスタヴを助けまくってくれる。 それに仕えるゼロも何時の間にか遺産相続の問題や時価数億の絵まで任されるわ雪山を猛スピードで滑るわ殺し屋を突き飛ばすわ恋人とバキューンッするわで色々ヤッちゃってます。一体いつから映画館はラブホ●ルになったんだっ! 絵を取り替えてしまう件は絵の破壊力も合わさって腹筋を持っていかれた。 アガサも自分のケーキで人助けにはなるけどあんな事に使われて複雑な気持ち。 ドミトリー側にしても、まるでオークションの競売でもするかのような雰囲気。金目当てで“家族”になる連中ばっかり。 猫も落ちれば殺し屋も若きカップルも落ちます落ちます。 洗濯かごはギャアアアアッ、修道僧の連係プレー、盗んだバイクで走りだす~、終盤の銃撃戦とサスペンス映画としても面白い。この辺は「生きるべきか死ぬべきか」の流れを感じさせる見事さ。 終盤のサクサク事が運ぶ部分は楽しく見ていたが、彼らの運命は画面が白黒になってまでしんみりと締めくくられる。列車にはじまり、列車によってまた。いくら金があったって、最愛の人が隣にいないなんて寂しいもんなあ。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-08 05:11:25)
439.  イヴの総て 《ネタバレ》 
実在した女優エリザベート・ベルクナーをモデルにリアルなブロード・ウェイの舞台裏、女優たちの熾烈な女の戦いを淡々と描く。  「アクションや時代劇好きには退屈」という評判を聞いていたのだが、そんな事はない、上々の作品だった。 確かに冒頭こそ説明ばかりで退屈になるかと思ったが、イヴの巧妙な手口にドキリとして一気に引き込まれてしまう。  イヴの過去、心を許していく映画関係者、着々と親密になるイヴ・・・だがそれは総てイヴの「仮面」だった。  徐々に本心を表していくイヴ、イヴの様子に疑念と嫉妬を燃やすマーゴ、板挟みになる作家の妻カレン、イヴに思うまま操られるロイドやマックスといった作家たち、新聞記者を通して行われるメディアリテラシー・・・彼女たちは劇中で映画の登場人物だとか、スクリーンや劇場で何かを演じる姿を見せない。  何故なら既に「イヴ」という手の中でそれぞれの役を演じているからだ。  セリフが多いのも「イヴの総て」が舞台劇だという証であり、その中で嘘の電話をして不気味な笑みを浮かべるイヴの姿、イヴの部屋に突然横たわる「来訪者」を我々にだけ見せる映画的な演出がギラギラ光り面白い。  とにかくベティ・デイヴィスとアン・バクスターの騙し合いのようなやり取りが面白くて飽きない。  それに利用される者筈の者が実は利用者だった事が判明する新聞記者ドゥイットの存在。  コイツが一番の食わせ物だった。  一番の弱みを握っていたのはこの男であり、イヴをさらに巨大な掌で転がす事に成功したのはドゥイットなのだ。  何だジョージ・サンダースよ、ヒッチコック映画の時より有能じゃないか(多分褒めてる)。 それとマリリン・モンローが普通に別嬪でワロタ(当たり前だけど)。 個人的にモンローは主役をやっている時よりも脇で原石としてキラキラ光っている時のほうが可愛いと思っていたりするのです。  ラストの「新しいイヴ」が誕生する瞬間・・・怖い映画だ。 ちなみに本作のリメイク「ショーガール」は色んな意味で凄まじい事になっています(ゴールデンラズベリー賞6部門制覇)。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-08 05:11:07)
440.  ナサリン 《ネタバレ》 
ブニュエルの映画は不条理な作品が多いが、この作品はある意味「忘れられた人々」よりも虚しさに襲われる映画だ。 神父以外みんな疲れた顔をしている。貧しさに疲れ果て、心も卑しさに満ちていた。 首吊り自殺に失敗する女性もいれば、女同士の取っ組み合いも日常茶飯事。 そんな汚濁のようなこの街に、馬鹿正直で理想を失わない男がまだいた。 ナサリン神父は、殺人を犯してしまった娼婦を救おうと懸命に努力をしたが、結局家に火を付けられてしまう。 挙句には娼婦との肉体関係を疑われ、神父としての資格まで奪われてしまうのだ。 いくら神父が熱弁を振るおうとも、娼婦にはキリストの絵がこちらを嘲笑しているようにしか見えなかったのである。 過去の男の思い出で狂ったように笑う女。 ナサリンは、いつか解ってくれる人がいる、救える人がいる筈だと巡礼の旅に出た。 だが労働場でも後ろから石を投げられる始末。 「やったらやり返す」・・・ナサリンは手を出さなかったが、他の不満を持つ男達が怒りを爆発させる。 銃を抜いて殴ったら、その後ろから男からシャベルで一撃。鳴り響く銃声・・・。 蹴り→棒切れ→蹴り。 警官たちも喧嘩っ早い。そのクセ、人が倒れていても放っておくのだ。 ナサリンの旅は続く。途中で出会った、男に裏切られた母親とその娘。 彼女の甥の病気を直したことでようやく明るい兆しが見え始める。 ナサリンは親娘に慕われる。 3人は疫病の蔓延する村で献身的な努力をするが、無駄に終わってしまう。 子のために狂ったように祈る女が忘れられない。 だが、ナサリンたちは確実に何かが変わり始めていた。 これから希望に向って進もう・・という時にナサリンたちを再び不幸が襲う。 母親はともかく、娘が一番不幸ではないだろうか。 母親の前から何の挨拶もできず連れ去られる娘・・・男のやらしい手つきが、娘が男から離れた理由を語るようだ。 徐々に女らしく、自分を取り戻してキレイになってきた彼女が、偶然にも昔の男に“惚れ直されて”しまう悲劇。愛していない男にだ。しかも、心は別の男に移っていた時に・・・。 冒頭の笑うキリストは、将軍の肖像に変わりナサリンを睨む。 娘とナサリンがすれ違うラストシーンが強烈。 ラストで鳴り響くドラムロールは、ナサリンの力強い前身を物語るのか。それとも、より過酷な試練を予告しているのか・・・それは解らない。
[DVD(字幕)] 9点(2015-01-07 14:22:33)
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