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no oneさんの口コミ一覧[この方をお気に入り登録する

プロフィール
コメント数 487
性別 男性
ブログのURL https://www.jtnews.jp/blog/23806/
年齢 41歳
自己紹介 多少の恥は承知の上で素直に書きます。

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41.  千年女優 《ネタバレ》 
リアルな画風だが、これが実写映像だったらかなり違和感があるだろう。何しろ虚実入り混じった回想をその場の数人で共有するという、冷静に考えたら相当に破天荒な視点だ。なまじ写実的な絵なだけに、アニメーションが通常とは異なるリアリティの分法を持っているということがよくわかる。  実は構成が『PERFECT BLUE』に引き続き、ミステリとなっている。映像と音楽で多少は誤魔かせているが、致命的に人間を描けていない。心理描写がプロモーションビデオ並みに浅く、87分の尺も長く感じられるほどだ。最後の台詞が必要なのはミステリの文法で脚本を書いているからで、ドラマ部分がちゃんとしていればあそこまで明示する必要はなかったし、仮にそのまま書いたとしても重みが全然違っただろう。  この内容ならいっそのこと一時間以内の短篇に凝縮してくれた方が、端正な秀作に仕上がったんじゃないだろうか。
[DVD(邦画)] 6点(2009-06-15 23:58:35)(良:2票)
42.  ヘルボーイ/ゴールデン・アーミー
開始十五分で七十人が生きたまま喰われたのにはちょっとびびったが、面白かった。キレイ目のクラウザーさんみたいな魔界の王子に率いられた怪物たちはいずれもユニークで、いかにもこの監督らしいデザインの「歯の妖精」や、『もののけ姫』の影響がもろに出ている森の精霊などは楽しかった。それに対して主人公は怪力で銃を振り回しているだけ、外見以外これといった特徴がなく、むしろさまざまなキャラクターを見せるための狂言まわし(引き立て役?)に回っているのがヘルボーイの面白いところだ。『忍たま乱太郎』の乱太郎みたいな。単純に楽しめる作品だが、出来の悪い第一作を観ていないとわかりにくいのがもったいない。  しかし怪物たちの造形や独特の美的センスはすごいけれど、物語は普通だ。異形のヒーローたちが差別とアイデンティティに悩まされるのもアメコミとしてはいたって凡庸。ヘルボーイもエイブも親しみやすく憎めないキャラクターではあるものの、感動を与えてくれるほど厚みある存在ではなかった。普通なら泣ける場面も、平板なメロドラマになってしまっている。デル・トロ監督は精緻な世界観を構築するのが第一で、作品を通してこれだけは伝えたいテーマみたいなものはないのかもしれない。それは必ずしも悪いことではないけれど、ちょっぴり物足りないのも事実だ。
[DVD(字幕)] 7点(2009-06-01 19:14:09)(良:2票)
43.  シェルブールの雨傘 《ネタバレ》 
ずっと観損ねていたのを、劇場でデジタル・リマスター版を鑑賞した。すごくラッキーだったと思う。色あいも音楽もとてもきれいで、愛らしくおしゃれな小品に仕上がっている。悲しいラストシーンが白と黒を基調とした雪の吹きすさぶ夜であるのに対し、二人が愛し合っていた日々はカラフルで鮮やか、陽気な音楽とともに描かれる。二人が簡単に永遠の愛を誓うようすはいかにも若気の至りではあるけれど、この映画はそれを否定しているわけではなく、あくまでも美しい思い出として、彼らが成長してからも人生の宝物になりえるような記憶としてとらえているように思える。  それにしても、エッソのガソリンスタンドまでおしゃれなアイテムにしてしまうのだから、フランス人というのは空恐ろしい人種だ。
[映画館(字幕)] 8点(2009-06-01 12:16:47)
44.  4ヶ月、3週と2日 《ネタバレ》 
