Menu
 > レビュワー
 > ゆき さんの口コミ一覧。23ページ目
ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

表示切替メニュー
レビュー関連 レビュー表示
レビュー表示(投票数)
その他レビュー表示
その他投稿関連 名セリフ・名シーン・小ネタ表示
キャスト・スタッフ名言表示
あらすじ・プロフィール表示
統計関連 製作国別レビュー統計
年代別レビュー統計
好みチェック 好みが近いレビュワー一覧
好みが近いレビュワーより抜粋したお勧め作品一覧
要望関連 作品新規登録 / 変更 要望表示
人物新規登録 / 変更 要望表示
(登録済)作品新規登録表示
(登録済)人物新規登録表示
予約データ 表示
評価順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031
投稿日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031
変更日付順1234567891011121314151617181920
2122232425262728293031
>> カレンダー表示
>> 通常表示
441.  赤毛のアン/アンの青春 完全版〈TVM〉 《ネタバレ》 
 内容としては「教師モノ」に分類されそうな本作。   舞台も田舎から都会へと移り変わり(これは前作とは異なる面白さを与えてくれそうだ……)と期待が膨らんだのですが、終わってみれば、良くも悪くも前作と殆ど変らない品という印象を受けましたね。  主人公のアンが、気難しい老婦人の心を解きほぐして仲良くなる件なんて、特に既視感を覚えます。   新しい要素としては、生徒達との心の触れ合い。  生真面目なオールド・ミスであるブルック先生との友情。  そして「地元の幼馴染」と「都会で出会った紳士」に挟まれたアンの三角関係が挙げられるのですが、こちらは前作で自分が苦手としていた「女性向けの恋愛ドラマ」成分が、より濃くなったように感じられて、少し残念でしたね。  ちょっと意地悪な見方かも知れませんが、作風やら何やらを考えればアンが後者と結ばれる事など有り得ない訳で「どうせ幼馴染のギルバートと結ばれるんでしょう?」と、達観した気持ちになってしまいました。   前作に比べれば出番は短いけれど、マリラおばさんが相変わらず素敵なキャラクターであった事は、嬉しい限り。  終盤、地元に戻ってきたアンを出迎えて、嬉しそうに抱き締める姿を目にすると、何やらこちらの心まで温かになってくるのだから、不思議なものです。   紆余曲折はあったけれど、やっぱり最後にはアンとギルバートが結ばれて、二人が幸せになるという、予定調和な結末。  でも、この作品に関しては「それで良い」「それが良いんだ」と思えましたね。   全編に亘って落ち着いた空気が漂っており、安心して観賞しているこちらの期待を裏切らない、平和な映画でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2016-09-02 10:29:26)(良:1票)
442.  赤毛のアン/完全版〈TVM〉 《ネタバレ》 
 こういった映画を鑑賞する際には、主人公の子供側ではなく、保護者である大人側に感情移入する事が多くなったなぁ……などと、しみじみ実感。   とにかくもう、マシューとマリラの老兄妹が素晴らしかったですね。  主人公のアンが、子守の仕事をサボって読書に熱中したり、自分をやたらと「悲劇のヒロイン」アピールしたりする姿に、少々ゲンナリしていたところで、この二人が登場し、大いに和ませてもらったという形。   作中の大人達が、次々にアンを叱ったり、厳しく接したりする中で、マシューおじさんだけが彼女を気に入り、優しく接してくれるのだから、アンだけでなく観客の自分にとっても、彼は本当に癒しの存在という感じなのです。  妹のマリラおばさんのキャラクター性も抜群で「なるほど。ツンデレとは、こういう女性を指すのか」と、思わず感心してしまったくらい。  当初はアンを嫌っていたはずの彼女が、段々と愛情を抱くようになっていく姿が、本当に丁寧に描かれているのですよね。   それだけに、駅でアンの旅立ちを見送る二人の姿と 「あの時(孤児院には男の子を頼んだのに)女の子に間違えてくれて良かったな」 「あれは神の思し召しですよ。ウチには、あの子が必要だった」  という台詞のやり取りには、じんわりと感動。   気が付けば、マシュー以上にマリラの方がアンを可愛がっていて、そんな妹にマシューが少し呆れているような様子も、実にチャーミグでした。   終盤、アンが帰郷した際に、農作業中のマシューが心臓の発作で倒れてしまうのですが、その時の会話も、素晴らしいの一言。 「私が男の子だったら、畑の仕事を手伝えたのに」 「そう思った事は無いよ」「女の子で良かった」「自慢の娘だ」  と、幸せそうに語りながら息を引き取る姿には、思わず落涙。  父娘の絆に、大いに心を揺さ振られました。   そんな具合に、自分としてはマシュー視点の映画として、娘を見守るような気持ちで観賞した本作。  でも、全体の主人公としては、間違いなくアンである訳で、その少女漫画的なストーリー展開には、多少の違和感を覚えたりもしましたね。   ギルバートとの恋愛模様に関しては、特にそれが顕著であり、彼がやたらと都合良くアンの前に現れる事なんて、もしかしてギャグでやっているのだろうかと疑ってしまったくらいです。  ボートが壊れて溺れそうになったアンを助ける姿や、ラストシーンで馬に乗って現れる姿なんて、典型的な「王子様」キャラといった感じ。  この辺りは、やはり女性向けの作品なのかな、と思わされました。   とはいえ、そんな具合に「女性向け」の内容が苦手であるはずの自分さえ、これだけ感動させられたのだから、凄い映画である事は、疑う余地が無いかと。  また何年か経った後に、今度は懐かしさと共に観賞して、穏やかな世界に再び浸ってみたくなる……  そんな一品でありました。
[DVD(吹替)] 7点(2016-09-01 10:37:00)(良:2票)
443.  ドラフト・デイ 《ネタバレ》 
