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ゆきさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 614
性別 男性
自己紹介  洋画は字幕版も吹き替え版も両方観た上で感想を書くようにしています。
 ネタバレが多い為、未見映画の情報集めには役立てないかも知れませんが……
 自分と好みが合う人がいたら、点数などを基準に映画選びの参考にしてもらえたら嬉しいです。

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441.  Mr.ズーキーパーの婚活動物園 《ネタバレ》 
 当初ヒロインかと思われたステファニーの言動が酷過ぎる為、早い段階で(こりゃあ別の女性と結ばれるな)と読めてしまう事が難点ですね。   どうせ結ばれない、結ばれない方が良いと思ってしまうのに、作中の主人公は「ステファニーと結ばれたい」という一心で行動しているものだから、どうしても感情移入出来ないし、その恋を応援する事も出来ないという形。  同僚のケイトに頼み「ステファニーにヤキモチを妬かせる為、恋人のフリをする作戦」を敢行する辺りからは(これはケイトと結ばれるオチか)と分かり、王道なラブコメとして楽しめましたが……ちょっと尺のバランスが悪かった気がします。   冒頭でプロポーズを断られた主人公が、今度はステファニーの方からプロポーズされて、それを断る流れなどは痛快なものがあったし、冒頭と同じようにバンドが再び現れて、陽気に唄い出すのも可笑しかったしで、終盤の展開は本当に良いんですけどね。   動物園の飼育員である主人公が、人間不信のゴリラと少しずつ友情を深めていく流れも面白かったです。  ゴリラに服を着せて店に連れて行き、そこで楽しく騒いだり、腕時計をプレゼントしてみせたりする辺りなんかは、本作の白眉かと。   その他、不満点としては、ゴリラにスポットが当たり過ぎているせいか、他の動物が殆ど目立たず、主人公の恋を叶える上で活躍していないように思えちゃった事。  そして、カラスが他の動物から仲間外れにされるネタを繰り返した以上は、最後に「カラスも動物園の仲間だ」と、しっかり皆から認められるシーンが欲しかったとか、その辺りが挙げられそうですね。   エンドロールでのNG集も楽しかったんですけど「動物虐待している訳では無い」とばかりに、主人公がダチョウに乗ろうとして転ぶシーンは「CGによる合成だった」と種明かしする件があったのは、凄く残念。  自分がお気に入りだった主人公とゴリラが絡むシーンも、大半は合成だったんだろうなぁ……なんて思えてしまい、大いに白けちゃったんですよね。  そこは何というか「気付かせて欲しくなかった」という想いが強いです。   それと、原語では凄く豪華な面々が動物達の吹き替えをやっている訳だし、どうせなら「ニック・ノルティ」「アダム・サンドラー」「シルヴェスター・スタローン」の三人が、ちらっとでも出演してくれていたら、もっと面白くなったかも知れませんね。   そんな具合に、色々と気になる点もあったけど、基本的には安心して楽しめる作品でしたし、後味も悪くない。  及第点以上のラブコメ映画だったと思います。
[DVD(吹替)] 6点(2017-11-28 21:28:47)(良:1票)
442.  コンゴ 《ネタバレ》 
 こういった冒険物は好きなジャンルなので、楽しく観賞する事が出来ました。   なんといってもマスコット……いやさヒロインとさえ呼べそうなエイミーの存在が魅力的でしたね。  手話をするゴリラというだけでなく、特殊な機械の音声によって、人間の言葉を話せるようになっているという設定が、可愛さに拍車を掛けています。  飼い主の男性に甘えて、抱っこされたり、くすぐったりされるのが好きな性格。  そして、彼に人間の女性が近付いたら、すぐにヤキモチを妬いちゃうような辺りも、何とも愛らしい。  人間の言葉を憶えてしまったがゆえに、同じゴリラからは忌避されてしまった際に浮かべる表情なども、切なさを感じられて良かったです。   欠点としては、そんなエイミーとの別れのシーンが、やや唐突に思えてしまった事。  そして、敵となる「番人」達が小柄なゆえか、恐怖感や緊迫感が伝わってこなかった事が挙げられそう。   また、本作は「エイミーを故郷のコンゴに帰してあげる」のを目的とした男性の他にも「現地で遭難した元恋人の男性を救出する事」を目的とした女性主人公も存在しているのですが、そちらには感情移入出来なかった点も残念。  何せ彼女の上司が、絵に描いたように嫌な奴であり、実の息子の安否よりも「レーザー兵器の材料となる特殊なダイヤモンド」の入手を優先する性格だったりするもんだから、作中で彼女のモチベーションが上がらないのと同じように、観ているこちらとしても、応援する気持ちが薄れちゃうんですよね。  本来の目的である「元恋人の救出」に関しても、冒頭の映像で死んだ事が示唆されており、案の定、終盤にて死体を発見する展開なので「あぁ、やっぱり……」としか思えない。  それらの要素は「最後の最後で、上司の命令を無視する爽快感を与える為」「実は死んでいたという落胆を与えない為」なのでしょうけど、やはりスッキリしないものが残りました。   飛行機からパラシュートを付けてダイブしたり、急流の河をボートで下ったり、キャンプしてテントで眠ったり、登山したりと「冒険旅行」のツボを押さえた作りであった事は、素直に嬉しかったですね。  月夜にボートを漕ぐシーンなんかも、幻想的な美しさを味わえて、お気に入り。   命の危機が感じられない作りである事に関しても、裏を返せば「安心して、驚いたり緊張したりせずに楽しめる」という長所に成り得るんじゃないか、とも思えてくる。  そんな憎めない一品でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2017-11-26 19:18:51)(良:1票)
443.  シェアハウス・ウィズ・ヴァンパイア 《ネタバレ》 