時代背景がわからず、鑑賞後に当時のルーマニアの情勢を調べて初めて納得する部分が多かった。  チャウシェスク独裁政権下では労働力増強のために中絶どころか避妊まで禁止されていたそうで、恋人との口論の下りで違和感を持ったのだけれども、あれはつまり排卵日を計る以外、ろくに避妊方法がなかったのですね(ちなみにこの政策は元首夫人のエレナによるもの。皮肉なことに、女性による政策なのです。夫以上の暴君だったよう)。また避妊具の禁止と注射器不足から西欧国中最悪のHIV蔓延を招いた史実もあり、そうすると手術間際の「注射するの?」という不安げな台詞にも含みがあったのだろう。  夜の市街地がやホテルが暗いのも、電力すら満足でない国の経済状況を表す描写。生活物資にも事欠き、街には野犬が往行する。女性の出産を奨励する一方で国民の生活は極端に貧しく、一万人近くのストリート・チルドレン(通称「チャウシェスクの子ども達」)を生み出す結果となる。そして彼らを待ち受けていたのは貧困、児童買春、薬物中毒とHIVといった、あまりにも悲惨な運命。ヨーロッパ中から子どもの性を買うための観光客が集まっていたこの国が、本格的な孤児救済に取り組むのは21世紀になってから。  主人公が「工学部」に所属することが何度か言及されているが、これは「化学」に並んで政府が最も奨励した産業。初めて会ったときにベベがオティリアの身分を知り「都会で働けるな」と呟いたのはつまり、将来安泰のエリートであるということ。片やベベは老いた母を抱え、危険な違法行為に手を染めなければ生活できない身。もちろんベベのオティリアへの仕打ちは決して許されるものではないが、そこには嫉妬からくる歪んだ憎悪があっただろう。母子の場面を挟んだのは、彼が単純な悪人ではなく、ある意味では時代の犠牲者であると示したかったのだろう。  少し注意してみれば、さり気ない描写に史実が織り込まれているのがわかる。これは女性映画であると同時に、たった一日の情景に時代を浮かび上がらせる、優れた歴史映画でもあるのだ。
[DVD(字幕)] 8点(2009-05-24 06:17:41)(良:3票)
45.  硫黄島からの手紙
とてもよくできていたけれど、不満な点が二つ。  第一に、硫黄島戦の史実に比べると、あまりにも描写が生ぬるいということ。少し知識のある人であれば、現実の戦いの方が遥かに悲惨であったことがわかるはず。何もドキュメンタリーにしろといっているわけではないし、残虐シーン目白押しにすべきだとは思わないけれど、ここまで省略されると「なかったことにされている」印象を受ける。  米兵が日本兵に何をしたのか、軽く説明するか、少なくとも暗示するくらいはしてもよかっただろう。ノンフィクションであっても主観的編集が過ぎればフィクションになるように、ここまで省略してしまうと、もはや史実を元にしたファンタジーといわれても仕方がない。それに米兵による大量虐殺は省略する割りに日本兵の自決はあからさまに描写する辺り、どうかなあと思う。  第二に、日本人を客観的に描いているように見えて、実はそうでもないということ。主要登場人物はみんな当時の政治的風潮とは距離を持った人ばかりで、一部にはまともな人間もいたけれど、大本営はあくまでも悪であり、狂信国家であったというふうに描写される。  栗林中将、西郷やバロン西というアメリカ人にとって理解しやすい人物ばかりを配置し、脇役の清水ですら犠牲者として語られるけれども、実際には当時の国策に同調した人々の方が多数派だったはずだ。天皇万歳を叫んで自決したような兵士を人間として描写するのが本筋ではないのか。これでは日本人が相対化されているとは言い切れない。  総じて、これはやはり「アメリカ人のための映画」なんだと感じられた。映画自体の完成度は高く、こめられたメッセージが的外れだとは思わないから8点を付ける。しかしこれでは限りなく絵空事に近いフィクションでしかなく、硫黄島に材を取る必要はなかったと思う。これがイーストウッド監督が述べたように「邦画」であるとは思わない。ところどころで日本語の台詞が日本人にも聞き取りにくいのはささやかな欠点のようでいて、作品の本質を端的に表している。
[DVD(字幕)] 8点(2009-05-22 07:24:34)(良:4票)
46.  シューテム・アップ
笑った笑った、腹を抱えて笑わせてもらいました。子どもには見せられない残酷度だけれど、めちゃくちゃ面白かった。普通のアクションで思いついてはみたもののさすがにないわ、と没にされたネタをことごとくぶち込んだかのよう。あの空中戦は旧007シリーズのノリでも遠慮するだろう。アクションというよりブラックコメディとして楽しんだ。いやに楽しそうなポール・ジアマッティさんも印象的。きっと悪役なんて滅多にもらえないんでしょうね。もっとも、出産シーンでは正直引きました。赤ん坊に銃の使い方をレクチャーして「撃つ気がない相手に向けちゃダメだ」って、自分は妊婦の股間に向けてたからね?