 アメフトには詳しくない自分ですが、それでもジョー・モンタナやジョン・エルウェイの名前が出てきたり「ザ・ドライブ」の映像が流れたりすると、興奮するものがありましたね。   本作は、そんなスター選手の再来になれそうなくらいに将来有望なクォーターバックの指名権を獲得する為、GMである主人公が悪戦苦闘するというストーリー。  ドラフト全体の一位指名権を手に入れる為「三年分のドラフト一巡指名権」を手放してみせる冒頭の決断にも驚かされましたが、終盤にはそれを凌駕する程の「魔法の如き交渉術」を見せてもらう形となり、気持ちの良いドンデン返しを味わえました。   基本的に劇中では情報収集と交渉を重ねるだけで、派手なアクションは殆ど出て来ないのですが、それでも飽きずに最後まで観られるのだから、これは凄い事です。   恋愛模様やら、家族との感動エピソードやらも絡めている点に関しては、個人的には然程楽しめず (ドラフトの駆け引きオンリーに絞って欲しかったなぁ……)  と思わされたりもしたのですが、それらに長尺を割いている訳でもない為、何とか許容出来る範囲内。  今になって振り返れば、そういった諸々の要素も、ハッピーエンド色を強める効果があって、良かったんじゃないかと思えてきます。   上述の一位指名候補に対し、疑問符を抱く最大のキッカケが「誕生日会にチームメイトが誰も来ていない事」だった辺りも面白い。  こういった些細な情報から「こいつはプロで通用するか否か」を見極めていく流れが、良質なミステリーのように知的昂奮を誘う形となっているのですよね。   最終的に、主人公は元々自チームに所属しているクォーターバックの能力、人格を再評価して、ドラフト指名は他のポジションに移す事となる訳ですが、そうなるに至るまでの描写も、実に丁寧。  「作戦書の最終ページに張り付けておいた百ドル札」のエピソードなんかは、特に良かったですね。  それまでの積み重ねも併せ (未知の新人よりも、このクォーターバックに投げさせて欲しい!)  と思わされるからこそ、ドラフト指名の瞬間に痛快さがある訳で、本当に上手いなぁ……と感心させられます。   不満点というか、ちょっと気になった点としては、作中における主人公のドラフト戦略が「いくらなんでも絶賛され過ぎな事」が挙げられるでしょうか。  全体の流れを把握している観客ならともかく、断片的な情報しか知らないはずの地元のファンまで完全に掌を返して騒いでいるのは、少しやり過ぎな気がしましたね。  特に、成功の代償として「三年間の二巡目指名権」を失っている事が、終盤では意図的に無視されているような辺りが、どうも引っ掛かります。  また、上述の一位指名候補は、人格に問題ありとして指名を回避したはずなのに、暴行事件を起こした過去があるランニングバックを指名する辺りも、ちょっと一貫性を感じられなくて、残念。  クォーターバックの対比において「真に優れたプレイヤーは、人格的にも優れている」というメッセージ性があり、一位指名したラインバッカーも家族想いの良い奴だという描写があったのだから、暴行事件に関しても「あの時はイカれてた」で済まさず「実は冤罪だった」とか、もっと明確なフォローが欲しかったところ。   そして何といっても物足りないのは、このドラフトの結果が成功だったのか失敗だったのか、答え合わせが行われるシーズン開幕と同時に、映画が終わってしまう点ですね。  これはもう、実に残酷。  あそこで終わるからこそ「ドラフト」の映画として完成されるのだという事は分かりますが、だからといって納得出来るものでもありません。  無粋かも知れませんが、エンドロールにて「それぞれの選手達が、どんな活躍を果たしたのか」を、テロップで表示して欲しかったなぁ……と思わされました。   そして願わくば、チームがスーパーボウルを制し、勝利の喜びに包まれる瞬間まで、是非ともお付き合いさせてもらいたかったところです。
[DVD(字幕)] 7点(2016-08-31 15:04:11)
444.  清須会議 《ネタバレ》 
 冒頭、本能寺における信長の描き方によって「あっ、これコメディだ……」と気付かせてもらえた為、早い段階から史実云々とは切り離して楽しむ事が出来ました。   何といっても、大泉洋演じる秀吉のキャラクターが良かったですね。  猿にも鼠にも見えるという、その風貌の時点で素晴らしい。  おちゃらけていても、積極的に政略を張り巡らせる「働き者」っぷりも良かったですし、庶民からの成り上がり者である事を過度に美化したりせず、家族からは「百姓の心、失うとる」と非難され、白い目で見られるパートを挟むバランス感覚も、お見事です。  中でも特にお気に入りなのは、妻のねねが「今の暮らしでも、うちは十分幸せ」と優しく話しかけても「ここまで這い上がって来たんだで、途中で降りる訳にはいかん」と、その貪欲さを垣間見せる場面。  天下人となる秀吉の器の大きさが感じられる一方で、強過ぎる欲望ゆえの危うさ、陽性の狂気とも言うべき本性が窺えたように思えて、ゾクリとさせられましたね。  長年の友人である前田利家に刃を向けられた際「儂を斬れば、戦の世は後百年続く」と言い放つ姿なんかも、格好良かったです。  今まで色んな秀吉像を見てきましたが、本作の秀吉は、そんな中でも際立って魅力的であったように思えます。   丹羽長秀(信長派)と柴田勝家(信勝派)を長年の友人として描いている辺りも「ほほう、そう来たか」といった感じがして、面白かったですね。  黒田官兵衛も「頭の良い補佐役であるが、お茶目な一面もある」という描かれ方をしており、吹き矢の件や、三法師をあやそうとして盛大に泣かれてしまう場面など、親しみのある笑いを提供してくれている。  官兵衛に関しては「鼻持ちならない天才軍師」という描かれ方も多い人物であるだけに、本作の扱いは嬉しかったです。  遅参した滝川一益をあしらう場面で、硬質な有能さを示す一方、愛嬌のある間抜けな姿も見せてくれている訳で、変幻自在の水の如き魅力を感じられました。   そんな本作の不満点としては……映画全体で見ると、少々バランスが悪かった点が挙げられるでしょうか。  まず、肝心の清須会議が始まるまでが長い。  根回しの場面こそが重要なのは分かるのですが、実際に会議が行われる場面まで一時間以上掛かるとあっては「まだ始まらないの?」と、観ていて焦れてきちゃいますからね。  その対策として「旗取り大会」を挟んだのでしょうが、これに関しては完全に現在のバラエティ番組なノリとなっており、異質感が否めなかったです。  恐らくは秀吉が信雄に見切りを付けるキッカケの場面なのでしょうが、そんな事をしなくても散々「うつけ」っぷりを見せられた後であっただけに、今一つ必然性を感じられませんでした。   その後の「三法師こそが正しい後継者である」と秀吉が論じる展開についても、ちょっと違和感がありましたね。  観客に歴史の知識が無い場合、議論の場で唐突に「信長は生前、既に信忠に家督を譲っていた。つまり清須会議とは信長の跡継ぎではなく、信忠の跡継ぎを決める場である」という真実が明かされる形となっているので、これは如何にも不親切。  会議を始める前の段階で、絶対に説明しておかなければいけない情報ではないか、と思えます。   また、道化役の信雄こそが「この世は、生き残ったもん勝ちだ」という作中の台詞に当てはまる存在である事を、映画を観ただけでは把握出来ない辺りも、実に勿体無い。  この辺りは、作り手側に歴史の知識が備わっているからこその「皆、そのくらいは知っているでしょう?」という、無意識の怠慢に思えてしまいました。   更にキツかったのが、会議が終わった後の尺も長い事。   上述の秀吉と利家との会話なんかは凄く好きなのですが、それと同じように「男同士の友情」を示す場面として、丹羽と柴田の会話も描かれているので、何だか食傷気味に感じられるのです。  おまけに「歴史を動かす女の意地、女の怖さ」も市と松とで連続して描写されているので、どうしても「もういいよ……」と嘆息してしまいました。  相乗効果、あるいは対比の効果を狙ったのかも知れませんが、これに関しては「男の友情」「女の怖さ」で、それぞれ一つずつに絞って描いてくれた方が、好みでしたね。   それでも最後は、秀吉の力強い天下取り宣言で終わっている為、綺麗に纏まっている形なのは、何やら救われた思い。  確かな魅力を秘めている一方で、ちょっと豪華過ぎて、贅沢過ぎた辺りが、玉に瑕な映画でありました。
