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no oneさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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41.  クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶモーレツ!オトナ帝国の逆襲 《ネタバレ》 
年代的にも共感できる要素が少なく、テレビ番組で前もって見所を知っていたのもあって、かなり冷静に鑑賞。なのに、不覚にも泣いてしまった。なんというか、ギャグとシリアスの緩急が上手いのですね。クレしんだけにくだらない部分は思いっきりくだらなくできるわけで、その点は卑怯というか、巧妙だなーと思いました。  衝撃的だったのは、計画が潰えた後に悪役の二人が自殺を図るエピソード。推理ものならともかく、低年齢向けでこんなのは珍しい。おまけにこの悪役がどうしてこんな事件を目論むに至ったのか、バックグラウンドがまったく描かれていない。尺の関係もあったのかもしれないが、大胆に余白を残したのは正解(ジャンプ系のやたらと回想を織り交ぜて語りまくる漫画には見習ってほしい)。  声優の貢献もあり、ケンとチャコは名キャラクターとなっている。敵役に存在感を持たせたことが作品を成功させた要因の一つでしょう。
[DVD(邦画)] 7点(2009-05-07 12:23:26)(良:1票)
42.  ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 《ネタバレ》 
結局、なにが言いたいのか。血縁、石油、キリストの血といったさまざまな意味合いを含ませた〝blood〟。家族愛、宗教、経済的発展といったいかにもアメリカ的な価値を追及した果てにすべてを失う男の姿に、米国の現状を重ね合わせてみたんだろうか。題名は聖書の神罰を表す一節の引用だそうで、いかにも暗示を散りばめてみましたといった感じ。終始意味ありげな深刻ぶった雰囲気が流れているが、実は案外浅いんじゃないかと思う。  ダニエル・デイ=ルイスが無理やり懺悔させられる際の葛藤は名演技中の名演技だし、ボーリング場の下りも素晴らしかったとは思う。しかしそれはデイ=ルイスの役に対する解釈の深さに多くを負うもので、全編を通してみれば非常にありきたりで捻りのない脚本だ。一流の役者、洗練された映像と音楽を揃えて、肝心の芯がやせ細っている。キューブリックはある映画監督を指して「スタイルは百点で内容は零点」と評したそうだが、その尺度でいえばこの作品は「スタイル九十点、内容六十点」といったところじゃないだろうか。  もっとも、そう思うのは筆者の観方が悪いのかもしれない、とも思った。主軸が判然としない一方で多面的な観方ができるのも確かで、考えようによってはそれがこの映画の強みなのかもしれない。少なくともルイスを観るだけの価値はあるし、ポール・ダノも結構良い(見えない悪魔をぶん投げるとことか)。  最後の台詞、「終わった(I'm finished)」は狙い過ぎとも感じたけれど、ちょっぴり切なかった。「金持ちになったら誰にも会わずにひっそり暮らす」のが夢だった男の、待ち望んだ心の平安は刑務所の独房でようやく訪れるのだろう。  それにきっと、あの息子もいずれは面会に来てくれるはず。というか、そう願いたい。血は繋がっていないとしても、親子は親子。きっと孫だって生まれる。〝There will be blood〟という題名にはそうしたいくばくかの希望を暗示する意味もあるのだと、(かなり強引に)解釈しておきたい。そう考えなければ救いがなさ過ぎるので。
[DVD(字幕)] 7点(2009-05-07 11:42:24)
43.  プライマー