[DVD(字幕)] 8点(2009-05-10 15:43:27)
47.  グラン・トリノ 《ネタバレ》 
歯をむき出しにして犬のように「うー」と唸るクリント・イーストウッドが、可愛い。……この人を愛らしいと感じる日が来ようとは思わなかった。ユーモラスで、いつになく明るいトーン。最近のイーストウッド作品から重厚なドラマを予想していたら、きれいに裏切られた。いい意味で単純な、芸術ぶったところのないヒューマンドラマで、普通に友達に勧められるような作品だった。  中核にあるのは西部劇のガンマンのようなヒロイズムではあるけれど、理想通りには行かない酷薄な現実と向き合ってもいる。スタローンの『ロッキー・ザ・ファイナル』同様に、原点回帰の若々しい意志と、現実的にならざるを得ない成熟の両方があった。頑固な老兵は時代遅れであることをわかっていてなお、自分なりの流儀で戦うのだ。銃の代わりに、強い意志としかめっ面と、ちょっとばかりの茶目っ気を武器にして。  普段ならもっと癖のある作風の方が好みなのだが、これを否定するのは難しい。ストレートど真ん中の球だからこそ、そこにイーストウッドの信念、人間性が込められている。別にイーストウッドファンではなかったけれど、今でははっきりと好きだといえる。この映画も、彼その人も。
[映画館(字幕)] 8点(2009-05-09 18:04:06)(良:1票)
48.  俺たちに明日はない 《ネタバレ》 
とぼけた音楽に脱力感を誘われる。脚本には上手い脚色も見られるが、コメディ調を取り入れたのは大失敗だと思う。映像も筋書きも気が抜けた部分が多く、「終わりよければすべてよし」で許す気にはなれない。
[DVD(字幕)] 4点(2009-05-08 20:30:47)
49.  レディ・イン・ザ・ウォーター 《ネタバレ》 
普通に評価したらまったくもってつまらない、そりゃラズベリーW受賞もするよって出来なんだけど、なぜか憎めない。シャマランはほんとうに変な人だ。  冒頭の虫(ネズミ?)と戦う図や、ボールペンをばらして空気を吸うためのストローにする流れ、コーンフレークのパッケージからメッセージを読み取る少年など、話の大枠ががたがたなのに、しょうもないディティールが絶妙な楽しさ。良くも悪くも、どこを切り取っても個性が感じられる。ジアマッティの拙い祈りの言葉や、鷲が舞い降りる瞬間を水面に映す演出なんかはとてもよかった。  妖精の名前が〝ストーリー〟とは……。メタファーと表現するのもためらわれるほど大胆不敵なネーミングだ。〝器〟の役割として監督自身が出演するのも明らかに含意がある。本を出してもなかなか認められず、最終的にはそのために死ぬはめになるが、一人の少年に影響を与え、やがては世界を変えることになる――シャマラン監督は大真面目にそんな気構えで映画を作っているんだろうか……そうなんだろーなー。  きっと彼は物語は「作る」というより「授かる」もので、自分が得たインスピレーションを観客に届けることを使命のように捉えているんじゃないだろうか。一笑に付しても許されるところだろうけれども、やっぱり嫌いにはなれない。  もっと設定を練って、冷静な目で脚本を組み直すことさえできれば、結構普通に良い作品になっていたかもしれない。
[DVD(字幕)] 6点(2009-05-07 11:47:32)(良:1票)
50.  ゼア・ウィル・ビー・ブラッド 《ネタバレ》 
結局、なにが言いたいのか。血縁、石油、キリストの血といったさまざまな意味合いを含ませた〝blood〟。家族愛、宗教、経済的発展といったいかにもアメリカ的な価値を追及した果てにすべてを失う男の姿に、米国の現状を重ね合わせてみたんだろうか。題名は聖書の神罰を表す一節の引用だそうで、いかにも暗示を散りばめてみましたといった感じ。終始意味ありげな深刻ぶった雰囲気が流れているが、実は案外浅いんじゃないかと思う。  ダニエル・デイ=ルイスが無理やり懺悔させられる際の葛藤は名演技中の名演技だし、ボーリング場の下りも素晴らしかったとは思う。しかしそれはデイ=ルイスの役に対する解釈の深さに多くを負うもので、全編を通してみれば非常にありきたりで捻りのない脚本だ。一流の役者、洗練された映像と音楽を揃えて、肝心の芯がやせ細っている。