[DVD(邦画)] 6点(2016-08-28 22:26:00)(良:1票)
445.  湘南爆走族 《ネタバレ》 
 織田裕二演じるアキラの出番が多く、実質的に江口洋助とのダブル主人公となっているのは、原作通り。  けれど、映画単品として考えると、少々バランスが悪いようにも思えましたね。  観客としては、単身で敵地に乗り込むアキラを応援したくなるのに、最後は江口が助けに駆け付けてオイシイところを持って行くのだから、何だかズルい感じです。   喧嘩シーンに関しても、頑張っているとは思うのですが、原作の豪快な魅力とは違う路線なのですよね。  同時代の不良漫画「BE-BOP-HIGHSCHOOL」が、原作はリアルなのに実写映画は破天荒アクション。  そして湘爆は原作が破天荒なのに、映画は比較的リアルなアクションという形となっており(逆だよなぁ……)と、ついつい思ってしまいます。   仲間五人で集まって、一杯のラーメンを分け合うシーンの馬鹿々々しさなんかは、結構好み。  金欠に悩む主人公達が、暴走族を「アドベンチャー茶道部」と言い張り、学校側に予算を求める件も面白かったですね。  その場面にて、他の部活動の面々が、ご丁寧に野球やラグビーのユニフォームを着ていたりする漫画的な分かり易さも、ベタな笑いに繋がっていたと思います。   「族の縄張り争いで喧嘩するより、一緒に単車で走った方が楽しい」というメッセージを最後に据えて、綺麗に纏めてみせた点も、非常に好印象。  絶賛するのは難しいけれど、何だか憎み切れない、愛嬌のある映画でした。
[DVD(邦画)] 5点(2016-08-25 21:37:00)
446.  パーマネント・レコード 《ネタバレ》 
 主人公かと思われた登場人物が、映画が始まって三十分程で、自ら命を絶ってしまう。  それでも、そこに驚きは無く(あぁ、やっぱり……)という思いに繋がるのだから、如何に丁寧に「死に至る心境」を描いていたのかが分かりますね。   学園の優等生で、人気者であり、恋人も、親友もいるはずなのに、何故か孤独を漂わせているデビット。  幼い弟に対し、自分と入れ替わらないかと提案するシーンなんて、特に印象深い。  「楽しいぜ、みんなのアイドルさ」「僕の方は一日中、眠れる」  という台詞からは、彼が感じている重圧と、そこから解放される事を願う気持ちが、痛い程に伝わってきました。   そんな彼の親友であり、映画後半の主人公となるのは、若き日のキアヌ・リーヴス演じるクリス。  親友のデビットが残した遺書代わりの手紙を目にし、衝撃を受ける姿が、何とも痛ましい。  「すべてを完璧にしたかった」「だめだった」  という短い文面を読み上げ、その深い絶望を感じ取って、思わず嘔吐する。  そんな場面を目にすると、映画前半での「デビットに同情する気持ち」も、瞬く間に吹き飛んでしまいますね。  自殺という行いが、如何に残された者達を傷付けるかについて、改めて考えさせられました。   そんな具合に、色々と心に響いてくる内容だったのですが、映画としては、クライマックスの演奏シーンで盛り上がれず、淡々とした流れで終わってしまったように思えて、少々残念。  デビットの遺作である曲を、クリス達がバンド演奏する事を期待していたのに、ヒロインの独唱という形になったのが、どうにも肩透かしだったのですよね。  そこはやっぱり、手紙と楽譜を受け取ったクリス自身に演奏して欲しかったなぁ……と思ってしまいました。   一夜明けての、ラストシーン。  デビットの転落死を経て、崖に設置された金網は、さながら彼の墓標のようでしたね。  そんな金網に手を添えて、寂し気な姿を見せていたクリスが、呼び掛ける声に振り向き、名残惜し気に金網を見つめながらも、仲間の許へ歩いていくエンディングは、とても好み。  悲しみを抱えながらも、それに囚われる事は良しとせず、生きる事を選んでみせるという、前向きなメッセージが伝わってきました。   自殺というデリケートな問題を扱いながらも、決してそれを肯定せず、勇気を持って否定してみせた一作だと思います。
[ビデオ(字幕)] 6点(2016-08-24 09:26:05)(良:1票)
447.  トッツィー 《ネタバレ》 
 久々に再見してみたのですが、主人公が初めて女装するシーンまでに、二十分も掛かる事に驚かされました。  もっと早い段階というか、全編に亘って女装していたような印象があったのは、それだけ「ドロシー・マイケルズ」の印象が強かったという事なのでしょうね。   映画そのものに関しては、現代の目線からすると正直ノンビリし過ぎているというか、若干退屈。  これに関しては「主人公が女装する映画」というだけでも十分ショッキングだった当時と、それくらいの事では驚いたりしない現代の違いも影響しているのかも知れません。   一番引っ掛かったのが、ドロシーの正体が男性であると見破った人物が一人もおらず、周りが完璧に騙されているという点。  そりゃあ女装としては声や仕草まで洗練されていて見事ではありますが、だからといって「どこからどう見ても女」というレベルではなく「ん? よく見たら男?」と気付くのが自然な容貌に思えるのですよね。  だから「何時、周りに男とバレるんだろう?」と思っていたのに、結局最後まで騙し切って、自分から正体を明かしたという流れには、どうしても「そんな馬鹿な……」と感じてしまい、今一つカタルシスを得られず仕舞い。  作り手側が本気で「この女装ならば決してバレない」という自信を持って、堂々とストーリーを展開させているのか、それとも「バレるはずなのにバレない」というシュールな可笑しみを狙っていたのか、どちらなのか伝わって来なくて、中途半端な印象となってしまいました。   そんな具合に、物語の大筋には不満も残ってしまったのですが、作中のあちこちに散りばめられたユーモラスな場面だけでも、充分に楽しむ事が出来ましたね。  主人公がドンドン女装にのめり込み「ドロシーは僕より頭がいい」「髪をソフトにするかな、ドロシーには似合う」などといった具合に、自分の理想の女性像をドロシーに重ね合わせているような件も、非常に興味深い。  最も愉快だったのが、片想いの女性にキスしようとして、レズビアンだと誤解されてしまう場面。  自分は正常だと主張し、その証拠に「服を脱げば分かるわ」と口走ってしまい、ますます警戒されてしまう流れなんて、とっても面白かったです。   無事に「男女」が結ばれて、ハッピーエンドで終わってくれる点も含め、安心して観賞出来る一品でした。