シンプルでコンパクト、それでいて繰り返しの鑑賞に耐える面白さ。監督は数学畑の人らしいが、この映画はそれ自体が一つの数式のようだ。秀逸な公式のような鋭いひらめきと、無駄のない機能美がある。  冒頭の数分で『π(パイ)』という映画を思い出して嫌な予感がしたのだが、杞憂だった。明らかに低予算ではあるけれども、一切の贅肉を削ぐスタイルを取ることで巧みに弱点を補っている。それに一定の美意識に沿って作られているのも確かで、作品を包み込む雰囲気も悪くない。個人的には美しいと感じる下りすらあった。また短い尺の中にも人生の苦味が込められ、単なる味気ないパズルには終わっていない。良質の作品だ。  しかし無駄がない分、観客への親切心もない(!)ので、間口が狭い作品であるのも確かだろう。ミステリ、SFなどのジャンルが好きな方であればおすすめできるけれども、万人受けする類の映画では決してない。観終えたあとにああでもないこうでもないと考えるのが好きな人であれば、きっと楽しめるんじゃないだろうか。
[DVD(字幕)] 8点(2009-05-07 11:20:43)(良:1票)
44.  レディ・イン・ザ・ウォーター 《ネタバレ》 
普通に評価したらまったくもってつまらない、そりゃラズベリーW受賞もするよって出来なんだけど、なぜか憎めない。シャマランはほんとうに変な人だ。  冒頭の虫(ネズミ?)と戦う図や、ボールペンをばらして空気を吸うためのストローにする流れ、コーンフレークのパッケージからメッセージを読み取る少年など、話の大枠ががたがたなのに、しょうもないディティールが絶妙な楽しさ。良くも悪くも、どこを切り取っても個性が感じられる。ジアマッティの拙い祈りの言葉や、鷲が舞い降りる瞬間を水面に映す演出なんかはとてもよかった。  妖精の名前が〝ストーリー〟とは……。メタファーと表現するのもためらわれるほど大胆不敵なネーミングだ。〝器〟の役割として監督自身が出演するのも明らかに含意がある。本を出してもなかなか認められず、最終的にはそのために死ぬはめになるが、一人の少年に影響を与え、やがては世界を変えることになる――シャマラン監督は大真面目にそんな気構えで映画を作っているんだろうか……そうなんだろーなー。  きっと彼は物語は「作る」というより「授かる」もので、自分が得たインスピレーションを観客に届けることを使命のように捉えているんじゃないだろうか。一笑に付しても許されるところだろうけれども、やっぱり嫌いにはなれない。  もっと設定を練って、冷静な目で脚本を組み直すことさえできれば、結構普通に良い作品になっていたかもしれない。
[DVD(字幕)] 6点(2009-05-03 13:29:22)(良:1票)
45.  クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ金矛の勇者
ちょうど『戦国大合戦』を観た直後だったのでテレビで放送されていたのをなんとなく鑑賞。……これはちょっと、褒めるところが見当たらないかな。これを子どもだましといったら子どもに失礼でしょう。  いろいろなものを詰めこんだせいでわけわかんなくなってるし、しかも取り入れているのがまた浅はかな流行ネタばっかり。話の筋がくだらないのに加えて台詞のひとつひとつが薄っぺらくて、ギャグは痛々しいほどすべってる。脚本が完全にやっつけ仕事。  というか、一人称に『僕』を使う女の子を出して、しんちゃんがその胸を触ってドキッとするとか――クレヨンしんちゃんでやることじゃない。はっきり言って気色悪かったです。
[地上波(邦画)] 3点(2009-04-22 23:08:35)
46.  アイアンマン 《ネタバレ》 
パワードスーツの開発の過程を丁寧に追いかけることでワクワク感がつのっていく。スーツは正直ちょっとダサいのだが、それを取り巻くギミックの数々がかっこよくて、なんというか男の子心をくすぐる感じだった。主人公の助手であるさまざまな機械が妙に人間臭く、ときには可愛らしくさえ感じた。  アクションシーンではステルスや戦車と対等以上に渡り合ってしまうのがまた痛快だが、そのぶん生身の人間と戦うと弱いものいじめになりやすいのが難点といえば難点だろうか。人間が吹っ飛ばされる描写はコミカルだが、シリアスにすれば凄惨になってしまうのでそうせざるを得ないのだろう。人間離れしたヒーローは大勢いるが、アイアンマンは限りなく〝兵器〟に近く、その意味では異色の存在だ。  しかしこの作品の最大の欠点は、クライマックスのオバディアとの対決がいまいち盛り上がらないところ。サスペンスも薄いし、アクションも地味……。ステルスとの空中戦の方がよっぽど爽快だった。126分かけるならもう少しアクションの割合を増やしてもいいんじゃないだろうか。