 観賞中「何故撮影者は危害を加えられないの?」「撮影者は人間じゃないの?」などの疑問が、頭の中を渦巻く事になる本作品。  一応「十字架を身に付けている」「取材対象から保護も受けている」と説明されているんですが「狼男やゾンビには十字架なんて関係ないじゃん」「撮影者も人間なら襲われているはずじゃん」といった具合に、次々と矛盾点が浮かんで来ちゃうんですよね。  それらを黙って飲み込むか、あるいは笑ってツッコんでみせるか、どちらかが出来る人じゃないと、この映画は肌に合わない気がします。   ……で、自分としてはツッコみつつ観賞するスタイルを選んだのですが、これが正解。  変に真面目ぶらず、リラックスして楽しむ事が出来ました。   比重としては「吸血鬼達の生態を捉えたモキュメンタリー映画」という以上に「若者達の同居生活を描いた青春映画」としての側面が強い内容になっているのも、嬉しいバランス。  何せ同居人同士で喧嘩する理由が「皿を使った後は自分で洗え」だったりしますからね。  そういった些細な事が原因で衝突するのは、人間も吸血鬼も変わらないんだなぁ……なんて、ほのぼのしちゃいました。   串刺し公ヴラドというビッグネームが主人公グループの中にいて、まるで「昔はやんちゃしていた」みたいなノリで「昔は憂さ晴らしに拷問していた」とインタビューで語っちゃう辺りも、ブラックだけど面白い。  こういう「若気の至り」理論で過去の悪事をサラッと語っちゃう人、結構いますからね。  架空の存在であるはずの吸血鬼が、現実の存在である人間をパロっているという図式。   「鏡に映らない」「招かれないと建物に入れない」「銀を身に着けると肌が焼ける」などの吸血鬼の弱点を、しっかりコメディ仕立てで描いている辺りも良かったです。  (こういう作風なら、そこは押さえておいてもらわないと困る)って部分を、しっかり押さえてくれているという安心感。   高い場所を掃除する時や、ビリヤードで難しい球を突いたりする時に、フワッと宙に浮いてみせて(あっ、やっぱり空を飛べるって便利だな……)と感じさせてくれるのも良い。  獲物を誘い込む為に考え抜いたファッションで夜の街に出掛けたら、ゲイに間違われちゃうオチなんかも好きですね。  前者は吸血鬼だからこそのユーモア、後者は人間の若者達でも有り得そうなユーモアって感じで、両者がバランス良く盛り込まれていたと思います。   幼い頃に吸血鬼になった女の子は、幼い姿のままなのでロリコン男を誘って血を吸うというのには(なるほど……夜遊びしている子供は少ないだろうし、大人を狙うのが正解だな)と納得させられたし、その一方で(じゃあ少年吸血鬼はどうするんだ? ショタコン男を誘うのか?)という疑問も湧いて来たりして、そんな感じでアレコレ考えさせられるのも楽しかったですね。  この辺りは、端的で不完全な描写をサラリと見せるからこその長所、空想の余地を与えてくれる世界観って感じでした。   そんな「ロリコン」がラストの伏線になっており、主人公格である吸血鬼のヴィアゴ(=見た目は好青年)が九十六歳の老婆(=見た目と年齢が同じ)と結ばれて「僕の方が四倍も年齢が上」「ロリコンって言われたって良い」と誇らしげな笑顔で語ってみせるのも(そう来たか!)と思えて楽しかったです。  ここの展開に関しては、正直ちょっと伏線が足りないというか「彼女に告白出来ずに迷っていたヴィアゴの背中を、友人が後押しする」的なシーンが欲しいという不満もあるんですが、視覚的な面白さがそれを補ってくれた気がしますね。  作中、唯一の人間の仲間としてシチュが登場する訳だけど、そんな彼が劇中で言われている通り「本当に血の気が良くて、吸血鬼目線だと凄く美味しそう」なルックスをしている辺りも、これまた説得力があって良かったです。   シチュの親友であるニックが「吸血鬼になった事」を彼に告白し「ダチの血は吸わない」と宣言してみせて、人間と吸血鬼との友情を描いている辺りも好きですね。  ここの場面が一番「青春映画」って感じがしました。   棺の中でマスターベーションする場面とか、血の嘔吐を繰り返す場面とか、微妙に感じる部分もあったし「自分も人間から吸血鬼になりたくて、下僕として彼らに尽くす女性」の扱いや顛末に関しては(本当にそれで良いの?)と思う部分もあったりして、絶賛するのは難しいんですけど「好きなタイプの作品」である事は、間違いないです。  エンドロール後には吸血鬼の特技「催眠術」によって、観客にこの映画の内容を忘れさせるというオチが付く訳だけど、そのまま素直に忘れちゃうには、少々勿体無い品でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2017-11-25 12:53:23)(良:2票)
444.  アップルゲイツ 《ネタバレ》 
 巨大カマキリ一家が人間に成り済まし、原子力発電所を破壊しようと画策するという、実にトンデモない映画。   とはいえ「昆虫と人類との戦い」を描いたアクション映画ではない、というのがポイントですね。  環境破壊によって住処の森を奪われ、復讐を果たす為、人間社会に潜入したはずの一家が、段々と「人間の毒」に当てられていく。  その様が皮肉たっぷりに描かれている、ブラックユーモア満載の映画なんです。   クレジットカード、酒、麻薬、同性愛、不倫と、昆虫だった頃には考えられない悪徳の類に没頭していく家族の姿が、妙にリアルで、目が離せない。  買い物中毒になってしまう奥さんの姿は、特に恐ろしくて「これは実生活で反面教師にしないとダメだ……」なんて、自らに言い聞かせちゃったくらいです。   「繭」にされた人間というビジュアルも、中々忘れ難いインパクトがありましたし、人間の姿から虫の姿へと変身する特撮も、適度にグロテスク。  虫が潰されて体液が飛び散る描写とか、目を背けたくなる場面も多いんですけど、全編がコメディタッチなせいか、不愉快というほどじゃないバランスなのも嬉しかったですね。  娘が人間の青年と交尾するシーン、それによって産み落とした卵を踏み潰されるシーンなんかも、本当に恐ろしくて、悲しくなっちゃいました。   一家の正体が露見し、さながら魔女狩りのように追い詰められていく場面では、バッドエンドも覚悟しましたが、何とか一家は無事に助かり「我々と人間は共存出来る」という結末に着地してくれた為、後味も良かったですね。  「娘とレズ関係になっていた恋人は、どうなったの?」とか「クライマックスの昆虫同士の戦いが、アッサリ決着付き過ぎ」とか、気になる点や不満点もありますけど、全体的には好印象。   意外な掘り出し物でありました。
[ビデオ(字幕)] 6点(2017-11-24 00:46:40)
445.  プライベート・ベンジャミン 《ネタバレ》 