[DVD(字幕)] 6点(2016-08-22 22:07:14)
448.  ディープ・カバー 《ネタバレ》 
 潜入捜査を題材とした映画は好みなので、充分に楽しむ事が出来ました。   何といっても、主演を務めたローレンス・フィッシュバーン(ラリー・フィッシュバーン)の目力が素晴らしい。  冒頭、潜入捜査官を選抜する為、黒人警官達に面接を行うシーンがあるのですが、何の予備知識も無いと、ここで「んっ? こいつが主人公?」と思わせるような潜入捜査官候補が、次々に登場する形になっているんですよね。  でも、幾つかの面接が不首尾に終わり、フィッシュバーンが画面に現れた途端に「間違いなく、この男が主人公だ!」と納得させられてしまう。  それほどまでに、その精悍な顔付きと、鋭い眼差しには、独特の存在感が漂っていました。   父親が麻薬中毒であった為に、厳しく自己節制し、酒も飲まずにいる主人公。  そんな彼が、潜入捜査で麻薬の売人として振る舞い「悪」になりきろうとする内に、段々と自らの内面に眠っていた「悪の素養」とも言うべき一面と向き合う事になる脚本が、実に秀逸。  終盤、彼が酒を飲み干し、麻薬にも手を出してしまう場面では「とうとうやってしまったか……」という、人が堕落する瞬間の、後ろ向きなカタルシスさえ感じられましたね。  仮初めの生活を行う裏町のアパートにて、近所の少年を可愛がる主人公に対し、その子の母親から「あの子が好きみたいね。二千ドルで売ってあげる」と提案されるシーンなんかも、潜入した先の闇の深さが窺えて、印象深い。   また、売人としてコンビを組む事になった、ジェフ・ゴールドブラム演じるデビットとの、奇妙な友情も良いんですよね。  主人公に正体を告げられた後も「デカでもいい」と答え、一緒に悪党としてのし上がっていこうと誘い掛ける姿なんかも、忘れ難い魅力がありました。   あえて不満点を挙げるとすれば、主人公が最後の最後で「正義」を選ぶキッカケとなる「牧師さん」の出番が少なめである為、その決断に今一つ重みを感じられなかった事。  そしてラストシーンにて、上述の少年の母親の墓に、手向けの花と現金を添える行為によって、主人公が少年を引き取った事を示す演出が、ちょっと即物的に思えてしまったくらいでしょうか。   隠れた傑作と呼ぶに相応しい、もっと多くの人に観賞してもらいたくなるような、そんな一品でありました。
[ビデオ(字幕)] 7点(2016-08-21 19:55:16)
449.  ディーバ 《ネタバレ》 
 1981年という制作年度を考慮すれば、非常に御洒落でスタイリッシュな映画なのだと思います。   主人公が暮らしている部屋なんて、如何にもな「秘密基地」テイストが感じられて、憧れるものがありましたね。  コーラの缶にガソリン臭いチューブを差し、それをストロー代わりにして飲んでみる少女のシーンなんかも、妙にお気に入り。   青と赤が巧みに配された画面。  そして、聴くだけで鳥肌が浮かぶような歌声と、視覚的、聴覚的にもセンスの良さを感じさせる本作。   ただ、ちょっと主人公が情けなさ過ぎるというか、変質的なストーカーにしか思えなかったりして、今一つ感情移入出来ないものがありました。  映画序盤における彼の行動はといえば、恋い焦がれる歌姫のコンサートを無断録音したり、衣装を盗んだり、その衣装を売春婦に着てもらってから一夜を共にしたりと、どう考えても単なる変態さんなのです。  にも拘わらず、演じている役者さんが爽やかで繊細な二枚目過ぎるせいで、やたらと嘘くさい。  主演俳優のルックスが優れているに越した事はありませんが、それにしても、本作のような主人公の場合、もう少し粘着質な感じがあった方が、キャラクターにリアリティが生まれたのではないか、と思います。   また、主人公とヒロインの二人が結ばれるまでの過程も、あまり説得力が感じられなかったりして、残念。  海賊版の存在を「泥棒、強姦です」「軽蔑します」と言い放つような歌姫のヒロインと、実は彼女の声を無断録音してしまっている主人公が結ばれるという「意外な結末」ゆえに、観ていて(えっ? 何でくっ付くの?)と思わされてしまった気がしますね。  劇中にて、主人公が目覚ましい活躍をして自信を手に入れるとか、死線を越えて生まれ変わるといった事もなく、映画序盤から特に性格なども変わっていないのだから、序盤の彼の罪の「帳消し」感が生まれてこないのです。  その結果、ヒロイン側の一方的な優しさによって「主人公の過ちを許してくれる」「求愛を受け入れてくれる」という形になっており、ちょっとばかし男性にとって都合の良過ぎる女性像に思えました。  これならば、最初から主人公をもっと誠実で善良な男として描くなり、ヒロインを海賊版には拘らない人物として描くなりしておいた方が、二人が結ばれる結末に対しても、違和感が生まれずに済んだかと。  「本来結ばれるはずのない二人が結ばれるストーリー」という難しい題材にして盛り上げた以上は、ハッピーエンドにする為の難易度も上昇してしまうのだな、と思わされました。   それでも、ラストシーンにて、生まれて初めて客観的に「自分の歌声」を聴く事になるヒロインの姿には、胸を打たれるものがありましたね。  彼女が彼の罪を許し、愛を受け入れた理由は「自分の歌声の素晴らしさを教えてくれたから」なのか、それとも別の理由か……などと考えるだけでも、色々と楽しい映画でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2016-08-18 11:21:35)
450.  少年H 《ネタバレ》 