[DVD(字幕)] 6点(2009-04-22 23:02:57)(良:1票)
47.  スターシップ・トゥルーパーズ3
相変わらずのあくの強さで、悪趣味な自分もさすがにちょっと引きました。軍国主義&宗教マンセーという世界を描きつつそのすべてをおちょくっているという風刺の仕方は面白いけれども、ここまでアホだと誰も真面目に受け取ってくれないんじゃないかと心配。
[DVD(字幕)] 5点(2009-04-21 02:04:28)
48.  クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 《ネタバレ》 
こんな作品を子どもの頃に観たかったと思う。そして大人になってから、もう一度観返したかった。それがいちばん幸せな観客でしょう。  姫が池のほとりに佇んでいるだけの、一切の台詞がないプロローグだけでちょっと感動。又兵衛と姫の関係そのものがそうだけれど、大事なことを言葉にしていない。というより言葉にしたら失われるような微妙な心の動きを、徹底して人の動作や、その目に映っているであろう風景を通して表現している。とてもやわらかで、細やかな視線だ。  侍と姫の恋物語はとても素朴で、単純とすらいえる。けれどもその繊細な描写が二人の息遣いまでも伝えるようで、素直な物語のなかにも汲みつくせない美しさがある。「言わぬが花」という言葉が、ほんとうの意味で生かされた作品だ。  また本編の主役であるしんのすけが脇役でしかないという批判もあるようだけれど、ちょっと違うと思う。  たとえばいざ合戦となって野原家が脱出しようというとき、悲壮な表情の両親とは対照的に、しんちゃんはあっけらかんとしている。つまり幼さゆえに絶望的な戦であることが理解できていないわけで、だから戦場の真っ只中に巻き込まれても両親ほど怖がったりはしない。それがラストで又兵衛が倒れて初めて、大声で泣き喚く。あのときようやく、〝死〟というものがしんのすけのなかでリアルになった。  つまりこの物語は侍と姫の悲恋譚である一方で、幼い少年が初めて〝死〟を知るまでの成長物語でもある。  この映画には子どもからはわかりにくい部分も確かにあるだろう。けれど、子どもにとっては世界はわからないことだらけであるのが当たり前のはず。そんななかでしんのすけは、大人の恋や死といったままならない出来事を垣間見て、少しだけ大人になる。人生は楽しいことばかりじゃなく、どうしようもなく失われていくものがあって、だからこそ輝きがあるということを知る。ほんとうの成長はいつも、苦い。  この映画が子ども向きではないという意見もあるようだけれど、ほんとうにそうでしょうか? これはとても真っ当に、本気で子どもに届けられた作品だと思います。
[DVD(邦画)] 9点(2009-04-14 13:28:16)(良:3票)
49.  落下の王国 《ネタバレ》 
子役の子どもらしい可愛らしさを巧みに引き出しているのが好印象。自殺志願の青年もごくありふれた青年という感じで、大人と子どもの会話がなかなか噛みあわない場面や、錯乱した女性を目撃した女の子が怖がる下りなど、割とリアリティ重視の作りとなっている。青年のバックグラウンドが描かれないのは、ほぼ全編を子どもの視点で描こうとしたからだろう。  空想世界は言うまでもなく、幻想的なプロローグからトーキー映画の引用を集めたラストまで目が離せない美しさだった。自殺を図るための方便でしかなかった作り話が、聞き手の少女の干渉によって、いつしか青年を救う道標となる。虚構の物語が人を救うというテーマに、作り手の映画への姿勢がそのまま重なって見える。  インドの国民的作家、タゴールの代表作に『もっとほんとうのこと』という短篇小説がある。これもやはり老人が孫娘に物語を聞かせる形式を取った作品で、老人は途方もなく壮大でロマンチックなおとぎ話を語る。しかし「これはほんとうよりもっとほんとうの話」で、けっしてただの作り話じゃないんだよ、と孫に言って聞かせるのである。ターセムがインド人だからというだけで影響を読み取るのは考えすぎかもしれないが、やはり似ていると思う。空想物語のなかに込められた真実の欠片が、人間にとってどれだけ大切なものかを教えてくれている。  ラストの喜劇映画の場面集は、落下に次ぐ落下で、むしろ飛行するような高揚感があった。『落下の王国』という題名は不評なようだが、個人的には好きだ。それは青年の空想世界だけでなく、自由な想像力の結晶である、映画そのものを示す暗喩でもあるように思う。