 展開上「好きな時に除隊出来る」という前提は覆されるだろうと思っていましたが「そんな約束を信用したの?」と一言だけで片付けられたのには吃驚。  今も昔も、こんな詐欺同然のやり口がまかり通って、しかも「騙される方が悪い」となったりするんだから恐ろしい話だなぁ……なんて、映画の本質とは関係無い部分で、つい考え込んでしまいました。   すぐ近くにある煙草やマッチを取ってくれと命じる父親、平気でメイドと浮気する恋人など「男性の傲慢さ」「女性を見下している感じ」は上手く描かれていたと思いますし、それらが伏線として機能している脚本は、お見事。  ただ、本作にはどうしても「女性の自立を描いた映画」としてより「軍隊映画」として観た方が面白い、なんて印象も受けちゃいましたね。   過保護で支配的な両親への反発から、落ちこぼれだったベンジャミン二等兵がキッと目の色変えて生まれ変わり、逞しい兵士へと成長していく。  その過程が魅力的であっただけに、訓練学校を卒業して以降の展開は、蛇足に思えてしまいました。   優等生のウインターや、ルイス大尉が憎まれ役のまま終わるというのも、ちょっと寂しい。  特に後者に関しては、作中での認識ほど「嫌な上官」とは思えなかったのですよね。  シャワーに悪戯して仕返しする件なんて「そこまでやらなくても……」と、彼女の方に同情しちゃったくらいです。  勤務先のパリで彼女と再会し(さぁ、どうなる?)と期待したのに「恋人の男性が共産主義者であると難癖を付けられた」程度で終わりというのも、流石に拍子抜け。  ベタかも知れませんが、対立していた彼女達にも「一人前の兵士」として認められ、分かり合う展開の方が、カタルシスがあって良かったんじゃないかなと、つい考えてしまいました。   ラストにて、不貞を働いた恋人を殴って終わるのは痛快であり「良くぞやった!」という感じ。  色々と不満点もあるんですが、主演のゴールディ・ホーンを眺めているだけでも楽しいし、終わり方も気持ち良いしで、それなりの満足感を得られた映画でした。
[DVD(字幕)] 6点(2017-11-23 16:44:36)(良:2票)
446.  親愛なるきみへ 《ネタバレ》 
 アクションではなく恋愛物のチャニング・テイタム主演映画は、これが初体験です。  こういった設定の映画では、どうしても主人公がナヨナヨしくて軍人には見えないというパターンが多くなってしまいそうなのですが、本作に関しては心配無用。  見るからに筋肉質で厳つい彼だけど、繊細な心情も丁寧に表現する演技を見せてくれて、違和感なく楽しむ事が出来ました。   さぁ、これからどんなストーリーが展開されるのだろうと期待が膨らむ序盤。  そして、中盤以降は……正直、王道過ぎるというか、何処かで観た事があるような展開に収まってしまったように思えて、残念でした。  遠距離恋愛をテーマとして扱っている以上、それは外せないのかもしれませんが「男が留守にしている間に寂しさに耐えかねて他の男と結ばれてしまう女」なんてものを、まさか終盤で堂々と見せられる事になるとは予想がつかず。  自閉症の父との絆、そして別れに関しても真面目に描かれていたとは思うのですが、それだけに優等生過ぎて面白みに欠けるように感じてしまいました。   一方、冒頭のシーンにて(あぁ、これは死ぬ間際の主人公が過去を回想するという形式なのか)と安易に考えていたところで、それを裏切ってくれる形となったのは気持ち良かったですね。  死の床にある父に向って、主人公が読み上げる手紙。  その文中にある「俺はコインだ」との言葉に象徴されるように、ストーリーの主軸は「コイン」と「父と子の絆」であって、恋愛要素はオマケに過ぎなかったのではないかな、とも思えてきます。  両方の要素を備えているからこそ魅力的なのかも知れませんが、自分の好みとしては、家族を主題にした映画か、恋愛映画なのか、どちらかに絞って描いて欲しかったところ。   色々と気になる点も多かったのですが、最後は主人公の男女が再会してハッピーエンドで〆てくれた辺りなんかは、何だかんだで嬉しかったです。  回り道はしたけれど、収まるべきところに収まったという形で、安心感がありました。
[DVD(吹替)] 5点(2017-11-22 01:52:29)
447.  それでも恋するバルセロナ 《ネタバレ》 
   (結局、ヴィッキーとクリスティーナどっちが主役なの?)とヤキモチしたりもしたのですが、終わってみれば良いバランスだったように思えますね。    どちらかといえばクリスティーナの出番が少なめで、影が薄く無個性になってしまいそうなところなのに「欲しくないものは分かるけど、何が欲しいかは分からない」などの台詞によって、彼女というキャラクターを的確に表している辺りも上手い。  この手の恋愛映画ではお約束の「現実的な女性」「ロマンスを求める女性」という組み合わせな二人だったけれど、実は前者の方が内心ではロマンスを求めており、後者の方が意外と根っこの部分は現実的という対比も面白かったです。   序盤にて「彼はありがちなタイプじゃない」というクリスティーナの言葉に対し「ありがちなタイプって、ダグの事を言っているの?」と喧嘩腰に反論するヴィッキーという場面を描く事により「実はヴィッキーは婚約者のダグに物足りなさを感じている」と、観客に自然と覚らせるのも良かったですね。  こういう描写で、わざとらしさや押し付けがましさを感じさせず、すんなり理解させてくれるのって、凄い事だと思います。   「翻訳で失われるものは多い」という、字幕や吹き替えに頼っている身には耳の痛い言葉が劇中で飛び出す辺りも印象的。  この映画に限っても、字幕では「成就しない愛はロマンチックだ」と表示される台詞が、吹き替えでは「成就しない愛だけが本当にロマンティックだ」という台詞になっていたりするんですよね。  どちらかといえば、後者の言い回しの方が好み。  確かに色々と失われているかも知れないけど、翻訳によって生み出されているものも多そうだなぁ……と感じました。   ラストには「非現実」を求めた二人がそれに失望し「現実」に戻っていくオチとなる訳だけど、そんな二人が、実に味わい深い表情を浮かべていた辺りも良かったです。  安易な表現になってしまいますが「大人になった」というか、憧れていたロマンスさえも結局は下らないものだったと知ってしまった虚しさというか、そういうものを感じさせてくれました。   しかしまぁ、あれだけの事を「つかの間の恋」の一言で済ませ、婚約者には真実を告げないまま夫婦になるという辺り、女性は強かというか、怖い存在だなぁ……と再認識。  主人公の女性達に関しては、どうも感情移入出来なかったというか、最後まで距離を感じていた気がしますね。  それと、劇中では基本的に「退屈な男」とされている婚約者のダグが優しくて良い奴であり、作中の美女達にモテまくるファンの方が薄っぺらで魅力が無いように思えた辺りも興味深い。  これって作り手側も意図的にそうしたのかどうか、気になるところです。   観客もバルセロナを旅行した気分になれるという、バカンス映画に必要な要素がしっかり詰まっている辺りは、好印象。  途中出場にも拘らず、大いに存在感を発揮してくれたペネロペ・クルスも、忘れ難い味がありましたね。  ウディ・アレン監督作とは肌が合わない事も多かったりするのですが、これは中々楽しめた一品でした。
[DVD(吹替)] 6点(2017-11-21 12:43:39)(良:1票)
448.  カイト/KITE 《ネタバレ》 