 冒頭、平和な時代にて楽しく絵を描く主人公の姿から始まって、戦中では鬼教官に「絵や音楽は戦争の訳には立たん」と言わせてしまう構成が、実に意地悪で、実に効果的。   「御国の為に」なんて言っていた近所の大人連中が、戦後は進駐軍に英語で話しかけて媚を売る姿なんかも、非常に嫌らしく描いているのですよね。  こういった「子供目線による悪役としての大人」を表現するのが、とても上手かったように思えます。  その一方で、主人公に好意的な大人達には、小栗旬や佐々木蔵之介といった「良い奴」イメージの強い有名所を起用しているのだから、バランスも良く、観ていて安心感がありました。   主人公の父親が極めて聡明で、寛大で、日本の情勢に対する先見の明まで持ち合わせているのは、ちょっとやり過ぎな気もしましたが、幼い主人公を導く役目、そして当時の情勢に疎い観客に対する「解説役」も兼ねているのだと思えば、何とか納得出来る範疇ですね。  演じているのが水谷豊というのも、非常にポイントが高い。  その知的な物言い、柔らかな物腰が、ハイスペックなキャラクターに説得力を与えていたように思えます。   特に印象深いのが、教室の机に「スパイ」と書かれた事を怒る息子に対し、冷静に、筋道を立てて説得してみせる場面ですね。  「アンタまで、やな人間になってしまうで」という言葉からは、面倒を避けようとする大人の配慮などではなく、本当に我が子を思いやり「息子には良い人間であって欲しい」と願っているからこその優しさが窺えて、胸に迫るものがありました。    そんな頼れる父との別れ、家族からの自立をクライマックスに配した気持ちは分かるのですが、結果的に「さぁ、これから主人公はどうやって生きて、成長していくのか?」という矢先に、映画が唐突に終わってしまった印象も受けてしまい、そこは残念。  恐らくは、演じている子役が幼過ぎて、社会人として自活している姿を濃密には描けなかったものと推測しますが、あそこはもうちょっと描写が欲しかったところです。   家族の中から死者が出ていなかったせいか、あまり陰鬱な展開にはならず、日本の復興を予期させる前向きなハッピーエンドであった事は、とても好み。  戦争が齎す不幸だけでなく、そこから立ち上がる人間の逞しさ、力強い美しさの片鱗を感じさせてもらいました。
[DVD(邦画)] 6点(2016-08-17 06:54:46)
451.  クライムチアーズ 《ネタバレ》 
 どうやら自分は「チアリーダー」という存在が好きみたいだなと、遅まきながら自覚させてくれた一品。   何せ、劇中の四分の一くらいはチアリーダー衣装の女の子達が登場し、その魅力を振りまいてくれる内容なのだから、もう参ってしまいます。  と言っても、実際にチアリーディングのダンスを披露しているシーンは、極僅か。  その分、お金を盗む時もチア姿、留置場の檻の中でもチア姿と「そこまでやるか……」と思えるくらいに衣装に拘っており、殆どコスプレ映画といった趣がありましたね。   そんな品であるのだから、真面目にツッコミを入れる方が野暮かも知れませんが、一応は不満点なども。  同情出来る動機があると言えども、主人公達は犯罪行為を行っているのに、それに対して一切罰を受けない結末であった事には、驚かされました。  てっきり「無罪にはなるけど、証拠品のお金は燃やす破目になる」とか、そんなオチだろうなと予測していただけに、この完全無欠なハッピーエンド(?)っぷりには、唯々吃驚。  一応、無罪放免の代償としてチアリーダーのキャプテンの座を差し出した形にはなっているのですが、妊娠した以上は遠からず引退する事になっていたでしょうし、自己犠牲的な要素は希薄。  その能天気っぷりが意外性もあって良い……と言いたいところなのですが、正直、この「完全犯罪が成立しての大儲けエンド」には、後味の悪さ、若干の後ろめたさも感じてしまいました。   けれど、総じて考えると長所の方が多かった映画だと思いますね。   まず、キャスティングが良い。  「アメリカン・ビューティー」のミーナ・スヴァーリが、本作でもチアリーダー姿を披露しているだけで嬉しくなってしまうし、それよりも何よりも、ジェームズ・マースデン!  実写版サイクロップスなど、とかく不幸な役柄の印象が強い彼が、本作においては文句無しで幸せな結末を迎えているのだから、もうそれだけでも満足。  頭は軽いけど、底抜けに良い奴という旦那役を好演しており、その明るい魅力を見せ付けてくれていましたね。  「賢者の贈り物」めいたクリスマスのプレゼント交換の場面なんて、特にお気に入り。  結局、主人公のダイアンは罪を認めないままだし、強盗で得た金という秘密を抱えたまま生きていく事になる訳だけど、こんな旦那さんが一緒であれば、罪悪感に苛まれる事も無く、幸せな一生を送る事が出来そうです。   全編のあちこちに「銀行強盗映画」へのオマージュが散りばめられており、そのチョイスが「ハートブルー」「レザボア・ドックス」「ヒート」「狼たちの午後」と、自分好みなラインナップであったのも、嬉しかったですね。  映画を参考にして強盗を行うという、ちょっぴり際どいストーリーになるのかと思いきや、中盤にて 「映画は教材にはならない」 「映画から学べるのはセックスだけ」  と結論を出してしまう辺りも、皮肉なユーモアがあって素敵。   やはりコメディを楽しむ際には、道徳や倫理観に縛られていては駄目だなと再確認させてくれる。  良質な娯楽映画でありました。
[DVD(字幕)] 6点(2016-08-17 00:16:37)
452.  醜聞(1950) 《ネタバレ》 
 とにかくもう、悪役となっているマスコミ側が徹底的に憎たらしく描かれていて、いっそ痛快。   「記事なんか少しぐらい出鱈目でも、活字になりさえすれば世間が信用するよ」 「(抗議されたら)誰も読まないようなところに謝罪広告を出せば、それで済む」   と言い放つ姿には、狡賢い悪党としての「大物」感すら窺わせました。   観客側としては、当然そんな彼らが敗訴して、溜飲を下げる展開を期待する訳なのですが、どうも毛色が違う結末。  分かり易い人情譚として纏められており、感動的と言えば感動的なのですが、正直ちょっと不満が残る形でしたね。   三船敏郎演じる原告側からすると「被告による買収が発覚して勝てた」という訳なのだから、どうも相手側の一方的な自滅というか、勝利のカタルシスに乏しくて、法廷物としては如何なものかと思われます。   志村喬演じる弁護士が、最後の最後で正義を貫く事になるキッカケが「愛娘の死」という点に関しても、申し訳ないのですが娘が登場した瞬間に(あっ、この子死んじゃうな……)と覚らせるものがあったせいで、どうにも予定調和な印象が拭えず、残念でした。   長所としては「横暴なマスコミに対し、決して泣き寝入りはしない毅然とした態度」を描いている事。  そして山口淑子演じる声楽家の「尊敬のない人気なんか沢山だわ」と言い放つ姿から、誇り高く生きる人間の美しさを感じられた事でしょうか。   新進気鋭の若き画家という、他の作品ではあまり見かけない役柄を演じている三船敏郎の姿にも、流石と思わせるものがあり、それだけでも観る価値がありましたね。  独特の渋い声音で  「僕達は生まれて初めて、星が生まれるところを見たんだ」 「その感激に比べれば勝利の感激なんて、ケチくさくて問題にならん」   と言われてしまえば、そういうものかと納得しかけてしまうのだから、全く不思議なものです。
[DVD(邦画)] 5点(2016-08-15 20:35:56)
453.  永遠の0 《ネタバレ》 