キューブリックはある映画監督を指して「スタイルは百点で内容は零点」と評したそうだが、その尺度でいえばこの作品は「スタイル九十点、内容六十点」といったところじゃないだろうか。  もっとも、そう思うのは筆者の観方が悪いのかもしれない、とも思った。主軸が判然としない一方で多面的な観方ができるのも確かで、考えようによってはそれがこの映画の強みなのかもしれない。少なくともルイスを観るだけの価値はあるし、ポール・ダノも結構良い(見えない悪魔をぶん投げるとことか)。  最後の台詞、「終わった(I'm finished)」は狙い過ぎとも感じたけれど、ちょっぴり切なかった。「金持ちになったら誰にも会わずにひっそり暮らす」のが夢だった男の、待ち望んだ心の平安は刑務所の独房でようやく訪れるのだろう。  それにきっと、あの息子もいずれは面会に来てくれるはず。というか、そう願いたい。血は繋がっていないとしても、親子は親子。きっと孫だって生まれる。〝There will be blood〟という題名にはそうしたいくばくかの希望を暗示する意味もあるのだと、(かなり強引に)解釈しておきたい。そう考えなければ救いがなさ過ぎるので。
[DVD(字幕)] 7点(2009-05-07 11:42:24)
51.  プライマー
シンプルでコンパクト、それでいて繰り返しの鑑賞に耐える面白さ。監督は数学畑の人らしいが、この映画はそれ自体が一つの数式のようだ。秀逸な公式のような鋭いひらめきと、無駄のない機能美がある。  冒頭の数分で『π(パイ)』という映画を思い出して嫌な予感がしたのだが、杞憂だった。明らかに低予算ではあるけれども、一切の贅肉を削ぐスタイルを取ることで巧みに弱点を補っている。それに一定の美意識に沿って作られているのも確かで、作品を包み込む雰囲気も悪くない。個人的には美しいと感じる下りすらあった。また短い尺の中にも人生の苦味が込められ、単なる味気ないパズルには終わっていない。良質の作品だ。  しかし無駄がない分、観客への親切心もない(!)ので、間口が狭い作品であるのも確かだろう。ミステリ、SFなどのジャンルが好きな方であればおすすめできるけれども、万人受けする類の映画では決してない。観終えたあとにああでもないこうでもないと考えるのが好きな人であれば、きっと楽しめるんじゃないだろうか。
[DVD(字幕)] 8点(2009-05-07 11:20:43)(良:1票)
52.  クレヨンしんちゃん ちょー嵐を呼ぶ金矛の勇者
ちょうど『戦国大合戦』を観た直後だったのでテレビで放送されていたのをなんとなく鑑賞。……これはちょっと、褒めるところが見当たらないかな。これを子どもだましといったら子どもに失礼でしょう。  いろいろなものを詰めこんだせいでわけわかんなくなってるし、しかも取り入れているのがまた浅はかな流行ネタばっかり。話の筋がくだらないのに加えて台詞のひとつひとつが薄っぺらくて、ギャグは痛々しいほどすべってる。脚本が完全にやっつけ仕事。  というか、一人称に『僕』を使う女の子を出して、しんちゃんがその胸を触ってドキッとするとか――クレヨンしんちゃんでやることじゃない。はっきり言って気色悪かったです。
[地上波(邦画)] 3点(2009-04-22 23:08:35)
53.  アイアンマン 《ネタバレ》 
パワードスーツの開発の過程を丁寧に追いかけることでワクワク感がつのっていく。スーツは正直ちょっとダサいのだが、それを取り巻くギミックの数々がかっこよくて、なんというか男の子心をくすぐる感じだった。主人公の助手であるさまざまな機械が妙に人間臭く、ときには可愛らしくさえ感じた。  アクションシーンではステルスや戦車と対等以上に渡り合ってしまうのがまた痛快だが、そのぶん生身の人間と戦うと弱いものいじめになりやすいのが難点といえば難点だろうか。人間が吹っ飛ばされる描写はコミカルだが、シリアスにすれば凄惨になってしまうのでそうせざるを得ないのだろう。人間離れしたヒーローは大勢いるが、アイアンマンは限りなく〝兵器〟に近く、その意味では異色の存在だ。  しかしこの作品の最大の欠点は、クライマックスのオバディアとの対決がいまいち盛り上がらないところ。サスペンスも薄いし、アクションも地味……。ステルスとの空中戦の方がよっぽど爽快だった。126分かけるならもう少しアクションの割合を増やしてもいいんじゃないだろうか。