 元々はアダルトアニメ作品だった原作「A KITE」を一般向け作品として実写リメイクしたという本作。  何となく「レジェンド・オブ・パイレーツ」という映画を思い出させるエピソードですが、そういった「元々はアダルト物である」という点については、上手く隠しているというか、殆ど感じさせない作りとなっていますね。  寂しい事なのかも知れませんが、個人的には好印象でした。   それで、自分は原作アニメの方についても視聴済みなのですが、こちらは素直に「面白い」と言える作品だったと思います。  当サイトの採点基準に則るのであれば「7点」といった感じで、アニメならではの破天荒なアクション演出の数々、大いに楽しませて頂きました。  残念ながら(?)アダルト要素を排した「インターナショナルバージョン」であった為、途中で場面が飛び飛びになってしまう事も併せ、ストーリー面では疑問もあったのですが、満足度は高めの一品でしたね。   で、この実写版「カイト/KITE」なのですが……元ネタのアニメ版を観ていると、致命的な欠点があると思うのです。  それは何もクオリティの差だとか、そんな事では無くて、こちらの実写版では最大のオチとして扱われている「主人公の両親を殺したのはアカイである」という情報。  これって、アニメ版では始まってすぐに分かる事というか、基礎設定みたいなものなのですよね。  「主人公である少女サワは幼い頃に両親を殺されてしまい、犯人である悪徳警官のアカイのもとに引き取られる事になる。  彼女は何時かアカイに復讐を遂げる為に、あえて彼の言いなりになって殺人技術を磨き、殺し屋稼業を続けているのだった……」   というストーリーな訳ですから、サミュエル・L・ジャクソン演じるアカイが黒幕である事なんて、こっちはとっくに承知の上。  にも拘らず、記憶を失ってしまう薬によって主人公は操られ、何も知らないままアカイを信用しているという時点で、致命的に感情移入が出来なくなってしまったのです。   その代わりのように「アカイは純粋な悪人ではなく、意外と良い奴だった?」という要素も盛り込まれており、ドラマを盛り上げているとは思うのですが、これも今一つノリ切れず。  ネタバレ済みの映画を観るのは本作が初めてではありませんが、今回に関しては「よりにもよってそこを、どんでん返しのオチに使っちゃうのか……」という居心地の悪さを、どうしても感じてしまいましたね。   アクションシーンは頑張ってくれていたと思いますし、役者さん達の演技にも特に不満などは無かっただけに、予備知識無しでコチラを先に観ていたら、もっと楽しめたかも知れません。  上述の原作アニメ版と点数が逆転していた可能性だってあると思います。   自分はネタバレに対して神経質な人間では無かったはずなのですが 「一時的に記憶を失わせる薬、欲しいなぁ……」  と、久々に思わされた映画でありました。
[DVD(吹替)] 5点(2017-11-20 15:27:02)(良:1票)
449.  ムーンライズ・キングダム 《ネタバレ》 
 どこか見覚えのある作風だなぁ、と思っていたら「ザ・ロイヤル・テネンバウムズ」の監督さんだったのですね。納得。  あちらも出演者が豪華で、かつ自分好みな顔触れだったのですが、こちらの品でもそれが共通しているみたい。  自分としてはエドワード・ノートン目当てで観賞したもので、本当に脇役扱いである事に驚かされました。   作風としては上品でセンスの良い、大人のファンタジーといった趣きですが、意外と性的な表現もあったりする、際どいバランス。  それも直接的でドギツイ代物ではなく、まだ性知識の無い子供でもドキドキしそうな作りになっている事には、感心させられましたね。  狭いテントの中で、半裸の女の子と二人きり生活を送る様を描いてくれたりして、ある種の願望を叶えてくれる映画としても評価出来そうです。  それと、劇中で女の子が初めてピアスを付けるシーンがやたら色っぽく描かれていた気がするのですが、あれはやっぱり「穴を開ける」という事で、性行為の諷喩なのかな? とも思えるのですが、真相や如何に。   そういった意味で、子供同士の恋愛映画としては満足だったのですが、大人側の描写には少し不満もあったりします。  ノートン演じるウォード隊長と、ブルース・ウィリス演じるシャープ警部を、今一つ応援する気持ちになれなかったのですよね。  理由としては、この二人が主人公達の人格を理解し、尊重し、彼らを好きになった上で行動しているというよりも、単に「少年収容所に送るのは可哀想だから」という、同情心ゆえの行いに思えてしまったのが大きいです。  彼らは主人公達に味方してくれる「良い大人」代表なのでしょうし、もう少し両者の心の交流というか、相互理解を示す場面が欲しかったところ。   心中オチも有り得るかと思われた展開の中で、最後はハッピーエンドに着地してくれた事は、素直に嬉しかったです。  まだまだ前途多難な恋路のようだけど、それもまた発展途上である子供達の物語としては相応しい結末かな、と思えました。  劇中の二人にとっても、この子供時代の思い出は、素敵なものとして胸に残りそう。   奇妙な安心感を与えてくれる、独特の映画でした。 
[DVD(吹替)] 6点(2017-11-18 18:51:55)(良:1票)
450.  バレット(2012) 《ネタバレ》 
 「女子供は殺さない」「義理人情に篤い殺し屋」というキャラクターを主人公に据える前時代的な潔さが、もう天晴。  とにかく勧善懲悪が徹底していて、敵を次々に殺しまくり「死んでも誰も悲しまない悪党が死んだだけ」と堂々と語ってみせるのだから、これは凄い事です。  上記の台詞に関しては、正直ちょっと引いてしまったりもしたのですが(きっと、この映画の世界では本当にそうなんだろうな……)と、納得させられる力強さがありましたね。  往年の名匠ウォルター・ヒルだからこそ、出来た事なのかも知れません。   そして、とっくに承知の上なはずだったのですが、それでもシルヴェスター・スタローンの風格と肉体美には、改めて惚れ惚れ。  主演俳優を格好良く撮るという意味合いにおいては、文句無しで合格だったかと思う次第です。   その一方で残念なのは、スタローンにばかり比重が偏り過ぎて、相棒となる刑事の影が薄く、バディムービーとしての魅力には欠けるように思えてしまった点でしょうか。  何せ一番印象に残る活躍が、携帯電話で警察のデータベースから情報収集するという、刑事なら誰でも出来そうな事だったりするのだから、何とも寂しい限り。  ラスボスとなる殺し屋を撃ってスタローンを救ってみせる場面も、あるにはあるのですが、正直そこに関しては「元相棒の形見であるナイフを首に突き刺す」という形で、復讐のカタルシスと共に終わらせておいた方が良かったんじゃないか、と思えてしまいました。   