 「上手い」と感じる部分と「ズルい」と感じる部分とが混在しており、評価が難しい一品ですね。   まず、本作はフィクションであるはずです。  にも拘らず、さながら事実をそのまま映像化したような印象を与えてしまう。  これは創作物として非常に優れた点であると同時に「現実と虚構の区別をつかなくさせる」作用も大きく、純粋に「映画」として楽しむ事を妨げているようにも思えました。   実質的な主人公である宮部久蔵というキャラクターは、非常に魅力的ですね。  軍人でありながら命を惜しみ、誰にでも敬語で礼儀正しく接して、端正な顔立ちの二枚目。  大人しくて卑屈な性格かと思いきや、仲間の尊厳が踏み躙られた時には上官に反抗だってしてみせるという、正にフィクションだからこそ許される存在。  この映画のタイトルに「実録」なんて付いていようものなら(これ、絶対美化しているよね?)と疑ってしまうのは避けられなかったはずです。  積極的に戦争に参加していないくせに、実は凄腕のパイロットであるという矛盾した一面も良い。  同僚と「模擬空戦」を行い、瞬時に相手の背後を取って、鋭い眼光で睨み付けている時の姿なんて、とても格好良かったです。   上述の「ズルい」部分に該当する話でもあるのですが、この映画って「戦争は良くない」という基本スタンスでありながら、空戦シーンは非常に面白く撮っていたりするのですよね。  主人公が零戦を宙返りさせる姿にも、思わず見惚れてしまうような魅力があり、そういった意味においては「軍人に憧れる子供」を生み出してしまう可能性はあるかも。   その一方で「上手い」と感じたのは、作中において大きな謎である「何故、命を惜しんでいたはずの宮部が特攻したのか」に対して、明確な答えを出さなかったという事。  作中の情報から推測する限りでは、教え子達が次々に特攻して死んでいくのに、自分だけが生き延びるという罪悪感に耐えられなかったからだと思えます。  ただ、自分としては、この「理由を知りたいのに決して知る事が出来ない」という現象が「何故なら、その人は死んでしまったから、訊きたくても教えてもらえないのだ」という答えに繋がっているようにも感じられたのですよね。  恐らくは戦争行為における最大の喪失であろう「人の死」が「決して明かされる事のない謎」を生み出してしまったという、何とも悲しい結末。  だからこそ、特攻していく宮部の姿を最後までは描かず、不思議な笑みを浮かべさせたまま、戦死の直前で終わらせたのだと思われます。  一度死んで0になってしまったものは、永遠に0のまま、1には戻らない訳です。   面白いというか、少々意地悪なユーモアを感じられたのは、現代パートにおいて宮部の孫が「特攻と自爆テロの違い」について語る場面。  ここは作中の流れを踏まえて考えれば「特攻は無差別に民間人を狙ったりしない。空母だけを狙うのだから、自爆テロとは違う」という結論で終わらせても良かったはずなのです。  けれど、本作においては議論の相手から「昔の日本軍を美化して考えるのは、今現在の自分に不満があるがゆえの逃避行動だ」という指摘が行われており、結局それに対して宮部の孫は反論出来ず、大声で怒ってから逃げ帰るというストーリーにしている。  この「特攻を美化して話す人間の格好悪さ」を、意図的に描いているような辺りは、良いバランスだなと思えました。   山崎貴監督は、基本的には好きな監督さんですし、本作においても家族愛を軸に据えて、万人が感動出来るような形に仕上げてみせたのは、実に見事だと思います。  ただ、どうも演出過剰な面もあり、ラストに零戦の幻影を見るシーンなんかは、それが悪い方向に作用してしまった気もしますね。  あそこは、もう少し静かに余韻を残して、平和になった現代の姿を映し出すだけでも良かったかも。   その一方で、過剰だからこそ良いと思えたのは、宮部の戦友である景浦が感情を発露させる場面。 「特攻がどんなものか、見ていますよね?」 「殆ど敵艦に辿り着けていないって!」 「殆ど無駄死にだって!」  と訴える姿には、大いに心を揺さ振られるものがありました。  もし、この映画に何らかのメッセージが込められているとしたら、それはこの叫びに尽きるのではないかな、と思う次第です。
[DVD(邦画)] 7点(2016-08-11 19:58:46)(良:1票)
454.  バウンス ko GALS 《ネタバレ》 
 中盤におけるヤクザとコギャルとの問答シーンの緊迫感は凄いですね。  結果的には意気投合して「見逃してもらった」形となる訳だけど、殺されるなり殴られるなりしても全くおかしくない雰囲気だっただけに、息が詰まるような思いがしました。   今となっては古臭くなっているかも知れませんが、当時における「コギャル」の生態を描いた品としても、凄く貴重。  コギャル当人に言わせれば「私ら、こんなんじゃないし」という答えが返ってくるかも知れませんが、年代も性別も異なる自分の目線からすると、極めてリアルに描かれているように思えます。   援助交際を行っているグループの中でも、すぐに身体を許す子は「サセ子」と呼ばれて見下されてしまう辺りなんかも、非常に興味深い。  こういった場合、第三者の目線からは「コギャル」と、ついつい一括りにしてしまいがちだけど、彼女達の中にも差別やら区別やらが存在するんだなぁ……と、しみじみ感じました。  「別に自分達が特別な訳じゃない」 「常識ある大人が少なくなったんです」   などの台詞によって「援助交際とは、そもそも大人側の需要が存在しなければ子供側の供給も存在しない」という真理を突いてみせるのも、実に上手いですね。  男性であるヤクザ目線でも、女性であるコギャル目線でも、互いの言い分に一定の説得力があるというか、観ていて肩入れ出来るような感じに仕上げているのは、監督さんの力量なのだと思われます。  こういった世代差や性別を越えた「対話」を扱う際に、どちらか片方を貶める事なく描いてみせるのは、中々出来ない事かと。   「どうして子供が売春なんてするんだ?」という観客の疑問に対し「子供の内は捕まっても罪が軽いから、悪い事をするなら今の内。二十歳になったら悪い事は止める」と語る少女を作中に登場させて、一つの答えを示している辺りなんかも、色々と考えさせられましたね。   それまで大人の「欲望」を利用して金稼ぎしていた少女達が、終盤にて大人の「善意」によって救われる構造なども、面白かったと思います。  ただ、自分としては最後の最後で、妙に綺麗にまとめてみせたというか、ちょっと終盤の展開だけ映画の中で浮いているようにも感じられて、そこは残念。  あの終わり方だからこそ、青春映画としての魅力も強まっているのかも知れませんが、もう少し苦みを含んだハッピーエンドでも良かったかも知れませんね。  それまでの展開がリアルであっただけに、爽やか過ぎて非現実的に思えてしまいました。   エンドロールの最後に流れる笑い声が、凄く怖かったりもしたのだけど、あれの演出意図も気になるところ。  大人目線による「子供の得体の知れない不気味さ」を表したにしては、劇中でその「不気味な子供」を好意に近い目線で描いている訳だし、どうも不可解。   全体的にクオリティは高いのですが、最後まで謎や違和感も残るという、後味爽やかとは言い難い映画でありました。 
[DVD(邦画)] 6点(2016-08-10 10:11:46)(良:1票)