[DVD(字幕)] 8点(2009-04-03 14:42:43)(良:2票)
50.  スピード・レーサー
サイケデリック過ぎる映像は、真剣に観ているとこめかみが痛くなる。センスがぶっ飛びすぎてて、個人的には嫌いじゃないけど一般受けは確実にない思う。物語の深い味わいは望むべくもないが、センスがキレ過ぎているほどキレているのは確か。チンパンジーと弟が影の主役を張っているのがいい。人物がスライドしながらさまざまイメージを流していく回想シーンは斬新過ぎるし、雪の舞う格闘シーンなんかバカバカしくてかっこよかった。  面白いけど、人に薦められるかと訊かれたら自信を持って「NO」と言える。コケるべくしてコケた傑作――というか怪作。
[DVD(字幕)] 8点(2009-03-18 15:12:50)
51.  ただ、君を愛してる 《ネタバレ》 
キャラクターはデフォルメが効き過ぎているし、演出はベタ、脚本はくどい……でも、駄作と斬り捨てるのも可哀そうな、微妙な出来。  悪い意味でマンガっぽく、もっとリアリティに気を遣うべきだったと思う。難病ネタを出すなとは言わないけれど、せめてもっともらしい説明をしてくれないと。あんな奇抜な設定には、クライマックスでさらっと種明かしされるだけでは乗り切れない。  それにいくら演技力があっても、美男美女が冴えないタイプを演ずるのは無理がある。主演の二人は努力していたけれども、冴えない人ってもっと瑞々しさがないっていうか、自信のなさが立ち振る舞いに滲み出ている(端的にいえば、身にまとうオーラからして冴えてない)もので、それを玉木宏や宮崎あおいが演じるのは至難の業だろうと思う。
[DVD(邦画)] 6点(2009-02-15 14:50:26)
52.  バック・トゥ・ザ・フューチャー 《ネタバレ》 
とくにドタバタコメディの部分を観ていて感じたのだけれど、この作品は表面的にも本質的にも、ディズニー映画に似たところがあるように思う。善良でコミカルなキャラクター、波乱万丈な展開に、憎み切れない悪役。善人が報われて、人生には必ずハッピーエンドがやってくるという、根本的な安心感。正直、個人的には暗い話の方が好みなのだけれど、大勢の人たちに支持されるのも納得が行く。  SFコメディでありながら根幹は爽やかな青春ドラマであり、薄暗さや過剰な暴力描写もない。混じりっ気なしの、稀有な娯楽作品となっている。ラストは続編なんて考えずにジョークでやったらしいけれど、最高だと思う。俳優もいいし、壮大な音楽や、車型タイムマシンのデザインと轍が燃え上がる演出など、細かな部分も冴えている。バランスのとれた、恵まれた作品。  それにしても、平均点がすごいですね。自分の中では殊更に低くしたつもりはないのですが、この流れだとごめんなさいという感じです……。
[DVD(字幕)] 7点(2009-02-11 14:00:43)
53.  キサラギ 《ネタバレ》 
普通に面白かったです。でもここでの平均点の高さにはちょっとびっくり。褒めている方は大勢いらっしゃるので、以下、あえて引っ掛かった点を挙げます。  何より気になったのが俳優の拙さ。香川さん以外の若い出演者の演技はみんなどこか不自然で、そもそもミスキャストではないかというくらいバラエティ番組での印象が固まった人もいる。ユースケ・サンタマリアは好きだけど、個人的には『ぷっすま』のイメージなので映画では観たくなかった。  脚本もテンポの良さは素晴らしかったけれども、一方で舞台劇特有のまくし立てるようなしゃべり方は耳障りだった。ラストが蛇足なのは言うまでもなく、とりわけプラネタリウムの場面のチープさはどうにかならないものかと思った。あと、映像的に面白みがなさすぎる。全体的に工夫が足りないのは素人目にも明らかで、鮮烈に脳裏に焼きつくような見せ場もない。大画面で観たいという欲求が全然そそられないのは、映画として少し寂しい。  いくら話が面白くとも、それ以外の要素がテレビドラマに毛の生えたレベルというのはもったいない。“映画は脚本”であることに異論はないけれど、それはあくまでも屋台骨として重要なのであって、すべてではないでしょう。