[DVD(字幕)] 6点(2009-04-22 23:02:57)(良:1票)
54.  スターシップ・トゥルーパーズ3
相変わらずのあくの強さで、悪趣味な自分もさすがにちょっと引きました。軍国主義&宗教マンセーという世界を描きつつそのすべてをおちょくっているという風刺の仕方は面白いけれども、ここまでアホだと誰も真面目に受け取ってくれないんじゃないかと心配。
[DVD(字幕)] 5点(2009-04-22 01:09:00)
55.  クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶアッパレ!戦国大合戦 《ネタバレ》 
こんな作品を子どもの頃に観たかったと思う。そして大人になってから、もう一度観返したかった。それがいちばん幸せな観客でしょう。  姫が池のほとりに佇んでいるだけの、一切の台詞がないプロローグだけでちょっと感動。又兵衛と姫の関係そのものがそうだけれど、大事なことを言葉にしていない。というより言葉にしたら失われるような微妙な心の動きを、徹底して人の動作や、その目に映っているであろう風景を通して表現している。とてもやわらかで、細やかな視線だ。  侍と姫の恋物語はとても素朴で、単純とすらいえる。けれどもその繊細な描写が二人の息遣いまでも伝えるようで、素直な物語のなかにも汲みつくせない美しさがある。「言わぬが花」という言葉が、ほんとうの意味で生かされた作品だ。  また本編の主役であるしんのすけが脇役でしかないという批判もあるようだけれど、ちょっと違うと思う。  たとえばいざ合戦となって野原家が脱出しようというとき、悲壮な表情の両親とは対照的に、しんちゃんはあっけらかんとしている。つまり幼さゆえに絶望的な戦であることが理解できていないわけで、だから戦場の真っ只中に巻き込まれても両親ほど怖がったりはしない。それがラストで又兵衛が倒れて初めて、大声で泣き喚く。あのときようやく、〝死〟というものがしんのすけのなかでリアルになった。  つまりこの物語は侍と姫の悲恋譚である一方で、幼い少年が初めて〝死〟を知るまでの成長物語でもある。  この映画には子どもからはわかりにくい部分も確かにあるだろう。けれど、子どもにとっては世界はわからないことだらけであるのが当たり前のはず。そんななかでしんのすけは、大人の恋や死といったままならない出来事を垣間見て、少しだけ大人になる。人生は楽しいことばかりじゃなく、どうしようもなく失われていくものがあって、だからこそ輝きがあるということを知る。ほんとうの成長はいつも、苦い。  この映画が子ども向きではないという意見もあるようだけれど、ほんとうにそうでしょうか? これはとても真っ当に、本気で子どもに届けられた作品だと思います。
[DVD(邦画)] 9点(2009-04-16 19:27:27)(良:3票)
56.  落下の王国 《ネタバレ》 
子役の子どもらしい可愛らしさを巧みに引き出しているのが好印象。自殺志願の青年もごくありふれた青年という感じで、大人と子どもの会話がなかなか噛みあわない場面や、錯乱した女性を目撃した女の子が怖がる下りなど、割とリアリティ重視の作りとなっている。青年のバックグラウンドが描かれないのは、ほぼ全編を子どもの視点で描こうとしたからだろう。  空想世界は言うまでもなく、幻想的なプロローグからトーキー映画の引用を集めたラストまで目が離せない美しさだった。自殺を図るための方便でしかなかった作り話が、聞き手の少女の干渉によって、いつしか青年を救う道標となる。虚構の物語が人を救うというテーマに、作り手の映画への姿勢がそのまま重なって見える。  インドの国民的作家、タゴールの代表作に『もっとほんとうのこと』という短篇小説がある。これもやはり老人が孫娘に物語を聞かせる形式を取った作品で、老人は途方もなく壮大でロマンチックなおとぎ話を語る。しかし「これはほんとうよりもっとほんとうの話」で、けっしてただの作り話じゃないんだよ、と孫に言って聞かせるのである。ターセムがインド人だからというだけで影響を読み取るのは考えすぎかもしれないが、やはり似ていると思う。空想物語のなかに込められた真実の欠片が、人間にとってどれだけ大切なものかを教えてくれている。  ラストの喜劇映画の場面集は、落下に次ぐ落下で、むしろ飛行するような高揚感があった。『落下の王国』という題名は不評なようだが、個人的には好きだ。それは青年の空想世界だけでなく、自由な想像力の結晶である、映画そのものを示す暗喩でもあるように思う。