途中、クリスチャン・スレーターがアッサリ殺される展開に関しても(まぁ、スレーターだしなぁ……)と、彼を好きなはずの自分ですら納得してしまうような予定調和の中にあるのに、相棒の刑事は心底から吃驚して「何故殺した?」と動揺していたりするものだから、ちょっと感情移入出来なかったです。   そんな本作の価値を大いに高めているのは、斧を武器とした武骨なラストバトルでしょうね。  相手役となるジェイソン・モモアも雰囲気たっぷりで、非常に重量感のあるアクションとなっています。  ぶつかり合う斧の刃先からではなく、互いの筋肉から火花が飛び散っているかのような迫力には、大いに興奮させられました。   スタローンが相棒の肩を撃って、彼の無実を証明してみせた後に、悠然と立ち去っていく後姿なんかも、これまた素敵。  色々細かな不満はあったりしても、その格好良過ぎる背中を見つめるだけで、もう満足させられちゃうのですよね。  何とも罪作りな背中でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2017-11-18 18:43:16)
451.  2ガンズ 《ネタバレ》 
 デンゼル・ワシントンにはコミカルな印象が無かった為、この映画には驚かされました。  どちらかといえばマーク・ウォールバーグのファンであるだけに、彼よりも笑わせてくれるシーンが多い事には、素直に感服です。  特に好きなのは銀行強盗を終えた後、周りを見回して「あれ? 何で警察が来てないの?」と戸惑う姿ですね。  覆面越しで表情は見えないはずなのに困惑が見て取れて、上手いなぁと感じます。   主人公二人がどちらも「悪の組織に潜入捜査している善人」という設定に関しては、今一つ活かし切れていないようにも思え、残念。  中盤にて互いの正体が分かった時にも「お前、裏切り者だったのか!」って具合にショックを受けて喧嘩になっていますし、それならどちらか片方は元々悪側の人間で、改心する展開でも良かったのではないかと。  ラストの「これで俺ら、ファミリーだ」という台詞に関しても、元々二人は同じような立場、どちらも国家権力側の人間であった訳だから、垣根を越えて分かり合えたというカタルシスが乏しかったですからね。  「3で同時に放そう」の件といい、二人を徹底的に似た者同士として描く為だったのかも知れませんが、もう少し何か「この設定ならではの利点」を感じさせてもらいたかったところ。   上述のように気になった点もあるけれど「そんな細かいこと、ツッコむ方が野暮だぜ!」と思えるような魅力があるのも確かですね。  冒頭の「ドーナツが美味い店」でのやり取りも良いのですが、最後の銃撃戦にて、互いに背中を預けて円を描くように撃ちまくるシーンなんかも、お気に入り。   リラックスして、お気楽モードで楽しめる映画でした。
[DVD(字幕)] 6点(2017-11-18 18:09:08)
452.  スーパーヒーロームービー!! 最'笑'超人列伝 《ネタバレ》 
 基本的なストーリーは「スパイダーマン」(2002年)を踏襲している事。  そして脇役ながらもレスリー・ニールセンが出演している事。   この二つの要素が、効果的に作用しているように思えましたね。  前者は「パロディ映画だけど、話の筋を追い掛けているだけでも面白い」という結果に繋がっているし、後者に関しては流石の貫録で、画面をビシッと引き締めてくれました。   下ネタもあったり、人死にが絡んだ際どいネタもあったりと、多少鼻白む場面もありましたが、相対的には楽しめた時間の方が長かったです。  肖像画と思ったら本人だった件と、ネイルガンでのやり取りに「五分だけくれ」の台詞なんかが、特にお気に入り。   一応はヒーロー映画調なのに最終決戦が盛り上がらない点や「とうとう空を飛べた」というハッピーエンドかと思いきやヘリに激突オチが付く辺りは微妙に思えましたが、その後のNG集(というか何というか)でトントン、といった感じ。  劇中曲も、結構良かったと思います。   こういったパロディ映画は基本的に「一度観たら、もう二度と観ない」というパターンが多かったりするのですが、これは例外的に「忘れた頃にでも、もう一度観てみたいな」と思わせるものがありました。
[DVD(吹替)] 6点(2017-11-18 18:05:30)
453.  アリゲーター(1980) 《ネタバレ》 
 「元祖ワニ映画」というよりも「ジョーズの便乗映画」という印象の方が強い一本ですね。  襲い掛かる時のBGMまで似ているし「怪物に襲われたと思ったら、人間による悪戯だった」と判明する場面なども踏襲している形。   これだけ書くと、如何にも粗悪な劣化コピーのようにも思えちゃうのですが、然にあらず。  中々面白く、しかも「JAWS/ジョーズ」には無い本作独自の魅力まで感じられたのだから、嬉しかったです。   主人公が頭髪の薄さをネタにされる件なんて、最初はクスリともしなかったのに、その後も繰り返しネタにしてくるもんだから、つい笑っちゃう。  とうとうワニを倒した後のハッピーエンドの場面でさえ「ママもハゲが好きなのよ。家系らしいわ」とヒロインに言わせて終わるんだから、本当に徹底していましたね。  この主人公のキャラ造形って「真面目な刑事」「過去に相棒を死なせたトラウマがある」「動物好きで優しい」といった具合に、かなり王道なもんだから、ともすれば印象が薄くなりそうなものなのに、この「ハゲ」弄り効果によって、色濃く記憶に残ってくれました。   特撮も現代基準だと結構拙いんですが、頑張って巨大に見せようと撮っているのが伝わってくる為、憎めなかったですね。  小さな車や街の模型を作り、そこを普通のワニに歩かせるシーンなんて(あぁ、こういうの好きだなぁ……)と、しみじみ感じちゃったくらい。  ワニの巨大な眼も不気味に描かれていたと思いますし、子供相手でも容赦無く殺す残忍さも良い。  マンホールの下からワニが飛び出し、咆哮するシーンなんかも「怪獣映画かよ!」とツッコませてくれて楽しかったです。   昔の映画らしく、全体的にノンビリした展開なのですが、そんな中「新しい相棒になるかと思われた若い警官」「鳴り物入りで登場したワニ退治の専門家」などの重要キャラが、あっさり殺されるサプライズも用意しており、観客を飽きさせない作りになっているのですよね。  特に後者は、ワニの糞を見つけ「これはでかい」と大喜びするシーンがコミカルで印象深かっただけに(こりゃあ最後まで殺されないで生き残る立ち位置だな)と予想していたところを、裏切られた形。   あえて欠点を挙げるなら、冒頭にて赤ん坊時代の「ラモン」を飼っていた子が成長してヒロインになった訳だから、人を殺しまくっている巨大ワニが「ラモン」であると、彼女が覚るシーンがあっても良かったかも知れませんが、気になったのはそれくらいでした。   クライマックスにて「爆弾のカウントダウン」と「マンホールから脱出する主人公の姿」を一秒毎に交差させつつ描くシーンなんかは、特に素晴らしかったですね。  ここで気分を最高潮に盛り上げてもらい、そのまま爆発によってワニ退治成功→「悲劇は再び繰り返す」な下水道のワニの赤ちゃんを映してエンドロール突入という、実に綺麗な終わり方。  ラスト五分ほどで、一気に作品の印象を良くしてくれた気がします。   正直あまり期待していなかっただけに、意外な掘り出し物でした。