[DVD(邦画)] 7点(2009-01-28 16:52:32)(良:1票)
54.  その男ゾルバ 《ネタバレ》 
アンソニー・クインの存在感がすごい! 三船敏郎の野性味に並ぶ俳優はいないと思っていたけど、ゾルバもなかなかの野人っぷり。自由奔放でバイタリティにあふれ、でたらめなんだけど女には優しく、憎めない。半分は素でやってるんじゃないかというくらい自然な演技だった。  家を飛び出て駆けながらすっぽんぽんになる場面や、ラストの場面の能天気さは最高だ。林業計画の失敗(オチが『こち亀』並み)からダンスに至るまでの流れは文句なしに爽快だった。  ただ、脚本はもっとタイトにできたのではないかと思う。全体的にテンポがゆったりしているが、この内容なら二時間以内で充分まとめられるだろう。その割に若い未亡人のキャラクターはなおざりだし、エピソードとしてもやや陰惨に過ぎる。佳作だけに、そうした欠点が非常に惜しいと感じた。
[DVD(字幕)] 6点(2009-01-20 00:43:00)
55.  ファウスト(1994)
微妙。クレイアニメを期待していたら人形劇が中心で、肩透かしを食らった。ところどころに独特の発想があるのは確かだけれど、全体としては退屈だった。短篇集ならまだしも、このシュールな展開で九十分以上もたせるのは無理がある。  とくに人形劇やアニメーションではない場面の映像は非常に安っぽく、よく言えば味わいがあるのかもしれないが、普通の古い海外ドラマの映像と変わらないレベル。男が鞭を振るって呪文を唱える場面には正直、失笑してしまった。  湿り気のある不気味さはシュヴァンクマイエル独自の持ち味だが、さして刺激的でもなく、完成度が高いわけでもない。感性に任せて作られた意味不明な作品もあってもいいと思うが、それなら相応のクオリティとテンションを保ってほしいと思う。
[ビデオ(字幕)] 4点(2009-01-14 13:29:17)
56.  アフタースクール 《ネタバレ》 
どんでん返しがキモの作品はたくさんあるが、この作品の趣向はよくできた「騙し絵」のようだ。一見して理解したつもりでいた光景が、少し角度をずらしただけでまったく異なる意味合いを持って見えてくる。観終わってすぐに再び初めから見直したくなる、精妙巧緻な仕掛けだ。ネタそのものがすごいというよりも、その観せ方が憎らしいほど上手い。真相の意外さよりも、実はその真相が(ある意味では)初めからずっと目前にあった、という衝撃が新鮮だった。『SAW』などの力技で騙す作品も悪くはないが、伏線をきれいに回収していくこの手並みの鮮やかさは素晴らしい。  ただし構成の精緻なミステリーの宿命で、敷かれたレールがしっかりしているのに反比例して登場人物が人間味を失ってしまう、物語のためのコマでしかなくなってしまうという短所からは逃れられていない。しかも本作の場合、一つの場面から二重の解釈ができるような微妙な雰囲気が強いられるため、普通以上に抑えた演技が多く、ますます感情移入が難しくなるというハンディを抱えている。個人的には気持ちよく騙してくれたからそれでOKなのだが、だめな人はだめだろうと思う。  ちなみに大泉ファンであればコメンタリーは必聴。期待に違わぬ、清々しい下らなさだった。監督と妙に仲がいい(笑)
[DVD(邦画)] 7点(2008-12-15 18:12:56)(良:2票)
57.  イースタン・プロミス 《ネタバレ》 
人間の抱える矛盾、屈折した心理を巧みに描いている。主要な登場人物のほぼ全員が何らかの葛藤を抱え、それが歪んだ形で行動に現れている。同性愛者である自分を認められず相棒に娼婦を抱かせるキリル、流産した子どもの代替として行きずりの赤ん坊に執着するアンナ、覆面捜査官の域を逸脱した行為に出るニコライ――。  とりわけセミヨンの抱える矛盾は深刻だ。息子への憎悪と愛情、組織の秩序の尊重とエゴイズム、異国の少女を家畜扱いする一方で身内の娘を「天使」という。組織の規則を破ってまで息子を救おうとしたにも関わらず、最後にはその息子の手で幼い娘を殺させようとする。自己矛盾を統制しきれずに単純にエゴイスティックな行動に出た結果が、ついには破滅を呼ぶ。  ニコライが覆面捜査官になった理由は何だろうか。おそらくは最初から、正義感の裏側に自分でも認めたくない悪への憧憬があったことだろう。アンナに告げる「さよなら」の言葉が、彼のその後の選択を示している。  こうした矛盾、屈折にこそ人間が人間であることの苦しみがある。それは往々にして、悪が生まれる隙でもある。ラストで繰り返される少女の独白は、人が抱える闇の深さを物語っているかのようだ。