455.  淑女は何を忘れたか 《ネタバレ》 
 先日観賞した「秋刀魚の味」が面白かったもので (これはいよいよ、自分にも小津映画を楽しめる器量が備わったのか?)  と調子に乗って手を出してみた本作。   で、結果はといえば……やっぱり、まだ早かったみたいですね。  監督さんの個性である独特のカメラワークだとか、演出だとか、会話の間だとかが、どうも退屈に感じられてしまう。  テーマとしては女性というか、主婦に対する皮肉なのかなと思いきや、最終的には「色々あるけど夫婦は仲良く」という結論に落ち着いてしまったみたいで、それが妙に物足りず、中途半端な印象を受けてしまいました。  「奥さんには花を持たせんきゃいかんよ」 「子供を叱る時にね、逆にこう褒めるだろ? あれだよ。つまり逆手だね」   などの台詞によって、一見すると尻に敷かれていた夫の方が、実は巧妙に妻を手懐けていると判明する件は面白かったけど、ちょっと女性を男性より下に捉え過ぎているようにも思えます。  夫に頬を打たれた妻が、その事を喜び、茶飲み仲間に話して羨ましがらせるというのも、何だか都合の良過ぎる話。  この辺りは、監督の価値観がどうこうというより、制作当時の時代性が大きいのでしょうか。   そんな風に、今一つ乗り切れない映画であったのですが、そこかしこに散らばるユーモアのセンスには、流石と思わせるものがありましたね。  特にお気に入りなのは、地球儀を使った地名当てクイズにて、周る地球儀の天辺を指差して「北極」と答えてみせる件。  その手があったかと、大いに感心させられました。   「バカ」「カバ」というやり取りに関しても、初出の場面では子供っぽさに呆れていたはずなのに、二度目に使われた際には(えっ? また使うの?)という意外性も相まって、思わずクスっと笑みが零れたのだから、不思議なもの。   ラストシーンに関しても、少しずつ部屋の灯りが消えていく様が幻想的で、好みの演出だったりするんですよね。  観賞中は退屈な時間の方が長かったはずなのに、この終わり方を目にするだけでも(良い映画だったなぁ……)と思えてくるのだから、全く困った話です。   小津安二郎という人は、今後も自分にとって評価の難しい監督さんであり続ける気がします。
[DVD(邦画)] 5点(2016-08-09 22:34:05)
456.  秋刀魚の味(1962) 《ネタバレ》 
 小津監督作品というと、どうも肌に合わない印象が強かったりしたのですが、これは良かったですね。   序盤の部分に関しては、正直退屈。  でも、主人公の親父さんだけでなく、長男夫婦の日常も並行して描かれる辺りから、段々と面白くなってくる。  「ゴルフクラブを買いたいのに、妻が許してくれない」という悩みを抱える会社員が、購入を認めてもらった時の嬉しそうな様子なんて、実に微笑ましかったです。   また、途中で戦争批判と思しき箇所もあったりするのですが、そのやり取りも重苦しくはならず「負けて良かった」「馬鹿な野郎が威張らなくなった」なんて具合に、酒の席で上司に対する愚痴を零す時みたいな、軽いノリで描いてみせた辺りも好印象。   「娘の結婚問題」で、初老の主人公がアレコレと苦労しつつも何とか縁談を纏めようとする後半部分も面白かったのですが、惜しむらくは、終盤の「娘が嫁入りしてしまった後の寂寥感」を描くパートが、ちょっと長過ぎたように思えた事でしょうか。  あそこは「育てがいの、ないもんだ」「結局、人生は一人ぼっち」という台詞の後に、スパッと短く終わらせておいた方が、余韻が残って良かったんじゃないかな、と。   ただ、そこで「主人公の死」を連想させる演出が挟まれるのですが、安易に「酒に酔って交通事故に遭う」などの展開にはせず、まだまだ人生が続く事を示して終わってくれたのは、嬉しかったですね。  娘の嫁入りという、めでたくも寂しい出来事の後に「身体、大事にしてくれよな」「まだ死んじゃ困るぜ」と言ってくれる息子の存在には、救われる思いがしました。   タイトルの意味についても、作中で明確に言及されていない為、色々と推測する楽しみがありますね。  単純に晩年の三作を「秋」というワードで繋げてみせただけという可能性もありますが、それはちょっと作品単体への思い入れが感じられず、寂しい。  やはり「人生の味は秋刀魚に似たり」という意味ではないか、と思えるのですが、真相や如何に。   これが監督の遺作となった事も併せて、非常に味わい深い映画でありました。
[DVD(邦画)] 6点(2016-08-09 19:09:48)
457.  最も危険な遊戯 《ネタバレ》 
 コメディ調に始まり、コメディ調に終わるのだけど、劇中の大半はハードボイルド風アクションで構成されているという、何とも奇妙な一品。   松田優作演じる主人公の鳴海にとって、賭け麻雀で負けてヤクザに殴られたり、ストリップ嬢に振られたりする事こそが日常であり、銃撃戦などは非日常だからこそ、こんな作りにしたのだろうか……とも思ったのですが、主人公の職業は「殺し屋」なのだから、そんな推測も当てはまらないのですよね。  冒頭とラストシーンでの情けない姿と、スタイリッシュに殺しを行う中盤の姿とが、どうしても上手く重ならなくて「殺し屋としての活動は、全て主人公の妄想だったんじゃないか?」と、疑ってしまったくらい。   そんな振れ幅の大きさ、シリアスな演技もコミカルな演技も、格好良く見せられる度量の大きさこそが、俳優松田優作の魅力なのでしょうが、本作は今一つ肌に合わなかったみたいで、残念。  同監督作の「野獣死すべし」では気にならなかった拳銃の発砲音なども、本作では何故か玩具っぽく聞こえてしまったりして、肝心のアクションにも集中出来ず仕舞いでした。   それでも、流石は名優の貫録と言うべきか 「まぁ慌てなさんな、やるったらやりますよ」 「素敵なゲームをありがとう」  等々の台詞を口にするシーンでは、観ていて痺れるものがありましたね。  決めるべきところは、ちゃんと決めてくれる。  観客を裏切ったりはしない映画であると感じました。
[DVD(邦画)] 5点(2016-08-07 15:41:12)
458.  黒蜥蜴(1968) 《ネタバレ》 