[DVD(字幕)] 7点(2017-11-18 17:46:09)(良:1票)
454.  SHERLOCK/シャーロック 忌まわしき花嫁<TVM> 《ネタバレ》 
 数あるホームズ物の中でも、一番好きな本シリーズ。   舞台を現代に置き換えたアレンジが絶妙だった本編に対し、あえて原作と同じヴィクトリア時代を舞台にした番外編的な作りに、大いに期待が膨らんだのですが……結局は劇中の飛行機よろしく「現代の物語に着地した」感じなのが残念でしたね。  これは、あくまでも全十三話あるドラマの中の一話に過ぎず、さほど特別な話でもないし、これ単品で楽しめるような代物でも無かった、という形。   二十一世紀で活躍する主人公シャーロックが、薬物の作用によって垣間見た「一種の妄想オチ」となっており、それゆえに何でも有り過ぎて、観ていて興醒めしちゃうんですよね。  劇中で女装したモリアーティが「真面目にやれよ」「馬鹿々々しい」とツッコんでいるから、スタッフは確信犯的にやっているんでしょうけど、ちょっとノリ切れなかったです。   せめて「忌まわしき花嫁」事件だけは、キチっと十九世紀の世界で決着を付けて欲しかったですね。  トリックやら犯人やらは明かされているんだから、そのまま素直に事件解決として、その後に現代に視点を移した方が良かった気がします。   ……それでも、流石は「SHERLOCK/シャーロック」とでも言うべきか、魅力的な部分も一杯あって、どうにも憎めなかったりするものだから、困りもの。  「現実に存在するホームズは困った奴なのに、小説では紳士的なヒーローとして書いている」とか「私も挿絵に合わせて髭を生やした」とか、ワトソンがボヤく姿だけでも、面白くって仕方ないんですよね。  (へぇ、こっちの世界のモリーは男性なのか……)と思ったら、実は女性で男装しているオチだった辺りも、良かったです。  「本編に対する番外編なので、性別が違っている事も有り得る」という思い込みを、上手く利用された感じ。  小間使いの少年やメイドなど、十九世紀ならではの人物が登場する辺りも、本作だけの特別な魅力と言えそうですね。   それと、オールバック姿のホームズを演じてみせたカンバーバッチについては、当初こそ(ジェレミー・ブレットに匹敵するくらい素晴らしい!)と思えたのですが……途中で現代のシャーロックに視点が切り替わると(あっ、やっぱり普段の髪型の方が良いな)と思えたりもして、評価が難しかったです。  原作のホームズのルックスに近いのは十九世紀版の方なんでしょうけど、やはり自分としては、二十一世紀のシャーロックの方が好きみたい。   最後の台詞にて「僕は時代を越える男だから」と語られていた通り「現代に甦ったシャーロック・ホームズ」という本シリーズの主人公が、如何に魅力的であるかを、十九世紀の世界を通して再認識させられる。  そんな「第十話」でありました。
[DVD(吹替)] 6点(2017-11-18 01:49:38)
455.  バガー・ヴァンスの伝説 《ネタバレ》 
 とにかくもう、終盤における「真実の申告」の件が素晴らしい。   ボールは動いていないと訴えるキャディーの少年に対し「動いたよ」と告げて、自らペナルティーを背負う主人公ジュナの姿が、実に恰好良かったですね。  ゴルフは最高のスポーツだと笑顔で語った少年にも、自分自身に対しても、嘘なんて吐きたくないという毅然とした態度に、惚れ惚れさせられました。  優勝を争うライバル達も、そんな申告に喜んだりはせず「きっと君の勘違いだよ」と言い出して、堂々たる決着を望むものだから、もうたまらない。  戦っている三人が三人とも誠実で魅力的な人物である為、観ているこちらとしても、非常に爽やかな気分になれるんですよね。  「動いていない」と言えば、周りはそれを受け入れてくれる、誰も自分を嘘吐きと責めたりしないと承知の上で、それでもフェアプレーの精神に則り、真実を告げる主人公。  その姿を、ごく静かに、淡々と「ゴルファーであれば当然の事」とばかりに描いているこのシーン、本当に大好きです。   プレッシャーに耐え切れず、一度は逃げ出そうとしたジュナが「街の為に頑張ってくれ」と人々に声援を送られ、出場する事を決意するシーンも良かったし、ギャラリーが街中の車を集めてライトでゴルフ場を照らし、夜のラウンドを可能にしてくれる展開も、凄く好みでしたね。  ゴルフの試合に熱狂する街の人々が、本当に楽しそうで、ちょっとしたお祭り感覚なのも伝わって来たりして(こういうの、良いなぁ……)と、しみじみ感じたりしました。   決着のロングパットに関しても、それまでの伏線、音楽、演技、カメラワークなど、完璧と言って良い出来栄え。  カップインした瞬間に無音となり、浜辺のバガー・ヴァンスの背中を映し出すシーンで、初めて歓声が聞こえてきて、そこで祝福のステップを見せる演出なんかも、非常に御洒落だったと思います。   で、そんな本作の不満点はというと……実は、タイトルにもなっているバガー・ヴァンスというキャラクター自体には、そんなに魅力を感じなかったりしたのですよね。  ちょっと物言いが説教臭いというか、どこか宗教めいた匂いも漂っていたりして、どちらかといえば苦手なタイプでした。  実際、この映画のメインは明らかにジュナとハーディーの二人なのでしょうし「挫折した天才ゴルファーが、キャディーの少年との交流によって再生する話」というだけでも良かったんじゃないかなぁ……なんて、つい考えちゃいましたね。   それでも、冒頭で述べたシーンに関しては、あらゆるゴルフ作品の中でも一番好きだったりするし「全ては死に際の老人が見た走馬燈」と思わせておいて、やっぱり死なないでゴルフを続けるという惚けたオチも、妙に憎めなくて好き。   時々「面白い」という気持ちよりも「好き」という気持ちの方が強い映画に出会う事があるのですが、どうやら本作もまた、そんな一本みたいです。
[DVD(吹替)] 8点(2017-11-12 20:21:49)
456.  ブルークラッシュ2<OV> 《ネタバレ》 