[DVD(字幕)] 8点(2009-04-03 14:42:43)(良:2票)
57.  スピード・レーサー
サイケデリック過ぎる映像は、真剣に観ているとこめかみが痛くなる。センスがぶっ飛びすぎてて、個人的には嫌いじゃないけど一般受けは確実にない思う。物語の深い味わいは望むべくもないが、センスがキレ過ぎているほどキレているのは確か。チンパンジーと弟が影の主役を張っているのがいい。人物がスライドしながらさまざまイメージを流していく回想シーンは斬新過ぎるし、雪の舞う格闘シーンなんかバカバカしくてかっこよかった。  面白いけど、人に薦められるかと訊かれたら自信を持って「NO」と言える。コケるべくしてコケた傑作――というか怪作。
[DVD(字幕)] 8点(2009-03-19 19:36:26)
58.  ただ、君を愛してる 《ネタバレ》 
キャラクターはデフォルメが効き過ぎているし、演出はベタ、脚本はくどい……でも、駄作と斬り捨てるのも可哀そうな、微妙な出来。  悪い意味でマンガっぽく、もっとリアリティに気を遣うべきだったと思う。難病ネタを出すなとは言わないけれど、せめてもっともらしい説明をしてくれないと。あんな奇抜な設定には、クライマックスでさらっと種明かしされるだけでは乗り切れない。  それにいくら演技力があっても、美男美女が冴えないタイプを演ずるのは無理がある。主演の二人は努力していたけれども、冴えない人ってもっと瑞々しさがないっていうか、自信のなさが立ち振る舞いに滲み出ている(端的にいえば、身にまとうオーラからして冴えてない)もので、それを玉木宏や宮崎あおいが演じるのは至難の業だろうと思う。
[DVD(邦画)] 6点(2009-02-16 17:29:33)
59.  キサラギ 《ネタバレ》 
普通に面白かったです。でもここでの平均点の高さにはちょっとびっくり。褒めている方は大勢いらっしゃるので、以下、あえて引っ掛かった点を挙げます。  何より気になったのが俳優の拙さ。香川さん以外の若い出演者の演技はみんなどこか不自然で、そもそもミスキャストではないかというくらいバラエティ番組での印象が固まった人もいる。ユースケ・サンタマリアは好きだけど、個人的には『ぷっすま』のイメージなので映画では観たくなかった。  脚本もテンポの良さは素晴らしかったけれども、一方で舞台劇特有のまくし立てるようなしゃべり方は耳障りだった。ラストが蛇足なのは言うまでもなく、とりわけプラネタリウムの場面のチープさはどうにかならないものかと思った。あと、映像的に面白みがなさすぎる。全体的に工夫が足りないのは素人目にも明らかで、鮮烈に脳裏に焼きつくような見せ場もない。大画面で観たいという欲求が全然そそられないのは、映画として少し寂しい。  いくら話が面白くとも、それ以外の要素がテレビドラマに毛の生えたレベルというのはもったいない。“映画は脚本”であることに異論はないけれど、それはあくまでも屋台骨として重要なのであって、すべてではないでしょう。
[DVD(邦画)] 7点(2009-01-28 16:54:58)(良:1票)
60.  その男ゾルバ 《ネタバレ》 
アンソニー・クインの存在感がすごい! 三船敏郎の野性味に並ぶ俳優はいないと思っていたけど、ゾルバもなかなかの野人っぷり。自由奔放でバイタリティにあふれ、でたらめなんだけど女には優しく、憎めない。半分は素でやってるんじゃないかというくらい自然な演技だった。  家を飛び出て駆けながらすっぽんぽんになる場面や、ラストの場面の能天気さは最高だ。林業計画の失敗(オチが『こち亀』並み)からダンスに至るまでの流れは文句なしに爽快だった。  ただ、脚本はもっとタイトにできたのではないかと思う。全体的にテンポがゆったりしているが、この内容なら二時間以内で充分まとめられるだろう。その割に若い未亡人のキャラクターはなおざりだし、エピソードとしてもやや陰惨に過ぎる。佳作だけに、そうした欠点が非常に惜しいと感じた。
[DVD(字幕)] 6点(2009-01-20 00:48:44)
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