 美輪明宏こと丸山明宏の妖艶さに酔いしれる映画ですね。   とはいえ、あくまでも「女装した男性の美しさ」といった感じであり、劇中では純粋に女性として描かれている事に、多少の違和感もあるのですが、それでも文章にすれば「主演女優」「彼女」という表現が自然と飛び出してくるのだから、我ながら驚かされます。   そんな彼女と「人形」とのキスシーンにも「三島先生、何やってるの!?」と吃驚。  著作を読む限りでは、結構お堅い芸術家肌の人というイメージがあったのですが、こんな剽軽な一面もあったんだなと、妙に感心させられました。   脇役である松岡きっこも、主演女優とは正反対の、まだ初々しい純情な美しさがあり、画面に彩を添えている形。  その一方で、探偵の明智役には、もっと美男子を配しても良かったのでは? と思ったりもしたのですが……この物語において黒蜥蜴が惹かれたのは「明智小五郎の容貌」ではないのだから、知的さを漂わせる木村功で正解だったのでしょうね。  落ち付いた声音の魅力を、長椅子越しに黒蜥蜴と対話するシーンなどで、じっくり堪能する事が出来ました。   ラストシーンの耽美さも勿論素晴らしかったのですが、個人的に最も心惹かれたのは、黒蜥蜴が男装した姿を鏡に映し出し、その「もう一人の自分」に語り掛ける場面。  「返事をしないのね。それなら良いわ」  「また明日、別の鏡に映る、別の私に訊くとしましょう」  という台詞回しには、本当に痺れちゃいましたね。  本作における黒蜥蜴は、普段の姿は「女装した男」にしか思えず、そしてこの場面においては「男装した女」にしか思えないという、実に倒錯性を秘めたキャラクターなのです。  それゆえに「本当の私なんてない」という台詞も切なく聞こえ「男に生まれてしまった女の悲劇」あるいは「女に生まれてしまった男の悲劇」を感じさせてくれます。   存在自体が罪深く、哀しくも美しい人物として、観賞後も、何時までも心の中に残ってくれる。  そんな素敵なヒロイン、素敵な女優と出会えた、魅惑の八十六分でありました。
[ビデオ(邦画)] 7点(2016-08-07 08:32:28)
459.  江ノ島プリズム 《ネタバレ》 
 「デロリアンは何処だ?」「(ドラえもん風に)タイムウォッチ~」などの台詞には、クスッとさせられました。   前半部分はコメディタッチで、明るいハッピーエンドを予想させる流れだったにも拘らず、後半からシリアス濃度が高くなり、自己犠牲を伴った切ないハッピーエンドに辿り着く……という流れだったのも、良かったですね。  作風が途中で百八十度変わる訳でもなく、ちゃんと冒頭から人死にを扱ったりしていて(この映画は完全にコメディという訳ではありませんよ)と伏線を張っておいた形だったので、作品の空気が徐々に変わっていく様も、自然と受け入れられた感じ。   個人的には、主人公の性格がワガママ過ぎるというか「相手が嫌がっていても、自分が決めた事はやり通す」ってタイプだったのが、ちょっと抵抗あったんですけど……  それよりも気になったのは、携帯電話の扱い。  途中(何で携帯を使わないの?)と思わされる場面が多くて、映画のストーリーに没頭出来なかったのですよね。  もしかして、この世界には携帯電話は存在しないのか……とも思ったのですが、そういう訳でもなさそう。  ならば、時代設定を1980年辺りにするか、あるいは劇中にて「誰かがタイムトラベルを行った副作用で、携帯電話が発明されない世界になっている」という設定を付け足した方が、自然に受け入れられた気がします。  後者の場合は、タイムパラドックスについて説明する際に「時間改変によって、元の世界に存在していた何かが失われてしまう可能性もある」「この世界も、既に変わってしまい、何かが失われた後なのかも知れない」「たとえば、手のひらサイズで持ち運べる電話とか」などと言わせるだけでも、かなり印象が違っていたんじゃないでしょうか。   あと、中盤辺りから完全にヒロインと化す「タイムプリズナー」の今日子ちゃんは可愛かったのですが、ちょっと扱いが大き過ぎたようにも思え、本筋から外れてしまった感があり、残念。  思い切って彼女が主役級の映画にするか、もっと主人公との絡みを減らして、脇役に留めておいた方が良かった気がしますね。  ラストにて、他の人物が主人公を忘れてしまったとしても、今日子ちゃんだけは憶えているというのは救われるものがあり、嬉しかったのですが……  本当に「ただ憶えているだけ」であり、その後に主人公と再会するのかどうか不明というのも、流石に中途半端なんじゃないかと。   主人公が最後に振り返り、もはや他人となった幼馴染の二人を見つめる演出なども、味わい深くて魅力的だとは思うのですが(本当にそれで良かったのか?)という疑問も残ってしまい、どうもスッキリしないんですよね。  元々親友の命を救うのが目的だったとはいえ、相手にとっては命よりも大切かも知れない思い出を、主人公の独断で失わせているってのが、納得出来なかったです。   ……とはいえ、そんな疑問、ちょっとした後悔まで味わえるという辺りが、結果的に、本作の青春映画としての完成度を高めていた気もしますね。  納得いかない事もあるし、正しい選択じゃなかったかも知れない。  それでも、学校での花火や、皆で記念写真を撮った瞬間など、楽しい事も確かにあった……と、しみじみ後から思い出せる形になっている点に関しては、好みの映画でありました。
[DVD(邦画)] 5点(2016-08-06 19:51:47)
460.  故郷(1972) 《ネタバレ》 
 渥美清の演じる魚屋が「船長」と「労働者」の違いについて語る件が印象深いですね。  労働者よりも仕事がキツく、給料も安いと言われてしまうような、石船の船長という仕事。  それでもなお「叶うならば、ずっと船長のままでいたい」と願い続けていた主人公の姿に、切ない気持ちにさせられました。   途中、上述の魚屋が風邪を引いてしまい、ゴホゴホと咳込んでいる姿を目にした際には「もしや、彼が入院なり病死なりしてしまう展開じゃなかろうな……」と身構えてしまいましたが、そんな事も無く、最後まで明るく人懐っこい姿で映画に彩を添えてくれて、一安心。   主人公である夫は「船長」その妻は「機関長」という呼称も、何やら子供時代の遊びのような、不思議な楽しさがあり、彼らが石船の仕事に愛着を持っている理由も、分かるような気がしましたね。  冒頭の、船で大量の石を運び、それを海中に流し込むという一連の作業も、何だかアトラクションめいた趣きがあり、視覚的にも満足。  家族で力を合わせる姿を見ていると、それが単なる「仕事」の一言では片付けられない、互いの絆を強める為の儀式であるようにも思えてきました。   結局、この映画の一家は「都会の造船所で働く為」「大好きな船を捨てて、大好きな島からも去らなければいけない」という、辛い決断を下す事になります。  それでも、必要以上に陰鬱にはならず、どこか明るい空気すら漂っているのは「家族が生きていく為」という目的意識が、しっかりと描かれているからなのでしょうね。   ちょっと「田舎」や「船仕事」を美化し過ぎているというか、ともすれば「都会」や「工場作業」に否定的な印象を与えてしまう作りなのは気になるところですが、本作の場合は、そういった視点で描くのが正解だったのだろうな、と思えました。
[DVD(邦画)] 6点(2016-08-04 16:05:28)
030.49%
110.16%
230.49%
3172.77%
4437.00%
512420.20%
620633.55%
712320.03%
86510.59%
9203.26%
1091.47%

全部

■ ヘルプ
© 1997 JTNEWS