 あまり期待せずに観賞したのですが、意外や意外。  良質な青春ロードムービーでしたね。   流石にサーフィン場面の美しさでは前作に及ばないかも知れませんが、その他の部分が魅力たっぷり。  金持ちのブロンドお嬢様で、サーフィンなんて出来る訳無いと嘲笑われていた主人公が、見事な波乗り姿を披露して周りを黙らせるシーンなんて、実に痛快です。  ここでハートを掴まれ、以降は最後まで、明るい気分で楽しめたように思えます。   それと、前作と共通している「家族の問題を乗り越えての自己再生」と「プロサーファーになる夢を叶える」という二つの要素を、二人の人物に分担させたのも上手かったですね。  主人公のデイナが一人で思い悩み、精神的に成長したりするのをカメラが捉えている間にも、親友のプッシーはプロになる為に必死に練習しているんだろうな……と、自然と脳内補完出来る形。  二人の出会いと友情、共に特訓するシーンについても描かれているので、主人公と同じようにプッシーを応援したくなるし、彼女が合格した際には、一緒に祝福したい気持ちになれました。   ヒッチハイクしたトラックの荷台に乗せてもらって移動するシーンなど「旅行」「家出」ならではの風情が感じられるのも良かったし、浜辺のコミュニティで皆が住んでいる住居の数々も、思わず泊まってみたくなるような魅力があります。  そんな住居の中の一つが、改造を施したバスであり「その気になれば、何時か動かしてみせる」という台詞が伏線だった事には、本当に吃驚。  立ち退き命令によって、皆の住居が強制的に取り壊されていく中、バスが動き出すシーンの爽快感は、特筆物でしたね。  その後のバス旅行に関しても、短い時間ながら「コミュニティの皆が家族」という絆の強さが伝わってきたし、全員で一斉に橋から河に飛び込むシーンなんかも、凄く好き。   物語のクライマックスとして「プッシーのプロテスト合格」を用意し、そこで最高潮に盛り上げておいて、その後に「父との和解」「母の思い出の場所でサーフィンする主人公」を静かに、情感たっぷりに描いて終わるのも、良い流れだったと思います。   難点を挙げるなら、ティムとグラントとの三角関係が微妙というか、好みでは無かったという事でしょうか。  ティムの方は自然保護活動をしている気の良い青年、グラントの方は少々嫌味っぽい気障なイケメン、という両者のキャラ付けが分かり易過ぎたのですよね。  前者と結ばれるのが見え見えなのに「主人公はグラントの方に惹かれている」「でもグラントは嫌な奴だったと分かる」「結局ティムの方と良い感じに」と、お約束の流れを辿るのが、ちょっと退屈でした。  その後、グラントにも「悪事に手を染めていたのは、経済的に困窮して止むを得ずだった」などと、色々とフォローが入るし、後味は決して悪くないんですけどね。  後は、ゾウやサイと遭遇するシーンが(如何にも合成映像って感じだなぁ……)と思えてしまうクオリティなのも残念。  この辺りは、低予算ゆえの悲しさを感じます。   でも、そんな難点についても「女の子が主人公なんだから、恋愛要素が濃い目になるのは仕方ない」「低予算なんだから特撮が拙いのは仕方ない」と、妥協出来る範囲内でしたね。  魅力的な部分の方が、ずっと多いので「そんなの、別に良いじゃん」と軽く流し、受け入れてあげたくなります。   中々レアな「初代よりも続編の方が面白かった」例の一つとして、オススメしたい映画です。
[DVD(吹替)] 7点(2017-11-04 07:52:55)
457.  冷たい熱帯魚 《ネタバレ》 
 てっきり主人公が「連続殺人の主犯」だと思っていたのですが、さにあらず「傍観者」「共犯者」という立場の人であった事に驚かされました。   で、そんな彼も次々に人を殺していくようになる終盤の展開は圧巻だったのですが……何故でしょう? 同監督作の「愛のむきだし」や「地獄でなぜ悪い」程の衝撃は無かったように思えましたね。  単純に、自分がこの手の衝撃に慣れてしまったというのが大きいのかも知れませんが (実録犯罪物路線かと思ったけど、結局は何時もの園子温映画になるのか……)  と、達観するような思いで画面を眺めていた気がします。   勿論、そんな「何時もの園子温映画」は好きなんですけど、本作に関しては最後まで実録風に纏めて欲しかったという気持ちが強いですね。  監督さんも「主人公が疑似的な父親である村田を刺す場面」で終わらせても良かったかも知れないとインタビューで語っておられるみたいで、自分としてもそちらの方が自然な仕上がりになったんじゃないかと思えました。   序盤「冷凍食品をレンジで温めるだけの妻」「食事中でも平気で携帯電話を使い、途中で抜け出す娘」「妻の喫煙を見て見ぬ振りをする主人公」などの印象的なシーンによって、家庭が崩壊している事を端的に示してみせる手腕は、お見事。  でんでん演じる村田も存在感があって良かったし、吹越満演じる社本の善良さと臆病さが入り交じった感じも秀逸でしたね。  先程の発言に反するような形となりますが、終盤の主人公の変貌っぷりというか、眼鏡を捨ててからの吹っ切れっぷりは痛快なものがあり、こういう姿を恰好良く演じられる辺りには、役者さんの凄みを感じます。  監督さんも何だかんだで終盤の展開をカットせず採用したのは、主演俳優の熱演に「これを切り捨てるのは惜しい」と思われたから、なのかも知れませんね。   ラストシーンに関しては、父親の死体を蹴り続ける娘の感情が「本心から父親の死を喜んでいる」「実は内心では死を悲しんでおり、起き上がって欲しいと願っている」「その両方」と、大まかに三通りに分けて解釈出来るようになっており、これに関しては(上手いなぁ)という思いと(ズルいなぁ)という思いとが混在。  元々この手の「観客に判断を委ねる」ような結末って好みではない事が多いのですが、本作に関しては主人公の自殺で幕を下ろす形でもある為、どうしても「逃げた」という印象が強かったりしたんですよね。  「人生ってのは痛い」と主人公が説教するのは結構だけど、その後に自殺されたんじゃあ「人生は痛い。だから死にます」という敗北にしか思えない訳で、そんな後ろ向きな終わり方されても困るよ……というのが正直な感想。  最後に「丸く、青い地球」を映し出して終わるというのも「地球は単なる岩だ」という劇中の台詞に照らし合わせると、現実逃避の象徴であるように思えてしまいます。   とかく園子温監督の作品はパワーがある為、それが自分好みの方向に進んでくれた時は凄まじい傑作に思えるのですが、好みから外れてしまうと、何ともコメントに困る品が出来上がる……そんな事を再確認させてくれた一品でした。
[DVD(邦画)] 6点(2017-10-31 21:10:12)(良:1票)
458.  七年目の浮気 《ネタバレ》 