[DVD(字幕)] 9点(2008-12-13 15:22:28)(良:3票)
58.  インランド・エンパイア 《ネタバレ》 
熱にうなされているときの、長く不快な夢のような時間だった。とにかく意味不明。秩序だった物語なしに、断片的なイメージの集積だけで一人の女性を表現しようとしたのではないかと思う――たぶん。なんとなく『リング』に出てくる呪いのビデオを思い出した。  デヴィッド・リンチの暗い精神世界に際限なく沈み込んでいくようで、不安を掻き立てられる一方で不思議と惹きつけられるものもあった。気持ちの悪い、しかしある種の美しさも備えている、洗練された悪夢。リンチはこと人の神経を苛む技術にかけては天才的だ。  正直集中力を保つのに苦労することもあったが、ひとつひとつの映像のクオリティが高いのでなんとか観ていられた。割と眠かったのに、観終えると妙な満足感がある。強烈な個性を持った作品で、はっきり言って楽しめる人の方が少ないだろう。こんな実験作を作って許されるのは大学の映画サークルの一年生か、巨匠だけだ。気安くおすすめはできないけれど、個人的にはそこそこ面白かった。
[DVD(字幕)] 7点(2008-12-10 09:13:12)(良:1票)
59.  ルネッサンス
映像革命と言うけれど、この程度の革命ならプロモーションビデオで充分。装いは新しいが内実は空虚、過去の作品の寄せ集めでしかないプロットとキャラクターは退屈そのものだ。  それどころか映像手法でさえ十二分に駆使されているとはいえない。やろうと思えばもっと美しい画を追求できたのでは? 白黒のなかに一部カラーを差し込むのは予想できたが……どうしてあんなくだらない使い方ができたのだろう? あらゆる面でお粗末な出来だ。  予告編にあった「構想十年」という言葉が事実なら、お気の毒としか言いようがない。
[DVD(字幕)] 4点(2008-12-07 09:08:46)
60.  JUNO/ジュノ 《ネタバレ》 
う~ん……なんだかとても、釈然としない。確かに堕ろすよりは、良い里親を見つけて養子縁組をする方が賢明な選択であるようにも思える。しかし無計画な妊娠それ自体が大きな失敗で、養子縁組もまた苦渋の結果だった、という現実には変わりない。なのにあのあっけらかんとしたハッピーエンド。もうちょっと罪悪感を持ってほしいと思う自分は、頭が古いのだろうか。  それに妊娠の責任を一切負わなかったへたれのボーイフレンド、あれにジュノが惚れ直してしまう展開がどうしても理解できない。彼はジュノの妊娠に際して積極的な行動を一切取っておらず、まだ若いことを差し引いてもダメ男そのもの。だがジュノは「最高にクール」だという。おいおい、自分の無責任を棚にあげて「傷つけられたのは僕の方だ。君は子どもじみてる」と抜かす奴のどこがクールなんだ?  この作品のコンセプトとしては、表面的には軽く、でも不謹慎なようでいて実は考えるべきところはちゃんと考えている、って辺りを目指したんだろう。でもどういった形であれ、一人の子どもの人生を、自分達の手で育てることなく決定付けてしまったなら、それは決して褒められた行動じゃない。「妊娠したら堕ろせばいい」という考えよりは「妊娠したら他人にあげればいい」という考えの方がましかもしれないが、けれども安易なのには違いないし、無責任さでは五十歩百歩だろう。  明るくポジティヴなのも、限度を超えればただのバカ。なんでもかんでもポップでクールにすればいいってもんじゃないよ。
[DVD(字幕)] 6点(2008-12-05 09:42:34)(良:1票)
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