 マリリン・モンローという女優さんは、ダメ男と絡むラブコメが似合うなぁと、しみじみ実感。   彼女に「可愛さ」や「色気」だけでなく「母性」も備わっているからこそ成立する話なのでしょうね。  ともすれば主人公に恋愛感情があったのに振られた為、強がって突き放しただけというヒロインになりそうなところを、彼女の演技によって踏み止まっている。  「相手を一人前の男として認め、その魅力を自覚させたいと願っている優しい女性」なのだと、しっかり伝わってきました。  その「母性」を示す為の小道具として「大アマゾンの半魚人」を用意し「あの怪獣かわいそう」「愛に飢えてるのよ」などと言わせる辺りも上手い。  そういった伏線が丁寧に張られている為、ラストにて笑顔で主人公を送り出す姿にも、全く違和感を抱かずに済みました。   冒頭にて「この話は先住民とは全く無関係」というナレーションが入るのに、実は意外と関係があったりするという惚けっぷりも良かったですね。  愛嬌のある映画、という感じがします。  シャンパンにポテチを浸す食べ方は真似してみたくなるし、二階に住んでいるモンローが階段を降りて会いに来てくれるシーンなんかも、男の憧れを満たしてくれるものがあり、印象的。  その他、動揺の余りトーストを零し、掌にバターを塗る主人公の姿にはクスっとしたし「マリリン・モンローかも」というメタな台詞も(当時既に、こういうギャグが成立する程に彼女は人気者だったんだな……)と思わせてくれて、微笑ましかったです。   そんな本作の難点は、とにかく主人公の独り言、妄想が多い為、少々辟易してしまう事でしょうか。  妻の幻影に対し、自分が如何に女にモテるかとしつこく語るシーンなんて、同じ男としては苦笑する程度で済んだけど、女性が観たらゲンナリしてしまうかも。  「あの種の女は口が軽い」なんて偏見を口にしたり、誤解ゆえに男友達を殴って気絶させたりして、好人物とは言い切れない性格である事も気になりましたね。  一種の錯乱状態だし、単なるギャグに過ぎないのでしょうが、ちょっと感情移入し難いキャラクターでした。   それと、劇中の通風孔のシーンは「あの有名なスティール写真とは違っている」という情報を承知の上で観賞したのですが、それでもいざ実際にその場面を観ると、落胆の念が大きかったです。  何せ、スカートが捲れ上がる時にはモンローの顔が映っておらず(これって影武者さんじゃない?)と思われても仕方ないような見せ方でしたからね。  ビリー・ワイルダー監督としても、検閲さえ無ければ、あそこはもっと扇情的な場面にしたかったのではないでしょうか。   都会的でオシャレな雰囲気が漂っており、今観てもさほど古さを感じさせない辺りは、純粋に凄いと思います。  浮気をテーマとしているけど、主人公は妻子を選んでみせるハッピーエンドであった点も、後味が良くて好ましいですね。  マリリン・モンローと浮気出来る可能性があったのに、それを蹴ってみせた男の話……と考えると、実は凄い映画なのかも知れません。
[DVD(字幕)] 6点(2017-10-28 05:40:11)(良:2票)
459.  地上最大の脱出作戦 《ネタバレ》 
 「平和な戦争映画」という、何ともユーモラスな一品。   冒頭のシーンでは生真面目に殺し合いしている姿が描かれているだけに、どんどん「普通の戦争」から離れていってしまう姿が、愉快痛快。  「お祭りの方が戦争なんかよりも大事」という主張が窺えて、それを不真面目だと怒る人もいるかも知れませんが、自分としては大いに賛成したいところです。  上層部の目を誤魔化す為に、互いに死傷者ゼロの「戦争ごっこ」を演じてみせる馬鹿々々しさも、実に滑稽で面白い。  戦争というテーマを扱う事により、作中でどんなに不謹慎な行いがあったとしても「実際に殺し合いするよりはマシじゃないか」という痛烈な皮肉に繋げてみせる辺りが上手かったですね。   純粋にコメディ映画として観た場合、現代の目線からは演出が冗長に感じられたりもするのですが「戦時に若く、美人で、色っぽいとは何事だ」などの台詞回しのセンスは、充分に面白い。  軍人達が懸命に「殺し合いの振り」をする横で、洗濯物を干してみせるオバちゃんの姿なんかも、思わず頬が緩むものがありました。   最後には、生真面目であったキャッシュ大尉までもが「お祭り」を戦争行為よりも優先してみせるようになったというオチも、予定調和な安心感があって、実に良かったです。  物語としての主人公は、ジェームズ・コバーン演じるクリスチャン少尉よりも、むしろ彼の方であったように思えました。
[DVD(字幕)] 6点(2017-10-28 05:27:19)(良:1票)
460.  ゲゾラ・ガニメ・カメーバ 決戦!南海の大怪獣 《ネタバレ》 
 南海の孤島が舞台の怪獣映画という、実に好みな一品。   ちょっとしたリゾート気分も味わえるし、何よりキングコング(1933年版)同様に「怪獣が大き過ぎず、強過ぎず」なバランスが心地良いのですよね。  このくらいの「民家の倍程度の大きさの怪獣」って、妙に親近感が湧くというか、子供の頃に「怪獣と友達になるなら、ゴジラみたいな大き過ぎるサイズじゃなくて、キングコングくらいのサイズが良いな」と考えていたのを思い出したりしちゃって、とにかく大好きなんです。   ストーリーに関するツッコミ所は、余りにも多過ぎるので逐一指摘するのは止めておきますが、そんな中「メインは人間VS怪獣の物語である」という点に関しては、大いに評価したいところ。  しかも軍隊ではなく、あくまで一般人の主人公達が銃を手にして戦い、ガソリンを使ってゲゾラを火あぶりにしたり、ガニメの眼球を狙撃して盲目にした後に崖から落としたりするのだから、手に汗握るものがあります。  「こういうのを見たかったんだ!」と、喝采を浴びせたい気分になりましたね。   ただ、終盤にはお約束の「怪獣VS怪獣」そして「火山が全てを解決エンド」という形になっており、非常に残念。  単純に怪獣特撮という観点からしても、ゲゾラが現地の村を襲っているシーンがピークであり、以降はそれを上回る衝撃を味わえない形となっているので、何だか尻すぼみに思えてしまうのですよね。  憎まれ役だったはずの小畑さんが、最後の最後に人間の意地を見せて、自らの体内に巣食う宇宙生物もろとも自決する展開に関しても (火口に飛び込む姿を、もっと上手く撮ってくれていたら感動出来たのに……)  と、勿体無く感じてしまいました。  怪獣映画といえば、人間のエゴに対して反省を促す終わり方が多い印象がある為、こういった形の「人間賛歌」とも言うべき結末は珍しく、好ましいものがあるだけに、手放しで作品を絶賛出来ない事が、何とも焦れったい。   そんな具合に、贔屓目で観ても、色々とディティールの甘さが気になってしまうような、隙の多い本作品。  それでも好きか嫌いかと問われれば、迷い無く「好きだ」と答えられる、愛嬌に満ちた映画でありました。
[DVD(邦画)] 7点(2017-10-28 05:05:44)(良:3票)
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